JP3501926B2 - 食肉の処理方法 - Google Patents

食肉の処理方法

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JP3501926B2
JP3501926B2 JP25549397A JP25549397A JP3501926B2 JP 3501926 B2 JP3501926 B2 JP 3501926B2 JP 25549397 A JP25549397 A JP 25549397A JP 25549397 A JP25549397 A JP 25549397A JP 3501926 B2 JP3501926 B2 JP 3501926B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食肉の表面に常在
又は付着している微生物又は食肉の表面の微細部分の奥
に存在する微生物を短時間で高効率に除菌及び/又は殺
菌することを特徴とする食肉の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、食肉の表面細菌の除菌及び/又は
殺菌処理技術としては、水又は蒸気や熱水を用いた浸漬
又はスプレー処理、ガンマー線、電子線などの放射線照
射、紫外線照射、マイクロウェーブ、高圧パルス電場、
振動電場パルス、超高圧、超音波、電解酸性水又はオゾ
ン水、例えば酸、リン酸塩、アルコール、次亜塩素酸塩
等の殺菌剤を用いた浸漬又は噴霧などが知られている。
【0003】液体のスプレーによる食肉の処理技術とし
ては、剥皮後の屠体又は内臓摘出後の枝肉を、32.2
〜37.7℃、水圧50〜300psi(3.5〜21
kg/cm2)の水で洗浄し、微生物汚染をある程度減
少させた後、48.4〜60℃、水圧10〜40psi
(0.7〜2.8kg/cm2)の塩素水(50mg/
l)、有機酸溶液(例えば1〜2%の酢酸、乳酸、クエ
ン酸)等の殺菌剤により消毒することが知られている
(「食品衛生研究」第45巻、11号、1995年、7
〜37頁)。
【0004】また、ハンドスプレーノズルにより、種々
の温度の水圧20〜125psi(1.4〜8.75k
g/cm2)の水を屠体にスプレーすること(Journal o
f Food Protection,Vol.59,No.2,1995,p127-135)や、
屠体や枝肉をノズルを有するフレーム中を搬送させなが
らその表面に保存液をスプレー処理すること(WO 8
3/03522)や、0〜5℃に冷却された循環水を屠
殺直後のブロイラーに噴射し表面の血液等付着物を洗浄
すること(特公昭55−47859号公報)も知られて
いる。
【0005】しかし、食肉の表面は肉眼的に見ると滑ら
かであるが、その組織は微細な凹凸となっており、微生
物はその凹凸の角やくぼみや奥の部分で重なりあった
り、微生物の代謝産物である多糖性物質等からなるバイ
オフィルムに覆い隠れたりして、組織に強固に付着した
状態で存在していることから、上記の従来技術における
程度の水圧で食肉表面に水等の液体を噴射しても、その
表面に存在する微生物の一部を汚染物質と共に洗い流す
ことはできても、表面の微細部分の奥に存在する微生物
まで除去することはできていなかった。
【0006】上記の他に、家畜の屠体表面の除菌方法と
して、70〜85℃の熱水で短時間処理する研究が数多
く報告されている。特にキャビネット内の多数ノズルか
ら80〜90℃の熱水を約数十秒間スプレーする装置は
既に実用化されており、この装置を用いると表面細菌数
を約1/100に(10の2乗オーダー)低減できると
報告されている。80〜90℃の熱水処理によって肉色
が調理されたような色になるが、枝肉のように皮や皮下
脂肪で覆われた食肉の場合、その色も冷蔵庫で一晩経つ
と元の生鮮肉色に戻るとされている。
【0007】しかし、対象物が赤身の露出した小型の肉
塊の場合は、肉色の変化は避けることができず、本発明
者らの試験によると、赤身の露出した肉塊の場合では水
温60℃でも肉色の変化が起こり、色の回復は見られな
かった。また、赤身部分が露出した小型の肉塊の場合
は、熱水をかけることによって肉表面の温度が上昇し、
表面の蛋白質が変性したり、40〜50℃の融点を有す
る牛脂、45〜55℃の融点を有する羊脂、33〜46
℃の融点を有する豚脂等の脂肪が溶出することにより脂
肪に由来する風味が損なわれるなどの問題があった。
【0008】その他、水圧を利用する洗浄技術等として
は、畜舎、機器などを30〜140℃、水圧45〜15
