JP3466404B2 - 能動騒音制御装置 - Google Patents

能動騒音制御装置

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JP3466404B2
JP3466404B2 JP01466297A JP1466297A JP3466404B2 JP 3466404 B2 JP3466404 B2 JP 3466404B2 JP 01466297 A JP01466297 A JP 01466297A JP 1466297 A JP1466297 A JP 1466297A JP 3466404 B2 JP3466404 B2 JP 3466404B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は能動騒音制御装置に
係り、とくに騒音と逆位相の音響を発生させて聴取者の
耳に騒音が聞こえないようにした能動騒音制御装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】空間の所望の受音点で騒音と逆位相とな
るような音響をキャンセルスピーカから放射し、空間の
騒音を低減するようにした能動騒音制御装置(アクティ
ブノイズコントローラ)が有る。この能動騒音制御装置
は、未知システムについて入出力関係からパラメータを
推定するシステム同定を応用したものである。図9に従
来の能動騒音制御装置の基本構成を示す。騒音空間の所
望の受音点にエラー検出用マイク1、騒音空間の他の所
望位置に受音点での騒音と逆位相となるような音響を発
生するキャンセルスピーカ2を設置してある。騒音源に
設置した騒音センサ3で騒音が検出され、騒音のリファ
レンス信号が生成される。このリファレンス信号はA/
D変換器4で離散化されてリファレンス信号x(n)と
なり(nは時刻を示す)、各フィルタ係数が可変でI次
のFIRディジタルフィルタ(以下、FIRフィルタと
略す)5に入力される。FIRフィルタ5はフィルタ係
数が可変されることで、伝達関数Wが可変となる。FI
Rフィルタ5の出力は騒音キャンセル用音響信号として
D/A変換器6でD/A変換されたのちパワーアンプ7
で電力増幅され、キャンセルスピーカ2に出力されて、
該キャンセルスピーカ2を駆動する。FIRフィルタ5
からキャンセルスピーカ2までで音響再生手段20が構
成されている。エラー検出用マイク1の出力はマイクア
ンプ8で増幅されたのち、A/D変換器9で離散化され
て誤差信号y(n)となり、適応制御部10に入力され
る。この適応制御部10は適応アルゴリズムを実行す
る。よって、リファレンス信号x(n)はフィルタ11
でフィルタリングされたのち適応制御部10に入力され
る。フィルタ11はFIRディジタルフィルタから成
り、パワーアンプ7の入力点からマイクアンプ8の出力
点までの空間パスを含む伝達関数C(z)をJ次のFI
Rディジタルフィルタで具現するときのインパルス応答
j (j=0〜J)が各次数のフィルタ係数として設定
されている。フィルタ11の伝達関数をC’(z)とす
る。フィルタ11と適応制御部10により適応制御手段
30が構成さている。
【0003】リファレンス信号x(n)はフィルタ11
に通されてC’(z)の伝達関数が畳込まれ、q(n)
として適応制御部10に出力される。適応制御部10は
q(n)を用いて所定の適応アルゴリズムを実行し、y
(n)を最小とできるFIRフィルタ5の各次数のフィ
ルタ係数の更新値を求め、FIRフィルタ5に対し更新
設定する。具体的には、適応アルゴリズムが最小自乗法
に着目したLMS(Least MeanSquare )の場合、FI
Rフィルタ5の次数位置i(i=0〜I)のフィルタ係
数をwi として、時刻(n+1)のフィルタ係数w
i (n+1)を次式、 wi (n+1)=wi (n)+2μ・y(n)・q(n−i) ……(1) 但し、 μ:所定の収束係数 に従い、FIRフィルタ5に対しフィルタ係数の更新設
定を行う。なお、フィルタ係数wi の初期値wi (0)
は予め定められた所定値に設定する。また、フィルタ係
数cj は、D/A変換器6の入力点にM系列ノイズデー
タを注入したときのA/D変換器9の出力点の応答信号
から所定の演算を行うことで同定して求める。このよう
にして、キャンセルスピーカ2からはエラー検出用マイ
ク1での騒音が最小となるような適切な制御音が放射さ
れて、騒音の低減が図られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来の能動騒音制御装置では、騒音源に騒音センサ3
を設置する必要があり、この騒音センサ3の設置場所
は、該騒音センサ3で検出した騒音のリファレンス信号
がエラー検出用マイク1の置かれた位置での騒音と高い
相関関係を持つ場所としなければならず、騒音センサ3
の適切な設置場所を探し、騒音センサ3の取り付けを行
うのにかなり手間が掛かっていた。
【0005】また、LMSアルゴリズムの場合、(1)
式中のμは通常0.5以下の適当な値に設定される。μ
を小さくすると収束が遅く、制御対象が例えばロードノ
イズの如く、定常的でなく変化が速い騒音のとき、適応
制御が間に合わず、騒音を確実にキャンセルすることが
できない。LMSアルゴリズムにおいて騒音の変化に対
する追従性を高めるためには、μを0.5近くの大きな
値に設定して収束速度を速くする必要がある。また、L
MSアルゴリズムの代わりに、カルマンフィルタの如
く、収束の速い適応アルゴリズムを用いて、騒音のリフ
ァレンス信号x(n)の変化に対する追従性を高めても
良い。カルマンフィルタの場合、(1)式中のμに相当
するカルマンゲインが最適値となるように更新されるた
め、速い収束速度が得られる。
【0006】しかしながら、適応制御部10はリファレ
ンス信号(n)を、パワーアンプ7の入力点からマイク
アンプ8の出力点までの伝達関数(C’(z))を持つ
フィルタ11に通したq(n)に基づき適応制御を行っ
ており、キャンセルスピーカ2からエラー検出用マイク
1までの空間パスという周波数−位相特性や周波数−ゲ
