JP3469440B2 - 光制御素子及びその製造方法 - Google Patents

光制御素子及びその製造方法

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JP3469440B2
JP3469440B2 JP24692197A JP24692197A JP3469440B2 JP 3469440 B2 JP3469440 B2 JP 3469440B2 JP 24692197 A JP24692197 A JP 24692197A JP 24692197 A JP24692197 A JP 24692197A JP 3469440 B2 JP3469440 B2 JP 3469440B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光制御素子に係
り、特に、光信号の出力を光を用いて制御することが可
能な全光型光制御素子に関する。
【0002】また、本発明は、電気または光による信号
の制御、情報の記憶、伝達などの機能を有する有機薄膜
素子に関する。
【0003】
【従来の技術】近未来の高度情報化社会においては、例
えば、毎秒テラビットを超える超大容量の情報を、高
速、高精度、及び高効率で伝送・処理することが要求さ
れる。このような超大容量の情報は、現在のところ、基
幹幹線系において伝送・処理されるものと考えられてい
るが、21世紀には、ますます情報量が巨大化し、加入
者系においても、このような超大容量の情報の伝送・処
理が行われることが十分予想される。
【0004】しかしながら、現在、広く用いられている
電子システムの処理スピードは、毎秒50ギガビットが
限界とされているために、上述の超大容量の情報の伝送
・処理に対応することができない。したがって、今後、
情報の伝送・処理能力において、電子システムを遥かに
凌駕する光システムの重要性が増大することが予想され
る。
【0005】光システムにおいては、超高速の変調・復
調を実現する光制御素子、すなわち、光を用いて光信号
の制御を行なう、全光(オールオプティカル)型の光−
光制御素子が重要である。この光−光制御素子は、電子
回路のような回路のCR積による帯域制限がなく、変調
・復調の超高速制御が可能である。また、光−光制御素
子は、出力光をそのまま次ステップの制御光あるいは信
号光として利用できるという利点を有している。
【0006】したがって、光−光制御素子を、光ゲート
素子、光論理素子、光双安定素子、及び光パルス制御素
子等として用いて光システムを構築した場合、電子回路
を用いることによる信号処理速度の低下から解放され、
超高速で情報の伝送・処理を行なうことが可能となり、
さらには光コンピュータの実現が可能となる。
【0007】このような光を用いた光信号の制御におい
ては、非線形光学効果が重要な役割を果たしており、3
次非線形光学効果と呼ばれる光強度に依存する屈折率変
化や吸収係数変化が、光−光制御を行なうための基本原
理として注目を集めている。
【0008】この3次非線形光学効果における、光強度
Iと屈折率nとの関係及び光強度Iと吸収係数αとの関
係は、線形屈折率、非線形屈折率、線形吸収係数、及び
非線形吸収係数を、それぞれ、n0 、n2 、α0 、及び
α2 とした場合、次式で示される。
【0009】n=n0 +n2 ・I α=α0 +α2 ・I これらの式から明らかなように、低い強度の光で、光学
的特性の大きな変化を得るためには、n2 あるいはα2
に高い非線形性が必要となる。これらを支配するのが3
次非線形感受率χ(3) である。
【0010】このような3次非線形光学効果を示す材料
についての研究は、以下に示す、半導体超微粒子系、半
導体超格子系、及び有機π電子材料系の3材料系につい
て進められている。
【0011】半導体超格子系の材料として、例えば、直
接遷移型半導体を用いた場合、バンドフィリング効果に
より、大きな非線形光学応答が得られることが期待され
る。直接遷移型半導体として、GaAs/AlAsを用
いた場合は、MQWで、5×10-2esuもの高い3次
非線形感受率χ(3) を得ることができる。
【0012】しかしながら、半導体超格子系の材料にお
いては、このように極めて大きな3次非線形感受率χ
(3) を得ることができるが、応答速度が光励起キャリア
の再結合寿命に支配されるために、本質的な応答速度は
遅い(励起キャリアの寿命はnsecオーダー)。そこ
で、応答速度を高めるために、表面再結合速度を高める
ことが検討されているが、psecレベル以下の超高速
な応答、とりわけ、繰り返し応答速度を高めることがで
きないという問題を有している。
【0013】半導体微粒子系の材料においては、粒径を
10nm以下にすることにより、表面再結合速度を高
め、数10psもの高速の応答速度を得ることができ
る。しかしながら、CdSx Se1-x ドープガラス等に
ついて調べられているように、3次非線形感受率χ(3)
は10-9〜10-8esu程度であり、高い3次非線形感
受率χ(3) は得られていない。
【0014】また、有機π電子材料系の材料において
は、非線形応答がπ電子の純粋な電子分極に起因するた
め、fsecオーダーもの高速の応答速度が得られる。
しかしながら、3次非線形感受率χ(3) に関しては、最
も高いとされるポリジアセチレン系のパラトルエンスル
ホン酸エステル誘導体でさえ、χ(3) =8×10-10
suと、極めて小さい。
【0015】この有機π電子材料系の材料を用いた光制
御素子に関しては、非線形性の起源がπ電子の純粋な電
子分極にあることから、3次非線形感受率χ(3) を高め
るために、ポリジアセチレン、trans −ポリアセチレ
ン、及びポリアリーレンビニレン等の、1次元π共役系
高分子や、フタロシアニン等の環状π共役化合物等を用
いることにより、π電子の共役長を伸ばす試みがなされ
てきた。しかしながら、この方法では、非線形性を飛躍
的に高めることは困難である。
【0016】また、有機π電子材料系の材料は、上述の
ように3次非線形感受率が非常に低い。そのため、有機
π電子材料系の材料を用いた光制御素子では、所望の光
学的変化を誘起するために、極めて高い強度の光を照射
する必要がある。しかしながら、このような高強度の光
を照射すると、材料が光損傷・熱損傷してしまうと共
に、新たに熱的な効果を生じるという問題を有してい
る。
【0017】したがって、高い3次非線形感受率と高速
な応答速度とを同時に実現する光制御素子が望まれてい
る。
【0018】また、近年、有機分子あるいは有機結晶に
固有の物性を利用して、従来のデバイスにはない新規な
機能を有するデバイスを実現しようとする分子エレクト
ロニクスへの関心が高まっている。これまでに、有機分
子を用いた2次非線形光学素子、電気的スイッチング素
子、注入型発光素子、太陽電池、光情報記録媒体等へ応
用しようとする研究が活発に行われている。
【0019】これらはいずれも無機材料系においても見
出だされている物性を、有機材料を用いることによっ
て、さらに特性や製造コスト等を改善しようとするもの
である。一方、有機分子系だけに見出される物性現象の
1例として、ある種の有機錯体結晶に起こる電荷移動現
象もまた注目されている。
【0020】有機材料のうちには、イオン化ポテンシャ
ルが小さく、他の分子に電子を供給し、自らは正のイオ
ンになりやすいドナー分子と、電子親和力が大きく、他
の分子から電子を受け取って自らは負のイオンになりや
すいアクセプター分子とがある。これら2種の分子間に
は、電荷移動錯体と称される化合物が形成されることは
よく知られている。例えば、ペリレンとテトラシアノキ
ノジメタン(TCNQ)との化合物は、中性分子からな
る化合物である。一方、テトラメチルフェニレンジアミ
ン(TMPD)とTCNQとの化合物は、それぞれの分
子が正、負となったイオン性の化合物である。また、テ
トラチアフルバレン(TTF)とクロラニル(CA)と
の化合物は、温度や圧力の変化によって中性−イオン性
転移が観測されることも知られている(J.B.Tor
rance et al.:Phys.Rev.Let
t.,46,253(1981))。
【0021】このような有機分子における電荷移動現象
を、電気素子、光学素子の動作原理として応用する場合
に重要な点は、電界や光により、いかに効率よく、しか
も制御性よく電荷移動を起こさせるかということであ
る。最近、電荷移動錯体の電気的特性に関して、興味あ
る結果が報告されている(十倉好紀ら:1988年秋、
物理学会予稿集、3a−S4−1,3a−S4−2,3
a−S4−3他、Y.Tokura et al.:P
hysica 143B,527(1986))。ここ
では、ドナー分子とアクセプター分子とが、互いに分子
面を向かい合わせて積層されている交互積層型錯体結晶
では、比誘電率の異方性が高く、積層方向の比誘電率が
100〜1000と極めて高いこと、103 〜104
/cmオーダーの電界下で非線形な電気伝導やスイッチ
ング特性が観察されることが報告されている。その原因
として、中性結晶内に熱的又は電気的に生成されたイオ
ン性ドレイン又はイオン性結晶内の中性ドメインが、電
界により動力学的に動くことが考えられている。
【0022】この現象は、中性−イオン性転移と関連性
があるものの、極めて局所的な変化であって、結晶全体
が巨視的に変化しているわけではない。現状では、電界
や光による巨視的な中性−イオン性転移は実現していな
い。
【0023】電荷移動錯体において、電界により巨視的
な中性−イオン性転移を起こすためには、素子内の電界
の方向とドナー分子及びアクセプター分子の積層軸の方
向とが一致していることが極めて重要である。このよう
に有機分子の特性を活かしたデバイスを実現するために
は、膜厚などのサイズや膜内の構造的均一性はもちろん
のこと、膜内の1分子オーダーでの分子配列、隣接する
分子間の相互配置及び分子配向を制御することが非常に
重要となる。
【0024】近年、分子配向、配列が制御された超薄膜
を作製する方法の一つとして、Langmuir−Bl
odgett(LB)法が注目を集めている。これは、
水面上に形成された単分子膜を一層ずつ基板上に累積し
て、同種又は異種の超格子膜を作製する方法である。し
かし、実際には、水面上に展開された膜中の分子のパッ
キング状態や均一性が悪く、基板に累積する際に単分子
膜構造が乱れるという問題がある。このため、膜全体又
は累積層間の分子配向が制御された超格子薄膜を形成で
きるレベルには至っていない。LB法による成膜技術を
向上させるためには、LB法に適した分子の設計と、そ
の合成技術の確立が必要となっている。
【0025】一方、特別な分子設計を必要とせず、ほと
んどの有機分子に容易に適用できる技術として、真空蒸
着法に関する研究も盛んに行われている。しかし、真空
蒸着法では、分子蒸着源をいったんガス化して再び凝集
させるため、ガス化分子の供給速度、基板表面に付着し
た分子の表面拡散や結晶化などの速度のバランス、吸着
分子と基板表面との相互作用に依存して、膜構造や分子
配向が種々変化することが予想される。
【0026】従来の有機蒸着膜に関する研究では、主と
して長鎖炭化水素系直線状分子やフタロシアニンなどの
平板状分子について、種々の基板上での薄膜成長過程と
分子配向に関する検討がなされてきた。基板としては、
電子顕微鏡、電子線回折による評価を目的とする場合に
は単結晶アルカリハライド、単結晶金属;光学的評価を
目的とする場合には石英;電気的評価を目的とする場合
にはSi単結晶;などが主に用いられている。蒸着条件
については、基板温度及び蒸着速度の影響を調べた例が
多い。アメリカのVincettらは、蒸着材料、基板
の種類によらず、絶対温度で基板温度を蒸着材料の沸点
の1/3に設定することにより、均一な連続膜が形成で
きると報告している。しかし、蒸着条件を適性化しただ
けでは、任意の基板上に蒸着される有機薄膜の配向を制
御することは極めて困難である。
【0027】基板がその上に蒸着される有機薄膜の分子
配向に及ぼす影響については、以下のような研究が知ら
れている。(1)西ドイツのKarlらは、清浄なSi
単結晶表面に形成された数分子層のペリレンテトラカル
ボン酸二無水物の蒸着膜では、分子面が基板表面に平行
に配向していることを報告している。(2)原は、分子
線蒸着法を用いたフタロシアニン蒸着膜の研究におい
て、通常の高真空蒸着では不連続膜しか形成できない条
件でも、超高真空下で蒸着速度を0.1nm/分程度の
非常に遅い条件にすることにより、均一な連続膜で、し
かも分子面が基板表面に平行配向した膜を形成できると
報告している。この研究では、基板と蒸着された有機結
晶との格子不整合を回避する目的で、ファンデアワール
ス・エピタキシーの考え方に基づき、基板として層状化
合物であるMoS2 が用いられている。(3)原田ら
は、グラファイト基板上に形成された数分子層のペンタ
セン蒸着膜では、分子面が基板表面に平行配向している
ことを報告している。
【0028】このように真空蒸着法による薄膜形成に関
して多種多様な研究がなされているにもかかわらず、膜
構造、分子配向の制御因子が統一的に理解されている状
況ではない。
【0029】これに対し、本発明者らは、基板と蒸着分
子との間に生じる相互作用に着目して鋭意検討した。そ
の結果、高配向グラファイト基板を用い蒸着条件を適正
化すれば、均一な連続膜が容易に形成できることを見出
した。また、高配向グラファイト基板上で得られる配向
効果は、基板とπ電子化合物分子との間の分散力に基づ
くものであると推定した。
【0030】これに基づき、基板上にグラファイト類似
骨格を有する薄膜によって分子配向制御層を形成する方
法、さらには、分散力が基板表面原子の電子分極率に依
存する点に着目して基板表面原子の分極率を規定する方
法などの改良を試みた。
【0031】しかし、実際には任意の基板上でこのよう
な分子配向制御層を制御して形成することは難しく、配
向性結晶薄膜を用いる有機薄膜素子の開発に大きな壁と
なっていた。
【0032】上述のように、有機薄膜の有する特徴的な
機能を最適化するためには、基板表面に対する分子配向
を制御した薄膜構造、或いは薄膜内での結晶軸配向を制
御した薄膜構造を形成する必要がある。
