JP3493427B2 - 光誘起屈折率特性を改良したニオブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ及びその製造方法並びに該メモリを用いた光増幅装置 - Google Patents

光誘起屈折率特性を改良したニオブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ及びその製造方法並びに該メモリを用いた光増幅装置

Info

Publication number
JP3493427B2
JP3493427B2 JP2000017870A JP2000017870A JP3493427B2 JP 3493427 B2 JP3493427 B2 JP 3493427B2 JP 2000017870 A JP2000017870 A JP 2000017870A JP 2000017870 A JP2000017870 A JP 2000017870A JP 3493427 B2 JP3493427 B2 JP 3493427B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
single crystal
crystal
light
hologram
lithium niobate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2000017870A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000191397A (ja
Inventor
健二 北村
保典 古川
伸夫 井伊
茂行 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute for Materials Science
Original Assignee
National Institute for Materials Science
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from JP8216584A external-priority patent/JP3049308B2/ja
Application filed by National Institute for Materials Science filed Critical National Institute for Materials Science
Priority to JP2000017870A priority Critical patent/JP3493427B2/ja
Publication of JP2000191397A publication Critical patent/JP2000191397A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3493427B2 publication Critical patent/JP3493427B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Diffracting Gratings Or Hologram Optical Elements (AREA)
  • Holo Graphy (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザー光を利用
した光情報処理、光加工技術、光化学反応技術、光計測
制御等々の分野で利用するニオブ酸リチウム(LiNb
3)(以下LNと略記する)単結晶に関するものであ
る。より詳しくは、光誘起屈折率変化の制御、すなわ
ち、ホログラム回折効率を向上させた光学素子用LN単
結晶メモリおよび該LN単結晶メモリを含む光増幅装置
に関するものである。
【0002】
【従来技術】LN単結晶の相図は古くから知られてお
り、従来、組成の均質性の高いLN単結晶を製造するた
めには、結晶と融液が同じ組成で平衡共存する一致溶融
(コングルエント)組成であるLi2O/(Nb25
Li2O)のモル分率が0.485の融液から回転引き
上げ法で育成されていた。
【0003】育成されたアズグロウンLN単結晶は多分
域状態となっているため、育成後の結晶をキュリー温度
である約1150℃以上に加熱した状態で結晶のZ軸方
向に電圧を印加し、単一分域化した後、結晶を冷却する
ポーリングという処理を施されていた。単一分域化処理
された結晶は所定の大きさに加工された後、各種用途に
使用されていた。
【0004】LN単結晶を光学応用に用いる場合、強い
レーザー光を当てると局所的な屈折率の変化(光誘起屈
折率変化、通称「光損傷」と呼んでいる)が現れ、光変
調素子や波長変換素子等の応用においては障害となって
いるが、一方では、逆に、この光誘起屈折率変化を積極
的に利用して高感度光メモリとして位相型ホログラム記
録素子に応用する関心が高まっている。
【0005】光誘起屈折率変化(フォトリフラクティブ
効果)に関しては、これまで以下のようにそのメカニズ
ムが説明されている。即ち、光誘起屈折率変化は不純物
