JP3444728B2 - 硬化性エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物 - Google Patents

硬化性エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物

Info

Publication number
JP3444728B2
JP3444728B2 JP23999196A JP23999196A JP3444728B2 JP 3444728 B2 JP3444728 B2 JP 3444728B2 JP 23999196 A JP23999196 A JP 23999196A JP 23999196 A JP23999196 A JP 23999196A JP 3444728 B2 JP3444728 B2 JP 3444728B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
curable
ester base
curable composition
fatty acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP23999196A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH1060305A (ja
Inventor
崇 村田
正明 高柳
Original Assignee
日清オイリオ株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 日清オイリオ株式会社 filed Critical 日清オイリオ株式会社
Priority to JP23999196A priority Critical patent/JP3444728B2/ja
Publication of JPH1060305A publication Critical patent/JPH1060305A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3444728B2 publication Critical patent/JP3444728B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Paints Or Removers (AREA)
  • Fats And Perfumes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は塗料、インク、樹脂
加工、紙サイジング剤、木材、ビン、金属、缶の表面処
理剤等、あるいは樹脂成形物等の分野において利用され
得る、光および/または熱に対して硬化性に優れたエス
テル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物に関す
るものである。本発明の硬化性エステル基剤およびこれ
を含有してなる組成物は、光や熱に対する硬化反応性が
高く、該反応により生成する皮膜や硬化物において均一
性、密着性および柔軟性に優れる等の性状を呈するもの
である。
【0002】
【従来の技術】通常の動植物性油脂類を構成する脂肪酸
は、炭素−炭素間二重結合(以下、単に二重結合とい
う)に代表される不飽和結合を有する不飽和脂肪酸を含
み、そのうち特に2個以上の二重結合を有する不飽和脂
肪酸およびその誘導体は、熱や光によって重合反応が促
進され、不飽和度の高いものについてはその性状がペー
スト状から固形状まで変化することが知られている。従
来からこの性状を活用して塗料やインクのような皮膜や
積層板のような板状の成形物を作成する等、二重結合を
多く有する不飽和脂肪酸は様々な分野において利用され
てきた。
【0003】一般に二重結合を有する不飽和脂肪酸およ
びその誘導体が重合する速度は、一つには二重結合の数
によって影響を受けるため二重結合数が多いほど重合反
応速度は早くなるが、また二重結合の位置も重合反応性
に大きく影響する。具体的には、2個以上の二重結合は
