JP3420731B2 - 小火器用弾丸 - Google Patents
小火器用弾丸Info
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Description
銃などの小火器用弾丸に係り、さらに詳しくは、弾芯素
材を鉛としない無毒性である小火器用弾丸に関するもの
である。
性とで評価され、近年までは命中精度が高く、威力が強
い弾丸を要求されることが多かった。 しかし、最近に
おいてはこれらの他に、環境や動物に悪影響を及ぼさな
い無毒性や、目的に適合した威力特性なども求められる
ようになった。 これらのうちの威力特性は、その目的
によって、強威力が要求される場合と、低威力が要求さ
れる場合とがある。 特に低威力が要求される目的は、
テロや暴動或いはハイジャクの鎮圧に際して、建造物、
飛行機などの器物や機体に損傷を与えないことや、標的
に対して必要以上の損傷を与えないことである。
弾丸を除いて、図1に示す普通弾丸の弾芯1には鉛が用
いられ、その周囲を銅,銅合金などの円筒金属の被甲2
で覆って弾丸を構成している。 この鉛は、毒性が強
く、水質の悪化や、動物が呑み込むと鉛中毒になるな
ど、環境や動物に悪影響を及ぼす欠点がある。 また、
この欠点を改良したものとして、例えば、特表平7−5
03528号公報に開示された発明が知られている。
は、弾丸の素材が、細かな銅粉末、ナイロン11および
ナイロン12からなる群から選択された熱可塑性樹脂の
圧縮混合物である。 そして、その銅粉末が少なくとも
92質量%であり、圧縮混合物の最少比重を5.7にし
たものである。
丸のうち、弾芯1に鉛を用いた弾丸は、上述のように毒
性が強く環境や動物に悪影響を及ぼすという問題がある
反面においては、適度な比重を有するので命中精度が高
いという特性がある。 この命中精度は、特に、普通弾
丸の場合には、弾芯が銅,銅合金などの被甲2で覆われ
ているので、螺旋を刻設した銃身内を通過させて発射す
る際に、その螺旋によって弾丸が回転される回転特性に
優れ、高い命中精度が得られる。
(弾芯1)の比重が11.3であることから、強威力で
ある点では優れているが、低威力が要求される場合には
欠点となる。 しかも弾芯1が鉛の単一組成であるた
め、目的に適合した比重の威力特性に調整することがで
きないという問題がある。
発明によれば、熱可塑性樹脂は、ナイロン11およびナ
イロン12で組成しているので、耐蝕性に優れている反
面、環境中において分解されにくく、最近ではそれ自体
が公害を引き起こす要因になっている。 そして、リサ
イクルやソースリダクション(発生源の削減)が重視さ
れていることからも明らかなように、環境破壊をした
り、資源を浪費するという問題がある。
11μm以下、22μm以下、44μm以下の銅粉末を
混合したものであるから、重金属の総面積が増大して摩
擦抵抗が増加し、混練抵抗が高くなる問題や、作業中に
粉塵となって飛散しやすく、作業環境の悪化や製造コス
トの増大をまねくという問題がある。 また、混合する
重金属の種類は銅粉末のみであるから、弾丸の比重を大
きくして高威力にしたり、比重を小さくしたりして低威
力にしたりして、威力特性を調整することができないと
いう問題がある。
のような問題点に鑑みなされたものであって、薬莢,発
射薬,雷管などを改良せずに、無毒性で命中精度が高
く、かつ、使用目的に適合できる威力特性の小火器用弾
丸を提供しようとするものである。
に、請求項1に係る発明の小火器用弾丸は、弾芯と、こ
の弾芯を被覆する円筒金属の被甲とを結合した小火器用
弾丸であって、前記弾芯は、熱可塑性のポリマ樹脂に弾
芯の弾性を高めるためのエラストマおよび可塑剤を添加
した熱可塑性樹脂組成物と、弾芯の比重を調整するため
粉粒径が1〜3μmの小粉粒径重金属を重金属の総質量
に対して30〜70質量%で100〜150μmの大粉
粒径重金属を重金属の総質量に対して30〜70質量%
