JP3430151B2 - 温度プローブおよび熱物性測定装置ならびに熱物性測定方法 - Google Patents

温度プローブおよび熱物性測定装置ならびに熱物性測定方法

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JP3430151B2
JP3430151B2 JP2000401893A JP2000401893A JP3430151B2 JP 3430151 B2 JP3430151 B2 JP 3430151B2 JP 2000401893 A JP2000401893 A JP 2000401893A JP 2000401893 A JP2000401893 A JP 2000401893A JP 3430151 B2 JP3430151 B2 JP 3430151B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被測定物の物性と
して、例えば固体物質の熱物性を調べるための温度プロ
ーブ、およびこの温度プローブを備えた熱物性測定装
置、ならびにこの熱物性測定装置を用いた熱物性測定方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】測定対象である固体物質からなる被測定
物体の熱物性を調べるためには、一般的に、その被測定
物体の熱伝導率、熱拡散率、および比熱容量のいわゆる
固体熱3定数を測定し、この固体熱3定数を所定の理論
モデルを用いて解析することによって、被測定物体の熱
物性を特定する方法が知られている。固体熱3定数を測
定する方法は、JISに規定された平板比較法、あるい
はレーザーフラッシュ法によるのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】平板比較法において
は、信頼性の高い測定結果を得るために、測定用試料と
して被測定物体をその縦×横×高さの各寸法が約200
mm×200mm×20mmの大きさからなる略直方体
形状に形成する必要がある。しかし、被測定物体の材質
によっては、そのような大きさおよび形状の測定用試料
を形成することが困難なものもある。また、実際に製品
化目的のために成型された小型のLSIや半導体パッケ
ージなどと、前述した大きさおよび形状に成型された測
定試料用とでは、同じ物質あるいは材料で成型されたと
しても、固体熱3定数が異なっているおそれもある。ま
た、平板比較法においては、信頼性の高い測定結果を得
るために、安定した測定条件(測定環境)を維持しつ
つ、その下で測定する必要があり、前述した大きさおよ
び形状に成型された測定試料用を測定するには、一般的
には測定時間が8時間以上掛かってしまう。したがっ
て、測定作業の効率が極めて悪い。さらに、平板比較法
に用いられる測定装置は大型で重いので取り扱い難く、
実験室や作業現場などでの簡易性および迅速性を要求さ
れるような測定、いわゆるその場測定には不向きであ
る。
【0004】一方、レーザーフラッシュ法においては、
真空中で装置全体が温度管理された環境下において、サ
ファイア針に支持された被測定試料にレーザーを照射
し、試料の温度変化を赤外放射温度計により非接触で温
度測定を行う。したがって、このレーザーフラッシュ法
による測定で直接求めることができるのは、固体熱3定
数のうち熱拡散率だけであり、比熱および熱伝導率を測
定で正確に求めるのは困難である。また、レーザーフラ
ッシュ法では、試料が高温になるので、プラスティック
などの溶け易い素材では測定が困難である。また、レー
ザーフラッシュ法では、金属材料など材料表面がレーザ
ー光線を反射し易い素材、あるいはレーザー光線が透過
し易い透明な素材には適用が困難である。これらの場
合、素材の表面にグラファイトコーティングなどを施し
て、素材がレーザー光線を吸収し易くする必要がある。
さらに、レーザーフラッシュ法に用いられる測定装置
は、操作法も難しく、大型で可搬し難く、かつ、高価な
ので容易に常備できるものではない。
【0005】また、走査型原子間力顕微鏡を用いて固体
物質の熱物性を調べる方法もあるが、その測定の際に発
生する温度が1000℃程度になり、これに対して測定
に必要な熱量の温度差が小さくなるように制御しつつ測
定することは困難である。
【0006】近年、産業界においては、種々のプラステ
ィック材料や、あるいはセラミック材料などからなる新
素材が研究および開発されている。それら新素材の熱物
性の分布状態などを調べるために、前述した固体熱3定
数を簡易に測定する装置および方法が求められている。
【0007】よって、本発明が解決しようとする課題
は、被測定物体の材料、形状、および大きさなどに拘ら
ず、固体熱3定数を高い精度で容易に測定可能な温度プ
ローブ、およびこの温度プローブを備えており、取り扱
いが容易で、かつ、安価な熱物性測定装置、ならびにこ
の熱物性測定装置を用いた熱物性測定方法を得ることに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、請求項1に記載の発明に係る温度プローブは、所定
の温度に設定され、被測定物体と接触して熱的擾乱を与
え、その温度応答を感知する感温部を有する温度セン
サ、およびこの温度センサを内部に収納するセンサケー
スを備えるプローブ本体と、このプローブ本体の外側に
設けられて、前記温度センサを含む前記プローブ本体の
熱容量を補完する熱容量補完部材と、を具備することを
特徴とするものである。
【0009】この発明の温度プローブにおいては、温度
センサが、熱容量補完部材から供給される所定量の熱を
用いて、感温部を介して被測定物体に熱的擾乱を与える
とともに、その温度応答を感知することができる。これ
により、被測定物体の熱的擾乱の発生条件を揃えて定量
的に比較できるとともに、被測定物体の温度変化を測定
する必要をなくすことができる。また、温度プローブの
構成を単純にできる。
【0010】また、前記課題を解決するために、前記請
求項1の発明を実施するにあたり、この発明に従属する
請求項2に記載の発明に係る温度プローブのように、前
記感温部と前記被測定物体とが互いに点接触するよう
に、前記感温部を略球形状に形成した構成とするとよ
い。
【0011】この発明の温度プローブにおいては、感温
部を略球形状に形成して、感温部と前記被測定物体とが
互いに点接触するようにした。これにより、被測定物体
の形状による感温部と被測定物体との接触状態の制約を
低減できる。
【0012】また、前記課題を解決するために、前記請
求項1または2の発明を実施するにあたり、これらの発
明に従属する請求項3に記載の発明に係る温度プローブ
のように、前記プローブ本体に、前記温度センサの温度
を調節可能なセンサ温度調節手段を設けた構成とすると
よい。
【0013】この発明の温度プローブにおいては、セン
サ温度調節手段を設けて温度センサの温度を調節可能と
したので、温度センサの温度を、被測定物体の材料に応
じて、その熱物性を調べるのに適した値に設定できる。
【0014】また、前記課題を解決するために、前記請
求項1〜3のうちのいずれか1つの発明を実施するにあ
たり、これらの発明に従属する請求項4に記載の発明に
係る温度プローブのように、前記温度プローブの周囲
に、前記感温部が突没自在な感温部突出口を有する断熱
材を設けた構成とするとよい。
【0015】この発明の温度プローブにおいては、温度
プローブを断熱材で囲むとともに、感温部を突出可能と
したので、感温部を、これに溜まった熱が外気の対流な
どによって乱されるなどしてその温度が不安定になるの
を抑制しつつ、被測定物体に接触させることができる。
【0016】また、前記課題を解決するために、請求項
5に記載の発明に係る熱物性測定装置は、前記請求項1
〜4のうちのいずれか1項に記載の温度プローブと、こ
の温度プローブが備える温度センサに熱を供給して所定
の温度に設定する熱供給装置と、前記温度プローブの感
温部が感知した前記被測定物体の温度応答を測定して解
析する測定解析装置と、前記温度プローブと、前記熱供
給装置または前記測定解析装置との接続を排他的に切り
換える切り換え装置と、を具備することを特徴とするも
のである。
【0017】この発明の熱物性測定装置においては、前
記請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の温度プロ
ーブを用いるとともに、この温度プローブと熱供給装置
または測定解析装置との接続を切り換え装置によって排
他的に切り換えることができるので、安定した状態で被
測定物体に熱的擾乱を与えることができるとともに、そ
の温度応答を測定できる。
【0018】また、前記課題を解決するために、前記請
求項5の発明を実施するにあたり、この発明に従属する
請求項6に記載の発明に係る熱物性測定装置のように、
前記温度プローブを、これが有する感温部を前記被測定
物体に対して所定の向きから所定の圧力で接触させる接
触装置上に設けた構成とするとよい。
【0019】この発明の熱物性測定装置においては、接
触装置を操作することにより、感温部を被測定物体に対
して所定の向きから所定の圧力で接触させることができ
るので、感温部と被測定物体との接触状態による接触熱
抵抗の影響を受け難くできる。
【0020】また、前記課題を解決するために、前記請
求項6の発明を実施するにあたり、この発明に従属する
請求項7に記載の発明に係る熱物性測定装置のように、
前記接触装置は、前記温度プローブがその感温部を突出
されて支持されるプローブ支持体、このプローブ支持体
に対して突没自在に設けられて、前記感温部をその外側
から囲むように前記プローブ支持体から突出する向きに
付勢されるとともに、前記感温部が前記被測定物体に接
触する際に前記プローブ支持体の内部に没入する感温部
カバー、およびこの感温部カバーを前記プローブ支持体
から突出する向きに付勢するとともに、前記感温部が前
記被測定物体に接触する際の圧力を所定の大きさに保持
する圧力調節手段を備える構成とするとよい。
【0021】この発明の熱物性測定装置においては、圧
力調節手段を用いて感温部を被測定物体に対して所定の
向きから所定の圧力で接触させることができるととも
に、感温部カバーにより感温部を外部から保護できるの
で、感温部を適正な状態で測定に使用できる。
【0022】また、前記課題を解決するために、前記請
求項7の発明を実施するにあたり、この発明に従属する
請求項8に記載の発明に係る熱物性測定装置のように、
前記プローブ支持体は剛体により形成されているととも
に、前記感温部カバーは断熱材により形成されている構
成とするとよい。
【0023】この発明の熱物性測定装置においては、プ
ローブ支持体を剛体で形成するとともに、感温部カバー
を断熱材により形成したので、感温部が被測定物体に接
触する際の圧力を均一に保持し易いとともに、測定する
際の感温部の温度が乱れるのを抑制できる。
【0024】また、前記課題を解決するために、前記請
求項4または5の発明を実施するにあたり、これらの発