や欠陥に起因する深いトラップ準位(フォトリフラクテ
ィブ中心)の存在する電気光学結晶に光を照射したとき
の生じる現象であり、フォトリフラクティブ中心が光イ
オン化され、その際に生成された自由キャリアが拡散、
外部電場、光起電力効果などにより移動したのち光の照
射していない部分で再結合し、その結果、光の強度分布
に対応した空間電荷分布が生じる。この空間電荷分布が
電気光学効果により屈折率変化を引き起こす。これが光
誘起屈折率変化である。
【0006】以上のメカニズムが機能するためには、初
期状態でイオン化されたトラップ準位がなくてはならな
い。例えばLN単結晶ではFe2+がドナー準位を形成
し、これがイオン化されてFe3+となりトラップ準位を
形成する。したがって、結晶中に含まれる特に遷移金属
不純物が重要な役割を果たし、これまで、電気光学結晶
であるLN単結晶の光誘起屈折率変化は、結晶にFe、
Mn、Cu等の遷移金属を添加することで光感度及び回
折効率がさらに向上することが知られていた。
【0007】また、遷移金属を添加しない一致溶融組成
のLN単結晶は、ホログラム回折効率が極端に低いため
これら応用には適さず、従来は一致融液組成のLN単結
晶に数百ppmのFeを添加した結晶が製造され、レ−
ザ−光の応用技術に使用されていた。
【0008】可視光のレーザー光を用いて単結晶内に三
次元ホログラムを書き込む光レーザー装置に用いる単結
晶として、遷移金属を添加しない一致溶融組成のLN単
結晶は、比較的透明であるが、ホログラム回折効率が極
端に低すぎるため、応用上ホログラム書き込みが困難で
あるという問題があった。
【0009】一方、通常の一致溶融組成に数百ppmの
Feを添加したLN単結晶はホログラム回折効率は高い
ものの、約400〜600nmの可視光領域での吸収が
大きく茶色に着色していた。また、結晶製造の観点から
みても、遷移金属は結晶中で偏析するためこれを一様に
添加した結晶育成は難しく、Feを添加したLN単結晶
には光散乱の原因となるマクロな結晶欠陥が多く含まれ
光学素子としては十分な品質のものが得られていなかっ
た。
【0010】また、このようなフォトリフラクティブ効
果を示す結晶材料を比較する性能指数として結合係数が
用いられているが、これまで知られているFeを添加し
たLN単結晶の場合には約4〜12cm-1であると言わ
れており(例えば「光学結晶」200頁宮沢信太郎著培
風館社)、光学応用上必ずしも十分な性能を有している
とは言えない問題もあった。
【0011】ところで、一般に光学素子材料は光吸収、
光散乱ができるだけ小さいことが望ましいが、光学結晶
においてレーザー光の吸収が増大することは、結晶の特
性を劣化させる場合が多く、位相型三次元ホログラム素
子においても、その特性が同じならば吸収の少ない方が
望ましいといえる。
【0012】また、結晶製造の観点からみても、遷移金
属は結晶中で偏析するためこれを一様に添加した結晶育
成は難しく、Feを添加したLN単結晶には光散乱の原
因となるマクロな結晶欠陥が多く含まれ光学素子として
は十分な品質のものが得られていなかった。
【0013】さらに、従来の結晶は単一分域化するため
にポーリングという数十時間の工程時間を要する分極処
理をする必要があるが、LN単結晶中に添加されたFe
は分極処理により結晶中を容易に動くため、結晶中に濃
度の著しい勾配ができ結晶の光学特性が不均一になると
いう問題があった。さらに、Fe添加LN単結晶の不均
一性によるランダムな光散乱が原因とされる雑音がホロ
グラムの記録密度の向上を妨げる問題であるとされてい
た。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の
欠点を改良し、LN単結晶中に遷移金属を添加せずとも
光誘起屈折率変化を制御し、回折効率が高く、しかも光
散乱がなく透過特性に非常に優れたLN単結晶を提供す
べく種々検討した結果、LN単結晶の結晶組成を制御す
ることにより目的を達成しうることを見出し、本発明を
完成したもので、本発明の目的は、レーザー光を利用し
た光情報処理、光加工技術、光化学反応技術、光計測制
御等々の分野への応用に際して、光誘起屈折率変化を制
御したLN単結晶メモリおよびこれを用いた光増幅装置
を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、
(1)LiO/(Nb+LiO)のモル分率
が0.495〜0.50であって、400〜600nm
の可視光域での光吸収係数1cm―1以下で、遷移金属
のFeを添加することなしに結合係数が20〜27cm
―1であり、ニオブ酸リチウム(LN)単結晶育成後
にさらに、酸素濃度を制御した雰囲気中で900〜10
00℃での熱処理が加えられたことを特徴とするニオブ
酸リチウム単結晶ホログラムメモリである。
【0016】また、本発明は、(2)ニオブ酸リチウム
からなるホログラムメモリを製造する方法であって、前
記ニオブ酸リチウムを二重るつぼ法を用いて製造する工
程であって、前記ニオブ酸リチウムは、Li2O/(N
b2O5+Li2O)のモル分率が0.495〜0.5