【0033】しかし、このような分子配向制御を可能と
するためには、基板本体の表面凹凸にかかわらず分子サ
イズレベルで平坦な最表面を用意すると共に、分子配向
制御性の高い最表面を用意する技術を確立することが求
められている。
【0034】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、高い3次非線形感受率と高速な応答速度とを同時に
実現する光制御素子を提供することにある。
【0035】本発明の第2の目的は、基板本体の材質・
形状にかかわらず、有機薄膜の構造ならびに分子配向性
を制御可能であり、光学素子、電子素子などとして実用
的に使用し得る有機薄膜素子を提供することにある。
【0036】また、本発明の第3の目的は、基板本体の
材質・形状にかかわらず、有機薄膜の構造ならびに分子
配向性を制御可能であり、光学素子、電子素子などとし
て実用的に使用し得る有機薄膜素子を製造する方法を提
供することにある。
【0037】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1に、基板
と、前記基板上に形成された第1の電極層と、前記第1
の電極層上に形成された第1の絶縁体層と、前記第1の
絶縁体層上に形成された電子供与性有機化合物と電子受
容性有機化合物とを含む光制御層と、前記光制御層上に
形成された第2の絶縁体層と、前記第2の絶縁体層上に
形成された第2の電極層と、前記光制御層に、前記光制
御層が相転移を起こすのに必要な強度未満の外部電場を
印加する手段とを具備し、前記強度未満の外部電場の印
加により電荷移動励起子を誘起する光制御素子を提供す
る。
【0038】本発明は、第2に、基板と、前記基板上に
形成された第1の電極層と、前記第1の電極層上に形成
された第1の絶縁体層と、前記第1の絶縁体層上に形成
された電子供与性有機化合物と電子受容性有機化合物と
を含む光制御層と、前記光制御層上に形成された第2の
絶縁体層と、前記第2の絶縁体層上に形成された第2の
電極層と、前記第1の絶縁体層と前記光制御層との間、
及び前記第2の絶縁体層と前記光制御層との間のうち少
なくとも一方に設けられたアモルファス有機膜からなる
分子配向制御層と、前記光制御層に、前記光制御層が相
転移を起こすのに必要な強度未満の外部電場を印加する
手段とを具備し、前記強度未満の外部電場の印加により
電荷移動励起子を誘起する光制御素子の製造方法であっ
て、前記アモルファス有機膜の1つの表面上に、真空蒸
着法により、10 -9 Torrより高い真空度において1
00オングストローム/分以下の成長速度で、1分子層
以上2000オングストローム以下の膜厚の結晶性有機
薄膜からなる光制御層を形成することを特徴とする光制
御素子の製造方法を提供する。
【0039】
【0040】
【0041】
【発明の実施の形態】まず、本発明の光制御素子につい
て説明する。
【0042】本発明の光制御素子は、基本的に、基板
と、基板上に形成された第1の電極層と、第1の電極層
上に形成された第1の絶縁体層と、第1の絶縁体層上に
形成された電子供与性有機化合物と電子受容性有機化合
物とを含む光制御層と、光制御層上に形成された第2の
絶縁体層と、第2の絶縁体層上に形成された第2の電極
層と、光制御層に、光制御層が相転移を起こすのに必要
な強度未満の外部電場を印加する手段とを具備する。こ
の光制御素子では、光制御層が相転移を起こすのに必要
な強度未満の外部電場を印加することにより、電荷移動
励起子が誘起される。
【0043】外部電場の強度は、好ましくは、光制御層
が相転移を起こすのに必要な強度未満であり、かつその
強度の1/104 以上の範囲内である。
【0044】光制御層には、信号光が入射され得る。
【0045】この信号光は、光制御層が相転移を起こす
のに必要な強度未満の外部電場の印加により制御可能で
あるが、好ましくは、制御光照射手段により、信号光の
出力強度を制御するための制御光が前記光制御層に照射
される。
【0046】光制御層は、電子供与性有機化合物と電子
受容性有機化合物とを含み、好ましくは、電子供与性有
機化合物と電子受容性有機化合物とが交互に積層された
交互積層型電荷移動錯体結晶から実質的になる。交互積
層型電荷移動錯体結晶を用いると、所定の電場の印加に
より中性−イオン性相転移が生じる。
【0047】また、第1及び第2の絶縁体層の少なくと
も一方が光透過性を有することが好ましい。絶縁体層の
いずれかが、光透過性を有すると、信号光を、絶縁体層
を透過して前記光制御層に入射させることができる。
【0048】信号光はまた、基板の主面と平行な方向か
ら、前記光制御層に入射させることができる。
【0049】本発明の光制御素子には、第1の絶縁体層
と光制御素子との間、及び第2の絶縁体層と前記光制御
素子との間のうち少なくとも一方に、分子配向制御層を
設けることができる。分子配向制御層を用いることによ
り、結晶性の高い有機薄膜の特徴を生かしたり、結晶軸
方向による物性の異方性を利用した有機薄膜素子を得る
ことができる。
【0050】分子配向制御層は、アモルファス有機膜か
らなることが好ましく、さらに好ましくはステロイド系
骨格を有する分子をもつ有機膜である。
【0051】さらにまた、分子配向制御層は、異種のア
モルファス有機膜を積層した構造を有し、ステロイド系
骨格を有する分子をもつアモルファス有機膜を少なくと
も1つ含むことが好ましい。
【0052】以下、本発明の光制御素子について、図面
を用いて説明する。
【0053】図1に、本発明の一態様に係る光制御素子
の一断面図を示す。
【0054】この図で、参照符号1は基板を示してお
り、基板1の一方の主面上には、第1の電極層2、第1
の絶縁体層3、光制御層4、第2の絶縁体層5、及び第
2の電極層6が、順次積層されている。また、これら電
極層2、6、絶縁体層3、5及び光制御層4の、それぞ
れの主面は、平行になるように配置されている。
【0055】本発明の光制御素子で用いられる基板とし
ては、ガラス、石英、及び酸化物等の透明性を有する誘
電体等からなる透明基板を挙げることができる。また、
Si等の半導体やAl等の金属等の光透過性を有してい
ない基板も用いることができる。これら基板は、光制御
素子の駆動方法に応じて選択される。
【0056】本発明の光制御素子で用いられる第1及び
第2の電極層は、ITO、ZnO、及びSnO2 等の透
明電極や、Al、Au、Ag、及びPt等の金属からな
る電極である。また、ポリピロール、ポリアニリン、ポ
リチオフェン等の導電性高分子膜を用いることもでき
る。これらの電極は、光制御素子の駆動方法に応じて選
択され、第1及び第2の電極層の両方を透明電極または
金属からなる電極で構成することができ、一方を透明電
極、他方を金属からなる電極で構成することも可能であ
る。金属からなる電極板を上述の基板として用いること
もできるが、通常は、絶縁性の基板上に、20オングス
トローム〜2000オングストロームの厚さの薄膜とし
て形成される。
【0057】本発明の光制御素子で用いられる第1及び
第2の電極層は、それぞれの対向面が光反射性を有して
もよい。これらの電極層は、ファブリ・ペロー共振器の
ミラーとなるように、それぞれの主面が平行に配置され
ている。
【0058】本発明の光制御素子で用いられる第1及び
第2の絶縁体層は、スクシノニトリル、ポリメタクリル
酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリスチレン、及
びポリシラン等の絶縁性の有機化合物や、SrTi
3 、及びSiO2 等の金属酸化物、ステロイド系骨格
を有する有機膜等の絶縁体で構成されることが好まし
い。
【0059】絶縁体層は、分子配向制御層としての機能
を有することが好ましい。この分子配向制御層は、光制
御層の分子配向を制御するために用いられる。
【0060】絶縁体層は、光制御層に有効に電圧が印加
されるように、誘電率の高い材料で構成することが好ま
しい。このような絶縁体としては、強誘電体を挙げるこ
とができるが、SrTiO3 やPbTiO3 のような比
誘電率が10以上の材料を用いることが好ましい。
【0061】本発明の光制御素子では、信号光を、この
一対の絶縁体層間に挟持される光制御層に導入して、こ
の光制御層に制御光を照射することにより、出力光の制
御が行なわれる。ここで、信号光とは、本発明の素子に
より出力が制御される光であり、通常は、波長が300
nm〜2000nm、強度が0.01MW/cm2 〜1
00MW/cm2 である。また、制御光とは、光制御層
の光学的性質を制御する光であり、通常は、波長が30
0nm〜2000nm、強度が0.01MW/cm2
1GW/cm2 である。これら、信号光及び制御光を、
光制御層に、別々に照射してもよく、信号光を制御光と
して用いてもよい。
【0062】信号光を、絶縁体層を透過させることな
く、基板の主面に平行な方向で、光制御層に導入及び出
力する場合、絶縁体層は、光透過性を有する必要はな
い。しかしながら、信号光を絶縁体層を透過させて光制
御層に導入する場合、または出力光を絶縁体層を透過さ
せて光制御層から出力する場合は、絶縁体層は、光透過
性を有する必要がある。このような絶縁体層は、通常
は、反射率が50%以下になるように、光透過性を制御
される。
【0063】本発明の光制御素子の光制御層としては、
ドナー分子である電子供与性の有機化合物と、アクセプ
タ分子である電子受容性の有機化合物とが、交互に積層
された交互積層型電荷移動錯体結晶を用いることができ
る。
【0064】以下に、本発明にかかる光制御素層に用い
られる、ドナー分子及びアクセプタ分子の略称、化合物
名及び化学式を示す。
【0065】ドナー分子 アニリン[D−1] N−メチルアニリン[D−2] N,N−ジメチルアニリン[D−3] PD:p−フェニレンジアミン[D−4] ClPD:2−クロロ−p−フェニレンジアミン[D−
5] ClMePD:2−クロロ−5−メチル−p−フェニレ
ンジアミン[D−6] DClPD:2,5−ジクロロ−p−フェニレンジアミ
ン[D−7] DMePD:2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミ
ン[D−8] DAD:ジアミノジュレン[D−9] TMPD:N,N,N’,N’−テトラメチル−PD
[D−10] N,N−DMePD:N,N−ジメチル−PD[D−1
1] 1、5−ジメチルナフタレン[D−12] 1、8−ジメチルナフタレン[D−13] ベンジジン[D−14] TMB:3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
[D−15] NNN’N’−TMB:N,N,N’,N’−テトラメ
チル−ベンジジン[D−16] DAP:1,6−ジアミノピレン[D−17] TMDAP:N,N,N’,N’−テトラメチル−DA
P[D−18] フェナジン[D−19] M2 P:5,10−ジメチル−5,10−ジヒドロフェ
ナジン[D−20] E2 P:5,10−ジエチル−5,10−ジヒドロフェ
ナジン[D−21] Pr2 P:5,10−ジプロピル−5,10−ジヒドロ
フェナジン[D−22] HMP:5−メチル−5,10−ジヒドロフェナジン
[D−23] M6 P:5,10−ジヒドロ−2,3,5,7,8,1
0−ヘキサメチルフェナジン[D−24] PTZ:フェノチアジン[D−25] N−MePTZ:N−メチルフェノチアジン[D−2
6] ClPTZ:2−クロロフェノチアジン[D−27] TDAE:テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン フェロセン[D−28] ジメチルフェロセン[D−29] デカメチルフェロセン[D−30] ニッケロセン デカメチルニッケロセン コバルトセン TTF:テトラチアフルバレン[D−31] DMTTF:2,6−ジメチルテトラチアフルバレン
[D−32] TMTTF:テトラメチルテトラチアフルバレン[D−
33] DPhTTF:2,6−ジフェニルテトラチアフルバレ
ン[D−34] DPhDMTTF:2,6−ジフェニル−3,7−ジメ
チルテトラチアフルバレン[D−35] DBTTF:ジベンゾテトラチアフルバレン[D−3
6] OMTTF:オクタメチレンテトラチアフルバレン[D
−37] HMTTF:ヘキサメチレンテトラチアフルバレン[D
−38] TTC1 TTF[D−39] TTeC1 TTF[D−40] TSF:テトラセレナフルバレン[D−41] TMTSF:テトラメチルテトラセレナフルバレン[D
−42] HMTSF;ヘキサメチレンテトラセレナフルバレン
[D−43] HMTTeF:ヘキサメチレンテトラテルラフルバレン
[D−44] TTT:テトラチアテトラセン[D−45] TST:テトラセレナテトラセン[D−46] BTP:テトラフェニルビチオピラリデン[D−47] ナフタレン アントラセン フェナントレン ペンタセン ピレン ペニレン アズレン アセナフテン カルバゾール アクリジン (アクセプタ分子) BQ:p−ベンゾキノン[A−1] R1 2 3 4 BQ(R1 〜R4 =H,Me,Cl,
Br,I,F,CN)[A−2] R1 BQ:(R1 =Me,Cl,Br)[A−3] MeBQ ClBQ BrBQ R1 2 BQ:2−R1 −5−R2 −BQ(R1 ,R2
=Me,Cl,Br)[A−4] Me2 BQ Cl2 BQ ClMeBQ Br2 BQ BrMeBQ 2−R1 −6−R2 −BQ(R1 ,R2 =Me,Cl,
Br)[A−5] 2,6−Cl2 BQ 2,6−Br2 BQ 2,6−Me2 BQ Cl3 BQ:2,3,5−トリクロロ−p−ベンゾキノ
ン[A−6] CA:クロラニル[A−7] BA:ブロマニル[A−8] IA:ヨーダニル[A−9] FA:フルオラニル[A−10] DDQ:2,3−ジシアノ−5,6−ジクロロ−p−ベ
ンゾキノン[A−11] Me4 BQ:テトラメチル−p−ベンゾキノン[A−1
2] o−BQ:o−ベンゾキノン[A−13] o−CA:o−クロラニル[A−14] o−BA:o−ブロマニル[A−15] NQ:ナフトキノン[A−16] R1 2 3 4 5 6 NQ[A−17] R1 2 NQ:2−R1 −3−R2 −NQ(R1 ,R2
