JP3432265B2 - イオン選択性電極 - Google Patents
イオン選択性電極Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶液中に存在するイオ
ン濃度を測定するための内部液を用いる液膜型イオン選
択性電極(以下イオン選択性電極と略記)に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、特定のイオンのモニターや水
質分析などの広い分野において、溶液中に存在する特定
イオンの濃度を選択的に定量するためにイオンセンサが
用いられている。イオンセンサは、その構成によってい
くつかのタイプに分けられ、pH電極として知られるガ
ラス電極をはじめ、弗化ランタン電極・ハロゲン化電極
・硫化銀電極などで知られる均一固体電極や、難溶性塩
を保持したPungor−Radelkis型電極とし
て知られる不均一固体電極、および液体イオン交換体電
極(液膜型電極)などが知られている(G.J.ムーデ
ィ/J.D.R.トーマス著、宗森信/日色和夫訳、
「イオン選択性電極」)。本発明は、このうちの液膜型
電極に係わり、特に内部液を用いる内部液型液膜電極の
イオン感応膜に関するものである。このタイプのイオン
センサの一般的な構成の概念図を図5に断面図で示す。 【0003】図5に示すように、内部電極2と、少なく
とも一部にイオン感応膜1を有し前記内部電極の一部に
内部液とともに絶縁封止材4aで封止する電極筐体4
と、前記電極筐体内に封入されて前記歌部電極の一部お
よび前記イオン感応膜1に接する内部液3とを具備し構
成されている。そして、感応膜のマトリクスとして現在
最も広く用いられているものはポリ塩化ビニル(PV
C)である。イオン選択性物質はPVCの可塑剤に溶解
または分散されてイオン感応膜1中に保持されている。
内部電極2にはAg/AgCl電極などが広く用いられ
ているがその構成にはさまざまな変形があり、また、そ
れ以外の電極も用いられている。内部電極は内部液3中
に浸されている。内部液の組成はイオンセンサや内部液
の種類によってさまざまであるが、KCl・NaClな
どの溶液に目的とするイオンの塩などを加えたものが基
本的に多く用いられている。 【0004】従来、内部液型電極のイオン選択性電極を
作製するには、通常次のような手順で行なわれていた。
すなわち、まず、イオン感応膜を作製するためには、膜
構成材料の各々(イオン選択性物質、可塑剤、PVC、
その他、例えば陽イオン選択性電極の場合にはアニオン
排除剤など)を秤量し、その全てを溶媒(PVC膜を作
製する場合、通常、テトラヒドロフラン−以下THFと
記載−が用いられる)に溶かしてイオン感応膜液を調製
する。次に、この膜液を底面が平らな容器、またはそれ
に相当するもの、一般にはガラス基板などの上に固定さ
れた円筒状の囲いの中に気泡などが入らないように注意
深く注入し、その後溶媒を蒸発させてイオン感応膜を得
る。乾燥後、膜を容器や基板から剥離して必要な形状に
切り出し、電極筐体4に装着する。次に内部液3を注入
し、内部電極2を挿入してイオン選択性電極が完成す
る。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記従来のイオン選択
性電極は電位の再現性に劣るという問題があったため、
その改良が強く要望されていた。 【0006】本発明は、イオン選択性電極の感応膜を改
良し電位の再現性に優れたイオン選択性電極を提供する
ことを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】発明者らは上記従来のイ
オン選択性電極におけるイオン感応膜が、その両面につ
いて製造工程で、膜展開基板(ガラスなど)に接触させ
て製造された面と、大気に接して製造された面とは厳密
には性質が異なるということに注目した。そしてこの両
面の性質の相違がイオン選択性電極の電位の再現性や、
長期安定性に影響があるという事実を見出した。 【0008】本発明に係るイオン選択性電極は、イオン
感応膜と、前記イオン感応膜を保持する電極筐体と、内
部電極と、前記イオン感応膜と前記内部電極の両者に接
する内部液とを有するイオン選択性電極において、前記
イオン感応膜の両面の性質が疎水性であり、しかも前記
イオン感応膜が、(N−メチル−N−ヘプチルマロンア
