JP3501629B2 - 電動車両の制動制御装置 - Google Patents

電動車両の制動制御装置

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JP3501629B2
JP3501629B2 JP21993697A JP21993697A JP3501629B2 JP 3501629 B2 JP3501629 B2 JP 3501629B2 JP 21993697 A JP21993697 A JP 21993697A JP 21993697 A JP21993697 A JP 21993697A JP 3501629 B2 JP3501629 B2 JP 3501629B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回生制動と液圧制
動を併用する電動車両の制動制御装置に関し、特に、回
生制動の不足を液圧制動によって円滑に補うように制御
する制動制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】近時、電動モータを駆動源とする電動車
両においては、電動モータを発電機として機能させバッ
テリに充電させることによってエネルギーを回収し、電
動モータ駆動時のエネルギーを増大する回生制動が行な
われている。この回生制動による制動力の付与には限界
があるので、液圧制動で補う必要があり、例えば特開平
5−161210号公報に記載の電動車両の制動装置の
ように、液圧制動と回生制動が併用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平5−161
210号公報に記載のような従来の電動車両の制動制御
装置においては、通常、回生制動は所定のトルクマップ
あるいは液圧係数に基づいて設定されており、例えば低
速域では回生制動力が不足するため液圧制動等の他の制
動作動によって補償するように構成されていた。然し乍
ら、ブレーキペダルを急激に操作した急制動時と緩やか
に操作した緩制動時とではフィーリングが変化する。例
えば急制動時には、回生制動力が残存しているにも拘ら
ず液圧制動が付加されるため、ブレーキ操作量に対応し
た減速度以上の減速度となる。このため、急制動時と緩
制動時とでブレーキフィーリングが変化し、運転者に対
し違和感を与えることになる。
【0004】そこで、本発明は、回生制動と液圧制動を
併用する電動車両の制動制御装置において、ブレーキ操
作状態によるブレーキフィーリングの変化を極力抑え、
ブレーキ操作時の違和感を緩和することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を達成するた
め、本発明は、車両の車輪に連結する電動モータと、前
記車両に搭載する電池と、該電池を電源として前記電動
モータを回転駆動し前記車輪に駆動力を付与すると共
に、前記電動モータの回生制動により前記車輪に制動力
を付与するモータ制御手段と、前記車輪に装着したホイ
ールシリンダに対しブレーキ操作部材の操作に応じてブ
レーキ液圧を供給する液圧制動により前記車輪に制動力
を付与する液圧制御手段とを備えた電動車両の制動制御
装置において、前記車両の制動状態を判定する制動状態
判定手段と、該制動状態判定手段が判定した前記車両の
制動状態に応じて前記モータ制御手段による回生制動ト
ルクを低減する回生制動トルク低減手段と、前記制動状
態判定手段が判定した前記車両の制動状態に応じて前記
回生制動トルク低減手段による回生制動トルクの低減へ
の切換条件を設定するトルク低減切換条件設定手段とを
備えることとしたものである。
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】前記制動制御装置において、前記制動状態
判定手段は、前記車両に対する要求制動力を検出する要
求制動力検出手段を具備し、前記トルク低減切換条件設
定手段は、前記要求制動力検出手段が検出した要求制動
力に応じて前記回生制動トルク低減手段による回生制動
トルクの低減への切換を開始する前記車両の速度を設定
するように構成するとよい。
【0010】また、前記制動制御装置において、前記制
動状態判定手段は、前記液圧制御手段における前記ブレ
ーキ操作部材の操作に応じて前記ホイールシリンダに供
給するブレーキ液圧を検出する液圧検出手段を具備し、
該液圧検出手段が検出したブレーキ液圧に応じて前記回
生制動トルク低減手段による回生制動トルクの低減への
切換を開始する前記車両の速度を設定するように構成す
