JP3430524B2 - 金属薄膜積層セラミックス基板及びその製造方法 - Google Patents

金属薄膜積層セラミックス基板及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属薄膜積層セラミック
ス基板及びその製造方法に関し、より詳細には強固で再
現性の良い膜密着強度を有し、セラミックス基板上に薄
膜で微細回路配線が形成され、ICパッケージ等に利用
される金属薄膜積層セラミックス基板及びその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックスは優れた耐熱性、熱衝撃
性、高破壊強度を有する部材で、多種多様な面で使用さ
れている。半導体産業においてはICパッケージとして
も利用されている。しかし、セラミックスが単独で半導
体産業等で利用されることは少なく、ある種の加工が施
されて使用される。例えばICパッケージとして利用す
る場合であれば、セラミックス基板上に金属薄膜で微細
回路配線が形成され、リードフレームが接合される。し
たがってセラミックスを化学的に加工して利用すること
が多い。またセラミックスと金属とが強固に接合される
ことによって、セラミックスの機能を十分に発揮させる
ことができるものである。
【0003】セラミックスと金属とを接合する場合、両
者を直接接合することは困難で、一旦セラミックスの表
面をある種の方法で金属化し、その後目的とする金属薄
膜体を接合する方法が従来は一般に採用されてきた。こ
の方法には、メタライズペーストをセラミックスの表面
にスクリーン印刷した後、還元性雰囲気中で加熱する高
融点金属法、化学的活性の高い金属をセラミックスの表
面にスパッタリングで物理蒸着させて真空容器内または
不活性ガス雰囲気中で加熱する活性金属法、または真空
中で金属を加熱し、その時発生する蒸気を付着させる物
理蒸着法などが使用されてきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】LSI素子を35μm
厚のCuの配線パターンが形成されたTAB( Tape Au
tomated Bonding ) に実装した場合、LSIの引き剥し
試験においてTABにCu切れが生じないことが必要で
あり、そのためには膜の密着強度を測るピール試験にお
いて、膜密着強度の値が2kg/mm2 以上であること
が必要であるといわれている。しかしながら、上述のよ
うに単に金属層をセラミックスの上に積層するのみで
は、金属層の付着性に十分な信頼性を得ることができな
い。このため従来の製造方法による金属薄膜積層セラミ
ックス基板においてはピール試験による膜密着強度の値
が2kg/mm2 以上にならないものがあり、再現性も
よくないという課題があった。
【0005】本発明はこのような課題に鑑みなされたも
のであり、ピール試験において2kg/mm2 以上の強
固で、再現性の良い膜密着強度を有する金属薄膜積層セ
ラミックス基板及びその製造方法を提供することを目的
としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明に係る金属薄膜積層セラミックス基板は、酸化
物系セラミックス基板上に金属薄膜が複数層積層された
金属薄膜積層セラミックス基板において、前記酸化物系
セラミックス基板と金属薄膜積層体との間に、前記酸化
物系セラミックス基板よりも大きな標準生成自由エネル
ギーを有する、膜密着強度を高めるための酸化物系絶縁
膜が介在させられていることを特徴とし、また本発明に
係る金属薄膜積層セラミックス基板の製造方法は、酸化
物系セラミックス基板上に酸化物系絶縁膜を蒸着法によ
り形成し、この後金属薄膜層を蒸着法により形成するこ
とを特徴としている。
【0007】
【作用】図4は酸化物の標準生成自由エネルギー(△
G)−温度曲線を示している。一般に△Gの値が小さい
酸化物が還元されて単体とは成り得ず、したがって、X
とYという金属の酸化物XO、YOがあり、この△Gの
値が、△GXO>△GYOである場合、反応系の温度、圧力
及び濃度等の条件を変化させても、YOが還元されてY
の単体となることはない。また△GXOと△GYOとの差が
十分大きくなければXOが還元されてXの単体となるこ
ともなく、XとYとOとの化合物が形成されるという反
応はおこらない。したがって、たとえばAl23 から
なる酸化物系セラミックス基板上にTiを直接蒸着させ
た場合、△GTiO >△GAl2O3 (図4参照)であるの