一般的に「ペンタジエン型」とよばれる1,4位の位置
関係(−CH=CH−CH2 −CH=CH−)にあり、
工業用あるいは食用として大量に生産されている通常の
液状油脂類、例えば大豆油、菜種油、コーン油、ひまわ
り油、米油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、綿実油、ア
マニ油等を構成するジエン酸(例えばリノール酸)やト
リエン酸(例えばリノレン酸)はそのような位置関係を
もつ。これらの油脂類は、光や熱をかけることにより、
または大気中に長時間放置することによりペースト状や
ゲル状に変化し、さらには皮膜を形成したり固化したり
するが、その性状変化の速度は非常に緩やかなものであ
る。
【0004】これに対して高い重合反応性(乾燥性)を
有する「共役型」とよばれる1,3位の位置関係(−C
H=CH−CH=CH−)にある二重結合をもつものが
ある。天然系油脂のなかで共役型二重結合を比較的多量
に含むものの例としては桐油があげられる。これはエレ
オステアリン酸と呼ばれる共役トリエン酸を主成分とし
て構成されるものであり、天然系油脂の中では最も前記
反応性の高いものであるが、これを通常のラジカル重合
系の高分子形成組成物中に配合した場合には、十分な強
度が得られないという欠点を有しており、使用できない
と考えられていた。
【0005】一方、共役脂肪酸を含む油脂類の別の事例
としては、共役化アマニ油や脱水ひまし油等が挙げられ
るが、これらのいずれも共役化率は30モル%程度が限
度であり、重合反応性が不十分であった。また水酸化ナ
トリウムのようなアルカリ触媒を用いる熱異性化反応に
よる共役化脂肪酸や、ひまし油加水分解脂肪酸を原料と
して脱水反応により共役化させたハイジエン酸(綜研化
学(株)製)は約60モル%の共役化率を有するもの
の、末端カルボキシル基が遊離であるため、利用範囲が
限定されていた。
【0006】以上に述べたように、天然系油脂類におけ
る共役型二重結合の含有量や機能的制約から、天然系油
脂類の硬化機能を活用する分野は現在のところさほど広
くはない。しかしながら、社会的な環境問題対応のニー
ズ、特に化石資源である石油系原料に対して計画栽培資
源を起源として入手できる原料であり、高い生分解性が
期待できる等の点、分子量が比較的大きいため揮発性も
なく人体に対する刺激性も認められない点、あるいは石
油化学系原料では得難い長鎖脂肪酸構造を有し新しい機
能発現が期待できることからも、天然系油脂類を見直す
機運が高まってきている。
【0007】また近年、種々の産業分野においてその高
耐久性、衝撃性、耐候性等を活用して各種プラスチック
の利用が拡大し、スチレン系、エポキシ系、アクリル系
等のラジカル重合系プラスチックが使用されてきた。ま
たさらに最近では種々の工業分野で原料加工処理工程の
短縮化、効率化が要望されており、このために例えば自
動車、機械、船舶等の金属表面への保護膜塗装の場合、
またカルトン印刷、金属印刷、フォーム印刷、シール印
刷、曲面印刷、プリント基板、オーバープリント等の印
刷の場合のように紫外線(UV)照射による硬化反応技
術が応用され、その被処理原料としては主にアクリル酸
系化合物等の化学合成原料およびこれを主要構成成分と
する組成物の使用が拡大してきている。しかしながらプ
ラスチック全般における共通の欠点として、硬い性質と
同時に脆いという特性を有しており、特にアクリル酸系
化合物では機能的欠点(皮膚刺激性、揮発性有機溶剤が
不可欠である点等)の改善が指摘され、また環境保全対
応の観点からも化学合成原料から天然系原料へのシフ
ト、転換が進む中で、前記した種々の分野においても改
めて天然系油脂類やその脂肪酸等を活用した原料の有効
利用が要望されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、通常の
植物性油脂はもとより桐油を含めて共役脂肪酸を含む油
脂においても、これらをラジカル重合高分子の原料成
分、添加成分として用いた場合には、得られた組成物の
強度が不足しており、重合反応性あるいは硬化性が不足
と考えられていた。又、従来の油脂製造工程では、特に