るとよい。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を
参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電
動車両の制動制御装置を示すもので、回生制動を行なう
電動モータ11と、液圧制動を行なう液圧制御装置を備
え、後者は静的液圧出力手段たるマスタシリンダ2と、
動的液圧出力手段たるレギュレータ3がブレーキペダル
5の操作に応じて駆動されるように構成されている。図
1において、車輪FRは運転席からみて前方右側の車輪
を示し、以下車輪FLは前方左側、車輪RRは後方右
側、車輪RLは後方左側の車輪を示しており、車輪F
R,FL,RR,RLにはホイールシリンダ51乃至5
4が装着されている。本実施形態では、前輪の液圧制御
系と後輪の液圧制御系に区分された所謂前後配管方式の
ブレーキ液圧系が構成されている。
【0015】本実施形態の電動車両は、前方の車輪F
R,FLが駆動輪で後方の車輪RR,RLが従動輪の所
謂前輪駆動に係り、車輪FR,FLはトランスミッショ
ン12を介して駆動用の電動モータ11に接続されてお
り、この電動モータ11は電子制御装置10によって駆
動制御される。電子制御装置10は、電動モータ11を
駆動制御するモータ制御手段たるモータ制御用のマイク
ロコンピュータ10aと、液圧制御手段たる液圧制御用
のマイクロコンピュータ10bで構成されているが、こ
れらの基本的な構成は例えば特開平7−336806号
公報に記載のものと同様であるので説明を省略する。
【0016】電動モータ11は、固定子の3相の巻線に
交流電力を印加することによって回転磁界を発生させ、
永久磁石を有する回転子を回転駆動する誘導電動機で構
成されている。従って、マイクロコンピュータ10aに
よって制御されるモータ駆動回路(図示せず)にはイン
バータ(図示せず)が設けられている。この電動モータ
11によれば、車輪FR,FLが回転しているときに、
その回転を止める方向の磁界を固定子によって発生させ
ることによって、回転子に対し制動力を付与すると共
に、固定子の巻線に発生する起電力をバッテリー13に
回収することができる。これにより、回生制動が行なわ
れる。
【0017】図1において、マスタシリンダ2の圧力室
は低圧リザーバ4に接続されており、マスタシリンダ2
の圧力室と車両前方のホイールシリンダ51,52の各
々を接続する前輪側の主液圧路8には、回生制動に対し
液圧制動の追加及び切換を行なう液圧制限切換装置20
が介装されている。一方、レギュレータ3と車両後方の
ホイールシリンダ53,54の各々を接続する後輪側の
主液圧路9には液圧制限切換装置30が介装されている
が、後述するように液圧制限切換装置20とは若干構成
が異なる。
【0018】レギュレータ3には補助液圧源40が接続
されており、これらはマスタシリンダ2と共に低圧リザ
ーバ4に接続されている。補助液圧源40は、液圧ポン
プ41及びアキュムレータ44を有する。液圧ポンプ4
1は電動モータ42によって駆動され、低圧リザーバ4
のブレーキ液を昇圧して出力し、このブレーキ液が逆止
弁43を介してアキュムレータ44に供給され、蓄圧さ
れる。
【0019】電動モータ42は、アキュムレータ44内
の液圧が所定の下限値を下回ることに応答して駆動さ
れ、またアキュムレータ44内の液圧が所定の上限値を
上回ることに応答して停止する。而して、アキュムレー
タ44から所謂パワー液圧が適宜レギュレータ3に供給
される。レギュレータ3は、補助液圧源40の出力液圧
を入力し、マスタシリンダ2の出力液圧をパイロット圧
として、これに比例したレギュレータ液圧(マスタシリ
ンダ液圧と略等しい値)に調圧するもので、その基本的
構成は周知であるので、説明は省略する。尚、レギュレ
ータ液圧の一部はマスタシリンダ2の倍力駆動に供され
る。
【0020】液圧制限切換装置20は、図1に示すよう
に、第1のリリーフバルブ21、電磁開閉弁22、プロ
ポーショニングバルブ23及び第2のリリーフバルブ2
6が並列に接続され、更に、第2のリリーフバルブ26
に直列に電磁開閉弁27が配設されている。第1のリリ
ーフバルブ21は、マスタシリンダ2の出力液圧が所定
圧力Pcに達するまでは主液圧路8の連通を制限し所定
圧力Pc以上となったときに主液圧路8を連通するもの
である。また、第2のリリーフバルブ26は、所定圧力
Pcより低圧の所定圧力Pbにマスタシリンダ2の出力
液圧が達するまでは主液圧路8の連通を制限し、所定圧
力Pb以上となったときに主液圧路8を連通するもので
ある。
【0021】電磁開閉弁22は、電子制御装置10によ
って駆動制御され、最大回生制動力に応じて開閉する電