0kg/cm2 の液体で洗浄しうる高温高圧洗浄機(平
成9年4月3日付「食肉速報」)や、燻乾により鰹節表
面に生じたいぶりを20〜50kg/cm2 の高圧水の
吹き付けにより膨潤軟化させつつ衝撃を与えて鰹節から
除去すること(特公昭56−46381号公報)も知ら
れているが、食肉の表面に高圧液を噴射し、その表面に
存在する微生物を除菌・殺菌することは知られていなか
った。
【0009】また、食肉の有機酸処理については、1〜
3%の乳酸溶液、酢酸溶液の単独使用もしくは混合使
用、又はそれにクエン酸もしくはアスコルビン酸などを
混合使用し、浸漬処理又はスプレー処理することにより
除菌効果があり、熱水を併用すると効果も増加するとさ
れている。また、食肉表面に酸が付着することで保存性
延長効果もあるといわれている。しかしながら、本発明
者らが肉塊を用いて試験した結果、1%の乳酸又は酢酸
溶液で食肉表面に酸変性が見られ、その後の回復も見ら
れなかった。しかも、殺菌効果も約1/10(10の1
乗オーダー)程度であった。また、肉塊にスプレーする
場合、肉接触面での水圧が30kg/cm2未満では除
菌効果は1/10未満と少なく、水圧を考慮しないスプ
レーでは十分な殺菌効果は得られない。
【0010】食肉にリン酸塩を適用することも知られて
おり、この例では、食肉の表面pHを12以上にするこ
とで、特にグラム陰性菌の除去に有効であると報告され
ている。この報告では、肉質の変化について言及されて
いないが、アルカリ変性による肉風味の低下などの問題
が生じていると考えられる。
【0011】その他、電解酸性水、オゾン水、アルコー
ル溶液、次亜塩素酸塩溶液などの殺菌作用を有する液体
に食肉を浸漬するか又はそれらを食肉表面に噴霧する方
法も知られているが、表面の除菌・殺菌効果は1/10
(10の1乗オーダー)未満で、その殺菌作用は実用的
とはいえない。
【0012】以上のように、従来、食肉の外観や品質に
悪影響を与えることなく、食肉表面を汚染する微生物を
簡単に1/10に(10の1乗オーダー)低減させる除
菌・殺菌技術は知られておらず、まして食肉の外観や品
質に悪影響を与えることなく、食肉表面を汚染する微生
物を実用的に極めて価値のある除菌レベルといわれてい
る1/100(10の2乗オーダー)以上低減させる除
菌・殺菌技術は知られていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】近年、消費者の食品衛
生に関する要求の高まりや食品衛生法の改正に伴い、食
品メーカーに対する自主的衛生管理の強化が必要とされ
ている。特に生鮮食品に至っては、昨年多発した病原性
大腸菌O−157による食中毒防止の観点からも衛生管
理の強化が必要とされてきている。食中毒予防の重要な
課題の1つに、生鮮食品そのものや加工用原料の細菌数
低減がある。
【0014】これら細菌汚染は食肉等においてはしばし
ばその表面部分に限られ、食肉表面を汚染しているサル
モネラ、カンピロバクター、大腸菌などの細菌を高効率
に除菌及び/又は殺菌し、食肉の初発菌数を低下させる
ことにより、微生物学的に安全な食肉が得られ、保存性
を向上させることができる。また、食肉製品や食肉を原
料とする種々の製品を製造する上で、初発菌数の少ない
原料肉を使用すると、製造工程中における微生物制御の
手段(pH、水分活性の低下、品質保持剤の使用、加熱
殺菌など)を緩和することができることから、品質の低
下を防ぐことができる。
【0015】本発明の課題は、生食肉あるいは凍結食肉
の表面を汚染している微生物を、食肉の品質を低下させ
ることなく、高効率に除菌及び/又は殺菌し、食肉の初
発菌数を低下させ、保存性が向上しかつ微生物学的に安
全な食肉が得られる食肉の処理方法を提供することにあ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは、食肉の品質や風味に影響を与えず、
大規模な装置を必要とせず簡便な方法で効果的に表面の
微生物を除菌又は殺菌する方法を見い出すべく鋭意研究
を積み重ねた結果、高圧水を用いると、生食肉ばかりで
なく凍結状態の食肉でも同様に、その表面の凹凸に関係
なく存在する微生物を効率的に除菌することができるこ
とと、高圧水に代えて、高圧の殺菌剤含有溶液を用いる
と、実用的に極めて価値のある除菌レベルといわれてい
る10の2乗オーダー以上の除菌・殺菌効果があること
を併せて見い出し、本発明を完成するに至った。
【0017】すなわち本発明は、食肉の表面に、食肉と
の接触面における圧力が50〜80kg/cm2となる
高圧水あるいは高圧の除菌及び/又は殺菌作用を有する