=Cl,CN)[A−18] Cl2 NQ:2,3−ジクロロナフトキノン (CN)2 NQ:2,3−ジシアノナフトキノン AQ:9,10−アントラキノン[A−19] R1 2 3 4 5 6 AQ[A−20] TCNQ:テトラシアノキノジメタン[A−21] R1 2 3 4 TCNQ[A−22] R1 TCNQ:2−R1 −TCNQ(R1 =Me,OM
e,F,Cl,Br)[A−23] MeTCNQ (OMe)TCNQ FTCNQ ClTCNQ BrTCNQ R1 2 TCNQ:2−R1 −5−R2 −TCNQ(R
1 、R2 =Me,Et,Pr,OMe,F,Cl,B
r,I)[A−24] Me2 TCNQ Et2 TCNQ Pr2 TCNQ (OMe)2 TCNQ F2 TCNQ Cl2 TCNQ Br2 TCNQ I2 TCNQ ClMeTCNQ BrMeTCNQ IMeTCNQ F4 TCNQ[A−25] TCNNQ:テトラシアノ−1,4−ナフトキノジメタ
ン[A−26] R1 2 3 4 5 6 TCNNQ[A−27] TCNAQ:テトラシアノ−9,10−アントラキノジ
メタン[A−28] R1 2 3 4 5 TCNAQ[A−29] TNAP:テトラシアノ−2,6−ナフトキノジメタン
[A−30] F6 TNAP[A−31] TCNDQ[A−32] F8 TCNDQ[A−33] DCNQI:ジシアノキノンジイミン[A−34] R1 2 3 4 DCNQI[A−35] R1 DCNQI:2−R1 −ジシアノキノンジイミン
(R1 =Me,Cl,Br)[A−36]MeDCNQ
I:2−メチルジシアノキノンジイミン ClDCNQI:2−クロロジシアノキノンジイミン BrDCNQI:2−ブロモジシアノキノンジイミン R1 2 DCNQI:2−R1 −5−R2 −DCNQI
(R1 ,R2 =Me,Cl,Br)[A−37] DMeDCNQI:2,5−ジメチルジシアノキノンジ
イミン ClMeDCNQI:2−クロロ−5−メチルジシアノ
キノンジイミン DClDCNQI:2,5−ジクロロジシアノキノンジ
イミン BrMeDCNQI:2−ブロモ−5−メチルジシアノ
キノンジイミン Br2 DCNQI:2−ジブロモジシアノキノンジイミ
ン Cl4 DCNQI:2,3,5,6−テトラクロロジシ
アノキノンジイミン F4 DCNQI:2,3,5,6−テトラフルオロジシ
アノキノンジイミン DCNNQI:ジシアノ−1,4−ナフトキノンジイミ
ン[A−38] R1 2 3 4 5 6 DCNNQI[A−39] DCNAQI:ジシアノ−1,4−ナフトキノンジイミ
ン[A−40] R1 2 3 4 5 DCNAQI[A−41] TNB:1,3,5−トリニトロベンゼン[A−42] TNF:2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン
[A−43] DTF:2,4,7−トリニトロ−9−フルオレニリデ
ンマロノニトリル[A−44] TENF:2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオ
レノン[A−45] DTENF:2,4,5,7−テトラニトロ−9−フル
オレニリデンマロノニトリル[A−46] TCNE:テトラシアノエチレン[A−47] HCBD:ヘキサシアノブタジエン[A−48] HCNB:ヘキサシアノベンゼン[A−49] TCNB:テトラシアノベンゼン[A−50] DCNB:ジシアノベンゼン[A−51] PMDA:ピロメリト酸二無水物[A−52]
【化1】
【0066】
【化2】
【0067】
【化3】
【0068】
【化4】
【0069】
【化5】
【0070】
【化6】
【0071】
【化7】
【0072】
【化8】
【0073】
【化9】
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
【化12】
【0077】
【化13】
【0078】以下の表に、これらドナー分子及びアクセ
プタ分子の組み合せの例を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】上記表に例示したドナー分子とアクセプタ
分子の組み合せからなる結晶は、外部場の非印加時にお
いて、電荷移動量の少ない中性状態の電荷移動錯体、並
びに電荷移動量の多いイオン性の電荷移動錯体を含んで
いる。一般に、交互積層型電荷移動錯体の電荷移動状態
は、構成分子のイオン化エネルギーと、イオン性結晶に
おけるマーデルングエネルギーとにより決定される。
【0091】本発明者らは、電荷移動状態の異なる結晶
を混合して混晶を形成することによりイオン化エネルギ
ーを制御できることを見出し、さらに、特開平4−13
7666号公報で、結晶を超薄膜化して、マーデルング
エネルギーに寄与する分子数を変化させることにより、
マーデルングエネルギーを制御することができることを
開示している。
【0092】したがって、上記表に例示したドナー分子
とアクセプタ分子の組みからなる結晶は、例え外部場の
非印加時にイオン性の電荷移動錯体を形成するものであ
っても、本発明の光制御素子に用いることができるので
ある。
【0093】上述のようにして構成される光制御層の厚
さは、素子を構成する材料によって異なるが、一般に、
10オングストローム〜1μmである。また、ドナー分
子とアクセプタ分子との組みは、通常、光制御層の厚さ
方向に、数個〜数千個程度積層される。
【0094】以上説明した本発明の光制御素子は、通
常、基板上に、第1の電極層、第1の絶縁体層、光制御
層、第2の絶縁体層、第2の電極層の順に、順次積層す
ることにより形成される。電極層及び絶縁体層は、真空
蒸着法、スパッタ法、プラズマ重合法、CVD法、及び
スピンコート法等の方法を用いて形成することができ、
光制御層は、真空蒸着法、溶液析出法、及びLB法等の
方法を用いて形成することができる。
【0095】以下、本発明の光制御素子の駆動原理につ
いて説明する。
【0096】有機化合物の中には、イオン化ポテンシャ
ルが小さく、他の分子に電子を供給して自らは正のイオ
ンになるドナー分子(D)や、電子親和力が大きく、他
の分子から電子を受け取り自らは負のイオンになるアク
セプタ分子(A)がある。これらの分子が適当に選択・
混合・積層された結晶では、ドナー分子からアクセプタ
分子へ電子が移動して結合が生じた状態(電荷移動状
態)と非結合状態との共鳴により安定化された電荷移動
錯体と呼ばれる化合物が形成されることは、良く知られ
ている。
【0097】例えば、ペリレンとテトラシアノキノジメ
タン(TCNQ)とが積層された結晶では、それぞれの
分子は非結合状態の割合が高い状態、すなわち中性状態
の電荷移動錯体である。しかしながら、テトラメチルフ
ェニレンジアミン(TMPD)とTCNQとが積層され
た結晶では、TMPDからTCNQへの電子の移動が生
じ、それぞれの分子は電荷移動状態の割合が高い共鳴状
態、すなわちイオン性状態になるため、イオン性の電荷
移動錯体が形成されるのである。
【0098】また、ある結晶においては、上述の電荷移
動状態が、外部場の印加量に応じて変化することが知ら
れている。J. B. Torranceらは、Phys. Rev. Lett., 4
6, 253 (1981)で、テトラチアフルバレン(TTF)と
クロラニル(CA)とを積層した結晶は、温度や圧力の
変化により、中性状態とイオン性状態との間の相転移
(NI転移)を生じることを報告している。
【0099】このようなNI転移は、温度や圧力以外の
外部場によっても生じる可能性があることが報告されて
いる。例えば、Y. Tokura らは、Physica. 143B, 527
(1986) で、中性錯体に103 〜104 V/cm程度の
電場を印加することにより、電気伝導率が非線形的に変
化することを報告している。また、S. Koshiharaらは、
Phys. Rev. B 42, 6853 (1990)で、中性あるいはイオン
性錯体を光照射して強励起することにより、イオン性あ
るいは中性のドメインを注入することができることを報
告している。
【0100】しかしながら、上述の電場の印加や光照射
による状態変化は、微視的なものであって、結晶全体が
巨視的に変化しているわけではない。すなわち、これら
の状態変化は、DADADADADA…のように1次元
的に配列しているDA鎖中に、例えば、DADAD+
- DADA…のように、局所的にD+ - のような励起
子が形成されているに過ぎない。
【0101】結晶全体にわたる巨視的な又はそれに近い
変化を光照射して強励起することにより生じさせる場
合、すなわち、光誘起転移を生じさせる場合、非常に高
強度の光を照射する必要がある。したがって、光制御素
子として、単純に、光照射/非照射により入射光の出力
を制御する場合、非常に強い光を照射することにより、
結晶の劣化や別の熱的効果が生ずるという問題を生じて
しまう。
【0102】ごく最近、上述の光照射による微視的な状
態変化において、複数(n)個のD+ - 等の電荷移動
励起子が凝集した、束縛状態が存在することが実験的に
確認された。例えば、アントラセン−ピロメリト酸二無
水物(PMDA)結晶においては、ドナー分子とアクセ
プタ分子との積層鎖中で2つあるいは3つの電荷移動励
起子が接近すると、電気双極子を有するそれぞれの電荷
移動励起子の静電的な相互作用により、束縛状態が可能
になる。
【0103】このような励起子の凝集状態は、「励起子
n−ストリング状態」と呼ばれ、光に対する応答におい
て、巨大振動子効果により光学非線形性を著しく増大さ
せるものである。また、このような巨大振動子効果が現
れる状況下では、励起子の寿命が極めて短くなるため、
非常に高速な応答速度を得ることができる可能性があ
る。
【0104】上述の電場の印加による結晶の状態変化
は、この電荷移動励起子が多数凝集した状態であると考
えられ、NI転移は、以下に図を用いて示すように、電
荷移動励起子の凝集密度が増加して、中性状態とイオン
性状態との間で、基底状態が逆転することにより生じる
と考えられる。
【0105】図2を用いて、電場の印加による結晶のN
I転移を説明する。
【0106】この図に示すように、電界強度Eが0の場
合は、ドナー分子Dと、アクセプタ分子Aとは、ともに
中性の状態である。しかしながら、電界強度Eを上昇さ
せると、励起子D+ - が生成・凝集が生じ、局所的に
イオン性状態が形成される。さらに電界強度Eの上昇を
続けると、中性状態DAに対して、イオン性状態D+
- がより安定化されたとき、すなわち、電界強度Eが相
転移に必要な値Ec に達したときに、全てのDAがD+
- へと変化して、NI転移が生じるのである。
【0107】図3に、このNI転移における、電界強度
Eと、3次非線形感受率χ(3) との関係をグラフにして
示す。このグラフに示すように、電界強度EがEc に達
する直前に、3次非線形感受率χ(3) の最大値が得られ
る。
【0108】したがって、光制御層を、ドナー分子とア
クセプタ分子とからなる結晶で構成し、光制御層がEc
に達するのに必要な強度未満の電場を定常的に印加し
て、光照射により光制御層の光学的性質を制御すること
により、強力な光を照射することによる結晶の劣化を生
じることなく、高い3次非線形感受率と高速な応答速度
とを得ることができるのである。
【0109】この場合、電界強度Eを高くするほど、3
次非線形感受率が高くなるため、制御光の強度を低下さ
せることができる。電界強度Eは、Ec ×10-4≦E<
cであることが好ましく、より好ましくは、0.1E
c ≦E<Ec である。しかしながら、電界強度EがEc
を超える場合、中性−イオン性転移が起こり、イオン性
基底状態となるため、電荷移動励起子効果を利用するこ
とができない。
【0110】図4に、本発明の一態様に係る光双安定型
の光制御素子において所定の電圧を印加した場合の、入
力光強度と出力光強度との関係をグラフにして示す。
【0111】このグラフに示すように、ある強度の入力
光に対して、光制御層の屈折率や吸収係数が2つの安定
状態をとる光制御素子は、光双安定性素子と呼ばれ、記
憶素子、光パルス波形整形/リミッタ素子、微分増幅素
子、光トランジスタ、論路素子等のあらゆる光変調素子
として用いられる。
【0112】本発明の光制御素子における信号光の出力
の制御は、上述のように、光制御層への電圧の印加と光
照射により行われる。本発明者及びS. Tanaka らは、Ph
ys.Rev. B52, 1549 (1995) で、相転移点に極めて近い
状態の結晶について、NI転移が生じる直前の状態にす
るためには、106 V/cm以上の強電場を印加する必
要があることを、シュミレーションにより明らかにして
いる。
【0113】そのため、電場の方向と、結晶中における
ドナー分子及びアクセプタ分子の積層方向とが一致する
ように、これら分子の積層方向を制御して、これら分子
に対し、効率的に電圧を印加することが好ましい。これ
は、例えば、基板側に設けられた絶縁体層と、光制御層
との間に、光制御層中の分子配向を制御するための分子
配向制御層を設けることにより可能となる。
【0114】以上説明したように、本発明の光制御素子
は、所定の電圧を印加した状態で制御光を照射すること
により、光制御層の光学的特性が制御されるが、電圧の
変化のみにより光制御層の光学的特性を制御することも
できる。この場合、僅かな電圧の変化で光制御層の光学
的特性を制御することが可能となる。
【0115】図5に、本発明の他の態様に係る光制御素
子の一断面図を示す。
【0116】図5に示す光制御素子は、図1に示す光制
御素子とほぼ同様の構成であるが、絶縁体層3と光制御
層4との間に分子配向制御層7が設けられている点で異
なっている。この分子配向制御層は、光制御層中のドナ
ー分子及びアクセプタ分子の積層方向を均一化するため
に、表面が分子レベルで平坦であることが好ましい。ま
た、上記分子の積層方向を制御するために、上記分子と
の間に強い分子間相互作用が生じる材料を用いて分子配
向制御層を形成することが好ましい。このような分子配
向制御層としては有機アモルファス膜やグラファイト類
似構造の層状化合物等を挙げることができる。
【0117】このような分子配向制御層を設けると、光