モイル)アミノ基を有する化合物を感応物質として含む
マグネシウムイオン感応膜でその膜厚が50μm以上で
あることを特徴とする。ここでいう「疎水性」とは、接
触角θにして50°以上のものをいう。また、この接触
角は電極のコンデショニングなどを行う前の測定値とす
る。 【0009】 【作用】本発明によれば、イオン選択性電極の感応膜を
改良し電位の再現性や、選択性など電極の特性の優れた
イオン選択性電極が提供される。 【0010】 【実施例】以下、本発明の一実施例につき図1ないし図
3を参照して説明する。 【0011】図1に示すように一例のイオン選択性電極
は、イオン感応膜11と、前記イオン感応膜を保持する
電極筐体4と、内部電極2と、前記イオン感応膜11と
内部電極2の両者に接する内部液3とを有するイオン選
択性電極において、イオン感応膜11の両面11aの性
質が疎水性であることを特徴とする構成である。なお、
図中の4aは内部電極2を支持し、かつ内部液の漏洩を
防ぐ封止剤であるが、必ずしも厳密に気密である必要は
ない。 【0012】まず本発明者らは、溶液中のイオンの濃度
を測定するイオンセンサにおいて、イオン感応膜の両面
の性質を疎水性とすることにより、イオン選択性電極の
電位の再現性が改善されることを実験的に見い出した。
このようなイオン感応膜は、イオン感応膜液から溶媒で
あるTHFを蒸発させる際の雰囲気をグローブボックス
などを用いて窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガス中に
て、低湿度(相対湿度20%以下、望ましくは10%以
下)に保つことで作成できる。このようにして作製すれ
ば、図2に示すように、膜の両面が疎水性であるような
イオン感応膜を得ることができる。あるいは、他の作製
方法として、イオン感応膜液の展開基板をテフロン(登
録商標)などの疎水性のものとし、通常の方法で作製し
た2枚の膜を、図3に示すように基板に接していたより
疎水性の高い面11a(疎水性の低い面は11b)を外
側にして貼り合わせて膜を構成することで作製できる。
なお、図3ではほぼ同等の膜厚の2枚の膜を貼り合わせ
る例を図示しているが、相互の膜厚の関係は問わないこ
とは言うまでもなく、更に場合によっては3枚以上の膜
を貼り合わせてもよい。また、特に(N−メチル−N−
ヘプチルマロンアモイル)アミノ基をもつ化合物を感応
物質として含むマグネシウムイオン感応膜の場合には、
この方法で作製したイオン感応膜の膜厚を50μm以上
とすることによりカルシウムイオンに対する選択性も安
定することを見いだした。 【0013】(実施例1)本発明によるイオン感応膜の
作製手順を、塩化物イオンセンサを例にとり、以下に詳
細に説明する。 【0014】塩化物イオンセンサの感応物質として、メ
チルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDA−
Clと略記)を用い、MTDA−Cl25.2wt%、
PVC33.1wt%、DOP(フタル酸ジオクチル)
41.7wt%の組成比で各化合物を混合したイオン感
応膜のTHF溶液を作製した。一方、表面を平滑に磨い
たテフロン(登録商標)板の上に直径約35mmのガラ
ス製の円筒の囲いを固定したものを2個用意した。続い
て、作製した膜液を上記の二つのガラス製の円筒の囲い
の中に気泡などが入らないように注意深く注ぎ入れた。
膜液は、底面からそれぞれ約3mmの高さまで注入し
た。その後溶媒であるTHFを蒸発させ、乾燥後、膜を
ガラス製円筒から剥離して膜厚が均一でない周辺部分を
打抜き型で切り落とし、均一な膜厚の直径20mmの2
枚の膜を得た。次に、一方の膜の大気に接していた側を
上にしてTHFを少量滴下し、その上に素早く他方の膜
を、テフロン(登録商標)に接していた面を外側にして
かぶせ、2枚の膜を接着した。このとき、気泡などが間
にはいらないようにすることが肝要である。このように
して作製した膜は2枚の膜を貼り合わせたにも拘らず、
完全に一体化されており、基本的には最初から膜厚を厚
くして作製した1枚の膜と同じである。この膜の接触角
を測定したところ、両面とも約65°であった。この膜
が通常の作製法で作製した膜と異なる点は、通常の方法
では、たとえ展開基板としてテフロン(登録商標)のよ
うな疎水性のものを用いても、他方の面は大気などに接
