JP3404865B2 - 赤血球の酸素解離、会合モニタ−方法及び装置 - Google Patents

赤血球の酸素解離、会合モニタ−方法及び装置

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JP3404865B2 JP02658194A JP2658194A JP3404865B2 JP 3404865 B2 JP3404865 B2 JP 3404865B2 JP 02658194 A JP02658194 A JP 02658194A JP 2658194 A JP2658194 A JP 2658194A JP 3404865 B2 JP3404865 B2 JP 3404865B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、赤血球と赤血球を酸化
し得る気体及び赤血球を還元し得る気体を接触させるこ
とにより、該赤血球の酸素解離、会合をモニタ−する方
法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】赤血球の主たる機能は、組織への酸素の
運搬であり、この運搬能力は一般に酸素分圧下における
ヘモグロビンの吸光度変化を測定し、酸素解離、会合曲
線を測定することで検査し得る。このような赤血球の酸
素解離、会合曲線の測定は、貧血の検査や輸血用保存血
液の能力(鮮度)の判定には欠かせないものである。
【0003】赤血球の酸素解離、会合曲線の測定は、例
えば特開昭55−23485号に記載された方法等によ
って測定することができる。この方法では、赤血球を少
量入れた等張液を透明な容器に入れ、空気又は窒素ガス
を容器下部から吹き込み、攪拌することで赤血球の酸
化、還元を生じさせ、同時に容器内の赤血球溶液の溶存
酸素や吸光度を測定し、X−Yレコ−ダによって酸素置
換特性を測定するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記したような従来の
方法では、容器内の赤血球溶液の平衡化に時間がかかる
ため、1回の測定当たり40分程度の時間が必要であ
り、例えば緊急検体に対処できない等の課題や、操作が
複雑で、かつ熟練が必要である等の課題がある。また、
測定毎に容器を洗浄する必要があるため、多数の検体に
は対処し難いという課題もある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前述の従来
技術の課題に鑑みて鋭意研究を行った結果、人工心肺や
人工エラ等に利用されているガス透過性に優れた中空糸
膜を利用することにより、短時間で赤血球の酸素解離、
会合曲線を測定(モニタ−)する方法及び装置を完成す
るに至った。
【0006】即ち本発明は、ガス透過性に優れた中空糸
膜を介し、等張液に分散した赤血球溶液と該溶液中の赤
血球を酸化し得る気体及び赤血球を還元し得る気体を接
触させることを特徴とする、赤血球の酸素解離、会合モ
ニタ−方法である。また本発明は、少なくとも1つのガ
ス透過性に優れた中空糸膜を有する中空糸膜モジュ−ル
と該モジュ−ルに赤血球を酸化し得る気体及び赤血球を
還元し得る気体を供給する手段及び該中空糸膜内に等張
液に分散した赤血球溶液を供給する手段を供えたことを
特徴とする赤血球の酸素解離、会合モニタ−装置であ
る。以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】本発明では、ガス透過性に優れた中空糸
膜、好ましくはシリコン製中空糸膜を使用する。このよ
うな中空糸膜は、従来、人工心肺や人工エラ装置等に使
用されている。そして本発明は、等張液に分散した赤血
球溶液の酸素解離、会合が該溶液の受ける酸素分圧の作
用により行われることを利用し、該溶液を中空糸膜を通
過させつつ、酸素解離の場合には赤血球を還元し得る、