次亜塩素酸塩溶液等の高圧液を噴射し、表面又は表面の
微細部分の奥に存在する微生物を除菌及び/又は殺菌す
ることを特徴とする食肉の処理方法に関する。
【0018】また本発明は、食肉との接触面における圧
力が50〜80kg/cm2となる高圧水を噴射し、食
肉表面部分に存在する微生物を約1/10に(10の1
乗オーダー)低減させたり、食肉との接触面における圧
力が50〜80kg/cm2となる高圧の次亜塩素酸塩
溶液を噴射し、食肉表面部分に存在する微生物を約1/
100に(10の2乗オーダー)低減させることを特徴
とする食肉の処理方法に関する。
【0019】さらに本発明は、上記方法において、高圧
液の液温が蛋白質変性温度域又は食肉脂肪の融点より低
い温度域にあること、高圧液による処理速度が0.2〜
5cm/秒であること、食肉が屠体又は枝肉であるこ
と、食肉が凍結状態の食肉であることなどを特徴とする
食肉の処理方法に関する。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明において食肉としては、食
用に共される肉及びその素材であればどのようなもので
もよく、豚肉、牛肉、家禽肉、馬肉、羊肉及びこれらの
内臓肉、骨付き肉、皮付き肉、屠体、枝肉並びに魚肉等
を例示することができる。また、本発明の食肉には、こ
れらの生状態の食肉ばかりでなく、凍結状態の食肉も含
まれる。そして、対象食肉を凍結したままの状態で高圧
液処理しても、凍結していない場合と同等の除菌・殺菌
効果が得られている。
【0021】食肉の表面又は表面の微細部分の奥に存在
する微生物を短時間で高効率に除去するには高圧液を噴
霧することにより物理的に掻き出す方法が有効である。
この場合、除菌対象物との接触面での圧力が高いほど効
果があり、例えば、肉表面での圧力が30kg/cm2
未満であると充分満足する除菌効果が得られない。ま
た、肉表面での圧力が80kg/cm2を越えると肉表
面に損傷を与えることから好ましくないが、肉表面に損
傷を与えても差し支えないプレスハム等の食肉加工品用
原料肉の場合は、80kg/cm2 を越える高圧液を
噴霧することもできる。
【0022】本発明における50〜80kg/cm2
高圧液は、従来公知の高圧液発生装置を用いることによ
り得ることができ、120kg/cm2程度の高圧が得
られるものであればどのような機構のものでもよいが、
例えばプランジャーポンプを用いたものを例示すること
ができる。また、高圧液の噴射ノズルとしては、スプレ
ー噴射ノズル、被処理食肉の幅を有する直進水流噴射ノ
ズル、筒状の直進水流噴射ノズルをその先端に複数備え
たマニホールドタイプの噴射ノズルを例示することがで
きるが、高圧液発生装置に連接されている配管に多数の
スプレー噴射ノズルが備えられているタイプのものが望
ましい。
【0023】高圧液の噴射は、噴射ノズルを食肉表面を
移動させてもよいし、逆に噴射ノズルを固定し食肉をベ
ルトコンベア上を移動させながら噴射してもよい。ま
た、噴射ノズルを用いた高圧液による食肉表面の処理
は、食肉表面の凹凸の状態、食肉の硬さ等にもよるが、
高圧液による食肉の相対的な処理速度が通常0.2〜5
cm/秒、好ましくは0.5〜3cm/秒の処理が望ま
しい。例えば、スプレー噴射ノズルを用いる場合、食肉
に対するノズル1個の移動速度(または、ノズル1個に
対する食肉の移動速度)が、0.2〜5cm/秒になる
ように設定される。このように食肉の高圧液処理は、最
初の数秒間で大きな除菌・殺菌効果を発揮し、それ以降
は時間を延長しても除菌効果の変化は少ないことからす
ると、高圧液による食肉表面微生物の掻き出し効果は、
使用する水量に依存するのではなく、瞬間的な圧力に大
きく依存するものといえる。
【0024】高圧液としては、高圧水あるいは高圧の除
菌及び/又は殺菌作用を有する液体を用いることができ
る。高圧液の液温は、食肉の品質保持の観点から、蛋白
質変性温度域又は食肉脂肪の融点より低い温度域、例え
ば室温であることが望ましい。高圧の除菌及び/又は殺
菌作用を有する液体を用いると除菌・殺菌効果が相乗的
に増大する。高圧の除菌及び/又は殺菌作用を有する液
体としては、塩素系殺菌剤、アルコール系殺菌剤、有機
酸及び/又はその塩類、無機酸及び/又はその塩類、界
面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上を含
有する溶液、あるいは電解酸性水、オゾン水を例示する
ことができる。