していた面が露出するため膜の両面の性質が異なり、多
くの場合疎水性が低下しているが、この方法で作製する
と膜の両面ともにテフロン(登録商標)に接していた面
が露出することになり、膜の両面とも疎水性にすること
ができる。なお、独立に作製した2枚の膜を貼り合わせ
るに当たり、本実施例のようにTHFを用いてもよい
が、イオン感応膜のTHF溶液そのものを用いることも
可能である。但しこの場合はごくわずかではあるが膜厚
が若干厚くなる。 【0015】作製した膜を切り出し、図3に示したよう
に構成して塩化物イオンセンサを作製した。内部液3の
組成は、0.2mol/l KCl溶液とした。イオン
感応膜11の膜厚は220μmであった。得られた電極
を用いて、10-5〜10-1mol/lのCl- 濃度範囲
の溶液で繰り返し測定を行ってCl- 濃度を求めた際の
繰り返し変動係数CV値は±1%以内となった。一方、
イオン感応膜組成は実施例と全く同じとし、従来通りの
作製法でも膜を作製した(膜厚も同等)。この膜はテフ
ロン(登録商標)に接していた面は接触角が60°で、
実施例とほぼ同等であるが、大気側の面の接触角は45
°で疎水性に劣っていた。この膜を用いて塩化物イオン
センサを作製し、同時に評価を行って繰り返し変動係数
を求めたところ、±3%以内となり、本発明に基づく電
極は再現性に優れていることがわかった。 【0016】(実施例2)次に、本発明の他の実施例を
マグネシウムイオン選択性膜を例に説明する。マグネシ
ウムイオンセンサの感応物質として(N' ,N'',
N''' −イミノ−ジ−8,1−アルキルジイル)トリス
(N−ヘプチル−N−メチル−マロンアミド)を50m
g、アニオン排除剤としてカリウムテトラキス(4−ク
ロロフェニル)ボレート45mgとテトラドデシルアン
モニウムテトラキス(4−クロロフェニル)ボレート1
50mg、可塑剤として2−ニトロフェニルオクチルエ
ーテルを3.0gはかり取ってTHF溶液とし、これに
ポリ塩化ビニルを、THFを除いた他の膜構成成分に対
し33.0wt%の比率になるように混合して感応膜液
(溶媒はTHF)を調製した。この膜液を実施例1と同
様にしてテフロン(登録商標)基板上に展開してTHF
を揮発させた。ただし、その時の雰囲気を、一つは乾燥
窒素で置換したグローブボックス中(相対湿度約5%)
とし、他の一つは通常通り大気中で揮発させた。このと
きの相対湿度は約55%であった。それぞれの膜の接触
角は前者が63°、後者が42°であった。これらの膜
を用いて、図5に示したように構成してマグネシウムイ
オン選択性電極を作った。なお、本発明による方法で作
製した膜は膜厚を変えたものを数種類作製し、マグネシ
ウムイオン選択性電極にとって重要な妨害イオンである
カルシウムイオンに対する選択係数の膜厚依存性を調べ
た。この際、作製した膜はすべて同一ロットの膜液を用
い、膜構成成分混合比率のばらつきや、作製条件の微妙
な違いなど極力入らないようにした。内部液の組成はい
ずれの電極でも0.2mol/l KCl+0.05m
ol/l MgCl2 とした。 【0017】従来法と本発明により作製したマグネシウ
ムイオン選択性電極を用いて、10-5〜10-1mol/
lのMg2+濃度範囲の溶液で繰り返し測定を行ってMg
2+濃度を求めた際の繰り返し変動係数CV値は、従来法
の電極では±6%、本発明の電極では±3%となり、本
発明に基づく電極は再現性に優れていることがわかっ
た。更に、本発明により作製した電極の、カルシウムイ
オンに対する選択係数の膜厚依存性を調べたところ、図
4に示したような結果が得られた。この図から膜厚が5
0μm以下になるとカルシウムイオンに対する選択性の
低下が見られることがわかる。しかし、膜厚が50μm
以上の電極ではカルシウムイオンに対する選択係数の値
はほぼ一定である。 【0018】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、再
現性や選択性など電極の基本特性にすぐれたイオン選択
性電極の感応膜を得ることができる。
ン濃度を測定するための内部液を用いる液膜型イオン選
択性電極(以下イオン選択性電極と略記)に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、特定のイオンのモニターや水
質分析などの広い分野において、溶液中に存在する特定