で、Al23 が還元されてAlとなることはなく、ま
た△GTiO と△GAl2O3 との差が小さいことからAlと
TiとOとの化合物は形成されない。
【0008】ところが、上記の金属薄膜積層セラミック
ス基板の製造方法において、Al23 からなるセラミ
ックス基板とTiからなる第1金属薄膜層との間にSi
2膜を介在させると、△GSiO2>△GTiO >△GAl2O3
(図4参照)であり、しかも△GSiO2と△GTiO との
差は十分大きく、△GSiO2と△GAl2O3 との差も十分大
きい。このためSiO2 とAl23 との間ではSiO
2 が還元されてSiとなり、SiとAlとOとの化合物
が形成され、またSiO2 とTiとの間でもSiO2
還元されてSiとなり、SiとTiとOとの化合物が形
成される。これらの金属間化合物を有する酸化物系絶縁
膜が金属薄膜積層体を強固にセラミックス基板上に付着
させることとなる。この場合に蒸着させるSiO2 膜の
膜厚を0.1μm以上にすると薄膜構成が厚くなるため
好ましくなく、また金属間化合物が形成されて高い膜密
着強度を有するために必要とされる最低膜厚は0.01
μm程度であり、SiO2 膜の膜厚は0.01μm〜
0.1μmの範囲に設定するのが望ましい。
【0009】上記したように本発明に係る金属薄膜積層
セラミックス基板によれば、酸化物系セラミックス基板
上に金属薄膜が複数層積層された金属薄膜積層セラミッ
クス基板において、前記酸化物系セラミックス基板と金
属薄膜積層体との間に、前記酸化物系セラミックス基板
よりも大きな標準生成自由エネルギーを有する、膜密着
強度を高めるための酸化物系絶縁膜が介在させられてい
るので、強固で再現性の良い膜密着強度を有する前記金
属薄膜積層体を形成することが可能となる。
【0010】また本発明に係る金属薄膜積層セラミック
ス基板の製造方法によれば、酸化物系セラミックス基板
上に酸化物系絶縁膜を蒸着法により形成し、この後金属
薄膜層を蒸着法により形成するので、強固で再現性の良
い膜密着強度を有し、酸化物系セラミックス基板上に薄
膜の微細回路配線を有するICパッケージ等に利用され
る金属薄膜積層セラミックス基板が容易に、確実に製造
されることとなる。
【0011】
【実施例及び比較例】以下、本発明に係る金属薄膜積層
セラミックス基板及びその製造方法の実施例を図面に基
づいて説明する。 [実施例1]図1は実施例1における金属薄膜積層セラ
ミックス基板の構造を示す模式的断面図である。図中1
1は金属薄膜積層セラミックス基板を示しており、Al
23 からなるセラミックス基板12の表面に酸化物系
絶縁膜であるSiO2 膜13が形成され、このSiO2
膜13の上にTiからなる第1金属薄膜層14、この第
1金属薄膜層14の上にNiからなる第2金属薄膜層1
5、第2金属薄膜層15の上にAuからなる第3金属薄
膜層16、第3金属薄膜層16の上にさらに第3金属薄
膜層16と同種の金属からなるメッキ膜層17が積層さ
れ、これら第1金属薄膜層14、第2金属薄膜層15、
第3金属薄膜層16及びメッキ膜層17により金属薄膜
積層体18が形成され、これら金属薄膜積層体18とS
iO2 膜13とセラミックス基板12とにより金属薄膜
積層セラミックス基板11は構成されている。
【0012】次に、金属薄膜積層セラミックス基板11
の製造方法を説明する。まず、Al23 からなるセラ
ミックス基板12の表面に化学蒸着法または物理蒸着法
によってSiO2 膜13を0.05μm形成し、SiO
2 膜13の上に化学蒸着法または物理蒸着法により、化
学的活性度が高くSiO2 と反応しやすいTiを用いて
第1金属薄膜層14を0.1μm形成する。このときS
iO2 膜13は下層のAl23 からなるセラミックス
基板12と上層のTiからなる第1金属薄膜層14とそ
れぞれ反応して金属間化合物を作る。第1金属薄膜層1
4上に化学蒸着法または物理蒸着法により、第1金属薄
膜層14が第3金属薄膜層16ににじみださないように
するため、バリアーとなるNiを用いて第2金属薄膜層
15を0.2μm形成し、この第2金属薄膜層15の上
に化学蒸着法または物理蒸着法により、導通抵抗の良い
Auを用いて第3金属薄膜層16を0.2μm形成す
る。この後、導通効果を上げ、多目的に利用できるよう
にするためのメッキ膜層17を化学メッキ法によって第
3金属薄膜層16と同種の金属を用いて3〜4μm形成
する。
【0013】ここでSiO2 膜13の厚さは0.01〜
0.1μm、第1金属薄膜層14の厚さは0.1〜0.