【0025】塩素系殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリ
ウムの50〜200ppm溶液を例示することができ、
この次亜塩素酸ナトリウム溶液は、細菌芽胞、糸状菌を
除く多くの細菌、ウイルスに優れた殺菌効果を有し、低
コストで安全性が高いため、本発明における高圧液とし
ては最も好ましい。またこの次亜塩素酸ナトリウムは有
機酸等他の殺菌剤と併用して用いても優れた除菌・殺菌
効果を奏する。
【0026】アルコール系殺菌剤としては、30〜90
%のエタノール含有溶液を例示することができる。有機
酸及び/又はその塩類としては、例えば1〜2%の酢
酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸溶液を例示するこ
とができる。無機酸及び/又はその塩類としては、例え
ばpH12以上に調製されたリン酸塩溶液を例示するこ
とができる。界面活性剤としては、例えばショ糖脂肪酸
エステルなどの食品の洗浄等に使用される界面活性剤を
例示することができる。
【0027】電解酸性水としては、電解槽での電解によ
る強酸性水や弱酸性水、あるいは次亜塩素水を例示する
ことができる。オゾン水は、放電中のプラズマに空気中
の酸素を通過させることで酸素をオゾン化したオゾンガ
スを水に溶かし込んだもので残留性がないという特徴を
有している。
【0028】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げてこの発明を
さらに具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこ
れらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の
実施例中に示す%は重量基準を表す。
【0029】また、アルコール製剤としては、次の組成
のものをそのまま用いた。 エタノール 54.4 % 乳酸 1.5 % 乳酸ナトリウム 0.4 % グリセリン脂肪酸エステル 0.2 % 香料 0.01% 水 43.49%
【0030】界面活性剤としては、次の組成を有する食
品用洗剤の0.2%溶液を用いた。 ショ糖脂肪酸エステル 5.0 % 高級脂肪酸 1.2 % ピロリン酸四カリウム 37.0 % エタノール 1.5 % リン酸(85%) 5.5 % 水 49.8 %
【0031】電解酸性水としては、電気分解装置として
三浦電子株式会社製のオキシライザーにより製造された
強酸性イオン水(pH2.7、有効塩素濃度10〜60
ppm)を用いた。
【0032】(比較例1) 生鮮豚ロース肉に対する従来技術による除菌又は殺菌効
果を調べた。処理対象肉の処理前、処理後の表面部分
(縦×横×深さ;5cm×5cm×3mm)を採取し、
常法に従い一般生菌数を測定するとともに官能的変化を
評価した。処理方法及び結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】表1からもわかるように、水道水(室温で
5分、60℃で30秒)、200ppm次亜塩素酸塩溶
液(室温で5分、室温で30秒)、有効塩素濃度30〜
50ppmの電解酸性水(室温で5分)、アルコール製
剤(室温で5分)、1%乳酸溶液(室温で30秒、60
℃で30秒)へ浸漬した場合、及び105℃のスチーム
処理(10秒、15秒)の場合のいずれも除菌又は殺菌
効果は1オーダー(10の1乗)未満であり、また肉表
面が変性しており、効果的な除菌・殺菌方法といえるも
のではなかった。
【0035】(実施例1) 生鮮及び凍結の豚ロース肉に対する高圧水の効果を調べ
た。食肉との接触面での圧力がそれぞれ20,30,4
0,50,60,70,80kg/cm2となるように
室温の水道水を噴射した。処理は肉の全表面にスプレー
式噴射ノズル(スプレーイング システムジャパン株式
会社製;フラットジェット・スプレーノズル)を1cm
/秒の速度で移動させて行い、比較例1と同様に肉表面
部分の細菌数の測定と官能評価を行った。処理方法及び
結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】表2からもわかるように、生鮮肉、凍結肉
のいずれも圧力が20kg/cm2ではほとんど除菌効
果はないが、30kg/cm2から70kg/cm2まで
水圧が上昇するに従い除菌効果は増大し、50kg/c
2で汚染微生物は1/10に(10の1乗オーダー)
低減することが認められた。最も除菌効果がありかつ品
質に影響がなかった圧力は60kg/cm2であること
がわかる。
