JP3451313B2 - MnBi薄膜の作製方法 - Google Patents

MnBi薄膜の作製方法

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JP3451313B2 JP2000127890A JP2000127890A JP3451313B2 JP 3451313 B2 JP3451313 B2 JP 3451313B2 JP 2000127890 A JP2000127890 A JP 2000127890A JP 2000127890 A JP2000127890 A JP 2000127890A JP 3451313 B2 JP3451313 B2 JP 3451313B2
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隆幸 石橋
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、MnBi薄膜の作
製方法及びMnBi薄膜に関し、詳しくは、光磁気記録
媒体及び磁気記録媒体などに好適に用いることのでき
る、MnBi薄膜の作製方法及びMnBi薄膜に関す
る。
【0002】
【従来の技術】MnBi薄膜は、基板の表面に垂直に配
向しやすく大きなカー回転角を有することから、光磁気
記録媒体の磁気記録層を構成する材料として有望視され
ていた。しかしながら、記録時における加熱又は冷却の
過程において、構造相転移が生じて強磁性を示さなくな
るとともに、キュリー点が極めて高いため、実際の記録
に際しては高温度に加熱しなければならないという問題
があった。
【0003】そして従来、MnBi薄膜は、スパッタリ
ング法により必要に応じて保護膜などを設けた基板上に
一括して均一に形成した後、300℃程度に加熱して結
晶化することにより得ていた。したがって、MnBi薄
膜の微細な構造制御や結晶性制御を行うことはできず、
上記構造相転移などの問題を甘受しなければならなかっ
た。このような状況において、極めて高い垂直磁気異方
性を示すとともに、キュリー点が200℃前後と比較的
低く、0.3度程度のカー回転角を有することからTb
FeCo薄膜が光磁気記録媒体の磁気記録層として注目
を浴びるようになり、実用されるに至っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、光磁気
記録媒体にはさらなる記録密度の向上と読み出し速度の
向上が求められており、上述した0.3度程度の大きさ
のカー回転角しか示さないTbFeCo薄膜ではこれら
の要求に答えることができないでいた。このため、上記
TbFeCoに代わる新たな垂直磁気記録材料の出現が
望まれていた。
【0005】本発明は、微細な構造制御及び結晶性制御
を可能とし、TbFeCoに代わる垂直磁気記録材料と
してのMnBi薄膜の提供を可能とする新たなMnBi
薄膜の作製方法、並びにこの新たなMnBi薄膜を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、
本発明のMnBi薄膜の作製方法は、基板の表面上にM
nBiシード層を形成した後、このMnBiシード層を
加熱した状態において、前記MnBiシード層上にMn
元素とBi元素とを同時に供給し、前記基板の表面上に
MnBi薄膜をC軸方向にエピタキシャル成長させて形
成することを特徴とする。
【0007】
【0008】本発明者らは、TbFeCoに代わる垂直
磁気記録材料を得るべく鋭意検討を行った。そして、本
来的に比較的高い垂直磁気異方性を示すとともに、高い
カー回転角を有することから、再度MnBiに着目し
た。そして、このMnBi薄膜の微細な構造制御を可能
とするとともに、結晶性制御をも可能とすべく、作製方
法からの検討を行った。
【0009】その結果、基板上にMnBiシード層を予
め形成しておき、このシード層上にMn元素とBi元素
とをそれぞれ別個かつ同時に供給することにより、この
MnBiシード層上にMnBi薄膜をエピタキシャル成
長できることを見出した。すなわち、本発明の作製方法
によれば、原子レベルの制御によってMnBi薄膜を形
成することができるので、微細な構造制御や結晶性制御
が可能となる。このため、構造相転移などがなく、キュ
リー点を自在に制御して、光磁気記録媒体の磁気記録層
などに使用することのできるMnBi薄膜を提供するこ
とができる。また、本発明のMnBi薄膜の作製方法に
より、光磁気記録媒体などにおいて高密度記録並びに高
速読み出しを可能とするMnBi薄膜を容易に提供する
ことが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態
に基づいて詳細に説明する。本発明のMnBi薄膜の作
製方法においては、最初に、基板上にMnBiシード層
を形成する。シード層の態様及び形成方法については、
シード層上にMn元素及びBi元素を同時に供給してC
軸配向したMnBi薄膜を形成することができれば、特
には限定されない。しかしながら、比較的厚くC軸配向
したMnBi薄膜を形成するためには、前記シード層は
30〜90nmの厚さであることが好ましく、さらには
30〜50nmの厚さであることが好ましい。
【0011】また、上記厚さを有し、C軸配向したシー
ド層を簡易に得るべく、シード層は以下に示すような方
法によって形成することが好ましい。最初に、所定の基
板上にMn層及びBi層を積層させて形成する。積層順
序については限定されず、基板上にMn層を形成した
後、このMn層上にBi層を形成してもよいし、基板上