2μm、第2金属薄膜層15の厚さは0.1〜0.3μ
m、第3金属薄膜層16の厚さは0.1〜1.0μm、
メッキ膜層17の厚さは3〜4μmに設定するのが望ま
しい。第1金属薄膜層14からメッキ膜層17までの膜
厚については、微細回路配線を形成し、ICパッケージ
に使用することを目的とした場合に望ましい値を示した
が、目的により任意の値に変化させて対応することがで
きる。
【0014】セラミックス基板12としては酸化物系セ
ラミックス、本実施例ではAl23 を用い、第1金属
薄膜層14にはTi、Zrなどの周期表第4A族から選
んだ少なくとも1種類以上の元素を用いることができる
他、Crを用いても良い。第2金属薄膜層15にはM
o、Crなどの周期表第6A族から選んだ少なくとも1
種類以上の元素あるいはNiを用いることができるが、
第1金属薄膜層14にCrを用いた場合にはCrを用い
ることはできない。第3金属薄膜層16にはCu、A
g、Auなどの周期表第1B族から選んだ少なくとも1
種類以上の元素を用いることができる。このように第1
金属薄膜層14から第3金属薄膜層16までの接する各
層には違う種類の金属を用いる。
【0015】物理蒸着法には一般的な公知の方法を用い
ることができ、たとえば真空蒸着法、イオンビーム蒸着
法あるいはスパッタリング法等が挙げられ、これらは材
質及び膜厚を自由に選定できるという特徴を有してい
る。また、最上層形成のための化学メッキ法にも一般的
な公知の方法を用いることができ、例えば電解メッキ
法、無電解メッキ法等が挙げられる。
【0016】下記の表1、2及び3は上記実施例1及
び、上記実施例1における金属薄膜積層体18を構成す
る金属の種類を変えて作製した別の実施例に係る金属薄
膜積層セラミックス基板と、これら各実施例におけるS
iO2 膜を介在させない比較例に係る金属薄膜積層セラ
ミックス基板における膜密着強度の測定結果を示してい
る。該膜密着強度の測定結果はピール試験を行なう通常
の場合と、+150℃/−60℃の熱サイクルを各30
分、昇温降温速度10℃/分で200サイクル行なった
後42アロイピン21またはNiリード線22を接合し
てピール試験を行なった(表では熱サイクル後と示す)
場合とを示している。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】表1に示した実施例及び比較例のものでは
第3金属薄膜層16とメッキ膜層17とにAuを用いて
おり、この場合のピール試験による膜密着強度測定方法
1は図2に示すように実施した。まず、金属薄膜積層セ
ラミックス基板11上の端部に42%Ni−Fe合金
(ピン幅100μm、ピン厚み150μm)にAuの4
〜5μm厚のメッキを施したピン(以下42アロイピン
21と称する)をのせ、金属薄膜積層セラミックス基板
11を300〜330℃に加熱し、500℃前後に加熱
されたツールで、加圧力1500gf/ピン程度で熱圧
着させ、両者を接合する。これはAuとAuとの固相拡
散と、Auの再結晶を利用した接合方法である。次に、
金属薄膜積層セラミックス基板11の42アロイピン2
1接合側端部及び42アロイピン21の一端部を固定
し、42アロイピン21の接合側端部近傍を毎分10m
mの速度で上方に引っ張り、1本毎に垂直に破断してゆ
き、破断したときの強度を膜密着強度とした。また、表
2に示した実施例及び比較例のものでは第3金属薄膜層
16とメッキ膜層17とにAgを、表3に示した実施例
及び比較例のものではCuを用いており、表2と表3の
場合のピール試験による膜密着強度測定方法2は図3に
示すように実施した。まず、金属薄膜積層セラミックス
基板11上に直径約1mmのNiリード線22をハンダ
付けし、次にピン1本毎に毎分10mmの速度で垂直方
向に引っ張って破断し、破断したときの強度を膜密着強
度とした。
【0021】また、セラミックス基板12とSiO2
13との間、及びSiO2 膜13と第1金属薄膜層14
との間において金属間化合物が形成されていることを界
面のX線分析により確認した。
【0022】表1、2及び3から明らかなように、比較
例1〜18のものでは通常の膜密着強度が2kg/mm
2 以上の値を示しても、熱衝撃信頼性試験後に膜密着強
度を測定すると強度が劣化し、2kg/mm2 以上の値
を得られなくなるものがあることが認められた。他方、
実施例1〜18のものでは熱衝撃信頼性試験後も安定し
た強度を示し、薄膜金属間で多少の化学反応が進行した
ために強度が低下したと考えられる場合でも、膜密着強
度は目的の2kg/mm2 以上の値を得ることができ
た。
【0023】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る金属薄
膜積層セラミックス基板にあっては、酸化物系セラミッ
クス基板上に金属薄膜が複数層積層された金属薄膜積層
セラミックス基板において、前記酸化物系セラミックス
基板と金属薄膜積層体との間に、前記酸化物系セラミッ
クス基板よりも大きな標準生成自由エネルギーを有す
る、膜密着強度を高めるための酸化物系絶縁膜が介在さ
せられているので、強固で再現性の良い膜密着強度を有
する前記金属薄膜積層体を形成することができる。
【0024】また本発明に係る金属薄膜積層セラミック
ス基板の製造方法にあっては、酸化物系セラミックス基
板上に酸化物系絶縁膜を蒸着法により形成し、この後金
属薄膜層を蒸着法により形成するので、強固で再現性の
良い膜密着強度を有し、酸化物系セラミックス基板上に
薄膜の微細回路配線を有するICパッケージ等に利用で
きる金属薄膜積層セラミックス基板を容易に、確実に製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金属薄膜積層セラミックス基板の
実施例1を示した模式的断面図である。
【図2】ピール試験による膜密着強度測定方法1を示し
た部分斜視図である。
【図3】ピール試験による膜密着強度測定方法2を示し
た斜視図である。
【図4】酸化物の標準生成自由エネルギー温度曲線を示
したグラフである。
【符号の説明】
11 金属薄膜積層セラミックス基板 12 セラミックス基板 13 SiO2 膜(酸化物系絶縁膜) 18 金属薄膜積層体
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 3/46 H01L 23/14 H05K 3/38

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物系セラミックス基板上に金属薄膜
    が複数層積層された金属薄膜積層セラミックス基板にお
    いて、前記酸化物系セラミックス基板と金属薄膜積層体
    との間に、前記酸化物系セラミックス基板よりも大きな
    標準生成自由エネルギーを有する、膜密着強度を高める
    ための酸化物系絶縁膜が介在させられていることを特徴
    とする金属薄膜積層セラミックス基板。
  2. 【請求項2】 酸化物系セラミックス基板上に酸化物系
    絶縁膜を蒸着法により形成し、この後金属薄膜層を蒸着
    法により形成することを特徴とする請求項1記載の金属
    薄膜積層セラミックス基板の製造方法。
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