JP3501529B2 - 光学式変位測定装置 - Google Patents

光学式変位測定装置

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JP3501529B2 JP30812394A JP30812394A JP3501529B2 JP 3501529 B2 JP3501529 B2 JP 3501529B2 JP 30812394 A JP30812394 A JP 30812394A JP 30812394 A JP30812394 A JP 30812394A JP 3501529 B2 JP3501529 B2 JP 3501529B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学式変位測定装置に関
し、特に移動物体に設けた回折格子に照射された光束が
回折、散乱されるとき、その回折、散乱光束が物体の変
位や移動速度に応じた位相変調作用を受けることを利用
した、物体の変位や速度を測定するエンコーダ、速度セ
ンサ、加速度センサ、長さ測定装置等に好適に適用し得
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来より高精度に物体の移動量や変位量
などを求める装置として光を物体に設けた回折格子に照
射してそこから回折、散乱された光束の干渉を利用す
る、たとえば光学式エンコーダ、レーザドップラー速度
計、レーザ干渉計等の光学式変位測定装置が利用されて
きた。
【0003】これらの光の干渉を利用した光学式変位測
定装置の特徴は、光の波長オーダーの高精度、高分解能
が得られることであるが、より広い分野に応用するには
装置の小型化(ミリオーダーのサイズ)、干渉光学系の
安定化、『取り扱いやすさ』および耐久性の向上が必要
である。
【0004】光学式変位測定装置として小型化を図った
ものが例えば実開平1-180615号公報、 特開昭62-121314
号公報、 特開平3-279812号公報で提案されている。
【0005】図16は、実開平1-180615号公報に開示さ
れた光学エンコーダの説明図である。同図において光源
42から発散された光束は、基板46の穴46Aを通
り、スリットアレイ14によって線状光線アレイに変換
され、メインスケール40上の格子に照射される。そし
て、その底面12から反射される光束によってインデッ
クス格子16上にスケール40の格子が投影され、両者
の幾何学的重なりによって基板46上の受光素子48へ
入射する光量が変調されることを測定原理としている。
この原理によると小型化できるが、分解能には限界があ
る。
【0006】図17は、特開昭62-121314 号公報に開示
された光学式エンコーダの説明図であり、回折格子を3
枚使ったエンコーダの基本光学系(英国特許公開公報第
1474049 号)を小型化するための1つの有効な改善構成
例である。同図において発光素子51から発散された光
束は、レンズ52によって平行光束にされ、インデック
ススケールA上の格子GK(A)を透過する際に回折さ
れ、3方向に向かう回折光束を生じる。
【0007】次いでスケールBの格子GK(B)にて各
々の光束が回折され、相対移動による位相変調を受けて
インデックス格子A上の格子GK(A)に戻されて、イ
ンデックス格子4による回折により3組の干渉光束が発
生し、異なる方位に設けた受光素子へ入射する。この構
成により、小型化と高分解能を両立させている。
【0008】図18は、特開平3-279812号公報に開示さ
れたよる光学式エンコーダの説明図であり、高精度と簡
易小型化にするために有効な例である。図中、61は発
光素子、62はレンズ、63、64は回折格子、65a
は受光素子である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来例
の光学式変位測定装置はいずれも小型化、高精度化され
ているが、共通して以下のような課題が存在する。
【0010】これらは何れも発光素子から射出された
光を左右に2分割、叉はそれ以上に分割し、その干渉光
束を受光素子で受光している。しかし、回折格子で回折
された複数の光束の干渉状態をすべて等しく、一定状態
に調整する事は非常に困難である。その結果、領域が異