共役不飽和脂肪酸残基を多く含む油脂類は、反応性の高
さから物性変化を起こしやすいため、精製条件が制約さ
れ、桐油は大豆油や菜種油等、通常の植物油脂の精製レ
ベルには達しない品質の製品供給に留まっていた。した
がって本発明の目的は、光(UV)照射や加熱により高
い重合反応性すなわち硬化性を有するとともに、保存時
の安定性も良好で、硬化させた際に均質で、密着性およ
び柔軟性に優れた硬化組織を形成する、植物油脂由来の
エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物を
提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意検討を行った結果、植物油脂の精製度
によりラジカル重合組成物中に配合した際の組成物強度
が変化することに着目した。さらにその作用機構につい
て詳細に調べた結果、精製レベルの低い植物油脂又はそ
の加工油脂はそのもの自体の重合性が低いのみならず、
他のラジカル重合反応をも不活性化することを見い出し
た。かかる知見に基づいてさらに検討を進めた結果、驚
くべきことにそれらの中で共役二重結合をもつ脂肪酸を
もつ油脂を高度に精製したものについては、従来の知見
と異なり光や熱によるラジカル重合反応が速やかに進行
し、硬化性が良好で、生成した皮膜が適度な強度と柔軟
性をあわせもつ、硬化性組成物が得られることを見い出
した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0010】すなわち本発明の要旨は、桐油に代表され
る共役二重結合を有する植物油脂又はその加工油脂であ
って、ラジカル不活性化能を有する微量成分含量が低減
化されているような、植物油脂からなることを特徴とす
る硬化性エステル基剤および該エステル基剤を含有して
なる硬化性組成物にある。加工油脂とは植物油脂間での
エステル交換油を意味する。
【0011】又、従来の油脂製造工程では、特に共役不
飽和脂肪酸残基を多く含む油脂類は、反応性の高さから
物性変化を起こしやすいため、精製条件が制約され、桐
油は大豆油や菜種油等、通常の植物油脂の精製レベルに
は達しない品質の製品供給に留まっていた。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の硬化性エステル基剤は、
エステル結合した混合脂肪酸残基のうち共役不飽和脂肪
酸残基を35モル%以上含む。エステルを構成する脂肪
酸としては、全混合脂肪酸に対する共役不飽和脂肪酸の
割合がモル比として35%以上であることが必要であ
る。混合脂肪酸中の共役不飽和脂肪酸が35モル%未満
の場合は十分な重合反応性、硬化速度を確保することが
難しく、また得られる皮膜の強度も弱い。
【0013】本発明に係るエステルは、桐油のような共
役不飽和脂肪酸を含む植物油脂を特定の条件で精製する
か、あるいは前記精製油脂由来の共役不飽和脂肪酸を含
む精製混合脂肪酸間又は他の油脂との間でエステル化反
応せしめできるトリグリセリド、ジグリセリド、モノグ
リセリドをも含む。
【0014】本発明の主原料となる共役不飽和脂肪酸構
造を含む原料としては、桐油に代表されるような、トリ
グリセリド構造中に共役不飽和脂肪酸残基を比較的多く
含有する油脂を挙げることができる。より詳しくは桐油
やサクランボ種子油、ホウセンカ種子油でこれらにはエ
レオステアリン酸(9、11、13−オクタデカトリエ
ン酸)やパリナリン酸(9、11、13、15−オクタ
デカテトラエン酸)等が脂肪酸残基として含まれるが、
入手の容易さや生産量・コストの点から桐油が最も好ま
しい。
【0015】本発明のポイントである油脂の精製につい
ては、通常の油脂精製工程の条件、すなわち脱ガム、脱
酸、脱色、脱臭等の精製条件を選択して行う場合もある
が、共役脂肪酸を含むことから通常の油脂精製工程の条
件をそのまま適用することで大きく物性が変化し、粘度
が大幅に増加したり、固形化するような場合もあり、結
果として不適切な性状となってしまうことも多い。その
理由もあって、これまでに食用植物油脂レベルの精製が
