JP3472130B2 - 飛行時間質量分析計 - Google Patents
飛行時間質量分析計Info
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Description
計において用いられる、イオンの加速方法に関する。 【0002】 【従来の技術】図1は、典型的なリフレクトロン型飛行
時間質量分析計を示したものである。図中1は、イオン
源で、Vsなる電位が与えられている。イオン源1を出
発したイオン2は、Vft1の電位をもった第一フライト
チューブ3に導入され、チューブ内に設けられたイオン
ゲート4を通過する。第一フライトチューブ3を出たイ
オンは、入口電位Vre0、底面電位Vreをもったリフレ
クトロン5で反射され、Vft2の電位をもった第二フラ
イトチューブ6に導入され、最終的に検出器7に到達す
る構成になっている。 【0003】リフレクトロンを用いた飛行時間質量分析
計では、第一フライトチューブ、即ち、第一自由空間に
おいてイオン壊裂により生成するプロダクトイオンを測
定することが可能である。また、第一自由空間にイオン
ゲートを設け、特定のプリカーサイオンのみを選択して
通過させることで、この選択されたプリカーサイオンか
ら生成するプロダクトイオンのみから成る質量スペクト
ルを測定することが可能である。これをMS/MS測定
と呼んでいる。 【0004】また、図1の実施例では、イオンを反射す
るリフレクトロンを1個使用しているが、リフレクトロ
ンを複数個用いて、その間にフライトチューブを増設す
ることにより、多段式でMS/MS測定を行なわせるこ
とも可能である。 【0005】ところで、1段式リフレクトロン、及び2
段式リフレクトロンのエネルギー収束は、ある特定のイ
オンエネルギー値Erefの近くにおいてのみ成立する。
従って、通常は、イオン源において生成するイオン(プ
リカーサイオン)が最も良い分解能で測定されるよう
に、Eref=Va (Va:加速電圧)に設定される。一般
的なリフレクトロンは、リフレクトロンに加えられる電
圧が、加速電圧よりも数%高い時にこの条件が成立する
ように設計されている。 【0006】一方、プロダクトイオンのエネルギーは、
プリカーサイオンのエネルギーよりも一般に低い。それ
は、 Eprod = (Mprod/Mprec)* Eprec Eprec:プリカーサイオンの運動エネルギー Eprod:プロダクトイオンの運動エネルギー Mprec:プリカーサイオンの質量数 Mprod:プロダクトイオンの質量数 の関係式から明らかなように、イオンの運動エネルギー
はイオンの質量数に比例し、かつ、プロダクトイオンは
プリカーサイオンよりも質量数が低いからである。 【0007】従って、通常のリフレクトロン電圧の設定
のままでは、質量数の低いプロダクトイオンにおいてエ
ネルギー収束が成立しない。このようなプロダクトイオ
ンを検出することは、不可能ではないが、そのピークは
ブロード(分解能が低い)となり、感度と質量精度に問
題を生じる。 【0008】この問題を克服するため、従来は、イオン
源の条件を一定に保ったまま、リフレクトロン電圧を順
次段階的に下げて複数回測定を行ない、これらの測定の
結果を繋ぎ合わせることで、全プロダクトイオンの質量
スペクトルを得ていた。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】このように、1つのプ
リカーサイオンから派生する全プロダクトイオンの質量
スペクトルを得るためには、多数回の測定を行なう必要
がある。そのため、測定に時間と手間がかかり、また、
イオン化法の種類によっては、測定の間、プリカーサイ
オンの強度を一定に維持することが難しい場合がある。
また、測定に時間がかかるということは、試料の消費量
が増えるということを意味しており、実質的に感度が低
下することになる。 【0010】例えば、1段式リフレクトロンでは、0.
7Eref≦E≦Eref (E:リフレクトロンのエネルギ
ー)の範囲において、ほぼ実用になる分解能が得られ
る。従って、全プロダクトイオンの質量スペクトルを測
定するためには、リフレクトロンに与える電圧V
ref(Vref:リフレクトロンの入口電圧を0にしたとき
の底面電圧)を等比級数的に減少させながら、測定をn
回だけ繰り返す。即ち、 Vref = Vref0、0.7Vref0、(0.7)2Vref0、
(0.7)3Vref0、・・・、(0.7)n-1Vref0 ここで、Vref0は、プリカーサイオンが最も良い分解能
で測定されるようなリフレクトロン電圧を表わしてい
る。 【0011】今、質量数2000のプリカーサイオンか
らのプロダクトイオンを質量数50まで測定しようとす
ると、 50/2000 ≧ 0.7n ∴n=11 となり、全部で11回の測定が必要になる。さらに、プ
リカーサイオンの質量数が4000になると、 50/4000 ≧ 0.7n ∴n=13 となり、実に13回もの測定が必要になる、という問題
を生じる。 【0012】また、質量数の小さなプロダクトイオン
は、運動エネルギーが低いため、検出器における検出効
率が低く、検出器の構造いかんによっては全く検出され
ないこともある、という問題もあった。 【0013】本発明の目的は、上述した諸点に鑑み、M
S/MS測定において、少ない回数で感度良く全プロダ
クトイオンの質量スペクトルが得られるような飛行時間
質量分析計を提供することにある。 【0014】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明の飛行時間質量分析計は、イオン源と第一フ
ライトチューブの間に電位差を設けてイオンを加速させ
ると共に、第一フライトチューブとリフレクトロンの間
にも電位差を設けてイオンを再加速させるようにしたこ
とを特徴としている。 【0015】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。図1は、リフレクトロン型飛行時
間質量分析計の模式図である。従来技術では、多くの場
合、第一フライトチューブ3の電位Vft1とリフレクト
ロン5の入口電位Vre0と第二フライトチューブ6の電
位Vft2を、いずれも0V(グランド電圧)に設定して
おり、 Vft1 = Vre0 = Vft2 = 0 である。また、加速電圧Vaは、 Va = Vs − Vft1 = Vs である。ただし、装置の種類によっては、 Vs = 0 Va = −Vft1 = −Vre0 = −Vft2 としている装置もある。いずれの場合も、第一フライト