0であり、400〜600nmの可視光域での光吸収係
数が1cm―1以下であり、遷移金属のFeを添加する
ことなしに結合係数が20〜27cm―1である、工程
と、前記製造されたニオブ酸リチウムを酸素濃度が制御
された雰囲気中で900〜1000℃で熱処理する工程
とを包含する、方法である。
【0017】即ち、本発明のホログラムメモリに用いる
単結晶は、通常の一致溶融組成(以下、コングルエント
組成という)よりも化学量論比(ストイキオメトリ)に
近い組成を持ち、欠陥密度が低いLN単結晶で、かつ遷
移金属のFeなどが無添加であることから光散乱が少な
く可視光域での光透過特性に優れホログラム回折効率
が高い。
【0018】上記LN単結晶は、育成後にさらに、ホロ
グラムの書き込み速度とホログラムの記録時間を制御す
るための熱処理を加えものである。
【0019】また、本発明は、(3)可視光のレーザー
光を用いて単結晶内にホログラム回折格子を書き込み光
増幅させる装置において、前記単結晶として上記のニオ
ブ酸リチウム単結晶ホログラムメモリを用いたことを特
徴とする光増幅装置である。この光増幅装置は、遷移金
属を含まず、単一分域で、化学量論組成に近い上記のL
N単結晶に、可視光の光を照射して生じる光誘起屈折率
変化を利用する位相型ホログラムメモリなどである。
【0020】
【作用】まず、本発明に係るLN単結晶は、Li2O/
(Nb25+Li2O)のモル分率が0.485である
通常のコングルエント組成よりも化学量論比に近いモル
分率が0.495〜0.50の組成を持つ単結晶である
ため結晶の完全性が高く欠陥密度も低い。さらに、遷移
金属のFeなどが無添加であることから、光散乱が少な
く400〜600nmの可視光域での光吸収係数が1c
-1以下と光透過特性にも優れ、ホログラム回折効率が
高い。
【0021】本発明のホログラムメモリ用のLN単結晶
は、引き上げ法によるLN単結晶育成に際し、融液から
その単結晶を育成する際のLN融液の組成を、従来のよ
うな結晶と融液が同じ組成で平衡共存する一致溶融組成
でなく、リチウム成分の過剰なLi2O/(Nb25
Li2O)のモル分率を0.56〜0.60の特定範囲
の保った融液から二重坩堝法により結晶を育成すること
により得られる。
【0022】また、上記組成の融液から育成すれば、結
晶される結晶組成のキュリー温度が約1200℃と通常
のコングルエント組成結晶の1150℃よりも高く結晶
成長温度に近いため、アズグロウンの状態でも結晶の大
部分は単一分域状態となっている。このため、従来のコ
ングルエント組成融液から育成した多分域状態の結晶と
は大きく異なり、多分域結晶で必要となる育成後のポー
リング処理を施す必要性が無いという利点がある。
【0023】さらに、結晶育成方法を二重坩堝法とする
ことにより、結晶が育成される融液の組成は常に一定に
保たれ、かつ、内側坩堝内の融液の温度変動はきわめて
少ないという特徴があるため、きわめて均一組成で光学
的均質性も良いLN単結晶を製造することが可能であ
る。
【0024】さらに、本発明に係るレーザー装置は、可
視光のレーザー光を用いて単結晶内に三次元ホログラム
を書き込む光増幅装置であり、三次元ホログラムは高速
でかつ記憶容量が潜在的に大きいため最近マルチメディ
ア関連の新しい記録方法として、将来の発展が期待され
ているものである。ホログラムには銀塩写真をはじめい
ろいろな材料が使われているが、メモリへの応用には光
誘起屈折性結晶がもっとも有力であると考えられてお
り、とくにLN単結晶は数ある光誘起屈折性結晶の中で
も一番保持時間の長い材料であり、これまでメモリの実
験には、ほとんどが遷移金属であるFeを添加すること
で回折効率を大きくした茶色に着色したLN単結晶が用
いられている。
【0025】しかしながら、Feを添加したLN単結晶
は、約400〜600nmの可視光領域での吸収や散乱
が大きく、また、試料による特性のばらつきも大きいた
めホログラム記録材料として実用に供するには至ってい
なかった。本発明者らは、遷移金属を添加せずともLN
単結晶の組成を制御することにより結晶的にも均質かつ
高品質で、レーザー装置で要求されるに十分な回折効率
が得られると言う現象を初めて見いだした。本発明によ
るLN単結晶を用いた三次元ホログラムを書き込む光増
幅装置は本発明者によって初めて見いだされたものであ
る。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に本発明をさらに詳細に説明
する。本発明に係るホログラムメモリのLN単結晶の製
造方法で使用する原料としては、Li成分及びNb成分
はこれらの酸化物もしくは加熱により酸化物と成るよう
な化合物、例えば、Li2O、Li2CO3、Nb25
を使用する。そして、これらの成分をLi2O/(Nb2
5+Li2O)のモル分率が0.485である通常のコ
ングルエント組成(コングルエント組成)よりも化学量
論比に近いモル分率が0.495〜0.50の組成を持
つ単結晶を得るのであって、この単結晶は400〜60
0nmの可視光域での光吸収係数が1cm-1以下である
特性を有し、遷移金属を添加することなしにホログラム
回析効率が高いのである。