行われてこなかった。これを防ぐ方法として本発明者ら
は、無溶剤あるいは非極性溶剤に希釈した状態で通常の
レベルに比較して非常に大量の吸着剤、例えば白土、シ
リカゲル等に接触させたり、いわゆるカラム精製のよう
な方法により高度に不純物を除去する方法を選択してい
る。結果として、ラジカルを不活性化する成分を除去で
きれば目的を達成するため、精製方法について限定する
ものではないが、共役二重結合にできるだけダメージを
与えない条件により不純成分を除去することが望まし
い。 ラジカル重合を阻害する不純物成分としては、リ
ン脂質等のリン含有成分、トコフェロール等のフェノー
ル性水酸基をもつ抗酸化成分、葉緑素、カロチノイドや
その関連物質、あるいはアミノ基を有する成分等が挙げ
られる。これらの不純物成分と重合物含量(重量%)と
は正の比例関係がある。
【0016】このようにして製造される、本発明の硬化
性エステル基剤は次のような条件を満たすことが重要で
ある。まず、エステル基剤中に含まれるラジカル重合反
応を阻害する不純物が、ラジカル重合を阻害しないレベ
ルまで低減していることが必須である。具体的には重合
物で5.0重量%、好ましくは3.0重量%まで低減さ
せる必要がある。重合物が5.0重量%より多いとラジ
カル重合反応が阻害され、硬化速度が極端に遅くなり、
インク用組成物としては使用不能となる。
【0017】重合物含量は次の方法によって測定でき
る。試料約50mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解
し、測定条件として、検出器:示差屈折計(RI)、カ
ラム:TSKGEL(G2000 HXL 2本)、移
動相:テトラヒドロフラン、流速:1.0ml/min 、注
入量:10μlにより赤外線検出器を備えたゲル浸透ク
ロマトグラフに供する。トリアシルグリセリン単量体よ
り早く溶出する成分を重合物と定義し、そのピーク面積
の全体に対する百分率を重合物含量とした。
【0018】エステルを構成する脂肪酸としては、全混
合脂肪酸に対する共役不飽和脂肪酸の割合がモル比とし
て35%以上であることが必要である。混合脂肪酸中の
共役不飽和脂肪酸が35モル%未満の場合は十分な重合
反応性、硬化速度を確保することが難しく、また得られ
る皮膜の強度も弱い。
【0019】なお、共役不飽和脂肪酸残基の比率が非常
に高いエステルと共役不飽和脂肪酸残基が全くないか少
量のエステルとを単純に混合しても共役不飽和脂肪酸残
基の含有比率が本発明に係るエステルと同じものを得る
ことは可能であるが、このようなエステルの単純混合物
では均一な硬化皮膜は得られない。
【0020】また本発明の硬化性エステル基剤では、エ
ステル結合した共役不飽和脂肪酸残基の二重結合におい
て、トランス体かつトランス体(トランス−トランス型
と表記する。以下同様)のものが占める比率は、シス−
シス型、シス−トランス型およびトランス−トランス型
の3種類の幾何異性体の合計量の50%以上であること
が好ましい。70〜100%であればさらに好ましい。
前記比率が50%未満の場合には、硬化速度が遅くな
り、またUV硬化性組成物に配合するとその硬化速度を
遅らせる傾向が大きくなる。
【0021】次に本発明の硬化性組成物について説明す
る。本発明の硬化性組成物は、本発明の硬化性エステル
基剤の前記特性を生かして、これと従来の硬化性物質ま
たはこれを含む組成物において用いられる各種公知成分
とを混合してなるものである。このとき本発明の硬化性
エステル基剤の配合割合は原則的には任意であり、本発
明の硬化性エステル基剤を該組成物中の主成分とする場
合と添加剤とする場合とが考えられる。硬化性エステル
基剤を主成分として含有せしめる場合にはその配合量は
硬化性組成物全体に対して40〜95重量%、好ましく
は60〜90重量%である。また添加剤として使用する
場合は硬化性組成物全体に対して1〜30重量%、好ま
しくは3〜15重量%配合するのがよい。
【0022】前記公知成分としては、加熱処理や光照射
処理により重合反応するアクリル酸、メタクリル酸、ソ
ルビン酸等のような共役性不飽和結合を有する低級カル
