JP3425441B2 - 非炎症性及び非感染性腸障害の処置 - Google Patents

非炎症性及び非感染性腸障害の処置

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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、特定の腸障害、即ち、未知の又は不明の原
因による障害の処置における治療物質の作製及び使用に
関し、この障害は、炎症を伴わず、既知の病原体による
検出可能な感染によるものではない。このような障害
を、ここでは非特異性腸障害と呼び、適当な薬物又は手
術により処置され得る診断可能な病因を有する特異性腸
障害と区別され得る。典型的な非特異性腸障害は、過敏
性腸症候群(IBS)、慢性便秘症、非潰瘍性消化不良(N
UD)、食道炎を伴う又は伴わない胃−食道逆流(GOR)
及び憇室病(diverticular disease)である。
技術背景 ヒト大腸(結腸)、及び小腸のごく一部には、多種の
腸内細菌が高濃度で存在する。それらは、小腸において
は立方センチ当たり102から107、大腸においては立方セ
ンチ当たり1014以上の濃度で分布し得る。この細菌が非
病原性である場合、その後、腸は体内で何の症状も示さ
ない。
一方、正常腸フローラが、腸にコロニーを形成し、長
期にわたってその場に残り得る病原性の細菌種に侵され
結合されると、慢性の病気が引き起こされ得る。
この異常腸フローラの局部効果は、結腸の又は小腸の
攣縮に起因する腹部痙攣、流体又はガスの蓄積に起因す
る拡張、不適当な流体吸収又は過度の分泌に起因する下
痢、又は異常な運動パターン及び水分の過度の吸収によ
る便秘を含み得る。異常腸フローラの深刻な局部効果
は、微小な(microscopic)又はコラーゲン蓄積による
大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病及び憇室症が含まれ
得る。これらの効果のうちのいくつかは、局部毒素に起
因し、他のものは腸の内層への細菌の反転に起因する
が、その他における機構は不明である。
明白な、可視性の又は微小の大腸炎が存在する場合、
サルファサラジン(2−サルファニルアミドピリジンに
サリチル酸を結合して調製される)、4−アミノサリチ
ル酸、5−アミノサリチル酸及びベンザルアジンのよう
なサリチル酸から誘導されるよく知られている抗細菌薬
から、有益な臨床的効果が得られることは知られてい
る。
結腸に可視性の異常が検出できない場合、及び便試
験、組織学及び血液試験では陰性を示すが、患者は結腸
に起因する症状をまだ訴えている場合、IBSの診断がし
ばしばなされ得る。西洋人の約10〜25%が、痙性結腸又
は過敏性結腸、不安定結腸、結腸性神経症、痙性大腸
炎、又は粘液性大腸炎とも呼ばれるこの障害に患わされ
ている。典型的な場合では、排便により和らげられる弱
い腹痛、便秘と下痢の繰り返し及び小径便の排泄を含む
症状の三徴が見られる。腹部膨満、鼓腸又は腸内ガスも
しばしば認められ、粘液の排泄、不完全なしゃ出の感覚
も認められる。これらの全ての症状は、はっきりとした
器質性疾患が見られない場合に起こる。
IBSの発生病理は現在まで不明である。情緒障害、繊
維欠乏症、下剤の乱用及び食物不耐性が全て絡み合う
が、証明することも十分に説明することもされていな
い。感染又は自己免疫に関した証拠も得られていない。
IBSの従来の処置は十分なものではなく、例を挙げれ
ば、時々勧められ又は試みられてきた数多くの療法があ
る。心理療法及び食物規制から鎮痙剤、抗コリン作用
剤、バルビタール酸塩類、抗うつ剤、膨張剤(bulking
agents)、ドーパミンアンタゴニスト、駆風薬、オピオ
イド及びトランキライザーによる投薬までが行われてき
たが、いずれも成功の兆しはない。これらの医療が可能
であるという証拠もない。
IBSは、胃腸疾患で最も一般的なものの1つであり、
生命の脅威でもなく、これらの深刻な苦痛に対して多大
な苦悩を引き起こし、処置する医者の試みに対してフラ
ストレーションと無力感をもたらす。
発明の開示 本発明は、抗生物剤の投与を必要とする他の病気のた
めの患者の処置が、IBS及び他の非特異性腸障害に関し
て、有益な結果を生ずることが時々あるらしいという、
出願人の観察によってもたらされた。これは、未だに実
証されていない及び文献にも記載されていない腸フロー
ラの変質又は弱い病原性細菌の感染が、非特異性腸障害
の発生病理を明確に示すメカニズムに寄与しているとい
う仮説を導く。過敏性腸症候群及び他の上述の腸内の苦