にBi層を形成した後、このBi層上にMn層を形成し
てもよい。Mn層及びBi層はスパッタリング法など公
知の成膜方法によって形成することができる。
【0012】Mn層及びBi層の厚さについても特には
限定されないが、以下に示す加熱処理に伴う相互拡散を
容易にして、上記好ましい厚さのシード層の作製を容易
にするという観点から、20〜60nmであることが好
ましく、さらには20〜30nmであることが好まし
い。
【0013】次いで、Mn層及びBi層を加熱する。こ
れにより、Mn層及びBi層を構成する各元素が互いに
相互拡散し、これらが混合することによりMnBiシー
ド層が形成される。Mn層を構成するMn元素とBi層
を構成するBi元素との相互拡散を容易にするととも
に、得るべくシード層をC軸配向させるという観点か
ら、加熱温度は250〜350℃であることが好まし
く、さらには280〜300℃であることが好ましい。
【0014】また、Mn層及びBi層の厚さを上記好ま
しい範囲に設定することにより、上記好ましい厚さのシ
ード層を形成するに際しては、上記加熱温度において
0.5〜1時間加熱する。Mn層及びBi層の加熱は、
基板上にこれら層が積層されてなるアセンブリを所定の
ヒータ上に載置することなどによって実施する。
【0015】次いで、得られたシード層を所定の温度に
加熱するとともに、このシード層上にMn元素及びBi
元素を同時に供給する。シード層の加熱温度については
特には限定されないが、比較的厚くC軸配向したMnB
i薄膜を得るためには、250〜350℃であることが
好ましく、さらには280〜300℃であることが好ま
しい。なお、シード層の加熱についても上記Mn層及び
Bi層の加熱処理の場合と同様に、基板とシード層とか
らなるアセンブリを所定のヒータ上に載置することによ
って実施する。
【0016】また、Mn元素及びBi元素の供給は、M
n元素又はBi元素を含む化合物の分子線、あるいは単
独のMn分子(Mn原子)又はBi分子(Bi原子)の
分子線を前記シード層上に入射させることによって行う
ことが好ましい。これによって、MnBi薄膜の微細な
構造制御及び結晶性制御を容易に行うことができる。
【0017】Mn元素を含む化合物としては、MnC
l、MnI及びトリメチルマンガンなどの有機金属を
例示することができる。また、Bi元素を含む化合物と
しては、BiBr、BiCl、BiI及びトリメチ
ルビスマスなどの有機金属を例示することができる。
【0018】そして、Mn元素の供給を分子線によって
行う場合、基板表面の法線に対するその入射角度が0〜
45度であることが好ましい。これによって、微細な構
造制御を可能とするとともにC軸配向したMnBi薄膜
を容易に得ることができる。同様の理由から、Bi元素
の供給を分子線によって行う場合、基板表面の法線に対
するその入射角度が0〜45度であることが好ましい。
【0019】Mn元素及びBi元素の供給を分子線で行
う場合は、基板とシード層とを具えたアセンブリを分子
線エピタキシー装置内に設置して行う。この場合、シー
ド層を加熱するためのヒータは前記装置内に具えられて
おり、このヒータを利用することによって、Mn層及び
Bi層からのシード層の形成をも前記分子線エピタキシ
ー装置内で行うことができる。
【0020】なお、Mn元素及びBi元素の供給は、必
ずしも分子線の形態で行う必要はなく、上記有機金属な
どを用いたCVDやスパッタリングなどによっても行う
ことができる。
【0021】以上のような工程を経ることによって、厚
さ10〜500nmのC軸配向したMnBi薄膜を得る
ことができる。また、基板の種類は特に限定されず、用
途に応じてあらゆるものを使用することができる。
【0022】
【実施例】本発明の具体例を以下の実施例において示
す。基板にAl基板を用い、この基板上に分子線
エピタキシー法によってBi層を厚さ20nmに形成す
るとともに、同じく分子線エピタキシー法によって前記
Bi層上にMn層を厚さ10nmに形成した。次いで、
上記分子線エピタキシー装置内を10―6Pa以下に排
気し、かかる真空雰囲気中において、前記Bi層及び前
記Mn層に対し300℃、1時間の加熱処理を行うこと
により、厚さ30nmのMnBiシード層を形成した。
【0023】次いで、上記温度を保持した状態におい
て、前記のようにして形成したMnBiシード層上に、
Mn分子(Mn原子)を基板の表面に対して45度の入
射角度で入射させるとともに、Bi分子(Bi原子)を
基板の表面に対して45度の入射角度で入射させた。
【0024】そして、0.5時間経過した後アセンブリ
を取り出し、表面に形成されたMnBi薄膜の構造をX
線回折によって調べるとともに、そのカー回転角につい
ても調べた。結果を図1及び2に示す。なお、得られた
MnBi薄膜の厚さは100nmであった。
【0025】図1は、MnBi薄膜の表面にX線を照射
することによって得たX線回折パターンである。図1か
ら明らかなように、40度近傍のAl基板に起因
する回折ピークに加えて、30度及び60度近傍にMn
BiのC軸に起因する回折ピークが見られる。したがっ
て、本実施例により得たMnBi薄膜は、C軸配向して
いることが分かる。すなわち、本発明にしたがってMn
Bi薄膜を作製することにより、100nm厚のC軸配
向したMnBi薄膜が得られることが分かる。
【0026】図2は、本実施例によって得たMnBi薄
膜のカーヒステリシスループを示す図である。図2から
明らかなように、ループは矩形状を呈し垂直磁気異方性
に優れることが分かる。さらに、カー回転角についても