ボン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、塩、ア
ミド等)である反応性モノマー、同じく加熱や光照射に
より重合するウレタンプレポリマー等、加熱や酸素付加
処理により部分的に重合せしめたスタンド油、ボイル油
等の重合油脂、粘性の低減化や相互不溶性成分の相溶の
ための各種有機溶剤、熱あるいは光による重合反応を促
進させる重合開始剤(2,2−ジメトキシ−1,2−ジ
フェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘ
キシル−フェニル−ケトン等)、樹脂、顔料、色素等を
例示することができる。
【0023】本発明の硬化性組成物は、光(UV)照射
や加熱によって皮膜や硬化物を形成する塗料、インク、
紙や金属等の表面処理剤、積層板等およびそれらのベー
ス組成物を対象とし、各々の要求機能や使用条件にあわ
せて調製すればよい。例えば塗料においては本発明の硬
化性油脂を塗膜形成要素の主たる成分として、またイン
クでは本発明のエステル基剤をビヒクル中の乾性油やそ
の加工品(加熱重合油、マレイン化油、ウレタン化油
等)の一部または全部代替物として使用できる。
【0024】具体例としては、一般の塗料やインクの場
合、本発明のエステル基剤、有機溶剤、必要に応じて油
性成分(鉱物油、エステル油等)を含む混合物に樹脂類
を溶解させ、あるいはいずれかの混合物に増粘剤やゲル
化剤等を加えてビヒクルを調製し、これに顔料や染料を
加え混練してミルベースとなし、さらに必要に応じて有
機溶剤、その他の添加剤を配合して硬化性組成物を製造
する。またUV硬化性インクのような高硬化性組成物の
場合には、主たる皮膜形成要素成分としてアクリル酸系
化合物をはじめとする光重合性モノマーあるいはそのプ
レポリマーを用い、これに光重合開始剤および本発明の
エステル基剤を適量添加してベース組成物となし、さら
に必要に応じて顔料や安定化剤を加えて加温、混合して
硬化性組成物を製造する。また樹脂成型品においては、
例えば主たる樹脂モノマーと本発明によるエステルを混
合し、さらに開始剤、その他の添加成分を加え、加熱に
より重合反応を進め、目的とする成形物を得る。
【0025】かくして得られる硬化性組成物は、加熱処
理や光(UV)照射処理によって容易に硬化する高い重
合反応性を有し、密着性および柔軟性の点で優れた均質
な皮膜や硬化物を形成する。このため本発明の硬化性組
成物は、いわゆる樹脂成形物のみならず従来ではアクリ
ル酸モノマーに代表される石油化学系原料が主として用
いられてきた分野、例えば特に高い重合反応性を必要と
する特殊塗料やUV硬化処理を行う樹脂加工、インキ、
塗料等の用途においても使用することができる。また、
一般的に熱や光を利用する硬化性原料としては、石油化
学系原料が比較的高い極性を有するのに対して本発明の
エステル基剤は極性が低いため、従来原料とは相溶性の
なかった色素や染料等を併用することが可能となり、ま
た皮膜の柔軟性が高くかつ密着性が良好であるといった
ような石油化学系原料では得られ難い性状の硬化物を与
えることができる。
【0026】
【実施例】以下の実施例において、エステルを構成する
混合脂肪酸残基中のエレオステアリン酸残基の比率は、
混合脂肪酸の共役化率(共役ジエン酸含量および/また
は共役トリエン酸含量)で評価するものとし、日本油化
学協会編、「基準油脂分析試験法」の2.4.15−7
1共役不飽和脂肪酸(スペクトル法)の項に記載の方法
に基づき、シクロヘキサンを溶媒として0.01g/リ
ットル濃度の試料溶液の269、271.5および27
6.5mμにおけるUV吸光度を測定し、規定の計算式
から共役不飽和脂肪酸の含量を算出することにより求め
た。
【0027】製造例1 市販桐油100gをn−ヘキサン500mlに溶解し、活
性化シリカゲル(富士シリシア化学(株)製、マイクロ
ビーズ4B)300gを充填したカラム(内径60mm、
高さ250mm)により吸着処理を行ったのちn−ヘキサ
ンを留去し、精製桐油82gを得た。原料桐油と精製桐
油の酸価および過酸化物価はそれぞれ5.2および0.