痛の原因となる感染を仮定して、サルファサラジン、5
−アミノサリチル酸化合物、4−アミノサリチル酸化合
物及びベンザルアジンのようなサリチル酸から誘導され
る抗生物作用剤が、適当な量が与えられた場合に、ほと
んどの患者において症状を抑制できることを示す臨床的
な試みをその出願人らは行った。
本発明は、非特異性腸障害を処置する方法にあり、こ
の方法はこれを患う患者に抗生物作用剤を服用させる段
階を含み、この作用剤はサリチル酸誘導体である。
第2の態様によれば、本発明は、非特異性腸障害の処
置に用いる場合に、抗生物作用剤にあり、これはサリチ
ル酸誘導体である。
第3の態様によれば、本発明は、非特異性腸障害の処
置に用いる薬物の製造において、サリチル酸誘導体の使
用にある。
好ましい実施例では、サリチル酸誘導体は、サルファ
サラジン、5−アミノサリチル酸(5−ASA)及び4−
アミノサリチル酸(4−ASA)を含むアミノサリチル化
合物、及びベンザルアジンを含む群のうちの1つであ
る。更に、選択された化合物は、付随する特定の障害に
有効的に適応され得る。特に、前述の群のいずれも便
秘、NUD、GOR又は憇室病に関連して用いられ得るが、ア
ミノサリチル酸化合物とベンザルアジンのみはIBSに好
適である。
各々の場合において、この抗生物作用剤は、非炎症性
腸障害の処置への使用と同様の方法で使用され得る。
従って、活性成分は、錠剤又はカプセル中で医薬的に
許容可能な賦形剤と混合され得る。このカプセル又は錠
剤は、夜に1回、日に2回又は日に3回以上服用し得、
その投与量は、1日当たり200mgから18gまでの範囲に及
ぶ。サルファサラジンは、通常、分割量で1日当たり50
0mgから1日当たり18gまでの投与量にて錠剤型として投
与される。5−ASA又はその多くの最近有効な新しい配
合物及び置換物が、1日当たり250mgから始める以外は
同様の投与量で使用され得る。全ての5−アミノサリチ
ル酸作用剤は、それらが遠位小腸に放出されるような方
法で調製されなければならない。これは、作用剤が、腸
内被覆物と共に供給されるか又は腸内被覆放出性カプセ
ル内に提供されることを必要とする。5−ASAが上部小
腸で放出され、どの範囲において吸収される場合、次い
で、腎臓に分泌され、結晶形成のため腎臓損傷の原因と
なる。好適な被覆又はカプセル化生成物はすでに他の目
的に入手でき、例えば、これらはオルサラジン(olsala
zine)、サラゾピリン(salazopyrin)又はメサザール
(Mesasal)と名付けられて市販されている。
長期療法の一般規則として、この投与量は低レベルか
ら始めて、数週間にわたり所望の十分量にまで引上げ、
本発明は、このような段階的な引上げを提供する連続的
な投与のための個々の投与ユニットの多重包装にも及
ぶ。
これらのことより、前記の有効な処置方法が知られて
いなかった分野において、これらの抗生物作用剤におけ
る全く新しい使用が発見されたことが評価されるであろ
う。
図面の簡単な説明 図1は、本発明の臨床的試験の開始における患者群の
症状及び辛さについての表である。
図2、3及び4は、該臨床的試験の選択的結果のグラ
フによる表示である。
本発明実施の最良の形態 出願人に知られる本発明実施の最良の形態は、後述の
2つの実験的な症例研究及びこれらの症例の明らかな結
果により進められたその後の臨床的な試みから、たやす
く評価されるであろう。
個々の症例研究 実施例1 31歳の看護婦(HB)が腸における腹痛及び、時々の便
秘を伴う頻繁(2〜6回/日)の弛緩運動について調査
された。便培養、大及び小腸の生検、小腸浣腸X線、全
血算定及び多種の生化学的テストは、異常を示さなかっ
た。追加繊維、食物排除の食事(food eclusion diet
s)及び鎮痙薬の使用にも拘らず、この症状は本質的に
継続した。1日当たり1gの投与量でのサルファサラジン
(サラゾピリン−EN)の投与は、痛み及び便を形成する
弛緩運動の繰り返しを止める結果となった。療法の取消
は、元の症状の再発をもたらした。サルファサラジンの
再開は、即座の軽減を再びもたらした。この患者は、5
ヵ月以上にわたって、この軽減を得続けた。それから5
−ASA療法に変え(ディペンタム(Dipentaum)として市
販の医薬品を利用した)、1年半以上にわたって同様の
軽減抑制を継続することができた。
実施例2 42歳の女性セールス代理人(LA)は、顕著な弛緩運動
と共に下腹部及び時として広汎的な腹部の痙攣を示し
た。広範囲にわたる胃腸の検査にも拘らず、器質的原因
は見当たらなかった。1日当たり1gのサルファサラジン
の投与開始は、4〜5日以内の殆ど全ての症状を軽減し