例えば窒素ガス等の気体を、酸素会合の場合には赤血球
を酸化し得る、例えば空気等の気体を該中空糸膜を介し
て接触させ、赤血球を酸化、還元させ、この時の赤血球
(ヘモグロビン)の吸光度及び赤血球溶液の溶存酸素濃
度を測定しようとするものである。
【0008】前述のシリコン製中空糸膜の中でも、膜厚
の薄いものが好ましい。後の実施例に示すように、具体
的には膜厚40μm 以下のものが好ましく、膜厚20μm 以
下のものが特に好ましい。膜厚が薄くなるに従って、赤
血球溶液を酸化又は還元し得る気体との接触による反応
時間を短縮することができ、従って中空糸膜内の赤血球
溶液の流速を早めることが可能であるから、結果的に測
定時間を短縮し得るのである。しかしながら一方で、膜
厚を極端に薄くすると耐圧性が低下し、内部を通過させ
る赤血球溶液の流速を早めることが困難となることか
ら、前記20μm 程度が最も好ましい。
【0009】一方、同じ膜厚の中空糸膜の場合、同一長
さの中空糸膜であれば使用する本数を多くするか、ある
いは、同一本数の中空糸膜であればより長いものを使用
することで前記気体との接触面積(膜面積)を大きし、
もって反応時間の短縮を図ることも可能であるが、この
場合には装置が大型化してしまうため、装置を小型化し
得るという面でも膜厚の薄い中空糸膜を使用することが
好ましい。
【0010】中空糸膜は、通常、その多数を束ねて使用
するが、束の本数に特別の制限はなく、使用する中空糸
膜の膜厚、内径、長さ等を検討のうえ決定すれば良い。
実施例に示すように、膜厚20〜40μm 、内径170 −210
μm 、120mm 程度の中空糸膜を使用する場合には、100
本程度とすることが効率上最も良い。なお本発明の装置
においては、後の実施例で示すように、多数の中空糸膜
を束て殻の中に配置し、モジュ−ルとして使用する。
【0011】赤血球(ヘモグロビン)を酸化し得る気体
としては、空気が例示できる。むろん、酸素濃度が空気
以上のものを使用しても良いが、ヘモグロビンの酸素会
合特性を考慮したうえでコストや装置の構成を考えた場
合、空気が最も好ましい。例えば酸素濃度の高い気体を
使用する場合、これを中空糸膜モジュ−ルに供給するボ
ンベ等が必要となる。一方赤血球(ヘモグロビン)を還
元し得る気体としてはヘリウムガスや窒素ガスが例示で
きるが、コストの面等から窒素ガスが最も好ましい。
【0012】本発明では、中空糸膜を使用することで、
従来方法と比較して赤血球と赤血球を酸化し得る気体又
は赤血球を還元し得る気体との酸化、還元反応を迅速に
行い得ることから、中空糸膜内を通過する赤血球溶液の
流速を早めることが可能である。この結果、中空糸膜中
で酸化された赤血球溶液を早い流速で溶存酸素測定手段
へ移送することが可能となる。通常、溶存酸素測定に使
用される溶存酸素計は反応応答性が悪いが、溶存酸素計
に導入される液体の流速が早いほど、応答性は改善され
る。従って、可能な範囲で流速を早めることが好まし
い。本発明者の知見によれば、具体的に、膜厚80μm の
中空糸膜を使用した場合には1ml /分程度の流速を達成
でき、膜厚20μm の中空糸膜を使用した場合には2.5 ml
/分程度の流速を達成できる。このように、特に2.5ml
/分程度の流速を達成することで、1検体当たりの処理
時間を短縮し、かつ、精度、再現性の良い結果を得るこ
とができる。
【0013】本発明において使用する赤血球溶液として
は、例えば血液等を、例えば9gの塩化ナトリウムに注射
用蒸留水を加えて1000mlとしたような生理食塩水等の通
常の等張液に溶解(分散)してその崩壊を防止したもの
であれば特に制限なく使用することができるが、20μl
程度の血液を10ml程度の等張液に分散することが好まし
い。なお、赤血球の本来の酸素解離、会合特性を知るた
めには、赤血球を生体内と同様の環境下に保持した状態
で測定する必要がある。中でも温度、pHは、赤血球の酸