5と1.5および0.1であり、重合物含量は4.1%
であった。
【0028】製造例2 製造例1で得た精製桐油60gおよび大豆油40gを混
合したのち減圧下で十分に乾燥し、ナトリウムメチラー
ト0.6gを添加した。これを100℃で1時間攪拌
し、エステル交換反応を行わせた。ついで水洗して中性
としたのち、減圧乾燥して本発明のエステル基剤91g
を得た。このエステル基剤を構成する混合脂肪酸中の共
役トリエン酸含量は、UV吸光度の測定によると、45
モル%であった。
【0029】比較製造例1 市販桐油65gおよび菜種油35gを混合したのち、減
圧下で十分に乾燥し、ナトリウムメチラート0.6gを
添加した。これを100℃で1時間攪拌し、エステル交
換反応を行わせた。ついで水洗して中性としたのち減圧
乾燥し、エステル基剤95gを得た。
【0030】比較製造例2 市販の桐油100gを秤量した。このものの重合物含量
は5.8%であった。
【0031】実施例1〜3および比較例1 製造例1、2および比較製造例1、2において得られた
各エステル(それぞれ実施例1、2および比較例1、2
に対応)のラジカル重合組成物中での性能を以下に示す
方法で評価した。結果を表1および表2に示す。
【0032】(1)硬化速度 製造例1、2および比較例1、2において得られた各エ
ステル(それぞれ実施例1、2および比較例1、2に対
応)それぞれに、重合開始剤として2,2−ジメトキシ
−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(日本チバガイ
ギー(株)製、イルガキュア651)1重量%を添加
し、20cm×20cmの透明ガラス板の表面にアプリケー
ターによりそれぞれの試料を厚さがいずれも0.076
mmになるように各々の塗膜を作成し、高圧水銀ランプ
(ウシオ電機(株)製、UM−102型)を用いて、該
ランプを塗膜から10cm離れた距離におき、100ワッ
トの強さで照光し、塗膜が硬化する速度を5分毎の指触
試験により判定した。
【0033】(2)均質性 (1)と同様の方法で塗膜を作成、高圧水銀ランプを用
いて、該ランプを塗膜から10cm離れた距離におき、1
00ワットの強さで3時間照光した後、塗膜表面のシワ
の発生具合を調べた。 ○:シワ発生なし △:ややシワ発生あり ×:シワ発生あり
【0034】(3)ラジカル重合阻害性 ラジカル重合による硬化物の調製法を次に示す。 (組成物の処方) (%:重量%) トリメチロールプロパントリアクリル酸エステル 94〜99% 製造例、比較製造例のエステル基剤または植物油脂 0〜 5% 重合開始剤(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、日 本チバガイギー(株)製、イルガキュア651) 1 % (硬化条件)内径4mmのビニールチューブを10cmにカ
ットし、一方をクリップで閉じ、上記組成物あるいは比
較のための植物油脂約2mlを注入し、もう一方をクリッ
プで閉じ充填物を調製する。この充填物と平行に高圧水
銀ランプ(ウシオ電機(株)製、UM−102型)を1
0cmの距離から10分間照射し、硬化物を得た。上記方
法により得られた硬化物の折り曲げ性により評価を行っ
た。 ○:完全に硬化し、固形化。全く柔軟性をもたないか、
柔軟性のある場合でも元の形状に復元する弾力性をも
つ。 △:硬化が不十分で、変形させた場合は元の形状に復元
しない。 ×:全く硬化せず。
【0035】(4)柔軟性 鉄製鋳型に各エステルおよび比較のための試料の各々を
流し込み、前記(3)と同様に光照射して完全硬化さ
せ、一辺5mm、長さ15cmの四角柱状硬化物を作成し
た。この硬化物の一端を固定して水平状態におき、他端
に400gの重りを吊り下げ、他端の水平位置からの距
離をcm単位で測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】 *:弾力性なく完全に折れ曲がってしまい、復元せず数値的な測定は不能。
【0038】このように、本発明による硬化性エステル
基剤は、アクリル酸エステルのラジカル重合阻害を示さ
ず、かつ添加した系ではその柔軟性が向上するという効
果が認められた。一方、従来の精製度の低い桐油では、
ラジカル重合が十分に行われず、結果として十分な硬化
が起こっていない。
【0039】以上の結果から、本発明の硬化性エステル
基剤は、ラジカル重合を阻害せず、硬化性に優れ、かつ
硬化皮膜の均質性および柔軟性の点において優れた性状
を示すことが認められた。これに対して精製度の低い、
従来の桐油等では、アクリル酸誘導体の組成物に配合し
た場合、硬化速度や硬化強度が不足したり、また硬化皮
膜の性状がもろく、柔軟性に欠ける等の欠点が認められ
た。
【0040】次に、本発明よりなる硬化性エステル基剤
を配合した硬化性組成物の処方例を表3に示す。本発明
よりなる硬化性エステル基剤は、揮発性や刺激性が極め
て低く、また低粘度であり、石油化学系の高分子モノマ
ーと比較して優れた特性を有していると言える。
【0041】実施例1 表3に示す原材料を混合して塗料またはインク用のベー
ス組成物となる硬化性組成物を調製した。この硬化性組
成物は、粘度が著しく低く(200CPS /25℃)、ガ
ラス板上に形成させた塗膜(厚さ0.076mm) の硬化
性が速やかで、硬化した塗膜は均質でなめらかなもので
あった。
【0042】