で混在する重金属と、前記熱可塑性樹脂組成物と前記重
金属との界面接着性を向上させるためのカップリング剤
とから弾芯素材を組成し、この弾芯素材を所定形状の弾
芯に形成するようにしたものである。
材の熱可塑性樹脂組成物は熱可塑性のポリマ樹脂に可塑
剤を添加したものであるから、成形加工温度領域におけ
る流動性が向上する。 このため熱可塑性樹脂組成物を
粉粒状の重金属の表面周囲にくまなく行き渡らせること
ができる。 また、耐蝕性に優れているので弾丸の貯蔵
中において形状の変形が起こらないとともに、環境中に
おいてナイロン11,ナイロン12などよりも分解しや
すいという作用をする。 また、熱可塑性樹脂組成物に
は、室温でゴム弾性を示すエラストマを添加するように
したので、弾芯にゴム弾性を高める作用をし、円筒金属
の被甲内に弾芯を結合する際に、弾芯の表層部が被甲内
面になじむことで、密着して結合することができる。
たので、その混合比率を加減することで、弾芯の比重を
大きくして高威力にしたり、比重を小さくして低威力に
したりして、弾丸の威力特性を調整することができる。
さらに、重金属を粉粒状にしたことにより、弾芯素材
から所定形状の弾芯を成形加工する際に、弾芯の微少形
状部分や角部などにも均一に偏析することなく分散させ
ることができるとともに、射出成形などの成形加工が容
易にできる。
合に際してカップリング剤を添加しているため、重金属
の粒子表面を被覆して熱可塑性樹脂組成物との親和性を
高め、熱可塑性樹脂組成物の分子と重金属の粒子表面と
の界面接着性が向上する。したがって、熱可塑性樹脂組
成物が弾性変形しても、重金属の表面から熱可塑性樹脂
組成物が剥離することを抑止できる。さらに、重金属は
小粉粒径重金属と大粉粒径重金属とを混在するようにし
たので、混練抵抗が高くなること、重金属がブリッジを
形成して成形機などのスクリューが破損しやすくなるこ
と、熱可塑性樹脂組成物との剥離が生じやすいことなど
を防止する作用をする。 すなわち、小粉粒径重金属の
みである場合には、重金属の総面積が増大して摩擦抵抗
が増加し、混練抵抗が高くなる。 また、大粉粒径重金
属のみである場合には、混練中に成形機などの内部でブ
リッジが形成されやすいので、スクリューが破損しやす
くなるとともに、重金属の総面積が小さくなるので、熱
可塑性樹脂組成物との剥離が生じやすい。 そして、こ
の発明のように小粉粒径重金属と大粉粒径重金属とを混
在させることによって両者の欠点を補い合うことができ
る。
樹脂組成物には、ポリマ樹脂を自然分解させるための生
分解性添加物を添加するようにしたものである。
性樹脂組成物には、ポリマ樹脂を自然分解させる生分解
性添加物を添加するようにしたので、生分解性添加物を
溶融し冷却することで、粉粒状の重金属の相互を結合さ
せる作用をし、熱可塑性樹脂組成物の内部に粉粒状の重
金属を埋め込むことができる。 このため、融点が高い
重金属であっても、生分解性添加物を介して射出成形な
どが可能となり、弾芯の成形加工が容易にできる。 ま
た、生分解性添加物は、日常の使用中はポリマ樹脂を分
解せず、ポリマ樹脂が土中や水中に放置されると微生物
等によって分解され、低分子化合物となる。 最終的に
は炭酸ガスや水になると考えられており、環境や動物に
悪影響を及ぼさない無毒性物質となる。
材質は、タングステン,ステンレス鋼,鉄,銅またはア
ルミニウムのいずれか、若しくはこれらを組み合わせる
ようにしたものである。
の材質は、タングステン,ステンレス鋼,鉄,銅または
アルミニウムのいずれか、若しくはこれらを組み合わせ
るようにしたので、弾芯の比重を小さなものから、大き
なものまで適宜選択することができる。 すなわち、各
々の混合比率を加減することで、弾芯の比重を大きくし
て高威力にしたり、比重を小さくして低威力にしたりし
て、目的に適合した威力特性に調整することができる。
は、粉粒状の重金属に置き替えて、粉粒状のガラスにし
たものである。