素解離、会合に特に影響を与え得ることから、少なくと
もこれら条件が生体と同一となるように、赤血球を分散
する等張液の温度、pHを厳密に管理することが特に好ま
しい。例えば人の赤血球について測定する場合には、37
℃、pH7.4 とすることが好ましく例示できる。また、後
に説明する本発明の装置については、例えば赤血球溶液
が通過する部分を一定温度に制御するような機構を設け
ることが好ましい。
【0014】以下、本発明のモニタ−装置の一例につい
て図面に基づき説明すると共に、本発明のモニタ−方法
についてより詳細に説明する。
【0015】図1はぞれぞれが中空糸膜を有する2個の
中空糸膜モジュ−ルと、それぞれの中空糸膜モジュ−ル
に赤血球(ヘモグロビン)を酸化し得る気体又は赤血球
(ヘモグロビン)を還元し得る気体を供給する手段を備
えた、赤血球の酸素解離、会合モニタ−装置である。
【0016】回転及び上下運動機構を有するサンプリン
グア−ムは、所定量(25μl )の血液(1)を取得後、
所定量(10ml)の生理食塩水(2)を取得し、等張液に
分散された赤血球溶液を調製する。サンプリングア−ム
で取得された赤血球溶液は、電磁弁(5)を経由してシ
リンジポンプ(6)により吸引される際に中空糸膜モジ
ュ−ル(4)を通過する。シリンジポンプ(6)の吸引
速度は任意に設定し得る。前述の通り、中空糸膜モジュ
−ルの膜厚、内径等により制限される範囲内で、できる
だけ中空糸膜内を通過する赤血球溶液の流速を早めると
良いが、本例の装置では、流速を1 ml/分程度とし、1
検体の処理に要する時間を5 分程度に短縮している。
【0017】シリンジポンプ(6)は、赤血球溶液をを
吸引してなお余力のある程度の内容積のものを使用する
が、本例では10mlとしてある。なお、当然のことなが
ら、シリンジポンプに代えて他の形式のポンプを使用す
ることができる。また一連の操作を完了した後に、サン
プリングア−ム(3)を生理食塩水(2)に浸し、シリ
ンジポンプを稼働することで、中空糸膜モジュ−ルやそ
の他の導管の洗浄を行い得る。
【0018】図1では、同様の中空糸膜モジュ−ル
(4)及び(12)を使用するが、これら中空糸膜モジ
ュ−ルの詳細は図2の通りである。本例では膜厚80μm
、内径170 μm 、長さ60mmのシリコン製中空糸膜(2
2)を200 本(中空糸膜の総表面積は64cm2 )束ねた構
成とした。各中空糸膜(22)は、アクリル樹脂製のハ
ウジング(21)に収納され、シリコンシ−ル(23)
により固定されている。この中空糸膜モジュ−ルは、ガ
ス流入ポ−ト及びガス流出ポ−ト(24、25)及び赤
血球溶液導入口及び排出口(26,27)を有してい
る。
【0019】図1において、中空糸膜モジュ−ルのガス
流入又は流出ポ−トには、電磁弁(7)又は(8)を介
して空気又は窒素ガスが供給される。本図では、ダイヤ
フラム(9)によって発生し、流量制御バルブ(10)
により10ml/分程度に調節された空気又は流量制御バル
ブ(11)により10ml/分程度に調節された窒素ガスが
供給される。
【0020】赤血球溶液がシリンジポンプ(6)で吸引
されて中空糸膜モジュ−ル(4)を通過する際に、まず
空気を供給して酸化反応(酸素会合)させ、後にシリン
ジポンプ(6)から押し出されて中空糸膜モジュ−ル
(12)を通過する際に窒素ガスを供給して還元反応
(酸素解離)させる。この時の溶存酸素濃度、吸光度
を、それぞれフロ−型酸素センサ(13)、吸光度計
(15)で検出する。フロ−型酸素センサ(13)及び
吸光度計(15)からの出力は、増幅器(16、17)
で増幅された後、A/Dコンバ−タ(18)でデジタル
化され、コンピュ−タ−(19)に入力される。なお、
増幅器としてはログアンプ等を内臓したタイプのものを
使用することができ、また本例では2チャンネルタイプ
のA/Dコンバ−タ−を使用しているが1チャンネルタ
イプのものを2台使用しても良い。この出力からは、酸
素解離曲線を得ることができる。
【0021】更に、同様のフロ−において、中空糸膜モ
ジュ−ル(4)を通過する際にまず窒素ガスを供給して
還元反応(酸素解離)させ、後にシリンジポンプ(6)
から押し出されて中空糸膜モジュ−ル(12)を通過す
る際に空気を供給して酸化反応(酸素会合)させれば、
酸素センサ−及び吸光度計の信号から酸素会合曲線を得
ることができる。
【0022】酸素センサ−(13)と吸光度計(15)
の間は、遅れ時間補償用チュ−ブ(14)で連絡されて
おり、酸素センサ−と吸光度計の応答時間のズレを補償
し得る構成となっている。ここで吸光度計は赤血球粒子
による反射や散乱の影響を除くと共に、バックグランド
の影響をも排除し得るように、好ましく二波長検出器を
使用し、赤血球の酸化、還元による吸光度変化が最も大
きい558 nmを測定波長と、赤血球の酸化、還元による吸
光度変化が小さい、いわゆる等吸収波長である568 nmを
基準波長として選択している(図3に、酸素存在下又は
酸素非存在下における血液(赤血球)の吸光度特性を示
す)。
【0023】酸素センサ−(13)及び吸光度計(1
5)からの、増幅され、デジタル化された出力信号は、
コンピュ−タ−(19)において処理されるが、本例で
は、この際、酸素センサ−の応答時間遅れ補正、補償用
チュ−ブ(14)による時間遅延微補償が行われると共
に、酸化、還元時の吸光度が記憶され、その差が0 〜10
0 %に換算され、酸素会合又は酸素解離曲線としてX−
Yプロッタ(20)に出力されるように構成してある。
図4に、本構成の装置によりえら得た酸素解離曲線を示
す。
【0024】なおコンピュ−タ−(19)は、以上のよ
うな計算手段として機能以外に、例えば電磁弁やサンプ
リングア−ム等の制御を行うための制御手段としての機
能を担わせることも可能であり、この場合、検体(血液
試料)を所定のサンプリング位置にセットするだけで自
動的に赤血球の酸素解離又は酸素会合曲線を出力する、
自動装置とすることが可能である。
【0025】以上、図1に示した装置の例では、サンプ
リングア−ムによるサンプリング位置に検体を自動的に
導入する構成を付加することにより、洗浄操作を含む全
ての測定操作を自動的に実施する装置をも提供し得る。
【0026】本発明のモニタ−装置の他の一例として、
次のような構成の装置を例示することができる。即ち、
図1の構成を有する装置において、一方の中空糸膜モジ
ュ−ル(4)を省略したものである。このような装置で
は、例えば、一旦シリンジポンプ(6)に蓄積した赤血
球溶液を中空糸膜モジュ−ル(12)供給する際、中空
糸膜モジュ−ルに供給する気体を切り換えることで酸素
解離又は会合曲線を得ることができる。
【0027】具体的には、例えば、赤血球溶液を連続的
に供給しつつ、まず中空糸膜モジュ−ル(12)に空気
を供給して赤血球を酸化し、後に窒素ガスを供給して赤
血球を還元すれば、赤血球の酸素解離曲線を得ることが
できる。この逆、つまりまず中空糸膜モジュ−ル(1
2)に窒素ガスを供給して赤血球を還元し、後に空気を
供給して赤血球を酸化すれば、赤血球の酸素会合曲線を
得ることができる。また前記同様、コンピュ−タ−(1
9)により酸化、還元時の吸光度を記憶するように構成
すれば、その差を0 〜100 %に換算し、酸素解離又は酸
素会合曲線としてX−Yプロッタ(20)に出力するよ
うにもできる。この例においても、図1に示した装置の
例と同様、サンプリングア−ムによるサンプリング位置
に検体を自動的に導入する構成を付加すること等によ
り、洗浄操作を含む全ての測定操作を自動的に実施する
装置を提供し得る。
【0028】
【発明の効果】本発明の方法によれば、簡単な操作で、
しかも迅速に赤血球の酸素解離、会合をモニタ−するこ
とができる。特に、本発明の装置を使用すれば、検体
(血液試料)を所定位置にセットするだけで、複雑な操
作を必要とせず、赤血球の酸素解離、会合をモニタ−す
ることが可能である。特に本初発明の装置では、サンプ
リングから中空糸膜、検出器の洗浄までを自動的に実施
できる、赤血球の解離、会合モニタ−が可能となる。
【0029】本発明では、赤血球溶液が中空糸膜モジュ
−ル、酸素センサ−及び吸光度計等を通過する過程で、
その酸化又は還元反応はもとより、酸素解離、会合曲線
を得るのに必要な測定を完了できる。従って、測定に熟
練を要することなく、かつ、従来技術の方法と比較して
極めて短時間のうちに測定を完了することができる。
【0030】
【実施例】以下に本発明を詳細に示すために実施例を記
載するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
ない。
【0031】実施例 1 図1に示した本発明の装置を用いて、実験用マウス及び
人血液についての酸素解離曲線を作成した。用いた中空
糸膜モジュ−ルは膜厚80μm 、長さ60mm、本数200 本の
中空糸を有するものであり、流速は1ml /分、測定に用
いた血液及び生理食塩水(9gの塩化ナトリウムに注射用
蒸留水を加えて1000mlとした、pH7.4 の生理食塩水)は
それぞれ25μl 、10mlであり、空気及び窒素ガス流量は
10ml/分である。なお、結果を得るまでに要した時間
は、1 血液試料当たり約5 分であった。
【0032】得られた結果を図4に示す。図中、実線は
実験用マウスについての、点線は人血液についての結果
を示すものであり、% に換算された吸光度差(縦軸)が
50%を示す地点の溶存酸素濃度(横軸、% )はそれぞれ
1.6 又は1.8 % であった。この値を酸素分圧に換算する
と、それぞれ11.2又は12.6 mmHg となり、一般的な正常
人の吸光度差50 %地点における酸素分圧(P 50、26.6 m
mHg )に比較してやや低い値となった。
【0033】実施例 2 図1の装置において、中空糸膜モジュ−ル(4)を具備
しない、即ち中空糸膜モジュ−ルを1つだけ有する本発
明の装置を装置を用いて以下の実験を行った。なお使用
した中空糸膜モジュ−ルは、膜厚が80、40又は20μm
で、長さ60mm、本数200 本の中空糸を有するもの、の3
種類である。
【0034】中空糸膜モジュ−ルの内部に、蒸留水を1m
l /分の流速で通過させ、まず最初に空気を接触させた
後、バルブを切り換えて窒素ガスを接触させた場合の中
空糸膜モジュ−ルを通過した蒸留水の溶存酸素量(解離
状態での溶存酸素量)、即ち酸素会合状態での溶存酸素
量及び酸素解離状態での溶存酸素量を溶存酸素計に寄り
測定した。なお、空気及び窒素ガスの流量は実施例1と
同様である。
【0035】結果を表1に示す。表1によれば、解離状
態での溶存酸素量(解離の欄)は膜厚が薄くなるにつれ
減少し、会合状態での溶存酸素量(会合の欄)は膜厚が
薄くなるにつれ増加するが、40μm 以下の場合ほぼ同一
であることが分かる。酸素解離、会合をモニタ−するた
めには、解離状態において測定される溶存酸素量が少な
く、かつ会合状態において測定される溶存酸素量が大き
いことが望まれるが、以上の結果から膜厚40μm 以下の
中空糸膜を使用することが特に好ましいことが理解でき
る。また、解離時と会合時のガス透過性の比を示す解離
状態での溶存酸素量と会合状態での溶存酸素量の比(比
の欄)は、小さいほど優秀なガス交換が可能であること
を示すが、膜厚が薄い中空糸ほど良好な結果を示すこと
が理解できる。
【0036】
【表1】
【0037】実施例 3 実施例2に記載した3 種類の中空糸膜モジュ−ルを使用
して、人血液の酸素解離曲線を実施例1と同様の条件下
で作成した。結果を図5に示す。
【0038】図5中、膜厚80μm の中空糸膜の結果では
p50 が低いが、膜厚が薄くなるにつれp50 値が上昇し、
膜厚が20μm の中空糸膜では一般的な正常人の吸光度差
50 %地点における酸素分圧(26.6 mmHg )が得られてい
ることが分かる。この結果からは、膜厚が20μm 以下の
中空糸膜を用いることが最も好ましいことが理解でき
る。
【0039】実施例 4 実施例2と同一の条件下で、同一の膜厚(40μm )を有
する中空糸膜の長及び本数を変化させて膜の表面積を変
化させ、蒸留水中の溶存酸素量の変化を測定した。
【0040】結果を図6に示す。空気中の酸素濃度は2
0.9 %であるから、解離状態及び会合状態で測定された
溶存酸素量濃度の差が20.9 %となる膜面積が良い。図6
の結果からは、このような膜面積として65cm2 程度以上
が好ましく、より好ましくは70cm2 以上、特に好ましく
は80cm2 以上であることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の赤血球の酸素解離、会合モニタ−装置
の一例を示す。
【図2】本発明の赤血球の酸素解離、会合モニタ−装置
に使用される、中空糸膜モジュ−ルの一例を示す。
【図3】酸素存在下(実線)、酸素非存在下(一点鎖
線)における赤血球の吸光度特性及び両者の差(点線)
を示す。図中、縦軸は吸光度(絶対値)を、横軸は測定
波長(nm)をそれぞれ示す。
【図4】本発明の実施例1において、図1に示した装置
によりえら得た酸素解離曲線を示す。図中、実線は採血
直後のマウス血液についての、点線は採血直後のヒト血
液についての結果を示すものであり、縦軸は換算された
吸光度差(%)を、横軸は溶存酸素濃度(%)を示す。
【図5】実施例3で得られた結果を示す。横軸は溶存酸
素分圧(PO2 、mmHg)を示し、縦軸は吸光度差(% )を
示す。図中、点線は膜厚80μm の中空糸膜を使用した場
合の、一点鎖線は膜厚40μm の中空糸膜を使用した場合
の、実線は膜厚20μm の中空糸膜を使用した場合の結果
をそれぞれ示す。
【図6】実施例4で得られた結果を示す。横軸は実施例
で使用した中空糸膜の総膜面積(cm2 )を、縦軸は酸素
会合及び酸素解離状態での溶存酸素酸素量の差(% )を
示す。
【符号の説明】
1 検体(血液試料) 2 生理食塩水 3 サンプリングア−ム 4、12 中空糸膜モジュ−ル 5、7、8 電磁弁 6 シリンジポンプ 9 ダイヤフラムポンプ 10、11 流量調節弁 13 フロ−セル型酸素センサ− 14 補償用チュ−ブ 15 吸光度計 16、17 増幅器 18 A/Dコンバ−タ 19 コンピュ−タ− 20 X−Yプロッタ 21 ハウジング 22 中空糸膜 23 シリコンシ−ル 24 ガス流入ポ−ト 25 ガス流出ポ−ト 26 試料導入口 27 試料排出口

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】それぞれがガス透過性に優れた中空糸膜を
    有する中空糸膜モジュールと、該モジュールに赤血球を
    酸化し得る気体及び赤血球を還元し得る気体を供給する
    手段及び該中空糸膜内に等張液に分散した赤血球溶液を
    供給する手段を備えたことを特徴とする赤血球の酸素解
    離、会合モニター装置。
  2. 【請求項2】ガス透過性に優れた中空糸膜がシリコン製
    中空糸膜であることを特徴とする請求項1項の装置。
  3. 【請求項3】更に、赤血球溶液中の溶存酸素を測定する
    ための手段及び赤血球溶液の吸光度を測定するための手
    段を具えたことを特徴とする請求項1項の装置。
JP02658194A 1993-02-26 1994-02-24 赤血球の酸素解離、会合モニタ−方法及び装置 Expired - Fee Related JP3404865B2 (ja)

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