JP3449092B2 - 車両用ペダル支持構造 - Google Patents

車両用ペダル支持構造

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JP3449092B2
JP3449092B2 JP1334496A JP1334496A JP3449092B2 JP 3449092 B2 JP3449092 B2 JP 3449092B2 JP 1334496 A JP1334496 A JP 1334496A JP 1334496 A JP1334496 A JP 1334496A JP 3449092 B2 JP3449092 B2 JP 3449092B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用ペダル支持
構造に係り、特に、運転席のフットスペースに配設され
る車両用ペダルを支持する構造として好適な車両用ペダ
ル支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】走行中の車両に大きな減速度が作用する
と、車両の運転者には、運転者を車両前方側へ相対移動
させようとする慣性力が作用する。かかる慣性力により
運転者が車両前方側へ相対移動すると、ステアリングホ
イルを支持するステアリングコラムと、運転者のひざと
が干渉する事態が生じ得る。
【0003】実開平1−73464号には、かかる状況
下で運転者に作用する衝撃を緩和するためのニープロテ
クタが開示されている。上記のニープロテクタは、ステ
アリングコラムを車両に固定するために用いられるブラ
ケットを覆うように、ステアリングコラムの下方側に配
設されている。上記の構成によれば、運転者のひざがス
テアリングコラムのブラケットと直接当接することはな
く、ひざに作用する衝撃を緩和することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、車両の前方
に大きなエネルギが作用すると、車両において大きな減
速度が生ずると共に、エンジンルームと車室とを隔成す
るダッシュパネルに車室側へ向かう変形が生ずる場合が
ある。ダッシュパネルが上記の如く変形すると、運転席
のフットスペースが縮小されて、運転者のひざがステア
リングコラムに干渉し易い状態となる。従って、運転者
のひざに作用する衝撃を緩和するためには、ダッシュパ
ネルに上記の如き変形が生じた際に、大きなフットスペ
ースが確保し得るほど有利である。
【0005】運転席のフットスペースには、ブレーキペ
ダル等の車両用ペダルが支持されている。ダッシュパネ
ルに上記の如き変形が生じた際に、車両用ペダルをダッ
シュパネル側へ相対変位させることができれば、ダッシ
ュパネルの変形に関わらず、運転席において大きなフッ
トスペースを維持することができる。つまり、運転席に
支持される車両用ペダルを、上記の機能が満たされるよ
うに支持することができれば、運転者のひざとステアリ
ングコラムとの干渉を緩和するうえで有利な状態を形成
することが可能である。
【0006】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、ダッシュパネルに車室側へ向かう変形が生じた
際に、車両用ペダルをダッシュパネル側へ相対移動させ
る車両用ペダル支持構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、車両用ペダルを支持する構造であっ
て、前記車両用ペダルの回転軸を支持する回転リンク
と、該回転リンクの回動軸を支持する車体側部材と、前
記回転軸が、前記回動軸に対して車両前方側に位置する
ように、前記回転リンクを保持する保持部材と、前記
動軸が車両後方側へ相対移動する際に、前記回転軸が前
回動軸に対して更に相対的に車両後方側へ変位するよ
うに、前記回転リンクを回転させるモーメント発生機構
と、を備える車両用ペダル支持構造により達成される。
【0008】本発明において、車両用ペダルは、回転軸
を介して回転リンクに支持されている。また、回転リン
クは、回動軸を介して車体側部材により支持されてい
る。車両の前方に大きなエネルギが作用すると、そのエ
ネルギに起因して車体側部材が車両後方側へ相対的に変
位する場合がある。車体側部材が車両後方側へ相対変位
すると、モーメント発生機構により回転リンクにモーメ
ントが付与される。かかるモーメントが作用すると、回