イン特性が複雑で時間遅れの有る伝達関数が含まれてい
るため、とくに騒音を確実にキャンセルしようとしてμ
の大きなLMSアルゴリズムを用いたり、カルマンフィ
ルタなど、他の収束速度の速い適応アルゴリズムを用い
ようとした場合に制御系が不安定になり、うまく騒音を
キャンセルできないという問題があった。
【0007】本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、
設置作業の手間を軽減できる能動騒音制御装置を提供す
ることを、その目的とする。また、収束速度の速い適応
アルゴリズムを用いても、確実に騒音のキャンセルをで
きる能動騒音制御装置を提供することを、その目的とす
る。
【0008】
【0009】
【0010】
【課題を解決するための手段】 請求項記載の能動騒音
制御装置では、騒音のリファレンス信号を可変の伝達関
数で加工し、騒音キャンセル用音響信号を作成する加工
手段と、加工手段の出力を電力増幅する電力増幅手段
と、空間の所定箇所に置かれて電力増幅手段の出力を電
気−音響変換する電気−音響変換手段と、騒音制御対象
者の耳の近傍に置かれたエラー検出用マイクと、エラー
検出用マイクの出力を増幅するマイク用増幅手段と、電
力増幅手段の入力点からマイク用増幅手段の出力点まで
の伝達関数が設定され,加工手段の出力を通すフィルタ
手段と、マイク用増幅手段の出力からフィルタ手段の出
力を減算して騒音のリファレンス信号を作成する減算手
段と、減算手段の出力の実数値u倍と加工手段の出力の
実数値v倍を加算して誤差信号を作成する加算手段と、
騒音のリファレンス信号を用いて,加算手段から出力さ
れる誤差信号を最小化する加工手段の伝達関数を求め,
加工手段の伝達関数を可変する適応制御を行う適応制御
手段とを備え、電力増幅手段の入力側と、フィルタ手段
の入力側または出力側で騒音キャンセル用音響信号を実
数値r倍するとともに、電力増幅手段の入力点からマイ
ク用増幅手段の出力点までの伝達関数を、u/(rv)
に近い値とすることを特徴としている。
【0011】これにより、エラー検出用マイクの出力か
ら、加工手段の出力を電力増幅手段の入力点からマイク
用増幅手段の出力点までの伝達関数Cが設定されたフィ
ルタを通した信号を減算することで騒音と相関の高いリ
ファレンス信号を作成できるので、騒音センサを別個に
設けなくて済み、騒音センサの適切な設置場所を探し、
取り付けを行う手間が省ける。また、適応制御手段は、
騒音のリファレンス信号を、電力増幅手段の入力点から
マイク用増幅手段の出力点までの伝達関数に畳込まなく
ても適応制御が可能となるので、電気−音響変換手段と
エラー検出用マイクの間の空間パスに伴う時間遅れや、
周波数−位相特性、周波数−ゲイン特性の影響を受ける
ことなく適応制御の計算を行える。よって、例えば、μ
を大きくしたLMSアルゴリズム、或いは、カルマンフ
ィルタなどの他の収束速度の速い適応アルゴリズムを用
いても安定した適応制御を行うことができる。
【0012】請求項1記載の能動騒音制御装置におい
て、電気−音響変換手段は騒音制御対象者の耳の近傍に
設置しても良く、この場合、エラー検出用マイクと電気
−音響変換手段の間の距離は、好ましくは30cm以下
とすると良い。これにより、騒音の中で特に耳障りとな
る低域について、電気−音響変換手段からエラー検出用
マイクまでの空間の伝達関数をほぼ1とできるので、フ
ィルタ手段に設定される伝達関数の誤差を小さくし、減
算手段の出力にキャンセル用音響成分が残らないように
してハウリング防止を図ることができる。
【0013】また、請求項1記載の能動騒音制御装置に
おいて、電力増幅手段は定電流アンプとしても良い。電
気−音響変換手段は通常、最低共振周波数以下の周波数
−ゲイン特性が悪いが、ブースト回路を設けて最低共振
周波数以下をブーストしようとすると、時間遅れが生じ
て、エラー検出用マイク位置での騒音とキャンセル用音
響との位相差がπから大きくずれてしまい、騒音低減効
果が下がる。この点、電気−音響変換手段を定電流アン
プで駆動することにより、電気−音響変換手段の低域の
周波数−ゲイン特性をインピーダンスカーブと近い形と
させることができ、最低共振周波数以下の周波数域のレ
ベルをブースト回路でブーストしなくても持ち上げるこ
とができる。このため、制御対象者の近傍への設置が難
しいスピーカキャビネットを用いずに最低共振周波数以
下までキャンセル音響を再生することができ、騒音低減
効果が向上する。
【0014】更に、請求項1記載の能動騒音制御装置に
おいて、電気−音響変換手段に周波数特性補正手段を付
加しても良い。この周波数特性補正手段は、コイル、コ
ンデンサ、抵抗の内、少なくともコイルまたはコンデン
サを含む回路から構成し、電気−音響変換手段のボイス
コイルと並列に接続する。これにより、騒音の制御対象
周波数域内で、電気−音響変換手段の周波数−ゲイン特
性がフラットに近くなるように補正したり、周波数−位
相特性がフラットに近くなるように補正することが可能
となる。
【0015】請求項2記載の能動騒音制御装置では、減
算手段の出力側に一定以下の周波数成分だけを通過させ
る低域通過手段を設けたことを特徴としている。この低
域通過手段の通過帯域は、好ましくは1kHz以下とす
る。電力増幅手段の入力点からマイク用増幅手段の出力
点までの伝達関数の実際の値と測定値との間に誤差が有
ると、減算手段の出力にキャンセル用音響成分が残って
しまうが、ハウリングを起こしやすい高域成分をカット
することでハウリング防止を図ることができる。
【0016】請求項3記載の能動騒音制御装置では、マ
イク用増幅手段の出力側に設けられてマイク用増幅手段
の出力yに対し、a・yb (但し、aは絶対値が1以下
の実数、bは1より小さい正の実数)の計算式に基づき
圧縮する圧縮手段と、電力増幅手段の入力側に設けられ
て、騒音キャンセル用音響信号gに対し、(a・g)
1/b の計算式に基づき伸長する伸長手段とを設けたこと
を特徴としている。これにより、制御対象がロードノイ
ズの場合、騒音のダイナミックレンジがかなり大きく、