なる部分から得られる干渉信号の振幅と位相差は安定し
ない。
【0011】また同一の干渉光束内で分割される光束
も本体分解能を向上させればさせるほど、取付誤差等の
影響で干渉状態が変動し易くなり、各相から出力される
位相差が不安定になる。よって、この様な構成をとる限
り、高分解能の変位測定装置を構成するのは実用上困難
である。
【0012】発光源が拡がりを持っている場合、平行
光を作り出す事は困難である。
【0013】以下では図18に示す従来の光学式エンコ
ーダーの様な3枚の回折格子を使用する場合、投光手
段、受光手段、第1の回折格子と第3の回折格子とが設
けられたヘッド部と被測定物体に取り付けられ、第2の
回折格子を有するスケール部との相対的な取り付け誤差
によって発生する干渉状態の変動について説明する。
【0014】図19は3格子型の光学式変位測定装置の
要部概略図である。図中、1は発光素子、3は受光素
子、20は被検移動物体に設置したスケールである。G
1は光束分割用の回折格子、G2はスケールに設置され
た回折格子、G3は光束重畳用の回折格子である。3つ
の回折格子のピッチは同じで、以後回折格子のピッチを
Pと表示する。
【0015】この部分の動作を説明する。発光素子1か
ら出射した光束は回折格子G1で透過回折を受け、複数
の光に分かれる。そのうち0次回折光R0 は直進してが
スケール20に入射し、回折格子G2に入射する(その
中心光線は点P1に入射する)。この光束はここで反射
回折を受けて複数の光束に分かれる。同時にこれらの光
束はスケールの移動△xによって+2π△x/Pの位相
変調を受ける。これらの光束のうちの+1次回折光R0+
1 が回折格子G3に向かい、回折格子G3に入射する
(その中心光線は点O3に入射する)。この光束はここ
で透過回折を受けて再び複数の光束に分かれ、そのうち
の−1次回折光R0+1-1 が回折格子G3から垂直に出射
する。この光束は+2π△x/Pの位相のずれを有して
いる。
【0016】一方、回折格子G1で回折した光のうち+
1次回折光R+1は斜めに進んでスケール20に入射する
(その中心光線は点P2に入射する)。この光束はここ
で反射回折を受けて複数の光束に分かれる。同時にこれ
らの光束はスケールの移動△xによって−2π△x/P
の位相変調を受ける。これらの光束のうちの−1次回折
光R+1-1が回折格子G3に向かい、ここで透過回折を受
けて再び複数の光束に分かれ、そのうちの0次回折光R
+1-10 が回折格子G3から垂直に出射する。この光束は
−2π△x/Pの位相のずれを有している。
【0017】回折格子G3から垂直に出射する2つの光
束は夫々+2π△x/Pと−2π△x/Pの位相のずれ
をもっているので、2つの光束が干渉すると4π△x/
Pの位相差が生じる。従って△x=P/2、即ち回折格
子G2の1/2ピッチの移動で1周期の明暗が発生す
る。この明暗を受光素子3からの信号でもってカウント
してスケール20の移動量を測定している。
【0018】図19は3つの回折格子が理想的な配置で
設定されている図である。この配置に於いてXYZ座標
系を図19に図示するように設定する。即ち原点を回折
格子G2面内に、X軸は格子配列方向に、Y軸は格子線
方向に、Z軸はX,Y軸に直交して設ける。この理想的
配置においてはX−Y平面は回折格子G2面である。
尚、3つの回折格子は夫々の格子線方向及び格子配列方
向が一致しているので、以後格子線方向はY方向、格子
配列方向はX方向と呼ぶこととする。
【0019】図19の理想的配置に対して回折格子G2
の取付誤差は、3軸X,Y,及びZ軸の回りの回転とし
て発生する。本明細書においてはY軸を軸とする回折格
子G2の回転取付誤差を『カイテン角(φ)』と、また
Z軸を軸とする回折格子G2の回転取付誤差を『アジマ
ス角(η)』と呼ぶ事にする。
【0020】3格子型の光学式変位測定装置の場合、図
10に示すアジマス角ηの取付誤差によって干渉2光
束、R0+1-1 とR+1-10 の角度差θは図12の様にな
り、図11に示すカイテン角の取付誤差により干渉2光
束の角度差は図13の様になる。平行光を用いた場合、
図11のカイテン角の取付誤差について、干渉2光束の
角度差はあまり生じないが(取付誤差の1/100 以下)、
図10のアジマス角の取付誤差があれば干渉2光束の角