転リンクは、保持部材の拘束力に抗って、回動軸を中心
として所定方向に回動する。回転リンクにかかる回動が
生ずると、車両用ペダルの回転軸が、回動軸に対して更
に車両後方側へ相対変位する。車両用ペダルの先端部
は、回転軸が回動軸に対して車両後方側に位置するほ
ど、車両前方側へ変位し得る状態となる。従って、回転
リンクに上記の如き回動が生ずると、車両用ペダルの先
端部は、回転リンクに回動が生ずる以前に比して更に車
両前方側へ、すなわち、フットスペースを拡張する方向
へ変位可能な状態となる。
【0009】また、請求項2に記載する如く、上記請求
項1記載の車両用ペダル支持構造において、前記モーメ
ント発生機構が、前記回動軸が車両後方側へ相対移動す
る際に前記回転リンクと当接する当接面を有する当接部
材を備えると共に、前記回転リンクが、該回転リンクに
所定の回転角が生じた際に、前記当接面の端部を収納す
る端部収納部を備える車両用ペダル支持構造は、回転リ
ンクに対して安定したモーメントを付与するうえで有効
である。
【0010】本発明において、モーメント発生機構は回
転リンクと当接する当接部材を備えている。車体側部材
が車両後方側へ相対変位すると、当接部材と回転リンク
とが当接して、回転リンクに、回動軸回りのモーメント
が付与される。回転リンクにかかるモーメントが付与さ
れると、回転リンクには所定方向へ向かう回動が生ず
る。車両用ペダルの先端部を、所期のストローク量だけ
車両前方側へ相対変位させるためには、回転リンクと当
接部材とが当接した後、回転リンクの回転角が所期の回
転角に到達するまで、当接部材と回転リンクとの当接状
態を安定に維持することが必要である。回転リンクと当
接部材との当接状態は、回転リンクの回転角が増すに連
れて変化する。本発明において、当接部材が備える当接
面の端部は、回転リンクの端部納部に収納される。その
結果、当接面は、その端部の内側で回転リンクに当接す
る。当接面の端部が回転リンクに当接する状況下では、
回転リンクに付与される押圧力がモーメントに変換され
難い状況が生じ得る。これに対して、当接面が端部の内
側で回転リンクに当接する構造においては、回転リンク
に付与される押圧力が、効率良くモーメントに変換され
る。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例である
車両用ペダル支持構造を側面視で表した図を示す。図1
において、ウィンドシールドガラス10は車室前面に配
設されるフロントガラスである。ウィンドシールドガラ
ス10は、図示しないワイパーモータ等が収納されるカ
ウルパネル12に接着されている。カウルパネル12の
下方には、エンジンルームと車室とを隔成するダッシュ
パネル14が延在している。
【0012】ダッシュパネル14は、貫通孔14aを備
えている。貫通孔14aには、プッシュロッド16、お
よびプッシュロッド16を保持するハウジング18が挿
通されている。プッシュロッド16の一端は、ブレーキ
ペダル20のペダルアーム20aに、揺動可能に連結さ
れている。また、プッシュロッド16の他端は、図示し
ない倍力装置に連結されている。ブレーキペダル20を
介してプッシュロッド16にブレーキ踏力が伝達される
と、そのブレーキ踏力が倍力装置により倍力されてマス
タシリンダに伝達される。その結果、マスタシリンダか
らホイルシリンダに向けて、ブレーキ踏力に応じたブレ
ーキ油圧が供給される。
【0013】ダッシュパネル14には、ペダルブラケッ
ト22が固定されている。ペダルブラケット22は、2
枚の側壁部22a,22bと、それらの間に延在する中
間壁部22cとを備えている。ペダルブラケット22
は、ダッシュパネル14と同様に、中間壁部22cにお
いてプッシュロッド16およびハウジング18を挿通す
るための貫通孔22dを備えている。また、ダッシュパ
ネル14の側壁部22a,22bには、回動軸24が固
定されている。
【0014】回動軸24は、回転リンク26を回動可能
に支持している。図2は、図1に示すII-II 直線に沿っ
てペダルブラケット22、回動軸24および回転リンク
26を切断した際に得られる断面図を示す。図2に示す
如く、回転リンク26は、2枚の鋼板が重なり合って形
成される重複部26aと、単一の鋼板で形成される非重
複部26b,26cを備えている。回動軸24は、非重
複部26b,26cにそれぞれ形成された貫通孔26
d,26eに挿通されている。