イオンの濃度を選択的に定量するためにイオンセンサが
用いられている。イオンセンサは、その構成によってい
くつかのタイプに分けられ、pH電極として知られるガ
ラス電極をはじめ、弗化ランタン電極・ハロゲン化電極
・硫化銀電極などで知られる均一固体電極や、難溶性塩
を保持したPungor−Radelkis型電極とし
て知られる不均一固体電極、および液体イオン交換体電
極(液膜型電極)などが知られている(G.J.ムーデ
ィ/J.D.R.トーマス著、宗森信/日色和夫訳、
「イオン選択性電極」)。本発明は、このうちの液膜型
電極に係わり、特に内部液を用いる内部液型液膜電極の
イオン感応膜に関するものである。このタイプのイオン
センサの一般的な構成の概念図を図5に断面図で示す。 【0003】図5に示すように、内部電極2と、少なく
とも一部にイオン感応膜1を有し前記内部電極の一部に
内部液とともに絶縁封止材4aで封止する電極筐体4
と、前記電極筐体内に封入されて前記歌部電極の一部お
よび前記イオン感応膜1に接する内部液3とを具備し構
成されている。そして、感応膜のマトリクスとして現在
最も広く用いられているものはポリ塩化ビニル(PV
C)である。イオン選択性物質はPVCの可塑剤に溶解
または分散されてイオン感応膜1中に保持されている。
内部電極2にはAg/AgCl電極などが広く用いられ
ているがその構成にはさまざまな変形があり、また、そ
れ以外の電極も用いられている。内部電極は内部液3中
に浸されている。内部液の組成はイオンセンサや内部液
の種類によってさまざまであるが、KCl・NaClな
どの溶液に目的とするイオンの塩などを加えたものが基
本的に多く用いられている。 【0004】従来、内部液型電極のイオン選択性電極を
作製するには、通常次のような手順で行なわれていた。
すなわち、まず、イオン感応膜を作製するためには、膜
構成材料の各々(イオン選択性物質、可塑剤、PVC、
その他、例えば陽イオン選択性電極の場合にはアニオン
排除剤など)を秤量し、その全てを溶媒(PVC膜を作
製する場合、通常、テトラヒドロフラン−以下THFと
記載−が用いられる)に溶かしてイオン感応膜液を調製
する。次に、この膜液を底面が平らな容器、またはそれ
に相当するもの、一般にはガラス基板などの上に固定さ
れた円筒状の囲いの中に気泡などが入らないように注意
深く注入し、その後溶媒を蒸発させてイオン感応膜を得
る。乾燥後、膜を容器や基板から剥離して必要な形状に
切り出し、電極筐体4に装着する。次に内部液3を注入
し、内部電極2を挿入してイオン選択性電極が完成す
る。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記従来のイオン選択
性電極は電位の再現性に劣るという問題があったため、
その改良が強く要望されていた。 【0006】本発明は、イオン選択性電極の感応膜を改
良し電位の再現性に優れたイオン選択性電極を提供する
ことを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】発明者らは上記従来のイ
オン選択性電極におけるイオン感応膜が、その両面につ
いて製造工程で、膜展開基板(ガラスなど)に接触させ
て製造された面と、大気に接して製造された面とは厳密
には性質が異なるということに注目した。そしてこの両
面の性質の相違がイオン選択性電極の電位の再現性や、
長期安定性に影響があるという事実を見出した。 【0008】本発明に係るイオン選択性電極は、イオン
感応膜と、前記イオン感応膜を保持する電極筐体と、内
部電極と、前記イオン感応膜と前記内部電極の両者に接
する内部液とを有するイオン選択性電極において、前記
イオン感応膜の両面の性質が疎水性であり、しかも前記
イオン感応膜が、(N−メチル−N−ヘプチルマロンア
モイル)アミノ基を有する化合物を感応物質として含む
マグネシウムイオン感応膜でその膜厚が50μm以上で
あることを特徴とする。ここでいう「疎水性」とは、接
触角θにして50°以上のものをいう。また、この接触
角は電極のコンデショニングなどを行う前の測定値とす
る。 【0009】 【作用】本発明によれば、イオン選択性電極の感応膜を
改良し電位の再現性や、選択性など電極の特性の優れた
イオン選択性電極が提供される。 【0010】 【実施例】以下、本発明の一実施例につき図1ないし図