度差が図12の様に大きくつき、干渉状態が不安定とな
ってしまう。例えば回折格子のピッチが1.6 μm で、光
の波長が0.78μm 、センサの大きさが1mm×1mmの場
合、アジマス角が40秒程度の時、2光束の角度差が同
じ40秒程度となり、受光素子3上ではピッチ2mmの干
渉縞が現れ、出力が10%減少する。
【0021】この様な問題を解消するには、点光源から
射出される光束や面光源から射出される光束を特定の光
束とすることが考えられる。しかしながら点光源から射
出される光束や面光源から射出される光束を所望の光束
状態に変換する為には、複雑な光学系もしくは光学素子
が必要であった。
【0022】本発明の目的は、従来の光学式変位測定装
置を改良し、簡単な構成であって精度の安定した取扱い
易い光学式変位測定装置を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明の光学式
変位測定装置は、レーザー光源と前記レーザー光源から
射出された光束の集束、発散状態を変換する光学素子
、前記変換された光束を複数の光束に分割する第1の
回折格子と、前記第1の回折格子で分割された複数の光
束を変調する第2の回折格子が設けられた変位可能なス
ケールと、前記スケールから得られた複数の変調光束同
士を合成し、干渉光束を得るための第3の回折格子と、
該干渉光束を受光する受光手段と、を有し、前記レーザ
ー光源から射出される光束は前記第1の回折格子の格子
線配列方向の長さが前記第1の回折格子の格子線方向よ
りも長くなるよう配置されたことを特徴としている。
求項2の発明は、請求項1の発明において前記第1の回
折格子により分割された2光束を該第3の回折格子で合
成するまでの過程で、該第2の回折格子から該第3の回
折格子までの分離された2光束の光路長を夫々L1,L
2とするとき、前記投光手段は前記第1の回折格子の格
子線の方向のみに関して該第1の回折格子から分離され
た2光束の各々に沿って、光路長が(L1+L2)/2
の位置に対応する領域において集束するように光束の集
束・発散状態を変換することを特徴としている。請求項
3の発明は、請求項1又は2の発明において前記レーザ
ー光源は発光素子と前記光学素子との間に開口を有する
遮光マスク有することを特徴としている。請求項4の発
明は、1、2又は3の発明において前記光学素子は前記
第2の回折格子の格子線方向に収束するように配置され
たことを特徴としている。
【0024】 請求項5の発明の光学式変位測定装置
は、発光素子から射出された光束の集束、発散状態を変
換する光学素子と光束を分割する第1の回折格子とから
成る投光手段、該投光手段からの光を変調する第2の回
折格子が設けられた変調手段、そして該変調手段からの
変調光同士を合成し、干渉光束を得る第3の回折格子と
該干渉光束を受光する受光素子とから成る受光手段とを
有する光学式変位測定装置において、前記第1の回折格
子により分割された2光束を該第3の回折格子で合成す
るまでの過程で、該第2の回折格子から該第3の回折格
子までの分離された2光束の光路長を夫々L 1 ,L 2
するとき、前記投光手段は前記第1の回折格子の格子線
の方向のみに関して該第1の回折格子から分離された2
光束の各々に沿って、光路長が(L 1 +L 2 )/2の位
置に対応する領域において集束するように光束の集束・
発散状態を変換することを特徴としている。
【0025】
【実施例】図1は本発明の実施例1の要部斜視図であ
り、図2はその要部概略図であり、図3は実施例1の発
光部の形状図である。図中、1は発光素子であり、所謂
面発光レーザより構成し、その形状は図3に示す形状で
ある。3は受光素子、G1は発散光束を分割するための
回折格子(第1の回折格子)、G2は被測定物体に設置
されたスケール20に設置している回折格子(第2の回
折格子)、G3は光束を重畳するための回折格子(第3
の回折格子)、4は発光素子から射出した光束をY方向
に集光するシリンドリカルレンズである。
【0026】発行素子1とシリンドリカルレンズ4、そ
して第1の回折格子G1は投光手段の一要素を構成し、
第2の回折格子G2は変調手段の一要素を構成し、第3
の回折格子G3と受光素子3は受光手段の一要素を構成
している。なお、投光手段と受光手段はヘッド部の一要