制御層中のドナー分子及びアクセプタ分子の積層方向を
基板の主面に垂直な方向に制御することができるので、
結晶に有効に電場を印加することが可能となる。
【0118】以下、本発明に用いられる分子配向制御層
がもつ特性についてさらに説明する。
【0119】本発明に係る素子機能を担う光制御層は、
結晶構造を有することを特徴としており、さらには1分
子層からの超薄膜をも対象としている。このようなこと
から、まずもっとも基本的に要求される特性は、分子配
向制御層自身が構造を持たず、表面が分子サイズレベル
で平坦であることである。
【0120】例えば、π電子系分子は平板状の形状を有
しており、基板から強い相互作用を受ける場合には、分
子を構成する原子のできるだけ多くが基板に近づくこと
によって、即ち平行配向することによって、高い安定化
エネルギーを得ようとする。したがって、もっとも単純
には、平行配向分子の1分子層2次元結晶を形成しよう
とすると、光制御層として用いられる有機薄膜を形成す
る下地表面が、分子サイズレベルで平坦であることが必
須であることが分かる。この状況は、この有機薄膜の膜
厚が厚くなった場合も同様である。したがって、任意の
表面構造を有する基板上で分子配向が制御された結晶性
薄膜を形成するためには、有機薄膜と基板との間に分子
レベルの平坦な表面構造を実現する分子配向制御層を具
備させることが有効な手段となる。
【0121】有機アモルファス膜は、有機EL素子の研
究等から、少なくとも表面構造に関しては、このような
平坦な構造を有することが知られており、かつ任意の基
板上に形成が容易であるという点において、実用化素子
の作製にはたいへん有効である。
【0122】しかし、この分子配向制御層には単に表面
構造が平坦であることが要求される訳ではなく、分子配
向制御層表面で分子配向の制御が可能となるような表面
−分子間相互作用特性を有していることが必要となる。
即ち、分子配向制御層はアモルファス構造を有するだけ
ではなく、結晶性有機薄膜と接する最表面に結晶性薄膜
の分子配向を制御可能とする化学的要素を持っていなけ
ればならない。この点が従来の有機アモルファス膜上の
有機薄膜積層技術とは異なる本発明独自の着眼点であ
る。
【0123】これについては先に述べたように、平板状
のπ電子系分子の平行配向薄膜を形成する場合に、薄膜
を形成する分子との間に強い相互作用を生じるように、
アモルファス分子配向制御層の最表面を制御することが
必要になる。逆に、平板状分子が基板面に対して立った
配向の薄膜を形成する場合には、基板−分子間相互作用
に比較して分子間凝集力が大きくなるようにアモルファ
ス分子配向制御層の最表面を制御することが必要にな
る。
【0124】相互作用を強めるための手段としては、分
散力を強めるために誘起双極子が大きくなるように、ア
モルファス有機膜の表面近傍に電子分極率の高い原子
(団)ができるだけ多く並ぶようにする、芳香族環や多
環芳香族基が表面に並ぶようにする、或いは表面に導電
性を持たせる等の方法が有効となる。
【0125】逆に相互作用を弱めるための手段として
は、誘起双極子が大きくならないように、アモルファス
有機膜の表面近傍に電子分極率の低い原子(団)ができ
るだけ多く並ぶようにする。多環芳香族基が最表面に出
ないようにメチル基、カルボキシル基、ケトン基、アル
コール基、アミノ基、フッ素含有基など電子分極率の小
さい原子から成る誘導基をアモルファス分子の最外郭に
導入することが有効となる。
【0126】本発明に用いるアモルファス有機膜には、
低分子からなるものと高分子からなるものとのいずれで
もよい。低分子アモルファス有機膜に用いられる材料と
しては、Alq3、OXD、OXD−S、Diamin
e、BNIBPC、TDAB、TPTTA、TDP、T
TPAE、TDATA、DPH、PPCP、及びTCT
A等のアモルファス有機分子が挙げられる。
【0127】上述のアモルファス有機分子の構造式を以
下に示す。
【0128】
【化14】
【0129】
【化15】
【0130】
【化16】
【0131】
【化17】
【0132】
【化18】
【0133】
【化19】
【0134】
【化20】
【0135】
【化21】
【0136】
【化22】
【0137】
【化23】
【0138】
【化24】
【0139】
【化25】
【0140】
【化26】
【0141】
【化27】
【0142】
【化28】
【0143】
【化29】
【0144】
【化30】
【0145】また、高分子アモルファス有機膜に関して
は、不規則に結合した分子鎖よりなる高分子、すなわち
アタクチックポリマーや共重合体ポリマーにアモルファ
ス構造を示すものが多い。具体的には、ポリスチレン、
ポリメタクリル酸メチル、スチレンブタジエン合成ゴム
などが挙げられる。また、分岐構造や架橋構造を有する
高分子もアモルファス構造を示すものが多く、加硫ゴム
やフェノール樹脂などが挙げられる。さらに、構成原子
の分極率の観点からはC系ポリマーよりもSi系ポリマ
ー、即ちポリシラン材料が有効な材料であり、ポリシラ
ンの主鎖が基板表面と平行に配向し、かつ主鎖と最表面
の間ができるだけ近接していることが重要である。ま
た、結晶性薄膜を構成する分子との間に誘起分極を発生
させやすいという観点からは、導電性を有するポリピロ
ール、ポリアニリン、ポリチオフェンといった導電性高
分子を用いることも有効である。
【0146】さらに、電子素子への応用において、機能
性を有する結晶性有機薄膜層の電場を印加する必要があ
る場合には、有機アモルファス膜として表面平坦性と共
に絶縁性を有することが好ましい。できるだけ低い電圧
で機能性膜に強電場をかけるにためは、このような絶縁
膜はできるだけ薄いことが好ましい。このため、蒸着法
などにより、超薄膜の形成が可能な定分子量有機アモル
ファス分子を形成することが好ましい。このような特徴
を有する有機膜を構成する分子としては、例えばステロ
イド系骨格を有する分子があげられる。
【0147】これらの分子のアモルファス有機膜は、上
述の低分子及び高分子アモルファス有機膜と組合わせ
て、異種のアモルファス有機膜からなる積層構造を形成
することができる。低分子アモルファス膜のみでは十分
な耐熱性が得られない場合に、このような積層構造を持
つ配向制御膜を用いて、耐熱性の高い高分子アモルファ
ス膜を併用することにより、その耐熱性を向上すること
ができる。耐熱性は、電極形成プロセスを行なう際に重
要である。
【0148】ステロイド系骨格を有する分子として以下
のような分子があげられる。
【0149】
【化31】
【0150】コレステロール
【化32】
【0151】β−エストラジオールベンゾエート
【化33】
【0152】メチルヒオデオキシコレート
【化34】
【0153】メチルコレート
【化35】
【0154】プレグネノロン
【化36】
【0155】メチルアンドロステンジオール
【化37】
【0156】β−エストラジオール
【化38】
【0157】エストリオール
【化39】
【0158】コール酸
【化40】
【0159】エストロン 以下、本発明の光制御素子の応用例を説明する。
【0160】本発明の光制御素子は、例えば以下に示
す、光カー・セル、導波路素子、光双安定素子、及びエ
タロン等として用いることができる。
【0161】図6に、本発明の光制御素子を用いた光シ
ャッタの構成を示す。
【0162】図6で、参照番号61、62は、偏光子を
示している。これらの偏光子61、62は、それぞれの
主面が平行になるように、及びそれぞれの偏光方向が直
行するように、対向して配置されている。偏光子61と
偏光子62との間には、本発明の光制御素子が光カー・
セル63として配置され、光シャッタ64を形成してい
る。
【0163】この光カー・セル63に、所定の電圧を印
加し、制御光66を照射すると、光制御層を構成する結
晶の屈折率に異方性が生じて、偏光子61に入力された
信号光65は、光カー・セル63を通過することによ
り、楕円偏波となる。したがって、制御光66の照射/
非照射を制御することにより、偏光子62から出力され
る出力光67のon/offを制御することができる。
【0164】導波路を伝播する光波の位相を、導波路内
の屈折率変化を利用して制御し、光変調を行なう素子を
導波路素子と呼び、マッハ・ツェンダー干渉計型導波路
素子、方向性結合器型導波路素子等が知られている。
【0165】図7に、本発明の光制御素子を用いたマッ
ハ・ツェンダー干渉計型導波路素子の原理を示す。
【0166】図7に示す導波路素子においては、信号光
71は分岐されて、信号光72、73となり、信号光7
2、73は、それぞれ、ブランチ74、75を通過した
後、再び重ね合わされて、出力光76として出力され
る。また、この導波路素子のブランチ74、75は、本
発明の光制御素子で構成され、それぞれのブランチの間
に屈折率の差を生じさせることができる。
【0167】通常は、これらブランチ74、75の一
方、例えばブランチ74には、所定の電圧が印加されて
いる。しかしながら、この時、それぞれのブランチの間
には屈折率の差は生じておらず、信号光72と信号光7
3は、同位相となるように合成される。
【0168】この導波路素子に所定の強度の制御光を照
射すると、ブランチ74の屈折率が非線形的に変化し
て、ブランチ74とブランチ75の屈折率の間に制御光
強度に応じた差が生じる。その結果、信号光72と信号
光73との間に大きな位相差が生じ、出力光76の強度
が低下するのである。
【0169】図8に、本発明の光制御素子を用いた方向
性結合器型導波路素子の原理を示す。
【0170】図8に示す導波路素子においては、2本の
アーム81、82が平行に近づけて配置され、アーム8
1に入射した信号光83は、出力光84としてアーム8
2から出力される。
【0171】このアーム81、82は、本発明の光制御
素子で構成され、通常は、これらアーム81、82に
は、所定の電圧が印加されており、非線形的な屈折率の
変化は生じていない。すなわち、アーム81とアーム8
2とはモード整合しているので、信号光83はアーム8
1からアーム82へと完全に移行する。
【0172】しかしながら、アーム81に制御光を照射
すると、アーム81の屈折率が非線形的に変化し、アー
ム81とアーム82の屈折率の間に大きな差が生じる。
その結果、モード整合が崩れ、光移行が不完全となり、
出力光84の強度が低下するのである。
【0173】図9に、本発明の光制御素子を用いたエタ
ロンの原理を示す。
【0174】この図で、本発明の光制御素子は、エタロ
ン91として用いられており、信号光92は、エタロン
91の一方の主面から入射され、エタロン91の他方の
主面から出力される。制御光強度に応じて屈折率が変化
するため、媒質中を伝播する光波の波長が変調する。そ
の結果、出力側から出力される多重反射合成波の強度、
すなわち出力光強度が変化する。このエタロンは、導波
路素子に比べて、素子のサイズを著しく小さくすること
が可能であるため、光集積回路や2次元画像処理素子等
に用いるのに適している。
【0175】実施例 以下、本発明の光制御素子の実施例について説明する。
【0176】実施例1−1 以下に示す方法により、光制御素子を作製した。
【0177】まず、厚さ2mmの石英基板上に、電極層
として、アルミニウム膜を、反射率が0.9になるよう
に、及び厚さが150オングストロームになるように形
成した。このアルミニウム膜上に、絶縁体層として、比
誘電率が200のSrTiO3 膜を500オングストロ
ームの厚さで真空蒸着法により形成し、このSrTiO
3 膜上に、分子配向制御層として、テトラトリフェニル
アミノエチレン(TTPAE)のアモルファス膜を25
0オングストロームの厚さで、真空蒸着法により形成し
た。
【0178】次に、ドナー分子としてテトラメチルベン
ジジン(TMB)を、アクセプタ分子としてテトラシア
ノキノジメタン(TCNQ)を用いて、真空蒸着法によ
り、分子配向制御層上に200オングストロームの厚さ
でTMB−TCNQ錯体からなる光制御層を形成した。
この光制御層の上に、絶縁体層としてポリメタクリル酸
メチル(PMMA)を200オングストロームの厚さ
で、電極層として反射率が0.9で厚さが150オング
ストロームのアルミニウム膜を、順次真空蒸着法により
形成して、光制御素子を作製した。なお、この光制御素
子はエタロンとして用いられる。
【0179】この素子について、以下に示す方法によ
り、素子の3次非線形感受率及び応答速度を調べた。
【0180】まず、この素子に、10Vの静電圧を印加
して、光制御層に強度が1.0×106 V/cmの電界
を形成した。この素子の光制御層に対して垂直に、波長
が1400nm、1MW/cm2 、500fsのパルス
レーザ光を制御光兼信号光として照射し、出力光の強度
を測定したところ、図10に示す結果を得た。
【0181】図10に示すように、この素子は、光双安
定性を示している。この素子の、off(低透過状態)
からon(高透過状態)への、すなわち、中性状態から
イオン性状態へのスイッチング時間は700fsであ
り、onからoffへのスイッチング時間は800fs
であった。また、低透過状態では、入力光強度に対する
出力光強度の比は0.1であったのに対し、高透過状態
では、入力光強度に対する出力光強度の比は0.4程度
まで増加した。
【0182】実施例1−2 第1及び第2の電極層の厚さを50オングストロームと
し、反射率を0.3としたこと以外は実施例1−1と同
様にして光制御素子を作製した。この素子に静電圧を印
加して、相転移を生じさせた。その結果、20Vの電
圧、及び2×106 V/cmの強度の電界が形成された
ときに、相転移が生じることが分かった。
【0183】この素子の光制御層に対して垂直に、波長
が540nm、強度が0.5MW/cm2 のレーザ光を
信号光として入射させ、25Vの電圧の印加/非印加に
より、素子の光制御層の光学的特性を制御した場合の応
答速度を調べた。その結果、offからonへのスイッ
チング時間は50psecであり、電荷移動状態から非
結合状態へのスイッチング時間は65psecであっ
た。
【0184】また、非結合状態では、入力光強度に対す
る出力光強度の比は0.60であったのに対し、電荷移
動状態では、入力光強度に対する出力光強度の比は0.
