JP3387487B2 - 没入感生成装置 - Google Patents

没入感生成装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は広視野角の立体映像
を実スケールで歪みなく表示することにより観察者に高
い没入感を与える没入感生成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】視野角とは人間が物を認識できる範囲を
水平方向及び垂直方向の角度として表したものである
が、その最大視野角は水平方向210度、垂直方向11
0度という研究成果がある。しかし、最大視野角周辺部
では色や形の認識はできず、物が動いたかどうかをかろ
うじて認識できる程度であり、人間が物を詳細に認識で
きる視野角は、水平方向140度、垂直方向85度とさ
れ、これを有効視野角と言う。およそこの有効視野角以
上に映像を表示する装置を広視野角映像表示装置とす
る。
【0003】平面スクリーンを広視野角映像表示装置と
する場合、スクリーンの大きさを大きくしていくとやが
て有効視野角以上の表示装置を実現できる。映画館など
の巨大スクリーンがこれにあたる。しかし、平面形状ス
クリーンで広視野角映像表示装置を実現するとその大き
さは巨大なものになってしまう。例えば1m離れた所に
スクリーンを設置すると対角長さで6.8mの大きさ
(270インチ)が必要になる。
【0004】広視野角映像表示装置の例として、立方体
形状の各壁面をスクリーンとし、中に観察者が入り込む
装置(CAVE、COSMOS)や球面形状のスクリー
ンに映像を表示する装置(特願平11−209906
号)などがある。この場合、映像は通常平面形状のスク
リーンに表示されるものとして作成されるため、そのま
まスクリーンに表示すると著しく映像が歪んで表示され
てしまう。スクリーンに歪みのない映像を表示させるた
めには、事前に映像の歪みを補正する手段が必要であ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】球面形状スクリーンに
歪みのない映像を表示するための歪み補正手段は、映像
投影手段を球の中心軸上に設置することを必要とする。
中心軸とは、球の中心を通る直線であり、中心軸上から
この軸に沿って投影手段により映像を投射する場合、中
心軸と球面スクリーンの交点を中心として上下左右方向
に対称な映像を投射することが可能になる。図9及び図
10に投影手段を球面スクリーンの中心軸上に設置した
場合の例を示す。この場合は、球面に対応して映像を歪
ませる歪み補正手段により観察者に歪みのない映像を表
示することが可能になる。もし中心軸上に投影手段の設
置が困難な場合、歪み補正手段は実現されていない。
【0006】中心軸上に投影手段を設置困難な例とし
て、球面スクリーンの半径を小さくしていくと、観察者
と投影手段の位置が同一の場所に重なり、観察者が投影
手段の手前に位置すると、観察者が映像投影をさえぎる
ことになる。逆に投影手段が観察者の手前に位置する
と、投影手段が観察者の視野をさえぎることになる。
【0007】本発明は、球面形状のスクリーンに歪みな
立体映像を実スケールで表示する歪み補正手段に加え
て、映像投影手段の位置を球の中心軸上からずらして設
置することを可能にする補正手段を特徴とする広視野角
映像表示を用いた没入感生成装置であり、その目的とす
るところは、球面形状スクリーンによる観察者への高い
没入感を与える映像表示機能を実現しながら、用途に合
わせて球面スクリーンの大きさや映像投影手段の配置を
自由に設定することを可能にすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明によれ
ば、上記の課題を解決するために、図1〜図3に示すよ
うに、観察者Mに凹面を向けた球面状で観察者から見て
水平方向に約140度、垂直方向に約85度の有効視野
角以上に映像を表示する広視野角のスクリーン1と、
目用と左目用の映像よりなる立体映像を作成する映像作
成手段2と、スクリーン1上に表示されたときに観察者
から見て実スケールで且つ歪みが無くなるように予め映
像を歪ませるための歪み補正手段3,5と、歪み補正さ
れた映像をスクリーン1へ投影するための投影手段4と
を備え、前記投影手段4は、観察者の有効視野角外で且
つスクリーン1上に観察者の影を作らない映像投影位置
に配置されており、前記歪み補正手段3,5は球面に対
応して映像を歪ませる第1の歪み補正手段3と、投影手
段4の設置位置に応じてさらに映像を補正する第2の歪
み補正手段5とから構成されることを特徴とするもので
ある。
【0009】ここで、投影手段4の設置位置としては、
球面形状スクリーン1の中心軸上ではなく、スクリーン
1に対して上方又は下方又は右側方又は左側方に設置す