素を構成している。
【0027】次に実施例の動作についてを説明する。発
光素子1から射出する光束は発光素子が面発光レーザで
ある為に基本的に平行光である。面発光レーザの形状が
図3に示すようにX方向に長く、Y方向に短いので発光
素子1から射出する光束はY方向には幾分発散光束にな
る。この発散光束は、シリンドリカルレンズ4によって
YZ面内では 回折格子G2近傍で結像する集束光束に
変換され、回折格子G1に入射する(その中心光線は回
折格子G1上の点O1に入射する)。この光束はここで
透過回折されて、0次回折光R0 、+1次回折光R+1、
−1次回折光R-1(不図示)に3分割されて射出する。
本実施例の場合、0次回折光R0 と+1次回折光R+1の
みを利用する。
【0028】回折格子G1を直進した0次回折光R0
は、回折格子G2に入射する(その中心光線はの点P1
に入射する)。この光束はここで反射回折を受けて、+
1次回折光R0+1 、−1次回折光R0-1 (不図示)に分
割されると同時に回折格子G2によって位相変調され
る。本実施例ではこの内+1次回折光R0+1 のみを利用
する。この+1次回折光R0+1 の位相は+2π△x/P
だけずれる。但しここで△xは回折格子G2の移動量で
ある。
【0029】+1次回折光R0+1 は一度位置C0 でY方
向に集光し、次いで回折格子G3に入射する(その中心
光線は点O3に入射する)。この光束はここで透過回折
されて、0次回折光R0+10(不図示)、−1次回折光R
0+1ー1 およびその他の光束の分かれ、このうち−1次回
折光R0+1-1 は回折格子G3面から垂直に出射する。そ
して、波面の位相は+2π△x/Pずれている。
【0030】回折格子G1にて+1次回折した光束R+1
は、一度位置C1 でY方向に集光して回折格子G2に入
射する(その中心光線は点P2に入射する)。この光束
はここで反射回折されて−1次回折光R+1-1、0次回折
光R+10 およびその他の光束に分かれる。本装置ではこ
の内の−1次回折光R+1-1のみを利用する。尚、ここで
反射回折した光束は同時にそれぞれ位相変調される。即
ち−1次回折光R+1-1の位相は、−2π△x/Pだけず
れる。そして、この光束は回折格子G3に入射する(そ
の中心光線は点O3に入射する)。この光束はここで透
過回折を受ける。そのうちここで直進して回折格子G3
から垂直に出射する0次回折光R+1-10の波面の位相は
−2π△x/Pずれている。
【0031】そこで回折格子G3にて光路を重ね合わさ
れた光束R+1-10 と光束R0+1-1 は、干渉光となって受
光素子3に入射する。このときの干渉位相は、 {+2π△x/P}−{−2π△x/P}=4π△x/P となり、スケールに設置された回折格子G2が格子の配
列方向に1/2ピッチだけ移動すると1周期の明暗信号
が発生する。以上が実施例1の動作である。
【0032】次に図10及び図11に示すようにスケー
ル20にアジムス角ηやカイテン角φの取付誤差がある
とき、回折格子G3から出射する干渉2光束の角度差θ
と、光の波長/格子のピッチ=λ/P=sとの関係を説
明する。
【0033】図10において、発光素子1から射出され
た光の内、回折格子G1に垂直に入射する光線が回折格
子Gn、(n=1〜3)に入射する際の方向ベクトルを
n-1 (un-1,x 、un-1,y 、un-1,z )とし、mを回
折次数とすると、回折格子Gnを透過回折したm次光の
方向ベクトルun (un,x 、un,y 、un,z )は以下の
関係を満たす(Pn,x 、Pn,y は回折格子Gnの格子ピ
ッチPのX,Y方向成分である。)。
【0034】un,x =un-1,x +mλ/Pn,xn,y =un-1,y +mλ/Pn,y (1) un-1,x 2+un-1,y 2+un-1,z 2=1 un,x 2+un,y 2+un,z 2=1 この関係を基礎にして、アジマス角ηとカイテン角φが
発生したときに回折格子G3を透過回折して干渉し合う
2光束、即ち光束R+1-10 と光束R0+1-1 の角度差θを
演繹すると以下のようになる。
【0035】θ= Cos-1[(2s)2・(Cos η−1)+1] θ=−φ− Sin-1{s + Sin[φ−Sin-1(s)]}+ Sin