磁弁で、電磁開閉弁27も電子制御装置10によって駆
動制御され、最大回生制動トルクに応じて開閉する電磁
弁であるが、特に車両の速度又は車両の最大回生制動ト
ルクに応じて開閉する電磁弁である。そして、プロポー
ショニングバルブ23は、ブレーキペダル5の操作に応
じたマスタシリンダ2の出力液圧を所定の関係に制御し
てホイールシリンダ51,52に供給する液圧制御弁
で、従来から前後制動力配分制御用として用いられてい
るプロポーショニングバルブと実質的に同一の構成であ
るが、後述するように折点の液圧が低く抑えられてい
る。尚、第1のリリーフバルブ21(電磁開閉弁22)
の上流側及び下流側には、夫々圧力センサ24,25が
配設されている。
【0022】一方、後輪側の液圧制限切換装置30は、
リリーフバルブ31、電磁開閉弁32及びプロポーショ
ニングバルブ33が並列に接続されたもので、上記の第
2のリリーフバルブ26及び電磁開閉弁27に相当する
ものが設けられていないが、これらを設けることとして
もよい。リリーフバルブ31は、マスタシリンダ液圧が
所定圧力Pcに達するまでは主液圧路9の連通を制限し
所定圧力Pc以上となったときに主液圧路9を連通する
ものである。また、電磁開閉弁32は、電磁開閉弁22
と同様に回生制動トルクに応じて主液圧路9を開閉する
もので、プロポーショニングバルブ33はプロポーショ
ニングバルブ23と同様の機能を有する。
【0023】上記の液圧制限切換装置20を構成する第
1のリリーフバルブ21、電磁開閉弁22及びプロポー
ショニングバルブ23は図6に示す特性を有する。即
ち、プロポーショニングバルブ23の特性は、制動操作
の初期にはブレーキペダル5の操作に応じてマスタシリ
ンダ液圧が増圧し、このマスタシリンダ液圧に比例して
ホイールシリンダ液圧が増圧するが、所定圧力Paに達
すると略一定となり、マスタシリンダ液圧が増大しても
ホイールシリンダ液圧は微増するのみとなる。上記所定
圧力Paは、ホイールシリンダ51等にブレーキ液が充
填され、ブレーキパッド(図示せず)がロータ(図示せ
ず)に当接する程度の低い値に設定されている。而し
て、プロポーショニングバルブ23は、ブレーキ操作の
初期にブレーキ液をホイールシリンダに充填する機能、
第1のリリーフバルブ21が作動するまで液圧を遮断す
る機能、及びホイールシリンダ51等からマスタシリン
ダ2にブレーキ液を戻す機能を有する。
【0024】第1のリリーフバルブ21の特性は、図6
に二点鎖線で示すように、マスタシリンダ液圧が所定圧
力Pcに達するまでは閉状態にあり、所定圧力Pcを超
えると開弁し、この後はマスタシリンダ液圧増加に比例
したホイールシリンダ液圧増加となる。また、第2のリ
リーフバルブ26の特性は、実線で示すように、マスタ
シリンダ液圧が所定圧力Pb(Pb<Pc)に達するま
では閉状態にあり、所定圧力Pbを超えると開弁し、こ
の後はマスタシリンダ液圧増加に比例したホイールシリ
ンダ液圧増加となる。尚、電磁開閉弁27は第2のリリ
ーフバルブ26の作動を制御する弁であるが、電磁開閉
弁22は、その開位置で、図6に破線で示すようにマス
タシリンダ液圧に一致したホイールシリンダ液圧の特性
を有する。換言すれば、図6において電磁開閉弁22の
特性を示す破線と、第1のリリーフバルブ21又は第2
のリリーフバルブ26及びプロポーショニングバルブ2
3の特性を示す実線との間に囲まれた領域が減圧領域で
あり、液圧制動に代わって回生制動が行なわれる範囲で
ある。
【0025】図1に示すように、ブレーキペダル5に
は、これが踏み込まれたときオンとなるブレーキスイッ
チ6が設けられており、圧力センサ24,25と同様に
電子制御装置10に接続されている。また、トランスミ
ッション12のシフト位置が検出され電子制御装置10
に検出信号が供給される。更に、車輪FR,FL,R
R,RLには車輪速度センサ91乃至94が配設され、
これらが電子制御装置10に接続されており、各車輪の
回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信
号が電子制御装置10に供給されるように構成されてい
る。
【0026】更に、液圧制限切換装置20とホイールシ
リンダ51,52の間の主液圧路8には、サブシリンダ
70が介装されている。また、主液圧路9からは副液圧
路9aが分岐し、これにサブシリンダ70が接続されて
いる。サブシリンダ70は、シリンダ71内にピストン
72が摺動自在に収容され、このピストン72を介して
シリンダ71内の両側に第1の圧力室74と第2の圧力
室75が郭成されている。第2の圧力室75内には圧縮
