JP3393715B2 - ディスクバルブ - Google Patents

ディスクバルブ

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JP3393715B2
JP3393715B2 JP23738894A JP23738894A JP3393715B2 JP 3393715 B2 JP3393715 B2 JP 3393715B2 JP 23738894 A JP23738894 A JP 23738894A JP 23738894 A JP23738894 A JP 23738894A JP 3393715 B2 JP3393715 B2 JP 3393715B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水栓、湯水混合栓、医
療用サンプリングバルブ、薬液用バルブ等を構成する可
動弁体と固定弁体からなるディスクバルブに関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、水栓や湯水混合栓あるいは医療用
サンプリングバルブや薬液用バルブを構成するディスク
バルブは、2枚の円盤状の弁体を互いに摺接した状態で
相対摺動させることによって、各弁体に形成した流体通
路の開閉を行うようになっている。例えば、水栓や湯水
混合栓として使用されているフォーセットバルブは、図
5(A)に示されるように、固体弁体30と可動弁体2
0を互いの摺動面21、31で接した状態としておい
て、図5(B)に示すようにレバー40の操作で可動弁
体20を動かすことによって、互いの弁体20、30に
形成した流体通路22、32の開閉を行い、供給流体の
流量調整をするようになっていた。また、この種のバル
ブに対する要求特性としては、以下に示す通りであっ
た。 (1)各弁体間のシール性が保持されていること(日本
水道協会規格耐圧17.5kg/cm2 でも水漏れがな
いこと) (2)レバー操作力が小さいこと (3)上記レバー操作力が長期使用においても変化し難
いこと これらの要求を満たすために、近年、様々なセラミック
製の摺動部材が提案されており、その中でもセラミック
製の摺動部材の表面にダイヤモンド膜やi−カーボン膜
を被覆したものが提案されている。
【0003】例えば、弁体をなすディスク基体の摺動表
面に直接ダイヤモンド膜やi−カーボン膜を被覆したも
のや、ディスク基体の摺動表面をSiを主成分とする非
酸化物セラミックスで形成し、その上にダイヤモンド膜
やi−カーボン膜を被覆したものがあった(特開平3−
172683号公報、特開平3−223190号公報参
照)。
【0004】このようにダイヤモンド膜やi−カーボン
膜を被覆した弁体は、ダイヤモンド膜やi−カーボン膜
を構成する炭素の自己潤滑作用により優れた摺動特性を
備えるとともに、化学的に非常に安定した材質であるた
め、耐摩耗性、耐食性、耐熱性に優れたものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記ダイヤ
モンド膜やi−カーボン膜を被覆した弁体では次のよう
な課題があった。
【0006】まず、ディスク基体の摺動表面に直接ダイ
ヤモンド膜やi−カーボン膜を被覆したものでは、成膜
時に膜内に圧縮応力が残留することから弁体との密着性
が悪く、その結果、摺動時に膜剥離を生じたり、膜にク
ラックを生じるといった課題があった。
【0007】一方、ディスク基体の摺動表面をSiを主
成分とする非酸化物セラミックスで形成し、その上にダ
イヤモンド膜やi−カーボン膜を被覆したものでは、摺
動表面に直接膜を被覆したものに比べ密着力を高めるこ
とができるものの、非酸化物セラミックスを構成する珪
素の原子間距離がダイヤモンド膜やi−カーボン膜を構
成する炭素の原子間距離に比べ大きいため、非酸化物セ
ラミックスとダイヤモンド膜やi−カーボン膜との間の
密着力を十分に高めるには限界があった。その為、摺動
時に生じる膜剥離やクラックを避けることは難しいもの
であった。
【0008】その結果、これらの弁体を備えるフォーセ
ットバルブでも、摺動抵抗の増大および水漏れを防止す
ることができなかった。
【0009】本発明の目的は、弁体をなすディスク基体
とダイヤモンド膜やi−カーボン膜との密着力を高めて
膜剥離を防止するとともに、膜にクラックが生じること
を防止することにより、シール性を損なわず、かつ両弁
体を摩耗させることなく長期間にわたって良好な摺動特
性が得られるディスクバルブを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課
題に鑑み、ディスクバルブを構成する少なくとも一方の
弁体をなすディスク基体の摺動表面にカーボン膜を積層
してなるディスクバルブであって、上記摺動表面にヌー
プ硬度が100〜500Kg/mm2である軟質のカー