材は、熱可塑性樹脂組成物と粉粒状のガラスとを混合す
るようにしたので、比重が小さい低威力特性の弾丸に共
用する弾芯を容易に形成することができる。
は、前記重金属を混在するようにしたものである。
材は、熱可塑性樹脂組成物と粉粒状の重金属およびガラ
スとを混合するようにしたので、弾芯の比重を広範囲に
調整することができるとともに、比重を大きくして高威
力にしたり、小さくして低威力にする際に、比重が高い
重金属と比重が低いガラスとの混合比率を加減すること
で、威力特性を微調整することができる。
に形成された後の弾芯の比重は、2〜13.5であるよ
うしたものである。
状に形成された後の弾芯の比重は、2〜13.5にした
ので、比重が小さい低威力特性弾丸の弾芯や、比重が大
きい高威力特性の弾芯、または、これらの中間威力特性
弾丸の弾芯を使用目的によって、選択的に形成すること
ができる。
樹脂組成物は、熱可塑性のポリマ樹脂にエラストマおよ
び可塑剤を添加した熱可塑性樹脂組成物に置き替えて、
エラストマに可塑剤を添加した熱可塑性樹脂組成物にし
たものである。
性樹脂組成物は、エラストマに可塑剤を添加した組成物
にしたので、熱可塑性樹脂組成物にポリマ樹脂を含む弾
芯よりも、弾性をさらに高めることができる。
面および表を参照して以下のとおり説明する。 図2
は、本発明に係る弾芯素材の弾芯と被甲とで構成する小
火器用弾丸の半裁断面図である。 この弾丸は、図2に
示すように、熱可塑性樹脂組成物3と、大/小粉粒径重
金属4,5と、カップリング剤と、後述する使用目的ご
との添加物とから弾芯素材を組成する。 そして、この
弾芯素材を所定形状の弾芯に形成し、図示のように被甲
2内に結合した後、図示しない薬莢に装着するものであ
る。
熱可塑性のポリマ樹脂にエラストマおよび可塑剤を添加
したものであって、熱可塑性のポリマ樹脂とは、ポリプ
ロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリウレタ
ン(PU),ポリスチレン(PS)などであって、これ
らを混合したものでも良い。 さらに、ポリエチレンテ
レフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート
(PBT)またはポリエステル樹脂でもよい。 さらに
また、ポリエチレンの代わりにゴルフボールの表面のコ
ーティング等に用いるアイオノマレジンを使用してもよ
い。 また、ナイロン6(6PA)も利用できる。
ものであって、天然ゴムまたは合成ゴム、もしくはその
組み合わせのいずれでも、弾芯の弾性および靱性を高め
ることができる。 このエラストマは、特に、弾芯を円
筒金属の被甲2内に圧入して結合する際に、弾芯の弾性
が低いと表層部が被甲内面になじめないので密着せず、
また、脆性が高いと後述するように圧入荷重で弾芯が破
壊するので、不可欠な添加物である。
度領域において流動特性を改善して成形加工を容易にす
るものである。 具体的には例えば、フタル酸ジオクチ
ル(DOP),フタル酸ジブチル(DBP)等のフタル
酸エステル類の可塑剤や、エチレンビスステアロアマイ
ド等の内部滑剤等を含むものである。 この可塑剤によ
って、弾芯素材を弾芯に成形する際の流動特性を改善し
て成形加工を容易にする。
剤,トリクレジルホスフェート(TCP)やトリフェニ
ルホスフェート(TPP)等のリン酸エステル類の可塑
剤,エポキシ化大豆油及びメチルアセチルリシノレート
(MAR)等の脂肪酸エステル等も含むものである。
その配合量は、例えばフタル酸ジオクチル(DOP)を
熱可塑性樹脂組成物3の総質量に対して13質量%以下
の範囲にする。
添加する生分解性添加物について説明する。 この生分
解性添加物は、ポリマ樹脂を自然分解させるための添加
物であって、具体的には、ポリ−3−ヒドロキシブチレ
ート,バイオポリエステル,カードラン,プルラン,バ
クテリアセルロース,ポリアミノ酸などの微生物で作っ