3を参照して説明する。 【0011】図1に示すように一例のイオン選択性電極
は、イオン感応膜11と、前記イオン感応膜を保持する
電極筐体4と、内部電極2と、前記イオン感応膜11と
内部電極2の両者に接する内部液3とを有するイオン選
択性電極において、イオン感応膜11の両面11aの性
質が疎水性であることを特徴とする構成である。なお、
図中の4aは内部電極2を支持し、かつ内部液の漏洩を
防ぐ封止剤であるが、必ずしも厳密に気密である必要は
ない。 【0012】まず本発明者らは、溶液中のイオンの濃度
を測定するイオンセンサにおいて、イオン感応膜の両面
の性質を疎水性とすることにより、イオン選択性電極の
電位の再現性が改善されることを実験的に見い出した。
このようなイオン感応膜は、イオン感応膜液から溶媒で
あるTHFを蒸発させる際の雰囲気をグローブボックス
などを用いて窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガス中に
て、低湿度(相対湿度20%以下、望ましくは10%以
下)に保つことで作成できる。このようにして作製すれ
ば、図2に示すように、膜の両面が疎水性であるような
イオン感応膜を得ることができる。あるいは、他の作製
方法として、イオン感応膜液の展開基板をテフロン(登
録商標)などの疎水性のものとし、通常の方法で作製し
た2枚の膜を、図3に示すように基板に接していたより
疎水性の高い面11a(疎水性の低い面は11b)を外
側にして貼り合わせて膜を構成することで作製できる。
なお、図3ではほぼ同等の膜厚の2枚の膜を貼り合わせ
る例を図示しているが、相互の膜厚の関係は問わないこ
とは言うまでもなく、更に場合によっては3枚以上の膜
を貼り合わせてもよい。また、特に(N−メチル−N−
ヘプチルマロンアモイル)アミノ基をもつ化合物を感応
物質として含むマグネシウムイオン感応膜の場合には、
この方法で作製したイオン感応膜の膜厚を50μm以上
とすることによりカルシウムイオンに対する選択性も安
定することを見いだした。 【0013】(実施例1)本発明によるイオン感応膜の
作製手順を、塩化物イオンセンサを例にとり、以下に詳
細に説明する。 【0014】塩化物イオンセンサの感応物質として、メ
チルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDA−
Clと略記)を用い、MTDA−Cl25.2wt%、
PVC33.1wt%、DOP(フタル酸ジオクチル)
41.7wt%の組成比で各化合物を混合したイオン感
応膜のTHF溶液を作製した。一方、表面を平滑に磨い
たテフロン(登録商標)板の上に直径約35mmのガラ
ス製の円筒の囲いを固定したものを2個用意した。続い
て、作製した膜液を上記の二つのガラス製の円筒の囲い
の中に気泡などが入らないように注意深く注ぎ入れた。
膜液は、底面からそれぞれ約3mmの高さまで注入し
た。その後溶媒であるTHFを蒸発させ、乾燥後、膜を
ガラス製円筒から剥離して膜厚が均一でない周辺部分を
打抜き型で切り落とし、均一な膜厚の直径20mmの2
枚の膜を得た。次に、一方の膜の大気に接していた側を
上にしてTHFを少量滴下し、その上に素早く他方の膜
を、テフロン(登録商標)に接していた面を外側にして
かぶせ、2枚の膜を接着した。このとき、気泡などが間
にはいらないようにすることが肝要である。このように
して作製した膜は2枚の膜を貼り合わせたにも拘らず、
完全に一体化されており、基本的には最初から膜厚を厚
くして作製した1枚の膜と同じである。この膜の接触角
を測定したところ、両面とも約65°であった。この膜
が通常の作製法で作製した膜と異なる点は、通常の方法
では、たとえ展開基板としてテフロン(登録商標)のよ
うな疎水性のものを用いても、他方の面は大気などに接
していた面が露出するため膜の両面の性質が異なり、多
くの場合疎水性が低下しているが、この方法で作製する
と膜の両面ともにテフロン(登録商標)に接していた面
が露出することになり、膜の両面とも疎水性にすること
ができる。なお、独立に作製した2枚の膜を貼り合わせ
るに当たり、本実施例のようにTHFを用いてもよい
が、イオン感応膜のTHF溶液そのものを用いることも
可能である。但しこの場合はごくわずかではあるが膜厚
が若干厚くなる。 【0015】作製した膜を切り出し、図3に示したよう
に構成して塩化物イオンセンサを作製した。内部液3の