ボン膜からなる下地層を形成するとともに、該下地層上
にヌープ硬度が1700Kg/mm2以上である硬質の
カーボン膜よりなる最上層を形成したものである。
【0011】
【0012】さらに、本発明は、上記下地層の膜厚を
0.2〜1.6μmとするとともに、カーボン膜全体の
膜厚を0.6〜2.6μmとしたものである。
【0013】
【作用】本発明によれば、弁体をなすディスク基体の摺
動表面に下地層として軟質のカーボン膜を被覆したこと
により、この軟質のカーボン膜が緩衝材として作用する
ため、その上に積層するカーボン膜の剥離やクラックを
防止することができるとともに、摺動抵抗の増大を抑制
することができる。しかも、上記下地層をなす軟質のカ
ーボン膜内には殆ど圧縮応力が残留していないため、デ
ィスク基体と強固に密着させることができる。
【0014】また、下地層をなす軟質のカーボン膜と、
その上に積層するカーボン膜、および最上層をなす硬質
のカーボン膜とはそれぞれ同じ元素からなるため、膜内
に圧縮応力が残留した硬質のカーボン膜とも強固に密着
させることができる。
【0015】その為、摺動時に摺動面を構成する硬質の
カーボン膜がディスク基体より剥離したり、クラックを
生じることがなく、硬質のカーボン膜が持つ優れた摺動
特性を長期間にわたり維持することができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明実施例を説明する。なお、従来
部分と同一部分については同一符号で示す。
【0017】図1は本発明に係るディスクバルブの一例
であるフォーセットバルブ10を構成する弁体20,3
0のみを示す図であり、図2は可動弁体20のみを示す
図で、(A)はその斜視図であり、(B)はX−X線断
面である。
【0018】図1に示すフォーセットバルブ10は、円
盤状をした固定弁体30と可動弁体20を互いの摺動面
21,31で接した状態としておいて、可動弁体20を
動かすことによって、互いの弁体20、30に備えた流
体通路22、32の開閉を行い、流体の流量調整を行う
ようにしてある。
【0019】これらの弁体20、30をなすディスク基
体27,37は、耐摩耗性に優れるととに、変形し難い
材質により形成する必要があることから、真鍮、ステン
レス、および超硬合金などの硬質金属、あるいはセラミ
ックスなどにより形成する。特に、セラミックスは、高
硬度で耐摩耗性に優れるだけでなく、耐食性にも優れる
ため、医療用バルブや薬液用バルブを構成するのに最適
である。
【0020】このような弁体20、30を構成するセラ
ミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、
窒化珪素等を主体とする焼結体であって、助剤を所定量
配合したものを用いれば良い。例えば、アルミナに対し
てはCaO 、SiO2、MgO のうち少なくとも一種を、炭化珪
素に対してはC、B、B4C 、Al2O3 、Y2O3等を、さらに
窒化珪素に対しては周期律表2a、3a族元素の酸化物や窒
化物をそれぞれ焼結助剤として添加し、ジルコニアに対
してはY2O3、CaO 、MgO などの安定化剤を添加したもの
である。
【0021】また、図1に示すフォーセットバルブ10
の固定弁体30をなすディスク基体37にはカーボン膜
33を形成してあり、その詳細は図2(A),(B)に
示すようにディスク基体37の摺動表面に下地層として
軟質のカーボン膜34を被覆し、その上に摺動面31を
なす硬質のカーボン膜35を積層した2層構造としてあ
る。
【0022】特に、本発明においてはディスク基体37
の摺動表面へ最初に被覆する下地層を軟質のカーボン膜
34により形成することが重要である。
【0023】即ち、軟質のカーボン膜34は膜内に圧縮
応力が殆ど残留していないため、上記硬質金属やセラミ
ックスなどからなるディスク基体37と強固に密着させ
ることができるためである。しかも、下地層をなす軟質
のカーボン膜34は、摺動面31をなす硬質のカーボン
膜35と同じ元素で構成されているため、膜内に圧縮応
力が残留する硬質のカーボン膜35とも強固に密着させ
ることができる。その上、上記下地層をなす軟質のカー
ボン膜34は硬度が小さいことから緩衝材として作用す
るため、可動弁体20との摺動時に摺動面31をなす硬
質のカーボン膜35に加わる応力を緩和し、硬質のカー
ボン膜35の剥離やクラックを防止するとともに、摺動
抵抗の増大を抑制することができる。
【0024】その為、長期摺動においてもディスク基体
37に被覆したカーボン膜33が剥離したり、クラック
を生じることがないため、摺動面31をなす硬質のカー
ボン膜35による優れた摺動特性を長期間にわたって維
持することができる。
【0025】また、ディスク基体37と軟質のカーボン
膜34との接合力を高めるためには、ディスク基体37
の摺動表面を中心線平均粗さ(Ra)で0.15〜0.
