JP3466253B2 - 殺菌性樹脂 - Google Patents

殺菌性樹脂

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は殺菌性樹脂に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】水中の
細菌や微生物の繁殖による環境の悪化、例えばスライム
による冷却器の運転効率の低下、産業廃水の腐敗や、藻
類の増殖による悪臭の発生等が問題となっている。 【0003】また浄水場等において取水した水道原水に
は、消毒のために塩素系殺菌剤が添加されている。しか
しながら塩素系殺菌剤を添加すると、発癌性物質とされ
ているトリハロメタンを生じる虞れがあり、近年大きな
社会問題となっている。しかも塩素系殺菌剤の添加によ
る効果は、水中からの塩素の消失に伴って失われ易いと
いう問題もあった。 【0004】一方、ある種の金属が殺菌作用を有するこ
とは知られており、塩素系殺菌剤に代わるものとして金
属の殺菌作用を利用した殺菌剤も用いられている。この
種の殺菌剤としては、活性炭に銀、銅等の殺菌性を有す
る金属イオンを吸着させたもの、アミノ酸、イミノ酢
酸、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸等の官能基を
有するキレート樹脂の官能基の一部もしくは全部に、水
銀、カドミウム、亜鉛、銅、銀、金、白金等の金属イオ
ンを結合させたもの(特公昭63−11076号公報)
等が知られている。 【0005】上記殺菌剤による殺菌効果は、殺菌剤から
水中に金属イオンが溶出することにより発現される。し
かしながら活性炭に金属を吸着しただけの殺菌剤の場
合、吸着されている金属イオンの放出速度が速いため、
短時間で金属イオンが放出されて殺菌効果が発揮されな
くなるとともに、一度に多量の金属イオンが放出される
ため水中の金属イオン濃度が廃水や飲料水中における金
属イオン濃度の基準値(例えばEPAでは、飲料水に対
する基準値は、銀が50ppb 以下)よりも高くなる虞れ
があった。 【0006】一方、上記キレート樹脂に殺菌作用を有す
る金属イオンを結合した殺菌性樹脂の場合、金属イオン
はキレート結合によって強固に樹脂に結合しているた
め、容易には水中に溶出せず、極微量の金属イオンが水
中に溶出するため、殺菌効果は極めて長期間に亘って維
持される。しかしながら、水中への金属イオンの溶出量
が極めて微量で、一般的な処理条件において処理水中へ
の金属イオン放出量を基準値以下とすることができるの
は処理水のpHが中性付近である場合であり、処理水が
酸性であったり処理水中に塩素イオン等が存在する場合
等には、溶出する金属イオン量が多くなり、水中の金属
イオン濃度が廃水や飲料水に対して定められた基準値以
上となる虞れがあった。本発明者等は、このような問題
を解決するには、キレート樹脂の官能基への金属イオン
結合率を低くし、残りの官能基を酸型又はナトリウム塩
型等として、殺菌剤から水中に放出される金属イオン濃
度を少なくする方法が有効であろうと考えて研究を行っ
た。 【0007】しかしながら本発明者等の研究によれば、
キレート樹脂の官能基に対する金属イオンの結合率を低
くした殺菌性樹脂は、処理の初期段階において殺菌性樹
脂から金属イオンが溶出せずに水素イオンやナトリウム
イオンが溶出し、水中の水素イオン濃度は時間とともに
変化し、処理水が酸性側やアルカリ性側に大きく変動す
るため、飲料水の殺菌用として使用するには大きな問題
があった。更に、殺菌性樹脂からの金属イオン溶出量
は、処理水の水素イオン濃度が変化するにつれて増加
し、処理水の水素イオン濃度の変化が収まる頃からにピ
ークとなって、その後低下するようになるため、充分な
殺菌作用を発現し得る期間が短いという問題があること
が判明した。 【0008】本発明は上記の点に鑑みなされたもので、
処理水中に溶出する金属イオン濃度を基準値以内にする
ことが容易であるとともに、長期間に亘って一定の殺菌
作用を維持できる殺菌性樹脂を提供することを目的とす
るものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】即ち本発明の殺菌性樹脂
は、2以上のビニル基を有するポリビニル化合物をコモ
ノマー成分とするスチレン系共重合体中に、官能基を含
む下記化3及び/又は化4で示す繰り返し単位を、共重
合体を構成する全モノマー単位のモル数に対して0.1〜
15モル%含有し、且つ各官能基には殺菌性を有する金