た。しかし3週間後に、この患者は明らかな発疹を起こ
し、処置は取り消された。5−ASA(ディペンタム)は
即座に有効ではなかった。症状は繰り返した。5−ASA
を日に2回2錠の量で始めた場合に、痛みと弛緩運動は
再び和らいだ。
5−ASAは、多くの患者における非潰瘍性消化不良を
処置するためにも、有効的に使用されている。投与量
は、1日当たり250mgで始められ、通常の状態で1日当
たり1gまで増加される。3〜6週間で、この効果が始ま
り、逆流させる症状及び上部胃腸路鼓脹、げっぷ及び焼
きつくような痛みの減少に患者が気付く。同様に、慢性
便秘は、上述の量のサルファサラジンによって、及び、
記述の量で多数の患者においてはアミノサリチル酸化合
物によって、コントロールされる。
臨床的試験 患者及び方法 消化疾患医療センターにおける一般開業医に属する患
者において、追加研究を必要とする程の十分辛い腹部不
快及び腸障害の結腸鏡評価について、研究が実施され
た。全ての患者は、この試験に加わることを同意し、こ
の試験はヘルシンキの改訂宣言(the Revised Declarat
ion of Helsinki)に従って行われた。
IBSの臨床診断を受けた患者は、その複合した症状が
マニング診断基準(Manning criteria)を満たし、排除
診断基準(the exclusion criteria)に応じた場合に、
この試験への参加が提案された。
排除診断基準は以下のものであった、即ち、 i 結腸鏡的異常、例えば可視性の大腸炎、ポリープ、
癌又は憩室症; ii 組織学的異常、例えばコラーゲン又は微小の大腸
炎; iii 凝固障害; iv 妊娠又は授乳期; v 肺、肝臓若しくは腎臓の疾病又は機能疾患の、有意
な臨床的又は実験的証拠; vi サリチル酸塩に対する感受性;及び vii 非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド、抗凝固剤又
は抗鎮痙剤の必要性 この研究は、調整する二重盲検法が必要かどうかを確
立するために、表示を公にし、単一の施設での、非盲
の、後のためのパイロット試験であった。
薬物処方 5−ASAの配合物、即ちオルサラジン(ディペンタム;
KABI−PHARMACIA)を、250mgのカプセルの形態で使用し
た。副作用を減少させるために、オルサラジンは、第1
週では1日当たり250mgから、第2週では1日当たり500
mg、第3週まで及びそれ以降では1日当たり750mgを段
階的な方法で与えられた。投与量は、6週間750mgに維
持した。1日当たり750mgの量に耐えることができなか
った患者は、耐えられた最も高い量に維持された。
症状査定 症状の辛さは、試験の開始、5週間め、試験の停止
(8週間)及び12週間めの後対診時に目視可能なアナロ
グスケールを用いて査定された。アナログスケールは0
から10までの等しい間隔の数字によって印されたライン
で構成されていた。0は症状がないことを示し、10は仕
事を中断又は投薬を必要とする程度に辛い症状であるこ
とを表した。査定される症状は、腹部の痛み/不快、便
秘、下痢、腹部膨満及び鼓腸を含んでいた。症状のスコ
アは表にして、統計解析はステューデントt検定を用い
て行った。
結果 26人の患者が研究に登録され、全試験を完了した23人
からのデータを評価に利用した。1人の患者は過度の頭
痛のために早期に試験を停止し、2人の患者は後症状の
ための特定の期間に戻って来なかった。従って、24歳か
ら74歳まで(平均44.3歳)の範囲の8人の男性及び15人
の女性となった。IBSの症状の見積り期間は3から35年
であり、平均は10.2年であった。
患者の初期の特徴は、図1にまとめた。試験開始にお
ける5つの評価症状の頻度及び辛さはリスト化された目
視可能なアナログスケールより得ることができる。ほと
んどの患者はより高いスコアを示すことによって主な症
状を強調したようであった。
症状改善 これらの総体的症状の全体的な査定において、ほとん
どの患者は各々の主な症状に改善に気付いた。23人のう
ち4人の患者は、主要な痛み(2)及び便秘(2)の症
状に特に評価できる変化がなかったと報告した。他の19
人の患者は、8週間で平均62%の全体的な改善を報告し
た。特に腹痛は有意に減少した。これは、下腹部の、左
腸骨窩又は左若しくは右上部分の位置で、痛みが拡散し
たかどうかによった。下痢と便秘は共に、正常に向けて
有意に改善された。鼓腸及び鼓脹症状は少なくなり、拡
散的に改善された。
a.腹痛:痛みスコアにおける最大の改善は8週間で見ら
れた。6.25±1.74(SD)の初期値は2.55±1.47(p<0.