4μmの面粗さに仕上げておく必要がある。
【0026】ここで、ディスク基体37の摺動表面を中
心線平均粗さ(Ra)で0.15〜0.4μmとしたの
は、中心線平均粗さ(Ra)が0.15μm未満では、
平滑な面となり過ぎるためにアンカー効果が得られず、
接合力を高めることができないからであり、逆に、中心
線平均粗さ(Ra)が0.4μmより大きいと、膜厚t
の薄い下地層を被覆した場合に摺動表面上の凸部が突き
出てしまうため、下地層が緩衝材として作用せず、硬質
のカーボン膜35にクラック等を生じさせる恐れがある
ためである。
【0027】ところで、本発明で言う軟質のカーボン膜
34および硬質のカーボン膜35とは、次のような特性
を有するもののことである。
【0028】即ち、軟質のカーボン膜34とは、ラマン
分光分析時にピークがなく、蛍光を発するカーボン膜
で、膜内には圧縮応力が殆ど残留していないもの、また
は100〜600Kg/mm2 のヌープ硬度を有するカ
ーボン膜のことであり、硬質のカーボン膜35とは、ラ
マン分光分析時にピークをもつカーボン膜で、膜内には
圧縮応力が残留したもの、または600Kg/mm2
り大きいヌープ硬度を有するカーボン膜のことである。
【0029】また、上記硬質のカーボン膜35は、ラマ
ン分光分析で見た場合に1350cm-1の位置と155
0cm-1の位置の近傍にそれぞれ2つのピークを持った
i−カーボン膜や、1330cm-1の位置にピークを持
つダイヤモンド膜を含むものである。ただし、上記i−
カーボン膜は、ピーク位置が1350cm-1か1550
cm-1のいずれか一方に偏っていても良く、好ましくは
ダイヤモンドのピーク位置に近い1350cm-1に偏っ
ている方がより硬質のカーボン膜35が得られ、摺動面
31が摩耗し難い。
【0030】なお、上記i−カーボン膜の構造は、非常
に緻密で結晶粒界が見られず、ガラスを割ったような形
態をした非晶質構造をしたもので、若干結晶質を含んで
いても良いが、結晶構造を持つダイヤモンドや立方晶窒
化ほう素(cBN)、六方晶窒化ほう素(hBN)とは
異なる組成のものである。
【0031】一方、固定弁体30の摺動面31をなす硬
質のカーボン膜35は、短期間の摺動において摩耗する
ことがないようにするため、好ましくは1700Kg/
mm2 以上のヌープ硬度を有する硬質のカーボン膜35
により形成することが好ましい。
【0032】また、ディスク基体37の摺動表面に被覆
する下地層をなす軟質のカーボン膜34のヌープ硬度は
100〜600Kg/mm2 で、好ましくは100〜5
00Kg/mm2 の範囲にあることが重要である。
【0033】即ち、ヌープ硬度が100未満のカーボン
膜は実質上成膜が不可能であるからであり、逆に、ヌー
プ硬度が600Kg/mm2 より大きいと、軟質のカー
ボン膜34の硬度が大き過ぎるために緩衝材としての作
用が得られず、摺動時にカーボン膜33が固定弁体30
から剥がれる恐れがあるとともに、摺動面31をなす硬
質のカーボン膜35にクラックを生じるためである。
【0034】ただし、上記下地層をなす軟質のカーボン
膜34に緩衝材としての作用を持たせるためには、ある
程度の膜厚tが必要であり、好ましくは0.2μm以上
あれば良い。ただし、膜厚tが大きくなり過ぎるとカー
ボン膜33全体の膜厚Tが大きくなり過ぎるために膜剥
離を生じ易くなる。その為、下地層の膜厚tの上限は、
1.6μmとすることが好ましい。
【0035】さらに、本発明では、ディスク基体37の
摺動表面に形成するカーボン膜33全体の膜厚Tを0.