【0015】図1に示す如く、回転リンク26の重複部
26aは、扇形状に形成された扇部26a-1を備えてい
る。扇部26a-1の基部には、後述する当接部材32の
端部32aの収納部として機能する端部収納部26a-2
が形成されている。また、回転リンク26の非重複部2
6b,26cには、回動軸24を支持するための貫通孔
26d,26eに加えて、後述する回転軸28を支持す
るための貫通孔26f,26g、およびペダルブラケッ
ト22の中間壁部22cと干渉する掛止部26hが形成
されている。回転軸26の貫通孔26f,26gに挿通
された回転軸28は、ペダルアーム20aを回動可能に
支持している。従って、ブレーキペダル20は、回転軸
28を回転中心として回動することができる。
【0016】ペダルブラケット22は、車室内に配設さ
れるインパネリィンホース30の近傍に固定される。イ
ンパネリィンホース30は、図示しないステアリングコ
ラムを支持するための強度部材であり、カウルパネル1
2およびダッシュパネル14等とは独立して車両のフレ
ームに固定されている。インパネリィンホース30に
は、車両前方側、すなわち回転リンク26側へ突出する
当接部材32が固定されている。
【0017】図3は、図1中に示すIII-III 直線に沿っ
てペダルブラケット22、ブレーキペダル20、回転リ
ンク26、インパネリィンホース30および当接部材3
2を切断した際に得られる断面図を示す。本実施例にお
いて、回転リンク26は、図3に示す如く、重複部26
aの側面と当接部材32の先端部とが対向するように、
かつ、両者間に所定の間隔が形成されるように、ペダル
ブラケット22によって支持される。
【0018】図1に示す如く、ペダルブラケット22の
側壁部22aには、掛止レバー34を貫通させるための
貫通孔22eが形成されている。また、側壁22aの下
端部には、スプリング36の下端を掛止するための切欠
き22fが形成されている。スプリング36には、その
一端が掛止レバー34に掛止されると共に、その他端が
切欠き22fに掛止されることにより、伸長方向の弾性
変形が付与されている。
【0019】図4は、図1に示すIV-IV 直線に沿ってペ
ダルブラケット22、回転リンク26およびブレーキペ
ダル20を切断した際に得られる断面図を示す。掛止レ
バー34の一端がスプリング36に掛止され、かつ、そ
の他端が回転リンク26の非重複部26bに掛止されて
いる場合、掛止レバー34は、図4中に実線で示す状態
となる。この場合、スプリング36が発する張力は、て
この原理により、回転リンク26の非重複部26bを図
4中上方へ向けて付勢する力に変換される。かかる付勢
力は、図1において回転リンク26を時計回り方向に付
勢するモーメントを発生させる。従って、掛止レバー3
4が図4中に実線で示す状態に維持されている場合は、
図1に示す如く、回転リンク26の掛止部26hがペダ
ルブラケット22の中間壁部22cに当接した状態が維
持される。以下、かかる状態を通常状態と称す。
【0020】本実施例の構造において、ブレーキペダル
20のペダル部20bに何らブレーキ踏力が付与されて
いない場合は、ブレーキペダル20が図1中に二点鎖線
で示す状態に維持される。かかる状態から、ペダル部2
0bにブレーキ踏力F1 が付与されると、そのブレーキ
踏力F1 に応じた押圧力がプッシュロッド16に入力さ
れる。この際、ペダルアーム20aは、プッシュロッド
16の軸方向と同一方向へ向かう反力F2 を受ける。そ
して、回転軸28には、ブレーキ踏力F1 と反力F2
の合力に等しい反力F3 が作用する。
【0021】図1に示す如く、本実施例の車両用ペダル
支持構造においては、ブレーキ操作時に回転軸28に作
用する反力F3 が、回動軸24の僅かに上方を貫くよう
に各部の諸元が設計されている。かかる構造によれば、
ブレーキ操作時に回転軸28に作用する反力F3 は、回
転リンク26を図1において反時計回り方向へ付勢する
モーメント、すなわち、回転リンク26の掛止部26h
とペダルブラケット22の中間壁部22cとの当接力を
強める方向のモーメントを発生させる。このため、本実
施例の構造によれば、ブレーキペダル20が通常の方法
で操作される限り、安定して図1に示す通常状態が維持
される。
【0022】以下、上記図1および図4と共に、図5お
よび図6を参照して、本実施例の車両用ペダル支持構造
が有する効果について説明する。図5は、ペダルブラケ