スプリング73が収容されており、第1及び第2の圧力
室74,75に液圧が付与されていないときには第2の
圧力室75が最大容量(従って、第1の圧力室74が最
小容量)となるように、圧縮スプリング73によってピ
ストン72が図1の左方に付勢されている。
【0027】そして、第1の圧力室74に接続される副
液圧路9aには電磁開閉弁61が介装されており、この
電磁開閉弁61に対して並列に逆止弁62が接続されて
いる。電磁開閉弁61は2ポート2位置の常閉の電磁弁
であり、非作動時は閉成されており、作動時の開位置で
は第1の圧力室74が副液圧路9aを介してレギュレー
タ3に連通する。従って、サブシリンダ70において
は、電磁開閉弁61が開位置にあれば、第1の圧力室7
4にレギュレータ液圧(マスタシリンダ液圧と略等し
い)が付与され、第2の圧力室75にはホイールシリン
ダ液圧が付与されるが、両圧力室はピストン72によっ
て液圧的に分離されている。そして、第1及び第2の圧
力室74,75内に液圧が付与されていないときには、
ピストン72は図1に示すように第1の圧力室74の容
量が最小となる位置にある。
【0028】電磁開閉弁61が開位置とされ、電磁開閉
弁61を介して第1の圧力室74にレギュレータ液圧が
付与されると、ピストン72が第2の圧力室75を縮小
する方向に駆動されるので、主液圧路8を介してホイー
ルシリンダ51,52に第2の圧力室75内のブレーキ
液が吐出され増圧される。このときホイールシリンダ5
1,52に吐出されるブレーキ液の量は第2の圧力室7
5の最大容量が限度であるので、ホイールシリンダ5
1,52に対し過剰にブレーキ液が供給されることはな
い。尚、サブシリンダ70を設けることなく、電磁開閉
弁61が開位置のときには、レギュレータ液圧を直接ホ
イールシリンダ51,52に付与することとしてもよ
い。
【0029】更に、詳細な図示は省略したが、本実施形
態においては図1に一点鎖線で示すように、サブシリン
ダ70とホイールシリンダ51,52との間、及び液圧
制限切換装置30とホイールシリンダ53,54との間
に複数の電磁弁で構成したモジュレータMDが介装され
ており、各電磁弁が電子制御装置10によって制御され
るように構成されている。これによれば、アンチスキッ
ド制御だけでなく、レギュレータ3の出力液圧をモジュ
レータMDによって制御することより、トラクション制
御、前後制動力配分制御、制動操舵制御等を行なうこと
ができる。
【0030】上記のように構成された制動制御装置にお
いては、電動モータ42によって液圧ポンプ41が駆動
され、アキュムレータ44にパワー液圧が蓄圧されてい
る。各電磁弁が図1に示す状態にあるときにブレーキペ
ダル5が踏み込まれると、マスタシリンダ2からマスタ
シリンダ液圧が出力されると共に、レギュレータ3から
レギュレータ液圧が出力される。そして、電子制御装置
10により制動制御の一連の処理が行なわれ、車両が走
行中、図2及び図3のフローチャート等に対応したプロ
グラムが実行される。
【0031】図2において、先ずステップ101にてイ
グニッションスイッチ(図示せず)がオンと判定される
と、ステップ102に進みイニシャルチェックが行なわ
れる。具体的には、電動モータ11の状態、トランスミ
ッション12の状態及びバッテリー13の状態の検出結
果に基づき回生制動を行なう条件を充足しているか否か
が判定される。例えば、極低速走行時、バッテリー満充
電時、故障時及びニュートラルシフト位置にある時に
は、回生制動を行なう条件を充足していないと判定さ
れ、適宜警報が行なわれる。
【0032】開始条件を充足していればステップ103
に進み、高速時の液圧制御を行なう条件を充足している
か否かが判定され、充足しておればステップ104,1
05に進み、別途サブルーチン(図示せず)に従って車
両の高速走行時に特有の回生制動制御及び液圧制御が行
なわれ、充足していなければステップ106に進む。ス
テップ106においては、低速時の液圧制御を行なう条
件を充足しているか否かが判定され、充足しておればス
テップ107,108に進み、別途サブルーチン(図示
せず)に従って車両の低速走行時に特有の回生制動制御
及び液圧制御が行なわれ、充足していなければそのまま
ステップ109に進む。而して、ステップ109にてイ
グニッションスイッチ(図示せず)がオフと判定される
まで、ステップ103に戻り上記の制御が繰り返され
る。
【0033】図3は、図2のステップ105,108で
実行される各液圧制御において共通して行なわれる処理
を示すもので、先ずステップ201にてブレーキスイッ
チ6がオンか否かが判定される。ブレーキスイッチ6が