【表3】 ※:日本石油(株)製、0号ソルベントH
【0043】実施例2 表4に示す原材料を混合してインク用ベース組成物とな
る硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物は、石油
系溶剤を使用しないにもかかわらず非常に低粘性であ
り、速やかに皮膜を形成し、該皮膜の外観は均質かつ滑
らかであった。
【0044】
【表4】
【0045】比較例1 表5に示す原材料を混合してインク用のベース組成物と
なる硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物は粘度
が低く(250CPS /25℃)、ガラス板上に形成させ
た塗膜(厚さ0.076mm)の硬化性は遅く、インク用
のベース組成物として不向きであった。
【0046】
【表5】 ※:日本石油(株)製、0号ソルベントH
【0047】比較例2 表6に示す原材料を混合してインク用ベース組成物を調
製した。この組成物は皮膜形成に長時間を要し、インク
用ベース組成物として不向きであった。
【0048】
【表6】
【0049】実施例3 表7に示す原材料を混合してUV硬化性インク用のベー
ス組成物となる硬化性組成物を調製した。実施例3の硬
化性組成物から得られる皮膜は非常に柔軟性に富むもの
であった。またこれらの硬化性組成物に顔料を混練して
UV硬化性インクを調製し、各々を用いてアルミニウム
薄板(厚さ0.3cm)上に印刷した。実施例3の硬化性
組成物を用いたインクの場合の印刷塗膜は前記薄板上に
完全に密着し、剥離等の現象は認められなかった。
【0050】
【表7】
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、それ自身が硬化性すな
わち加熱や光照射による重合反応性に富むとともに、硬
さとともに柔軟性等の点で優れ、かつラジカル重合で硬
化する他のプラスチックに配合してもその硬化性能を妨
げることなく、新しい機能を付与することが可能である
ような、硬化性エステル基剤、およびこれを配合してな
る硬化性組成物を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−300598(JP,A) 特開 昭58−13610(JP,A) 特開 昭48−22524(JP,A) 特開 昭54−126293(JP,A) 特開 昭61−250064(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 4/00 - 4/06 C11B 3/10 C11C 3/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 共役二重結合をもつ脂肪酸残基を全混合
    脂肪酸残基に対して35モル%以上含む植物油脂又はそ
    の加工油脂であって、ラジカル不活性化能を有する成分
    の含量を重合物含量を指標として重合物含量で5.0重
    量%まで低減させたことを特徴とする、硬化性エステル
    基剤。
  2. 【請求項2】 植物油脂が桐油である、請求項1に記載
    の硬化性エステル基剤。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の硬化性エ
    ステル基剤を含有してなることを特徴とする硬化性組成
    物。
  4. 【請求項4】 硬化性エステル基剤の含有量が1〜30
    重量%である請求項3に記載の硬化性組成物。
JP23999196A 1996-08-23 1996-08-23 硬化性エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物 Expired - Fee Related JP3444728B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23999196A JP3444728B2 (ja) 1996-08-23 1996-08-23 硬化性エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23999196A JP3444728B2 (ja) 1996-08-23 1996-08-23 硬化性エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1060305A JPH1060305A (ja) 1998-03-03
JP3444728B2 true JP3444728B2 (ja) 2003-09-08

Family

ID=17052856

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP23999196A Expired - Fee Related JP3444728B2 (ja) 1996-08-23 1996-08-23 硬化性エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3444728B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3598025B2 (ja) * 1999-08-12 2004-12-08 日清オイリオグループ株式会社 反応性アマニ油脂組成物およびその製造法