-1{s + Sin[φ−Sin -1(s − Sinφ)]} ここでη、φを1度以下の微小角とし、2次までの近似
を取ると、 θ=2s・ η (2) θ=s・φ2 /[(1-s2)1/2 ] (3) となる。以上の(2) 、(3) 式によってη−s −θ、φ−
s −θの関係を求めて図示したものが、図12及び図1
3である。
【0036】さらに、θのX成分及びY成分を求めると
2つの干渉光束の方向が判り、その結果受光素子面上に
現れる干渉縞の向きも定まる。それによれば、アジマス
角ηが発生したときの干渉2光束、即ち光束R+1-10 と
光束R0+1-1 の角度差θはY−Z面内で生じ、受光素子
3面上には図10に図示するような干渉縞が発生する。
又カイテン角φが発生したときの2つの干渉光束の角度
差θはX−Z面内で生じ、受光素子3面上には図11に
図示するような干渉縞が発生する。
【0037】図12(A)はη−s−θの関係図であ
り、図12(B)は s=λ/ P=0.78μm/1.6 μm =0.4875 の場合のη−θ図である。この場合、アジマス角η=40
秒に対して2光束の角度差θはアジマス角と同じ40秒
となる。
【0038】図13(A)はφ−s−θの関係図であ
り、図13(B)はs=0.4875の場合のφ−θ図であ
る。この場合、カイテン角φ=10分に対して2光束の角
度差θは約0.02分でカイテン角の2/1000で、殆ど角度差
θは無く、2つの光束は平行光と見なせる。
【0039】以上の解析から判るように、アジマス角η
の取付誤差によって干渉2光束の角度差θはアジマス角
と同じオーダーになる。これによって受光素子3に入射
する干渉光束は受光素子3面内に図10に示すような多
数の干渉縞を生じ、本来受光素子3全面が一様な明るさ
で回折格子G2の移動によってのみ,その明るさが一様
に変化すべきものが、多数の干渉縞が受光素子3上を横
切って移動することになり、受光素子3より得られる干
渉信号の最大値〜最小値の巾が小さくなる。
【0040】次に平行2光束による干渉縞と、発散2光
束による干渉縞がどの様に発生するかについて説明す
る。
【0041】図9は平行波と球面波の干渉の違いを示し
た説明図である。図9(B)のような平行2光束干渉に
おいて、干渉縞のピッチPF は、2光束の主光線の角度
差θと光線の波長λによって定まり、その関係は、 PF =λ/{2・Sin(θ/2)} となる。
【0042】また図9(A)のように干渉2光束が発散
球面波の場合、干渉縞のピッチPFは干渉2光束の主光
線間の角度θに関係なく、2光束の集光点A、Bからセ
ンサ(観測面)までの距離によって変化し、2光束の集
光点A、Bからセンサ(観測面)までの光路長LA 、L
B と、光の波長λに依存している。このとき、この2光
束の集光点A,Bからセンサ(観測面)までの光路長を
A 、LB とすると、LA とLB の差△L(△L=LA
−LB )が波長の整数倍のときセンサ面上で光が強め合
い(明るくなり)、波長の整数倍プラス半波長のとき光
は弱め合う(暗くなる)。図9(A)中、A,Bを結ぶ
線分の垂直2等分線とセンサ面との交点P0 においては
△Lは0であり、点P1 において△L=λとなるとする
と、このP0 〜P1 の間隔が干渉縞のピッチPF であ
る。
【0043】次に本実施例においてヘッド部とスケール
部に取付誤差を生じたときに干渉2光束がどういう状態
になるかを説明する。
【0044】本実施例において、回折格子G2に取付誤
差がある場合に、発光素子1を射出して回折格子G1に
垂直に入射する光線が回折格子G1で2つに別れ、夫々
回折格子G2のP1,P2で回折を受けて回折格子G3
に入射し、回折格子G3から夫々光束R+1-10 と光束R
0+1-1 の中心光線として出射した際の両中心光線の交差
する位置迄の距離LC (交差位置)を求める。ここで交
差位置LC は、回折格子G3を原点とし、その符号は受
光素子3の方向をマイナス、回折格子G2の方向をプラ
スと定義する。
【0045】中心光線のベクトルの変化を(1) 式によっ
て求め、(3) 式によって光線間の角度差θを計算し、こ
れによって交差位置LC を求める。P2点からO3点迄
の光路長L2,3 を単位長さとして表すと、回折格子G2
にアジマス角ηの取付誤差を生じたときの交差位置LC
は図14に図示する様になる。即ち回折格子G2にアジ