【0027】そして、このホログラム回析効率が高いと
はレーザ光を照射する事で、より大きな屈折率変化を結
晶中に書き込むことを意味する。更に、このニオブ酸リ
チウムに熱処理を加えることによってホログラムの書き
込み速度とホログラムの記録時間を制御することことが
できる。この際の熱処理条件としては酸素濃度を制御し
た雰囲気中で900〜1000℃である。
【0028】本発明に係るホログラムメモリのLN単結
晶の製造方法として、好ましい方法は、二重坩堝法にお
ける結晶の育成方法である。二重坩堝法における結晶の
育成方法の原理について図1および図2を用いて説明す
る。
【0029】図1は、LNの相図を、図2は、二重坩堝
法における単結晶育成装置の説明図である。図1に見ら
れるように、LN単結晶のコングルエント組成はLi2
O/(Nb25+Li2O)のモル分率が0.485で
あるため、コングルエント組成融液から通常の引き上げ
法で得られるLN単結晶はNb成分過剰となるが、融液
の組成を著しくLi成分過剰(例えばLi2O/(Nb2
5+Li2O)のモル分率が0.56〜0.60、好ま
しくは0.58)にすると化学量論比組成に近い、すな
わち不定比欠陥濃度を極力抑えた単結晶を得ることがで
きる。
【0030】しかし、成長する結晶組成と融液組成が異
なると、通常の引き上げ法では育成が進むに連れ、融液
と結晶の組成がより離れるため結晶は困難となる。そこ
で、不定比欠陥の密度や構造を精密に制御するために図
2に示した二重坩堝法による単結晶育成装置を開発し
た。
【0031】二重坩堝法においては、坩堝が二重構造と
なっており、内側坩堝の底に外側坩堝から内側坩堝に通
じる穴を設けた。さらに、Li2O/(Nb25+Li2
O)のモル分率が0.56〜0.60のLi成分過剰の
内側坩堝の融液から育成される結晶成長重量をロードセ
ルにより測定し、結晶化した成長量に見合った量のLi
2O/(Nb25+Li2O)のモル分率が0.50の化
学量論組成比の原料を外側坩堝に自動的に供給した。こ
の方法により、外側から内側への原料の流れ込みによ
り、結晶を常に一定深さで一定組成を保った内側坩堝の
融液から育成できるため、均質組成の大型単結晶を育成
することが初めて可能となった。
【0032】次に本発明に係るホログラムメモリのLN
単結晶の製造方法を具体例で示す。 具体例1 市販の高純度Li2CO3、Nb25(それぞれ純度9
9.999%)の原料粉末を準備し、Li成分過剰原料
としてLi2CO3:Nb25の比が0.56〜0.6
0:0.44〜0.40の割合で混合し、化学量論比組
成原料としてLi2CO3:Nb25=0.50:0.5
0の割合で混合した。次に1000kg/cm2の静水
圧でラバープレス成形し、それぞれを約1050℃の酸
素中で焼結し原料棒を作成した。また、連続供給用粉末
原料として混合済みの化学量論比組成原料を約1050
℃の酸素中で焼結して化学量論比組成原料も作成した。
【0033】次に、二重坩堝法による単結晶育成に際し
て、Li成分過剰原料を内側坩堝に、化学量論比組成原
料を外側坩堝に予め充填し、次に坩堝を加熱して融液を
作成した。ここで、育成に用いた坩堝は白金でできてお
り、種結晶はZ軸方位に切り出した5mm×5mm×長
さ70mmの単一分域状態にあるLN単結晶を用いた。
育成条件は結晶回転速度を5rpm、引き上げ速度を
0.5〜2mm/h、雰囲気を大気中とした。
【0034】また、融液組成の均一化のために坩堝を
0.2rpmの早さで種結晶と反対方向にゆっくり回転
させた。約1.5週間の育成により直径40mm、長さ
70mmでクラックのない無色透明のLN結晶体を得
た。得られたアズグロウン結晶を種々の方位に切断し、
内部の分域状態を観察したところ結晶の表面近傍のごく
一部を除いて内部は均一に単一分域状態になっているこ
とが認められた。
【0035】具体例2 具体例1で得られたLN単結晶は、化学分析により、ほ
ぼ化学量論比組成に近くLi2O/(Nb25+Li
2O)のモル分率が0.495〜0.500にあり不定
比欠陥濃度が極力抑えられた単結晶であることを確認し
た。次に育成した結晶のキュリー温度を示唆熱分析法に
より測定したところ、結晶の各部分から切り出された試
料のキュリー温度はいづれも1198〜1200.0℃
の範囲にあり、さらに一本の結晶から切り出した試料の
キュリー温度は試料の切り出し位置に依らず一定で、結
晶組成の均質性は極めて良いことを確認した。
【0036】さらに育成したアズグロウンの単結晶から
10mm×10mmで厚みが2mmおよび10mmのY
カット試料を切り出し、メカノケミカル研磨により表面
研磨を行った。試料は各種条件のアニーリング処理を施
しその酸化還元状態を制御した。アニーリング処理後の
試料の光透過率を分光光度計で測定した。図3aに示す
ように、アズグロウン状態のストイキオメトリ組成のL
N単結晶の波長が400〜600nmにおける光吸収係
数は1cm-1以下と非常に高く、その特性はアニーリン
グによっても大きく低下することは見られなかった。
【0037】一方、従来の鉄を添加したコングルエント
組成のアズグロウンと熱処理を施した結晶では、いずれ