周波数差によるレベル差がかなり大きくなって、例えば
250Hzのレベルは40Hzのレベルより約30dB
も小さいが、加工手段と適応制御手段に入力される誤差
信号と騒音のリファレンス信号のダイナミックレンジを
圧縮できるので、レベルの小さな高い周波数成分に対し
ても十分な分解能を確保して、確実に騒音のキャンセル
を図ることができる。
【0017】請求項記載の能動騒音制御装置では、電
気−音響変換手段から出力された音のエラー検出用マイ
クの位置での音圧に対する電気−音響変換手段から出力
された音の騒音制御対象者の耳の位置での音圧の比をp
として、電力増幅手段の入力点からマイク用増幅手段の
出力点までの伝達関数を、pu/(rv)に近い値とす
ることを特徴としている。これにより、エラー検出用マ
イクと騒音制御対象者の耳の位置が異なっていても、騒
音制御対象者の耳の位置で騒音のレベルとキャンセル音
響のレベルを等しくなるようにでき、騒音制御対象者に
騒音が聞こえないように消音することができる。
【0018】請求項記載の能動騒音制御装置では、適
応制御手段は、カルマンフィルタを制御アルゴリズムと
したことを特徴としている。カルマンフィルタは極めて
収束の速いアルゴリズムであり、制御対象がロードノイ
ズの如く定常的でなく変化の激しい騒音であっても、制
御系が騒音の変化に十分に追従して確実に騒音をキャン
セルすることができる。請求項記載の装置において
は、カルマンフィルタのタップ数を10以下、好ましく
は3〜5程度とすれば、適応制御手段の計算処理上の負
担を最小限に抑えることができ、適応制御手段をDSP
(ディジタルシグナルプロセッサ)で具現する場合、プ
ログラムを記憶させるのに必要な記憶容量や処理速度を
最小限に抑えることができる。また、誤差信号の絶対値
が一定以下に小さくなっている間は適応制御を中止し、
加工手段の伝達関数を中止直前に固定し、誤差信号の絶
対値が一定以上になったところで適応制御を再開するよ
うにしたり、一定時間適応制御を実行したところで、適
応制御を中止し、加工手段の伝達関数を中止直前に固定
し、中止状態を一定時間続けたところで適応制御を再開
するようにして定期的に適応制御を実行するようにすれ
ば、安定した騒音制御を行わせることができる。
【0019】請求項記載の能動騒音制御装置では、適
応制御手段は、カルマンフィルタの変数の内、少なくと
も推定誤差の共分散行列を定期的に再初期化するように
したことを特徴としている。これにより、騒音制御中に
制御系が不安定になり、正しく騒音キャンセルできなく
なるのを防止することができる。
【0020】
【実施例】図1は本発明の原理を説明するための能動騒
音制御装置の全体的なブロック図である。図1は(リフ
ァレンス,キャンセルスピーカ,エラー検出用マイク)
=(1,1,1)で、ロードノイズをキャンセルするた
めの能動騒音制御装置を示す。なお、図9と同一の構成
部分には同一の符号が付してある。1は騒音空間の内、
受音点である騒音制御対象者Aの右耳近傍に設置された
エラー検出用マイクであり、ここでは右耳との間隔が7
cmとしてある(図2参照)。2は騒音制御対象者Aの
右耳近傍に設置されたキャンセルスピーカであり、ここ
では騒音制御対象者Aの真後ろで、エラー検出用マイク
1から30cmの所に口径が16cmのスピーカが設置
してある(図2参照)。キャンセルスピーカ2は前記エ
ラー検出用マイク1の位置で、騒音と逆位相となるよう
な音響(キャンセル用音響)を発生する。騒音で特に耳
障りとなるのは250Hz以下なので、図1の能動騒音
制御装置での騒音制御対象周波数域を250Hz以下と
すると、キャンセルスピーカ2とエラー検出用マイク1
の間隔が30cmと近いため、250Hz以下ではキャ
ンセルスピーカ2とエラー検出用マイク1の間の空間の
伝達関数はほぼ1と見做すことができる。
【0021】12は離散化された騒音のリファレンス信
号x(n)の入力端子(nは時刻)、20は1系統の音
響再生手段であり、リファレンス信号x(n)を用いて
受音点での騒音をキャンセルするための音響を形成す
る。この内、5はフィルタ係数が可変でI次のFIRデ
ィジタルフィルタ(以下、FIRフィルタと略す)であ
り、加工手段としての機能を有する。FIRフィルタ5
はフィルタ係数が可変されることで、伝達関数Wが可変
となる。FIRフィルタ5の出力を騒音キャンセル用音
響信号s(n)とする。6はFIRフィルタ5の出力を
D/A変換するD/A変換器、7はD/A変換器6の出
力を電力増幅してキャンセルスピーカ2を駆動するパワ
ーアンプである。
【0022】8はエラー検出用マイク1の出力を増幅す
るマイクアンプ、9はマイクアンプ8の出力をA/D変
換して離散化し、誤差信号y(n)を作成するA/D変
換器である。パワーアンプ7の入力点からマイクアンプ
8の出力点までの伝達関数をC(z)とする。21はF
IRディジタルフィルタから成るフィルタであり、伝達
関数CをJ次のFIRディジタルフィルタで具現すると
きのインパルス応答cj (j=0〜J)が各次数のフィ
ルタ係数として設定されている。フィルタ21に設定さ
れた伝達関数をC’(z)とする(C’はCの推定値で
あることを意味する)。フィルタ21のフィルタ係数c
j は、D/A変換器6の入力点にM系列ノイズデータを
注入したときのA/D変換器9の出力点の応答信号から
所定の演算を行うことで同定して求めてある。22は演
算器であり、A/D変換器9の出力から、FIRフィル
タ5の出力であるs(n)をフィルタ21に通した信号
を減算する。そして、結果をリファレンス信号x(n)
として入力端子12に出力する。
【0023】y(n)中の騒音成分をd(n)とする
と、 y(n)=d(n)+s(n)・C ……(2) である。演算器22の出力は、 y(n)−s(n)・C’=d(n)+s(n)・C−s(n)・C’ ……(3) となる。C’はCとほぼ等しいので、(3)式から演算
器22の出力≒d(n)となり、ほぼ騒音成分のみとな
る。よって、演算器22の出力を騒音のリファレンス信
号x(n)として用いることが可能となり、従来の如
