JP3497195B2 - 変性低密度リポタンパク質結合剤 - Google Patents

変性低密度リポタンパク質結合剤

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JP3497195B2 JP02305593A JP2305593A JP3497195B2 JP 3497195 B2 JP3497195 B2 JP 3497195B2 JP 02305593 A JP02305593 A JP 02305593A JP 2305593 A JP2305593 A JP 2305593A JP 3497195 B2 JP3497195 B2 JP 3497195B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、変性低密度リポタン
パク質結合剤に関するものである。さらに詳しくは、こ
の発明は、動脈硬化症の予防薬またはその進行防止薬と
して有用な変性低密度リポタンパク質結合剤に関するも
のである。 【0002】 【従来の技術】虚血性心疾患および脳梗塞等の動脈硬化
症は、動脈壁にコレステロールエステルが蓄積して脂肪
層(fatty streak)を形成し、さらにはアテロ−ム性プラ
ークを形成して血管を狭窄、閉塞することが原因とされ
ている。このコレステロールエステルの蓄積は、コレス
テロールエステルを大量に含む泡沫細胞(foam cell) の
集簇によるが、初期の動脈硬化病巣にはマクロファ−ジ
由来の泡沫細胞が多く認められることから、マクロファ
ージが動脈硬化発症に重要な役割を果たすことが明らか
になってきた[アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロ
ジー(American Journal of Pathology) 、第103巻、
第181ページ、1981年]。 【0003】マクロファージには、正常な低密度リポタ
ンパク質(以下、LDLと記載することがある)を認識
して取り込むLDL受容体はあまり存在せず、生体内で
化学修飾を受けた変性LDLを特異的に認識して取り込
むスカベンジャー受容体が発達しており、マクロファー
ジはスカベンジャー受容体を経由して変性LDLを過剰
に取り込むことによりコレステロールエステルを蓄積し
泡沫化する[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナ
ル・アカデミー・オブ・サイエンスイズ・オブ・ザ・ユ
ナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ(Proceedings o
f the NationalAcademy of Sciences of the United St
ates of America) 、第76巻、第333ページ、19
79年]。スカベンジャー受容体が認識する変性LDL
としては、アセチル化LDL、マレイル化LDL、酸化
LDL等の特に陰性電荷が増加した変性LDLを例示で
きるが、実際の生体内ではフリーラジカルによるLDL
の酸化が変性LDL生成の主要経路と考えられている
[ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシ
ン(New England Journal of Medicine) 、第320巻、
第915ページ、1989年]。 【0004】このような動脈硬化症の発症機構から、動
脈硬化症の予防、またはその進行の防止には、従来次の
ような方策が採用されていた[ザ・リピッド(The Lipi
d) 、第2巻、第494ページ、1991年]。 a)LDLコレステロールを低下させる b)LDLの変性(特に酸化)を抑制する c)マクロファージの泡沫化を抑制する 前記a)に関しては、食事中のコレステロールの低減、
食物繊維および多価不飽和脂肪酸の摂取等による食事療
法、コンパクチン等のコレステロール合成阻害剤、イオ
ン交換樹脂等のコレステロール排泄促進剤等による薬物
療法が広く実施されている。また、前記b)に関して
は、プロブコール等の薬剤にLDLの酸化抑制作用があ
ることが明らかになってきている。さらに、前記c)に
関しても、マクロファージのアシルCoA:コレステロ
ールアシルトランスフェラーゼの阻害剤等にこの作用が
あることが知られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記
b)とc)の中間段階、すなわち産生された変性LDL
のマクロファージへの取り込みを阻害することによる動
脈硬化症の予防、またはその進行の防止に関してはほと
んど検討されておらず、ましてやラクトフェリンおよび
その加水分解物に変性LDLのマクロファージへの取り
込みを阻害する作用があることは全く知られていなかっ
た。 【0006】ラクトフェリンは、乳汁、涙、唾液等の外
分泌液、血液等に含まれている塩基性の鉄結合性蛋白質
である。ラクトフェリンの生理作用については、従来よ
り数多くの研究がなされてきたが、その生理作用が多岐
にわたっているために、充分に解明されているとはいい
難い。乳汁中のラクトフェリンの存在が確認された当初
から指摘されていたのはその抗菌作用であり[ビオキミ
カ・エト・ビオフィジカ・アクタ(Biochimica et Bioph
ysica Acta) 、第45巻、第413ページ、1960
年]、大腸菌、ブドウ球菌および腸球菌に対して、0.