62程度であった。
【0185】比較例1−1 実施例1−1で作製した素子を用い、電圧を印加せず
に、光制御層に対して垂直に、波長が1400nmで、
強度が1MW/cm2 、500fsのパルスレーザ光を
照射した。その結果、光制御層の双安定性は生じなかっ
た。
【0186】このレーザ光の強度を高めたところ、強度
が1GW/cm2 のときに、わずかに光制御層の双安定
動作が確認された。
【0187】実施例1−1のように、光制御層に所定の
電圧をかけ、制御光兼信号光を用いると、優れた3次非
線形感受率及び応答速度スイッチング性が見られた。ま
た、実施例1−2のように、膜厚、反射率を変更しても
同様の効果が得られた。しかしながら、比較例1−1の
ように電圧を印加しない場合には、レーザ光の強度をか
なり高めないと双安定動作が見られない。
【0188】実施例1−3 光制御層の厚さを100オングストロームとしたこと以
外は、実施例1−1と同様にして光制御素子を作製し
た。
【0189】この素子は、実施例1−1で作製した素子
に比べて、光制御層の厚さが薄く形成されている。その
ため、イオン性状態におけるマーデルングエネルギ利得
の減少により、光制御層を構成する錯体結晶の状態がよ
り相転移境界に近づき、これに伴って、電荷移動励起子
の励起波長が1400nmから1550nmへと、低エ
ネルギー側にシフトした。
【0190】この素子に5Vの静電圧を印加し、光制御
層に対して垂直に、波長が1550nm、強度が1MW
/cm2 、500fsのパルスレーザ光を、制御光兼信
号光として照射し、出力光の強度を測定した。その結
果、光双安定性を示す履歴曲線が得られた。
【0191】また、この素子の、offからonへのス
イッチング時間は500fsであり、onからoffへ
のスイッチング時間は650fsであった。
【0192】実施例1−4 光制御層として、クロルメチルパラフェニレンジアミン
(ClMePD)−ジメチルジシアノキノジイミン(D
MeDCNQI)と、ジメチルパラフェニレンジアミン
(DMePD)−DMeDCNQIとを、それぞれのモ
ル比が3:7となるように調整した錯体混晶を用いて、
100オングストロームの厚さで形成したこと以外は、
実施例1−1と同様にして光制御素子を作製した。
【0193】この素子に5Vの静電圧を印加し、光制御
層に対して垂直に、波長が1000nm、強度が0.8
MW/cm2 、500fsのパルスレーザ光を、制御光
兼信号光として照射し、入力光強度を変化させて、出力
光の強度を測定した。その結果、光双安定性を示す履歴
曲線が得られた。
【0194】また、この素子の、offからonへのス
イッチング時間は650fsであり、onからoffへ
のスイッチング時間は730fsであった。
【0195】実施例1−5 実施例1−1で作製した光制御素子に10Vの静電圧を
印加し、光制御層に対して垂直に、波長が1300n
m、強度が0.1MW/cm2 レーザ光を信号光として
入射させ、光制御層の信号光が照射されている領域に、
光制御層に対して斜方から、波長が1000nm、強度
が0.8MW/cm2 、500fsのパルスレーザ光を
制御光として照射して、出力光の強度を測定した。その
結果、光双安定性を示す履歴曲線が得られた。
【0196】また、この素子の、offからonへのス
イッチング時間は700fsであり、onからoffへ
のスイッチング時間は800fsであった。
【0197】実施例1−6 電極層として、アルミニウム膜を、反射率が0.4にな
るように、及び厚さが50オングストロームになるよう
に形成し、ドナー分子としてテトラチアフルバレン(T
TF)を、アクセプタ分子としてクロラニル(CA)を
用いて、150オングストロームの厚さで、TTF−C
A錯体からなる光制御層を形成したこと以外は、実施例
1−1と同様にして光制御素子を作製した。この素子
は、電極層の反射率が低いため、エタロンのように内部
多重反射を用いない面形の光制御素子である。
【0198】この素子に10Vの静電圧を印加し、光制
御層に対して垂直に、波長が1550nm、強度が1M
W/cm2 、500fsのパルスレーザ光を制御光兼信
号光として照射して、出力光の強度を測定した。その結
果、光双安定性を示す履歴曲線が得られた。
【0199】また、この素子の、offからonへのス
イッチング時間は650fsであり、onからoffへ
のスイッチング時間は800fsであった。
【0200】実施例1−7 実施例1−1で作製した光制御素子に、光制御層に対し
て垂直に、波長が540nm、強度が1MW/cm2
パルスレーザ光を照射し、1GHzで変調した矩形電圧
を、0V〜30Vの範囲で変化させて印加した。その結
果、20V以下の電圧域では素子は低透過状態、20V
以上の電圧域では素子は高透過状態にあり、電圧信号の
変調に同期した光パルス変調信号を得ることができた。
【0201】実施例1−8 図11に示す光制御素子を、以下に示す方法により作製
した。
【0202】まず、厚さが2mmで、基板面に平行な方
向の長さがそれぞれ20mm×20mmの石英基板11
1上に、電極層112として、アルミニウム膜を100
0オングストロームの厚さで形成した。
【0203】この電極層112上に、絶縁体層113と
して、比誘電率が200のSrTiO3 膜を500オン
グストロームの厚さで真空蒸着法により形成し、このS
rTiO3 膜上に、分子配向制御層117として、TT
PAEのアモルファス膜を250オングストロームの厚
さで、真空蒸着法により形成した。
【0204】次に、ドナー分子としてTTFを、アクセ
プタ分子としてCAを用いて、真空蒸着法により、分子
配向制御層117上に150オングストロームの厚さ
で、TTF−CA錯体からなる光制御層114を形成し
た。この光制御層114の上に、絶縁体層115として
PMMAを200オングストロームの厚さで、電極層1
16として厚さが500オングストロームのアルミニウ
ム膜を、順次真空蒸着法により形成した。なお、この電
極層116は、基板111の中央に、長さ10mm、幅
5mmで形成した。
【0205】以上のようにして電極層等が積層された基
板111上に、一対のプリズム118、119を、それ
ぞれが電極層116の長方向の両端に位置するように配
置して、プリズム結合型スラブ導波路素子として用いら
れる光制御素子を作製した。
【0206】この素子に5Vの静電圧を印加し、プリズ
ム118から、波長が1550nm、強度が0.1MW
/cm2 のパルスレーザ光を信号光として入射させ、プ
リズム119から、波長が1400nm、強度が1MW
/cm2 のパルスレーザ光を制御光として照射して、出
力光の強度を測定した。その結果、制御光の照射時に
は、信号光の出力は完全に遮断された。
【0207】また、この導波路素子の、onからoff
へのスイッチング時間は700fsであり、offから
onへのスイッチング時間は800fsであった。
【0208】実施例1−9 図12に示す、グレーティング結合型スラブ導波路素子
として用いられる光制御素子を作製した。
【0209】図12に示す素子は、図11に示す素子と
ほぼ同様の構成であるが、プリズム118、119の代
わりに、グレーティング128、129が設けられてい
る点で異なっている。
【0210】この素子に5Vの静電圧を印加し、グレー
ティング128から、波長が1550nm、強度が0.
1MW/cm2 のパルスレーザ光を信号光として入射さ
せ、グレーティング129から、波長が1400nm、
強度が1MW/cm2 のパルスレーザ光を制御光として
照射して、出力光の強度を測定した。その結果、制御光
の照射時には、信号光の出力は完全に遮断された。
【0211】また、この導波路素子の、onからoff
へのスイッチング時間は700fsであり、offから
onへのスイッチング時間は800fsであった。
【0212】実施例1−10 実施例1−8で作製した光制御素子に、一方のプリズム
から、波長が540nm、強度が0.1MW/cm2
パルスレーザ光を照射し、1GHzで変調した矩形電圧
を、0V〜30Vの範囲で変化させて印加した。その結
果、20V以下の電圧域では素子は低透過状態、20V
以上の電圧域では素子は高透過状態にあり、電圧信号の
変調に同期した光パルス変調信号を得ることができた。
【0213】実施例1−11 図13に示す方向性結合器型の導波路素子を以下に示す
方法により作製した。
【0214】まず、石英基板131上に、パターニング
した後、スパッタリングにより、7059ガラスからな
るアーム132、133を形成した。これらアーム13
2、133の幅および高さは、それぞれ、2μmおよび
0.2μmである。また、アーム132とアーム133
には、それぞれ、光制御素子134、135が配置され
るギャップが形成されている。
【0215】次に、アーム132、133のそれぞれの
ギャップ部に、マスクを用いて、電極層として、アルミ
ニウム膜を厚さが500オングストロームになるように
形成した。これらアルミニウム膜上に、絶縁体層とし
て、比誘電率が200のSrTiO3 膜を500オング
ストロームの厚さで真空蒸着法により形成し、これらS
rTiO3 膜上に、分子配向制御層として、TTPAE
のアモルファス膜を250オングストロームの厚さで、
真空蒸着法により形成した。
【0216】以上のようにして形成した分子配向制御膜
上に、ドナー分子としてTMBを、アクセプタ分子とし
てTCNQを用いて、真空蒸着法により、分子配向制御
層上に500オングストロームの厚さでTMB−TCN
Q錯体からなる光制御層を形成した。これら光制御層の
上に、絶縁体層としてPMMAを200オングストロー
ムの厚さで、電極層として厚さが500オングストロー
ムのアルミニウム膜を、順次真空蒸着法により積層し
て、光制御素子部134、135を形成し、方向性結合
器型導波路素子136を作製した。
【0217】以上のようにして作製した方向性結合器型
導波路素子136の光制御素子部134のみに30Vの
電圧を印加して、アーム132の入力部137から波長
が1550nmで500fsのパルス光を、強度を変え
ながら照射した。その結果、強度が1MW/cm2 未満
の場合は、アーム133の出力部138から出力光が出
力されたが、強度が1MW/cm2 以上の場合は、アー
ム133の出力部138からは出力されず、アーム13
2の出力部139のみから出力された。
【0218】また、この導波路素子の、非結合状態から
電荷移動状態へのスイッチング時間は1.4psであ
り、電荷移動状態から非結合状態へのスイッチング時間
は2.1psであった。
【0219】実施例1−12 図14に示すマッハ・ツェンダー型の導波路素子を以下
に示す方法により作製した。
【0220】まず、石英基板141上に、パターニング
・スパッタリングにより、7059ガラスからなる導波
路142、145及びブランチ143、144を、幅お
よび高さが、それぞれ、2μmおよび0.2μmとなる
ように形成した。また、ブランチ143、144には、
それぞれ、光制御素子146、147が配置されるギャ
ップが形成されている。
【0221】次に、ブランチ143、144のそれぞれ
のギャップ部に、マスクを用いて、電極層として、アル
ミニウム膜を厚さが500オングストロームになるよう
に形成した。これらアルミニウム膜上に、絶縁体層とし
て、比誘電率が200のSrTiO3 膜を500オング
ストロームの厚さで真空蒸着法により形成し、これらS
rTiO3 膜上に、分子配向制御層として、TTPAE
のアモルファス膜を250オングストロームの厚さで、
真空蒸着法により形成した。
【0222】これら分子配向制御膜上に、ドナー分子と
してTMBを、アクセプタ分子としてTCNQを用い
て、真空蒸着法により、分子配向制御層上に500オン
グストロームの厚さで光制御層を形成した。光制御層の
上に、絶縁体層としてPMMAを200オングストロー
ムの厚さで、電極層として厚さが500オングストロー
ムのアルミニウム膜を、順次真空蒸着法により積層し
て、光制御素子部146、147を形成し、方向性結合
器型導波路素子148を作製した。
【0223】以上のようにして作製した方向性結合器型
導波路素子148の光制御素子部146のみに、30V
の電圧を印加して、導波路142から波長が1550n
mで500fsのパルス光を、強度を変えながら照射し
た。その結果、強度が1MW/cm2 未満の場合は、導
波路145から出力光が出力されたが、強度が1MW/
cm2 以上の場合は、導波路145からは出力光は出力
されなかった。
【0224】また、この導波路素子の、非結合状態から
電荷移動状態へのスイッチング時間は1.6psであ
り、電荷移動状態から非結合状態へのスイッチング時間
は2.5psであった。
【0225】次に、本発明の有機薄膜素子について説明
する。
【0226】なお、本発明の有機薄膜素子には、上述の
光制御素子に好ましく使用されるアモルファス有機膜及
びさらに好ましく使用されるステロイド系骨格を有する
分子を分子配向制御層として適用し得る。
【0227】本発明の有機薄膜素子は、基本的に、支持
層上に、アモルファス有機膜からなる分子配向制御層
と、π電子系分子からなる結晶性有機薄膜とを含む積層
構造を有し、その結晶性有機薄膜は、真空蒸着法により
100オングストローム/分以下の成長速度で形成さ
れ、且つその膜厚が1分子層以上2000オングストロ
ーム以下である。
【0228】また、本発明の方法は、このような有機薄
膜素子を製造するために用いられ、表面にアモルファス