【0038】(実施例2) 生鮮及び凍結の豚ロース肉に対する高圧の殺菌作用を有
する溶液を用いた場合における除菌・殺菌効果を調べ
た。殺菌作用を有する溶液として200ppm次亜塩素
酸塩溶液(室温)を用いる他は、実施例1と同様に行っ
た。処理方法及び結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】表3からもわかるように、生鮮肉、凍結肉
のいずれも、またいずれの圧力でも高圧水の200pp
m次亜塩素酸塩溶液(室温)を用いることで、除菌・殺
菌効果が認められた。圧力30kg/cm2以上では相
乗的な効果が認められ、圧力60kg/cm2では1/
100(10の2乗オーダー)以上に菌数が低減し、か
つ官能評価においても異常が認められなかった。品質に
影響を与えることなく、実用的な除菌レベルといわれて
いる10の2乗オーダー以上の除菌・殺菌効果、それも
生鮮肉ばかりでなく凍結肉についても奏される除菌・殺
菌効果を達成した方法はこれまでに例を見ない。
【0041】(実施例3) 生鮮及び凍結の豚ロース肉に対する高圧の殺菌作用を有
する各種溶液を用いた場合における除菌・殺菌効果を調
べた。水道水を対象とし、殺菌作用を有する各種溶液と
して、それぞれ室温の、200ppm次亜塩素酸塩溶
液、1.0%乳酸溶液、アルコール製剤、界面活性剤、
電解酸性水を用い、食肉との接触面での圧力が60kg
/cm2となるように処理液を噴射する他は、実施例1
と同様に行った。処理方法及び結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】表4からもわかるように、生鮮肉、凍結肉
のいずれも高圧水の処理液に、殺菌剤又は界面活性剤の
添加、電解酸性水を使用することで、除菌及び/又は殺
菌効果が増加した。これらの処理液中で最も除菌・殺菌
効果に優れ、かつ官能的に異常がなかったのは200p
pm次亜塩素酸塩溶液であった。
【0044】(実施例4) 豚ロース肉塊(生鮮肉)の保存性に及ぼす高圧液処理の
影響を調べた。処理液として200ppm次亜塩素酸塩
溶液(室温)を用い、食肉との接触面での圧力が60k
g/cm2となるように処理液を噴射した。高圧液処理
は肉の全表面にスプレー式噴射ノズルを1cm/秒の速
度で移動させて行った。その後、肉塊表面の水分を取り
除き、トレー(含気)包装及び真空包装をし、5℃に保
存し、経時的に比較例1と同様の方法で肉表面部の細菌
数を測定した。なお、対照区として無処理の豚ロース肉
塊を、比較区として200ppm次亜塩素酸塩溶液(室
温)に5分間浸漬処理した豚ロース肉塊を用いた。結果
を表5及び図1に示す。
【0045】
【表5】
【0046】表5及び図1からもわかるように、食肉を
200ppm次亜塩素酸塩溶液(室温)を用いて高圧処
理することにより、細菌数は1/100に(10の2乗
オーダー)低減し、処理後トレー(含気)包装及び真空
包装をして5℃に保存する試験を行った結果、微生物学
的な見地からの保存期間の目安である細菌数が105
FU/gに達するまでの期間が、対照区及び比較区の場
合に比較して、高圧液処理区の場合、トレー(含気)包
装では約1.5倍、また、真空包装では約2倍に延長さ
れた。このことは、従来製品に比べて本発明による豚ロ
ース肉塊製品を約1.5〜2倍の期間保存・保管しうる
ことを意味する。
【0047】(実施例5) 調味生肉の保存性に及ぼす高圧液処理の影響を調べた。
原料肉(牛バラ肉)の高圧水処理は、処理液として20
0ppm次亜塩素酸塩溶液(室温)を用い、食肉との接
触面での圧力が60kg/cm2となるように処理液を
噴射した。高圧液処理は肉の全表面にスプレー式噴射ノ
ズルを1cm/秒の速度で移動させて行った。高圧液処
理後、表面の水気を十分に切りスライスした。65部の
スライス肉を33部の調味液(品質保持剤含有)に漬け
込み、pHがそれぞれ5.6,5.3,5.0となるよ
うに2N塩酸溶液で調整した後真空包装した。5℃に保
存し、経時的に比較例1と同様の方法で肉表面部の細菌
数を測定した。なお、対照区として無処理のスライス肉
を、比較区として200ppm次亜塩素酸塩溶液(室
温)に5分間浸漬処理したスライス肉を用いた。結果を
表6及び図2に示す。
【0048】
【表6】
【0049】表6及び図2からもわかるように、食肉を
200ppm次亜塩素酸塩溶液(室温)を用いて高圧処
理することにより、調味生肉全体の細菌数は約1/10
に(10の1乗オーダー)低減し、真空包装後5℃で保
存試験を行った結果、pH5.6の場合、対照区及び比