ット22が、インパネリィンホース30側へ第1の変位
量だけ変位した状態を示す。また、図6は、ペダルブラ
ケット22が、第1の変位量に比して更に大きな第2の
変位量だけ、インパネリィンホース30側へ変位した状
態を示す。図5および図6に示す状態は、車両の前方に
所定値を超えるエネルギが入力され、ダッシュパネル1
4が車室内側へ相対変位することにより生ずる。
【0023】図1に示す状態から、ダッシュパネル14
が車室内側へ、すなわちインパネリィンホース30側へ
相対的に変位すると、相対変位量が所定量に到達した時
点で、回転リンク26の重複部26aと当接部材32と
が当接する状態が形成される。かかる状態から更にダッ
シュパネル14の相対変位が継続されると、回転リンク
26には、回動軸24を回転中心として、回転リンク2
6を図1において反時計回り方向に回転させようとする
モーメントが作用する。以下、かかる方向のモーメント
を回転モーメントと称す。
【0024】回転リンク26が回転モーメントに従って
回動すると、掛止レバー34は、図4中に実線で示す状
態から二点鎖線で示す状態に変化する。掛止レバー34
を図4中に二点鎖線で示す状態に変化させるためには、
スプリング36を伸長方向に弾性変形させることが必要
である。上述の如く、本実施例の構造においては、安定
して図1に示す通常状態を維持するために、スプリング
36に大きなバネ荷重を付与することが必要でない。従
って、回転リンク26に対して上記のモーメントが作用
すると、掛止レバー34は容易に図4中に二点鎖線で示
す状態に変化することができる。
【0025】掛止レバー34が図4中に二点鎖線で示す
状態に変化した後、更に回転リンク26の回転が継続さ
れると、やがて回転リンク26が完全に掛止レバー34
の下方側に位置する状態、すなわち、もはや掛止レバー
34が回転リンク26に拘束されない状態が形成され
る。かかる状態が形成されると、回転リンク26を図1
において時計回り方向に付勢していたモーメント(以
下、かかる方向のモーメントを復元モーメントと称す)
が完全に消滅し、以後、回転リンク26は、回動軸24
回りを自由に回動し得る状態となる。
【0026】ところで、回転リンク26には、回転リン
ク26の回転角が予め設定された最大回転角に到達する
までは、ペダルブラケット22の相対変位が継続する限
り回転モーメントが作用し続ける。その結果、ペダルブ
ラケット22の相対変位が継続する限り、回転リンク2
6は回動を続ける。本実施例において、回転リンク26
の姿勢は、当初回転軸28が回動軸24に対して車両前
方側に位置するように維持されている。かかる状態から
回転リンク26が回動し始めると、回転軸28は、すな
わちブレーキペダル20の上端部は、回動軸24の下方
を通過して、回動軸24の車両後方側へ変位する。
【0027】図5は、回転軸28が車両後方側へ到達す
る過程で、回動軸24の下方かつ車両前方側の所定位置
まで変位した状態を示す。図5に示す如く、回転軸28
が当初の位置に対して下方側へ変位する過程では、プッ
シュロッド16やハウジング18に不当な変形が生ず
る。プッシュロッド16やハウジング18にかかる不当
な変形が生ずると、その変形に対する反力FR がペダル
アーム20aに入力される。
【0028】回転リンク26の回転角が、図5に示す状
態に比して小さい領域では、かかる反力FR は回転リン
ク26の回転を阻止する復元モーメントを発生させる。
一方、回転リンク26の回転角が図5に示す状態に比し
て大きい領域では、かかる反力FR は、回転リンク26
の回転を助長する回転モーメントを発生させる。このた
め、本実施例の車両用ペダル支持構造においては、回転
リンク26の回転角が図5に示す回転角を超えると、そ
の後回転リンク26が自ら回転する現象、いわゆるター
ンオーバーが生ずる。
【0029】回転リンク26にターンオーバーが生ずる
と、その後、ダッシュパネル14に大きな相対変位が生
じなくとも、回転リンク26に大きな回転角を付与する
ことができる。この点、本実施例の車両用ペダル支持構
造は、ダッシュパネル14の変形量が比較的小さい場合
において、回転リンク26に大きな回転角を付与し得る
機能を備えていることになる。
【0030】図5に示す状態からダッシュパネル14の
相対変位が更に継続されると、図6に示す状態が形成さ
れる。図6は、ダッシュパネルの相対変位量が、予め想
定した最大変位量とほぼ等しい距離に到達した状態を示