チューブ3,リフレクトロン5の入口、第二フライトチ
ューブ6は同電位である。即ち、 Vft1 = Vre0 = Vft2 本発明では、これらの電位を、正イオンのMS/MS測
定の場合、 Vft1 > Vre0、 Vre0 = Vft2 負イオンのMS/MS測定の場合、 Vft1 < Vre0、 Vre0 = Vft2 に設定することで、第一フライトチューブ3とリフレク
トロン5の間でイオンが再加速されるように構成する。 【0016】今、第一フライトチューブ3の中で、質量
数Mprecのプリカーサイオンが壊裂して、質量数Mprod
のプロダクトイオンが生成したとすると、そのイオンが
リフレクトロン5に入射するときの運動エネルギーE
prodは、 Eprod = (Vs−Vft1)*(Mprod/Mprec)+
(Vft1−Vre0) となり、質量数無限小のプロダクトイオンでも、少なく
とも(Vft1−Vre0)の運動エネルギーを持つようにな
る。これにより、低質量のプロダクトイオンの検出器7
における検出効率が改善される。 【0017】また、リフレクトロンで、0.7Eref≦E
≦Eref の範囲において、ほぼ実用になる分解能が得
られると仮定すると、全プロダクトイオンの質量スペク
トルを得るために必要な測定の回数nは、 Eprod min/Eprec = (Vft1−Vre0)/{(Vs−
Vft1)+(Vft1−Vre0)}= (Vft1−Vre0)/
(Vs−Vre0))≧ 0.7n と表わすことができ、プリカーサイオンの質量数、ある
いは測定したい最小のプロダクトイオンの質量数にかか
わらず、必ず有限回の測定で全プロダクトイオンの質量
スペクトルを得られることがわかる。例えば、図2のよ
うな電位差を設ける場合、正イオン検出時に、Vs=2
0kV、Vft1=0V、Vre0=Vft2=−3kVと設定
すれば、n=6となり、6回の測定で必ず全プロダクト
イオンの質量スペクトルを得ることができ、従来の方法
よりも測定の回数を減らすことができる。 【0018】尚、図2の実施例では、第一フライトチュ
ーブ3をグランド電位とし、リフレクトロン5の入口、
及び第二フライトチューブ6を負の電位にフロートした
が、図3の実施例のように、Vre0=Vft2=0、Vs>
Vft1>0として、第一フライトチューブ3を正の電位
にフロートしても、同様の効果を得ることができる。 【0019】 【発明の効果】以上述べたごとく、本発明の飛行時間質
量分析計を用いれば、MS/MS測定において、全プロ
ダクトイオンのスペクトルを得るために必要な測定の繰
り返し回数が減少するため、測定にかかる時間と手間が
減少し、実質的な感度が向上する。また、イオンの運動
エネルギーが高まることにより、低質量のプロダクトイ
オンの検出効率が向上する。
ーブ、4・・・イオンゲート、5・・・リフレクトロン、6・・
・第二フライトチューブ、7・・・検出器。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】イオン源と、第一フライトチューブと、イ
オンゲートと、リフレクトロンと、第二フライトチュー
ブと、検出器とから成る飛行時間質量分析計において、
イオン源と第一フライトチューブの間に電位差を設けて
イオンを加速させると共に、第一フライトチューブとリ
フレクトロンの間にも電位差を設けてイオンを再加速さ
せるようにしたことを特徴とする飛行時間質量分析計。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10054298A JP3472130B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 飛行時間質量分析計 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10054298A JP3472130B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 飛行時間質量分析計 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11283556A JPH11283556A (ja) | 1999-10-15 |
JP3472130B2 true JP3472130B2 (ja) | 2003-12-02 |
Family
ID=14276851
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10054298A Expired - Fee Related JP3472130B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 飛行時間質量分析計 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3472130B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
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JP4688504B2 (ja) * | 2005-01-11 | 2011-05-25 | 日本電子株式会社 | タンデム飛行時間型質量分析装置 |
JP4594138B2 (ja) * | 2005-03-16 | 2010-12-08 | 日本電子株式会社 | 飛行時間型質量分析計 |
JP5220574B2 (ja) * | 2008-12-09 | 2013-06-26 | 日本電子株式会社 | タンデム飛行時間型質量分析計 |
KR101790534B1 (ko) * | 2011-05-13 | 2017-10-27 | 한국표준과학연구원 | 초고속 멀티 모드 질량 분석을 위한 비행시간 기반 질량 현미경 시스템 |
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-
1998
- 1998-03-27 JP JP10054298A patent/JP3472130B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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JPH11283556A (ja) | 1999-10-15 |
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