た生分解性添加物や、でんぷん,キチン,キトサン,海
産多糖類,セルロースなどの天然物を利用して作った生
分解性添加物や、脂肪族ポリエステル,ポリウレタン樹
脂,ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール,ポリエ
ーテルなどの化学合成で作った生分解性添加物などが好
ましい。
んぷんをベースとする生分解性及び水溶性の生分解性添
加物とを質量比で80対20の割合で混合して使用し
た。そして、これらの生分解性添加物は、ポリマ樹脂と
混合することにより、日常の使用中はポリマ樹脂を分解
せず、弾丸が土中や水中に放置されると微生物等によっ
て、その混合した弾芯の熱可塑性樹脂組成物3そのもの
を最終的に、水,炭酸ガス,バイオマス(微生物群)等
に分解することができる。
の、重金属/ガラスについて説明する。 この粉粒状の
重金属/ガラスは、比重が小さい低威力特性や、比重が
大きい高威力特性の弾丸を製造するために弾芯素材に混
合する比重調整物質である。本発明において重金属と
は、タングステン(W;比重19.3),ステンレス鋼
(SUS;比重7.7),鉄(Fe;比重7.87),
銅(Cu;比重8.96)の外に特に、アルミニウム
(Al;比重2.69)をも含めるものとする。また、
これらの合金を含む重金属のいずれか、もしくは選択的
に組み合わせて弾芯素材に混合する。 他方のガラス
(GP;比重2.5)についても、ガラスのみか、また
は上記重金属と混在させて弾芯素材に混合するものであ
る。
うち、弾芯素材を高比重領域で組成する際に、最も適合
した重金属はタングステンであって、大気中に放置され
ても、周囲の環境に悪影響を及ぼさないうえに、鉛の比
重11.3よりも大きな比重19.3を有しているの
で、弾芯の限られた体積内で高比重領域を組成する場合
に最適である。 また、低比重領域で組成する際には、
ガラスが最適であり、アルミニウムも好ましい。 そし
て、上記の各物質またはこれらを組み合わせることで、
低比重領域から高比重領域までの、使用目的に適合した
弾芯素材を選択的に組成できる。
整について説明する。 熱可塑性樹脂組成物3のポリマ
樹脂をポリプロピレン(PP)またはナイロン6(6P
A)とし、これらに、粉粒状の重金属、粉粒状のガラス
(GP)、エラストマなどを混合して各々の混合比率を
調整し、比重の異なる弾芯素材を製造するときの配分の
一例を表1に示す。 なお、エラストマは合成ゴムを添
加した。
/4/8/11.3/13.5の広範囲で任意に調整可
能である。 弾芯の比重について、2以下であると弾丸
が軽すぎて、螺旋を刻設した銃身内を通過して発射され
る際に弾丸の初速が過度に早くなり、螺旋に沿った回転
が得られないため、弾道が安定せず飛翔性が悪く所定の
命中精度は得られなくなる。 逆に、弾芯の比重が1
3.5以上であると、薬莢内の薬量に制限があるので、
初速が低下して結果的には所定の高威力が得られなくな
る。
を、所定形状の弾芯に成形加工して被甲2に圧入すると
きに脆性が高いと圧入できなくなるので、弾芯の圧縮強
度を試験した。 試験した弾芯素材は、表1のエラスト
マを含まない試験符号11と、エラストマを2.5質量
%含む試験符号11Aとの二種と、従来の弾丸に供され
ている鉛の弾芯とである。 この圧縮強度試験は、弾芯
の円柱胴部に軸直角方向から圧縮荷重を加え、無荷重時
の外径を100とした場合の外径変化割合(%)で評価
した。 この試験結果を表2に示す。 さらに見易い様
にグラフ化したものを図3に示した。
ラストマを混合しない試験符号11の弾芯は、400N
までは変形がなく、その後荷重が増すにつれて著しく変
形し、700〜800Nの間で破壊した。 また、この
弾芯を被甲2内に圧入した結合試験でも、弾芯の一部が
欠落し、弾丸に供する弾芯としては不適合であった。試
験符号11Aのエラストマを2.5質量%混合した弾芯
は、100Nまでは変形がなく、その後荷重が増すにつ