5〜30mgの濃度で抗菌作用を示すことが報告されて
いる[ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(Journ
al of Dairy Science)、第67巻、第606ページ、1
984年]。乳汁中のラクトフェリンのその他の生理作
用としては、鉄の吸収促進作用、細胞増殖促進作用等が
報告されている[月刊フードケミカル、第7巻、第2
号、第61ページ、1991年]。また、ラクトフェリ
ンは好中球によっても産生され血液等の体液にも存在し
ており、炎症の抑制にも関与していることが指摘されて
いる[アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(Ame
rican Journal of Pathology) 、第99巻、第413ペ
ージ、1980年]。 【0007】しかしながら、ラクトフェリンが変性LD
Lと特異的に結合する性質を有し、さらには変性LDL
のマクロファージへの取り込みを阻害することは、従来
全く知られておらず、文献も皆無である。さらに、ラク
トフェリンの加水分解物についても、その抗菌作用は報
告されているが[ジャーナル・オブ・デイリー・サイエ
ンス(Journal of Dairy Science)、第74巻、第413
7ページ、1991年]、変性LDLと特異的に結合す
る性質を有すること、および変性LDLのマクロファー
ジへの取り込みを阻害することは従来全く知られていな
かった。 【0008】この発明は以上のとおりの事情に鑑みてな
されたものであり、従来の動脈硬化症予防方法、または
その進行防止方法とは全く異なり、動脈硬化症の予防ま
たは進行防止に有用な新しい薬剤として、変性LDLと
特異的に結合するのみならず、変性LDLのマクロファ
ージへの取り込みをも阻害する変性LDL結合剤を提供
することを目的としている。 【0009】 【課題を解決するための手段】この発明の発明者等は、
上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ラ
クトフェリンおよびその加水分解物が変性LDLと特異
的に結合する性質を有し、さらには変性LDLのマクロ
ファージへの取り込みを阻害することを見出し、この発
明を完成した。 【0010】すなわち、この発明は、ラクトフェリンお
よび/またはラクトフェリンの加水分解物を有効成分と
する変性低密度リポタンパク質結合剤を提供する。以
下、この発明について詳しく説明する。この発明の変性
LDL結合剤に用いるラクトフェリンは、たとえば、市
販のラクトフェリン、または人、牛、羊、山羊等の乳等
の分泌液から常法(例えばイオン交換クロマトグラフィ
ー)により単離して得られたもの、あるいは遺伝子組み
替え技術等によって生産されたものである。また、これ
らを塩酸、クエン酸等により脱鉄したアポラクトフェリ
ン、これらを鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属で飽和し
た金属飽和ラクトフェリン等、およびこれらの任意の混
合物であってもよい。 【0011】この発明の変性LDL結合剤に用いるラク
トフェリンの加水分解物は、例えば前記のラクトフェリ
ンを酸またはプロテアーゼで加水分解することにより製
造される。ただし低分子化することによりその作用が弱
くなるので、特に制限はないが極端に低分子化しない程
度で分解を行うのが望ましい。この発明においては、ラ
クトフェリンまたはラクトフェリンの加水分解物を単独
で用いてもよいし、両者を併用することもできる。 【0012】この発明の変性LDL結合剤は、例えば公
知の方法により担体に固定して無菌的に容器に封入し、
容器の両端を流体のみ通過し得るフィルターとすること
により、体液から変性LDLを選択的に除去する透析装
置として応用することができる。またこの発明の変性L
DL結合剤は、例えば無菌的に生理食塩水等の溶液に溶
解し、生体に投与することもできる。この場合、体液中
の変性LDLと特異的に結合して変性LDLのマクロフ
ァージへの取り込みを阻害する薬剤として利用すること
ができるが、投与対象となる動物と異種の由来のラクト