の試料も、波長が400〜600nmにおける光透過率
は60%以下と低い透過特性を示すことが確認された。
さらに、図3bに基礎吸収端近傍での光吸収係数特性を
示すが、無添加化学量論比組成結晶ではコングルエント
組成結晶よりもより短波長側に基礎吸収端が伸びてお
り、しかもその光吸収も小さく良好であることがわか
る。
【0038】さらに、試料の光学的均質性をレーザー干
渉装置により観察したところ、結晶欠陥により引き起こ
されるストリエーションやボイドなどの欠陥が見られ
ず、試料全体で変動が1×10-5以下の高い屈折率均質
性があることが確認された。さらに、結晶中に含まれる
散乱についてレーザマイクロプローブ法により評価し
た。
【0039】図4は、10mm角の試料に波長633n
mのHe−Neレーザーを入射したときの試料内の様子
を模式的に示したものであるが、本発明に係わるLN結
晶では、レーザーの散乱は全く観察されず、市販のコン
グルエント組成にFeを数100ppm添加したLN単
結晶に比べて、格段に結晶品質が優れていることが認め
られた。
【0040】
【実施例及び比較例】実施例1 育成されたLN結晶の光増幅率を二光波混合実験により
評価した。実験の光学系を図5に模式的に示す。図5に
示すように、それぞれポンプ光と信号光と呼ぶ二つのコ
ヒーレントな光波を光誘起屈折性結晶であるLN単結晶
内で交わらせ、複数の干渉縞を形成させた。この干渉縞
の空間的な強度変化に対応した空間電場が形成され、そ
の結果として、結晶中に屈折率格子が形成された。
【0041】屈折率格子の位相は干渉縞に対してπ/2
だけ推移しているため、光誘起屈折性結晶を通過した透
過信号光は光強度の増幅を受け、ポンプ透過光は光強度
の減衰を受ける。その結果、図6に示した二光波混合に
よるポンプ光から信号光へのエネルギーの移動がオシロ
スコープ上で観察され、二光波混合の前後の信号光強度
の比から増幅率を求めた。ここでは、ポンプ光および信
号光としてNd:YAGレーザーの二倍波である波長5
32nmの緑色光を用いた。ビーム直径はそれぞれ1m
m、交差角を20°、ポンプ光と信号光の光強度比を1
00:1とした。
【0042】図7は、無添加のコングルエント組成LN
単結晶、Fe添加コングルエント組成LN単結晶、およ
び無添加化学量論比組成LN結晶(試料厚2mm)につ
いて、それぞれの回折効率、増幅率および結合係数を求
めた結果を比較した図である。但し、それぞれの試料表
面には無反射コートは施していない。
【0043】無添加のコングルエント組成LN単結晶で
は回折効率、増幅率のいずれも1%以下と小さいが、F
e添加コングルエント組成LN単結晶では、Feの添加
により回折効率が約34%、増幅率が15%、結合係数
が15cm-1に増大していることがわかる。
【0044】一方、無添加化学量論比組成LN単結晶で
はFeを添加していないにも係わらず回折効率、増幅率
および結合係数のいずれも、他の結晶のそれよりも大き
く、それぞれ60%、42%、20〜27cm-1と大き
な値が得られることが確認できた。
【0045】実施例2 次に各種条件で熱処理した10mm×10mmで厚みが
2mmのYカット試料を用い、二波混合実験における回
折効率と書き込み時間、およびホログラムの記録時間に
ついて測定した。熱処理は以下のように行った。キュリ
ー温度が1200℃の化学量論比組成のアズグロウンL
N単結晶を雰囲気制御が可能な熱処理炉に封入し、95
0℃まで10時間で昇温し、950℃で約12時間保持
したのち、室温まで約10時間で冷却して試料を取り出
した。炉の雰囲気は、流量1リットル/分の100%酸
素中、流量1リットル/分の乾燥した100%窒素ガス
中、および流量1リットル/分の水蒸気を含む窒素ガス
中の3つについて行った。
【0046】熱処理後のそれぞれの試料の二波混合測定
結果をアズグロウン結晶のそれと比較した結果を表1に
示す。酸素処理により書き込み時間は約3倍長くなり、
一方、窒素処理により書き込み時間は1/5〜1/3に
短くなった。すなわち、より高速での書き込みが可能と
なった。また、ホログラム記録の保持時間は結晶の温度
に大きく依存し、室温では数カ月以上も保持できた。加
速試験として結晶温度を約60℃に加熱してホログラム
記録の保持時間を測定したところ、表1に示したよう
に、アズグロウン結晶の記録時間は、約240時間であ
ったが、酸素中処理結晶は約710時間と、約3倍の長
時間保持が可能となることがわかった。
【0047】一方、窒素中で処理した結晶はそれぞれ8
0時間、55時間と短くなった。以上の結果から、ホロ
グラムの書き込み、および記録保持時間は化学量論比組
成LN結晶の熱処理により任意に制御することが可能と
なることが明らかにされた。
【0048】
【表1】
【0049】実施例3 次に可視光のレーザー光を用いて単結晶内に三次元ホロ
グラムを書き込む装置を試作した。装置の構成略図を図
8に示す。この装置は、本発明のホログラム回折効率の
高いLN単結晶を用いた角度多重方式による体積型ホロ
グラムメモリー装置である。
【0050】デジタルの画像入力データは空間光変調器
上に図形として展開される。次にこれをレーザー光で読