明に従属する請求項9に記載の発明に係る熱物性測定装
置のように、前記温度プローブは、前記感温部が前記被
測定物体に接触しつつ、その外形に沿って移動可能に設
けられている構成とするとよい。
【0025】この発明の熱物性測定装置においては、感
温部を被測定物体に接触させつつ、その外形に沿って移
動させることができるので、被測定物体の熱物性を二次
元的、あるいは三次元的に測定できる。
【0026】また、前記課題を解決するために、前記請
求項5〜9のうちのいずれか1つの発明を実施するにあ
たり、これらの発明に従属する請求項10に記載の発明
に係る熱物性測定装置のように、前記温度プローブおよ
び前記被測定物体は、前記被測定物体の温度応答を測定
する際の環境を所定の状態に設定して保持可能な測定室
の内部に配置される構成とするとよい。
【0027】この発明の熱物性測定装置においては、温
度プローブおよび被測定物体は、測定環境を所定の状態
に設定して保持可能な測定室の内部に配置されるので、
測定に適した安定した状態で測定できる。
【0028】また、前記課題を解決するために、前記請
求項10の発明を実施するにあたり、この発明に従属す
る請求項11に記載の発明に係る熱物性測定装置のよう
に、前記測定室内を真空状態に設定して保持可能な真空
装置を備える構成とするとよい。
【0029】この発明の熱物性測定装置においては、真
空装置によって測定室内を真空状態に設定して保持でき
るので、外気の対流などによる感温部と被測定物体との
間の熱移動の乱れを殆どなくすことができるとともに、
低温域における測定に適する。
【0030】前記課題を解決するために、請求項12に
記載の発明に係る熱物性測定方法は、前記請求項1〜4
のうちのいずれか1項に記載の温度プローブを所定の温
度に設定させ、これを被測定物体に点接触させて熱的擾
乱を与え、その温度応答を前記温度プローブが備える温
度センサの温度変化として測定し、これら測定した温度
応答のデータを無次元化して測定無次元温度とし、これ
ら測定無次元温度を所定の精度を得ることができる条件
で測定時間のマイナス2分の1乗の1次関数として近似
して熱伝導率比および熱浸透率比を求め、これら熱伝導
率比および熱浸透率比を用いて前記測定無次元温度と理
論的に求めた理論無次元温度との相対誤差の時間平均値
を求め、この相対誤差の時間平均値が最小となる熱伝導
率、熱拡散率、および比熱容量を前記被測定物体の固体
熱3定数とすることを特徴とするものである。
【0031】この発明の熱物性測定方法においては、
求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の温度プローブ
を被測定物体に点接触させることによって被測定物体へ
熱的擾乱を与えるとともに、その温度応答を温度プロー
ブが備える温度センサの温度変化として測定する。これ
により、被測定物体の温度変化を測定する必要がなくな
とともに、温度プローブと被測定物体との間の熱伝導
において、部分的接触に起因する接触熱抵抗などの影響
を受け難くできる。また、測定の可否が被測定物体の形
状に依存するおそれを抑制できる。
【0032】前記課題を解決するために、請求項13に
記載の発明に係る熱物性測定装置は、前記請求項1〜4
のうちのいずれか1項に記載の温度プローブを所定の温
度に設定する手段と、前記温度プローブを被測定物体に
点接触させて熱的擾乱を与える手段と、そのときの温度
プローブの温度応答を前記温度プローブが備える温度セ
ンサの温度変化として測定する手段と、これら測定した
温度応答のデータを無次元化して測定無次元温度データ
に変換する手段と、これら測定無次元温度データを所定
の精度を得ることができる条件で測定時間のマイナス2
分の1乗の1次関数として近似して熱伝導率比および熱
浸透率比を求める手段と、これら熱伝導率比および熱浸
透率比を用いて前記測定無次元温度と理論的に求めた理
論無次元温度との相対誤差の時間平均値を求める手段
と、この相対誤差時の間平均値が最小となる熱伝導率、
熱拡散率、および比熱容量を前記被測定物体の固体熱3
定数として求める手段と、を具備することを特徴とする
ものである。
【0033】この発明の熱物性測定装置においては、
求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の温度プローブ
を被測定物体に点接触させることによって被測定物体へ
熱的擾乱を与える手段を具備するとともに、そのときの
温度応答を温度プローブが備える温度センサの温度変化
として測定する手段とを具備する。これにより、被測定
物体の温度変化を測定する手段必要がなくなるととも
に、温度プローブと被測定物体との間の熱伝導におい
て、部分的接触に起因する接触熱抵抗などの影響を受け
難くできる。また、測定の可否が被測定物体の形状に依
存するおそれを抑制できる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施の形態
に係る温度プローブ、およびこの温度プローブを備えた
熱物性測定装置、ならびにこの熱物性測定装置を用いた
熱物性測定方法を、図1〜図4に基づいて説明する。
【0035】本実施形態の温度プローブ1は、図1
(a)〜(c)に示すように、温度センサ4、およびこ
の温度センサ4を内部に収納するセンサケース6を備え
るプローブ本体2と、このプローブ本体2の外側に設け
られる熱容量補完部材3とを具備している。
【0036】本実施形態においては、温度センサとして
熱電対4が用いられている。熱電対4は検定された品位
を容易に実現できる利点がある。この熱電対4は、一方
の熱電対素線に直径50μmのクロメル線4aを用い、
他方の熱電対素線に同じく直径50μmのアルメル線4
bを用いたクロメル−アルメル熱電対4(以下、熱電対
4と略称する。)とする。この熱電対4は、クロメル線
4aおよびアルメル線4bのそれぞれの一端部を感温部
5として溶接されることにより一体に形成される。この
際、感温部5は被測定物体19に対して実質的に点接触
できるように、略球形状に形成される。また、感温部5
を略球形状に形成することにより、後述する測定データ
の解析の際に、球座標系への適用(モデル化)が容易に
なり、計算し易くなる。また、感温部5を略球形状に形
成することは、溶接により容易に実現できる。さらに、
感温部5を略球形状に形成することにより、ジュール熱
効果による発熱作用を促し、この熱を蓄熱して測定の際
のセンサ側熱供給源とする。
【0037】熱電対4は、センサケース6のうち、内側
に配置される内側センサケースとしての直径0.8m
m、長さ12mmのセラミックシース6a内に収納され
る。セラミックシース6aには、その両端部を連通する
ように、その内部を長手方向に沿って延ばされて図示し
ない2本の平行な孔が設けられている。熱電対4は、ク
ロメル線4aおよびアルメル線4bをそれら2本の孔の
内部に挿入されることにより、セラミックシース6aに
収納される。この際、熱電対4は、感温部5がセラミッ
クシース6aの一端部から2mm程度突出するように配
置されて、セメントなどによりセラミックシース6aに
固着される。熱電対4が内部に固着されたセラミックシ
ース6aは、センサケース6のうち、外側に配置される
外側センサケースとしての内径1.0mm、外径1.2
mm、長さ10mmのステンレスシース6b内に挿入さ
れて収納される。クロメル線4aおよびアルメル線4b
の感温部5が設けられている側とは反対側の端部から
は、それらを後述する熱供給装置10や測定解析装置1
1などに接続するための導線7が延出されている。セラ
ミックシース6aはセメントなどによりステンレスシー
ス6bに固着される。
【0038】以上説明したように、プローブ本体2は、
図1(a)に示すように、クロメル線4aおよびアルメ
ル線4bから構成される熱電対4、セラミックシース6
aおよびステンレスシース6bから構成されるセンサケ
ース6などから構成されている。
【0039】このプローブ本体2の外側には、熱電対4
が発生した熱を蓄えるとともに、この蓄えられた熱を感
温部5が後述する被測定物体19に接触する際に熱電対
4に所定量ずつ供給してプローブ本体2の熱容量を補完
する熱容量補完部材としての蓄熱スリーブ3が設けられ
る。この蓄熱スリーブ3は、例えば熱伝導に優れる銅製
であることが好ましい。この蓄熱スリーブ3は、図1
(b)および(c)に示すように、感温部5の付近に配
置されて、熱電対4が発生した熱を所定量蓄えるととも
に、その蓄えられた所定量の熱を熱電対4の感温部5に
供給する熱蓄積供給部3a、この熱蓄積供給部3aより
も感温部5から離間されて配置され、熱蓄積供給部3a
が蓄え切れなかった熱電対4が発生した熱を蓄えて、熱
電対4および蓄熱スリーブ3の温度を所定の温度に保持
する熱平衡部3b、この熱平衡部3bと熱蓄積供給部3
aとの間に設けられ、熱平衡部3bと熱蓄積供給部3a
との間の熱の移動量を規制する熱抵抗ギャップ部3cか
ら構成されている。感温部5が被測定物体19に接触し
て、熱蓄積供給部3aから感温部5に熱が供給される
と、熱平衡部3bに蓄えられている熱が熱蓄積供給部3
aに供給される。これにより、次回の測定に対して測定
に必要な所定量の熱を、迅速に熱蓄積供給部3aに蓄え
ることができる。すなわち、熱電対4の感温部5から至
近距離に熱蓄積供給部3aを設け、センサとしての熱電
対4に電力を供給する際にジュール熱効果により発生す
る熱を熱蓄積供給部3aに蓄積して測定の際のセンサ側
熱供給源とする。
【0040】蓄熱スリーブ3には、図1(b)に示すよ
うに、その両端部を連通するように、その内部を長手方
向に沿って延ばされて、プローブ本体2が挿入されるプ
ローブ挿入孔8が設けられている。プローブ本体2は、
このプローブ挿入孔8に挿入されることによって蓄熱ス
リーブ3とともに温度プローブ1を構成する。
【0041】以上説明した温度プローブ1は、熱電対4
が被測定物体19に熱的擾乱を与える程度の温度に設定
され、それ以上大幅に温度を変化させて設定することが
できない、いわゆるスタティック型のスタティックプロ
ーブ1として構成されている。また、このスタティック
プローブ1は、プローブ本体2のみならず、蓄熱スリー
ブ3、ならびにセラミックシース6aおよびステンレス
シース6bから構成されるセンサケース6まで含めて、
被測定物体19に熱的擾乱を与える熱供給源の単位ユニ
ットとして機能する。さらに、このスタティックプロー
ブ1は、蓄熱スリーブ3の熱容量を換えることにより、
その熱供給源の単位ユニットとして所定の範囲で熱容量
を変化させることができるので、その適用範囲が広い。
【0042】本実施形態の熱物性測定装置9は、図2に
示すように、温度プローブとしてのスタティックプロー
ブ1と、このスタティックプローブが備える熱電対4に
熱を供給して所定の温度に設定する熱供給装置としての
直流電源10と、スタティックプローブ1の感温部5が
感知した被測定物体19の温度応答を測定して解析する
測定解析装置11と、スタティックプローブ1と、直流
電源10または測定解析装置11との接続を排他的に切