フェリンを用いるとその抗原性が問題となるので、同種
動物由来のラクトフェリンまたはその加水分解物を用い
るのが望ましい。 【0013】ラクトフェリンおよび/またはラクトフェ
リンの加水分解物の投与量は動物の種類および年齢によ
って変動し得るが、動脈硬化を発症しているか否かにか
かわらず、通常0.2mg〜80mg/kg体重/日、
望ましくは0.4mg〜10mg/kg体重/日であ
る。ラクトフェリンおよびラクトフェリンの加水分解物
の急性毒性は、後記する試験例7から明らかなように、
いずれもLD50は4000mg/kg以上であり、毒
性は極めて低い。 【0014】次に試験例を示してこの発明の作用効果を
詳しく説明する。 (試験例1) この試験は、ウシラクトフェリンがアセチル化LDLと
結合する性質を有するか否かを調べるために行った。 1)試料 正常ヒト血清から常法(日本生化学会編、「続生化学
実験講座3」、第599ページ、東京化学同人、198
6年)により調製したLDL5μgを含む水溶液 上記のLDLから常法(日本生化学会編、「続生化
学実験講座3」、第672ページ、東京化学同人、19
86年)により調製したアセチル化LDL5μgを含む
水溶液 アセチル化LDL5μgとウシラクトフェリン(森永
乳業社製。以下同じ)0.5μgを含む水溶液 アセチル化LDL5μgとウシラクトフェリン5μg
を含む水溶液 アセチル化LDL5μgとウシラクトフェリン50μ
gを含む水溶液 ただし、リポタンパク質の重量はタンパク質成分の重量
を表す(以下同じ)。 2)試験方法 0.05Mバルビタールバッファーを用いて前記各試料
をアガロースゲル(チバコーニング社製、ユニバーサル
ゲル8)電気泳動し、クマシーブリリアントブルーによ
りタンパク質を染色した。 3)試験結果 この試験の結果は図1に示したとおりである。図1は電
気泳動写真のトレース図であり、図中〜は、それぞ
れ前記の試料を表す。LDL(試料)はアセチル化す
ることにより陰電荷を帯び、正極側に移動する(試料
)。しかしながら、アセチル化LDLはウシラクトフ
ェリンと共存させることにより、ウシラクトフェリンと
結合して単一バンドを形成し、ウシラクトフェリンの濃
度依存的に中性側に移動した(試料〜)。すなわ
ち、ウシラクトフェリンはアセチル化LDLと結合して
その陰電荷を中和する作用を有することが明らかになっ
た。なお、ラクトフェリンの加水分解物についてもほぼ
同様の結果が得られた。 (試験例2) この試験は、ウシラクトフェリンが酸化LDLと結合す
る性質を有するか否かを調べるために行った。 1)試料 試験例1と同一のLDL5μgを含む水溶液 上記の試料から常法[ジャーナル・オブ・クリニカ
ル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Inv
estigation) 、第81巻、第720ページ、1988
年]により調製した酸化LDL5μgを含む水溶液 試験例1と同一のアセチル化LDL5μgを含む水溶
液 酸化LDL5μgとウシラクトフェリン0.5μgを
含む水溶液 酸化LDL5μgとウシラクトフェリン5μgを含む
水溶液 酸化LDL5μgとウシラクトフェリン50μgを含
む水溶液 2)試験方法 試験例1と同一の方法によった。 3)試験結果 この試験の結果は図2に示したとおりである。図2は電
気泳動写真のトレース図であり、図中〜は、それぞ
れ前記の試料を表す。酸化LDLはウシラクトフェリン
と共存させることにより、ウシラクトフェリンと結合し
て単一バンドを形成し、ウシラクトフェリンの濃度依存
的に中性側に移動した(試料〜)。すなわち、ウシ
ラクトフェリンはアセチル化LDLだけでなく、生体内
で動脈硬化発症に主要な役割を果たしている酸化LDL
とも結合してその陰電荷を中和する作用を有することが
明らかになった。なお、ラクトフェリンの加水分解物に
ついてもほぼ同様の結果が得られた。 (試験例3) この試験は、ウシラクトフェリンが変性LDLと結合す
る性質が、変性LDLに特異的か否かを調べるために行
った。 1)試料 試験例1と同一のLDL5μgとウシラクトフェリン
5μgを含む水溶液 正常ヒト血清から常法(日本生化学会編、「続生化学