み出し、ホログラムの物体波とした。これにほぼ直角に
参照波を入射し、干渉縞を記録媒質であるLN単結晶中
に書き込んだ。ここで、LN結晶は、結晶のc軸が干渉
縞の方向に直行させるように配置し、高精度に回転させ
ることが可能なステージ上に載せた。結晶サイズは1×
1×1cm3である。結晶を少しずつ変えながら、ブラ
ック回折の選択性を利用し約200枚のデータを多重記
録した。
【0051】これらのデータは参照波により再生され、
二次元の光検出器により電気信号に変換した。ここでの
ホログラム記録の特徴は、屈折率が変化する位相型ホロ
グラムであるため高い回折効率が期待されることと、現
像処理を必要とせず干渉縞を照射するだけで回折格子を
書き込むことができ、更にこの一度書き込まれたホログ
ラムは長時間保持できることである。
【0052】ホログラムの保持時間は温度などの環境条
件に依存するが、化学量論比組成のLN単結晶は従来の
結晶よりもさらに長時間で数カ月以上に亘りデータを保
持できた。本構成におけるデータの記録密度は回折効率
と雑音の大きさによって決まる。
【0053】従来、Fe添加LN単結晶の不均一性によ
るランダムな光散乱が原因である雑音が問題とされてい
たが、本発明によるLN単結晶では回折効率が高くしか
も結晶が均質で散乱がないため雑音が大幅に低減し、記
録密度が向上できることが確認された。
【0054】
【発明の効果】以上詳しく述べたように、本発明によれ
ば、遷移金属を添加せずともLN単結晶の組成をLi2
O/(Nb25+Li2O)のモル分率が0.495〜
0.50に制御することにより結晶的にも均質かつ高品
質で、透過特性も高く、レーザー装置で要求されるに十
分な回折効率が得られるLN単結晶が得られる。この特
性を利用することにより、LN単結晶を用いて、高速で
記憶容量が大きくかつ保持時間の長い三次元ホログラム
光増幅装置を提供することが可能である。これらのこと
から、光誘起屈折率変化を制御した化学量論組成LN単
結晶は光応用技術に広く活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】LNの相図である。
【図2】化学量論比組成のLN単結晶を育成するための
二重坩堝法による単結晶育成装置を説明する図である。
【図3】化学量論比組成と鉄添加一致溶融組成LN単結
晶の可視光領域での光透過率、(a)、および化学量論
比組成と一致溶融組成LN単結晶の光吸収係数(b)を
示した図である。
【図4】化学量論比組成のLN単結晶およびFeを添加
したコングルエント組成のLN単結晶に波長633nm
のHe−Neレーザーを入射したときの試料内光散乱の
様子を模式的に示した図である。
【図5】二光波混合によりLN単結晶内にホログラムを
書き込み回折効率を求める実験の様子を模式的に示した
図。
【図6】二光波混合によるポンプ光から信号光へのエネ
ルギーの移動測定から増幅率を求める図。
【図7】各種LN単結晶の二光波混合における回折効
率、増幅率、結合係数を求めた結果を比較した図であ
る。条件は波長532nm、試料厚2mm、ポンプ光と
信号光の強度比100:1
【図8】可視光のレーザー光を用いて単結晶内に三次元
ホログラムを書き込むホログラムメモリー装置の構成を
略して示した図。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−320294(JP,A) 特開 平4−134479(JP,A) 特開 平4−300281(JP,A) 特開 平4−300293(JP,A) 特開 平4−300295(JP,A) 特開 平5−97591(JP,A) 特開 平6−293597(JP,A) Yasunori FURUKAWA et al.,Growth and characterization of off−congruent L iNbO3 single cryst als grown by the d ouble・・・method,Jou rnal of Crystal Gr owth,1993年, Vol.128,p p.909−914 K. KITAMURA et a l.,Stoichiometric LiNbO3 sigle cryst al growth by doubl e crucible Czochra lski method usin g・・・system,Journal of Crystal Growt h,1992年, Vol.116,pp.327 −332 Shin−ji KAN et a l.,LiNbO3 single c rystal growth by t he continuous char ging Czochralski m ethod with Li/Nb r atio control,Journ al of Crystal Grow th,1992年, Vol.119,pp. 215−220 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 G02B 5/32 G02F 1/35 G03H 1/02 CA(STN) JSTPlus(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】LiO/(Nb+LiO)のモ