れて漸次変形し、400Nで98%、600Nで96
%、800Nで93%、1000Nで89%と変形する
が、この段階まで破壊はしなかった。 この試験値は、
鉛の弾芯と略同一であって、この弾芯を被甲2に圧入し
た結合試験でも何ら支障はなかった。
物3との混練抵抗を低くし、かつ、成形機などのスクリ
ューが破損されないように、粉粒径が大きな大粉粒径重
金属4と、粉粒径が小さな小粉粒径重金属5との二種類
が混合されている。 前記小粉粒径重金属5は、その粉
粒径が1〜3μmの範囲のものが、重金属の総質量に対
して、30〜70質量%の範囲にあり、前記大粉粒径重
金属4は、その粉粒径が100〜150μmの範囲のも
のが、重金属の総質量に対して、30〜70質量%の範
囲にある。 なお、大粉粒径重金属4の粉粒径は、混練
抵抗を抑えるため、より好ましくは、100〜150μ
mの範囲である。 また、大粉粒径重金属4の添加質量
は、成形品のフローマークを抑えるため、より好ましく
は、55〜70質量%の範囲である。
定理由について説明する。 重金属のうち小粉粒径重金
属5の粉粒径が1μmより小さいと、弾芯を成形する際
に、小粉粒径重金属5の表面積が増加し、摩擦抵抗が増
大して、混練抵抗が高くなる。 そして、粉粒径が小さ
い微粉状のため、作業中に粉塵となって飛散しやすく、
作業環境が悪化し、製造コストが高くなる。 重金属の
うち小粉粒径重金属5の粉粒径が3μmより大きいと、
押出機の内部でブリッジを形成し易くなり、スクリュー
が破損し易くなる。 しがって、小粉粒径重金属5の粉
粒径は、1〜3μmが望ましい。
して、30質量%未満だと、小粉粒径重金属5を添加し
た効果が小さくなり、相対的に大粉粒径重金属4の割合
が増えて、成形機内部でブリッジを形成し易くなり、押
出機のスクリューが破損し易くなる。 また、重金属の
総表面積が減少して、重金属と熱可塑性樹脂組成物との
間で剥離が生じ、成形品(弾芯)に割れや、強度不足が
発生し易くなる。 小粉粒径重金属5が、重金属の総質
量に対して、70質量%を超えると、重金属の総表面積
が大きくなりすぎて、摩擦抵抗が増加することにより、
弾芯を成形する際に、混練抵抗が高くなる。 したがっ
て、小粉粒径重金属5は、重金属の総質量に対して、3
0〜70質量%の範囲とする。
限定理由について説明する。 大粉粒径重金属4の粉粒
径が、30μmより小さいと、粉粒径の大きな大粉粒径
重金属4を添加した効果が小さくなり、弾芯素材を押出
する際に、混練抵抗が高くなる。 重金属のうち大粉粒
径重金属4の粉粒径が150μmより大きいと、押出の
際の押出機の内部でブリッジを形成して、押出機の内部
のスクリューが破損しやすくなる。 また、粉粒径が大
きな大粉粒径重金属4の表面と、熱可塑性樹脂組成物3
との間で剥離が生じ易くなり、成形加工された弾芯に割
れの発生や、強度不足が発生する。
し、均質な材料を形成することができなくなり、材料と
しての品質が低下する。 また、大粉粒径重金属4が弾
芯の表面に現れると、弾芯の表面の凹凸が大きくなっ
て、表面粗さが増し、被甲2内面への密着度が悪くな
る。 したがって、大粉粒径重金属4の粉粒径は、30
〜150μmとする。
して、30質量%未満だと、大粉粒径重金属4を添加し
た効果が小さくなり、押出の際、混練抵抗が高くなる。
大粉粒径重金属4が、重金属の総質量に対して、70
質量%を超えると、押出の際、押出機の内部でブリッジ
を形成して、押出機の内部のスクリューが破損しやすく
なる。 また、粉粒径の大きな大粉粒径重金属4の表面
と、熱可塑性樹脂組成物3との間で剥離が生じ易くな
り、成形品(弾芯)に割れの発生や、強度不足が発生し
て弾芯を被甲2に圧入することができなくなる。 した
がって、大粉粒径重金属4は、重金属の総質量に対し
て、30〜70質量%の範囲とする。
面接着性を向上させるためのカップリング剤について説
明する。 このカップリング剤は、エラストマを含む熱