く、騒音センサ(図9の符号3参照)を設ける必要がな
くなる。
【0024】30はリファレンス信号x(n)を用い
て,A/D変換器6から出力される誤差信号y(n)を
最小化するFIRフィルタ5の伝達関数を求め,FIR
フィルタの伝達関数を可変する適応制御を行う適応制御
手段である。この内、11はリファレンス信号x(n)
に予め、パワーアンプ7の入力点からマイクアンプ8の
出力点までの伝達関数Cを畳込むためのFIRディジタ
ルフィルタから成るフィルタであり、フィルタ21と同
じく、伝達関数CをJ次のFIRディジタルフィルタで
具現するときのインパルス応答cj (j=0〜J)が各
次数のフィルタ係数として設定されている。フィルタ1
1に設定された伝達関数をC’(z)とする(C’はC
の推定値であることを意味する)。
【0025】リファレンス信号x(n)はフィルタ11
に通されてC’(z)の伝達関数が畳込まれ、q(n)
として適応制御部10に出力される。適応制御部10は
q(n)を用いて所定の適応アルゴリズムを実行し、y
(n)を最小とできるFIRフィルタ5の各次数位置i
(i=0〜I)のフィルタ係数の更新値を求め、FIR
フィルタ5に対し更新設定する。適応制御部10が適応
アルゴリズムとして、LMSを用いるとき、FIRフィ
ルタ5の次数位置i(i=0〜I)のフィルタ係数 w
i の更新式は、 wi (n+1)=wi (n)+2μ・y(n)・q(n−i) ……(4) 但し、 μ:所定の収束係数 である。適応制御部10は(4)式に従い、FIRフィ
ルタ5のフィルタ係数を更新し、適応制御を行う。wi
の初期値wi (0)は予め定められた所定値に設定す
る。
【0026】FIRフィルタ5はリアルタイムで更新さ
れる伝達関数により、リファレンス信号x(n)を加工
する。FIRフィルタ5の出力はD/A変換器6でD/
A変換されたあと、パワーアンプ7で電力増幅される。
そして、キャンセルスピーカ2を駆動し、騒音キャンセ
ル用の音響を空間に放射させる。この騒音キャンセル用
音響はエラー検出用マイク1の位置において、騒音と振
幅が同じで位相が反対となっており、騒音がキャンセル
される。
【0027】なお、フィルタ21と11の伝達関数C’
は、D/A変換器6の入力点にM系列ノイズデータを注
入したときのA/D変換器9の出力点の応答信号を検出
した結果に基づき、パワーアンプ7の入力点からマイク
アンプ8までの伝達関数を推定して設定されるが、C’
と、パワーアンプ7の入力点からマイクアンプ8の出力
点までの実際の伝達関数Cとの間には誤差が有り、この
誤差はキャンセルスピーカ2とエラー検出用マイク1の
間の距離が長くなる程、また、周波数が高くなる程大き
くなる。C’とCの誤差が大きいと、演算器22の出力
に騒音キャンセル用音響成分が残り、ハウリングを起こ
すことがある。しかし、キャンセルスピーカ2とエラー
検出用マイク1までの距離が30cmと短く、伝達関数
がほぼ1であるので、C’と、パワーアンプ7の入力点
からマイクアンプ8の出力点までの実際の伝達関数Cと
の間の誤差はそれほど大きくなく、ハウリングは生じ難
くなっている。
【0028】図1の能動騒音制御装置によれば、エラー
検出用マイク1は右耳近傍に1つしか設けてないが、キ
ャンセルスピーカ2を騒音制御対象者Aの真後に位置さ
せたので、騒音制御対象者Aの左右の耳に同じ騒音が入
ってくる場合、両耳に聞こえる騒音を同時に低減するこ
とができる。そして、FIRフィルタ5から出力される
騒音キャンセル用音響信号s(n)を、パワーアンプ7
の入力点からマイクアンプ8の出力点までの伝達関数C
の推定値C’が設定されたフィルタ21を通したあと、
A/D変換後のエラー検出用マイク出力から減算するこ
とで、騒音制御対象者Aに聞こえる騒音が定常的でない
変化の激しい騒音であっても、該騒音と相関の高いリフ
ァレンス信号を作成できる。よって、従来の如く、騒音
センサを別個に設けなくても騒音制御を行うことがで
き、騒音センサの適切な設置場所を探し、取り付けを行
う手間が省ける。
【0029】また、キャンセルスピーカ2をエラー検出
用マイク1の近傍に設置したので、騒音の中で特に耳障
りとなる250Hz以下の低域について、キャンセルス
ピーカ2からエラー検出用マイク1までの空間の伝達関
数をほぼ1とできる。フィルタ21,11の伝達関数は
パワーアンプ7の入力点からマイクアンプ8の出力点ま
での伝達関数を推定して設定されるが、キャンセルスピ
ーカ2からエラー検出用マイク1までの空間の伝達関数
をほぼ1とできることで、フィルタ21,11に設定さ
れる伝達関数の誤差を小さくし、演算器22の出力に騒
音キャンセル用音響成分が残らないようにしてハウリン
グ防止を図ることもできる。
【0030】図3は本発明の実施例に係る能動騒音制御
装置の全体的なブロック図である。図3は(リファレン
ス,キャンセルスピーカ,エラー検出用マイク)=
(1,1,1)で、ロードノイズをキャンセルするため
の能動騒音制御装置を示す。なお、図1と同一の構成部
分には同一の符号が付してある。図1の能動騒音制御装
では、適応制御部10はA/D変換器9から出力され
た誤差信号y(n)が最小となるように適応制御するた
め、騒音のリファレンス信号x(n)を、パワーアンプ
7の入力点からマイクアンプ8の出力点までの伝達関数
の推定値C’を持つフィルタ11に通したq(n)に基
づき適応制御を行っており、キャンセルスピーカ2から
エラー検出用マイク1までの空間パスという周波数−位
相特性や周波数−ゲイン特性が複雑で時間遅れの有る伝
達関数が含まれているため、とくに騒音を確実にキャン
セルしようとしてμの大きなLMSアルゴリズムを用い
たり、カルマンフィルタなど、他の収束速度の速い適応
アルゴリズムを用いようとした場合に制御系が不安定に
なり、うまく騒音をキャンセルできない恐れが有る。こ
れに対し、図3の実施例では、A/D変換器9の出力y
(n)と、FIRフィルタ5の出力s(n)の加算値を
誤差信号e(n)として適応制御部10に入力すること
で、騒音のリファレンス信号x(n)を、パワーアンプ
7の入力点からマイクアンプ8の出力点までの伝達関数