属イオンが結合されていることを特徴とする。 【0010】 【化3】 【0011】 【化4】 【0012】本発明の殺菌性樹脂は、スチレン系モノマ
ーと、2以上のビニル基を有するポリビニル化合物との
共重合体とクロロメチルエーテルとを反応させてスチレ
ン系モノマー由来の芳香核をクロロメチル化し、次いで
このクロロメチル基の塩素を官能基と置換して得たキレ
ート樹脂の官能基に、殺菌性を有する金属イオンを吸着
させることにより得られる。 【0013】上記スチレン系モノマーとしては、スチレ
ン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。
またこれらのスチレン系モノマーをクロロメチル化した
クロロメチル化スチレン系モノマーを用いることもでき
る。クロロメチル化スチレン系モノマーは一部市販され
ており、これを用いると、後のクロロメチル化工程が省
略できる。更にクロロメチル化スチレン系モノマーと、
クロロメチル化していないスチレン系モノマーとを混合
して用いることもできる。 【0014】またポリビニル化合物としては、ジビニル
ベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチ
レングリコールジアクリレート等が挙げられ、これらは
2種以上混合して用いることができる。上記スチレン系
共重合体とクロロメチルエーテルとを反応させた際に、
クロロメチル基が導入されるのは、スチレン系モノマー
の芳香核であるため、スチレン系モノマーとポリビニル
化合物との共重合は、スチレン系モノマーが0.1〜15
モル%となるように行う。これによって最終的に得られ
る殺菌性樹脂中における上記化3及び/又は化4で示す
単位(以下、この単位のことを官能基導入単位と呼
ぶ。)の割合を0.1〜15モル%とすることができる。 【0015】またスチレン系モノマーとして、予めクロ
ロメチル化したスチレン系モノマーとクロロメチル化し
ていないスチレン系モノマーとを混合して用いた場合、
官能基はクロロメチル化したスチレン系モノマーに導入
されるため、クロロメチル化スチレン系モノマーの量を
共重合に供する全モノマーに対し0.1〜15モル%使用
すれば良く、この場合には得られる共重合体中のスチレ
ン系モノマーの割合(クロロメチル化スチレン系モノマ
ーと、クロロメチル化していないスチレン系モノマーと
の合計量)を15モル%以上とすることができる。しか
しながら共重合体中におけるスチレン系モノマーの量が
多くなり過ぎると、得られる殺菌性樹脂の親水性が高く
なってしまうため好ましくない。このため、少なくとも
ポリビニル化合物の割合が5モル%以上となるように、
スチレン系モノマーとポリビニル化合物とを共重合する
ことが好ましい。 【0016】上記のようにして得たクロロメチル基を有
する共重合体と、酢酸、プロピオン酸、リン酸等を反応
させることにより、クロロメチル基の塩素と置換してイ
ミノジ酢酸基、リン酸基、イミノプロピオン酸基、イミ
ノジプロピオン酸基等の官能基が導入され、上記化3で
示す単位が形成される。またクロロメチル基を有する共
重合体にアミン類を反応させた後、ホルムアルデヒドと
亜リン酸を作用させることにより、イミノリン酸基を有
する、上記化4で示す単位が形成される。 【0017】上記化3、化4で示す単位の官能基に結合
される殺菌性を有する金属イオンとしては、銅、銀、
金、白金、亜鉛、ニッケル、カドミウム、水銀等の、従
来より殺菌作用を有することが公知の金属イオンを使用
することができるが、性能、経済性、二次公害の低さ等
から銅、銀が好ましく、特に飲料水の殺菌用としては
銅、銀が用いられる。本発明の殺菌性樹脂は、官能基に
結合した金属イオンが異なる2種以上であっても良い。
キレート樹脂の官能基に金属イオンを吸着させるには、
キレート樹脂と金属イオンを含む水溶液とをバッチ法又
はカラム法等によって接触させれば良い。 【0018】本発明の殺菌性樹脂は、上記化3及び/又
は化4で示される官能基導入単位を、重合体を構成する
全モノマー単位の量(モル数)に対して0.1〜15モル
%含有することを必須とするが、官能基導入単位を0.5
〜10モル%含有することが好ましい。 【0019】本発明の殺菌性樹脂は、ペレット状、球状
等の形態にしてそのまま用いたり、ポリエチレン、ポリ
スチレン等の樹脂中に練り込んでシート状、繊維状、ペ
レット状、球状等の任意の形態に成形して用いることが
でき、シート状に形成したものを他のシートと積層して
用いたり、繊維状に形成したものを他の繊維と混合した