マス角ηの取付誤差を生じると、干渉する2光束がY方
向に角度差を生じ、夫々の中心光線は回折格子G2の近
傍で交差している。図14(B)はs=0.4875の場合の
中心光線の交差位置LC の図である。この場合、交差位
置LC は約1.07xL2,3 の光路長の所にある。この
交差位置は、分離した2つの光束R-1+10とR0-1+1の夫々
第2の回折格子G2から第3の回折格子G3までの光路
長を各々L1 及びL2 とすると略(L1 +L2 )/2に
対応する位置である(L1 は点P1から点O3までの、
又L2 は点P2から点O3までの光路長である)。
【0046】一方カイテン角φの取付誤差を生じたとき
の交差位置LC は図15に図示する様になる。回折格子
G2にカイテン角φの取付誤差が生じると、干渉2光束
がX方向に分離するが、角度差が小さいので図15
(A)に示すように夫々の中心光線の交差点は遥か遠方
になる。図15(B)はs=0.4875の場合の中心光線の
交差位置LC を示す図である。
【0047】そこで、本実施例においてはヘッド部とス
ケール部に取付誤差が生じることを想定して、以下のよ
うにしてその場合の2光束の干渉状態を安定させてい
る。
【0048】X方向に関しては発光素子1をX方向に長
い、所謂面発光レーザで構成して、射出光が略平行光
(略平面波)、もしくは極めて大きい曲率半径を有する
球面波となるように装置を構成している。これは図13
から分かるように、回折格子G2にカイテン角φの取付
誤差があっても干渉2光束の角度差θはあまり付かない
が、2光束は分離してしまう。このため、この方向に2
光束が曲率半径の小さい球面波となっていると干渉縞が
立ち易くなり、干渉状態が不安定になる。ところが干渉
2光束がこの方向で平面波、もしくは平面波と見なせる
程大きい曲率半径の球面波であると2光束の角度差θが
あまり大きくならないので干渉縞が立ちにくく、干渉状
態が安定になる。そこでX方向、即ち格子配列方向に対
しては波面を略平面にして干渉縞が立ちにくくし、干渉
状態を安定させている。
【0049】一方Y方向に関しては発光素子1をY方向
に短く構成し、これによってY方向にはやや発散する光
束を射出させ、これをシリンドリカルレンズ4によって
Y方向、即ち格子線方向に集束する光束に変換する。こ
の集束光束は回折格子G1より光路長L3 =(L1 +L
2 )/2の距離で交差即ち集光するように設定する。こ
の集光位置C0 ,C1 は回折格子G3に対してはアジム
ス角ηのあるときの交差位置LC の位置と略同じにな
る。
【0050】Y方向に関しては図14より明らかなよう
に、s<0.8 の領域ではアジマス角ηに関わらず2光束
の交差位置LC はほぼ一定である。しかし、図12
(B)に図示されるようにアジマス角ηの取付誤差が発
生すると干渉2光束の角度差θはηに比例して発生す
る。そこで発光素子1から射出した光束がY方向に集光
するようにし、その集光位置C0 ,C1 を回折格子G3
から測って干渉2光束の交差位置LC の位置と同じにす
ると、干渉2光束の角度差θが大きくとも2つの波面が
θに関係なく重なり合い、受光素子3面上の各点におい
て干渉2光束の光路長がアジマス角ηに関係なく常に一
定になる。そこで干渉縞が立ちにくくなり、受光素子3
面上での干渉状態が略一定で安定になる。これは図9
(A)において2光束の集光点をA,B点からC点に移
し干渉縞の発生を防いだことに相当する。
【0051】もし、発光素子の発光部がY方向に大きい
と、集光位置C0 、C1 においても結像する発光部が大
きくなり、従って受光素子3面上に到達する干渉光は、
Y方向に関してきれいな球面波とはならず、受光素子3
面上の干渉状態はアジマス角ηの変化に対し不安定にな
る。
【0052】本実施例のように発光部のY方向の大きさ
を小さくすると(X方向にはSX =100 μm、、Y方向
にはSY =10μm程度の長方形状)、集光位置C0 、C
1 における発光部の結像サイズはY方向には小さくな
り、その結果受光素子3面上に到達する干渉光はきれい
な球面波となる。従って、受光素子3面上の干渉状態は
アジマス角ηの変化に対し安定になる。またX方向に関
してはSX がSY と比べてかなり大きいので(図3でS
X とSY のサイズは一桁以上異なる大きさでSXの大き