の推定値C’に畳込まなくても適応制御を可能としたも
のである。
【0031】図3の内、1は騒音空間の内、受音点であ
る騒音制御対象者Aの右耳近傍に設置されたエラー検出
用マイクであり、ここでは右耳との間隔が7cmとして
ある(図2参照)。2は騒音制御対象者Aの右耳近傍に
設置されたキャンセルスピーカであり、ここでは騒音制
御対象者Aの真後ろで、エラー検出用マイク1から30
cmの所に口径が16cmのスピーカが設置してある
(図2参照)。キャンセルスピーカ2は前記エラー検出
用マイク1の位置で、騒音と逆位相となるような音響
(キャンセル用音響)を発生する。騒音で特に耳障りと
なるのは250Hz以下なので、本実施例での騒音制御
対象周波数域を250Hz以下とすると、キャンセルス
ピーカ2とエラー検出用マイク1の間隔が30cmと近
いため、250Hz以下ではキャンセルスピーカ2とエ
ラー検出用マイク1の間の空間の伝達関数はほぼ1と見
做すことができる。
【0032】12は離散化された騒音のリファレンス信
号x(n)の入力端子(nは時刻)、20は1系統の音
響再生手段であり、リファレンス信号x(n)を用いて
受音点での騒音をキャンセルするための音響を形成す
る。この内、5はフィルタ係数が可変でI次のFIRデ
ィジタルフィルタ(以下、FIRフィルタと略す)であ
り、加工手段としての機能を有する。FIRフィルタ5
の出力をキャンセル用音響信号s(n)とする。40は
s(n)を所定の実数値r倍する乗算器、6は乗算器4
0の出力をD/A変換するD/A変換器、7はD/A変
換器6の出力を電力増幅してキャンセルスピーカ2を駆
動するパワーアンプである。
【0033】8はエラー検出用マイク1の出力を増幅す
るマイクアンプ、9はマイクアンプ8の出力をA/D変
換して離散化し、誤差信号y(n)を作成するA/D変
換器である。パワーアンプ7の入力点からマイクアンプ
8の出力点までの伝達関数をC(z)とする。21はF
IRディジタルフィルタから成るフィルタであり、伝達
関数CをJ次のFIRディジタルフィルタで具現すると
きのインパルス応答cj (j=0〜J)が各次数のフィ
ルタ係数として設定されている。フィルタ21に設定さ
れた伝達関数をC’(z)とする(C’はCの推定値で
あることを意味する)。フィルタ21のフィルタ係数c
j は、D/A変換器6の入力点にM系列ノイズデータを
注入したときのA/D変換器9の出力点の応答信号から
所定の演算を行うことで同定して求めてある。22は演
算器であり、A/D変換器9の出力から、乗算器40の
出力であるr・s(n)をフィルタ21に通した信号を
減算する。そして、結果を騒音のリファレンス信号x
(n)として入力端子12に出力する。
【0034】y(n)中の騒音成分をd(n)とする
と、 y(n)=d(n)+r・s(n)・C ……(6) である。演算器22の出力は、 y(n)−r・s(n)・C’= d(n)+r・s(n)・C−r・s(n)・C’ ……(7) となる。C’はCとほぼ等しいので、(7)式から演算
器22の出力≒d(n)となり、ほぼ騒音成分のみとな
る。よって、演算器22の出力を騒音のリファレンス信
号x(n)として用いることが可能となり、従来の如
く、騒音センサ(図9の符号3参照)を設ける必要がな
くなる。
【0035】23は演算器22の出力を所定の実数値u
倍する乗算器、24はFIRフィルタ5の出力を所定の
実数値v倍する乗算器、25は乗算器23と24の出力
を加算する演算器である。この実施例では、演算器25
の出力点を騒音制御の制御ポイントとしており、演算器
25の出力を誤差信号e(n)として適応制御部10に
出力する。演算器25の出力e(n)は、 e(n)=u・(y(n)−r・s(n)・C’)+v・s(n) ≒u・d(n)+v・s(n) ……(8) となる。FIRフィルタ5から出力された騒音キャンセ
ル用音響信号s(n)に着目すると、(8)式から、F
IRフィルタ5の出力点から演算器25の出力点までの
伝達系は伝達関数CC(z)が実数値vという単純な系
となっていることが判る。
【0036】適応制御手段300は、演算器25から入
力した誤差信号e(n)が最小となるようにFIRフィ
ルタ5に対し適応制御をする。適応制御部10が適応ア
ルゴリズムによって演算器25から入力した誤差信号e
(n)が最小となるように適応制御するためには、騒音
のリファレンス信号x(n)に、FIRフィルタ5の出
力点から制御ポイントである演算器25の出力点までの
伝達関数CC(z)を畳込んだq(n)を入力すれば良
い。110は騒音のリファレンス信号x(n)に、FI
Rフィルタ5の出力点から演算器25の出力点までの伝
達関数CC(z)を畳込むためのフィルタであり、フィ
ルタ110に設定される伝達関数CC(z)の推定値を
CC(z)’とすると、これは実数値vとすれば済む
(フィルタ110はv・x(n)の計算を行う乗算器で
構成できる)。
【0037】騒音のリファレンス信号x(n)はフィル
タ110に通されてv倍され、q(n)として適応制御
部10に出力される。適応制御部10はq(n)を用い
て所定のFiltered−X適応アルゴリズムを実行し、e
(n)を最小とできるFIRフィルタ5の各次数位置i
(i=0〜I)のフィルタ係数の更新値を求め、FIR
フィルタ5に対し更新設定する。適応制御部10が適応
アルゴリズムとして、例えばμを0.5近く(但し、
0.5以下)に大きくして収束を速くしたLMSを用い
るとき、FIRフィルタ5の次数位置iのフィルタ係数
i の更新式は、 wi (n+1)=wi (n)+2μ・e(n)・q(n−i) ……(9) 但し、 但し、μ:0.5近く(但し、0.5以下)の所定の収
束係数 である。
【0038】適応制御部10は(9)式に従い、FIR
フィルタ5のフィルタ係数を更新し、適応制御を行う。
i の初期値wi (0)は予め定められた所定値に設定
する。但し、CC’=vであることから、(9)式中の
q(n−i)=v・x(n−i)となり、キャンセルス
ピーカ2とエラー検出用マイク1の間の空間パスに伴う