ることが可能である(請求項2)。球面スクリーン1に
映像を投影するためには、球面の凹面方向に投影手段を
設置する必要があるが、図2に示すように、投影手段4
の設置可能範囲を拡大するような反射鏡9を設置するこ
とが好ましい(請求項3)。
【0010】また、右目用及び左目用の立体映像を球面
スクリーンに投影するために、右目用及び左目用の映像
を2台の別々の映像作成手段で作成することが好ましい
(請求項)。投影手段4は、図2および図3に示すよ
うに、スクリーン1の上方に水平に並べて配置され、ス
クリーン1の凹面に反射面を向けて観察者Mの視点位置
よりも上方に配置された平面鏡9に向けて斜め下方に右
目用と左目用の映像を投影するための一対のプロジェク
タで構成することが好ましい(請求項5)。ここで、右
目用と左目用の映像を投影するための一対のプロジェク
タは、それぞれ偏光角度を違えた一対の映像偏光フィル
タ6を通して映像を投影し、観察者は、右目の映像は右
目のフィルタしか通過させず、左目の映像は左目のフィ
ルタしか通過させないように映像偏光フィルタ6に対応
して偏光角度を違えた偏光フィルタが装着された立体視
めがね7を介して映像を観察するとよい(請求項6)。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の球面形状広視野角映像表
を用いた没入感生成装置の全体構成を図1に示す。図
1において、球面形状広視野角スクリーン1は、図2及
び図3に示すように、水平方向にも垂直方向にも曲率を
有する球面形状の広視野角スクリーンであり、2台のプ
ロジェクタで構成される投影手段4により広視野角の映
像を投影表示される。映像作成手段2は、コンピュータ
2台よりなり、インタラクティブな映像をリアルタイム
に作成する。この映像をそのまま球形のスクリーンに表
示すると、図4(a)に示すように、歪んだ映像にな
る。このため球形のスクリーンに表示したときに歪みが
無くなるように、図4(b)に示すように、予めコンピ
ュータによる映像を歪ませる。これが第1の歪み補正機
能である。球面スクリーン対応歪み補正手段3は、コン
ピュータ上の球面スクリーン対応歪み補正機能を持つソ
フトウェアであり、映像作成手段2で作成された映像に
対して、スクリーンに表示したときに歪みが無くなるよ
うに、映像に予め歪みを与える。ソフトウェアで球面ス
クリーン対応歪み補正機能を実現する原理は、図5に示
す通りである。現状のコンピュータでは、映像はすべて
平面上に作成される。そこで一旦映像を平面上に作成
し、そのまま表示をせずに、スクリーンに合わせた球面
形状に貼り付ける。これをマッピング処理と呼ぶ。さら
にそれを平面上に投影する処理を行い、映像として表示
する。つまり2度映像を作成する処理を行うことで球面
スクリーン対応歪み補正機能を実現する。
【0012】投影手段設置位置対応補正手段5は、同じ
くコンピュータ上の投影手段設置位置対応補正機能を持
つソフトウェアであり、映像作成手段2で作成された映
像に対して、投影手段設置位置に応じてさらに映像に歪
みを与える。これが第2の歪み補正機能である。例え
ば、平面スクリーンに投影する映像として、図6に示す
ような評価用メッシュ形状を用いた場合、球面スクリー
ン対応歪み補正機能(第1の歪み補正機能)を施した映
像は、図7に示すようになり、この映像に対してさら
に、投影手段設置位置対応補正機能(第2の歪み補正機
能)を施した映像は、図8に示すようになる。これら2
種類の歪み補正を施された映像信号は、2台のプロジェ
クタに渡され、球面形状広視野角スクリーン1に映像が
表示される。
【0013】立体映像表示を必要としない場合、映像作
成手段2及び映像投影手段4ではコンピュータとプロジ
ェクタはそれぞれ1台ずつで広視野角映像を表示するこ
とになるが、本発明では立体映像を表示するために
像作成手段2では2台のコンピュータを用いて左右の映
像が別々に作成される。これを立体的に見るには左右の
映像をそれぞれの目に表示すればよい。そこで、コンピ
ュータで作成される左右の映像を、それぞれ偏光角度を
違えた映像偏光フィルタ6を通して表示する。立体視め
がね7は、映像偏光フィルタ6に対応するように偏光角
度を違えた偏光フィルタが装着されていて、右目の映像
は右目のフィルタしか通過させず、左目の映像は左目の
フィルタしか通過させないものとする。
【0014】映像はリアルタイムに作成されるため、イ
ンタラクティブに動かすことができる。この動きの制御
をマウスやキーボード、さらにはジョイスティックなど
の操作手段8で操作する。これにより体験者は表示され
た空間の中を自由に動きながら様々な視点位置から空間
を見ることができる。
【0015】歪み補正機能について、魚眼レンズ等を用