    ル分率が0.495〜0.50であって、400〜60
    0nmの可視光域での光吸収係数1cm―1以下で、遷
    移金属のFeを添加することなしに結合係数が20〜2
    7cm―1であり、ニオブ酸リチウム単結晶の育成後に
    さらに、酸素濃度を制御した雰囲気中で900〜100
    0℃での熱処理が加えられていることを特徴とするニオ
    ブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ。
  2. 【請求項2】ニオブ酸リチウムからなるホログラムメモ
    リを製造する方法であって、前記ニオブ酸リチウムを二
    重るつぼ法を用いて製造する工程であって、前記ニオブ
    酸リチウムは、Li2O/(Nb2O5+Li2O)の
    モル分率が0.495〜0.50であり、400〜60
    0nmの可視光域での光吸収係数が1cm―1以下であ
    り、遷移金属のFeを添加することなしに結合係数が2
    0〜27cm―1である、工程と、前記製造されたニオ
    ブ酸リチウムを酸素濃度が制御された雰囲気中で900
    〜1000℃で熱処理する工程とを包含する、方法。
  3. 【請求項3】可視光のレーザー光を用いて単結晶内にホ
    ログラム回折格子を書き込み光増幅させる装置におい
    て、前記単結晶として請求項1に記載のニオブ酸リチウ
    ム単結晶メモリを用いたことを特徴とする光増幅装置。
JP2000017870A 1996-07-30 2000-01-24 光誘起屈折率特性を改良したニオブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ及びその製造方法並びに該メモリを用いた光増幅装置 Expired - Lifetime JP3493427B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000017870A JP3493427B2 (ja) 1996-07-30 2000-01-24 光誘起屈折率特性を改良したニオブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ及びその製造方法並びに該メモリを用いた光増幅装置

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8216584A JP3049308B2 (ja) 1996-07-30 1996-07-30 光誘起屈折率特性を改善したニオブ酸リチウム単結晶の製造方法
JP2000017870A JP3493427B2 (ja) 1996-07-30 2000-01-24 光誘起屈折率特性を改良したニオブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ及びその製造方法並びに該メモリを用いた光増幅装置

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8216584A Division JP3049308B2 (ja) 1996-07-30 1996-07-30 光誘起屈折率特性を改善したニオブ酸リチウム単結晶の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000191397A JP2000191397A (ja) 2000-07-11
JP3493427B2 true JP3493427B2 (ja) 2004-02-03

Family

ID=31719112

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000017870A Expired - Lifetime JP3493427B2 (ja) 1996-07-30 2000-01-24 光誘起屈折率特性を改良したニオブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ及びその製造方法並びに該メモリを用いた光増幅装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3493427B2 (ja)

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
K. KITAMURA et al.,Stoichiometric LiNbO3 sigle crystal growth by double crucible Czochralski method using・・・system,Journal of Crystal Growth,1992年, Vol.116,pp.327−332
Shin−ji KAN et al.,LiNbO3 single crystal growth by the continuous charging Czochralski method with Li/Nb ratio control,Journal of Crystal Growth,1992年, Vol.119,pp.215−220