可塑性樹脂組成物と重金属とを混練成形する際に添加す
る一種の界面活性剤(表面活性剤)であって、一つの分
子の中に、樹脂に対して親和性を有する基と、金属に対
して親和性を有する基との両方を持っているものであ
る。
樹脂組成物と重金属との剥離や成形品(弾芯)の割れを
防止することができる。 このカップリング剤として
は、チタン系カップリング剤をn−プロピルアルコール
に溶かし、重金属の総質量に対して、0.2〜1.0質
量%の範囲にした。 なお、このチタン系カップリング
剤の他に、シラン系カップリング剤や、アルミニウム系
カップリング剤が利用できる。
の一例を説明する。 最初に、ポリプロピレン(PP)
と、でんぷんをベースとした生分解性および水溶性の両
性質を備えている生分解性添加物とを質量比で80対2
0割合で混ぜる。 そして、この混合したものにフタル
酸ジオクチル(DOP)からなる可塑剤を添加して、粉
体混合機により混合する。
加物のエラストマ、生分解性添加物および可塑剤を混合
したものを押出機に投入して、加熱溶融し、押し出し、
カッティングして直径が約0.5mmで、長さが約0.
5〜1.0mm程度の略円柱状の樹脂ペレットを形成す
る。
おいて、例えばタングステンの大粉粒径重金属4と小粉
粒径重金属5とを適宜選択した割合で混合した重金属
と、重金属の表面とポリマ樹脂の分子との界面接着性を
向上させるチタン系のカップリング剤とを混合する。
具体的には、チタン系カップリング剤をn−プロピルア
ルコールにて温度50℃で1時間程度、攪拌混合するこ
とにより溶かして樹脂ペレットに添加する。 次にこの
重金属にカップリングを添加したものを乾燥炉で乾燥す
る。
混合したものと、ポリマ樹脂にエラストマ、生分解性添
加物および可塑剤を添加して形成した樹脂ペレットとを
粉体混合機で混合する。 次に、樹脂ペレットと重金属
とを混合したものを押出機に投入する。 この押出機に
投入された樹脂ペレットおよび重金属は加熱され、押出
機内部のスクリューで押出口からカッティングなしに冷
風装置を有する冷房室に押し出される。
し出される重金属入りの熱可塑性樹脂組成物を冷却す
る。 冷風装置によって冷やされた重金属入りの熱可塑
性樹脂組成物は回転刃によって切断するホットカッタを
備えたペレタイザによって切断され、ペレット状にされ
る。 ペレット状に切断された重金属入りの熱可塑性樹
脂組成物を余熱で溶着した状態のペレットとなっている
ものを、形状の整ったペレットにするため解砕機に投入
する。
解砕機からある程度の量が溜まった後かき混ぜるタンブ
ラに投入する。 これらの工程を経てペレット状の重金
属入りの熱可塑性樹脂組成物の弾芯素材を製造する。
樹脂組成物は、生分解性を有するポリマ樹脂と、タング
ステンの大粉粒径,小粉粒径が混在した重金属とを混合
しているため、ポリマ樹脂は押出機の内部で溶融状態と
し、次いで冷却することによりこのポリマ樹脂が大・小
粉粒径の重金属同士を結合させるバインダとしての役割
を果たし、熱可塑性樹脂組成物の内部に大・小粉粒径の
重金属を埋め込むことができる。
物とタングステンの重金属を使用しているため、自然環
境中に放置されても、微生物等により分解されて、その
まま自然環境に悪影響を及ぼすことがない。 タングス
テンは鉛のような毒性がなく環境を汚染しない。 ま
た、ポリマ樹脂には可塑剤が添加されているため、ポリ
マ樹脂の流動性を向上させることができる。 これによ
りポリマ樹脂と大・小粉粒径の重金属との加熱混練時に
おけるポリマ樹脂と重金属の金属表面との接触状態を良
好なものとすることができる。
成物を大・小粉粒径の重金属の表面周囲にくまなく行き
渡らせることができ、両者間に隙間を発生することを抑
え、両者を強固に密着させることができる。 さらに、
ポリマ樹脂に可塑剤を用いて形成した樹脂ペレットにカ
ップリング剤を添加しているため、重金属の表面を被覆
して熱可塑性樹脂組成物との親和性を高め界面の剥離が
抑えられる。
状の重金属入りの熱可塑性樹脂組成物を別の押出機であ
る射出成形機の内部に投入して、複数個配列された弾芯
型内で射出成形することにより、所定形状の弾芯に成形
するものである。 このようにして成形された弾芯は、
図2に示すように、エラストマを含む熱可塑性樹脂組成
物3の内部に重金属が埋め込まれた状態にある。 そし
て、熱可塑性樹脂組成物3の内部に埋め込まれた重金属
は、大粉粒径重金属4と小粉粒径重金属5とが、熱可塑
性樹脂組成物3の内部で均一に分散されたものにするこ
とができる。
は銅合金で円筒状に形成された被甲2の開口部より圧入
して密着するように結合し、その開口部を折り返すこと
によって図2に示す弾丸に形成する。
いて試験した。 その弾芯の比重は、2/4/8/1
1.3/13.5の五種類で、それぞれに、ポリプロピ
レンPP,ステンレス鋼SUS,タングステンW,粉粒
状のガラスGP,エラストマを選択して混合し、カップ
リング剤,n−プロピルアルコール,フタル酸ジオクチ
エル(可塑剤)を含む添加剤を適宜加えた。 これらの
混合比率は以下のとおりであって、さらにこれらを一表
にして表3に示す。 ただし、比重調整物質(重金
属)、ポリマ樹脂、エラストマ以外の添加物は、外割り
の混合比率である。
であって、各混合比率の基準は以下のとおりである。
すなわち、カップリング剤,n−プロピルアルコール
は、比重調整物質に対する質量%である。 フタル酸ジ
オクチル(DOP)は、比重8(試験符号8A),1
1.3(試験符号11A),13.5(試験符号13
A)については、ポリプロピレン(PP)およびエラス
トマに対する質量%、11.3(試験符号11B)につ
いては、エラストマに対する質量%である。
3.5の弾芯を用いた弾丸について実射を行った。 実
射試験の結果は表4に示すとおりである。
8Aについては、0.20gと0.28gとの二種類と
し、試験符号11A,11B,13Aは、0.28gの
一種類とした。 命中度は1射群10発×3的の平均半
径の平均値を表す。 命中精度の求め方は、銃口から2
5m点の標的位置において図4に示すように標的(C
点)からの距離Zの平均半径MR=ΣZ/N、(但しN
は弾痕数)で求めてMR値で評価した。 MR値の低い
ほうが命中精度が高い。 拳銃弾の命中精度はMR値が
30mm以下が実用可能である。 飛翔性は、標的紙の
弾痕状態で判断した。 良好とは正常姿勢で貫通した状
態とした。
8/11.3/13.5のすべての弾丸について、命中
精度及び飛翔性において良好であり、鉛を弾芯とした従
来の弾丸に対して、全く遜色はなく実用に十分に対応で
きる。 また、ポリマ樹脂のポリプロピレン(PP)を
含まず、タングステン(W)とエラストマとを主要組成
とした試験符号11B(弾芯の比重11.3)の試射結
果も良好であり、ポリマ樹脂を含まない弾芯でも十分に
実用に供しうる。
効果を奏する。
蝕性に優れているので、本発明による弾丸を長期間貯蔵
しておいても変質することがない。 また、重金属を混
合することで、従来の鉛を使用した弾丸と、同等の比重
または小さい比重で弾丸素材を組成できるので、鉛を使
用した弾丸と同等の威力特性や低威力特性の弾丸を選択
的に構成できる。 そして、この発明による弾丸は、鉛
を使用しないので無毒で、環境や動物に悪影響を及ぼさ
ない効果を奏する。さらに、重金属は、その粉粒径が1
〜3μmの小粉粒径重金属と、100〜150μmの大
粉粒径重金属とをそれぞれ重金属の総質量の30〜70
質量%を混在させることで混練抵抗を低くして、成形機
などのスクリューが破損することや、熱可塑性樹脂組成
物との剥離を防止することができるので、生産性の向上
を図ることができる。 また、小粉粒径重金属の粉粒径
を1〜3μmにしたので、作業中に粉塵が飛散すること
を防止できて、作業環境の改善や製造コストの低減を図
ることができる。 また、大粉粒径重金属の粉粒径を1
00〜150μmにしたので、弾芯の割れや強度不足が