いた光学的な処理により実現した事例があるが、本機能
ではそれをソフトウェア上で実現している。その優位性
について述べる。レンズで歪み補正機能を実現する場
合、予め表示系に合ったレンズを作成し、そのレンズを
使って映像を作成・表示しなければならない。つまり表
示系の大きさ、形が変わった時には対応できない。これ
に対してソフトウェアで実現すると、表示系に合わせた
パラメータ設定だけで対応することができる。
【0016】図9や図10のように、球の中心Oを通る
中心軸c上に投影手段4を設置する場合には、球面スク
リーン対応歪み補正機能だけで歪み補正は実現できる。
図10では投影手段4を傾けているが、中心軸c上に投
影手段4を設置するため、球面スクリーン対応歪み補正
機能だけで歪み補正は実現できる。
【0017】しかし、図11のように投影手段4を設置
する場合は、中心軸cからずれているため、球面スクリ
ーン対応歪み補正機能だけでは十分な歪み補正が不可能
である。そこでプロジェクタの位置情報をパラメータと
して映像を歪ませる。歪ませる方法は、映像作成の際に
必要な映像表示パラメータに平行移動変換及び回転移動
変換を施して映像表示パラメータを変更する。
【0018】また、プロジェクタには光軸シフトと呼ぶ
映像を投射する角度を変更できる機能を持つものがある
ため、その機能を使用すると図12のようにプロジェク
タを床に対して水平に設置することが可能になる。この
場合も光軸シフトをパラメータとして映像を歪ませる必
要がある。この場合、映像表示領域に沿って映像表示パ
ラメータを上下左右方向に非対称な値に変換して映像表
示パラメータを変更する。
【0019】図13は反射鏡9を用いて投影手段4の設
置位置を反射鏡に対して反転したものである。この場
合、単純な反転なので映像を歪ませる必要はないが、設
置位置を変更できるため、プロジェクタの設置方法を簡
易化し、全体の設置スペースをコンパクトにする効果が
ある。図14(a)には反射鏡9を用いる場合、図14
(b)には反射鏡9を用いない場合の設置例を示す。前
者は後者に比べて設置スペースが小さくて済み、かつ、
観察者Mによる影が出来にくいことが分かる。また、図
15は反射鏡9を鉛直方向から傾けて設置した場合を示
している。4aまたは4bの場合に比べて、投影手段4
の設置が容易になることが分かる。
【0020】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、球面に対応し
た歪み補正と投影手段の設置位置に対応した歪み補正を
施した立体映像を作成し、球面形状で広視野角のスクリ
ーンに投影し、観察者がそれを実スケールで見るように
したから、非常に高い没入感を得られるという効果があ
る。また、投影手段の設置位置を変更できるようにした
から、スクリーンの大きさを変更しても対応できるとい
う効果がある。
【0021】請求項2の発明によれば、投影手段の設置
位置を上方だけに限定せず、下方や右側面方向又は左側
面方向に変更できるようにしたから、映像を様々な方向
から投射できるという効果がある。特に立体映像を表示
する場合、右目用と左目用の映像を別々の方向から投影
できるという効果がある。請求項3の発明によれば、反
射鏡を用いて映像投影方向を変更できるようにしたか
ら、映像投影手段の設置可能範囲を拡大し、設置方法を
より簡易にし、設置スペースをよりコンパクトにできる
という効果がある。
【0022】請求項4の発明によれば2台のコンピュ
ータで右目用と左目用の映像を別々に作成し、立体的に
見られるようにしたから、比較的安価なコンピュータを
使用しながら立体映像を見られるという効果がある。
求項5の発明によれば、右目用と左目用の映像を投影す
るプロジェクタをスクリーンの上方に水平に並べて配置
し、プロジェクタから斜め下方に投射された映像を観察
者の視点位置よりも上方に配置した平面鏡により反射さ
せてスクリーンに投影させるようにしたので、設置スペ
ースを小さくできる効果がある。請求項6の発明によれ
ば、観察者は右目の映像と左目の映像を同時に観察でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の全体構成を示すブロック図であ
る。
【図2】本発明の装置に用いるスクリーンと投影手段の
配置を示す側面図である。
【図3】本発明の装置に用いるスクリーンと投影手段の
配置を示す正面図である。
【図4】球面スクリーンに対応した歪み補正のない場合
とある場合の表示例を比較して示す説明図である。
【図5】球面スクリーンに対応した歪み補正手段の原理
を示す説明図である。
【図6】歪み補正前の映像の表示例を示す説明図であ
る。
【図7】第1の歪み補正後の映像の表示例を示す説明図
である。
【図8】第2の歪み補正後の映像の表示例を示す説明図
である。
