JP3475250B2 - 生分解性ポリエステル - Google Patents

生分解性ポリエステル

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隆志 増田
昭男 松田
豁 坂口
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性ポリエス
テル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プラスチック廃棄物の処理が重大な社会
問題となり、プラスチック類のリサイクルが重要性を増
している。現在リサイクルが行われているプラスチック
の代表的な例はペットボトルであるが、ペットボトルの
場合は廃プラスチックの発生量が再生品の需要量を上回
ると言う問題が生じつつあり、廃ペットボトルのより一
層の有効利用法が求められている。また、廃ペットボト
ルを原料として、土中で微生物により分解する生分解性
ポリマーを製造することが出来れば、再利用後の埋め立
て処理に於ける環境負荷が軽減するため、環境問題の解
決のために最も有効であるが、従来そのような物質、あ
るいは技術は知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、廃ペットボ
トルを有効利用して製造し得る新規な生分解性プラスチ
ック及びその製造方法を提供することをその課題とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させ
るに至った。即ち、本発明によれば、テレフタル酸成分
とコハク酸成分と6−ヘキサノラクトン成分と1,4−
ブタンジオール成分とからなり、該テレフタル酸成分の
割合が、該テレフタル酸成分、該コハク酸成分及び該6
−ヘキサノラクトン成分の合計量に対して5〜10モル
%であることを特徴とする生分解性ポリエステルが提供
される。また、本発明によれば、テレフタル酸ジメチ
ル、コハク酸ジメチル、1,4−ブタンジオール及び6
−ヘキサノラクトンを、エステル交換触媒の存在下で1
00〜140℃で副生するメタノールを流出させながら
反応させた後、190℃以上の温度に加熱してさらに反
応を行って、テレフタル酸成分とコハク酸成分と6−ヘ
キサノラクトン成分と1,4−ブタンジオール成分とか
らなるポリエステルを生成させることからなり、該ポリ
エステル中のテレフタル酸成分の割合が、該テレフタル
酸成分とコハク酸成分と6−ヘキサノラクトン成分との
合計量に対して、5〜10モル%であることを特徴とす
る生分解性ポリエステルの製造方法が提供される。さら
に、本発明によれば、廃ボトルチップと1,4−ブタン
ジオールとを、エステル交換触媒の存在下で140℃以
上の温度で反応させて液状生成物を得る廃ペットボトル
チップの液状化工程と、該液状生成物にコハク酸ジメチ
ルと6−ヘキサノラクトンを加えて100〜140℃で
副生メタノールを流出させながら反応させた後、190
℃以上の温度に加熱してさらに反応を行って、テレフタ
ル酸成分とコハク酸成分と6−ヘキサノラクトン成分と
1,4−ブタンジオール成分とからなるポリエステルを
生成させるポリエステル生成工程からなり、該ポリエス
テル中のテレフタル酸成分の割合は、該テレフタル酸成
分と該コハク酸成分と該6−ヘキサノラクトン成分との
合計量に対して、5〜10モル%であることを特徴とす
る生分解性ポリエステルの製造方法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の生分解性ポリエステル
は、テレフタル酸成分とコハク酸成分と6−ヘキサノラ
クトン成分を必須成分として含有する。この場合、その
テレフタル酸成分は、廃ペットボトル由来のものである
ことが好ましいが、もちろん、他の製品由来のものであ
ってもよく、さらに、その少なくとも一部が市販のテレ
フタル酸又はテレフタル酸ジメチル由来のものであって
もよい。本発明による生分解性ポリエステルの数平均分
子量は、4万以上、好ましくは5万以上であり、その上
限値は、特に制約されないが、通常、6万程度である。
【0006】本発明によるテレフタル酸成分とコハク酸