オンであればステップ202に進みトランスミッション
12のシフト位置が判定され、ドライブ位置(D)又は
モータブレーキ位置(B)であればステップ203に進
む。尚、モータブレーキ位置(B)は電動自動車特有の
シフト位置で、この位置ではブレーキ操作は行なわれな
いがエンジンブレーキと同様の状態となる。
【0034】ステップ203では、圧力センサ24の検
出出力であるマスタシリンダ液圧が電子制御装置10の
メモリに記憶される。車両の減速度はマスタシリンダ液
圧に略比例するため、制動時のマスタシリンダ液圧に基
づき車両の制動状態を判定することができる。尚、ステ
ップ201,202においてNOと判定されたときには
そのままメインルーチンに戻る。
【0035】続いてステップ204,205に進み、例
えば図7及び図8に示したマップが参照され、その時の
マスタシリンダ液圧に応じた保持時間と増圧時間が設定
される。図7及び図8から明らかなように、マスタシリ
ンダ液圧が高いときには保持時間は短く増圧時間が長く
され、ホイールシリンダ液圧の増圧勾配は急峻となる
が、マスタシリンダ液圧が低いときには保持時間は長く
増圧時間が短くされ、増圧勾配は緩やかとされる。この
ようにして設定された保持時間及び増圧時間に基づき前
述のモジュレータMD内の電磁弁が制御され、ホイール
シリンダ液圧が所定の液圧勾配となる。
【0036】ここで、図7及び図8に示したマップは、
図9に示す関係に基づいて予め設定され、電子制御装置
10のメモリに記憶されている。即ち、図9の(A)に
示す要求制動トルク(要求制動力)の低減量に応じて、
図9の(B)に示すそのときのマスタシリンダ液圧の値
から必要な液圧勾配が定まる。而して、この液圧勾配に
応じて、図7及び図8に示したマップが設定され、電磁
弁が(D)のように制御され、ホイールシリンダ液圧が
(C)に示すように昇圧される。
【0037】図4は、本発明の実施形態において、図
2のステップ104,107で実行される回生制動制御
に共通の処理を示すものでステップ301及びステッ
プ302は図3のステップ201及びステップ202と
同様であり、ドライブ位置(D)又はモータブレーキ位
置(B)であればステップ303に進む。本実施形態で
は、電動モータ11の回転数(車両の速度に対応)に応
じて所定の回生制動トルクを発生するように、モータ回
転数とマスタシリンダ液圧とを対応させた回生制動トル
ク低減マップがメモリに格納されている。また、ブレー
キ液圧に対して回生制動トルクを係数化したブレーキ係
数(例えば、回生制動トルク120N・mをブレーキ係
数1.0とする)が例えば図10に示すように設定さ
れ、メモリに格納されている。
【0038】そして、ステップ303において、そのと
きのマスタシリンダ液圧から求めたモータ回転数に対応
するトルクと、マスタシリンダ液圧から求めたブレーキ
係数に対応するトルクとが比較される。後者のトルクの
ほうが前者のトルクより大であれば、ステップ304に
進みブレーキ係数が選択され、ステップ305において
回生制動トルク低減マップ演算が行なわれる。回生制動
トルク低減マップは、低速で回生制動トルクを強制的に
低減するもので、マスタシリンダ液圧に応じて、回生制
動トルクの低減を開始するモータ回転数が設定される。
而して、この回生制動トルク低減マップに基づいて設定
されたモータ回転数で、ステップ306において回生制
動トルク低減が開始される。
【0039】一方、ブレーキ係数に対応するトルクのほ
うがマスタシリンダ液圧から求めたモータ回転数に対応
するトルクより大であれば、ステップ307に進み回生
制動トルク低減マップが選択され、ステップ308にお
いて回生制動トルク低減マップ演算が行なわれる。そし
て、ステップ309において、回生制動トルク低減マッ
プに基づき、マスタシリンダ液圧に応じたモータ回転数
(車両の速度)で、回生制動トルク低減が開始される。
【0040】而して、マスタシリンダ液圧が高いときに
はモータ回転数が高い領域(高車速)から回生制動トル
クの低減が行なわれ、マスタシリンダ液圧が低いときに
はモータ回転数が低い領域(低車速)から回生制動トル
クの低減が行なわれる。図11はこの間の制御状況を示
すもので、a点でブレーキ操作が開始し、マスタシリン
ダ液圧の値に応じて回生制動トルク低減マップ(図示せ
ず)からモータ回転数が選択され、そのモータ回転数に
達した時に(例えばc点で)回生制動トルクの低減が開
始する。従って、例えばマスタシリンダ液圧の値に応じ
て選択されたモータ回転数がb点での回転数(即ち、c
点での回転数より高い回転数)であれば、その回転数に
達した時に(即ち、モータ回転数が低いときのc点より