6〜2.6μmの範囲で設けることが重要である。
【0036】即ち、カーボン膜33全体の膜厚Tが0.
6μm未満であると、摺動面31をなす硬質のカーボン
膜35と下地層をなす軟質のカーボン膜34の膜厚が共
に薄くなりすぎるため、硬質のカーボン膜35は短期間
で摩耗するとともに、下地層をなす軟質のカーボン膜3
4が緩衝材として作用しないため、硬質のカーボン膜3
5にクラックを生じさせる恐れがあるからであり、逆
に、カーボン膜33全体の膜厚Tが2.6μmより大き
いと、カーボン膜33の膜厚が大きくなり過ぎるために
膜隔離を生じ易くなるためである。
【0037】また、上記ディスク基体37の摺動表面に
カーボン膜33を被覆・積層する方法としては、PVD
法、CVD法、スパッタリング法等の薄膜形成手段を用
いて被覆・積層すれば良く、上記薄膜形成手段の中で
も、ECR(ElectronCyclotron R
esonance)プラズマCVD法を用いれば、低温
での成膜が可能であるために均質でかつ均一な膜を形成
できるとともに、軟質のカーボン膜34と硬質のカーボ
ン膜35とを連続して成膜できるため、効率良く膜付け
することができる。
【0038】例えば、ECRプラズマCVD法を用いて
カーボン膜33を形成する場合、まず、炭化水素ガス雰
囲気下でプラズマを発生させることにより、ディスク基
体37上に軟質のカーボン膜34を被覆し、下地層の膜
厚tが所定の厚みとなったところで固定弁体30に高周
波電圧を印加することにより、硬質のカーボン膜35を
積層し、ディスク基体37上にカーボン膜33を形成す
ることができる。
【0039】ところで、図2に示す固定弁体30では、
軟質のカーボン膜34の上に硬質のカーボン膜35を積
層した2層構造のものを示したが、その他に図3に示す
ような、カーボン膜34,35,36を3層積層した構
造のものでも良く、この場合、ディスク基体37の摺動
表面に被覆する下地層を軟質のカーボン膜34とし、そ
の上に前記下地層よりも若干硬度の高いカーボン膜36
を積層したあと、最上層として硬質のカーボン膜35を
形成すれば良く、このようなカーボン膜33もECRプ
ラズマCVD法を用いれば容易に形成することができ
る。
【0040】ただし、カーボン膜33全体の膜厚Tは
0.6〜2.6μmで、かつ下地層の膜厚tは0.2〜
1.6μmの範囲で設けておかなければならず、この範
囲で設けてあれば何層積層した構造のものであっても良
い。
【0041】また、図1に示すフォーセットバルブ10
では、固定弁体30のみにカーボン膜33を被覆した
が、逆に固定弁体20のみにカーボン膜33を被覆して
も良く、さらには両弁体20,30にカーボン膜33を
被覆したものであっても良い。なお、本発明実施例では
フォーセットバルブ10の例についてのみ示したが、こ
れ以外に医療用サンプリングバルブや薬液用バルブ等の
各種ディスクバルブに用いることもできる。
【0042】〔実験例1〕ここで、アルミナ基板の表面
に下地層として軟質のカーボン膜を被覆し、その上に硬
質のカーボン膜を積層した基板を用意し、スクラッチ試
験機を用いてカーボン膜の膜剥離荷重を測定した。
【0043】スクラッチ試験機は図4に示すようなカー
トリッジ本体41とその先端から伸びるレバー42に設
けられた圧子43とからなり、上記圧子43を図中のZ
方向に2°傾けた基板上のカーボン膜に押圧し、基板を
X方向に往復運動させながらY方向に移動させてカーボ
ン膜に荷重を加えていった時にカーボン膜が剥離する荷
重を測定した。
【0044】ただし、圧子43の先端部の曲率半径は5
μmで、基板のY方向への送り速度を5μm/s、X方
向への励振振幅を80μmとした。
【0045】また、本発明に係る基板は、下地層を膜厚
が0.8μmで、かつ300Kg/mm2 のヌープ硬度
を有する軟質のカーボン膜で形成し、その上に2400
Kg/mm2 のヌープ硬度を有する硬質のカーボン膜を
積層することによりカーボン膜全体の膜厚が1.6μm