時間遅れや、周波数−位相特性、周波数−ゲイン特性の
影響を受けることなく適応制御の計算を行える。よっ
て、μを大きくしたLMSを用いても安定した適応制御
を行うことができる。
【0039】FIRフィルタ5はリアルタイムで更新さ
れる伝達関数により、リファレンス信号x(n)を加工
し、誤差信号e(n)が最小となるような騒音キャンセ
ル用音響信号s(n)を出力する。 e(n)≒v・d(n)+u・s(n) なので、適応制御により、最終的に、 s(n)≒−(v/u)・d(n) ……(10) の関係を持つs(n)がFIRフィルタ5から出力され
ることになる。
【0040】FIRフィルタ5の出力s(n)は乗算器
40でr倍されたあと、D/A変換器6でD/A変換さ
れ、パワーアンプ7で電力増幅される。そして、キャン
セルスピーカ2を駆動し、キャンセル用音響を空間に放
射させる。このキャンセル用音響はエラー検出用マイク
1で騒音と一緒に検出され、マイクアンプ8で増幅され
たあと、A/D変換器9でA/D変換される。(6)式
からA/D変換器9の出力y(n)は、 y(n)=d(n)+r・s(n)・C である。この式のs(n)に(10)式を代入すると、 y(n)≒d(n)−r・(v/u)・d(n)・C ……(11) となる。ここで、 C≒u/(rv) ……(12) に設定しておくことで、(11)式からy(n)=0とな
る。このとき、エラー検出用マイク1の位置において
は、騒音とキャンセル用音響が同じ振幅で逆位相とな
り、互いに打ち消し合って、騒音がキャンセルされる。
【0041】この実施例では、キャンセルスピーカ2と
エラー検出用マイク1の間隔が30cmと近いため、2
50Hz以下ではキャンセルスピーカ2とエラー検出用
マイク1の間の空間の伝達関数はほぼ1と見做すことが
できる。よって、パワーアンプ7の入力点からマイクア
ンプ8の出力点までの伝達関数Cは容易にほぼ実数値u
/(rv)とできる。なお、伝達関数Cをu/(rv)
に完全に一致させず、u/(rv)に近い値とするだけ
でも、或る程度の騒音キャンセル効果が得られる(Cが
u/(rv)に近づくほど、騒音キャンセル効果が高ま
る)。u,v,rは任意の実数値であり、例えば、全て
1としても良く、この場合、Cは1とするか1に近い値
とすれば良い。
【0042】この実施例によれば、パワーアンプ7の入
力点から制御対象ポイントである演算器25の出力点ま
での伝達関数を実数値vとでき、フィルタ110に設定
する伝達関数も1で良いので、キャンセルスピーカ2と
エラー検出用マイク1の間の空間パスに伴う時間遅れ
や、周波数−位相特性、周波数−ゲイン特性の影響を受
けることなく適応制御の計算を行える。よって、μを大
きく設定したLMSの如く収束速度の速い適応アルゴリ
ズムを用いても安定した適応制御を行うことが可能とな
り、騒音を確実にキャンセルすることができる。
【0043】また、図1の能動騒音制御装置と同様に、
エラー検出用マイク1は右耳近傍に1つしか設けてない
が、キャンセルスピーカ2を騒音制御対象者Aの真後に
位置させたので、騒音制御対象者Aの左右の耳に同じ騒
音が入ってくる場合、両耳に聞こえる騒音を同時に低減
することができる。そして、FIRフィルタ5から出力
されるキャンセル用音響信号s(n)を、パワーアンプ
7の入力点からマイクアンプ8の出力点までの伝達関数
Cの推定値C’が設定されたフィルタ21を通したあ
と、A/D変換後のエラー検出用マイク出力から減算す
ることで、騒音制御対象者Aに聞こえる騒音が定常的で
ない変化の激しい騒音であっても、該騒音と相関の高い
リファレンス信号を作成できる。よって、従来の如く、
騒音センサを別個に設けなくても騒音制御を行うことが
でき、騒音センサの適切な設置場所を探し、取り付けを
行う手間が省ける。
【0044】更に、キャンセルスピーカ2をエラー検出
用マイク1の近傍に設置したので、騒音の中で特に耳障
りとなる250Hz以下の低域について、キャンセルス
ピーカ2からエラー検出用マイク1までの空間の伝達関
数をほぼ1とでき、パワーアンプ7の入力点からマイク
アンプ8の出力点までの伝達関数Cは容易にほぼ実数値
u/(rv)とできる。よって、騒音の中で特に耳障り
となる250Hz以下の各周波数成分について、エラー
検出用マイク位置での騒音とキャンセル用音響との位相
差を簡単にπ近くとでき、確実に騒音の低減を図ること
ができる。また、フィルタ21の伝達関数はパワーアン
プ7の入力点からマイクアンプ8の出力点までの伝達関
数を推定して設定されるが、キャンセルスピーカ2から
エラー検出用マイク1までの空間の伝達関数をほぼ1と
できることで、フィルタ21に設定される伝達関数の誤
差を小さくし、演算器22の出力にキャンセル音響成分
が残らないようにしてハウリング防止を図ることもでき
る。
【0045】ところで、エラー検出用マイク1と騒音制
御対象者Aの右耳との間が離れていると、エラー検出用
マイク1の位置と右耳の位置とでキャンセル音響の音圧
に差が生じる。音圧差が大きいとき、エラー検出用マイ
ク1の位置では丁度、騒音をキャンセルできても、騒音
制御対象者Aの右耳の位置では騒音をキャンセルしきれ
ない。この場合、キャンセルスピーカ2から出力された
キャンセル音響のエラー検出用マイク1の位置での音圧
に対するキャンセルスピーカ2から出力されたキャンセ
ル音響の騒音制御対象者Aの右耳の位置での音圧の比を
pとして、パワーアンプ7の入力点からマイクアンプ8
の出力点までの伝達関数Cを次式、 C≒pu/(rv) ……(13) に設定するようにすれば、前記音圧差が補正されて騒音
制御対象者Aの右耳の位置で騒音を丁度キャンセルさせ
ることができる。例えば、エラー検出用マイク1の位置
での音圧の方が騒音制御対象者Aの右耳の位置より2倍
大きいとき、p=0.5とすることで、騒音制御対象者
Aの右耳の位置でのキャンセル音響の音圧を(11)式の
場合に比べて2倍に上げ、騒音制御対象者Aの右耳の位
置で騒音を丁度キャンセルさせることができる。
【0046】なお、上記した図1の能動騒音制御装置と
図3の実施例において、フィルタ21,11に設定され