実験講座3」、第599ペ−ジ、東京化学同人、198
6年)により調製した高密度リポタンパク質(以下、H
DLと記載する)5μgとウシラクトフェリン5μgを
含む水溶液 2)試験方法 試験例1と同一の方法によった。 3)試験結果 この試験の結果は図3に示したとおりである。図3は電
気泳動写真のトレース図であり、図中およびは、そ
れぞれ前記の試料を表す。通常のLDLおよびHDLは
ウシラクトフェリンと共存させても、ウシラクトフェリ
ンとは別のバンドとして検出された(試料および
)。すなわち、ウシラクトフェリンは通常のリポタン
パク質とは結合せず、変性LDLとのみ特異的に結合す
ることが明らかになった。なお、ラクトフェリンの加水
分解物についてもほぼ同様の結果が得られた。 (試験例4) この試験は、ラクトフェリンが変性LDLと結合する性
質が、ラクトフェリンに特異的か否かを調べるために行
った。 1)試料 試験例1と同一のLDL5μgを含む水溶液 試験例1と同一のアセチル化LDL5μgを含む水溶
液 ヒトラクトフェリン(カルビオケム社製)5μgを含
む水溶液 試験例1と同一のアセチル化LDL5μgとヒトラク
トフェリン5μgを含む水溶液 ウシアポトランスフェリン(関東化学社製)5μgを
含む水溶液 試験例1と同一のアセチル化LDL5μgとウシアポ
トランスフェリン5μgを含む水溶液 ウシ鉄トランスフェリン(関東化学社製)5μgを含
む水溶液 試験例1と同一のアセチル化LDL5μgとウシ鉄ト
ランスフェリン5μgを含む水溶液 2)試験方法 試験例1と同一の方法によった。 3)試験結果 この試験の結果は図4に示したとおりである。図4は電
気泳動写真トレース図であり、図中〜は、それぞれ
前記の試料を表す。ヒトラクトフェリンはウシラクトフ
ェリンと同様に、変性LDLと結合して単一のバンドを
形成し、変性LDLの陰電荷を中和した(試料)。し
かしながら、ラクトフェリンと同族の鉄結合性蛋白質で
あるトランスフェリンは、変性LDLと共存させても、
変性LDLとは別のバンドとして検出され、また変性L
DLの電荷には何ら影響を与えなかった。すなわち、変
性LDLと結合する性質はラクトフェリンに特異的であ
ることが明らかになった。なお、ラクトフェリンおよび
トランスフェリンの加水分解物についてもほぼ同様の結
果が得られた。 (試験例5) この試験は、ラクトフェリンが変性LDLと特異的に結
合する性質が、変性LDLのマクロファージスカベンジ
ャー受容体に対する特異的結合に与える影響を調べるた
めに行った。 1)試験方法 アセチル化LDLを放射性ヨウ化ナトリウム(Na 125
)を用いて常法[続生化学実験講座3(東京化学同
人)、第667ページ、1986年]により標識し、放
射活性400cpm/ng蛋白質の 125 −アセチル化
LDLを作成した。 ウィスター系雄ラット(日本SL
C社製。200g前後)より常法により腹腔マクロファ
ージを採集し、1×10 6 個のマクロファージを100
μl のダルベッコ改変イーグル培地(3%のウシ血清ア
ルブミン、100U/mlのペニシリン、100μg/
mlのストレプトマイシンを含有する;以下これを培地
Aという)に懸濁し、1μgの 125 −アセチル化LD
Lと種々の濃度のアセチル化LDLまたはウシラクトフ
ェリン(いずれも試験例1と同一のもの)を添加して、
4℃で1時間インキュベートした。遠心分離とPBS
(1%のウシ血清アルブミンを含有する)による洗浄を
3回繰り返し行い、マクロファージに結合している放射
活性をγ−カウンターによって測定した。 2)試験結果 試験結果は図5に示したとおりである。図5は、 125
−アセチル化LDLのマクロファージへの結合と試料濃
度との関係を示し、縦軸は、対照に対する 125 −アセ
チル化LDLのマクロファ−ジへの結合の百分率を、横
軸は、試料濃度を、それぞれ示している。図中○および
●は、それぞれアセチル化LDLおよびウシラクトフェ
リンを示す。 【0015】アセチル化LDLの添加によって 125
アセチル化LDLのマクロファージへの結合は阻害され
るが、この阻害される部分がアセチル化LDLのマクロ