較区では40日目に細菌数が105CFU/gに達した
のに対して、高圧液処理区では50日目でも103CF
U/g未満であった。pH5.3の場合は、50日目に
おいて対照区は105CFU/gに、比較区は104CF
U/gに達したのに対して、高圧液処理区では60CF
U/gであり、また、pH5.0の場合は、50日目に
おいて対照区は105CFU/gに、比較区は104CF
U/gに達したのに対して、高圧液処理区では16CF
U/gであった。このように、本発明の高圧処理による
と、大幅な保存性延長効果が認められ、また、pHが低
下することによりさらに延長効果が増大した。5
【0050】
【発明の効果】本発明によると、生食肉あるいは凍結食
肉の表面を汚染している微生物を、食肉の品質を低下さ
せることなく、短時間でかつ高効率に、実用的に極めて
価値のある除菌レベルといわれている10の2乗オーダ
ー以上の除菌・殺菌が可能であり、食肉の初発菌数を低
下させ、保存性が向上しかつ微生物学的に安全な食肉が
得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】豚ロース肉塊に及ぼす本発明の高圧液処理によ
る除菌・殺菌効果を示す図である。
【図2】調理生肉に及ぼす本発明の高圧液処理による除
菌・殺菌効果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鮫島 隆 茨城県土浦市中向原635番地 プリマハ ム株式会社内 (72)発明者 三木 為雄 茨城県土浦市中向原635番地 プリマハ ム株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−173019(JP,A) 特開 平2−186967(JP,A) 特開 平7−177867(JP,A) 特開 平7−170955(JP,A) 特開 平5−168445(JP,A) 特開 平5−130854(JP,A) 特表 平9−508040(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A22C 17/08 A22B 5/00 A23L 1/025 A23L 3/015

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 食肉の表面に、食肉との接触面における
    圧力が50〜80kg/cm2となる高圧液を噴射し、
    表面又は表面の微細部分の奥に存在する微生物を除菌及
    び/又は殺菌することを特徴とする食肉の処理方法。
  2. 【請求項2】 高圧液が、高圧の水あるいは高圧の除菌
    及び/又は殺菌作用を有する液体であることを特徴とす
    る請求項1記載の食肉の処理方法。
  3. 【請求項3】 食肉との接触面における圧力が50〜8
    0kg/cm2なる高圧水を噴射することを特徴とする
    請求項2記載の食肉の処理方法。
  4. 【請求項4】 高圧の除菌及び/又は殺菌作用を有する
    液体が、塩素系殺菌剤、アルコール系殺菌剤、有機酸及
    び/又はその塩類、無機酸及び/又はその塩類、界面活
    性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上を含有す
    る溶液、あるいは電解酸性水、オゾン水であることを特
    徴とする請求項2記載の食肉の処理方法。
  5. 【請求項5】 塩素系殺菌剤が、次亜塩素酸塩であるこ
    とを特徴とする請求項4記載の食肉の処理方法。
  6. 【請求項6】 食肉との接触面における圧力が50〜8
    0kg/cm2となる高圧の次亜塩素酸塩溶液を噴射す
    ることを特徴とする請求項5記載の食肉の処理方法。
  7. 【請求項7】 高圧液の液温が、蛋白質変性温度域又は
    食肉脂肪の融点より低い温度域にあることを特徴とする
    請求項1〜6のいずれか記載の食肉の処理方法。
  8. 【請求項8】 高圧液による処理速度が、0.2〜5c
    m/秒であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか
    記載の食肉の処理方法。
  9. 【請求項9】 食肉が、屠体又は枝肉であることを特徴
    とする請求項1〜8記載の食肉の処理方法。
  10. 【請求項10】 食肉が、凍結状態の食肉であることを
    特徴とする請求項1〜9記載の食肉の処理方法。
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