り換える切り換え装置12とを具備している。
【0043】測定解析装置11は、スタティックプロー
ブ1が感知したアナログ信号としての被測定物体19の
温度応答の測定データをデジタル信号に変換するA/D
変換器13、このA/D変換器13によってデジタル信
号に変換された被測定物体19の温度応答の測定データ
を計測するデータ計測装置14、およびこのデータ計測
装置14が計測した測定データを解析する解析装置とし
てのコンピュータ15などから構成されている。
【0044】また、スタティックプローブ1と測定解析
装置11および直流電源10との間には、スタティック
プローブ1と測定解析装置11、あるいはスタティック
プローブ1と直流電源10との接続を排他的に切り換え
る切り換え装置12が設けられている。この切り換え装
置12は、スタティックプローブ1と直流電源10との
通電状態をオン状態にしたり、あるいはオフ状態にした
りするための電力供給側スイッチ16a、およびスタテ
ィックプローブ1と測定解析装置11との通電状態をオ
ン状態にしたり、あるいはオフ状態にしたりするための
測定解析側スイッチ16bから構成されるスイッチ部1
6を有している。
【0045】この切り換え装置12は、図示しない制御
部により、電力供給側スイッチ16aの通電状態と測定
解析側スイッチ16bの通電状態とが互いに逆の状態に
なるように制御されている。切り換え装置12は、例え
ば、図2に示すように、電力供給側スイッチ16aが実
線で示すように、その通電状態がオン状態となるように
設定されている間は、測定解析側スイッチ16bは実線
で示すように、その通電状態がオフ状態となるように設
定されている。これにより、スタティックプローブ1の
熱電対4は発熱し、その熱が蓄熱スリーブ3の熱蓄積供
給部3aに蓄えられる。スタティックプローブ1の感温
部5が被測定物体19の被測定面19aに点接触する際
には、電力供給側スイッチ16aが二点鎖線で示すよう
に、その通電状態がオフ状態となるように設定されると
ともに、測定解析側スイッチ16bは二点鎖線で示すよ
うに、その通電状態がオン状態となるように設定されて
いる。
【0046】以上説明したように、切り換え装置12
は、電力供給側スイッチ16aの通電状態と測定解析側
スイッチ16bの通電状態とが互いに逆の状態になるよ
うに制御されているので、直流電源10から測定解析装
置11までが、スタティックプローブ1を介して電気的
に閉じた回路を形成することはない。これにより、測定
解析装置11は、被測定物体19の温度応答を測定する
際に、蓄熱スリーブ3の熱蓄積供給部3aから熱電対4
に供給される所定量の熱による被測定物体19の熱的擾
乱の温度応答を測定できる。すなわち、測定解析装置1
1は、被測定物体19の熱的擾乱の温度応答を測定する
際に、他の熱的な雑音を電気信号として測定するおそれ
が殆どない。よって、本実施形態の熱物性測定装置9に
切り換え装置12を設けることにより、被測定物体19
の熱的擾乱の温度応答を高い精度で測定できる。
【0047】なお、図2に示されているスタティックプ
ローブ1は、図1に示されているスタティックプローブ
1のプローブ本体2を感温部5を除いて蓄熱スリーブ3
内に収納して構成したものである。また、図2に示すス
タティックプローブ1が備える図示しない熱電対の感温
部が設けられている側とは反対側の端部は、切り換え装
置12の電力供給側スイッチ16aに接続される入力側
端子17、および切り換え装置12の測定解析側スイッ
チ16bに接続される出力側端子18にそれぞれ接続さ
れている。この際、スタティックプローブ1の出力側端
子18と測定解析装置11の入力端子とは、それらを電
気的に接続している導線自体が有する抵抗による発熱な
どの熱的雑音を電気信号として拾わないようにするため
に、導線の長さとして少なくとも30cm以上離されて
接続されている。
【0048】また、図2に示されているスタティックプ
ローブ1は、図1に示されているスタティックプローブ
1のプローブ本体2を、複数本まとめるとともに、それ
らの感温部5を除いた部分を蓄熱スリーブ3内に収納し
て構成しても構わない。この場合においても、各プロー
ブ本体2と直流電源10または測定解析装置11との接
続を、切り換え装置12によって排他的に切り換えるこ
とができる設定にすることが好ましい。それとともに、
各プローブ本体2から送られてくる被測定物体19の温
度応答の測定データを、測定解析装置11によって各プ
ローブ本体2ごとに整理して収集および解析できる設定
とすることが好ましい。これにより、複数本のプローブ
本体2の各感温部5から構成される図示しない感温部ユ
ニットの大きさに対して、被測定物体19の被測定面1
9aが十分に広い場合には、被測定面19aが一様な平
面から構成されていなくとも、1回の測定で被測定面1
9a上の所定の範囲を実質的な面接触状態で調べること
ができる。したがって、被測定物体19の熱物性の分布
状態を短時間でより精密に調べることができる。しか
も、感温部ユニットの個々の感温部5は、被測定面19
aに対して、その面上の複数箇所でそれぞれ点接触でき
るので、各感温部5の測定精度(感度)が損なわれるお
それはない。
【0049】以上説明したように、プローブ本体2に蓄
熱スリーブ3が設けられたスタティックプローブ1、お
よび直流電源10または測定解析装置11との接続を排
他的に切り換える切り換え装置12を具備している熱物
性測定装置9は、以下に述べる利点を有している。
【0050】プローブ本体2に蓄熱スリーブ3を設ける
ことにより、熱電対4で発生した熱を蓄熱スリーブ3に
蓄積し、後述する熱物性測定方法における適正な測定デ
ータを得ることができるように、感温部5の温度を、被
測定物体19との温度差が20℃〜40℃程度となるよ
うに保持できる。これにより安定した状態で温度応答を
測定し、信頼性の高い固体熱3定数を得ることができ
る。また、予め様々な熱容量を有する蓄熱スリーブ3を
用意しておき、測定する被測定物体19の材質などに応
じて、プローブ本体2に付け替えることにより、適正な
測定データを得ることができる熱物性測定装置9を安価
に提供できる。1回の測定ごとにプローブ本体2への蓄
熱と、プローブ本体2からの放熱とを、切り換え装置1
2の切り換え操作、および熱電対4の熱容量だけで行う
場合に比べ、熱容量が不足するおそれが低く、蓄熱量が
略一定しているので計測の時間管理が行い易く、蓄熱と
放熱との切り換えを高速化できるとともに、その切り換
えを安定した状態で行わせることができる。さらに、熱
電対4は、一般に市販されている校正曲線の確定したも
のを容易に手に入れて使用できるので、その熱容量に合
わせて蓄熱スリーブ3の熱容量の最適化を容易に図るこ
とができ、高精度のスタティックプローブ1を容易に使
用できる。
【0051】被測定物体19の温度が常温よりも比較的
高温である場合、例えば、80℃である場合、被測定物
体19側からスタティックプローブ1側への熱の移動が
生じる。この際、スタティックプローブ1の熱電対4の
温度が60℃であれば、熱電対4の温度は60℃以上に
なる。これにより、所定の計測時間、例えば10秒間の
感温部5の温度上昇のカーブを生じさせて、その変化を
計測できる。熱電対4の熱容量が小さい場合、輻射熱な
どの影響によりその計測カーブは適正な状態を保持でき
なくなるおそれが生じるが、プローブ本体2に蓄熱スリ
ーブ3を設けることにより、単位ユニットとしてのスタ
ティックプローブ1の熱容量に余裕を持たせて、計測カ
ーブを適正な状態に保持できる。以上説明した異なる熱
容量からなる蓄熱スリーブ3のプローブ本体2への付け
替え、および切り換え装置12の切り換え操作による熱
電対の発熱および蓄熱の切り換えを熱電対センシング切
り換え法と称する。
【0052】この熱物性測定装置9を用いた熱電対セン
シング切り換え法によれば、被測定物体19からの輻射
熱で感温部5と被測定物体19との点接触条件が乱さ
れ、適正な状態での計測が困難になるおそれがある場合
でも、蓄熱スリーブ3の付け替えにより、輻射熱の影響
を著しく低減させることができる。つまり、感温部5と
被測定物体19との間の熱の移動の殆どを、点接触によ
る熱移動とすることができる。
【0053】このように、単純な構造であるとともに容
易に付け替え可能な蓄熱スリーブ3を用いることによ
り、適正な測定環境が乱されるおそれを極めて効果的に
低減できる。
【0054】本実施形態の熱物性測定方法は、図2に示
す熱物性測定装置9を用いて測定された被測定物体19
の温度応答の測定データを、所定の理論モデルに基づい
て解析することにより、被測定物体19の固体熱3定数
である熱伝導率λ、熱拡散率a、および比熱容量
(ρc=ξ /λを求めるものである。具体
的には、被測定物体19の温度応答の測定データを、図
3に示すフローチャートに表される、前述した理論モデ
ルに基づくアルゴリズムに従って、コンピュータ15を
用いて解析することにより前述した固体熱3定数は求め
られる。なお、以下の説明において、熱物性測定装置9
が具備するスタティックプローブ1の感温部5の熱物性
値bはプローブ定数として既知であるとする。
【0055】被測定物体19の材料に合わせて、直流電
源10により所定の温度に設定されたスタティックプロ
ーブ1の温度センサの感温部5を、被測定物体19に点
接触させて熱的擾乱を与え、その温度応答をスタティッ
クプローブ1の温度センサの温度変化のデータとして測
定する。この際、被測定物体19の温度応答の測定デー
タは、コンピュータ15による解析が行い易いように、
A/D変換器13によってデジタル信号に変換された
後、データ計測装置14に保存される。このようにして
保存された測定データは、前述したアルゴリズムに従っ
てコンピュータ15によって解析される。以下、そのア
ルゴリズムを与える解析理論モデルを説明する。
【0056】まず、被測定物体19の温度応答の測定デ
ータを無次元化する。スタティックプローブ1の先端で
ある感温部5は、前述したように略球形状に形成されて
おり、被測定物体19とは見かけ上点接触状態にある。
感温部5と被測定物体19とは、その微小接触面積を通
して熱移動が起こる。つまり感温部5と被測定面19a
との接触点から被測定物体19の内部に放射状に熱伝導
が生ずるとみなす。ここで、感温部5と被測定面19a
との微小接触面の一点を中心として設定し、この中心か
ら球形状に広がる微小接触界面(半径r)を考える。
そして、この微小接触界面から、感温部5および被測定
面19aのそれぞれの内部に向かって、放射状に温度伝
播が起こると考える。この場合、感温部5および被測定
面19aのそれぞれの内部に置ける温度伝播の支配方程
式は、前述した微小接触界面の外側、すなわちr>r
で、以下に示す2式(1)および(2)によって表され
る。
【0057】なお、以下に説明する各式において、添字
としてpが添付されているものはスタティックプローブ
1に関するもの、添字としてsが添付されているものは
サンプル、すなわち被測定物体19に関するものをそれ