Yasunori FURUKAWA et al.,Growth and characterization of off−congruent LiNbO3 single crystals grown by the double・・・method,Journal of Crystal Growth,1993年, Vol.128,pp.909−914

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000191397A (ja) 2000-07-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US3703328A (en) Devices utilizing improved linbo' holographic medium
JP2931960B2 (ja) 鉄添加ニオブ酸リチウム単結晶およびその熱処理方法および当該単結晶を含むホログラム応用素子
US5614129A (en) Potassium lithium tantalate niobate photorefractive crystals
JP4139881B2 (ja) フォトリフラクティブ材料
JPH1135393A (ja) ストイキオメトリ組成タンタル酸リチウム単結晶、その製造方法及び光素子
Dai et al. Investigation on nonvolatile holographic storage properties in Hf: Ru: Fe: LiNbO3 crystals as a function of Li composition
JP3493427B2 (ja) 光誘起屈折率特性を改良したニオブ酸リチウム単結晶からなるホログラムメモリ及びその製造方法並びに該メモリを用いた光増幅装置
JP3049308B2 (ja) 光誘起屈折率特性を改善したニオブ酸リチウム単結晶の製造方法
US4187109A (en) Strontium barium niobate single crystal doped with Ce
JP3390905B2 (ja) セリウム添加ニオブ酸リチウム単結晶、その製造方法および当該単結晶を含む光素子
JP2507915B2 (ja) 光学素子用スカンジウム添加ニオブ酸リチウム単結晶
Kurz Wavelength dependence of the photorefractive process in doped linbo3
DE69718575T2 (de) Optische Materialien
Liu et al. Experimental investigation of the photochromic effect and two-color holographic recording in near-stoichiometric LiNbO3: Fe: Mn crystals
JP2000233997A (ja) 引き上げ法による単結晶の製造装置
Wang et al. Investigation on the holographic storage properties varied with ZrO2 co-doping in Ru: Fe: LiNbO3 crystals
JP4614199B2 (ja) 強誘電体材料、2色ホログラフィック記録媒体および波長選択フィルタ
DE2337458A1 (de) Verfahren zum reduzieren von eisen in einem eisendotierten lithiumniobat-kristall
Zhang et al. Growth and holographic data storage properties of near-stoichiometric LiTaO3 crystals doped with Mn
Date Inorganic materials for optical data storage
Caixia et al. Growth and photorefractive properties of near-stoichiometric Zn: Fe: LiNbO3 crystals
CN117604640A (zh) 一种钪铈铁掺杂铌酸锂晶体及其制备方法和应用
JPH11191239A (ja) ホログラムメモリ素子及びその製造方法
JPH07234426A (ja) 非線型光学材料用単結晶及び非線型光学材料
Erdei et al. Growth of low-scattering single-domain photorefractive LiNbO/sub 3/crystals

Legal Events

Date Code Title Description
S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

EXPY Cancellation because of completion of term