有機膜からなる分子配向制御層が形成された支持層を用
意し、アモルファス有機膜上に、真空蒸着法により10
0オングストローム/分以下の成長速度で、1分子層以
上2000オングストローム以下の膜厚の結晶性有機薄
膜を形成することを特徴とするここで、支持層とは、分
子配向制御層を支持する層のことをいう。支持層は、有
機薄膜素子の用途、所望の構成に応じて、分子配向制御
層に隣接して設けられ得る。典型的な例は、基板である
が、これに限定するものではなく、絶縁層、結晶性有機
薄膜等、有機薄膜素子に好適に使用される層が選択され
る。基板以外の層が支持層として設けられる場合には、
更に下層に基板を設けることができる。このとき、支持
層と基板との間に、他のどのような層を設けることも可
能である。
【0229】本発明の有機薄膜素子の第1の好ましい態
様によればアモルファス有機薄膜からなる分子配向制御
層に、その分子構造の最外殻に芳香環を有する低分子系
色素分子を使用することができる。これにより、芳香環
に非極在化しているπ電子の高い分極率により分子配向
制御層上に形成される結晶性有機薄膜を構成するπ電子
系分子との間に高い分散力を生じることが可能となり、
結晶性の高い有機薄膜の特徴を生かしたり、結晶軸方向
による物性の異方性を利用した有機薄膜素子を得ること
ができる。
【0230】また、本発明の有機薄膜素子の第2の好ま
しい態様によれば、アモルファス有機薄膜からなる分子
配向制御層に、ポリシランの主鎖が基板面と平行に配向
した構造を有するポリシラン誘導体を使用することがで
きる。これにより、炭素より高い電子分極率を有するシ
リコンポリマー鎖を配向制御層とすることによって、炭
素系ポリマーを使う場合よりも、配向制御層と結晶性と
有機薄膜を構成するπ電子分子との間に高い分散力を生
じることが可能となり、結晶性の高い有機薄膜の特徴を
生かしたり、結晶軸方向による物性の異方性を利用した
有機薄膜素子を得ることができる。
【0231】本発明の有機薄膜素子の第3の好ましい態
様によればアモルファス有機薄膜からなる分子配向制御
層として、ステロイド骨格を有する分子から実質的にな
る有機薄膜を使用することができる。これにより、表面
平坦性と共に、絶縁性を有する有機アモルファスが得ら
れる。このような絶縁膜は、薄く形成することが可能で
ある。このため、できるだけ低い印加電圧で強電場をか
けることが可能となる。
【0232】また、本発明の有機薄膜素子の第4の好ま
しい態様によれば、アモルファス有機薄膜からなる分子
配向制御層として、異種のアモルファス有機膜を積層し
た構造を有し、ステロイド骨格を有する分子から実質的
になる有機薄膜を少なくとも1つ含む積層を用いること
ができる。低分子アモルファス膜のみでは十分な耐熱性
が得られない場合に、このような積層構造を持つ配向制
御膜を用いて、耐熱性の高い高分子アモルファス膜を併
用することにより、その耐熱性を向上することができ
る。耐熱性は、電極形成プロセスを行なう際に重要であ
る。
【0233】さらに、本発明の有機薄膜素子の第5の好
ましい態様によれば、π電子系分子からなる結晶性有機
薄膜として、異種有機分子の薄膜を積層した構造を適用
することができる。これにより、異種有機分子間のヘテ
ロ界面に生じる電荷移動効果、接触電位分布の発生、ま
たそのポテンシャル障壁の生成によるキャリアや励起子
の閉じ込め効果を生じることが可能となり、新規な機能
を有する有機薄膜素子を得ることができる。
【0234】また、本発明の有機薄膜素子の第6の好ま
しい態様によれば、π電子系分子からなる結晶性有機薄
膜として、有機電荷移動錯体結晶を適用することができ
る。これにより、電荷移動錯体に特徴的な相転移現象や
異方的な電気伝導性、高い非線形光学特性を有する素子
機能として利用することが可能となり、新規な機能を有
する有機薄膜素子を得ることができる。
【0235】本発明の有機薄膜素子の第7の好ましい態
様によれば、非線形光学効果に基づく光変調機能あるい
は光情報記録機能を有する結晶性有機薄膜を使用するこ
とができる。これにより、有機π電子系分子の有する高
い非線形光学感受率及び超高速な光応答性、あるい分子
電子状態、分子凝集構造に敏感な光吸収(反射)特性或
いは分子間の高速な電子移動による応答性の高いフォト
リソグラフ効果、あるいはホールバーニング現象を利用
することが可能となり、光変調、光情報記録媒体用の有
機薄膜素子に使用し得る。
【0236】本発明の有機薄膜素子の第8の好ましい態
様によれば、アモルファス有機膜からなる分子配向制御
層及びπ電子系分子からなる結晶性有機薄膜の積層体の
両面に、一対の絶縁体層と一対の電極を設けることがで
きる。この一対の絶縁体層を設けることにより、有機薄
膜に実効的に強電界を印加することが可能となり、電界
により有機薄膜の電子状態を制御することを利用した有
機薄膜素子を得ることができる。
【0237】本発明の有機薄膜素子の第9の好ましい態
様によれば、光照射により、光起電力あるいは光電流を
発生する機能を有する結晶性有機薄膜を使用することが
できる。これにより、光検出器、光電池に使用し得る有
機薄膜素子を得ることができる。
【0238】本発明の有機薄膜素子の第10の好ましい
態様によれば、半導体基板のソース、ドレイン領域間の
チャネル領域に、絶縁膜、アモルファス有機薄膜からな
る分子配向制御膜、ゲート電極及びπ電子系分子からな
る結晶性有機薄膜を含む積層構造を有し、前記結晶性有
機薄膜は、真空蒸着法により100オングストローム/
分以下の成長速度で形成され、且つその膜厚が1分子層
以上2000オングストローム以下であることを特徴と
する有機薄膜素子が提供される。このような有機薄膜素
子は、電界効果型トランジスタとして使用し得る。
【0239】本発明を用いると、基板本体の材質・形状
にかかわらず、有機薄膜の構造ならびに分子配向性を制
御可能であり、光学素子、電子素子などとして実用的に
使用し得る有機薄膜素子が得られる。
【0240】次に、本発明に係る有機薄膜素子の具体的
な構造の例について説明する。
【0241】本発明の有機薄膜素子は、基本的には例え
ば基板等の支持層上に少なくとも1層の素子機能を担う
有機薄膜を有する。図15〜図17に、本発明の有機薄
膜素子の構造の一例を示す。
【0242】図15の有機薄膜素子は、基板151上に
アモルファス有機膜152および素子機能を担う有機薄
膜3を順次形成したものである。
【0243】図16の有機薄膜素子は、基板151上に
アモルファス有機膜152および素子機能を担う第1の
有機薄膜153、さらにアモルファス有機膜152およ
び素子機能を担う第2の有機薄膜154を順次形成した
積層型有機薄膜素子である。
【0244】図17の有機薄膜素子は、基板151上に
第1の電極155、第1の絶縁層156、アモルファス
有機膜152を形成したものの上に、素子機能を担う有
機薄膜153を順次形成し、さらに第2の絶縁層15
7、第2の電極として背面電極158を設けた有機薄膜
素子を示す。
【0245】本発明においては、図15〜図17に示す
ように、任意の下地表面にアモルファス有機膜からなる
分子配向制御層が形成される。このような配向制御層
は、真空蒸着法、スピンコート法、塗布法、スパッタ
法、LB法などにより形成することが可能である。
【0246】ここで、有機薄膜の下地として形成される
配向制御層の厚さは、1分子層以上1000オングスト
ローム以下程度とすることが好ましい。即ち、配向制御
層と薄膜分子との間に働く相互作用の到達距離程度の厚
さがあればいいのであって、必要以上に厚くすると、素
子としての印加電圧や光学的透過特性の損失につなが
る。相互作用の種類によって到達距離は一様ではない
が、分子配向制御層の厚さは、分散力が主ならば数分子
層で十分であり、静電力などの遠距離力を利用する場合
には100〜1000オングストローム程度となる。
【0247】本発明において、有機薄膜は、π電子系分
子の結晶性薄膜を指す。π電子系分子とは、不飽和炭化
水素、芳香族化合物など分子中にいくつかのπ結合をも
っている分子のことをいう。ポリジアセチレン、縮合多
環芳香族分子などがその代表である。
【0248】このπ電子系分子からなる結晶性薄膜を分
子配向制御層上に形成するためには、薄膜成長条件の制
御がきわめて重要である。従来報告されているような通
常真空度(10-6〜10-7Torr)下での蒸着法で
は、背圧に抗して膜分子を基板上に付着させるために、
例えば1000オングストローム/分といったかなり速
い蒸着速度が必要とされていた。しかし、このような状
況下での薄膜成長は、正に分子間の自己凝集を促進する
ための成長条件であって多くの場合成長した膜は多結晶
粒の凝集構造となってしまう。このような膜成長を回避
するためには、超高真空条件を利用してきわめて遅い速
度で膜成長が進行する条件を用意し、基板−分子間相互
作用あるいは分子間相互作用にしたがって結晶構造を組
みながら膜成長が進行するようにしなければならない。
【0249】このような膜成長条件として、膜成長速度
が100オングストローム/分以下であることが望まし
いと考えられる。このとき真空度は、10-9Torrよ
り高い真空度が好ましく、10-8Torrより低くなる
と、上記背圧の効果が現れて、有機分子の蒸着速度を遅
くすることができなくなる傾向がある。
【0250】また、このπ電子系分子からなる結晶性薄
膜の最適な膜厚は素子機能によって種々変化するが、素
子機能の発現に十分であり、かつ電子素子の場合には不
必要な電圧や電流の損失を起こさないように、また光学
素子の場合には吸収等の損失を引き起こさないようにす
るために、ある上限となる膜厚が存在するのが一般的で
あり、膜厚が1分子層以上1000オングストローム以
下、さらに好ましくは1分子層以上2000オングスト
ローム以下であることが望ましい。
【0251】基板本体の材質は特に限定されず、金属、
半導体(回路や接合などを形成したものを含む)、誘電
体、石英などが挙げられる。
【0252】また、図17に示す有機薄膜素子のよう
に、基板上に電極を形成する場合、その材質として金
属、ITO、及び有機導電性材料などが挙げられる。ま
た、電圧を印加する素子の場合には、図17に示すよう
に電極上に絶縁層を設けると、有機薄膜に実効的に強電
界を印加できる。すなわち、一般には、有機薄膜に印加
される電界が強くなると、有機薄膜を流れる電流が大幅
に増加して有機薄膜の構造に悪影響を及ぼすため、ある
程度以上の電界を実現することができない。これに対し
て、電極と有機薄膜との間に絶縁層を設けておけば、強
電界を印加しても有機薄膜を流れる電流が増加すること
がなく、有機薄膜に実効的に強電界を印加できる。この
ような絶縁層としては、SiO2 等の酸化物、SrTi
3 等の酸化物、強誘電体材料、有機高分子などが用い
られる。特に有機薄膜により電界を印加するためには、
比誘電率が10以上の絶縁材料、例えばSrTiO3
どの強誘電体を用いることが好ましい。
【0253】また、本発明において、有機薄膜を、ドナ
ー分子とアクセプター分子とが互いに分子面を対向させ
て積層された交互積層型電荷移動錯体で構成することも
できる。このような交互積層型電荷移動錯体の具体例を
例示すると、フェノチアジン−TCNQ、テトラジアミ
ノピレン−TCNQ、TTF−クロラニル、TTF−フ
ルオラニル、ジベンゼンTTF−TCNQ、ジエチルジ
メチルテトラセレナフルバレン−ジエチルTCNQ、テ
トラジアミノピレン−フルオラニル、TTF−ジクロロ
ジシアノベンゾキノン、ペリレン−テトラシアノエチレ
ン、ペリレン−TCNQ、TTF−ジニトロベンゼン、
ペリレン−クロラニル、ピレン−テトラシアノエチレ
ン、ピレン−クロラニル、アントラセン−クロラニル、
ヘキサメチルベンゼン−クロラニル、ナフタレン−テト
ラシアノエチレン、アントラセン−ピロメリット酸二無
水物、アントラセン−テトラシアノベンゼン、フェナン
トレン−ピロメリット酸二無水物などをはじめとする数
多くの錯体が挙げられる。
【0254】なお、このようにドナー分子及びアクセプ
ター分子の両者を含む有機薄膜の厚さが厚いと、膜内で
発生したキャリアが作る電界によって、膜に印加される
実効電界が減少する。しかし、膜厚がそのデバイ長(約
30nm)以下であれば、キャリアによって作られる電
界をスクリーニングすることができるようになる。しか
も、錯体がイオン性である場合には、膜厚を薄くするこ
とによって、錯体安定化エネルギーのうち、マーデルン
グエネルギー項の寄与が低減されて中性に転移する。こ
のため、錯体の電荷移動状態を転移の境界条件に近い中
性状態に設定することができる。したがって、低電界で
効率よく中性−イオン性転移を実現することができる。
【0255】以下、本発明に係る有機薄膜素子の一例に
ついてその動作原理をより具体的に説明する。
【0256】(a)表示素子 表示素子は、基本的に、図17に示すような、透明基板
151上に、透明電極155、絶縁層156、配向制御
層152、有機薄膜153、絶縁層157及び背面電極
158が順次形成された構造を有する。この表示素子で
は、電極から有機薄膜に電界を印加することにより、有
機薄膜を構成する交互積層型電荷移動錯体が中性からイ
オン性へと転移し、光の吸収波長が変化するので、表示
機能を得ることができる。本発明では、配向制御層を設
けることにより、その上に形成される有機薄膜を構成す
る有機分子の配向性が良好となり、発光効率を向上でき
る。
【0257】(b)電界効果トランジスタ(FET) 半導体基板表面に形成されたソース、ドレイン領域間の