組成は、0.2mol/l KCl溶液とした。イオン
感応膜11の膜厚は220μmであった。得られた電極
を用いて、10-5〜10-1mol/lのCl- 濃度範囲
の溶液で繰り返し測定を行ってCl- 濃度を求めた際の
繰り返し変動係数CV値は±1%以内となった。一方、
イオン感応膜組成は実施例と全く同じとし、従来通りの
作製法でも膜を作製した(膜厚も同等)。この膜はテフ
ロン(登録商標)に接していた面は接触角が60°で、
実施例とほぼ同等であるが、大気側の面の接触角は45
°で疎水性に劣っていた。この膜を用いて塩化物イオン
センサを作製し、同時に評価を行って繰り返し変動係数
を求めたところ、±3%以内となり、本発明に基づく電
極は再現性に優れていることがわかった。 【0016】(実施例2)次に、本発明の他の実施例を
マグネシウムイオン選択性膜を例に説明する。マグネシ
ウムイオンセンサの感応物質として(N' ,N'',
N''' −イミノ−ジ−8,1−アルキルジイル)トリス
(N−ヘプチル−N−メチル−マロンアミド)を50m
g、アニオン排除剤としてカリウムテトラキス(4−ク
ロロフェニル)ボレート45mgとテトラドデシルアン
モニウムテトラキス(4−クロロフェニル)ボレート1
50mg、可塑剤として2−ニトロフェニルオクチルエ
ーテルを3.0gはかり取ってTHF溶液とし、これに
ポリ塩化ビニルを、THFを除いた他の膜構成成分に対
し33.0wt%の比率になるように混合して感応膜液
(溶媒はTHF)を調製した。この膜液を実施例1と同
様にしてテフロン(登録商標)基板上に展開してTHF
を揮発させた。ただし、その時の雰囲気を、一つは乾燥
窒素で置換したグローブボックス中(相対湿度約5%)
とし、他の一つは通常通り大気中で揮発させた。このと
きの相対湿度は約55%であった。それぞれの膜の接触
角は前者が63°、後者が42°であった。これらの膜
を用いて、図5に示したように構成してマグネシウムイ
オン選択性電極を作った。なお、本発明による方法で作
製した膜は膜厚を変えたものを数種類作製し、マグネシ
ウムイオン選択性電極にとって重要な妨害イオンである
カルシウムイオンに対する選択係数の膜厚依存性を調べ
た。この際、作製した膜はすべて同一ロットの膜液を用
い、膜構成成分混合比率のばらつきや、作製条件の微妙
な違いなど極力入らないようにした。内部液の組成はい
ずれの電極でも0.2mol/l KCl+0.05m
ol/l MgCl2 とした。 【0017】従来法と本発明により作製したマグネシウ
ムイオン選択性電極を用いて、10-5〜10-1mol/
lのMg2+濃度範囲の溶液で繰り返し測定を行ってMg
2+濃度を求めた際の繰り返し変動係数CV値は、従来法
の電極では±6%、本発明の電極では±3%となり、本
発明に基づく電極は再現性に優れていることがわかっ
た。更に、本発明により作製した電極の、カルシウムイ
オンに対する選択係数の膜厚依存性を調べたところ、図
4に示したような結果が得られた。この図から膜厚が5
0μm以下になるとカルシウムイオンに対する選択性の
低下が見られることがわかる。しかし、膜厚が50μm
以上の電極ではカルシウムイオンに対する選択係数の値
はほぼ一定である。 【0018】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、再
現性や選択性など電極の基本特性にすぐれたイオン選択
性電極の感応膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例のイオン選択性電極の断
面図。 【図2】本発明によるイオン感応膜を模式的に示す断面
図。 【図3】本発明によるイオン感応膜の一作製方法を模式
的に示す断面図。 【図4】本発明によるマグネシウムイオン選択性電極の
カルシウムイオンに対する選択性の膜厚依存性の特性を
示す図。 【図5】内部液を用いる液膜型イオン選択性電極の構造
を示した図(概念図)。 【符号の説明】 1,11 イオン感応膜 2 内部電極 3 内部液 4 電極筐体
面図。 【図2】本発明によるイオン感応膜を模式的に示す断面
図。 【図3】本発明によるイオン感応膜の一作製方法を模式
的に示す断面図。 【図4】本発明によるマグネシウムイオン選択性電極の
カルシウムイオンに対する選択性の膜厚依存性の特性を
示す図。 【図5】内部液を用いる液膜型イオン選択性電極の構造