005)に下がった。しかし、12週までにスコアは5.7±1.
69まで戻り、開始時の痛みスコアの91%になった。
b.下痢;下痢スコアの有意な減少は、5週と8週の対診
の両方で気付いた。症状スコアにおけるこの変化は、開
始時の6.77±1.69(SD)から5週間の2.35±1.08及び8
週間の2.11±0.60(p<0.005)まで下がった。このス
コアは12週間までに4.16±1.33に上がった。
c.便秘:有意な改善は便秘の症状スコアにおいても見ら
れた。辛さスコアの基底値は8週間で最下点に達し、6.
1±1.60(SD)から2.3±0.48(p<0.005)にまで下が
った。このスコアは、前療法値−5.9±1.99−へ、第12
週までに再び上がった。
d.鼓脹/鼓腸:全ての査定を通して、これら2つの症状
には有意な減少は見られなかった。しかし、個々のケー
スでは、時として著しい改善が認められた。
上述の結果は図2、3及び4にグラフとして示し、こ
れらは腹痛、下痢及び便秘の症状を各々表しており、5
−アミノサリチル酸(オルサラジン)による処置の期間
前、期間中及び期間後での査定である。全ての患者が3
つ全てについて実験したのではなく、各症状について検
査した患者の数は、各図中の数nで表している。
長期ベースで薬物を服用することを選択するか否かに
ついて尋ねた場合、61%の患者はそのようにする希望を
表明した。薬物処置を継続することを望まない理由は、
薬物(1日当たり6カプセル)の過度の摂取又は受けた
療法における症状の不十分な軽減を含んでいた。数人の
患者は、特に、以前に試みた多数の療法の内、オルサラ
ジンはその症状をまさに改善した最初のものであったと
述べた。
6人の患者が、痛み、便秘又は下痢について、8から
21ヵ月間、オルサラジンの摂取を継続した。症状コント
ロールは療法を維持することで継続した。処置の停止
は、オルサラジンの再開により再び抑制することができ
た症状の再発を引き起こした。
副作用 頭痛及び吐き気はこのゆっくりとした段階的な量の処
方の唯一の認められる副作用として示された。これは4
人の患者に認められた。アレルギー反応は認められなか
った。便秘を伴う1人の患者において、1日当たり250m
gの量の時に正常運動の緩みが示された。従って、患者
はこの量のレベルで維持された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 英国特許出願公開2021409(GB,A) 米国特許4496553(US,A) 米国特許4664256(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 31/655 A61K 31/60 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】活性成分として、サルファサラジン、5−
    アミノサリチル酸及び4−アミノサリチル酸のうちのい
    ずれか1つ、又はこれらの作用剤の2つ以上の組み合わ
    せからなることを特徴とする過敏性腸症候群の治療剤。
  2. 【請求項2】該作用剤がサルファサラジンであり、その
    投与量が1日当たり200mgから18gの範囲である、請求項
    1記載の治療剤。
  3. 【請求項3】該作用剤の投与量が1日当たり200mgから1
    8gの範囲である、請求項1又は2記載の治療剤。
  4. 【請求項4】該作用剤の投与量割合が低い開始量で始め
    られ、その開始量より高い少なくとも1つの中間量から
    更にその中間量より高い最終量まで、時間と共に増加さ
    れる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の治療剤。
  5. 【請求項5】該作用剤が5−アミノサリチル酸及び4−
    アミノサリチル酸の少なくとも1種である、請求項1記
    載の治療剤。
  6. 【請求項6】該作用剤の投与量が1日当たり250mgから1
    0gの範囲である、請求項5記載の治療剤。
JP51632091A 1990-10-22 1991-10-17 非炎症性及び非感染性腸障害の処置 Expired - Lifetime JP3425441B2 (ja)

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DE (1) DE69133348T3 (ja)
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