り混紡したりして用いることもできる。また本発明の殺
菌性樹脂をそのまま粉末状等としたもの、或いは本発明
の殺菌性樹脂を練り込んだ樹脂を粉末状等としたものを
塗料中に添加して抗菌性塗料として用いることもでき
る。また家庭用の浄水器として用いる場合、水道水中に
含まれるトリハロメタン類を活性炭によって吸着除去す
るための活性炭と組み合わせて使用することが好まし
い。 【0020】本発明の殺菌性樹脂による水の殺菌処理方
法としては、本発明の殺菌性樹脂をカラムに充填して処
理水をカラムに通液させるカラム方式や、処理水中に本
発明の殺菌性樹脂を直接添加して処理するバッチ方式等
が挙げられる。 【0021】カラム方式の場合、処理水をカラムに1回
通液させる一過方式と、循環させながら何回も通液する
循環方式のいずれの方式も採用できる。また通液方法と
して上向流、下向流のいずれも採用できる。通液速度
は、処理する水量が少なく、細菌や微生物の数が少ない
場合には、SV=5〜100程度が好ましく、細菌や微
生物の数が少なく、処理する水量が多い場合には経済性
を重視してSV=1000〜30000程度が好まし
い。 【0022】バッチ方式の場合の処理時間は、殺菌性樹
脂の処理水に対する添加量や、処理水中の細菌や微生物
の数によって異なるが、殺菌性樹脂を処理水1000部
に対して0.1〜10部添加して用いる一般的な使用法の
場合、細菌や微生物の数が少ない場合の処理時間は1〜
3時間程度であり、細菌や微生物の数が多い場合の処理
時間は3〜20時間程度が好ましい。 【0023】また塗料に添加して用いる場合、殺菌性樹
脂を50〜500μ程度、より好ましくは50〜200
μの微粉末として、塗料中に5〜50重量%配合するこ
とが好ましい。 【0024】本発明の殺菌性樹脂は、飲料水の消毒用に
利用できるとともに、廃水に対しては腐敗、醗酵防止の
作用がある。また廃水や河川、湖沼中の微生物の働きに
よるスライム発生や、藻類の増殖を抑制でき、悪臭の発
生防止等に利用できる。また定置網、橋梁の水中部分、
船底への、アオサ、アオノリ、フジツボ等の付着防止用
としても利用できる。 【0025】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明する。 【0026】実施例1〜2、比較例1 スチレンと、ジビニルベンゼンとを表1に示すモル比で
共重合せしめた後、この共重合体とクロロメチルエーテ
ルとを反応させてスチレンの芳香核をクロロメチル化し
た。次いでこのクロロメチル化したスチレン系共重合体
と、イミノジ酢酸とを反応させてイミノジ酢酸基を官能
基として有するキレート樹脂を得た。このキレート樹脂
を硝酸銀水溶液中に添加して、室温で6時間攪拌した
後、30分静置して分離し、官能基に銀イオンを結合し
た殺菌性樹脂を得た。得られた殺菌性樹脂中における官
能基導入単位の割合(モル%)及び銀イオン含有量を表
1にあわせて示す。 【0027】一般細菌として、1×105 個を含有する
河川から採取した水5リットルを用い、各殺菌性樹脂に
ついて殺菌性試験を行った。まず上記試験液中に、10
ミリリットルの殺菌性樹脂を詰めたナイロン繊維製の袋
を試験液の中位置に位置するように浸漬し、空気供給管
から試験液中に常時空気を供給して室温で10日間放置
して細菌数を、標準寒天培地法により測定した。同時に
殺菌性樹脂を入れた袋を浸漬しない試験液(ブランク)
についても同一条件で試験を行った。同一の樹脂を再使
用して合計3回の試験を行った。第1回目と第3回目の
試験結果を表2に示す。 【0028】 【表1】 【0029】 【表2】【0030】尚、表2において一般細菌の殺菌性を ◎・・・1×102 個/ミリリットル未満 ○・・・1×102 〜1×103 個/ミリリットル未満 △・・・1×103 〜1×105 個/ミリリットル未満 ×・・・1×105 個/ミリリットル以上 として評価した。 【0031】また上記各殺菌性樹脂からの水中への銀イ
オンの溶出量を測定した。試験は上記殺菌性試験に用い
た河川の水とpH及び塩類含有量を略等しく調整した溶
液1リットルに、殺菌性樹脂10gを添加し、24時間
攪拌した後、樹脂を濾過した後の濾液中の銀イオン濃度
を測定した(1回目)。濾過して取り出した樹脂を用い
て同様の試験を行い(2回目)、更に2回目の試験を経
た樹脂を用いて同様の試験を行った(3回目)。これら
の結果を表3に示す。 【0032】実施例3〜4、比較例2 クロロメチル化スチレン、スチレン及びジビニルベンゼ
ンを表1に示す割合で共重合せしめた後、この重合体と