す。図6に示す回転軸28の位置は回転リンク26が回
動したことにより、当初の位置、すなわち通常状態での
位置から距離αだけ、回動軸24に対して車両後方側へ
変位している。
【0031】ペダルアーム20には、上述の如くプッシ
ュロッド16が連結されている。車両の前方にエネルギ
が作用してダッシュパネル14が車両後方側へ相対変位
する際には、通常プッシュロッド16にもダッシュパネ
ル14と同様の相対変位が生ずる。このため、ペダルア
ーム20がプッシュロッド16に連結される部位の、ダ
ッシュパネル14に対する位置は、図6に示す状態と、
通常状態とでほぼ同一に維持される。
【0032】ペダルアーム20aがプッシュロッド16
に連結される位置がほぼ同一に維持されたまま、回転軸
28が距離αだけ車両後方側へ相対変位すると、ブレー
キペダル20のペダル部20bには、ペダルアーム20
aのレバー比に対応して、距離βだけ車両前方側へ、す
なわちダッシュパネル14側へ相対変位する。ブレーキ
ペダル20のペダル部20bにダッシュパネル14側へ
向かう相対変位が生ずると、ダッシュパネル14が車室
側へ変形しているにも関わらず、運転席のフットスペー
スには大きなスペースが確保できる。このため、本実施
例の車両用ペダルの支持構造によれば、ダッシュパネル
14を車両後方側へ相対変位させる程度に大きなエネル
ギが車両に作用した場合に、運転席のフットスペースに
大きなスペースを確保することができる。
【0033】上述の如く、本実施例の車両用ペダル支持
構造によれば、回転リンク26をターンオーバーさせる
ことにより、ダッシュパネル14の変位量が比較的小さ
い場合においても、回転リンク26に大きな回転角を付
与することができる。この点、本実施例の車両用ペダル
支持構造は、ダッシュパネル14の変形量が想定される
最大変位量に到達しない場合において、ダッシュパネル
14に最大変位量に近似する変位が生じたと同様に、ブ
レーキペダル20のペダル部20bを車両前方側へ大き
く相対変位させ得るという効果を備えていることにな
る。
【0034】次に、回転リンク26の重複部に、端部収
納部26a-2を形成したことにより奏される効果を、図
7乃至図12を参照して説明する。尚、図7乃至図12
において、上記図1に示す構成部分と同一の部分につい
ては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】図7は、本実施例において用いられる回転
リンク26と対比される回転リンク40が、通常位置に
維持されている状態を示す。また、図8は、本実施例に
おいて用いられる回転リンク26と対比される回転リン
ク40に、適当な回転角が付与された状態を示す。
【0036】回転リンク40は、当接部材32と当接す
る位置に重複部40aを備えている。重複部40aは、
当接部材32が回転リンク40の側面を円滑に摺動する
ことができるように、本実施例で用いられる回転リンク
40と同様に、扇状に形成されている。かかる構成によ
れば、図7に示す如く、回転リンク40の回転角が小さ
い領域では、回転リンク40と当接部材32との当接状
態が、回転リンク40に回転モーメントを付与するうえ
で好適な状態に維持される。
【0037】しかしながら、回転リンク40の重複部4
0aには、本実施例において用いられる回転リンク26
と異なり、回転リンク40に所定以上の回転角が生じた
際に当接部材32の端部32aを収納する端部収納部2
6a-2に相当する部位が形成されていない。このため、
図8に示す如く、回転リンク40の回転角が所定回転角
以上となると、回転リンク40の側面が当接部材32の
端部32aと当接する状態が形成される。
【0038】図8に示す如く、回転リンク40に対して
当接部材32の端部32aが当接する状態にあっては、
当接部材32と回転リンク40との上下方向の相対位置
関係が、回転リンク40の回転角に大きな影響を与え
る。すなわち、ペダルブラケット22の車両後方側への
変位量が同一であっても、回動軸24と当接部材32と
の上下方向の相対位置関係が図8に示す状態に比して近
接している場合には、回転リンク40に生ずる回転角が
図8に示す回転角に比して大きくなり、一方、回動軸2
4と当接部材32との上下方向の相対位置関係が図8に
示す状態に比して離間している場合には、回転リンク4
0に生ずる回転角が図8に示す回転角に比して小さくな
る。つまり、図7および図8に示す構造によっては、ペ