の基板を10個用意した。また、比較例として、240
0Kg/mm2 のヌープ硬度を有する硬質のカーボン膜
のみからなる膜厚1.6μmのカーボン膜を被覆した基
板も10個用意し、同様にカーボン膜の膜剥離荷重を測
定した。
【0046】それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0047】
【表1】
【0048】表1より判るように、比較例に係る基板で
は、直接硬質のカーボン膜を被覆してあるため、平均
2.33gfの荷重で膜剥離が発生した。
【0049】これに対し、本発明に係る基板では、平均
4.37gfの荷重まで膜剥離を生じないというよう
に、比較例に係る基板に対し約2倍もの密着力が得られ
ることが判った。
【0050】〔実験例2〕さらに、本発明に係る基板の
ような軟質のカーボン膜と硬質のカーボン膜を積層した
基板を用意し、このうち下地層をヌープ硬度の異なる軟
質のカーボン膜により形成した時のカーボン膜の膜剥離
荷重を実験例1と同様のスクラッチ試験機を用いて測定
した。
【0051】ただし、基板にはアルミナ基板を、硬質の
カーボン膜にはヌープ硬度が2400Kg/mm2 のカ
ーボン膜を用いるとともに、下地層の膜厚は0.8μm
で、かつカーボン膜全体の膜厚は1.6μmとした。
【0052】本試験では膜剥離荷重が3gf以上のもの
を優れているとした。
【0053】それぞれの結果は表2に示す通りである。
【0054】
【表2】
【0055】表2より判るように、試料No.5のよう
に下地層にヌープ硬度700Kg/mm2 のカーボン膜
を用いたものでは、硬度が高すぎるために緩衝材として
の作用が得られず、その結果、2.81gfの荷重で簡
単に膜剥離を生じ、基準値を満足することができなかっ
た。
【0056】これに対し、本発明に係る試料No.1〜
4のものでは、下地層が適度な硬度を有するカーボン膜
からなるため、基板との密着力を高めることができ、基
準値を満足することができた。
【0057】また、本発明に係る試料の中でも特に試料
No.1〜3のものでは下地層をなす軟質のカーボン膜
のヌープ硬度が100〜500Kg/mm2 の範囲にあ
るため、膜剥離荷重が全て4gf以上と高い密着力が得
られることが判った。
【0058】〔実験例3〕次に、図1に示すようなフォ
ーセットバルブ10を試作し、カーボン膜33全体の膜
厚Tおよび下地層の膜厚tをそれぞれ変化させて摺動実
験を行った。
【0059】この実験に使用したフォーセットバルブ1
0は、両弁体20,30ともアルミナセラミックスによ
り形成してあり、外径30mm、肉厚10mmの円盤状
体に直径5mmの流体通路22を穿設した可動弁体20
と、外径20mm、膜厚8mmの円盤状体に直径5mm
の流体通路32を穿設した固定弁体33とを組み合わせ
て構成した。
【0060】また、固定弁体30および/または可動弁
体20をなすディスク基体27,37の摺動表面には、
下地層として300Kg/mm2 のヌープ硬度を有する
軟質のカーボン膜34を被覆し、その上に2400Kg
/mm2 のヌープ硬度を有する硬質のカーボン膜35を
積層したカーボン膜33を形成した。また、他の例とし
て、固定弁体30および/または可動弁体20をなすデ
ィスク基体27,37の摺動表面に直接2400Kg/
mm2 のヌープ硬度を有する硬質のカーボン膜35を被
覆したものも用意し、同様に摺動実験を行った。
【0061】そして、上記固定弁体20をケーシングに
よって固定弁体30に30Kgfの軸力で押さえ付けな
がら、流体通路22,32に80℃の温水を1Kg/c
2の圧力で注入し、可動弁体20を操作レバー(不図
示)により摺動させるのに要する操作力を測定した。
【0062】ただし、この試験による評価基準は、可動
弁体20を10万回摺動させた時の操作レバーの操作力
が0.9Kg以下のものを摺動性が良好であると判断し
た。それぞれの結果は、表3に示す通りである。
【0063】
【表3】
【0064】表3より判るように、試料No.8〜11