早いb点で)回生制動トルクの低減が開始し、図11に
二点鎖線で示すように回生制動トルクの低減が行なわれ
る。
【0041】換言すれば、緩やかなブレーキ操作時(c
点)より急激なブレーキ操作時(b点)の方が、回転数
が高いときから(即ち、早い時期から)回生制動トルク
の低減が開始することになる。而して、液圧制動のみの
時間を一定にすることができ、停止時のブレーキ液の抜
きが容易であり、また停止時の車両に対する衝撃を緩和
することができる。尚、図11においてx点とy点の間
の領域(z)は、本実施形態における回生制動トルク低
減マップに基づいて回生制動トルク低減を開始するモー
タ回転数の範囲を示すものである。また、図11の破線
はホイールシリンダ液圧を示す。
【0042】図5は、図4に示す実施形態における回生
制動制御と共に行ない得る回生制動制御処理を示すも
のでマスタシリンダ液圧に対応する回生制動トルクの
低減勾配が予め設定された回生制動トルク低減勾配マッ
プ(図示せず)がメモリに格納されている。ステップ4
01及びステップ402は図3のステップ201及びス
テップ202と同様であり、ドライブ位置(D)又はモ
ータブレーキ位置(B)であればステップ403に進
む。ステップ403においては、電動モータ11の回転
数が所定の回転数Kn(例えば、1000rpm)と比
較され、所定の回転数Knを越えておればそのままメイ
ンルーチンに戻るが、所定の回転数Kn以下であればス
テップ404に進む。
【0043】ステップ404においては、車両の制動状
態を判定するため、圧力センサ24の検出出力であるマ
スタシリンダ液圧が電子制御装置10のメモリに記憶さ
れる。そして、ステップ405に進み、上記回生制動ト
ルク低減勾配マップに基づき、そのときのマスタシリン
ダ液圧に応じた回生制動トルクの低減割合(勾配)が選
択される。このようにして選択された回生制動トルクの
低減勾配が得られるように、ステップ406にて回生制
動トルクが低減されると共に、ステップ407にてレギ
ュレータ3からサブシリンダ70にレギュレータ液圧が
供給され、ホイールシリンダ液圧が制御される。
【0044】而して、例えば図12に示すように、a点
でブレーキ操作が行なわれ、b点で回生制動トルクの低
減が行なわれるときにマスタシリンダ液圧が高い場合に
は、回生制動トルクの低減勾配(α)は急峻に設定され
る。これに対し、図13に示すようにマスタシリンダ液
圧が低い場合には回生制動トルクの低減勾配(β)は緩
やかに設定される。尚、図12及び図13において、破
線はホイールシリンダ液圧を示す。
【0045】
【発明の効果】本発明は上述のように構成されているの
で以下の効果を奏する。即ち、本発明の電動車両の制動
制御装置によれば、回生制動から液圧制動への移行を円
滑に行なうことができ、ブレーキ操作状態によるブレー
キフィーリングの変化を抑え、ブレーキ操作時の違和感
を緩和することができる。特に、車両の制動状態に応じ
て回生制動トルクの低減への切換条件、例えば回生制動
トルクの低減への切換を開始する車両速度を設定するこ
とができ、急制動時と緩制動時とでブレーキフィーリン
グが大きく変化することはなく、違和感を緩和すること
ができる。
【0046】
【0047】
【0048】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動車両の制動制御
装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態における制動制御の処理を
示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態における液圧制御の処理を
示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における回生制動制御の処
理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態における回生制動制御と共
に行ない得る回生制動制御の処理を示すフローチャート
である。
【図6】本発明の一実施形態における第1及び第2のリ
リーフバルブ、プロポーショニングバルブ及び電磁開閉
弁によるマスタシリンダ液圧とホイールシリンダ液圧の
関係を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態におけるマスタシリンダ液
圧と保持時間の関係を規定するマップを示すグラフであ
る。
【図8】本発明の一実施形態におけるマスタシリンダ液
圧と増圧時間の関係を規定するマップを示すグラフであ
る。