た伝達関数C’とCとの誤差は、周波数が高くなるほど
大きくなる。よって、演算器22と入力端子12の間
に、騒音制御対象周波数域でない、例えば1kHz以上
をカットさせるLPF(時間遅れの影響が少ない1次の
LPFが好ましい)を設ければ、より確実にハウリング
を防止することができる。
【0047】また、キャンセルスピーカ2は通常、最低
共振周波数以下の周波数−ゲイン特性が悪いが、共振回
路で構成されたブースト回路を設けて最低共振周波数以
下をブーストしようとすると、時間遅れが生じて、エラ
ー検出用マイク位置での騒音と騒音キャンセル用音響と
の位相差がπから大きくずれてしまい、騒音低減効果を
発揮できなくなってしまう。この点、パワーアンプ7を
定電流アンプとし、キャンセルスピーカ2を定電流アン
プで駆動することにより、キャンセルスピーカ2の低域
の周波数−ゲイン特性をインピーダンスカーブと近い形
とさせることができ、最低共振周波数以下の周波数域の
レベルをブースト回路でブーストしなくても持ち上げる
ことができるようになる。このようにすれば、騒音制御
対象者Aの近傍への設置が難しいスピーカキャビネット
を用いることなく、最低共振周波数以下まで騒音キャン
セル用音響を再生することができ、騒音低減効果が向上
する。定電流アンプを用いる場合、更に、キャンセルス
ピーカ2のボイスコイルと並列に、コイル,コンデン
サ,抵抗の内、少なくともコイルまたはコンデンサを含
む周波数特性補正回路を接続し、騒音の制御対象周波数
域内で、電気−音響変換手段の周波数−ゲイン特性がフ
ラットに近くなるように補正したり、周波数−位相特性
がフラットに近くなるように補正しても良い。この周波
数特性補正回路は、コイル単独としたり、コンデンサ単
独としたりするなどして、非共振回路構成とするように
しても良い。
【0048】また、ロードノイズの如く騒音は、図4に
示す如く周波数成分分布を有し、騒音のダイナミックレ
ンジがかなり大きく、周波数差によるレベル差がかなり
大きくなって、例えば250Hzと40Hzとでは、約
30dBもの差がある。よって、図1の場合はFIRフ
ィルタ5と適応制御手段30、図3の場合はFIRフィ
ルタ5と適応制御手段300をDSP(ディジタルシグ
ナルプロセッサ)で具現する場合、誤差信号y(n)、
騒音のリファレンス信号x(n)のダイナミックレンジ
に対し、DSPのダイナミックレンジのマージンが不足
して、例えば、250Hz付近の高い周波数成分に対す
る分解能が悪くなって、騒音制御を円滑に行えなくなる
恐れがある。
【0049】そこで、図1の能動騒音制御装置の場合は
図5、図3の実施例の場合は図7に示す如く、マイクア
ンプ8の出力側に、マイクアンプ8から出力される誤差
信号(これをy’とする)に対し、a・(y’b )(但
し、aは絶対値が1以下の実数であり、例えば0.5と
する。bは1より小さい正の実数であり、例えば、1/
2とする)の計算をしてダイナミックレンジの圧縮を行
う演算器31を設け、音響再生手段20A(200A)
のパワーアンプ7の入力側に、D/A変換器6から出力
される騒音キャンセル用音響信号(これをs’とする)
に対し、(a・s’)1/b の計算をしてダイナミックレ
ンジの伸長を行う演算器32を設けるようにしても良
い。このようにすれば、FIRフィルタ5と適応制御手
段30(300)に入力される誤差信号y(n)と騒音
のリファレンス信号x(n)のダイナミックレンジを圧
縮できるので、レベルの小さな高い周波数成分に対して
も十分な分解能を確保して、確実に騒音のキャンセルを
図ることができる。
【0050】なお、図1の能動騒音制御装置の場合は図
6、図3の実施例の場合は図8に示す如く、A/D変換
器9の出力側に、誤差信号yに対し、a・(yb )(但
し、aは絶対値が1以下の実数とし、bは1より小さい
正の実数とする)の計算をしてダイナミックレンジの圧
縮を行う演算器33を設け、音響再生手段20B(20
0B)のD/A変換器6の入力側に騒音キャンセル用音
響信号sに対し、(a・s)1/b の計算をしてダイナミ
ックレンジの伸長を行う演算器34を設けるようにして
も、図4、図7と同様に、FIRフィルタ5、適応制御
手段30(300)に入力される誤差信号y(n)と騒
音のリファレンス信号x(n)のダイナミックレンジを
圧縮できる。
【0051】また、適応制御部10は適応アルゴリズム
として、カルマンフィルタを用いるようにしても良く、
この場合、(4),(9)式中のμに相当するカルマン
ゲインが最適値となるように更新されため、収束速度が
速くなる。カルマンフィルタのタップ数を10以下、好
ましくは3〜5程度としれば、適応制御部10の計算上
の負担を抑えることができ、適応制御手段30(30
0)をDSPで具現する場合、プログラムを記憶させる
のに必要な記憶容量や処理速度を最小限に抑えることが
できる。なお、普及型のDSPを用いる場合、サンプリ
ング周波数をそれほど高くすることはできない。ところ
が、サンプリング周波数を低くするには、A/D変換器
9,D/A変換器6に付設された折り返し歪防止用のロ
ーパスフィルタ(図1,図3では図示せず)のカットオ
フ周波数を低くしなければならず、D/A変換器6から
A/D変換器9までのキャンセル用音響伝達系の時間遅
れが大きくなって、正確な騒音制御がしずらくなる。よ
って、サンプリング周波数を12kHz程度とし、A/
D変換器9,D/A変換器6に付設された折り返し歪防
止用のローパスフィルタのカットオフ周波数を5kHz
程度とすることで、制御対象の騒音の周波数範囲である
250Hz以下の周波数域において、D/A変換器6か
らA/D変換器9までのキャンセル用音響伝達系の時間
遅れを許容範囲である約0.5ms以下に抑えることが
できる。
【0052】カルマンフィルタを用いる場合、ロードノ
イズの如く、定常的でなく変化の激しい騒音では、制御
系が不安定化して制御不能に陥る恐れがあるので、誤差
信号y(n)の絶対値が一定以下に小さくなっている間
は適応制御を中止し、FIRフィルタ5の伝達関数を中
止直前に固定し、誤差信号y(n)の絶対値が一定以上