は固定弁体30のみ、または固定弁体30と可動弁体2
0の両方に硬質のカーボン膜35を被覆してあるもの
の、各ディスク基体27,37に直接硬質のカーボン膜
35を被覆したものであるために硬質部材同士の摺動と
なり、試料No.10,11では操作力が1.2Kg、
試料No.8,9でも操作力が1.0Kgと評価基準を
満足することができなかった。
【0065】しかも、上記試料No.8〜11では、カ
ーボン膜の膜厚が0.6〜2.6μmの範囲にあるもの
の、全て硬質のカーボン膜35からなるため、膜内に残
留する圧縮応力により摺動面31にクラックが観察され
た。
【0066】これに対し、本発明に係る試料No.1〜
7のものでは、各弁体20,30をなすディスク基体2
7,37の摺動表面に下地層として軟質のカーボン膜3
4を被覆し、その上に硬質のカーボン膜35を積層した
構造としてあるため、10万回の摺動においても膜剥離
やクラックを生じることがなく、操作力が全て0.9K
g以下と評価基準を満足することができた。
【0067】特に、試料No.1〜5のものは、カーボ
ン膜33全体の膜厚Tを0.6〜2.6μmの範囲に設
けてあるため、操作力が0.8Kg以下と優れた摺動特
性が得られた。
【0068】なお、0.2Kgの操作力の違いは手でも
明らかに実感できる程の大きなものであッた。
【0069】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るディスクバ
ルブは、互いに摺動する少なくとも一方の弁体をなすデ
ィスク基体の摺動表面にカーボン膜を積層したものであ
り、下地層を軟質のカーボン膜により形成するととも
に、上記下地層上に硬質のカーボン膜からなる最上層を
形成したことにより、ディスク基体よりカーボン膜の剥
離やクラックを生じることがない。その為、摺動面をな
す硬質のカーボン膜により優れた摺動特性が得られると
ともに、この性能を長期使用においても維持するこがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るディスクバルブの一例であるフォ
ーセットバルブの弁体のみを示す斜視図である。
【図2】図1のフォーセットバルブを構成する固定弁体
のみを示す図であり、(A)は斜視図で、(B)はその
X−X線断面図である。
【図3】図1のフォーセットバルブを構成する固定弁体
の他の実施例を示す縦断面図である。
【図4】スクラッチ試験機を用いて膜剥離荷重を測定す
る状態を示す図である。
【図5】一般的なフォーセットバルブの作動状態を示す
斜視図で(A)は流体通路を開通させた図であり、
(B)は流体通路を遮断した図である。
【符号の説明】
10:フォーセットバルブ 20:可動弁体 21:摺動面 22:流体通路 27:ディスク基体 30:固定弁体 31:摺動面 32:流体通路 33:カーボン膜 34:軟質のカーボン膜 35:硬質のカーボン膜 37:ディスク基体

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】互いに摺接する弁体のうち、少なくともい
    ずれか一方の弁体をなすディスク基体の摺動表面にカー
    ボン膜を積層してなるディスクバルブであって、上記摺
    動表面にヌープ硬度が100〜500Kg/mm 2 であ
    軟質のカーボン膜からなる下地層を形成するととも
    に、該下地層上にヌープ硬度が1700Kg/mm 2
    上である硬質のカーボン膜よりなる最上層を形成してな
    るディスクバルブ。
  2. 【請求項2】 上記下地層の膜厚が0.2〜1.6μm
    で、かつカーボン膜全体の膜厚が0.6〜2.6μmの
    範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のディスク
    バルブ。
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