【図9】本発明の一実施形態における要求制動トルクに
応じて液圧勾配が定まる状態を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態の回生制動制御における
ブレーキ係数とブレーキ液圧の関係を規定するマップを
示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態の回生制動制御における
モータ回転数、マスタシリンダ液圧、及び回生制動トル
クの関係を示すグラフである。
【図12】本発明の実施形態の回生制動制御と共に行
ない得る回生制動制御におけるモータ回転数、マスタシ
リンダ液圧、及び回生制動トルクの関係を示すグラフで
ある。
【図13】本発明の実施形態の回生制動制御と共に行
ない得る回生制動制御におけるマスタシリンダ液圧と回
生制動トルクの関係を示すグラフである。
【符号の説明】 2 マスタシリンダ 3 レギュレータ 5 ブレーキペダル 10 電子制御装置 11 電動モータ 20,30 液圧制限切換装置 21 第1のリリーフバルブ 22 電磁開閉弁 23,33 プロポーショニングバルブ 24,25 圧力センサ 26 第2のリリーフバルブ 27 電磁開閉弁 32 電磁開閉弁 40 補助液圧源 51,52,53,54 ホイールシリンダ 61 電磁開閉弁 FR,FL,RR,RL 車輪
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 良教 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイ シン精機株式会社内 (72)発明者 浦馬場 真吾 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 大堀 治美 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−98314(JP,A) 特開 平7−250402(JP,A) 特開 平5−161213(JP,A) 特開 平5−161215(JP,A) 特開 平8−98313(JP,A) 特開 平6−153314(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60L 7/24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の車輪に連結する電動モータと、前
    記車両に搭載する電池と、該電池を電源として前記電動
    モータを回転駆動し前記車輪に駆動力を付与すると共
    に、前記電動モータの回生制動により前記車輪に制動力
    を付与するモータ制御手段と、前記車輪に装着したホイ
    ールシリンダに対しブレーキ操作部材の操作に応じてブ
    レーキ液圧を供給する液圧制動により前記車輪に制動力
    を付与する液圧制御手段とを備えた電動車両の制動制御
    装置において、前記車両の制動状態を判定する制動状態
    判定手段と、該制動状態判定手段が判定した前記車両の
    制動状態に応じて前記モータ制御手段による回生制動ト
    ルクを低減する回生制動トルク低減手段と、前記制動状
    態判定手段が判定した前記車両の制動状態に応じて前記
    回生制動トルク低減手段による回生制動トルクの低減へ
    の切換条件を設定するトルク低減切換条件設定手段とを
    備えたことを特徴とする電動車両の制動制御装置。
  2. 【請求項2】 前記制動状態判定手段は、前記車両に対
    する要求制動力を検出する要求制動力検出手段を具備
    し、前記トルク低減切換条件設定手段は、前記要求制動
    力検出手段が検出した要求制動力に応じて前記回生制動
    トルク低減手段による回生制動トルクの低減への切換を
    開始する前記車両の速度を設定することを特徴とする請
    求項記載の電動車両の制動制御装置。
  3. 【請求項3】 前記制動状態判定手段は、前記液圧制御
    手段における前記ブレーキ操作部材の操作に応じて前記
    ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を検出する液
    圧検出手段を具備し、該液圧検出手段が検出したブレー
    キ液圧に応じて前記回生制動トルク低減手段による回生
    制動トルクの低減への切換を開始する前記車両の速度を
    設定することを特徴とする請求項記載の電動車両の制
    動制御装置。
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