【図9】投影手段を球面の中心軸上に設置した例を示す
説明図である。
【図10】投影手段を球面の中心軸上に設置した別の例
を示す説明図である。
【図11】投影手段を球面の中心軸外に設置した例を示
す説明図である。
【図12】投影手段を球面の中心軸外に設置した別の例
を示す説明図である。
【図13】投影手段を球面の中心軸外に設置し反射鏡を
設けた例を示す説明図である。
【図14】反射鏡の有無による設置スペースの違いを示
す説明図である。
【図15】反射鏡を傾けることによる効果を示す説明図
である。
【符号の説明】
1 球面形状広視野角スクリーン 2 映像作成手段 3 球面スクリーン対応歪み補正手段 4 映像投影手段 5 投影手段設置位置対応補正手段 6 映像偏光フィルタ 7 立体視めがね 8 操作手段 9 反射鏡
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H04N 5/74 H04N 5/74 D 13/04 13/04 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G03B 21/00 G02B 27/22 G03B 21/10 G03B 21/14 G03B 35/20 H04N 5/74 H04N 13/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 観察者に凹面を向けた球面状で観察者
    から見て水平方向に約140度、垂直方向に約85度の
    有効視野角以上に映像を表示する広視野角のスクリーン
    と、右目用と左目用の映像よりなる立体映像を作成する
    映像作成手段と、スクリーン上に表示されたときに観察
    者から見て実スケールで且つ歪みが無くなるように予め
    映像を歪ませるための歪み補正手段と、歪み補正された
    映像をスクリーンへ投影するための投影手段とを備え、
    前記投影手段は、観察者の有効視野角外で且つスクリー
    ン上に観察者の影を作らない映像投影位置に配置されて
    おり、 前記歪み補正手段は、 球面に対応して映像を歪ませる第1の歪み補正手段と、 投影手段の設置位置に応じてさらに映像を補正する第2
    の歪み補正手段とから構成されることを特徴とする没入
    感生成装置。
  2. 【請求項2】 第2の歪み補正手段は、スクリーンに
    対して映像を上下左右の任意の方向から投射しても歪み
    がなくなるような補正を行なうことを特徴とする請求項
    1に記載の没入感生成装置。
  3. 【請求項3】 投影手段とスクリーンの間に反射鏡を
    配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の没入
    感生成装置。
  4. 【請求項4】 2台のコンピュータで右目用と左目用
    の映像を別々に作成し、立体映像を表示可能としたこと
    を特徴とする請求項1又は2又は3に記載の没入感生成
    装置。
  5. 【請求項5】 観察者に凹面を向けた球面状で観察者
    から見て水平方向に約140度、垂直方向に約85度の
    有効視野角以上に映像を表示する広視野角のスクリーン
    と、右目用と左目用の映像よりなる立体映像を作成する
    映像作成手段と、スクリーン上に表示されたときに観察
    者から見て実スケールで且つ歪みが無くなるように予め
    映像を歪ませるための歪み補正手段と、歪み補正された
    映像をスクリーンへ投影するための投影手段とを備え、 前記投影手段は、スクリーンの上方に水平に並べて配置
    され、スクリーンの凹面に反射面を向けて観察者の視点
    位置よりも上方に配置された平面鏡に向けて斜め下方に
    右目用と左目用の映像を投影するための一対のプロジェ
    クタからなり、 前記歪み補正手段は、 球面に対応して映像を歪ませる第1の歪み補正手段と、 投影手段の設置位置に応じてさらに映像を補正する第2
    の歪み補正手段とから構成される ことを特徴とする没入
    感生成装置。
  6. 【請求項6】 右目用と左目用の映像を投影するため
    の一対のプロジェクタは、それぞれ偏光角度を違えた一
    対の映像偏光フィルタを通して映像を投影し、観察者
    は、右目の映像は右目のフィルタしか通過させず、左目
    の映像は左目のフィルタしか通過させないように映像偏
    光フィルタに対応して偏光角度を違えた偏光フィルタが
    装着された立体視めがねを介して映像を観察するように
    したことを特徴とする請求項5記載の没入感生成装置
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