約0.5度の大きな値を示すことが分かる。なお、測定
において波長633nmのレーザ光を用いた。さらに、
図示してはいないが、250〜300nmの紫外光領域
においては、約1度のカー回転角が得られた。
【0027】以上、具体例を挙げながら発明の実施の形
態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は
上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸
脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能であ
る。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
比較的大きな膜厚を有するC軸配向のMnBi薄膜をエ
ピタキシャル成長によって得ることができる。したがっ
て、垂直磁気記録材料として実用することのできるMn
Bi薄膜に対して、微細な構造制御や結晶性制御を行う
ことができる。このため光磁気記録媒体などの磁気記録
層として、TbFeCoに代わる有用なMnBi薄膜を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のMnBi薄膜の一例におけるX線回
折ピークパターンを示す図である。
【図2】 本発明のMnBi薄膜の一例におけるカーヒ
ステリシスループを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭48−16193(JP,A) 特開 昭59−171024(JP,A) 特開 平2−170405(JP,A) 特開 昭59−157829(JP,A) 特開 昭60−70151(JP,A) 特開 平6−44625(JP,A) 特開 平6−267126(JP,A) 特開 平7−334882(JP,A) 特開 平10−27327(JP,A) 石橋隆幸 他,分子線エピタキシー法 によるMnBi薄膜の作製,日本結晶成 長学会誌,2000年 7月 1日,Vo l.27,No.1,p.94 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 G11B 5/64 G11B 11/105 H01F 41/30 CA(STN) JSTPlus(JOIS) WPI(DIALOG)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板の表面上にMnBiシード層を形成
    した後、このMnBiシード層を加熱した状態におい
    て、前記MnBiシード層上にMn元素とBi元素とを
    同時に供給し、前記基板の表面上にC軸配向したMnB
    i薄膜をエピタキシャル成長させて形成することを特徴
    とする、MnBi薄膜の作製方法。
  2. 【請求項2】 前記MnBiシード層の厚さが、30〜
    90nmであることを特徴とする、請求項1に記載のM
    nBi薄膜の作製方法。
  3. 【請求項3】 前記MnBiシード層は、前記基板上に
    Mn層及びBi層を積層させた後、前記Mn層及び前記
    Bi層を250〜350℃に加熱することにより、前記
    Mn層を構成するMn元素及び前記Bi層を構成するB
    i元素を互いに熱拡散させて形成することを特徴とす
    る、請求項1又は2に記載のMnBi薄膜の作製方法。
  4. 【請求項4】 前記Mn層及び前記Bi層の厚さが、2
    0〜60nmであることを特徴とする、請求項3に記載
    のMnBi薄膜の作製方法。
  5. 【請求項5】 前記MnBiシード層を250〜350
    ℃に加熱して前記C軸配向したMnBi薄膜を形成する
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の
    MnBi薄膜の作製方法。
  6. 【請求項6】 前記Mn元素は分子線として前記基板の
    表面に供給することを特徴とする、請求項1〜5のいず
    れか一に記載のMnBi薄膜の作製方法。
  7. 【請求項7】 前記分子線と前記基板の表面に対する法
    線とのなす角度が、0〜45度であることを特徴とす
    る、請求項6に記載のMnBi薄膜の作製方法。
  8. 【請求項8】 前記Bi元素は分子線として前記基板の
    表面に供給することを特徴とする、請求項1〜7のいず
    れか一に記載のMnBi薄膜の作製方法。
  9. 【請求項9】 前記分子線と前記基板の表面に対する法
    線とのなす角度が、0〜45度であることを特徴とす
    る、請求項8に記載のMnBi薄膜の作製方法。
  10. 【請求項10】 前記C軸配向したMnBi薄膜の厚さ
    が、10〜500nmであることを特徴とする、請求項
    1〜9のいずれか一に記載の作製方法。
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Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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石橋隆幸 他,分子線エピタキシー法によるMnBi薄膜の作製,日本結晶成長学会誌,2000年 7月 1日,Vol.27,No.1,p.94

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