さを受光するセンサのSX 方向の大きさ程度にすると効
果的である)、受光素子3に入射する光束は平行光に近
い弱発散光となる。従って、受光素子3面上の干渉状態
はカイテン角φの変化に対し安定になる。
【0053】以上の構成によって実施例1は次の効果を
得ている。
【0054】A. スケール部の取付角度誤差(アジム
ス角、カイテン角)による干渉状態の変動がおきない、
精度の安定した取扱い易い光学式変位測定装置を構成す
る事ができる。
【0055】B. 光学系が非常にシンプルな構成であ
り、ヘッド部が発光源、受光素子、シリンドリカルレン
ズのみで出来ているために、部品点数が少なく組立が簡
単となり、ローコストでしかも小型な光学式変位測定装
置を構成することが出来る。
【0056】C. 発光素子を所謂面発光レーザで構成
し、その発光部をX方向に長くしているために、従来の
発光部が円形や正方形の光源と比べると受光素子3面上
に届く光量を多くする光学式変位測定装置を構成する事
ができる。
【0057】図4は本発明の実施例2の要部概略図であ
り、図5は本実施例の要部概略図であり、図6は本実施
例に使用するマスクの形状図である(図中の数値は一つ
の例である)。
【0058】本実施例は実施例1と比べて、より大きい
発光部を持つ面発光レーザより構成される発光素子1を
使用し、これに接して図6に図示するようなY方向には
狭く、X方向には長いマスクを設け、実質的に実施例1
に類似の光源を形成した点のみが異なっており、その他
の構成は同じである。
【0059】本実施例より得られる効果は実施例1と同
じである。
【0060】図7及び図8は実施例1の発光素子に替わ
って適用し得る発光素子の発光部の形状例である。
【0061】又フレネルレンズ、2枚のシリンドリカル
レンズ、ゾーンプレート、トーリックレンズ等の光学手
段を用いて発光部分の形状をY方向の長さSY が短く、
X方向の長さSX が長くなるように変換し、発光素子か
らの光束を集光、コリメートを行って、上記実施例1〜
2と同様な効果を得る事もできる。
【0062】
【発明の効果】本発明は以上の構成によって、 (2−1) 光学系が非常にシンプルな構成であり、ヘ
ッド部が例えば発光源、受光素子、シリンドリカルレン
ズのみでも出来るために、部品点数が少なく組立が簡単
となり、ローコストでしかも小型な光学式変位測定装置
を構成することが出来る。 (2−2) 発光素子を例えば所謂面発光レーザで構成
し、その発光部をX方向に長くする事により、従来の発
光部が円形や正方形の光源と比べると受光素子3面上に
届く光量を多くする事が出来る。等の効果を得ている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の要部斜視図
【図2】 本発明の実施例1の要部概略図 (A)上面図 (B)側面図
【図3】 本発明の実施例1の発光部の形状図
【図4】 本発明の実施例2の要部斜視図
【図5】 本発明の実施例2の要部概略図 (A)上面図 (B)側面図
【図6】 本発明の実施例2のマスクの形状図
【図7】 本発明の実施例1に適用し得る発光部の別形
状(図中の数値は一つの例である)
【図8】 本発明の実施例1に適用し得る発光部の別形
状(図中の数値は一つの例である)
【図9】 平行波と球面波の干渉の違いを示した説明図
【図10】 光学式エンコーダーにおけるヘッド部とス
ケール部にアジマス角の取付誤差があるときに発生する
受光素子上の干渉縞の説明図
【図11】 光学式エンコーダーにおけるヘッド部とス
ケール部にカイテン角の取付誤差があるときに発生する
受光素子上の干渉縞の説明図
【図12】 ヘッド部とスケール部にアジマス角の取付
誤差を生じたときの干渉2光束間の角度差とアジマス角
と(波長/格子のピッチ)の関係を示した説明図
【図13】 ヘッド部とスケール部にカイテン角の取付
誤差を生じたときの干渉2光束間の角度差とカイテン角
と(波長/格子のピッチ)の関係を示した説明図
【図14】 ヘッド部とスケール部にアジマス角の取付
誤差を生じたときの干渉2光束間の交差位置とアジマス
角と(波長/格子のピッチ)の関係を示した図である。
【図15】 ヘッド部とスケール部にカイテン角の取付
誤差を生じたときの干渉2光束間の交差位置とカイテン
角と(波長/格子のピッチ)の関係を示した説明図