を示した図(概念図)。 【符号の説明】 1,11 イオン感応膜 2 内部電極 3 内部液 4 電極筐体
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(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
G01N 27/333
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 イオン感応膜と、前記イオン感応膜を保
持する電極筐体と、内部電極と、前記イオン感応膜と前
記内部電極の両者に接する内部液とを有するイオン選択
性電極において、 前記イオン感応膜の両面の性質が疎水性であり、しかも
前記イオン感応膜が、(N−メチル−N−ヘプチルマロ
ンアモイル)アミノ基を有する化合物を感応物質として
含むマグネシウムイオン感応膜でその膜厚が50μm以
上であることを特徴とするイオン選択性電極。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04376394A JP3432265B2 (ja) | 1994-03-15 | 1994-03-15 | イオン選択性電極 |
EP94119965A EP0667522B1 (en) | 1993-12-16 | 1994-12-16 | Method of measuring ion concentration and apparatus therefor |
US08/357,753 US5580441A (en) | 1993-12-16 | 1994-12-16 | Method of measuring ion concentration and apparatus therefor |
KR1019940034653A KR100195594B1 (ko) | 1993-12-16 | 1994-12-16 | 이온농도 측정장치 및 이온농도 측정방법 |
DE69426761T DE69426761T2 (de) | 1993-12-16 | 1994-12-16 | Verfahren und Vorrichtung zur Messung der Ionenkonzentration |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04376394A JP3432265B2 (ja) | 1994-03-15 | 1994-03-15 | イオン選択性電極 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07253408A JPH07253408A (ja) | 1995-10-03 |
JP3432265B2 true JP3432265B2 (ja) | 2003-08-04 |
Family
ID=12672804
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP04376394A Expired - Fee Related JP3432265B2 (ja) | 1993-12-16 | 1994-03-15 | イオン選択性電極 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3432265B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA3151803C (en) * | 2019-08-19 | 2024-01-09 | Siemens Healthcare Diagnostics Inc. | Improved solid-state magnesium ion selective microelectrode and methods of production and use thereof |
-
1994
- 1994-03-15 JP JP04376394A patent/JP3432265B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07253408A (ja) | 1995-10-03 |
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