JP2002188096A (ja) * 2000-10-12 2002-07-05 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd 新規なグリセリドおよびその製造法並びにその用途
JP2002121581A (ja) * 2000-10-13 2002-04-26 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd 精製共役トリエン脂肪酸含有油脂及びその製造方法
BRPI0911883A2 (pt) * 2008-04-30 2015-10-13 Armstrong World Ind Inc revestimento de base biológica curável por radiação

Also Published As

Publication number Publication date
JPH1060305A (ja) 1998-03-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Habib et al. Synthesis and characterization of acrylated epoxidized soybean oil for UV cured coatings
Desroches et al. Synthesis of biobased polyols by thiol− ene coupling from vegetable oils
Blayo et al. Chemical and rheological characterizations of some vegetable oils derivatives commonly used in printing inks
CN110382639B (zh) 活性能量线固化型胶版印刷用油墨组合物以及使用了该油墨组合物的印刷物的制造方法
CN106715498B (zh) 光固化性树脂组合物、油墨和涂料
JP2013521357A5 (ja)
Shikha et al. Studies on synthesis of water-borne epoxy ester based on RBO fatty acids
WO2000077070A2 (en) Modified hyperbranched polyester polymers, processes for preparing them and uses of them
JP6997942B2 (ja) 光硬化性樹脂組成物、インキ及び塗料
WO2020138132A1 (ja) 活性エネルギー線硬化型組成物
CN104817880A (zh) 一种紫外光固化抗阳极遮蔽保护油墨
Yossif et al. Preparation and characterization of polymeric dispersants based on vegetable oils for printing ink application
Teck Chye Ang et al. Development of palm oil‐based alkyds as UV curable coatings
CN104937043B (zh) 包含马来酸酐与不饱和化合物和胺的反应产物的水性涂料组合物
TW202006083A (zh) 活性能量線硬化型膠版印刷用墨組成物、及使用此組成物之印刷物的製造方法
JP3444728B2 (ja) 硬化性エステル基剤およびこれを含有してなる硬化性組成物
Ang et al. Novel approach to enhance film properties of environmentally friendly UV-curable alkyd coating using epoxidised natural rubber
JP3039917B2 (ja) 紫外線硬化型インキ組成物
WO2019052951A1 (en) INK FOR PRINTING IN HOLES WITH ENERGY CURING
JP2959707B2 (ja) 紫外線硬化性塗料類基剤およびこれを含有してなる紫外線硬化性塗料類
TWI825283B (zh) 活性能量線硬化型墨組成物及其製造方法、以及使用該組成物之印刷物的製造方法
JP6403234B2 (ja) オフセット印刷インキ用樹脂
JP2020169267A (ja) 活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物
JP7059428B1 (ja) 活性エネルギー線硬化型インキ組成物及びその製造方法、並びにそれに適したエポキシ化油脂アクリレート及びその製造方法
WO2022196064A1 (ja) 活性エネルギー線硬化型インキ組成物及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120627

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120627

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130627

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees