JP3406686B2 - ポリアミドエステル、その製造方法およびそれを含有する樹脂組成物 - Google Patents

ポリアミドエステル、その製造方法およびそれを含有する樹脂組成物

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JP3406686B2 JP12631494A JP12631494A JP3406686B2 JP 3406686 B2 JP3406686 B2 JP 3406686B2 JP 12631494 A JP12631494 A JP 12631494A JP 12631494 A JP12631494 A JP 12631494A JP 3406686 B2 JP3406686 B2 JP 3406686B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なポリアミドエステ
ル、その製造方法およびこれを含有する樹脂組成物に関
する。更に詳しくは、本発明は熱可塑性合成高分子に優
れた永久制電性を付与できる改質剤として有用な新規な
ポリアミドエステル、その製造方法およびこれを含有す
る制電性能に優れた樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性合成高分子は、材料として優れ
た特性を有するため様々な産業分野に広く利用されてい
る。しかし、熱可塑性合成高分子は一般に疎水性のた
め、静電気を帯びやすく近年急速に高度化しているエレ
クトロニクス分野等に用いた場合、帯電した高電圧の静
電気が回路を破壊したり、誤動作の原因となったりして
大きな問題となってきている。
【0003】従来、熱可塑性合成高分子に帯電防止性を
付与する方法として、該熱可塑性合成高分子にイオン性
基を導入する数多くの試みがされている。例えば熱可塑
性樹脂にスルホン酸基を含有する低分子化合物を添加せ
しめる方法が提案されているが(特開昭62―2308
35号公報、特開平5―222241号公報、特開平5
―222357号公報)、この方法では得られる樹脂は
その制電性が長時間持続しないという問題点がある。
【0004】これを改善するためスルホン酸塩基を熱可
塑性ポリマーの末端に導入する方法が提案されている
(特開昭64―14268号公報)。しかしながら末端
にスルホン酸塩を有効量有するポリマーを製造使用する
と、必然的にポリマーの分子量が低くなり、機械的特性
が低下する上、制電効果そのものも十分ではない。
【0005】また、脂肪族ポリエステルあるいはポリア
ミドの分子鎖中にスルホン酸塩を導入したものが提案さ
れている(USP4006123、USP403534
6)。このポリマーは帯電防止性には優れているが、低
Tgでかつ低結晶性であるため、Tg以上の温度例えば
室温でのポリマーの取扱いが困難であり、実用的ではな
い。
【0006】一方、特定のポリエーテルエステルアミド
を熱可塑性樹脂の帯電防止剤として使用することが開示
されている(特開昭62―27352号公報、特開平1
―162252号公報、特開平5―38747号公
報)。このポリマーは帯電防止剤として比較的バランス
のとれた特性を有しているが、他種熱可塑性樹脂に対す
る相溶性が乏しく、機械的特性、帯電防止効果、更に耐
熱性にも限界があり、十分満足できるには至っていない
のが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、成形
用熱可塑性合成高分子に適量混合することで、その機械
的強度、耐熱性等の諸物性を損なうことなく、優れた永
久制電性を付与できる改質剤、その製造方法およびこれ
を含有する組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的は、第1に下記式(1)
【0009】
【化8】
【0010】[ここで、R1 は炭素数4〜12のアルキ
レン基である。]で表される繰り返し単位および下記式
(2)
【0011】
【化9】
【0012】[ここで、R2 は炭素数4〜12のアルキ
レン基または炭素数8〜16のアルキレン―アリーレン
―アルキレン基であり、そしてR3 は炭素数4〜12の
アルキレン基である。]で表される繰り返し単位の少な
くともいずれか一方の繰り返し単位から実質的になるポ
リアミド成分(a)、並びに下記式(3)
【0013】
【化10】
【0014】[ここで、R4 は炭素数4〜12のアルキ
レン基である。]で表される繰り返し単位および下記式
(4)
【0015】
【化11】
【0016】[ここで、R5 は炭素数2〜12のアルキ
レン基であり、そしてR6 は炭素数2〜12のアルキレ
ン基の組合わせである。]で表される繰り返し単位の少
なくともいずれか一方の繰り返し単位から実質的になる
脂肪族ポリエステル成分(b)および下記式(5)
【0017】
【化12】
【0018】[ここで、Mはアルカリ金属イオン、アル
カリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモ
ニウムイオンを表す。Arは芳香族残基である。]で示
されるスルホン酸塩含有ジカルボン酸残基成分(c)か
らなるポリアミドエステルであり、上記成分(a)、
(b)、(c)の構成比が下記式(6)、(7)を満た
し、20℃、相対湿度(HR)65%で測定した表面固
有抵抗値Rの常用対数値(LogR)が11.0Ω以
下、還元粘度(フェノール/1,1,2,2―テトラク
ロルエタン混合溶媒(重量比60/40)中、濃度1.
2g/dl、温度35℃で測定)が0.3〜3.0であ
ることを特徴とするポリアミドエステルによって達成さ
れる。
【0019】
【数2】 10/90≦A/B≦80/20 …(6) 0.001≦C/(A+B)≦0.30 …(7) [ここで、A、B、Cは、上述した成分(a)、
(b)、(c)のモル量を表す。] 式(1)において、R1 は炭素数4〜12ののアルキレ
ン基である。かかるアルキレン基は直鎖状であっても分
岐鎖状であってもよいが直鎖状が好ましい。かかるアル
キレン基の例としては、例えばテトラメチレン、ペンタ
メチレン、ヘキサメチレン、デカメチレン、ウンデシレ
ン基等を挙げることができる。これらのうち、ペンタメ
チレン基が好ましい。R1 がペンタメチレン基であると
き、上記式(1)は、下記式(1)―a
【0020】
【化13】
【0021】で表される。この構造の繰り返し単位は一
般にナイロン6と称されている。
【0022】上記式(1)で表される繰り返し単位とし
ては、この他、例えば、
【0023】
【化14】
【0024】を挙げることができる。
【0025】また、式(2)においては、R2 は炭素数
4〜12のアルキレン基または炭素数8〜16のアルキ
レン―アリーレン―アルキレン基であり、R3 は炭素数
4〜12のアルキレン基である。
【0026】R2 およびR3 が表す炭素数4〜12のア
ルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であって
も、あるいは環状であってもよい。
【0027】その例として、例えばテトラメチレン、ヘ
キサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカ
メチレン、ネオペンチレン、2,4,4―トリメチルヘ
キサメチレン、1,4―シクロヘキシレンを挙げること
ができる。アルキレン―アリーレン―アルキレン基とし
ては、メチレン―フェニレン―メチレン基が挙げられ
る。
【0028】これらのうち、R2 としてはヘキサメチレ
ンが好ましく、R3 としてはテトラメチレンが好まし
い。この場合、上記式(2)は下記式(2)―a
【0029】
【化15】
【0030】で表される。
【0031】上記式(2)で表される繰り返し単位とし
ては、このほか、例えば
【0032】
【化16】
【0033】等を挙げることができる。
【0034】一方、脂肪族ポリエステルに関し、上記式
(3)において、R4 は炭素数1〜12のアルキレン基
である。かかるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐
鎖状であってもよい。直鎖状のものが好ましい。
【0035】かかるアルキレン基としては、メチレン、
メチルメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチ
レン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ウンデシレン
基等を挙げることができる。これらのうちメチレン、メ
チルメチレン、ペンタメチレン基等が好ましい。
【0036】ペンタメチレン基が特に好ましく、その場
合、上記式(3)は下記式(3)―a
【0037】
【化17】
【0038】で表される。この構造の繰り返し単位は一
般にポリカプロラクトンと称されている。
【0039】また、式(4)においては、R5 は炭素数
2〜12のアルキレン基であり、R 6 は炭素数2〜12
のアルキレン基である。
【0040】R5 およびR6 が表す炭素数2〜12のア
ルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であっても、
あるいは環状であってもよい。
【0041】その例として、エチレン、トリメチレン、
テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デ
カメチレン、ドデカメチレン、ネオペンチレン、2,
4,4―トリメチルヘキサメチレン、1,4―シクエオ
ヘキシレン、メチレン―シクロヘキシレン―メチレンを
挙げることができる。
【0042】また、式(5)のスルホン酸塩含有ジカル
ボン酸残基において、Mはアルカリ金属イオン、アルカ
リ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニ
ウムイオンである。
【0043】ホスホニウムイオンとして、下記式で表さ
れるものが挙げられる。
【0044】
【化18】
【0045】式中、R7 、R8 、R9 、R10は、同一ま
たは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素
数1〜18のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の
炭素数6〜18のアリール基を表す。
【0046】アンモニウムイオンとして、下記式で表さ
れるものが挙げられる。
【0047】
【化19】
【0048】式中、R11、R12、R13、R14は、同一ま
たは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素
数1〜18のアルキル基、フェニル基またはナフチル基
等の炭素数6〜18のアリール基を表す。
【0049】これらのうち特に好ましくは、アルカリ金
属イオン、ホスホニウムイオンが挙げられる。
【0050】Arはベンゼン環あるいはナフタレン環等
の芳香族残基である。
【0051】かかるスルホン酸基含有ジカルボン酸残基
成分(c)は、上記のカルボン酸残基に対応するカルボ
ン酸を反応系内に共存させることにより、エステル結合
および/またはアミド結合を介して該ポリアミドエステ
ルに主鎖内に含有される。
【0052】本発明のポリアミドエステルは上記ポリア
ミド成分(a)、上記脂肪族ポリエステル成分(b)お
よび上記スルホン酸塩含有ジカルボン酸残基成分(c)
からなり、かつ上記繰り返し成分(a)、(b)および
(c)の構成比が式(6)および(7)を満足する。
【0053】
【数3】 10/90≦A/B≦80/20 …(6) 0.001≦C/(A+B)≦0.30 …(7) ここで、A、B、Cは、上述した成分(a)、(b)、
(c)のモル量を表す。
【0054】式(6)において、左辺が10/90より
小さいと十分な強度、耐熱性が得られず、右辺が80/
20より大きいと、制電性が発現しない。式(7)にお
いて、左辺が0.001より小さいと十分な制電性が得
られず、右辺が0.30より大きいと、物性が著しく低
下し、実際の使用に耐えない。各成分の構成比は下記式
(6)―aおよび(7)―aを満足することが好まし
い。
【0055】
【数4】 20/80≦A/B≦70/30 …(6)−1 0.005≦C/(A+B)≦0.20 …(7)−1
【0056】本発明のポリアミドエステルは、20℃、
相対湿度65%の条件下で測定した表面固有抵抗値Rの
常用対数値(LogR)が11.0Ω以下の値を示す。
表面固有抵抗が11.0より大きいと他の熱可塑性合成
高分子に混合した場合、充分な制電性を付与することが
できない。表面固有抵抗は好ましくは10.0以下であ
る。
【0057】また、得られたポリアミドエステルは還元
粘度(フェノール/1,1,2,2―テトラクロルエタ
ン混合溶媒(重量比60/40)中、濃度1.2g/d
l、温度35℃で測定)が0.3〜3.0である。0.
3以下では他の熱可塑性合成高分子に混合した場合に著
しい物性低下の原因となり、3.0以上では混合して成
形することが困難となり好ましくない。0.4〜2.5
程度の還元粘度のポリアミドエステルがより好ましい。
【0058】本発明のポリアミドエステルは、DSC測
定(昇温速度10℃/分)において、ポリアミド成分
(A)に由来する融点(Tm)を有し、そのTmが10
0〜240℃であり、かつTmピークより計算される融
解熱Qが5〜30ジュール/グラムである。融解熱Qが
5ジュール/グラムより小さいと室温下での形状維持が
困難になり取扱いがしにくくなり、30ジュール/グラ
ムより大きいと他の熱可塑性合成高分子に混合した場
合、充分な制電性が発現しない。
【0059】(製造方法)ポリアミドエステルは以下の
方法で製造することができる。
【0060】即ち、(i)式(1)および/または
(2)で表される繰り返し単位から実質的になるポリア
ミド(d)、(ii)式(3)および/または(4)で表
される繰り返し単位からなる脂肪族ポリエステル(e)
および/または該脂肪族ポリエステル形成性成分、(ii
i )下記式(8)で表されるスルホン酸塩含有ジカルボ
ン酸(f)および(iv)(d)、(e)および(f)成
分の合計重量100重量部あたり5〜100重量部の芳
香族モノヒドロキシ化合物(式(9))を、エステル交
換触媒の存在下に、加熱溶融反応せしめ、次いで該芳香
族モノヒドロキシ化合物を留去せしめポリアミドエステ
ルを製造する。
【0061】ここで脂肪族ポリエステル形成性成分とし
ては、ε―カプロラクトンを挙げることができる。
【0062】
【化20】
【0063】式(8)において、R15、R16は、水素原
子あるいはメチル基、エチル基等の炭素数1〜3のアル
キル基であり、Mは式(5)と同じである。
【0064】ジカルボン酸の具体的な例としては、4―
ナトリウムスルホ―イソフタル酸、5―ナトリウムスル
ホ―イソフタル酸、4―カリウムスルホ―イソフタル
酸、5―カリウムスルホ―イソフタル酸、2―ナトリウ
ムスルホ―テレフタル酸、2―カリウムスルホ―テレフ
タル酸、4―スルホ―イソフタル酸亜鉛塩、5―スルホ
―イソフタル酸亜鉛塩、2―スルホ―テレフタル酸亜鉛
塩、4―スルホ―イソフタル酸テトラアルキルホスホニ
ウム塩、5―スルホ―イソフタル酸テトラアルキルホス
ホニウム塩、4―スルホ―イソフタル酸テトラアルキル
アンモニウム塩、5―スルホ―イソフタル酸テトラアル
キルアンモニウム塩、2―スルホ―テレフタル酸テトラ
アルキルホスホニウム塩、2―スルホ―テレフタル酸テ
トラアルキルアンモニウム塩、4―ナトリウムスルホ―
2,6―ナフタレンジカルボン酸、4―ナトリウムスル
ホ―2,7―ナフタレンジカルボン酸、4―カリウムス
ルホ―2,6―ナフタレンジカルボン酸、4―スルホ―
2,6―ナフタレンジカルボン酸亜鉛塩等を挙げること
ができる。
【0065】好ましくは、以下に示す5―ナトリウムス
ルホ―イソフタル酸((8)―a)、5―ナトリウムス
ルホ―イソフタル酸ジメチルエステル((8)―b)、
5―ナトリウムスルホ―イソフタル酸ジエチルエステル
((8)―c)、5―スルホ―イソフタル酸テトラブチ
ルホスホニウム塩((8)―d)、5―スルホ―イソフ
タル酸ジメチルエステル―テトラブチルホスホニウム塩
((8)―e)、5―スルホ―イソフタル酸ジエチルエ
ステル―テトラブチルホスホニウム塩((8)―f)等
が挙げられる。
【0066】
【化21】
【0067】さらに以下の化合物も好適に用いることが
できる。
【0068】
【化22】
【0069】本発明においては、下記式(9)に示す芳
香族モノヒドロキシ化合物を好適に用いることができ
る。
【0070】
【化23】
【0071】式(9)において、Xはメチル基、エチル
基等の炭素数1〜3のアルキル基、塩素原子、臭素原子
等のハロゲン原子であり、mは0〜3の整数である。
【0072】かかる芳香族モノヒドロキシ化合物として
は、例えば、フェノール、m―クレゾール、p―クレゾ
ール、o―クレゾール、2,3―ジメチルフェノール、
2,4―ジメチルフェノール、2,5―ジメチルフェノ
ール、2,6―ジメチルフェノール、3,4―ジメチル
フェノール、3,5―ジメチルフェノール、m―エチル
フェノール、o―エチルフェノール、p―エチルフェノ
ール、m―プロピルフェノール、o―プロピルフェノー
ル、p―プロピルフェノール、m―クロルフェノール、
o―クロルフェノール、p―クロルフェノール、2,4
―ジクロルフェノール、2,3―ジクロルフェノール、
2,5―ジクロルフェノール、2,4,6―トリクロル
フェノール等を挙げることができる。
【0073】芳香族モノヒドロキシ化合物の使用量は、
ポリアミド(d)、脂肪族ポリエステルおよび/または
ε―カプロラクトン(e)およびスルホン酸塩含有ジカ
ルボン酸(f)の合計量100重量部に対し5〜100
重量部使用することができる。
【0074】芳香族モノヒドロキシ化合物の使用量がポ
リアミド(d)に、脂肪族ポリエステルおよび/または
ε―カプロラクトン(e)の合計量100重量部に対し
て5重量部未満では上記相溶化剤としての作用が不十分
であり、また100重量部より多いと重合後芳香族モノ
ヒドロキシ化合物を重合系より留去する工程に長時間を
要し、好ましくない。
【0075】芳香族モノヒドロキシ化合物の使用量はポ
リアミド(f)、脂肪族ポリエステルおよび/またはε
―カプロラクトン(e)、およびスルホン酸塩含有ジカ
ルボン酸(f)の合計量100重量部に対し、好ましく
は10〜50重量部である。
【0076】加熱反応時の反応温度は特に制限はなく、
上述した(d)、(e)、(f)の原料成分が重合反応
系において、溶融ないし溶解する温度であればよい。好
ましくは180〜320℃、より好ましくは200〜3
00℃程度である。
【0077】上記溶融反応系には、反応を迅速に進める
ため触媒が添加される。該触媒としては、エステル交換
触媒として公知のものが使用される。好ましいエステル
交換触媒としては、例えばアルカリ金属化合物、アルカ
リ土類金属化合物、チタン、錫、亜鉛、アンチモン、マ
ンガン、コバルト、ゲルマニウム等の金属化合物を挙げ
ることができる。触媒の使用量は特に制限はないが、生
成するポリアミドエステルに対して好ましくは0.00
01〜0.1重量%の量である。
【0078】溶融時間には特に制限はなく、ポリマー組
成、重合温度などによっても異なるが、大略30分間〜
5時間程度である。
【0079】本発明のポリアミドエステルを効率的に製
造する方法の最終段階として、前記芳香族モノヒドロキ
シ化合物を重合系より留去せしめて、実質的に除去する
必要がある。芳香族モノヒドロキシ化合物を除去する方
法としては、溶融温度を、使用する芳香族モノヒドロキ
シ化合物の重合条件下における沸点より高くする方法が
挙げられる。溶融段階後期に反応系を徐々に減圧するこ
とは、芳香族モノヒドロキシ化合物の沸点を低下せし
め、これを留去するのに有効であり、好ましく実施でき
る。芳香族モノヒドロキシ化合物を留去せしめることに
より、本発明のポリエステルアミドを得ることができ
る。
【0080】かくして、重合時の雰囲気は反応初期に
は、窒素、アルゴン、等の不活性ガス雰囲気下常圧ない
し加圧とし、反応後期には徐々に減圧することが好まし
い。
【0081】(樹脂組成物)上述の方法で得られたポリ
アミドエステルを成形用熱可塑性合成高分子に適量混合
することで、前記成形用熱可塑性合成高分子の機械的強
度、耐熱性等の諸物性を損なうことなく、優れた永久制
電性を付与された樹脂組成物を提供することができる。
【0082】該樹脂組成物は2種以上の熱可塑性樹脂成
分より実質的に構成される樹脂組成物であって、該樹脂
組成物の1成分として本発明のポリアミドエステルを樹
脂組成物あたり1〜50重量%含有することを特徴とす
る、20℃、相対湿度(HR)65%の条件下で測定し
た表面固有抵抗値Rの常用対数値(LogR)が13.
0Ω以下である樹脂組成物である。
【0083】上記成形用熱可塑性樹脂成分として、ポリ
エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカ
ーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルエステル樹脂から
選ばれた1種または2種以上を使用することができる。
ポリアミドエステルの使用量は樹脂組成物あたり、好ま
しくは2〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%
である。
【0084】樹脂組成物は、エクストルーダーなどの溶
融押出機を用いる従来公知の方法によって製造すること
ができる。
【0085】また混合する際に、さらに制電性能を高め
るために従来用いられてきた界面活性剤型の添加剤を加
えても何ら問題はない。例えば、ドデシルベンゼンスル
ホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウ
ム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、アルカンス
ルホン酸ナトリウム、アルカンリン酸カリウム等が挙げ
られる。
【0086】なかでも、本発明のポリアミドエステル3
〜30重量部とポリカーボネート樹脂97〜70重量部
とからなる組成物、本発明のポリアミドエステル3〜3
0重量部とABS樹脂97〜70重量部からなる組成
物、本発明のポリアミドエステル3〜30重量部とAS
樹脂97〜70重量部からなる組成物、本発明のポリア
ミドエステル3〜30重量部とポリブチレンテレフタレ
ート97〜70重量部とからなる組成物が好ましい。
【0087】またポリカーボネート樹脂20〜80重量
部、ABS樹脂80〜20重量部からなる樹脂組成物に
対し、本発明のポリアミドエステルを5〜30重量部混
合した樹脂組成物が好ましい。この組成物に、さらにド
デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を
1〜5重量部添加してもよい。
【0088】
【発明の効果】本発明のポリアミドエステルは優れた制
電性能を有し、成形用熱可塑性高分子に混合することに
より機械的強度、耐熱性等の諸物性を損なうことなく永
久制電性を付与することができる。
【0089】また、本発明によれば、かかるポリアミド
エステルを簡便な方法で得ることができる。
【0090】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明を詳述するが、本
発明は実施例のみに限定されるものではない。実施例中
「部」は「重量部」を意味する。ポリマーの物性は以下
の方法で測定した。
【0091】(粘度)得られたポリアミドエステルの還
元粘度は、フェノール/1,1,2,2―テトラクロル
エタン混合溶液(重量比60/40)中、濃度1.2g
/dl、温度35℃にて測定した。
【0092】また、原料ポリアミドの固有粘度は、m―
クレゾールを溶媒とし、温度35℃にて測定した。
【0093】(DSC測定)DSC測定は、Seiko Inst
ruments 社製SSC5200を用いて、窒素気流下、室
温から300℃までの温度範囲を10℃/分の速度で行
った。融点Tmは、観察されるポリアミド成分由来の吸
熱ピークの頂点とし、融解熱Q(J/g)は、ベースラ
インより外れた吸熱ピークの面積とした。
【0094】(引張強度)ASTM D638に従い測
定した。
【0095】(曲げ強度、曲げ弾性率)ASTM D7
90に従い測定した。
【0096】(熱変形温度)熱変形温度(HDT)はA
STM D648に従い、1/4インチ、荷重18.6
kg/cm2 で測定した。
【0097】(衝撃強度)得られたポリアミドエステル
を含有成形物の衝撃強度は、ASTM D256に従い
1/8インチで測定した。
【0098】(表面固有抵抗)得られたポリアミドエス
テルおよびポリアミドエステル含有成形品の表面固有抵
抗値Rは、20℃、相対湿度(HR)60%の恒温恒湿
室に1日放置した後、超絶縁計(東亜電波工業(株)製
SM―8210)で測定を行った。
【0099】(永久制電性の評価)予め上述の方法で表
面固有抵抗を測定したポリアミドエステル含有成形品
を、流速500ml/分の水道水が絶えず注がれる30
℃の恒温震盪槽中で2時間浸し、水分を抜き取り乾燥さ
せた(水洗処理)。その後、上述と同様に再び表面固有
抵抗を測定した。
【0100】[実施例1] 固有粘度1.41、末端COOH基量66当量/10 6
g、末端NH2基量15当量/10 6 gであるナイロン6
(Ny6と略す)の粒状チップとε―カプロラクトン
(以下CLと略す)総計98部(モル比Ny6/CL=
50/50)、5―ナトリウムスルホ―イソフタル酸ジ
メチルエステル2部(0.8モル%)、3―メチル―
1,5―ペンタンジオール0.8部、p―クロルフェノ
ール33部、テトラブチルチタネート0.01部を攪拌
装置および真空留出系を備えた反応容器に入れ、常圧下
窒素気流中250℃に加熱した。
【0101】約10分後、ε―カプロラクトンが開環重
合を開始し白濁溶液になり、更に約3時間後均一溶液と
なった。この間反応液は徐々に増粘した。次に温度は2
50℃に保ち、徐々に減圧として、10分後に約20m
mHg、更に10分後に1mmHg以下の程度の高真空
状態とし、同条件下に30分間反応させた。この間p―
クロロフェノールが重合系から流出した。
【0102】得られたポリマーは溶融状態でわずかに黄
色がかった透明ポリマーであり、固有粘度1.0、DS
C測定結果よりTm=183℃、Q=21.8ジュール
/グラムであった。
【0103】[実施例2〜4]ナイロン6とε―カプロ
ラクトンとの総仕込み量98部のうち、ナイロン6(N
y6)とε―カプロラクトン(CL)との構成モル比を
[Ny6/CL=30/70、35/65、40/6
0]と変化させた以外は、実施例1と同様に重合を行っ
た。得られたポリマーのTm、QおよびlogRを表1
に示す。
【0104】[実施例5]5―ナトリウムスルホ―イソ
フタル酸ジメチルエステルを1.6モル%用いた以外
は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマー
のTmおよびQを表1に示す。
【0105】[実施例6]5―ナトリウムスルホ―イソ
フタル酸ジメチルエステルの代わりに、5―スルホ―イ
ソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩を用いた以外
は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマー
のTmおよびQを表1に示す。
【0106】[実施例7]Ny6とε―カプロラクトン
との総仕込み量98部のうち、Ny6とε―カプロラク
トンとの構成モル比を[Ny6/CL=35/65]と
変化させた以外は、実施例6と同様に重合を行った。得
られたポリマーのTmおよびQを表1に示す。
【0107】[比較例1]5―スルホ―イソフタル酸ジ
メチルエステルを使用しない以外は、実施例1と同様に
重合を行った。得られたポリマーのTmおよびQを表1
に示す。
【0108】[比較例2]5―スルホ―イソフタル酸ジ
メチルエステルの代わりに、イソフタル酸ジメチルエス
テルを用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。
得られたポリマーのTmおよびQを表1に示す。
【0109】[実施例8]実施例1〜7および比較例
1、2で得られたポリアミドエステルを粉砕したチップ
を名機製作所製M―50B成型機にて、シリンダー温度
210℃、金型温度40℃の条件で成形を行った。得ら
れた成形品の表面固有抵抗(R)を測定し、表1にlo
gR(Ω)を示した。
【0110】
【表1】
【0111】[実施例9〜12]実施例1、3、5、お
よび7で得られたポリマーを粉砕したチップと、ポリカ
ーボネート樹脂チップ(帝人化成製パンライト(登録商
標)L―1250)とを表2に示す組成になるよう混合
した後、シリンダー温度260℃、金型温度40℃の条
件で成形を行った。得られた成形品の各物性値を表2に
示す。
【0112】[比較例3]ポリカーボネート樹脂チップ
(帝人化成製パンライト(登録商標)L―1250)
を、シリンダー温度20℃、金型温度90℃の条件で成
形を行った。得られた成形品の各物性値を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】[実施例13〜16]実施例1、3、5お
よび7で得られたポリマーを粉砕したチップと、ABS
樹脂チップ(三井東圧製UT―61)とを表3に示す組
成になるよう混合した後、シリンダー温度230℃、金
型温度40℃の条件で成形を行った。得られた成形品の
各物性値を表3に示す。
【0115】[比較例4]ABS樹脂チップ(三井東圧
製UT―61)を、シリンダー温度230℃、金型温度
40℃の条件で成形を行った。得られた成形品の各物性
値を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】[実施例17〜18]実施例1、3で得ら
れたポリマーを粉砕したチップとAS樹脂チップ(日本
合成ゴム(株)製JSR AS―230)とを表4に示
す組成となるよう混合した後、シリンダー温度230
℃、金型温度40℃の条件で成形を行った。得られた成
形品の各物性値を表4に示す。
【0118】[比較例5]AS樹脂チップ(日本合成ゴ
ム(株)製JSR AS―230)を、シリンダー温度
230℃、金型温度40℃の条件で成形を行った。得ら
れた成形品の各物性値を表4に示す。
【0119】
【表4】
【0120】[実施例19〜20]実施例1、3で得ら
れたポリマーを粉砕したチップと、ポリブチレンテレフ
タレート樹脂チップ(帝人(株)製、固有粘度0.8
8)とを、表5に示す組成となるよう混合した後、シリ
ンダー温度230℃、金型温度40℃の条件で成形を行
った。得られた成形品の各物性値を表5に示す。
【0121】[比較例6]ポリブチレンテレフタレート
樹脂チップ(帝人(株)製、固有粘度0.88)を、シ
リンダー温度230℃、金型温度40℃の条件で成形を
行った。得られた成形品の各物性値を表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】[実施例21〜23、比較例7]実施例
1、3で得られたポリマーを粉砕したチップ、ポリカー
ボネート樹脂チップ(帝人化成(株)製パンライト(登
録商標)L―1250)およびABS樹脂チップ(三井
東圧製UT―61)そしてドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウムを表5に示した重量比で混合した後、シリン
ダー温度230℃、金型温度40℃の条件で成形を行っ
た。得られた成形品の各物性値を表6に示す。
【0124】
【表6】
【0125】本発明のポリアミドエステルを用いた成形
物は、物性値を低下させることなく効果的に表面抵抗を
下げていることが判る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−45319(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 69/44

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1) 【化1】 [ここで、R1 は炭素数4〜12のアルキレン基であ
    る。]で表される繰り返し単位および下記式(2) 【化2】 [ここで、R2 は炭素数4〜12のアルキレン基または
    炭素数8〜16のアルキレン―アリーレン―アルキレン
    基であり、そしてR3 は炭素数4〜12のアルキレン基
    である。]で表される繰り返し単位の少なくともいずれ
    か一方の繰り返し単位から実質的になるポリアミド成分
    (a)、並びに下記式(3) 【化3】 [ここで、R4 は炭素数1〜12のアルキレン基であ
    る。]で表される繰り返し単位および下記式(4) 【化4】 [ここで、R5 は炭素数2〜12のアルキレン基であ
    り、そしてR6 は炭素数2〜12のアルキレン基の組合
    わせである。]で表される繰り返し単位の少なくともい
    ずれか一方の繰り返し単位から実質的になる脂肪族ポリ
    エステル成分(b)および下記式(5) 【化5】 [ここで、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
    イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオン
    を表す。Arは芳香族残基である。]で示されるスルホ
    ン酸塩含有ジカルボン酸残基成分(c)からなるポリア
    ミドエステルであって、上記成分(a)、(b)および
    (c)の構成比が下記式(6)および(7)を満たし、
    20℃、相対湿度(HR)65%の条件下で測定した表
    面固有抵抗値Rの常用対数値(LogR)が11.0Ω
    以下、還元粘度(フェノール/1,1,2,2―テトラ
    クロルエタン混合溶媒(重量比60/40)中、濃度
    1.2g/dl、温度35℃で測定)が0.3〜3.0
    であることを特徴とするポリアミドエステル。 【数1】 10/90≦A/B≦80/20 …(6) 0.001≦C/(A+B)≦0.30 …(7) [ここで、A、B、Cは、上述した成分(a)、
    (b)、(c)のモル量を表す。]
  2. 【請求項2】 DSC測定(昇温速度10℃/分)にお
    いて、ポリアミド成分(a)に由来する融点(Tm)を
    有し、そのTmが、100〜240℃であり、かつTm
    ピークより計算される融解熱Qが5〜30ジュール/グ
    ラムである請求項1記載のポリアミドエステル。
  3. 【請求項3】 (i)上記式(1)および/または
    (2)で表される繰り返し単位から実質的になるポリア
    ミド(d)、(ii)上記式(3)および/または(4)
    で表される繰り返し単位から実質的になる脂肪族ポリエ
    ステル(e)および/または該脂肪族ポリエステル形成
    性成分、(iii )下記式(8) 【化6】 [ここで、R15およびR16は、各々独立に水素原子また
    は炭素数1〜3のアルキル基を表す。Mはアルカリ金属
    イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオン
    またはアンモニウムイオンである。Arは芳香族残基で
    ある。]で表されるスルホン酸塩含有ジカルボン酸
    (f)および(iv)これら(d)、(e)および(f)
    成分の合計量100重量部あたり5〜100重量部の芳
    香族モノヒドロキシ化合物を、エステル交換触媒の存在
    下に、加熱溶融反応せしめ、次いで該芳香族モノヒドロ
    キシ化合物を留去せしめることを特徴とするポリアミド
    エステルの製造方法。
  4. 【請求項4】 芳香族モノヒドロキシ化合物が下記式
    (9) 【化7】 [ここで、Xは炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲ
    ン原子であり、mは0〜3の整数である。]で表される
    化合物であることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 2種以上の熱可塑性樹脂成分より実質的
    に構成される樹脂組成物であって、該樹脂組成物の1成
    分として請求項1記載のポリアミドエステルを樹脂組成
    物あたり1〜50重量%含有することを特徴とする、2
    0℃、相対湿度(HR)65%の条件下で測定した表面
    固有抵抗値Rの常用対数値(LogR)が13Ω以下で
    ある樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 熱可塑性樹脂成分として、ポリエステル
    樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネー
    ト樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエ
    ーテル樹脂、ポリエーテルエステル樹脂から選ばれた1
    種または2種以上を併用する請求項5記載の樹脂組成
    物。
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