成分と6−ヘキサノラクトン成分と1,4−ブタンジオ
ール成分からなる生分解性ポリエステルにおいて、その
テレフタル酸成分の割合は、テレフタル酸成分とコハク
酸成分と6−ヘキサノラクトン成分との合計量に対し
て、5〜10モル%である。1,4−ブタンジオール成
分の割合は、テレフタル酸成分とコハク酸成分と6−ヘ
キサノラクトン成分との合計量1モル当り、0.8〜1
モル、好ましくは0.85〜0.9モルの割合である。
【0007】本発明の生分解性ポリエステルは、必要に
応じて、他の重合性成分、例えば、他のジカルボン酸成
分や、オキシカルボン酸成分、ジオール成分等を、本発
明の目的を特に損なわない範囲で含有することができ
る。
【0008】本発明の生分解性ポリエステルは、廃ペッ
トボトルチップを原料として製造することができる。こ
の方法によると、先ずペットボトルチップをエステル交
換触媒の存在下で1,4−ブタンジオールと反応させて
液状化生成物を得る。この場合の反応温度は140℃以
上であり、通常、160〜210℃、好ましくは180
〜200℃である。ペットボトルチップの寸法は、細か
い程好ましいが、一般的には、縦及び横の長さがそれぞ
れ10mm以下であることが好ましい。エステル交換触
媒としては、従来公知の各種のものを用いることがで
き、例えば、チタンアセチルアセトナート等が好ましく
用いられる。
【0009】前記廃ペットボトルチップの液状化反応
は、密閉容器中に、ペットボトルチップと1,4−ブタ
ンジオールとエステル交換触媒を充填し、加熱すること
により実施される。この反応により、そのチップを構成
するペット(ポリエチレンテレフタレート)は、1,4
−ブタンジオールと反応してオリゴマー化され、液状生
成物が得られる。
【0010】次に、前記のようにして得られた液状生成
物にコハク酸ジメチルと6−ヘキサノラクトンを加え、
必要に応じ、テレフタル酸ジメチルを加えて、エステル
交換触媒の存在下、攪拌下で加熱反応させる。この場合
の反応は、先ず、100〜140℃の温度で副生メタノ
ールを流出させながら行う。メタノールの流出が停止す
ると、次に、190℃以上の温度、通常、190〜21
0℃、好ましくは190〜200℃の温度に加熱させる
ことにより、重縮合反応を完了する。この反応における
攪拌は、反応容器の底部から窒素ガスをバブルさせるこ
とによって行うことができる。
【0011】本発明の生分解性ポリエステルを製造する
ための他の方法によれば、テレフタル酸ジメチル、コハ
ク酸ジメチル、6−ヘキサノラクトン及び1,4−ブタ
ンジオールを、エステル交換触媒の存在下及び攪拌下に
おいて、100〜140℃の温度で副生メタノールを流
出させながら反応を行う。メタノールの流出が停止する
と、190℃以上、通常、190〜210℃、好ましく
は190〜200℃の温度で反応(重縮合反応)を終了
する。
【0012】
【実施例】次ぎに本発明を実施例により具体的に説明す
る。
【0013】実施例1 反応装置としては、内容積約300ccの上下撹拌式ス
テンレス製オートクレーブのガス入口から器内にステン
レスパイプを接続し、器底からガスをバブル出来るよう
にしたものを用いた。テレフタル酸ジメチル2.43g
(0.0125モル)、6−ヘキサノラクトン1.43
g(0.0125モル)、コハク酸ジメチル14.6g
(0.100モル)、1,4ーブタンジオール10.5
g(0.117モル)、及び触媒としてTiアセチルア
セトナート3.0mg(0.011ミリモル)を上記の
オートクレーブに仕込み、オートクレーブの出口バルブ
を開け、器底から窒素を50ml/minの速度でバブ
ルさせて撹拌しつつ、100℃で2時間、ついで温度を
上げて140℃で2時間メタノールを流出させながら反
応を行う。流出メタノールは、氷冷トラップに捕集す
る。次に、温度を190℃に上げて、窒素を0.5l/
minの速度でバブルさせつつ、7時間重縮合反応を行
わせた。得られた共重縮合体はテレフタル酸成分及びヘ
キサノラクトン成分を含み、軟化点94.2℃、流動開
始点98.6℃、融点94.0℃、ガラス転移点−3
7.9℃、数平均分子量4.4万であった。4週間の土
中埋め込みによる生分解性試験の結果、分解率は44.
4%であった。並行して行ったポリブチレンサクシネー
トホモポリマーの分解率は40.7%であり、従ってホ
モポリマーを基準とする生分解性は109%である。前
記ポリマーは、テレフタル酸成分5モル%、コハク酸成
分42モル%、6−ヘキサノラクトン成分5モル%、
1,4−ブタンジオール成分47モル%からなるもので
あることが確認された。
【0014】実施例2 水洗後乾燥したペットボトルチップ2.23g(0.0
116モル)と、1,4−ブタンジオール6.96g
(0.0772モル)、及び触媒としてTiアセチルア
セトナート2.6mg(0.0099ミリモル)を実施
例1で示したオートクレーブに仕込み、オートクレーブ
のバルブを閉じて密閉状態でかき混ぜつつ190℃に加
熱する。このとき圧力が最大0.08MPaに上昇し、
ペットボトルチップが完全に溶解し固形物が消滅したこ
とが撹拌音の変化により検知される。この時ペットボト
ルチップは1,4−ブタンジオールにより分解されて、
オリゴマーとなり反応液中に溶解する。このようにして
得られる液状生成物は、生分解性ポリエステルの反応原
料として有利に用いられ、これにコハク酸ジメチルと6
−ヘキサノラクトンを加え、必要に応じ、テレフタル酸
ジメチルを加えて、エステル交換触媒の存在下で、10
0〜140℃で副生メタノールを流出させながら反応さ
せた後、190℃以上の温度で加熱反応させることによ
り、生分解性ポリエステルを得ることができる。
【0015】
【発明の効果】本発明のポリエステルは、テレフタル酸
成分を含みながら、良好な生分解性を有する。本発明の
生分解性ポリマーはの約5モル%以下がテレフタル酸
成分であり、この成分は廃ペットボトルのリサイクル重
量で賄われることから、従来の代表的生分解性ポリマー
であるポリブチレンサクシネートに比べて安価である。
また、本発明のポリエステルの製造法は、高真空を必要
とした従来の製造法に比べて、格段に低コストである。
従って本発明によれば、従来より安価な生分解性ポリマ
ーが得られる。また、本発明は廃ペットボトルのリサイ
クルと言う社会的要請の一助としても有意義である。
フロントページの続き (73)特許権者 599132029 坂口 豁 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院物質工学工業技術研究所内 (73)特許権者 599132030 浜谷 建生 茨城県つくば市下広岡725−21 (74)上記4名の代理人 100074505 弁理士 池浦 敏明 (72)発明者 増田 隆志 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 松田 昭男 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 坂口 豁 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 浜谷 建生 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院物質工学工業技術研究所内 (56)参考文献 特開 平9−227661(JP,A) 特開 平7−157553(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テレフタル酸成分とコハク酸成分と6−
    ヘキサノラクトン成分と1,4−ブタンジオール成分と
    からなり、該テレフタル酸成分の割合が、該テレフタル
    酸成分、該コハク酸成分及び該6−ヘキサノラクトン成
    分の合計量に対して5〜10モル%であることを特徴と
    する生分解性ポリエステル。
  2. 【請求項2】 テレフタル酸ジメチル、コハク酸ジメチ
    ル、1,4−ブタンジオール及び6−ヘキサノラクトン
    を、エステル交換触媒の存在下で100〜140℃で副
    生するメタノールを流出させながら反応させた後、19
    0℃以上の温度に加熱してさらに反応を行って、テレフ
    タル酸成分とコハク酸成分と6−ヘキサノラクトン成分
    と1,4−ブタンジオール成分とからなるポリエステル
    を生成させることからなり、該ポリエステル中のテレフ
    タル酸成分の割合が、該テレフタル酸成分とコハク酸成
    分と6−ヘキサノラクトン成分との合計量に対して、5
    10モル%であることを特徴とする生分解性ポリエス
    テルの製造方法。
  3. 【請求項3】 廃ボトルチップと1,4−ブタンジオー
    ルとを、エステル交換触媒の存在下で140℃以上の温
    度で反応させて液状生成物を得る廃ペットボトルチップ
    の液状化工程と、該液状生成物にコハク酸ジメチルと6
    −ヘキサノラクトンを加えて100〜140℃で副生メ
    タノールを流出させながら反応させた後、190℃以上
    の温度に加熱してさらに反応を行って、テレフタル酸成
    分とコハク酸成分と6−ヘキサノラクトン成分と1,4
    −ブタンジオール成分とからなるポリエステルを生成さ
    せるポリエステル生成工程からなり、該ポリエステル中
    のテレフタル酸成分の割合は、該テレフタル酸成分と該
    コハク酸成分と該6−ヘキサノラクトン成分との合計量
    に対して、5〜10モル%であることを特徴とする生分
    解性ポリエステルの製造方法。
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