JP3456742B2 - 変圧器の騒音レベル予測方法 - Google Patents

変圧器の騒音レベル予測方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は産業上で電力、配電用変
圧器に用いられる騒音レベル予測方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】電気、電子機器に幅広く使用される磁性
材料において、励磁した場合の長さ変化は一つの材料特
性であり、また品質管理における評価項目の一つであ
る。励磁前後の長さ比を磁気ひずみと呼んでいる。磁気
ひずみは変圧器騒音の原因の一つである。他に変圧器騒
音の一因として電磁力があるが、鋼板間のギャップ、巻
線の緩み等にみられる変圧器の製造法に起因するものな
ので、本件ではこれらの条件を一定とした場合における
磁性材料の影響を検討することとした。
【0003】従来、磁性材料の磁気ひずみ測定法として
ストレインゲージを用いる方法、差動トランスを用いる
方法、近年ではレーザードップラー振動計を用いる方法
がある。ストレインゲージ法では材料にストレインゲー
ジという5mm程のセンサーを装着し、その長さ変化を電
気信号に変換して磁気ひずみを測定する。差動トランス
法では磁気ひずみによる振動を振動伝達治具によって差
動トランスまで伝達し、電気信号に変換し測定する。従
来法では商用周波数以上の高い周波数において磁気ひず
みによる振動速度が速くなるため測定が困難であった。
【0004】近年、電子回路による制御機器が発展し、
高調波を含んだ励磁電流が変圧器に流れ、また高磁束密
度設計の変圧器ではひずみ波による高調波が発生するの
で、変圧器からくる騒音も同様に高調波成分を含んでい
る。この高調波は励磁周波数の高い磁気ひずみから生ず
るものである。
【0005】従来の磁気ひずみの評価は商用周波数にお
ける磁束密度を磁性材料に加えることで行っていた。こ
の値が大きい場合、騒音が大きいと予測される。しかし
ながら、磁性材料中には高磁束密度になればなるほど歪
んだ磁束が流れ、商用周波数励磁のみの測定では実際の
状態を知ることが困難である。また、商用周波数以上で
使用される変圧器では使用周波数の磁気ひずみのデータ
が少なく、組み上げた変圧器の騒音を測定しなければ評
価できない。
【0006】更に、励磁波形を制御したパルス励磁等は
多くの高調波を含有しており、この環境下で使用される
変圧器においては高調波を含んだ磁気ひずみのデータが
少ないという理由で、実際組み上げられた変圧器の騒音
を測定しなければ騒音の評価ができない。
【0007】以上に述べたように、磁気ひずみの測定は
産業上における磁性材料の基本的に重要な品質評価項目
であるが、従来は高調波成分の磁気ひずみ評価は行われ
ていなかった。また、商用周波数以上の高い周波数で使
われる変圧器の騒音の評価は困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、変圧
器用磁性材料の磁気ひずみデータに基いて、該磁性材料
を用いて構成された変圧器の騒音レベルを予測すること
である。また、本発明は、任意波形励磁の磁気ひずみ波
形を周波数分析し、この大きさを音圧に変換し、聴感補
正を行う変圧器の騒音レベル予測方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の要旨は、
変圧器用磁性材料の磁気ひずみを可聴周波数範囲で測定
し、得られた磁気ひずみを音圧に変換し、さらに聴感補
正を施すことを特徴とする変圧器の騒音レベル予測方法
にある。
【0010】また、本発明の第2の要旨は、任意の波形
で励磁された変圧器用磁性材料の磁気ひずみ波形を周波
数分析し、各周波数における磁気ひずみを音圧に変換
し、さらに聴感補正を施すことを特徴とする変圧器の騒
音レベル予測方法にある。
【0011】従来の磁気ひずみ評価法を改善するため、
レーザードップラー振動計を用いた磁気ひずみ測定装置
を利用する。この装置は従来使われている差動トランス
法と比べ、高い周波数励磁の磁気ひずみを測定できる。
この装置を用い、50Hzから2kHz までの磁気ひずみを
測定する。得られた磁気ひずみを時間微分し、変位速度
vを計算する。ここで、磁気ひずみにより生じる変位が
同じ変位速度vで周りの空気粒子を移動させるとする。
変位速度に音圧を表す式を適用し、磁気ひずみを音圧で
表す。ここで用いる式を次に示す。 p=ρcv ここでp:音圧、ρ:媒質の密度、c:音の速度、v:
空気粒子の速度(磁気ひずみの変位速度)とする。空気
中ではρc=413(Kg/m2 s )である。これに聴感補
正を施し、磁気ひずみから得られたA特性の音圧レベル