ファージスカベンジャー受容体に対する特異的結合であ
る。ラクトフェリンは濃度依存的にこの特異的結合を阻
害し、高濃度においてはほぼ完全に阻害した。すなわ
ち、ラクトフェリンは変性LDLと特異的に結合して、
変性LDLのマクロファージスカベンジャー受容体のリ
ガンドとしての性質を消失させることが明らかになっ
た。なお、ラクトフェリンの加水分解物についてもほぼ
同様の結果が得られた。 (試験例6) この試験は、ラクトフェリンがマクロファージの泡沫化
に与える影響を調べるために行った。 1)試料 試験例1と同一のウシラクトフェリン 上記のウシラクトフェリンをビオプラーゼ(ナガセ
生化学工業社製)で10分間加水分解したウシラクトフ
ェリン加水分解物 試験例4と同一のウシアポトランスフェリン 試験例4と同一のウシ鉄トランスフェリン 2)試験方法 培地Aに懸濁した3×10 6 個/mlのラット腹腔マク
ロファージを、市販の12穴プレートに1mlずつ播種
し、37℃で2時間培養し、マクロファージを底面に接
着させた。PBSで3回洗浄した後、100μg/ml
のアセチル化LDLおよび種々の濃度の試料を含む培地
A1mlに入れ替え、37℃で16時間培養した。0.
2%のウシ血清アルブミンを含むPBSおよび含まない
PBSを用いてよく洗浄し、細胞内の脂質を抽出し、総
コレステロールと遊離コレステロールを酵素法[ジャー
ナル・オブ・リピッド・リサーチ(Journal of Lipid Re
search) 、第19巻、第514ペ−ジ、1978年]に
より測定し、その差をコレステロールエステルとした。 3)試験結果 試験結果は図6に示したとおりである。図6は、マクロ
ファージ内に蓄積したコレステロールエステルと試料濃
度との関係を示し、縦軸は対照に対するマクロファージ
内に蓄積したコレステロールエステルの百分率を、横軸
は試料濃度を、それぞれ示す。図中○、●、△及び▲
は、それぞれウシラクトフェリン、ウシラクトフェリン
加水分解物、ウシアポラクトフェリン及びウシ鉄トラン
スフェリンを示す。トランスフェリンはマクロファージ
へのコレステロールエステルの蓄積に影響を与えなかっ
たのに対し、ラクトフェリンは顕著に抑制した。また、
ラクトフェリンの加水分解物にもこの作用が認められ
た。すなわち、ラクトフェリンおよびその加水分解物は
変性LDLによるマクロファージの泡沫化を抑制するこ
とが明らかになった。 (試験例7) この試験は、ラクトフェリンおよびラクトフェリンの加
水分解物の急性毒性を調べるために行った。 1)試験動物 6週齢のCD(SD)系のラットの両性(日本チャール
ス・リバー社製)を、無作為にそれぞれ8群(1群5
匹)に分けた。 2)試験方法 ウシラクトフェリンおよびそれをビオプラーゼで10分
間加水分解したウシラクトフェリン加水分解物を注射用
水(大塚製薬社製)に溶解し、体重1kg当り100
0、2000または4000mgの割合で金属製玉付き
針を用いて単回強制経口投与し、急性毒性を試験した。 3)試験結果 この試験の結果は、表1に示したとおりである。表1か
ら明らかなようにウシラクトフェリンおよびウシラクト
フェリン加水分解物を投与した全例ともに死亡例は認め
られなかった。従って、ウシラクトフェリンおよびウシ
ラクトフェリン加水分解物のLD50はともに4000
mg/kg以上であった。なお、ラクトフェリン加水分
解物の種類を変更して試験したが、同様の結果が得られ
た。 【0016】 【表1】 【0017】次に実施例を示してこの発明をさらに詳細
かつ具体的に説明するが、この発明は以下の実施例に限
定されるものではない。 【0018】 【実施例】 実施例1 多孔質セルロースゲル(チッソ社製。CKゲルA−3)
100mlに20%水酸化ナトリウム40g、ヘプタン
120gおよびノニオン系界面活性剤(花王アトラス社
製。ツゥイーン20)10滴を添加し、40℃で2時間
攪拌し、のちエピクロルヒドリン50gを添加して2時
間攪拌し、ゲルを水洗濾過し、エポキシ基が導入された
セルロースゲルを得た。これに、人乳より公知の方法
[ブラッド・セルズ(Blood Cells) 、第15巻、第37
1ページ、1989年]により精製したヒトラクトフェ