チャネル領域上に、ゲート絶縁膜、配向制御層、有機薄
膜、ゲート電極を順次形成した基本構造を有する。この
FETでは、ゲート電圧を徐々に増加させると、ある電
圧値で有機薄膜を構成する交互積層型電荷移動錯体が中
性からイオン性へと転移してドレイン電流が急激に増加
するので、スイッチング機能を示す。本発明では、配向
制御層を設けることにより、その上に形成される有機薄
膜を構成する有機分子の配向性が良好となり、大きな出
力を得ることができる。
【0258】さらに、いずれの素子でも、図16に示す
構造を適用し複数の有機薄膜を積層して超格子構造にす
れば、多値の表示機能又はスイッチング機能を得ること
ができる。
【0259】以下、本発明に係る有機薄膜素子を実施例
により具体的に説明する。
【0260】実施例2−1 Si基板151上に、真空蒸着法により、膜厚約50n
mのOXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子
配向制御層152を形成した。その後、アントラセン分
子からなる有機薄膜153を、アントラセン結晶粉末を
10℃で、約1×10-9Torrの雰囲気で、10オン
グストローム/分の成長速度で、200オングストロー
ムの膜厚に形成し、図15に示すような構造を有する有
機薄膜素子を得た。
【0261】赤外分光法により、アントラセン薄膜の分
子配向を、その場評価した結果、アントラレンはその平
板状分子面を表面と平行に配向させて薄膜を形成してい
ることが分かった。
【0262】比較例2−1 Si基板151上に、真空蒸着法により、膜厚約50n
mのOXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子
配向制御層152を形成した。その後、アントラセン分
子からなる有機薄膜153を、アントラセン結晶粉末を
50℃の温度に加熱しながら、約1×10-7Torrの
雰囲気で、1000オングストローム/分の成長速度
で、1000オングストロームの膜厚に形成し、図15
に示すような構造を有する有機薄膜素子を得た。
【0263】赤外分光法により、アントラセン薄膜の分
子配向をその場評価した結果、アントラセンは複数の結
晶配向で薄膜を形成していることが分かった。このよう
な結果から、この例では結晶構造制御がなされていない
ことが分かった。また、走査電子顕微鏡による表面構造
観察の結果、アントラセン薄膜は、多結晶粒構造を有す
ることが分かった。
【0264】実施例2−2 Si基板151上に、真空蒸着法により膜厚約50nm
のOXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子配
向制御層152を、約50nmの膜厚で形成した。その
後、TCNQ分子からなる有機薄膜153を、TCNQ
結晶粉末を60℃の温度に加熱しながら、約1×10-9
Torrの雰囲気で、10オングストローム/分の成長
速度で形成し、100オングストロームの膜厚に形成
し、図15に示すような構造を有する有機薄膜素子を得
た。
【0265】赤外分光法により、TCNQ薄膜の分子配
向をその場評価した結果、TCNQはその平板状分子面
を表面と平行に配向させて薄膜を形成していることが分
かった。
【0266】実施例2−3 Si基板151上に、真空蒸着法により、膜厚約50n
mのOXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子
配向制御層152を形成した。その後、電荷移動錯体T
TF−クロラニルからなる有機薄膜153を、TTF−
クロラニル結晶粉末を50℃の温度に加熱しながら、約
1×10-9Torrの雰囲気で、20オングストローム
/分の成長速度で、約100オングストロームの膜厚に
形成し、図15に示すような構造を有する有機薄膜素子
を得た。
【0267】赤外分光法により、錯体薄膜の分子配向を
評価した結果、TTF、クロラニル共に、その平板状分
子面を表面と平行に配向させて結晶性錯体薄膜を形成し
ていることが分かった。
【0268】実施例2−4 ガラス基板151上に、真空蒸着法により、膜厚約50
nmのOXD−S8分子のアモルファス構造を有する分
子配向制御層152を形成した。その後、TCNQ分子
からなる有機薄膜153を、10オングストローム/分
の成長速度で、TCNQ結晶粉末を60℃の温度に加熱
しながら、約1×10-9Torrの雰囲気で、100オ
ングストロームの膜厚に形成した。
【0269】赤外分光法によりTCNQ薄膜の分子配向
を評価した結果、TCNQはその平板状分子面を表面と
平行に配向させて薄膜を形成していることが分かった。
【0270】実施例2−5 Si基板151上に、真空蒸着法により、膜厚約50n
mのTCTA分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層152を形成した。その後、電荷移動錯体TTF
−クロラニルからなる有機薄膜153を、TTF−クロ
ラニル結晶粉末を50℃の温度に加熱しながら、約1×
10-9Torrの雰囲気で、20オングストローム/分
の成長速度で約100オングストローム形成した。
【0271】赤外分光法により、錯体薄膜の分子配向を
評価した結果、TTF、クロラニル共にその平板状分子
面を表面と平行に配向させて薄膜を形成していることが
分かった。
【0272】実施例2−6 Si基板1上に、真空蒸着法により、膜厚約50nmの
ポリスチレンのアモルファス構造を有する分子配向制御
層152を形成した。その後、TCNQ分子からなる有
機薄膜153を、10オングストローム/分の成長速度
で、TCNQ結晶粉末を60℃の温度に加熱しながら、
約1×10-9Torrの雰囲気で、100オングストロ
ーム形成した。赤外分光法によりTCNQ薄膜の分子配
向を評価した結果、TCNQはその平板状分子面を表面
と平行に配向させて薄膜を形成していることが分かっ
た。
【0273】実施例2−7 Si基板151上に、真空蒸着法により、膜厚約50n
mのポリメチルフェニルシランのアモルファス構造を有
する分子配向制御層152を形成した。その後、TCN
Q分子からなる有機薄膜153を、TCNQ結晶粉末を
60℃の温度に加熱しながら、約1×10-9Torrの
雰囲気で、10オングストローム/分の成長速度で10
0オングストロームの膜厚に形成し、図15に示すよう
な構造を有する有機薄膜素子を得た。
【0274】赤外分光法によりTCNQ薄膜の分子配向
を評価した結果、TCNQはその平板状分子面を表面と
平行に配向させて薄膜を形成していることが分かった。
【0275】実施例2−8 Si基板151上に、LB法により、両親媒性のフェノ
ール基置換ポリシラン(メチル(m−ヒドロキシフェニ
ル)ポリシラン)からなる分子配向制御層152(ポリ
シラン主鎖は基板に平行配向)を形成した。その後、T
CNQ分子からなる有機薄膜153を、TCNQ結晶粉
末を60℃の温度に加熱しながら、約1×10-9Tor
rの雰囲気で、10オングストローム/分の成長速度
で、100オングストロームの膜厚に形成し、図15に
示すような構造を有する有機薄膜素子を得た。
【0276】赤外分光法によりTCNQ薄膜の分子配向
を評価した結果、TCNQはその平板状分子面を表面と
平行に配向させて薄膜を形成していることが分かった。
【0277】実施例2−9 ITO基板151上に、電解重合法により、ClO4 -
をドーパントイオンとする膜厚約50nmのポリピロー
ルのアモルファス構造を有する分子配向制御層152を
形成した。その後、TCNQ分子からなる有機薄膜15
3を、TCNQ結晶粉末を60℃の温度に加熱しなが
ら、約1×10-9Torrの雰囲気で、10オングスト
ローム/分の成長速度で、100オングストロームの膜
厚に形成した。
【0278】赤外分光法により、TCNQ薄膜の分子配
向を評価した結果、TCNQはその平板状分子面を表面
と平行に配向させて薄膜を形成していることが分かっ
た。
【0279】実施例2−10 ガラス基板上に、真空蒸着法により、膜厚約50nmの
OXD−S8分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層152を形成した。その後、TCNQ分子からな
る有機薄膜153を、TCNQ結晶粉末を60℃の温度
に加熱しながら、約1×10-9Torrの雰囲気で、1
0オングストローム/分の成長速度で100オングスト
ローム形成した。
【0280】さらに、再度、真空蒸着法により、膜厚約
50nmのOXD−S8分子のアモルファス構造を有す
る分子配向制御層152を同様にして形成した。その
後、ペリレン分子からなる有機薄膜154を、ペリレン
結晶粉末を100℃の温度に加熱しながら、約1×10
-9Torrの雰囲気で、5オングストローム/分の成長
速度で50オングストローム形成し、図16に示すよう
な構造を有する有機薄膜素子を得た。
【0281】赤外分光法によりTCNQ薄膜ならびにペ
リレン薄膜の分子配向を評価した結果、夫々の分子はそ
の平板状分子面を表面と平行に配向させて薄膜を形成し
ていることが分かった。
【0282】実施例2−11 石英基板151上に、膜厚400nmのITO透明電極
155および膜厚150nmのSrTiO3 からなる絶
縁層156を形成した。
【0283】この上に、真空蒸着法により、膜厚約50
nmのTCTA分子のアモルファス構造を有する分子配
向制御層152を形成した。
【0284】その後、電荷移動錯体TTF−クロラニル
からなる有機薄膜153を、TTF−クロラニル結晶粉
末を50℃の温度に加熱しながら、約1×10-9Tor
rの雰囲気で、20オングストローム/分の成長速度
で、約100オングストローム形成した。
【0285】赤外分光法により、TTF−クロラニル薄
膜の分子配向をその場評価した結果、TTF−クロラニ
ルはその平板状分子面を表面と平行に配向させて薄膜を
形成していることが分かった。
【0286】さらに、膜厚20nmのポリイソブチルメ
タクリレートからなる絶縁層157、および膜厚20n
mのAu半透明電極158を形成して、図17に示すよ
うな表示機能を有する有機薄膜素子を作成した。
【0287】この表示素子は、電圧を印加しない状態で
はうすい黄色を呈するが、電圧を印加すると約50Vで
赤色に変化した。
【0288】実施例2−12 実施例2−1と同様にして、石英基板151上に、真空
蒸着法により膜厚約50nmのOXD−S4分子のアモ
ルファス構造を有する分子配向制御層152を形成した
後、アントラセン分子からなる有機薄膜153を、2オ
ングストローム/分の成長速度で、10オングストロー
ムの膜厚に形成し、図15に示す構造を有する有機薄膜
素子を得た。
【0289】赤外分光法により、アントラセン薄膜の分
子配向をその場評価した結果、アントラセンは、その平
板状分子面を表面と平行に配向させて薄膜を形成してい
ることが分かった。
【0290】また、低速電子回折法により結晶性を評価
した結果、2次元の結晶格子を組んでいることが分かっ
た。この薄膜を液体He温度にまで冷却して、非線形分
光法により3次非線形感受率χ(3) を評価したところ1
-5esuと大きな値を得た。この値により、この薄膜
は制御光と信号光の2本のレーザー光を当てて光双安定
性を調べたところ、光入力−光出力曲線にヒステリシス
が認められ、スイッチオン/オフ時間は1ピコ秒のオー
ダーであることが分かった。
【0291】実施例2−13 図18に、本発明にかかるn−チャネル型の電界効果型
トランジスタ(FET)の構成の一例を表わす概略図を
示す。
【0292】Si基板上のソース、ドレイン領域間のチ
ャネル領域にSiO2 絶縁膜が形成され、SiO2 絶縁
膜上にソース・ドレイン電極52及び53が形成され、
Si基板上に、ゲート電極51が設けられた基板41を
用意した。真空蒸着法により、SiO2 絶縁膜上に膜厚
約50nmのOXD−S4分子のアモルファス構造を有
する分子配向制御層152を形成した。その後、C60
らなる有機薄膜153を、C60を300℃の温度に加熱
しながら、約1×10-9Torrの雰囲気で、20オン
グストローム/分の成長速度で、200オングストロー
ムの膜厚に形成し、図18に示すような、n−チャネル
型の電界効果型トランジスタ(FET)を形成した。
【0293】このFETの電界効果移動度を評価した結
果、0.15cm2 /V・秒という値を得た。
【0294】参考例1 図19に、参考例にかかる光ダイオードの構成の一例を
表わす図を示す。
【0295】ITO基板151上に、真空蒸着法によ
り、膜厚約50nmのOXD−S4分子のアモルファス
構造を有する分子配向制御層152を形成した。その
後、銅フタロシアニン分子からなる有機薄膜153を、
同フタロシアニン粉末を330℃の温度に加熱しなが
ら、約1×10-9Torrの雰囲気で、50オングスト
ローム/分の成長速度で200オングストロームの膜厚
に形成した。
【0296】赤外分光法により、薄膜の分子配向を、そ
の場評価した結果、TCNQはその平板状分子面を表面
と平行に配向させて薄膜を形成していることが分かっ
た。
【0297】この薄膜上に、上部電極を形成することに
より、図19に示す様な光ダイオード素子を形成した。
この素子に500nmの光を照射したところ、外部量子
効率30%で光電流を得た。
【0298】以上、実施例2−1ないし2−1から明
らかなように、本発明の有機薄膜素子では、有機薄膜中
の有機分子の配向制御性が格段に良好となる。例えば電