(JEM−1117;変圧器の騒音レベル測定方法)と
する。
【0012】
【作用】この手法により従来において明確な知見として
得られなかった商用周波数から2kHz までの磁気ひずみ
が測定できる。これはレーザードップラー振動計を用い
ることで高い周波数の磁気ひずみ振動でも測定可能にな
ったからである。
【0013】さらに聴感補正を行うことで、実際人間の
耳で感じられる音圧(騒音)を予測でき、従来では磁気
ひずみと騒音の相関を見い出し難かったが、高調波成分
の磁気ひずみを考慮に入れることで更に実際の騒音に近
づいた騒音予測ができる。
【0014】上記の理由から、変圧器を製造することな
く、変圧器用磁性材料の磁気ひずみを測定することだけ
で、該磁性材料を用いて構成された変圧器の騒音レベル
を予測可能となる。
【0015】
【実施例】
〔実施例1〕図1は各励磁周波数において、磁気ひずみ
を測定した例である。高い周波数では磁気ひずみが小さ
くなることがわかる。
【0016】例として、グレード(JIS)がG13と
G9Hの電磁鋼板を測定した。高い周波数においてグレ
ードが高いG9Hではグレードの低いG13と比較し磁
気ひずみが小さくなっている。更に磁気ひずみを音圧に
変換し、聴感補正を施し、A特性の音圧に変換すると、
図2に示す曲線になる。周波数の高い領域(1〜2kHz
)ではG13が大きな音圧を示し、ひずみ波形が重畳
した磁界中では大きな騒音が生じると容易に予測され
る。
【0017】〔実施例2〕図3、4は50Hz、60Hzの
周波数において、正弦波励磁で磁気ひずみを測定した例
を示す。励磁波形は任意で、使用状態に合わせたもので
もよい。磁気ひずみは周波数分析により、FFTの波形
分析プログラムで各周波数成分を求めた。直接スペクト
ラムアナライザーで周波数成分を求めてもよい。上記の
操作を施し、各周波数における音圧を求め、これを聴感
補正する。基本波よりも高調波のほうが音圧として高い
ことがわかる。
【0018】例として、グレード(JIS)が27G1
30と27P95の電磁鋼板を測定した。高い周波数に
おいてグレードが高い27P95ではグレードの低い2
7G130と比較して全体的に音圧が小さい。これは5
0、60Hz共にいえることである(図5、6)。
【0019】これが高調波を含んだ波形の場合は周波数
が高い部分で音圧が高くなる事が評価でき、これに近い
1.9Tでの励磁ではひずみ波形のため高調波成分の大
きさが、大きいことが図中から理解できる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば変
圧器に使用される磁性材料の磁気ひずみを測定すること
で、高調波成分を含む励磁から発生した騒音をA特性音
圧を利用することで評価できる。また、本予測法に基づ
いた、可聴周波数範囲のA特性音圧を測定する機器を製
造ラインに設置することで低騒音材料を製造するための
品質管理ができ、更には現在の騒音問題に対し明確な材
料開発の指針を与え、産業上の利益は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ひずみの周波数依存性を比較したデータで
ある。
【図2】図1の特性をA特性音圧に変換し、比較した図
である。
【図3】グレード(JIS)が27G130の電磁鋼板
における磁気ひずみを周波数分析し、A特性音圧に変換
した図である。
【図4】図3と同じ鋼板を用い磁気ひずみを周波数分析
し、A特性音圧に変換した図である。
【図5】グレード(JIS)が27P95の電磁鋼板に
おける磁気ひずみを周波数分析し、A特性音圧に変換し
た図である。
【図6】図5と同じ鋼板を用い磁気ひずみを周波数分析
し、A特性音圧に変換した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭50−56525(JP,A) 特開 昭53−10020(JP,A) 特開 昭60−22308(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 27/33

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変圧器用磁性材料の磁気ひずみを可聴周
    波数範囲で測定し、得られた磁気ひずみを音圧に変換
    し、聴感補正を施すことを特徴とする変圧器の騒音レベ
    ル予測方法。
  2. 【請求項2】 任意の波形で励磁された変圧器用磁性材
    料の磁気ひずみ波形を周波数分析し、各周波数における
    磁気ひずみを音圧に変換し、さらに聴感補正を施すこと
    を特徴とする変圧器の騒音レベル予測方法。
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