グリシンのメチルエステルとを反応させた後、ケン化し
てイミノプロピオン酸基(実施例3)又はイミノジプロ
ピオン酸基(実施例4)を官能基として有するキレート
樹脂を得た。次いで得られたキレート樹脂に実施例1、
2と同様にして銀イオンを吸着させて殺菌性樹脂を得
た。得られた殺菌性樹脂中の全モノマー単位の量に対す
る官能基導入単位の割合(モル%)及び銀イオン含有量
を表1にあわせて示す。 【0033】得られた各殺菌性樹脂の殺菌性を上記実施
例1、2と同様の河川から採取した水を用いて同様の条
件で行った。結果を表2にあわせて示す。また各樹脂か
らの銀イオンの溶出試験を同様にして行った。結果を表
3にあわせて示す。 【0034】実施例5〜6、比較例3 スチレンと、ジビニルベンゼンとを表1に示すモル比で
共重合せしめた後、この共重合体とクロロメチルエーテ
ルとを反応させてスチレンの芳香核をクロロメチル化し
た。次いでこのクロロメチル化したスチレン系共重合体
と、亜リン酸とを反応させてリン酸基を官能基として有
するキレート樹脂を得た。次いで得られたキレート樹脂
に実施例1、2と同様にして銀イオンを吸着させて殺菌
性樹脂を得た。得られた殺菌性樹脂中の全モノマー単位
の量に対する官能基導入単位の割合(モル%)及び銀イ
オン含有量を表1にあわせて示す。 【0035】 【表3】【0036】得られた各殺菌性樹脂の殺菌性を上記実施
例1、2と同様の河川から採取した水を用いて同様の条
件で行った。結果を表2にあわせて示す。また各樹脂か
らの銀イオンの溶出試験を同様にして行った。結果を表
3にあわせて示す。 【0037】実施例7〜8 スチレン、クロロメチル化スチレン、ジビニルベンゼン
を表1に示すモル比で共重合せしめた後、この共重合体
にアンモニアを反応させた後、ホルマリンと亜リン酸と
を反応させて、官能基としてイミノリン酸基を導入した
キレート樹脂を得た。このキレート樹脂に上記と同様に
して銀イオンを吸着させた。得られた殺菌性樹脂中の全
モノマー単位の量に対する官能基導入単位の割合(モル
%)及び銀イオン含有量を表1にあわせて示す。 【0038】得られた各殺菌性樹脂の殺菌性を上記実施
例1、2と同様の河川から採取した水を用いて同様の条
件で行った。結果を表2にあわせて示す。また各樹脂か
らの銀イオンの溶出試験を同様にして行った。結果を表
3にあわせて示す。 【0039】 【発明の効果】以上説明したように本発明の殺菌性樹脂
は、処理水が酸性等であっても樹脂から多量の金属イオ
ンが溶出することがなく、溶出量は極微量に保たれるた
め、殺菌性樹脂から溶出する金属イオンによる二次公害
の問題を生じることがない。また本発明の殺菌性樹脂は
極微量の金属イオンが長期間に亘って溶出するため、殺
菌効果を長期間維持できる等の効果を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08F 212/08 C08F 212/08 (72)発明者 吉田 雅俊 東京都葛飾区堀切4丁目66番1号 ミヨ シ油脂株式会社内 (72)発明者 小川 隆 東京都葛飾区堀切4丁目66番1号 ミヨ シ油脂株式会社内 (72)発明者 清水 剛 東京都葛飾区堀切4丁目66番1号 ミヨ シ油脂株式会社内 (72)発明者 木谷 和美 東京都葛飾区堀切4丁目66番1号 ミヨ シ油脂株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−65002(JP,A) 特開 昭60−65003(JP,A) 特開 平4−171050(JP,A) 特開 昭62−240062(JP,A) 特開 昭59−47205(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 212/00 - 212/36 C08F 8/44 A01N 25/10 A01N 59/15 A01N 59/20

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 2以上のビニル基を有するポリビニル化
    合物をコモノマー成分とするスチレン系共重合体中に、
    官能基を含む下記化1及び/又は化2で示す繰り返し単
    位を、共重合体を構成する全モノマー単位のモル数に対
    して0.1〜15モル%含有し、且つ各官能基には殺菌性
    を有する金属イオンが結合されていることを特徴とする
    殺菌性樹脂。 【化1】【化2】
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