荷移動錯体有機薄膜の中性−イオン性転移を電圧で制御
する素子を、表示素子に適したガラス/ITO基板上に
形成することができ、相転移を効率よく起こすことが可
能となる。このように、最適な分子配向あるいは結晶配
向を制御しつつ任意の基板上に有機薄膜を形成すること
が可能となり、電子素子、表示素子、光情報記録媒体、
非線形光学素子などの実用化が期待できる。従って、本
発明の有機薄膜素子は、その工業的な価値がきわめて大
きい。
【0299】次に、ステロイド系骨格を有する分子から
なるアモルファス有機薄膜を用いた例を示す。
【0300】実施例2−1 OXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層の代わりに、コール酸のアモルファス構造を有す
る分子配向制御層を形成する以外は、実施例2−2と同
様にして有機薄膜素子を得たところ、さらによい評価が
得られた。
【0301】実施例2−1 OXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層の代わりに、コール酸のアモルファス構造を有す
る分子配向制御層を用いる以外は、実施例2−3と同様
にして有機薄膜素子を得たところ、さらによい評価が得
られた。
【0302】実施例2−1 OXD−S8分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層の代わりに、コール酸メチルのアモルファス構造
を有する分子配向制御層を形成する以外は、実施例2−
3と同様にして有機薄膜素子を得たところ、さらによい
評価が得られた。
【0303】実施例2−1 電解重合法により、ClO4 - をドーパントイオンとす
る膜厚約50nmのポリピロールのアモルファス構造を
有する分子配向制御層を形成する代わりに、蒸着法によ
り、コール酸のアモルファス構造を有する分子配向制御
層を形成する以外は、実施例2−9と同様にして有機薄
膜素子を得たところ、さらによい評価が得られた。
【0304】実施例2−1 OXD−S8分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層の代わりに、コール酸のアモルファス構造を有す
る分子配向制御層を形成する以外は、実施例2−10と
同様にして有機薄膜素子を得たところ、さらによい評価
が得られた。
【0305】実施例2−19 TCTA分子のアモルファス構造を有する分子配向制御
層の代わりに、コール酸のアモルファス構造を有する分
子配向制御層を形成して有機薄膜素子を得、さらに、膜
厚20nmのポリイソブチルメタクリレートからなる絶
縁層の代わりに、膜厚50nmのコール酸からなる層と
膜厚20nmのポリイソブチルメタクリレートからなる
絶縁層とを形成する以外は、実施例2−11と同様にし
て表示機能を有する有機薄膜素子を得たところ、さらに
よい評価が得られた。
【0306】実施例2−2 OXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層の代わりに、コール酸のアモルファス構造を有す
る分子配向制御層を形成する以外は、実施例2−12と
同様にして有機薄膜素子を得たところ、さらによい評価
が得られた。
【0307】実施例2−2 OXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層の代わりに、コール酸のアモルファス構造を有す
る分子配向制御層を形成する以外は、実施例2−13と
同様にしてn−チャネル型の電界効果型トランジスタを
得たところ、さらによい評価が得られた。
【0308】参考例2 OXD−S4分子のアモルファス構造を有する分子配向
制御層の代わりに、コール酸のアモルファス構造を有す
る分子配向制御層を形成する以外は、参考と同様に
して光ダイオードを得たところ、さらによい評価が得ら
れた。
【0309】
【発明の効果】本発明によれば、光制御素子に、光制御
層が相転移を生じるのに必要な強度未満の電界を形成す
ることにより、高い3次非線形感受率と高速な応答速度
とを同時に実現することが可能となる。また、これによ
り、超高速光スイッチング素子等の光変調、光論理素子
等の実現が可能になるとともに、素子の微細化が可能と
なり、さらには、2次元並列処理機能を有する光論理素
子や、光コンピュータ等の構築が可能となる。
【0310】また、本発明によれば、基板本体の材質・
形状にかかわらず、有機薄膜の構造ならびに分子配向性
を制御可能であり、光学素子、電子素子などとして実用
的に使用し得る有機薄膜素子が得られる。
【0311】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光制御素子の一例を表す断面図
【図2】 電場の印加による結晶のNI転移を示す図
【図3】 NI転移における電界強度と3次非線形感受
率χ(3) との関係を表すグラフ図
【図4】 本発明に係る光双安定性素子における入力光
強度と出力光強度との関係を表すグラフ図
【図5】 本発明の光制御素子の他の一例を表す一断面
【図6】 本発明の光制御素子を用いた光シャッタの構
成を表す図
【図7】 本発明の光制御素子を用いたマッハ・ツェン
ダー干渉計型導波路素子の原理を説明するための図
【図8】 本発明の光制御素子を用いた方向性結合器型
導波路素子の原理を説明するための図
【図9】 本発明の光制御素子を用いたエタロンの原理
を説明するための図
【図10】 本発明の実施例1に係る光制御素子におけ
る入射光強度と出力光強度との関係を表すグラフ図
【図11】 実施例6の光制御素子を示す概略断面図
【図12】 実施例7の光制御素子を示す概略断面図
【図13】 実施例8の方向性結合型導波路素子を表す
概略図
【図14】 実施例9のマッハ・ツェンダー型導波路素
子を表す概略図
【図15】 本発明の有機薄膜素子の構造の一例を表わ
す該略図
【図16】 本発明の有機薄膜素子の構造の他の一例を
表わす該略図
【図17】 本発明の有機薄膜素子の構造のさらに他の
一例を表わす該略図
【図18】 本発明の有機薄膜素子の構造のさらにまた
他の一例を表わす該略図
【図19】 参考例の有機薄膜素子の一例を表わす該略
【符号の説明】
2…電極層 3…第1の絶縁体層 4,114,134,135…光制御層 5…第2の絶縁体層 6…第2の電極層 7,117,152…分子配向制御層 41…基板 51…ゲート電極 52…ソース電極 53…ドレイン電極 61,62…偏光子 63…光カー・セル 64…光シャッタ 66…制御光 67,76,84…出力光 71,72,73,83,92…信号光 74,75,143,144…ブランチ 81,82,132,133…アーム 91…エタロン 111,131,141,151…石英基板 112,116…電極層 113,115,156,157…絶縁体層 118,119…プリズム 128,129…グレーティング 134,135…光制御素子 136,148…方向性結合器型導波路素子 137…入力部 138…出力部 142,145…導波路 146,147…光制御素子 154…有機薄膜 155…透明電極 158…半透明電極
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/35 G02F 1/15

Claims (18)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、前記基板上に形成された第1の
    電極層と、前記第1の電極層上に形成された第1の絶縁
    体層と、前記第1の絶縁体層上に形成された電子供与性
    有機化合物と電子受容性有機化合物とを含む光制御層
    と、前記光制御層上に形成された第2の絶縁体層と、前
    記第2の絶縁体層上に形成された第2の電極層と、前記
    光制御層に、前記光制御層が相転移を起こすのに必要な
    強度未満の外部電場を印加する手段とを具備し、前記強
    度未満の外部電場の印加により電荷移動励起子を誘起す
    ることを特徴とする光制御素子。
  2. 【請求項2】 前記光制御層に、信号光が入射されるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の光制御素子。
  3. 【請求項3】 前記信号光の出力強度を制御するための
    制御光を前記光制御層に照射する制御光照射手段をさら
    に具備することを特徴とする請求項2に記載の光制御素
    子。
  4. 【請求項4】 前記光制御層は、前記電子供与性有機化
    合物と電子受容性有機化合物とが交互に積層された交互
    積層型電荷移動錯体結晶から実質的になり、所定の電場
    の印加により中性−イオン性相転移が生じることを特徴
    とする請求項1に記載の光制御素子。
  5. 【請求項5】 前記第1及び第2の絶縁体層の少なくと
    も一方が光透過性を有することを特徴とする請求項1に
    記載の光制御素子。
  6. 【請求項6】 前記基板の主面と平行な方向から、前記
    光制御層に信号光を入射させる手段を具備することを特
    徴とする請求項2に記載の光制御素子。
  7. 【請求項7】 前記第1の絶縁体層と前記光制御層との
    間、及び第2の絶縁体層と前記光制御層との間のうち少
    なくとも一方に、分子配向制御膜をさらに具備すること
    を特徴とする請求項1に記載の光制御素子。
  8. 【請求項8】 前記分子配向制御膜は、アモルファス有
    機膜からなることを特徴とする請求項7に記載の光制御
    素子。
  9. 【請求項9】 前記アモルファス有機薄膜からなる分子
    配向制御層は、ステロイド系骨格を有する分子を含むこ
    とを特徴とする請求項8に記載の光制御素子
  10. 【請求項10】 前記アモルファス有機薄膜からなる分
    子配向制御層は、その分子構造の最外殻に芳香環を有す
    る低分子系色素分子を含むことを特徴とする請求項8に
    記載の光制御素子
  11. 【請求項11】 前記アモルファス有機薄膜からなる分
    子配向制御層は、ポリシランの主鎖が基板面と平行に配
    向した構造を有するポリシラン誘導体を含むことを特徴
    とする請求項8に記載の光制御素子
  12. 【請求項12】 前記アモルファス有機薄膜からなる分
    子配向制御層は、異種のアモルファス有機膜を積層した
    構造を有することを特徴とする請求項8に記載の光制御
    素子
  13. 【請求項13】 前記光制御層は、π電子系分子からな
    る結晶性有機薄膜を有し、前記結晶性有機薄膜は、真空
    蒸着法により、10 -9 Torrより高い真空度において
    100オングストローム/分以下の成長速度で形成さ
    れ、且つその膜厚が1分子層以上2000オングストロ
    ーム以下であることを特徴とする請求項8に記載の光制
    御素子
  14. 【請求項14】 前記π電子系分子からなる結晶性有機
    薄膜は、異種有機分子の薄膜を積層した構造を有するこ
    とを特徴とする請求項13に記載の光制御素子
  15. 【請求項15】 前記π電子系分子からなる結晶性有機
    薄膜は、有機電荷移動錯体結晶からなることを特徴とす
    る請求項13に記載の光制御素子
  16. 【請求項16】 前記結晶性有機薄膜は、光照射によ
    り、光起電力あるいは光電流を発生する機能を有するこ
    とを特徴とする請求項13に記載の光制御素子
  17. 【請求項17】 前記第1及び第2の絶縁層は、スクシ
    ノニトリル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポ
    リイミド、ポリスチレン、及びポリシラン、SrTiO
    3 、PbTiO 3 、SiO 2 、及びステロイド系骨格を有
    する有機膜からなる群から選択される少なくとも1種を
    含むことを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1
    項に記載の光制御素子
  18. 【請求項18】 基板と、前記基板上に形成された第1
    の電極層と、前記第1の電極層上に形成された第1の絶
    縁体層と、前記第1の絶縁体層上に形成され た電子供与
    性有機化合物と電子受容性有機化合物とを含む光制御層
    と、前記光制御層上に形成された第2の絶縁体層と、前
    記第2の絶縁体層上に形成された第2の電極層と、前記
    第1の絶縁体層と前記光制御層との間、及び前記第2の
    絶縁体層と前記光制御層との間のうち少なくとも一方に
    設けられたアモルファス有機膜からなる分子配向制御層
    と、前記光制御層に、前記光制御層が相転移を起こすの
    に必要な強度未満の外部電場を印加する手段とを具備
    し、前記強度未満の外部電場の印加により電荷移動励起
    子を誘起する光制御素子の製造方法であって、 前記アモルファス有機膜の1つの表面上に、真空蒸着法
    により、10 -9 Torrより高い真空度において100
    オングストローム/分以下の成長速度で、1分子層以上
    2000オングストローム以下の膜厚の結晶性有機薄膜
    からなる光制御層を形成することを特徴とする光制御素
    子の製造方法
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