なく、弾芯の表面を滑らかに形成できることで、弾芯の
強度や表面粗さなどの品質を維持することができる。
添加物は熱可塑性樹脂組成物を自然分解させるので、発
射された弾丸が土中や水中に放置されても、微生物等に
より分解されて環境を汚染しない効果を奏する。
材質は、タングステン,ステンレス鋼,鉄,銅またはア
ルミニウムなど各種の重金属を適宜選択して配合するよ
うにしたので、各々の混合比率を加減することで比重を
調整し、目的に適合した威力特性の弾丸を広範囲に製造
することができる。
は、熱可塑性樹脂組成物と粉粒状のガラスとを混合する
ようにしたので、特に、比重が小さい低威力特性の弾丸
を容易に製造することができる。
は、熱可塑性樹脂組成物と粉粒状の重金属およびガラス
とを混合するようにしたので、比重が高い重金属と比重
が低いガラスとの混合比率を加減して比重を調整するこ
とで、広い範囲の威力特性に適合した弾丸を製造するこ
とができる。
に形成された後の弾芯の比重は、2〜13.5にしたの
で、比重が小さい低威力特性の弾丸や、比重が大きい高
威力特性の弾丸、または、これらの中間威力特性の弾丸
を使用目的によって、広範囲に製造することができる。
樹脂組成物は、エラストマに可塑剤を添加した組成物に
したので、熱可塑性樹脂組成物にポリマ樹脂を含む弾芯
よりも、弾性をさらに高めることができる。
丸の説明図であって、その半裁断面図である。
る弾丸の説明図であって、その半裁断面図である。
弾芯と、しない弾芯との説明図であって、その圧縮試験
の結果を示すグラフである。
Claims (7)
- 【請求項1】 弾芯と、この弾芯を被覆する円筒金属の
被甲とを結合した小火器用弾丸であって、 前記弾芯は、熱可塑性のポリマ樹脂に弾芯の弾性を高め
るためのエラストマおよび可塑剤を添加した熱可塑性樹
脂組成物と、弾芯の比重を調整するため粉粒径が1〜3
μmの小粉粒径重金属を重金属の総質量に対して30〜
70質量%で100〜150μmの大粉粒径重金属を重
金属の総質量に対して30〜70質量%で混在する重金
属と、前記熱可塑性樹脂組成物と前記重金属との界面接
着性を向上させるためのカップリング剤とから弾芯素材
を組成し、この弾芯素材を所定形状の弾芯に形成するよ
うにしたことを特徴とする小火器用弾丸。 - 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂組成物には、ポリマ樹
脂を自然分解させるための生分解性添加物を添加するよ
うにしたことを特徴とする請求項1に記載の小火器用弾
丸。 - 【請求項3】 前記重金属の材質は、タングステン,ス
テンレス鋼,鉄,銅またはアルミニウムのいずれか、も
しくはこれらを組み合わせるようにしたことを特徴とす
る請求項1乃至2のいずれか1項に記載の小火器用弾
丸。 - 【請求項4】 前記弾芯素材は、粉粒状の重金属に置き
替えて、粉粒状のガラスにしたことを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の小火器用弾丸。 - 【請求項5】 前記ガラスには、前記重金属を混在する
ようにしたことを特徴とする請求項4に記載の小火器用
弾丸。 - 【請求項6】 前記所定形状に形成された後の弾芯の比
重は、2〜13.5であるようにしたことを特徴とする
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の小火器用弾丸。 - 【請求項7】 前記熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性の
ポリマ樹脂にエラストマおよび可塑剤を添加した熱可塑
性樹脂組成物に置き替えて、エラストマに可塑剤を添加
した熱可塑性樹脂組成物にしたことを特徴とする請求項
1または3乃至6のいずれか1項に記載の小火器用弾
丸。
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