になったところで適応制御を再開するようにしたり、一
定時間適応制御を実行したところで、適応制御を中止
し、FIRフィルタ5の伝達関数を中止直前に固定し、
中止状態を一定時間続けたところで適応制御を再開する
ようにして定期的に適応制御を実行するようにして、安
定した騒音制御を行わせるようにすると良い。更に、カ
ルマンフィルタの変数の内、少なくとも推定誤差の共分
散行列を定期的(例えば、mT以下の周期。m≦10、
T=サンプリング周期)に再初期化して、騒音制御中に
制御系が不安定になり、正しく騒音キャンセルできなく
なるのを防止するようにしても良い。
【0053】
【発明の効果】本発明に係る能動騒音制御装置によれ
ば、エラー検出用マイクの出力から、加工手段の出力を
電力増幅手段の入力点からマイク用増幅手段の出力点ま
での伝達関数Cが設定されたフィルタを通した信号を減
算することで騒音と相関の高いリファレンス信号を作成
できるので、騒音センサを別個に設けなくて済み、騒音
センサの適切な設置場所を探し、取り付けを行う手間が
省ける。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を示す能動騒音制御装置のブロッ
ク図である。
【図2】図1におけるエラー検出用マイクとキャンセル
スピーカの配置を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例に係る能動騒音制御装置のブロ
ック図である。
【図4】騒音の周波数スペクトラムを示す線図である。
【図5】図1の変形例に係る能動騒音制御装置のブロッ
ク図である。
【図6】図1の他の変形例に係る能動騒音制御装置のブ
ロック図である。
【図7】図3の実施例の変形例に係る能動騒音制御装置
のブロック図である。
【図8】図3の実施例の他の変形例に係る能動騒音制御
装置のブロック図である。
【図9】従来の能動騒音制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
1 エラー検出用マイク 2 キャンセルスピーカ 5 FIRフィルタ 6 D/A変換器 7 パワーアンプ 8 マイクアンプ 9 A/D変換器 10 適応制御部 11、21、110 フィルタ 20、20A、20B、200、200A、200B
音響再生手段 22、25、31、32、33、34 演算器 23、24、40 乗算器 30、300 適応制御手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−281983(JP,A) 特開 平5−313672(JP,A) 特開 平7−219565(JP,A) 特開 平5−80780(JP,A) 特開 平9−297586(JP,A) 特開 平7−181988(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/178 G05B 13/02 H03H 17/02 601

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 騒音のリファレンス信号を可変の伝達関
    数で加工し、騒音キャンセル用音響信号を作成する加工
    手段と、 加工手段の出力を電力増幅する電力増幅手段と、 空間の所定箇所に置かれて電力増幅手段の出力を電気−
    音響変換する電気−音響変換手段と、 騒音制御対象者の耳の近傍に置かれたエラー検出用マイ
    クと、エラー検出用マイクの出力を増幅するマイク用増
    幅手段と、 電力増幅手段の入力点からマイク用増幅手段の出力点ま
    での伝達関数が設定され,加工手段の出力を通すフィル
    タ手段と、 マイク用増幅手段の出力からフィルタ手段の出力を減算
    して騒音のリファレンス信号を作成する減算手段と、 減算手段の出力の実数値u倍と加工手段の出力の実数値
    v倍を加算して誤差信号を作成する加算手段と、 騒音のリファレンス信号を用いて,加算手段から出力さ
    れる誤差信号を最小化する加工手段の伝達関数を求め,
    加工手段の伝達関数を可変する適応制御を行う適応制御
    手段とを備え、 電力増幅手段の入力側と、フィルタ手段の入力側または
    出力側で騒音キャンセル用音響信号を実数値r倍すると
    ともに、 電力増幅手段の入力点からマイク用増幅手段の出力点ま
    での伝達関数Cを、 u/(rv)に近い値とすること、 を特徴とする能動騒音制御装置。
  2. 【請求項2】 減算手段の出力側に一定以下の周波数成
    分だけを通過させる低域通過手段を設けたこと、 を特徴とする請求項記載の能動騒音制御装置。
  3. 【請求項3】 マイク用増幅手段の出力側に設けられて
    マイク用増幅手段の出力yに対し、a・yb (但し、a
    は絶対値が1以下の実数、bは1より小さい正の実数)
    の計算式に基づき圧縮する圧縮手段と、 電力増幅手段の入力側に設けられて、騒音キャンセル用
    音響信号sに対し、(a・s)1/b の計算式に基づき伸
    張する伸張手段と、 を設けたことを特徴とする請求項記載の能動騒音制御
    装置。
  4. 【請求項4】 電気−音響変換手段から出力された音の
    エラー検出用マイクの位置での音圧に対する電気−音響
    変換手段から出力された音の騒音制御対象者の耳の位置
    での音圧の比をpとして、 電力増幅手段の入力点からマイク用増幅手段の出力点ま
    での伝達関数を、 pu/(rv)に近い値とすること、 を特徴とする請求項記載の能動騒音制御装置。
  5. 【請求項5】 適応制御手段は、カルマンフィルタを制
    御アルゴリズムとしたこと、 を特徴とする請求項記載の能動騒音制御装置。
  6. 【請求項6】 適応制御手段は、カルマンフィルタの変
    数の内、少なくとも推定誤差の共分散行列を定期的に再
    初期化するようにしたこと、 を特徴とする請求項記載の能動騒音制御装置。
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