ダルブラケット22が車両後方側へ相対的に変位した場
合に、回転リンク40に、その相対変位に対して安定し
た回転角を付与することが困難である。この点、図7お
よび図8に示す構造は、安定した作動性を確保すること
が困難であるという欠点を備えていることになる。
【0039】図9乃至図12は、本実施例において用い
られる回転リンク26が回転モーメントに起因して回転
角を増す過程で生ずる4つの状態を示す。回転角の小さ
い領域、例えば図9および図10に示される回転角領域
では、本実施例の回転リンク26が用いられる場合と上
述した回転リンク40が用いられる場合とで差異は生じ
ない。
【0040】本実施例の構造によれば、回転リンク26
の回転角が所定角を超える領域、例えば図11および図
12に示す回転角領域において、当接部材32の端部3
2aが、回転リンク26の端部収納部26a-2に収納さ
れる。このため、本実施例の構造によれば、当接部材3
2は、常に端部32aの内側(図9乃至図12において
は端部32aの上方)において回転リンク26の重複部
26aと当接する。
【0041】かかる構成によれば、当接部材32と回転
リンク26との上下方向の相対位置関係は、回転リンク
26の回転角に殆ど影響を与えない。すなわち、回転リ
ンク26の回転角は、ペダルブラケット22の車両後方
側への変位量によりほぼ一義的に決定され、回動軸24
と当接部材32との上下方向の相対位置関係によって変
動することはない。この点、本実施例の構造は、上記図
7および図8に示す構造に対して、広いフットスペース
を確保するという機能上、高い安定性を有していること
になる。
【0042】ところで、回転リンク26に対して大きな
回転モーメントを付与するためには、回転モーメントの
起因となる押圧力の力点、すなわち回転リンク26と当
接部材32とが当接する部位と、回動軸24との垂直方
向距離(図9乃至図12中に符号L1 〜L4 を付して表
される距離)が長いほど有利である。かかる距離を長く
確保するためには、回転リンク26を、端部32aより
上方で当接部材32に当接させることが望ましい。この
点、かかる要求を常に満たす本実施例の構造は、大きな
回転モーメントを発生させ得るという点でも、上記図7
および図8に示す構造に比して優れていることになる。
【0043】尚、上記の実施例においては、ブレーキペ
ダル20が前記請求項1記載の車両用ペダルに、スプリ
ング36および掛止レバー34が前記請求項1記載の保
持部材に、当接部材32が前記請求項1記載のモーメン
ト発生機構に、それぞれ相当している。
【0044】次に、図13および図14を参照して、本
発明の第2実施例である車両用ペダル支持構造について
説明する。図13は、本実施例の車両用ペダル支持構造
を側面視で表した図を示す。また、図14は、回転リン
ク50、インパネリィンホース30等を図13中に示す
XIV-XIV 直線に沿って切断した際に得られる断面図を示
す。尚、図13および図14において、上記図1に示す
構成部分と同一の部分については、同一の符号を付して
その説明を省略する。
【0045】本実施例の車両用ペダル支持構造は、回転
リンク50を備えている。回転リンク50は、図1に示
される回転リンク26と同様に回動軸24を介してペダ
ルブラケット22に連結されていると共に、回転軸28
を介してブレーキペダル20を保持している。一方、回
転リンク50は、図1に示される回転リンク26と異な
り、重複部50aに長穴50bを備えている。長穴50
bは、その長手方向の中心線が回動軸24の中心を貫く
ように設けられている。
【0046】また、本実施例の車両用ペダル支持構造
は、上記図1に示す当接部材32に代えて連結部材52
を備えている。図14に示す如く、当接部材32は、そ
の先端部が回転リンク50の重複部50aと重なりあう
ようにインパネリィンホース30に固定されている。連
結部材52と回転リンク50とは、回転リンク50の長
穴50bを貫通する連結軸54により連結されている。
【0047】図13は、本実施例の車両用ペダル構造に
おいて回転リンク50が通常位置に保持された状態、す
なわち通常状態を示す。回転リンク50が通常状態に保
持されると、回動軸24と回転軸28とが、上記第1実
施例において回転リンク26が通常状態とされた場合と
同様の位置関係となる。本実施例の車両用ペダル構造に
おいては、図13に示す如く連結軸54が長穴50bの
上端に位置する場合に回転リンク50が通常状態となる
ように、各部の諸元が設計されている。
【0048】回転リンク50が通常状態に保持されてい
る場合、上記第1実施例の場合と同様に、ブレーキペダ
ル20が踏み込まれた際には、図13において回転リン
ク50を時計回り方向に回転させようとする復元モーメ
ントが発生する。回転リンク50は、長穴50bの上端
部に配設された連結軸54を介して連結部材52に連結
されているため、図13における時計回り方向には回転
することができない。従って、ブレーキ踏力により回転
リンク50の状態が変化することはない。このため、本
実施例の構造によれば、ブレーキペダル20が通常の方
法で操作される限り、安定して図13に示す通常状態が
維持される。
【0049】以下、上記図13と共に、図15および図
16を参照して、本実施例の車両用ペダル支持構造の動
作について説明する。図15は、ペダルブラケット22
の相対変位に伴って回動軸24がインパネリィンホース
30側へ相対変位する過程で生ずる回転リンク50の姿
勢変化を示す。また、図16は、ペダルブラケット22
が最大変位位置の近傍まで変位した場合に実現される車
両用ペダル支持構造の状態を側面視で表した図を示す。
【0050】図13に示す車両用ペダル支持構造を有す
る車両に、車両前方から所定値を超えるエネルギが入力
されると、ダッシュパネル14およびペダルブラケット
22に車室内側へ向かう、すなわちインパネリィンホー
ス30側へ向かう相対変位が生ずる。ペダルブラケット
22にインパネリィンホース30側へ向かう相対変位が
生ずると、その変位に伴って回転軸24がインパネリィ
ンホース30へ向けて変位する。
【0051】従って、車両前方に、所定値を超えるエネ
ルギが作用すると、インパネリィンホース30を基準と
して、回動軸24は、図15中に符号24-1を付して表
される位置から、符号24-2を付して表される位置を通
って、符号24-3を付して表される位置へと相対的に変
位する。回動軸24が、図15中に符号24-1を付して
表される位置から符号24-2を付して表される位置に変
位する過程では、回動軸24と連結軸54との直線距離
が徐々に減少する。また、回動軸24が図15中に符号
24-2を付して表される位置から符号24-3を付して表
される位置に変位する過程では、回動軸24と連結軸5
4との直線距離が徐々に増加する。本実施例の構造にお
いては、連結軸54が長穴50bに沿って摺動すること
により、円滑に回動軸24と連結軸54との距離を減少
させ、かつ増加させることができる。このため、本実施
例の構造によれば、回動軸24がインパネリィンホース
30へ向けて変位する過程で、回転リンク50を円滑
に、図15中に符号50-1を付して表される姿勢から、
図15中に符号50-2を付して表される状態を経て、図
15中に符号50-3を付して表される状態に変位させる
ことができる。
【0052】回転リンク50が、図15中に符号50-1
を付して表される姿勢から、図15中に符号50-3を付
して表される状態に変位すると、回転軸28の位置は、
図15中に符号28-1を付して表される位置から図15
中に符号28-3を付して表される位置に、車両後方側へ
向けて変化する。このように、本実施例の車両用ペダル
支持構造によれば、上記第1実施例の場合と同様に、車
両に所定値を超えるエネルギが作用した場合に、ブレー
キペダル20の回転軸28を、車両後方側へ相対変位さ
せることができる。
【0053】上述の如く、回転軸28が車両後方側へ相
対変位すると、ブレーキペダル20のペダル部20b
は、ダッシュパネル14側へ相対変位する。従って、本
実施例に係る車両用ペダル支持構造によっても、上記第
1実施例の場合と同様に、ダッシュパネル14が車室側
へ変形する状況下で、運転席のフットスペースに大きな
スペースを確保することができる。
【0054】尚、上記の実施例においては、長穴50b
および連結軸54が、前記請求項1記載の保持部材に、
また、連結部材52および連結軸54が前記請求項1記
載のモーメント発生機構に、それぞれ相当している。
【0055】
【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれ
ば、回動リンクを保持する車体側部材が車両後方側へ相
対変位した際に、回動軸に対して回転軸を、更に車両後
方側へ変位させることができる。車両用ペダルの回転軸
が、回動軸に対して、すなわち車体側部材に対して相対
的に車両後方側へ変位すると、車両用ペダルの先端部
は、車両前方側へ向けて相対変位する。従って、本発明
に係る車両用ペダル支持構造によれば、車両に対して、
車体側部材を車両後方側へ相対変位させる程度に大きな
エネルギが作用した場合に、フットスペースを確保する
ことができる。
【0056】請求項2記載の発明によれば、当接部材と
回転リンクとを当接させるることにより、回転リンクを
所定方向に回動させるモーメントを発生させることがで
きる。また、当接部材のエッジ部分を回転リンクのエッ
ジ収納部に収納させることにより、回転リンクの回転角
に関わらず、回転リンクと当接部材との当接状態を安定
に維持することができる。このため、本発明に係る車両
用ペダル支持構造によれば、回転リンクの回転角に関わ
らず安定したモーメントを得ることができ、確実に、車
両用ペダルの先端部に所期のスロトークを付与すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である車両用ペダル支持構造
の通常の状態を側面視で表した図である。
【図2】図1に示されるII-II 直線に沿う切断断面図で
ある。
【図3】図1に示されるIII-III 直線に沿う切断断面図
である。
【図4】図1に示されるIV-IV 直線に沿う切断断面図で
ある。
【図5】図1に示される車両用ペダル支持構造の作動過
程の状態を側面視で表した図である。
【図6】図1に示される車両用ペダル支持構造の作動終
了状態を側面視で表した図である。
【図7】図1に示される車両用ペダル支持構造と対比さ
れる車両用支持構造の要部の通常状態を側面視で表した
図である。
【図8】図1に示される車両用ペダル支持構造と対比さ
れる車両用支持構造の要部の作動状態を側面視で表した
図である。
【図9】図1に示される車両用ペダル支持構造の要部の
通常状態を側面視で表した図である。
【図10】図1に示される車両用ペダル支持構造の要部
の作動状態を側面視で表した図(その1)である。
【図11】図1に示される車両用ペダル支持構造の要部
の作動状態を側面視で表した図(その2)である。
【図12】図1に示される車両用ペダル支持構造の要部
の作動終了状態を側面視で表した図である。
【図13】本発明の第2実施例である車両用ペダル支持
構造の通常の状態を側面視で表した図である。
【図14】図13に示されるXIV-XIV 直線に沿う切断断
面図である。
【図15】図13に示される車両用ペダル支持構造の要
部の軌跡を側面視で表した図である。
【図16】図13に示される車両用ペダル支持構造の作
動終了状態を側面視で表した図である。
【符号の説明】
14 ダッシュパネル 16 プッシュロッド 18 ハウジング 20 ブレーキペダル 22 ペダルブラケット 24 回動軸 26 50 回転リンク 26a-2 端部収納部 28 回転軸 30 インパネリィンホース 32 当接部材 34 掛止レバー 36 スプリング 50b 長穴 52 連結部材 54 連結軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B62D 25/08 B60T 7/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両用ペダルを支持する構造であって、 前記車両用ペダルの回転軸を支持する回転リンクと、 該回転リンクの回動軸を支持する車体側部材と、 前記回転軸が、前記回動軸に対して車両前方側に位置す
    るように、前記回転リンクを保持する保持部材と、 前記回動軸が車両後方側へ相対移動する際に、前記回転
    軸が前記回動軸に対して更に相対的に車両後方側へ変位
    するように、前記回転リンクを回転させるモーメント発
    生機構と、 を備えることを特徴とする車両用ペダル支持構造。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の車両用ペダル支持構造に
    おいて、 前記モーメント発生機構が、前記回動軸が車両後方側へ
    相対移動する際に前記回転リンクと当接する当接面を有
    する当接部材を備えると共に、 前記回転リンクが、該回転リンクに所定の回転角が生じ
    た際に、前記当接面の端部を収納する端部収納部を備え
    ることを特徴とする車両用ペダル支持構造。
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