リン1gを精製水200mlに溶解してpH10に調整
した溶液を添加し、常温で24時間振盪し、次いで水洗
濾過し、ヒトラクトフェリンが固定されたセルロースゲ
ル約100mlを得た。これを、両端を流体のみ通過し
得るフィルターとした容器に無菌的に封入し、血液透析
用の変性LDL結合剤を作製した。 実施例2 1錠当り次の組成からなる錠剤の変性LDL結合剤を調
製した。 【0019】 ウシラクトフェリン加水分解物 20.0(mg) [ウシラクトフェリン(森永乳業社製)をビオプラーゼ(ナガセ生化学工業社 製)で10分間加水分解したもの] 乳糖一水和物(和光純薬工業社製) 30.0 トウモロコシデンプン(和光純薬工業社製) 19.8 結晶セルロース(旭化成工業社製) 28.0 珪酸マグネシウム五水和物(和光純薬工業社製) 2.0 ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業社製) 0.2 ウシラクトフェリン加水分解物、乳糖一水和物、トウモ
ロコシデンプンおよび結晶セルロースの混合物に滅菌精
製水を適宜添加しながら均一に混練し、50℃で3時間
乾燥させ、得られた乾燥物に珪酸マグネシウム五水和物
およびステアリン酸マグネシウムを添加して混合し、常
法により打錠機で打錠した。 実施例3 注射用水(大塚製薬社製)1ml当りに、実施例1と同
一の方法で精製したヒトラクトフェリン10mgおよび
D−マンニット(和光純薬工業社製)49.5mgの割
合で溶解し、リン酸緩衝剤粉末(和光純薬工業社製)の
水溶液でpHを約7に調整し、濾過滅菌し、常法により
10mlずつバイアル瓶に充填し、凍結乾燥し、注射用
の凍結乾燥変性LDL結合剤を調製した。 【0020】 【発明の効果】以上、詳しく説明したとおり、この発明
によって、変性LDLと特異的に結合して、体液中の他
の成分をほとんど損なうことなく変性LDLを選択的に
除去することができ、さらに変性LDLのマクロファー
ジへの取り込みを阻害してマクロファージの泡沫化を抑
制することのできる新規な変性LDL結合剤が提供され
る。これにより、動脈硬化症の発症およびその進行を効
果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、電気泳動写真のトレース図である。 【図2】図2は、電気泳動写真のトレース図である。 【図3】図3は、電気泳動写真のトレース図である。 【図4】図4は、電気泳動写真のトレース図である。 【図5】図5は、 125 −アセチル化LDLのマクロフ
ァージへの結合と試料濃度との関係を示す。 【図6】図6は、マクロファージ内に蓄積したコレステ
ロールエステルと試料濃度との関係を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川瀬 興三 埼玉県浦和市白鍬761−1 (72)発明者 高瀬 光徳 埼玉県大宮市南中丸138−10 (72)発明者 梶川 幹夫 神奈川県横浜市旭区今宿町2672−41 (56)参考文献 特開 平6−172200(JP,A) 特開 平4−334310(JP,A) WILLOW, Thomas E. et al,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHE MISTRY,1992年,Vol.267, No.36,pp26172−26180 ZIERE, Gijsbertus J. et al,CIRCULAT ION,1992年,Vol.86, No. 4 Suppl.4,I611 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 38/00 - 38/58 CA(STN) MEDLINE(STN) BIOSIS(STN) EMBASE(STN)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ラクトフェリンおよび/またはラクトフ
    ェリンの加水分解物を有効成分とする変性低密度リポタ
    ンパク質結合剤。
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