【図16】 従来の光学式エンコーダーの要部概略図
【図17】 従来の光学式エンコーダーの要部概略図
【図18】 従来の光学式エンコーダーの要部概略図
【図19】 3格子型の光学式変位測定装置の要部概略
【符号の説明】
1 発光素子 3 受光素子 4 集光、コリメートするためのトーリックレンズ 5 発光素子から射出された光束の内、X方向に細長い
光束をつくるためのマスク G1 光束を分割するための回折格子 G2 分割された光束を位相変調させる回折格子 G3 光束を重畳するための回折格子 O1 G1へ入射する光束の中心光線がG1へ入射する
点 P1 G1で回折した光束の内、0次回折光束の中心光
線がG2へ入射する点 P2 G1で回折した光束の内、0次回折光束の中心光
線がG2へ入射する点 O3 P2で回折した光束の内、−1次回折光束の中心
光線がG3へ入射する点 L2,3 O1〜P1間もしくは、P2〜O3間の光路
長。 L1 P1〜O3間の光路長 L2 P2〜O3間の光路長 L3 G1もしくはG3から集光位置C0 ,C1 までの
光路長
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01D 5/26 - 5/38 G01B 11/00 - 11/30

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザー光源と 前記レーザー光源 から射出された光束の集束、発散状態
    を変換する光学素子と、前記変換された 光束を複数の光束に分割する第1の回折
    格子と、前記第1の回折格子で分割された複数の光束を 変調する
    第2の回折格子が設けられた変位可能なスケールと、 前記スケールから得られた複数の変調光束同士を合成
    し、 干渉光束を得るための第3の回折格子と、 該干渉光束を受光する受光手段と、を有し、 前記レーザー光源から射出される光束は前記第1の回折
    格子の格子線配列方向の長さが前記第1の回折格子の格
    子線方向よりも長くなるよう配置されたことを 特徴とす
    る光学式変位測定装置。
  2. 【請求項2】 前記第1の回折格子により分割された2
    光束を該第3の回折格子で合成するまでの過程で、該第
    2の回折格子から該第3の回折格子までの分離された2
    光束の光路長を夫々L1,L2とするとき、 前記投光手段は前記第1の回折格子の格子線の方向のみ
    に関して該第1の回折格子から分離された2光束の各々
    に沿って、光路長が(L1+L2)/2の位置に対応す
    る領域において集束するように光束の集束・発散状態を
    変換することを特徴とする請求項1の光学式変位測定装
    置。
  3. 【請求項3】 前記レーザー光源は発光素子と前記光学
    素子との間に開口を有する遮光マスク有することを特徴
    とする請求項1または2光学式変位測定装置。
  4. 【請求項4】 前記光学素子は前記第2の回折格子の格
    子線方向に収束するように配置されたことを特徴とする
    請求項1、2または3の光学変位測定装置。
  5. 【請求項5】 発光素子から射出された光束の集束、発
    散状態を変換する光学素子と光束を分割する第1の回折
    格子とから成る投光手段、該投光手段からの光を変調す
    る第2の回折格子が設けられた変調手段、そして該変調
    手段からの変調光同士を合成し、干渉光束を得る第3の
    回折格子と該干渉光束を受光する受光素子とから成る受
    光手段とを有する光学式変位測定装置において、前記第1の回折格子により分割された2光束を該第3の
    回折格子で合成するまでの過程で、該第2の回折格子か
    ら該第3の回折格子までの分離された2光束の光路長を
    夫々L 1 ,L 2 とするとき、 前記投光手段は前記第1の回折格子の格子線の方向のみ
    に関して該第1の回折格子から分離された2光束の各々
    に沿って、光路長が(L 1 +L 2 )/2の位置に対応す
    る領域において集束するように光束の集束・発散状態を
    変換する ことを特徴とする光学式変位測定装置。
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