ぞれ表すこととする。
【0058】
【数1】
【0059】
【数2】
【0060】上記2式(1)および(2)において、 T:スタティックプローブ1の感温部5の温度 a:スタティックプローブ1の感温部5の熱拡散率 T:被測定物体19の感温部5の温度 a:被測定物体19の熱拡散率 である。
【0061】また、感温部5と被測定面19aとの微小
接触面における温度と熱流との連続条件は、以下に示す
2式(3)および(4)によって表される。
【0062】
【数3】
【0063】
【数4】
【0064】上記式(4)において、 λ:スタティックプローブ1の感温部5の熱伝導率 λ:被測定物体19の熱伝導率 である。
【0065】また、初期条件および境界条件は、 Tp0:スタティックプローブ1の感温部5の初期温度 Ts0:被測定物体19の感温部5の初期温度 とすると、以下に示す4式(5)〜(8)によって表さ
れる。
【0066】
【数5】
【0067】
【数6】
【0068】
【数7】
【0069】
【数8】
【0070】また、 T :感温部5の感温点位置r=r(>r)にお
ける無次元温度 とすると、このT は、以下に示す式(9)によって
表される。
【0071】
【数9】
【0072】前記各式(1)〜(8)を解くと、式
(9)によって表されるT は、以下に示す式(1
0)によって表される。
【0073】
【数10】
【0074】ここで、各パラメータを以下に示す式(1
1)〜(15)のように置いている。すなわち、
【数11】
【0075】
【数12】
【0076】
【数13】
【0077】
【数14】
【0078】
【数15】
【0079】上記式(15)において、 ξ:スタティックプローブ1の感温部5の熱浸透率 ξ:被測定物体19の熱浸透率 である。
【0080】さらに、C/√t<<1なる時間帯におい
ては、式(10)は、以下に示す式(16)によって近
似することができる。
【0081】
【数16】
【0082】この時間帯で、実際に得られた温度応答か
ら以下に示す式(17)の係数A,Bを決める。
【0083】
【数17】
【0084】上記式(17)と式(16)とを係数比較
することにより、熱伝導率比βと熱浸透率比ζについ
て、以下に示す式(18)および(19)が得られる。
すなわち、
【数18】
【0085】
【数19】
【0086】ここで、スタティックプローブ1の感温部
5の熱物性値bは、以下に示す式(20)によって表さ
れる。
【0087】
【数20】
【0088】よって、ηおよびbの値がわかれば、式
(18)および(19)から熱伝導率比βおよび熱浸透
率比ζが算出できる。したがって、前述したように、ス
タティックプローブ1の感温部5の熱物性値bがプロー
ブ定数として既知であれば、被測定物体19の熱伝導率
λおよび被測定物体19の熱浸透率ξが求められ
る。よって、被測定物体19の固体熱3定数である熱伝
導率λ、熱拡散率a、および比熱容量(ρc
=ξ /λを得ることができる。
【0089】ηおよびbの値の決定方法について説明す
る。前記式(17)に示すように、感温部5の感温点位
置r=r(>r)における無次元温度T を1/
√tの1次関数として近似する場合、その近似領域を選
定するため、以下に示す式(21)で定義する相関係数
Rを計算する。
【0090】
【数21】
【0091】ここで、tは測定時間で、T piはそ
の時の無次元温度である。本測定においては、R>0.
99となる領域とした。その領域において係数A,Bが
決定されるので、任意のη,bを与えると、前記式(1
0)から理論温度応答曲線を描くことができる。そこ
で、実際の温度応答測定による無次元温度T と、そ
れに対応する測定時間における理論無次元温度T
Theoとの相対誤差E(t)を、以下に示す式(2
2)のように求める。
【0092】
【数22】
【0093】そして、全側定点におけるE(t)の平均
値が最も小さくなるようにη,bを決定する。
【0094】以上説明したように、測定された被測定物
体19の温度応答の測定データから、被測定物体19の
固体熱3定数である熱伝導率λ、熱拡散率a、およ
び比熱容量(ρc=ξ /λを算出するまで
の手順が、図3のフローチャートに示されている。
【0095】スタティックプローブ1の感温部5の熱物
性値bがプローブ定数として既知である場合には、図3
中二点鎖線で囲まれた部分の計算は行う必要がない。ま
た、スタティックプローブ1の感温部5の熱物性値bが
プローブ定数として既知でない場合には、例えば、固体
熱3定数が既知である被測定物体19を用いて被測定物
体19の温度応答を測定し、その測定データからスタテ
ィックプローブ1の感温部5の熱物性値bを逆算し、そ
の後、前述した被測定物体19の固体熱3定数を求める
作業を行えばよい。
【0096】以上説明した理論モデルによる測定データ
の解析結果を図4のグラフに示す。この図4のグラフ
は、熱物性の参照(標準)値が知られているJIS−S
US304ステンレス鋼を被測定物体19として、その
被測定面19aにスタティックプローブ1の感温部5を
微小面積の一点で点接触させて測定することにより得ら
れた測定データと、そのデータに基づいて理論解析した
結果得られた理論温度応答曲線とを示すものである。縦
軸にはスタティックプローブ1の感温部5の接触直前の
初期温度Tp0およびTs0によってスタティックプロ
ーブ1の感温部5の温度Tを無次元化した温度T
をとる。また、横軸には、接触後の時刻t秒の逆数の1
/2乗をとる。この際、スタティックプローブ1の感温
部5の初期温度を被測定物体19よりも約30℃高くし
た。
【0097】この図4のグラフによれば、スタティック
プローブ1の感温部5と被測定物体19の被測定面19
aとの接触直後を除いて、測定データが理論温度応答曲
線でよく近似されることがわかる。感温点位置および接
触面積は、図4中Xで示されている領域で求められる。
また、理論温度応答曲線は、図4中Yで示されている領
域で、相関係数R>0.99となる1次関数で近似さ
れ、この直線のy切片Aおよび傾きBを用いて固体熱3
定数が求められる。
【0098】以上説明した解析理論に基づく温度応答の
測定データの解析用のアルゴリズムをコンピュータ15
に備えている熱物性測定装置9は、熱物性がプローブ定
数として既知であるスタティックプローブ1を所定の温
度に設定する手段と、スタティックプローブ1を被測定
物体19に点接触させて熱的擾乱を与える手段と、その
ときのスタティックプローブ1の温度応答をスタティッ
クプローブ1が備える熱電対4の温度変化として測定す
る手段と、これら測定した温度応答のデータを無次元化
して測定無次元温度データに変換する手段と、これら測
定無次元温度データを所定の精度を得ることができる条
件で測定時間のマイナス2分の1乗の1次関数として近
似して熱伝導率比および熱浸透率比を求める手段と、こ
れら熱伝導率比および熱浸透率比を用いて測定無次元温
度と理論的に求めた理論無次元温度との相対誤差の時間
平均値を求める手段と、この相対誤差時の間平均値が最
小となる熱伝導率、熱拡散率、および比熱容量を被測定
物体19の固体熱3定数として求める手段と、を具備す
ることを特徴とするものである。
【0099】すなわち、熱物性測定装置9、およびこの
熱物性測定装置9を用いた熱物性測定方法は、センサ側
としてのスタティックプローブ1の熱容量に余裕をもた
せ、その感温部5を被測定物体19に点接触させた際の
感温部5の温度変化を測定し、これを利用して被測定物
体19の熱物性を解析することを特徴としている。
【0100】以上説明した構成および構造からなるスタ
ティックプローブ1、およびこのスタティックプローブ
1を備えた熱物性測定装置9、ならびにこの熱物性測定
装置9を用いた熱物性測定方法によれば、感温部5と被
測定物体19とを点接触させることにより、被測定物体
19の材料、形状、および大きさなどに拘らず、温度応
答を測定可能であるとともに、感温部5と被測定物体1
9との間の熱伝導において部分的接触に起因する接触熱
抵抗の影響を受け難くできる。これにより、固体熱3定
数を高い精度で容易に測定できる。また、構成が単純な
ので取り扱いが容易であるとともに、安価である。
【0101】次に、本発明の第2の実施の形態に係る温
度プローブ21、およびこの温度プローブ21を備えた
熱物性測定装置28を、図5〜図7に基づいて説明す
る。
【0102】この第2実施形態の温度プローブ21は、
熱電対4の温度を調節可能なセンサ温度調節手段22が
設けられているとともに、温度プローブ21の周囲に感
温部5が突没自在な感温部突出口27を有する断熱材2
5が設けられている点が、前述した第1実施形態の温度
プローブ1と異なっており、その他の構成、作用、およ
び効果は同様である。また、この第2実施形態の温度プ
ローブ21を備えた熱物性測定装置28は、温度プロー
ブ21を、その感温部5を被測定物体19に対して所定
の向きから所定の圧力で接触させる接触装置38上に設
けた点が、前述した第1実施形態の温度プローブ1を備
えた熱物性測定装置9と異なっており、その他の構成、
作用、および効果は同様である。よって、それらの異な
っている部分について説明するとともに、前述した第1
実施形態と同一の構成部分については同一符号を付して
その説明を省略する。
【0103】本実施形態の温度プローブ21には、図5
および図6に示すように、熱電対4の温度を調節可能な
センサ温度調節手段としてのマイクロヒータ22が2個
も設けられている。これら2個の第1ヒータ22aおよ
び第2ヒータ22bは、プローブ本体2の感温部5とは
反対側の端部において、セラミックシース6a、および
ステンレスシース6bをそれらの外側から周方向に沿っ
て囲むように直列接続されて設けられている。また、こ
の温度プローブ21には、それら第1ヒータ22aおよ
び第2ヒータ22bの発熱量を所定の大きさに設定する
図示しない制御部を有する基板から構成される支持部材
23が設けられている。第1ヒータ22aおよび第2ヒ
ータ22bからは、この支持部材23に沿ってヒータ用
導線24が延出されている。第1ヒータ22aおよび第
2ヒータ22bと、ヒータ用導線24とは、図5に示す
ように、それらの接合部においてアースされている。
【0104】以上説明した温度プローブ21は、第1ヒ
ータ22aおよび第2ヒータ22bにより熱電対4の温
度を所定の温度に調節可能な、いわゆるアクティブ型の
アクティブプローブ21として構成されている。また、
このスタティックプローブ1は、プローブ本体2のみな
らず、蓄熱スリーブ3、セラミックシース6aおよびス
テンレスシース6bから構成されるセンサケース6、な
らびに第1ヒータ22aおよび第2ヒータ22bまで含
めて、被測定物体19に熱的擾乱を与える熱供給源の単
位ユニットとして機能する。熱電対4と基板から構成さ
れる支持部材23とは、例えば半田で固着されるので、
熱損失は生じるが、これもプローブ定数に含まれる。ま
た、セラミックシース6aおよびステンレスシース6b
の一部と支持部材23とは、例えば固着用セメントで接
着されるが、その熱損失は少量なのでプローブ定数に含
まれる。
【0105】また、本実施形態のアクティブプローブ2
1には、図6に示すように、その周囲に感温部5が突没
自在な感温部突出口27を有する断熱材25が設けられ
ている。これにより、感温部5の被測定物体19への点
接触を妨げるおそれがないとともに、外気の対流による
感温部5への影響や、感温部5から輻射される輻射熱を
低減できる。感温部突出口27は、感温部5を被測定物
体19に点接触させる際に、被測定物体19に最も近づ
く断熱材25の一端面としての被測定物体側端面26を
貫通して設けられている。
【0106】本実施形態の熱物性測定装置28は、図7
示すように、アクティブプローブ21を、その感温部5
を被測定物体19に対して所定の向きから所定の圧力で
接触させる接触装置38上に設けた。この接触装置38
は、基台29と、この基台29に対して一対の第1ガイ
ド体32aおよび第2ガイド体32bからなるガイド体
32を介して所定の間隔を空けて配置され、アクティブ
プローブ21の動きを規制する規制体30と、アクティ
ブプローブ21が取り付けられるとともに、このアクテ
ィブプローブ21を一対の第1ガイド体32aおよび第
2ガイド体32bに沿って移動させるプローブ支持体3
1と、アクティブプローブ21を移動させる操作部34
と、この操作部34とプローブ支持体31とを接続する
接続体33とから構成されている。この接触装置38上
に設けられるアクティブプローブ21はその形状など
が、図5および図6に示すものの形状と若干異なってい
るが、その作用および効果は同じなので、その説明は省
略する。
【0107】アクティブプローブ21は基板からなる支
持部材23を介してプローブ支持体31お取り付けられ
る。この支持部材23には、熱供給装置とての電源3
5、第1ヒータ22aおよび第2ヒータ22bの作動状
態を管理するヒータユニット36などが取り付けられて
いる。また、ヒータユニット36とプローブ本体2との
間には、アクティブプローブ21を適正な状態で働かせ
るために、所定の温度に設定されたプローブ本体2に対
して、このプローブ本体2よりも所定の温度だけ低く設
定された冷接点39が設けられている。プローブ本体2
から延出された導線7は、ヒータユニット36に達する
前にこの冷接点39と接触する。
【0108】基台29の中央部には、これを貫通してア
クティブプローブ21が突没可能なプローブ収納孔37
が設けられている。また、基台29の一端部には、アク
ティブプローブ21の感温部5が突没自在な感温部突出
口27を有する断熱材25が設けられている。操作部3
4を図7中実線矢印で示す方向に移動させることによ
り、アクティブプローブ21のプローブ本体2を図7中
白抜き矢印で示す方向に移動させることができる。これ
により、アクティブプローブ21の感温部5を感温部突
出口27から突出させ、被測定物体19に対して所定の
向きから所定の圧力で点接触させて被測定物体19の温
度応答を測定できる。
【0109】この第2実施形態のアクティブプローブ2
1、およびこのアクティブプローブ21を備えた熱物性
測定装置28は、以上説明した点以外は、第1実施形態
の温度プローブ1、およびこの温度プローブ1を備えた
熱物性測定装置9と同じであり、本発明の課題を解決で
きるのはもちろんであるが、前述したように、アクティ
ブプローブ21にその熱電対4の温度を調節可能なマイ
クロヒータ22および断熱材25が設けるとともに、こ
のアクティブプローブ21をその感温部5が被測定物体
19に対して所定の向きから所定の圧力で接触できる接
触装置38上に設けたので、以下の点で優れている。
【0110】本実施形態のアクティブプローブ21は、
マイクロヒータ22を用いることにより、センサ温度調
節手段が熱電対4の測定精度に影響を与えるおそれを殆
ど無くすことができるとともに、温度設定などの制御も
容易になった。また、従来品と比べて、1/10に小型
化でき、重量比で1/30、電力比で1/100、およ
び著しい省エネルギー化で10倍以上の高精度測定が可
能になった。さらに、プリント基板を構造材として利用
したり、プリアンプや各種処理装置を取り付けるスペー
スを確保できたり、省スペース化およびコンパクト化を
図ることができた。ひいては、このアクティブプローブ
21を備えた熱物性測定装置28においても、10倍以
上の高精度測定が可能になった。
【0111】次に、本発明の第3の実施の形態に係る温
度プローブ41、およびこの温度プローブ41を備えた
熱物性測定装置44を、図8および図9に基づいて説明
する。
【0112】この第3実施形態の温度プローブ41は長
尺形状に形成されているとともに、この温度プローブ4
1を備えた熱物性測定装置44は、温度プローブ41の
感温部5が被測定物体19に接触する際の圧力を所定の
大きさに保持する圧力調節手段53を備えている点が、
前述した第1実施形態の温度プローブ1、およびこの温
度プローブ1を備えた熱物性測定装置9と異なってお
り、その他の構成、作用、および効果は同様である。よ
って、その異なっている部分について説明するととも
に、前述した第1実施形態と同一の構成部分については
同一符号を付してその説明を省略する。
【0113】本実施形態の温度プローブとしてのアクテ
ィブプローブ41は、図8に示すように、そのプローブ
本体2が断熱材25とともに、シャフト42の一端部に
設けられている。シャフト42の他端部には、このアク
ティブプローブ41を操作するための操作部43が設け
られている。
【0114】このアクティブプローブ41を備えた熱物
性測定装置44には、図9に示すように、アクティブプ
ローブ41を接触装置54に取り付けることにより構成
されている。接触装置54は、アクティブプローブ41
がその感温部5を突出されて支持されるプローブ支持体
45、このプローブ支持体45に対して突没自在に設け
られて、感温部5をその外側から囲むようにプローブ支
持体45から突出する向きに付勢されるとともに、感温
部5が被測定物体19に接触する際にプローブ支持体4
5の内部に没入する感温部カバー46、およびこの感温
部カバー46をプローブ支持体45から突出する向きに
付勢するとともに、感温部5が被測定物体19に接触す
る際の圧力を所定の大きさに保持する圧力調節手段とし
てのばね53を備えることを特徴とするものである。
【0115】また、プローブ支持体45は剛体により形
成されているとともに、感温部カバー46は断熱材によ
り形成されている。
【0116】アクティブプローブ41はその軸方向を、
プローブ支持体45の軸方向に揃えられて、プローブ支
持体45の中央部に設けられたプローブ取り付け孔47
に収納されて取り付けられる。アクティブプローブ41
はその全長が、感温部5がプローブ支持体45の支持体
被測定物体側端面49から所定の長さDだけ突出してい
る大きさに形成されている。感温部5の先端の位置をア
クティブプローブ原位置とする。感温部カバー46はそ
の軸方向を、プローブ支持体45の軸方向に揃えられ
て、プローブ取り付け孔47を囲むようにプローブ支持
体45に設けられた感温部カバー収納部48内に移動自
在に配置される。感温部カバー46は、その中央部に有
するばね係合部材52を介して、プローブ取り付け孔4
7内に収納されているばね53によってプローブ支持体
45から突出する向きに付勢されている。感温部カバー
46に外力が働いていない状態におけるカバー被測定物
体側端面50の位置を感温部カバー原位置とする。
【0117】感温部カバー46は、ばね53によってカ
バー被測定物体側端面50が支持体被測定物体側端面4
9から所定の大きさCだけ突出しているように付勢され
ている。このCの大きさは、感温部5がプローブ支持体
45の支持体被測定物体側端面49から突出している大
きさDよりも僅かに大きく設定されている。これによ
り、非測定時においては、感温部5は感温部カバー46
によって覆われている。また、測定時において、この熱
物性測定装置44をその支持体被測定物体側端面49側
から被測定物体19に押し付けると、感温部カバー46
はそのカバー被測定物体側端面50が支持体被測定物体
側端面49と同一面上に位置するまでプローブ支持体4
5の内部に押し込まれる。この位置を測定位置凹み限界
とする。この状態において、感温部5は、感温部カバー
46のカバー被測定物体側端面50を貫通して設けられ
ている感温部突出口51から突出して被測定物体19と
点接触できる。
【0118】この第3実施形態のアクティブプローブ4
1、およびこのアクティブプローブ41を備えた熱物性
測定装置44は、以上説明した点以外は、第1実施形態
の温度プローブ1、およびこの温度プローブ1を備えた
熱物性測定装置9と同じであり、本発明の課題を解決で
きるのはもちろんであるが、前述したように、アクティ
ブプローブ41を長尺形状に形成するとともに、このア
クティブプローブ41を備えた熱物性測定装置44は、
アクティブプローブ41の感温部5が被測定物体19に
接触する際の圧力を所定の大きさに保持するばね53を
備えているので、以下の点で優れている。
【0119】本実施形態のアクティブプローブ41、お
よびこのアクティブプローブ41を備えた熱物性測定装
置44においては、アクティブプローブ41の感温部5
を所定の向きから所定の圧力で容易に被測定物体19に
点接触させるアクティブプローブ簡易加圧機構を備えて
いるのと等しいので、固体熱3定数をより高い精度でよ
り容易に測定できる。また、感温部カバー46を断熱材
で形成したので、感温部5の周りの空気の対流を抑制で
きるとともに、感温部5からの熱の輻射も抑制できる。
さらに、プローブ支持体45の内部に、感温部5が被測
定物体19と点接触できる位置まで感温部カバー46が
押し込まれると、これを検知して測定解析装置11に測
定開始の信号としての測定開始トリガーを与える図示し
ない測定開始装置を設けても構わない。これにより、感
温部5の接触時間を特定できるとともに、各測定におけ
る測定時間のばらつきを抑制して、より高い精度で被測
定物体19の温度応答を測定できる。
【0120】次に、本発明の第4の実施の形態に係る熱
物性測定装置61を、図10〜図11に基づいて説明す
る。
【0121】図10に示す熱物性測定装置61は、これ
が具備する温度プローブ41の感温部5が被測定物体1
9に接触しつつ、その外形に沿って移動可能に設けられ
ているとともに、温度プローブ41および被測定物体1
9は、被測定物体19の温度応答を測定する際の環境を
所定の状態に設定して保持可能な測定室82の内部に配
置される点が、前述した第1実施形態の熱物性測定装置
9と異なっており、その他の構成、作用、および効果は
同様である。よって、その異なっている部分について説
明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部
分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0122】本実施形態の熱物性測定装置61は、図1
0に示すように、測定室82を形成する内側ケース6
6、この内側ケース66を外側から断熱的に囲む下部断
熱材64aおよび測定室82の開口すなわち内側ケース
66の開口を断熱的に閉じる上部断熱材64bからなる
断熱ケース64、下部断熱材64aを外側から囲む外側
下部ケース65aおよび上部断熱材64bの上から配置
される外側上部ケース65bからなる外側ケース65に
より形成されている。
【0123】熱物性測定装置61には、外側上部ケース
65b、上部断熱材64bを貫通して被測定物体19の
姿勢を所定の向きに保持する被測定物体ホルダ62が取
り付けられている。被測定物体ホルダ62は被測定物体
19を保持する被測定物体保持部72、被測定物体19
を被測定物体保持部72とともに所定の向きおよび位置
に設定するホルダ操作部74、このホルダ操作部74と
被測定物体保持部72とを接続するホルダシャフト73
から構成されている。被測定物体ホルダ62は、そのホ
ルダ操作部74をばね75によって上向きに付勢されて
いる。また、上部断熱材64bの内側における被測定物
体ホルダ62と上部断熱材64bとの接触部分の周りに
は、パッキン79が設けられている。ホルダ操作部74
を図10中矢印Fで示す向きに上下させることにより、
測定室82内の被測定物体19も図10中矢印Fで示す
向きに上下させることができる。
【0124】被測定物体保持部72に保持された被測定
物体19からは、その温度を測定する図示しない温度計
に接続される温度測定用導線78が延出されている。ま
た、被測定物体保持部72と被測定物体19との間に
は、被測定物体19を所定の温度に温める加熱装置76
が設けられ、ここから加熱装置用導線77が延出されて
いる。
【0125】熱物性測定装置61には、外側下部ケース
65a、下部断熱材64a、および内側ケース66をそ
れらの側方から貫通して温度プローブとしてのアクティ
ブプローブ41が設けられている。すなわち、アクティ
ブプローブ41は、その長手方向が、被測定物体ホルダ
62の長手方向に直行するように熱物性測定装置61に
設けられている。アクティブプローブ41は、内側ケー
ス66の内周壁に取り付けられた接触装置63に取り付
けられている。この接触装置63は、感温部5を所定の
位置に保持する複数本の調節ばね80、およびこれらの
ばね80を支持するばね支持部材81などから構成され
ている。また、内側ケース66の内側におけるアクティ
ブプローブ41と内側ケース66との接触部分の周りに
は、パッキン79が設けられている。操作部43を図1
0中矢印Eで示す向きに動かすことにより、測定室82
内の感温部5も被測定物体19に対して図10中矢印E
で示す向きに動かすことができる。
【0126】前述したように動かすことができる被測定
物体ホルダ62と、アクティブプローブ41とによっ
て、感温部5は被測定物体19の表面上を2次元的にト
レースできるので、より緻密な測定データを得ることが
できる。
【0127】この熱物性測定装置61には、測定室82
を真空状態に設定できる図示しない真空ポンプに連通さ
れる真空ポンプ用コック68を備える真空ポンプ用配管
67が取り付けられている。真空ポンプを作動させて真
空ポンプ用コック68を開状態とすることにより、真空
ポンプ用配管開口67aを通して測定室82内の気体が
測定室82の外に排出される。これにより、測定室82
内の水分を乾燥凍結させて被測定物体19を清浄し、測
定に適した状態に保持できる。
【0128】また、測定室82の内部を真空に引くこと
により、気体の対流を殆どなくして、アクティブプロー
ブ41の感温部5から被測定物体19への熱の移動およ
び、その温度応答による熱の移動を、両者の点接触によ
るものに限定できる。これにより、より正確な温度応答
の測定データを得ることができる。それとともに、この
熱物性測定装置61には、測定室82を所定の低温状態
にできる図示しない冷却装置に連通される冷却用コック
70を備える冷却用配管69が取り付けられている。冷
却装置を作動させて冷却用コック70を開状態とするこ
とにより、冷却用配管開口69aを通して測定室82の
内部に冷却剤71が注入される。
【0129】この熱物性測定装置61によれば、冷却剤
71を用いて測定室82内を十分に低い温度、例えば−
180℃に保持した後、加熱装置76によって被測定物
体19の温度を所定の割合で上昇させつつ温度応答の測
定を行うことができる。例えば、被測定物体19の温度
を−180℃から30℃ずつのステップで上昇させつ
つ、各温度における被測定物体19の温度応答を測定で
きる。
【0130】次に、図11に示す熱物性測定装置91を
説明する。この熱物性測定装置91は、これが備える被
測定物体ホルダ92とアクティブプローブ94との相対
的な位置関係およびそれらの形状が、前述した図10に
示す熱物性測定装置61が備える被測定物体ホルダ62
とアクティブプローブ43との相対的な位置関係および
それらの形状と、若干異なっているだけでその他は略同
じである。なお、図11に示す熱物性測定装置91にお
いて、下部断熱材64aおよび上部断熱材64bからな
る断熱ケース64を、その外側から囲む外側下部ケース
65aおよび外側上部ケース65bからなる外側ケース
65はその図示を省略する。
【0131】被測定物体ホルダ92は加熱装置76を備
えていない点が前述した被測定物体ホルダ62と異なっ
ている。また、この被測定物体ホルダ92が有する被測
定物体保持部93は、被測定物体19をその上方から把
持するように保持する。ホルダ操作部74を図11中実
線矢印Jで示す向きに上下させることにより、被測定物
体保持部93に保持された被測定物体19も図11中実
線矢印Jで示す向きに上下する。アクティブプローブ9
4は、その側面視が略L字形状に形成されているととも
に、その長手方向が被測定物体ホルダ92の長手方向と
平行になるように、上部断熱材64bに、その上方から
取り付けられている。
【0132】アクティブプローブ94は、その一端部に
おいて長手方向に直行するように角度をつけられて設け
られ、プローブ本体2の感温部5を被測定物体19の側
に向かせるプローブ本体支持体95、このプローブ本体
支持体95に連続する先端側シャフト96a、およびこ
の先端側シャフト96aに連続して設けられて測定室8
2の外側に配置される手元端側シャフト96bからなる
プローブシャフト96、このアクティブプローブ94を
動かす際に図示しない人手で操作する操作部98などか
ら構成されている。手元端側シャフト96bは、測定室
82内に進入しないように、先端側シャフト96aより
も太径に形成されている。それとともに、先端側シャフ
ト96aと手元端側シャフト96bとのシャフト接続部
97は、操作部98を図11中実線矢印Hで示されるよ
うに、振り子状に動かすことにより、プローブ本体支持
体95に支持されたプローブ本体2も、測定室82の内
部において図11中実線矢印Hで示されるように、振り
子状に動くことができるように、半球形状に形成されて
支点としての役割を果たしている。
【0133】また、プローブシャフト96は、測定室8
2の内部において、前述したプローブ本体2の振り子状
の動きを許容するとともに、測定室82内の環境を乱さ
ないように、プローブシャフト96による上部断熱材6
4の貫通部における外部との連通を妨げて、測定室82
の内部の気密を保持する弾性体から形成されるプローブ
用パッキン99によって弾性的に保持されている。
【0134】この熱物性測定装置91によれば、前述し
た構成からなる図10の熱物性測定装置61と同程度の
精度の、被測定物体19の温度応答の測定を、より簡易
な構成および操作で可能としたものである。
【0135】次に、図12に示す熱物性測定装置101
を説明する。この熱物性測定装置101は、これが備え
る被測定物体ホルダ102とアクティブプローブ104
との相対的な位置関係およびそれらの形状が、前述した
図10に示す熱物性測定装置61が備える被測定物体ホ
ルダ62とアクティブプローブ43との相対的な位置関
係およびそれらの形状と、若干異なっているだけでその
他は略同じである。なお、図12に示す熱物性測定装置
101において、下部断熱材64aおよび上部断熱材6
4bからなる断熱ケース64を、その外側から囲む外側
下部ケース65aおよび外側上部ケース65bからなる
外側ケース65はその図示を省略する。
【0136】被測定物体ホルダ102は加熱装置76を
備えていない点が前述した被測定物体ホルダ62と異な
っている。また、この被測定物体ホルダ102が有する
被測定物体保持部103は、ホルダシャフト73に対し
て直角に折り曲げられるように設けられており、被測定
物体19をその側方および下方から支持するように保持
する。これにより、被測定物体19は、その高さが上下
方向に対して最も低くなる姿勢で被測定物体保持部10
3に保持される。したがって、この被測定物体19を冷
却する冷却剤71の使用量を低減できる。また、被測定
物体ホルダ102は、そのホルダ操作部74を図12中
実線矢印Nで示す向きに上下させることにより、被測定
物体保持部103に保持された被測定物体19も図12
中実線矢印Nで示す向きに上下させることができる。ア
クティブプローブ104は、その長手方向が被測定物体
ホルダ102の長手方向と平行になるように、上部断熱
材64bに、その上方から取り付けられている。
【0137】アクティブプローブ104は、その操作部
43の付近に、断熱ケース64の外側においてシャフト
42に取り付けられた圧力調節ばね106を、上部断熱
材64bとで挟み込むとともに、このアクティブプロー
ブ104が下がり過ぎないように、その移動量を規制す
る規制部材105が設けられている。アクティブプロー
ブ104は、その操作部43を図12中実線矢印Lで示
す向きに上下させることにより、プローブ本体2も図1
2中実線矢印Lで示す向きに上下させることができる。
また、アクティブプローブ104は、その操作部43を
図12中実線矢印Mで示すように振り子状に動かすこと
により、プローブ本体2も図12中実線矢印Mで示すよ
うに振り子状に動かすことができる。
【0138】この熱物性測定装置101によれば、その
被測定物体ホルダ102およびアクティブプローブ10
4に、前述した構成からなる図10の熱物性測定装置6
1よりも単純な構造で、熱物性測定装置61の被測定物
体ホルダ62およびアクティブプローブ41と同様の動
きをさせることができる。また、被測定物体19の被測
定面19aの状態に拘らず、プローブ本体2の感温部5
を、測定に適した10MPaの圧力で被測定物体19に
容易に点接触させることができる。
【0139】この第4実施形態の熱物性測定装置61,
91,101は、以上説明した点以外は、第1実施形態
の熱物性測定装置9と同じであり、本発明の課題を解決
できるのはもちろんであるが、前述したように、これら
が具備する温度プローブ41,94,104の感温部5
が被測定物体19に接触しつつ、その外形に沿って移動
可能に設けられているとともに、温度プローブ41,9
4,104および被測定物体19は、被測定物体19の
温度応答を測定する際の環境を所定の状態に設定して保
持可能な測定室82の内部に配置されるので、以下の点
で優れている。
【0140】本実施形態の熱物性測定装置61,91,
101においては、被測定物体19を測定に適した安定
した環境に置くことができるとともに、その被測定物体
19の温度応答を3次元的に調べることができる。した
がって、被測定物体19の温度応答データを極め精密に
測定して、極めて精度の高い固体熱3定数を求めること
ができる。
【0141】次に、本発明の第5の実施の形態に係る熱
物性測定装置111を、図13に基づいて説明する。
【0142】この第5実施形態の熱物性測定装置111
は、測定室128内を真空状態に設定して保持可能な真
空装置113、この真空装置113によって測定室12
8内を真空にした状態において、温度プローブ114の
感温部5を被測定物体19に対して略一定の向きから略
一定の圧力で繰り返して点接触させる接触装置129を
有している点が、前述した第1実施形態の熱物性測定装
置9と異なっており、その他の構成、作用、および効果
は同様である。よって、その異なっている部分について
説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成
部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0143】本実施形態の熱物性測定装置111は、図
13に示すように、長手方向一端部に測定用開口127
を有するケーシング112、測定用開口127が閉じら
れた際に、このケーシング112の内部に形成される測
定室128内を真空状態に設定して保持する真空装置と
しての真空ポンプ113、およびケーシング112の内
部に配設された温度プローブとしてのアクティブプロー
ブ114を被測定物体19に対して略一定の向きから略
一定の圧力で繰り返して点接触させる接触装置129を
備えている。また、熱物性測定装置111はその大きさ
が、人が手で持って使用できる程度のサイズに設定され
ている。
【0144】真空ポンプ113は、ケーシング112の
内部において、測定用開口127とは反対側の端部に設
けられている。この真空ポンプ113は、ケーシング1
12をその内部と外部とにわたって貫通する開閉弁12
4付きの排気管125に連通されている。真空ポンプ1
13を作動させるとともに、開閉弁124を開くことに
よって、ケーシング112内の気体はケーシング112
の外部に排出される。
【0145】接触装置129は、ケーシング112の内
壁部に設けられている。この接触装置129は、長尺形
状に形成されているアクティブプローブ114のシャフ
ト115が、その長手方向がケーシング112の長手方
向に沿うように取り付けられるプローブ支持体122、
このプローブ支持体122をケーシング112の長手方
向に沿って移動可能に案内するガイドレール121、プ
ローブ支持体122に取り付けられるとともに、ガイド
レール121に摺動自在に係合されて、プローブ支持体
122をガイドレール121から外れないように保持す
る支持体外れ止め123、アクティブプローブ114を
被測定物体19に所定の圧力で点接触させるために、そ
の感温部5を被測定物体19から所定の距離まで離した
後、被測定物体19に向かって移動させるプローブ離接
装置116などから構成されている。
【0146】以下、この熱物性測定装置111の一般的
な使い方の例について説明する。この熱物性測定装置1
11は、測定用開口127を下方に向けて使用する。例
えば、測定用開口127の大きさに合わせて形成された
被測定物体19にその上方からこの熱物性測定装置11
1を近付ける。測定用開口127が被測定物体19の被
測定面19aに十分に近づいたことを確認した後、開閉
弁124を開くとともに、真空ポンプ113を作動させ
る。これにより、図13中白抜き矢印で示すように、ケ
ーシング112の内側から外側へ排気管125を通して
気体が排出される。すると、ケーシング112の内部と
外部との間に圧力差が生じ、被測定物体19は図13中
実線矢印Qで示すように、熱物性測定装置111側に向
けて吸い寄せられる。吸い寄せられた被測定物体19
は、その被測定面19aが測定用開口127の縁部に設
けられているシール材126と当接し、測定用開口12
7を気密を保持しつつ塞ぐ。
【0147】被測定物体19が測定用開口127を塞ぐ
ことにより、ケーシング112と被測定物体19とで測
定室128を形成する。測定室128内の真空度が所望
する値に達した後、真空ポンプ113の作動を停止する
とともに、開閉弁124を閉じて測定室128内の真空
度を前記所望した値に保持する。
【0148】この状態において、接触装置129を作動
させる。まず、プローブ離接装置116が有しているラ
ック・ピニオン機構120を作動させて、これが有して
いるピニオンギヤ119を回転させる。このラック・ピ
ニオン機構120のラックギヤ118はプローブ支持体
122に一体に取り付けられており、ピニオンギヤ11
9を回転させることによりアクティブプローブ114と
ともに上下動する。本使用例においては、アクティブプ
ローブ114が被測定物体19から離れるように、ラッ
クギヤ118が上方に向かって移動するようにピニオン
ギヤ119を回転させる。本使用例においては、アクテ
ィブプローブ114の先端の感応部5が被測定物体19
の被測定面19aの上方1mmの位置に達した際に、ラ
ック・ピニオン機構120の作動を停止させる。
【0149】この後、プローブ離接装置116が有して
いる図示しないスウィング式プローブ切り離し機構を作
動させて、ピニオンギヤ119を図13中実線矢印Rで
示す方向に沿って、ラックギヤ118から離れる向きに
スウィングさせて、両者の噛み合い係合を解除する。こ
れにより、アクティブプローブ114を被測定物体19
の被測定面19aの上方1mmの位置に保持している力
がなくなるので、アクティブプローブ114は被測定物
体19に向かって自然落下する。本使用例においては、
アクティブプローブ114、プローブ支持体122、お
よびラックギヤ118などの重さが、アクティブプロー
ブ114の感応部5が、適正な測定を行うことができる
10MPaの圧力で被測定物体19の被測定面19aに
点接触できるように予め設定されている。
【0150】被測定物体19の温度応答の測定が終了し
た後、再びスウィング式プローブ切り離し機構を作動さ
せて、間欠噛み合い歯車117をピニオンギヤ119と
噛み合い係合する位置まで移動させて回転させる。この
間欠噛み合い歯車117はその周部の一部にピニオンギ
ヤ119と噛み合い係合する歯部117aが設けられて
いる。間欠噛み合い歯車117を前記位置で回転させる
ことにより、図13中実線矢印Rで示す方向に沿って、
ピニオンギヤ119を再びラックギヤ118に噛み合い
係合する位置まで戻すことができるように設定されてい
る。
【0151】ピニオンギヤ119を再びラックギヤ11
8に噛み合い係合する位置まで戻した後、所望する数の
測定データを得ることができるまで、前述した作業を繰
り返す。所望する数の測定データを得ることができた
後、真空ポンプ113を停止させた状態で開閉弁124
を開き、測定室128の内部に空気を充填させる。測定
室124の内部と外部との圧力差がなくなると、被測定
物体19はこの熱物性測定装置111から離れる。
【0152】なお、アクティブプローブ114の位置
は、図示しない位置センサで適正な範囲で移動および停
止できるように規制されているとともに、移動範囲内で
停止する際に、アクティブプローブ114に過度な衝撃
が加わらないように、図示しない緩衝器などが設けられ
ている。
【0153】この第5実施形態の熱物性測定装置111
は、以上説明した点以外は、第1実施形態の熱物性測定
装置9と同じであり、本発明の課題を解決できるのはも
ちろんであるが、前述したように、人が手で持って使用
できるサイズに設定されているとともに、真空ポンプ1
13および接触装置129をケーシング112の内部に
備えているので、以下の点で優れている。
【0154】本実施形態の熱物性測定装置111におい
ては、携帯して使用できるようにコンパクト化されてい
るとともに、熱物性の測定に必要な装置がすべて一体に
なっているので、例えば工場のプラント施設の放熱経路
を調べる際に、移動しつつ測定を繰り返すような作業に
好適である。
【0155】なお、本発明に係る温度プローブ、熱物性
測定装置、および熱物性測定方法は、前述した第1〜第
7の実施の形態には限らない。例えば、温度プローブが
備える温度センサは熱電対以外にも、半導体センサ、あ
るいはサーミスタセンサでも構わない。また、温度プロ
ーブが備えるセンサ温度調節手段は、マイクロヒータ以
外にも、ペルチェ素子でも構わない。これにより、温度
センサの温度を上げるだけでなく、温度を下げることも
できる。また、前述した第4実施形態の熱物性測定装置
において測定室内を冷却するだけでなく、高温の乾燥空
気を用いて温めても構わない。
【0156】
【発明の効果】請求項1に記載の発明に係る温度プロー
ブによれば、被測定物体の熱的擾乱の発生条件を揃えて
定量的に比較できるとともに、被測定物体の温度変化を
測定する必要をなくすことができるので、感温部と被測
定物体との接触状態に起因する接触熱抵抗の影響を受け
難くして、被測定物体の材料、形状、および大きさなど
に拘らず、固体熱3定数を高い精度で容易に測定でき
る。また、構成が単純なので取り扱いが容易であるとと
もに、安価である。
【0157】また、請求項2に記載の発明に係る温度プ
ローブによれば、被測定物体の形状による感温部と被測
定物体との接触状態の制約を低減できるので、被測定物
体の材料、形状、および大きさなどに拘らず、固体熱3
定数をより高い精度で容易に測定できる。
【0158】また、請求項3に記載の発明に係る温度プ
ローブによれば、温度センサの温度を、被測定物体の材
料に応じて、その熱物性を調べるのに適した値に設定で
きるので、被測定物体の材料に拘らず、固体熱3定数を
より高い精度で容易に測定できる。
【0159】また、請求項4に記載の発明に係る温度プ
ローブによれば、感温部を、その温度を安定させた状態
で被測定物体に接触させることができるので、固体熱3
定数をより高い精度で容易に測定できる。
【0160】また、請求項5に記載の発明に係る熱物性
測定装置によれば、安定した状態で被測定物体に熱的擾
乱を与えることができるとともに、その温度応答を測定
できるので、固体熱3定数を高い精度で容易に測定でき
る。
【0161】また、請求項6に記載の発明に係る熱物性
測定装置によれば、感温部と被測定物体との接触状態に
よる接触熱抵抗の影響を受け難くできるので、固体熱3
定数をより高い精度で容易に測定できる。
【0162】また、請求項7に記載の発明に係る熱物性
測定装置によれば、感温部を適正な状態で測定に使用で
きるので、感温部の故障を抑制して高い測定精度を保持
できる。
【0163】また、請求項8に記載の発明に係る熱物性
測定装置によれば、感温部が被測定物体に接触する際の
圧力を均一に保持し易いとともに、測定する際の感温部
の温度が乱れるのを抑制できるので、固体熱3定数をよ
り高い精度でより容易に測定できる。
【0164】また、請求項9に記載の発明に係る熱物性
測定装置によれば、被測定物体の熱物性を二次元的、あ
るいは三次元的に測定できるので、固体熱3定数をさら
に高い精度で測定できる。
【0165】また、請求項10に記載の発明に係る熱物
性測定装置によれば、測定に適した安定した状態で測定
できるので、固体熱3定数を極めて高い精度で測定でき
る。
【0166】また、請求項11に記載の発明に係る熱物
性測定装置によれば、外気の対流などによる感温部と被
測定物体との間の熱移動の乱れを殆どなくすことができ
るとともに、低温域における測定に適するので、低温域
における固体熱3定数を極めて高い精度で測定できる。
【0167】また、請求項12に記載の発明に係る熱物
性測定方法によれば、請求項1〜4のうちのいずれか1
項に記載の温度プローブを用いるので、被測定物体の温
度変化を測定する必要がなくなる。それとともに、温度
プローブと被測定物体との間の熱伝導において、部分的
接触に起因する接触熱抵抗などの影響を受け難くでき、
かつ、測定の可否が被測定物体の形状に依存するおそれ
を抑制できるので、被測定物体の材料、形状、および大
きさなどに拘らず、固体熱3定数をより高い精度でより
容易に測定できる。
【0168】また、請求項13に記載の発明に係る熱物
性測定装置によれば、請求項1〜4のうちのいずれか1
項に記載の温度プローブを用いるので、被測定物体の温
度変化を測定する必要がなくなる。それとともに、温度
プローブと被測定物体との間の熱伝導において、部分的
接触に起因する接触熱抵抗などの影響を受け難くでき、
かつ、測定の可否が被測定物体の形状に依存するおそれ
を抑制できるので、被測定物体の材料、形状、および大
きさなどに拘らず、固体熱3定数をより高い精度でより
容易に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る温
度プローブとしてのスタティックプローブの本体を示す
斜視図。(b)は、図1(a)のスタティックプローブ
本体に取り付ける蓄熱スリーブを示す斜視図。(c)
は、図1(a)のスタティックプローブ本体に図1
(b)の蓄熱スリーブを取り付けた状態のスタティック
プローブを示す斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る熱物性測定装
置の概略を示す図。
【図3】本発明の1つの実施の形態に係る熱物性測定方
法を示すフローチャート。
【図4】図2の熱物性測定装置を用いて図3の熱物性測
定方法により測定した結果を示す測定図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る温度プローブ
としてのアクティブプローブを示す斜視図。
【図6】図5のアクティブプローブに断熱ケースを設け
た状態を示す斜視図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る熱物性測定装
置を一部断面にして示す側面図。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るアクティブプ
ローブを示す側面図。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る熱物性測定装
置を示す縦断面図。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る熱物性測定
装置の一実施例を示す断面図。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る熱物性測定
装置の他の実施例を示す断面図。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る熱物性測定
装置のまた他の実施例を示す断面図。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る熱物性測定
装置を示す縦断面図。
【符号の説明】
1…スタティックプローブ(温度プローブ) 2…プローブ本体 3…蓄熱スリーブ(熱容量補完部材) 4…クロメル−アルメル熱電対(温度センサ) 5…感温部 6…センサケース 9,28,44,61,91,101,111…熱物性
測定装置 10…直流電源(熱供給装置) 11…測定解析装置 12…切り換え装置 19…被測定物体 21,41,94,104,114…アクティブプロー
ブ(温度プローブ) 22…マイクロヒータ(センサ温度調節手段) 25…断熱ケース(断熱材) 27,51…感温部突出口 31,45…プローブ支持体 35…電源(熱供給装置) 38,54,63…接触装置 46…感温部カバー 53,106…ばね(圧力調節手段) 82,128…測定室 113…真空ポンプ(真空装置)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 25/18 G01K 1/16 G01K 7/02

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の温度に設定され、被測定物体と接
    触して熱的擾乱を与え、その温度応答を感知する感温部
    を有する温度センサ、およびこの温度センサを内部に収
    納するセンサケースを備えるプローブ本体と、 このプローブ本体の外側に設けられて、前記温度センサ
    を含む前記プローブ本体の熱容量を補完する熱容量補完
    部材と、 を具備することを特徴とする温度プローブ。
  2. 【請求項2】 前記感温部と前記被測定物体とが互いに
    点接触するように、前記感温部を略球形状に形成したこ
    とを特徴とする請求項1に記載の温度プローブ。
  3. 【請求項3】 前記プローブ本体に、前記温度センサの
    温度を調節可能なセンサ温度調節手段を設けたことを特
    徴とする請求項1または2に記載の温度プローブ。
  4. 【請求項4】 前記温度プローブの周囲に、前記感温部
    が突没自在な感温部突出口を有する断熱材を設けたこと
    を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載
    の温度プローブ。
  5. 【請求項5】 前記請求項1〜4のうちのいずれか1項
    に記載の温度プローブと、 この温度プローブが備える温度センサに熱を供給して所
    定の温度に設定する熱供給装置と、 前記温度プローブの感温部が感知した前記被測定物体の
    温度応答を測定して解析する測定解析装置と、 前記温度プローブと、前記熱供給装置または前記測定解
    析装置との接続を排他的に切り換える切り換え装置と、 を具備することを特徴とする熱物性測定装置。
  6. 【請求項6】 前記温度プローブを、これが有する感温
    部を前記被測定物体に対して所定の向きから所定の圧力
    で接触させる接触装置上に設けたことを特徴とする請求
    項5に記載の熱物性測定装置。
  7. 【請求項7】 前記接触装置は、前記温度プローブがそ
    の感温部を突出されて支持されるプローブ支持体、この
    プローブ支持体に対して突没自在に設けられて、前記感
    温部をその外側から囲むように前記プローブ支持体から
    突出する向きに付勢されるとともに、前記感温部が前記
    被測定物体に接触する際に前記プローブ支持体の内部に
    没入する感温部カバー、およびこの感温部カバーを前記
    プローブ支持体から突出する向きに付勢するとともに、
    前記感温部が前記被測定物体に接触する際の圧力を所定
    の大きさに保持する圧力調節手段を備えることを特徴と
    する請求項6に記載の熱物性測定装置。
  8. 【請求項8】 前記プローブ支持体は剛体により形成さ
    れているとともに、前記感温部カバーは断熱材により形
    成されていることを特徴とする請求項7に記載の熱物性
    測定装置。
  9. 【請求項9】 前記温度プローブは、前記感温部が前記
    被測定物体に接触しつつ、その外形に沿って移動可能に
    設けられていることを特徴とする請求項4または5に記
    載の熱物性測定装置。
  10. 【請求項10】 前記温度プローブおよび前記被測定物
    体は、前記被測定物体の温度応答を測定する際の環境を
    所定の状態に設定して保持可能な測定室の内部に配置さ
    れることを特徴とする請求項5〜9のうちのいずれか1
    項に記載の熱物性測定装置。
  11. 【請求項11】 前記測定室内を真空状態に設定して保
    持可能な真空装置を備えることを特徴とする請求項10
    に記載の熱物性測定装置。
  12. 【請求項12】 前記請求項1〜4のうちのいずれか1
    項に記載の温度プローブを所定の温度に設定させ、これ
    を被測定物体に点接触させて熱的擾乱を与え、その温度
    応答を前記温度プローブが備える温度センサの温度変化
    として測定し、これら測定した温度応答のデータを無次
    元化して測定無次元温度とし、これら測定無次元温度を
    所定の精度を得ることができる条件で測定時間のマイナ
    ス2分の1乗の1次関数として近似して熱伝導率比およ
    び熱浸透率比を求め、これら熱伝導率比および熱浸透率
    比を用いて前記測定無次元温度と理論的に求めた理論無
    次元温度との相対誤差の時間平均値を求め、この相対誤
    差の時間平均値が最小となる熱伝導率、熱拡散率、およ
    び比熱容量を前記被測定物体の固体熱3定数とすること
    を特徴とする熱物性測定方法。
  13. 【請求項13】 前記請求項1〜4のうちのいずれか1
    項に記載の温度プローブを所定の温度に設定する手段
    と、 前記温度プローブを被測定物体に点接触させて熱的擾乱
    を与える手段と、 そのときの温度プローブの温度応答を前記温度プローブ
    が備える温度センサの温度変化として測定する手段と、 これら測定した温度応答のデータを無次元化して測定無
    次元温度データに変換する手段と、 これら測定無次元温度データを所定の精度を得ることが
    できる条件で測定時間のマイナス2分の1乗の1次関数
    として近似して熱伝導率比および熱浸透率比を求める手
    段と、 これら熱伝導率比および熱浸透率比を用いて前記測定無
    次元温度と理論的に求めた理論無次元温度との相対誤差
    の時間平均値を求める手段と、 この相対誤差時の間平均値が最小となる熱伝導率、熱拡
    散率、および比熱容量を前記被測定物体の固体熱3定数
    として求める手段と、 を具備することを特徴とする熱物性測定装置。
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