JP3387200B2 - Iii−v族半導体の液相エピタキシ−用原料とその製造方法 - Google Patents

Iii−v族半導体の液相エピタキシ−用原料とその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、LED、半導体レ−ザ
等の液相エピタキシャル成長に用いられる原料およびそ
の加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】液相エピタキシャル成長法は、溶液原料
の中に基板を漬けて温度を下げ、半導体基板の上に単結
晶薄膜を積層する方法である。膜質が良好であるし量産
性に富むので、発光素子などの動作層の形成などに用い
られる。薄い薄膜を積層して発光素子やその他の素子の
構造を作るので、層の厚みや不純物量を厳密に制御する
必要がある。
【0003】そのため、液相エピタキシャル成長では、
不純物が少なくなるように制御され、且つエピタキシャ
ル層の電気特性を悪化しないよう品質管理された多結晶
原料ウエハを成長層の厚さに合わせて正確に秤量し、基
板表面にこの原料を供給していた。基板は10mm角〜
76mmφの大きさを持つ。正方形、円形、長方形など
である。
【0004】従来液相エピタキシャル成長に用いるIII-
V族半導体原料はウエハの形状で販売されていた。Ga
As、InP、InAsなどの多結晶ウエハである。ウ
エハであるから形状、寸法、重量などは規格化されてい
る。円形、扇型、D型矩形などの形状がある。このウエ
ハは、多結晶インゴットを内周刃スライサ−で薄く切断
し、薄片化して、エッチングしたものである。多結晶イ
ンゴットは水平ブリッジマン法やLEC法によって成長
させる。多結晶インゴットから切り出したものであるか
ら、これは多結晶ウエハである。液相エピタキシャル用
の原料は従来、多結晶ウエハの形で販売されている。形
状、寸法、重量が決まっているので、輸送、保管など便
利である。
【0005】これはウエハであるが、液相エピタキシャ
ル成長の基礎になる基板ではない。混同してはいけな
い。液相エピタキシャル成長の原料である。粉末や、細
粒より扱い易いのでウエハの形状を与えているのであ
る。不純物はできるだけ少なくしてあり、且つ電気特性
が管理されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】液相エピタキシャル成
長の原料は、不純物量を制御し、且つ電気的な特性で品
質管理された多結晶インゴットを内周刃スライサ−で1
枚ずつ切断して、薄いウエハとする。ウエハの厚みは、
0.5mm〜5mmの程度である。内周刃スライサ−の
切り代は約0.3mmである。切断に要する時間は、1
枚当たり10分程度である。こうして所定の電気特性の
原料ウエハができる。輸送保管はウエハの形状でなされ
る。原料の生産者はウエハの形で販売する。
【0007】デバイスメ−カ−はウエハの形で購入す
る。これをウエハの形で保管する。使用の直前にウエハ
を破壊し、不定形の細かい粒子にする。原料粒を秤量し
て必要量だけ、液相エピタキシャルの原料としてボ−ト
に入れる。このように作業を液相エピタキシャル成長の
直前に行なっていた。通常の試薬のように、ビンに粉末
の形で入れるとか、粒の形で保存するということはなか
った。
【0008】このような原料の製造、販売形態は、原料
製造者にとっても、デバイス製造業者にとっても次のよ
うな不都合がある。 ウエハをデバイス製造業者の方で砕いて粒にしなけ
ればならない。デバイスメ−カ−にとっては面倒な作業
になる。原料なのであるから、直ちに秤量して使用でき
るのが望ましい。 デバイスメ−カ−でウエハを粉砕するが、ウエハの
粉砕のために器具が汚染される。この器具を通じての汚
染や、廃棄物による汚染、空気中に飛散した粉末による
環境汚染などがある。これらは主に粉末が大量に発生す
ることによる。
【0009】 原料メ−カ−においてもインゴットを
ウエハに切り出すためのロスがある。内周刃スライサで
切断する場合に切り代が約0.3mmあるが、これが無
駄になる。ウエハが最終生成物なら良いがそうではな
い。このウエハは中間的なものであるので、切り代によ
る損失はできれば無くしたいものである。 原料メ−カ−においてさらに問題がある。ウエハに
加工するために時間がかかるということである。仮のも
のにすぎない中間的なものに加工費を掛けるのは好まし
くない。 原料メ−カ−では内周刃スライサ−により水を掛け
ながら少しずつ切断するので、刃は汚れが付くし、切り
屑を含んだ水滴が跳ねて周囲の器具や装置の壁面を汚
す。環境汚染が著しく、又資源として貴重なGaの屑を
回収しにくい。
【0010】本発明はこれらの問題を解決するものであ
る。破壊作業が簡単であり、切断ロスが少ない方法を提
供することが本発明の第1の目的である。器具などの汚
染が少なく、切断コストが低く、かつ、屑となる部分の
回収の容易な加工方法を提供することが本発明の第2の
目的である。デバイスメ−カ−ではウエハを破壊する手
間が不要であるようにする方法を提供することが本発明
の第3の目的である。粒径のそろった原料粒子を製造す
る方法を提供することが本発明の第4の目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の液相エピタキシ
ャル成長用原料の加工方法は、多結晶インゴットをウエ
ハにせず、直接に破砕機によって粉砕し、表面の大部分
が劈開面よりなる粒子とすることを特徴とする。多結晶
インゴットは、3mm角以上の寸法を持つ単結晶粒子
が、全体積の約30%以上を占めているのが望ましい。
より好ましくは、3mm角以上の寸法の単結晶粒子が約
40%以上を占めるのが良い。
【0012】粒子に粉砕されたあと、1〜3mmの網目
の篩にかける。これは破砕のときに混入する刃の破片や
ゴミなどを除くためである。破砕のために繰り返しイン
ゴットに圧縮力を及ぼすジョ−クラッシャ−を用いるの
が望ましい。ジョ−クラッシャ−の往復速度は60回/
分〜250回/分とするのが良い。
【0013】粒子の3辺のうち最小辺を厚みといい、残
りの2辺を縦、横と表現する。こうして粉砕してできた
粒子は、厚みが0.5mm〜6mm、縦、横が4mm〜
20mmのものが多い。だから1mm〜3mmの網目の
篩で、これらより細かい刃、器具の破片などと分離でき
る。こうして表面が殆ど劈開面である粒子状の原料がで
きる。これをデバイスメ−カ−に販売する。デバイスメ
−カ−は再び粉砕する手間が要らない。ただちに秤量し
て液相エピタキシャル成長の原料とすることができる。
【0014】
【作用】本発明は、多結晶インゴットを一旦ウエハにす
るのではなく、直接に粉砕して小さい粒子にする。こう
すると、ウエハにするために内周刃スライサ−で切断す
るための工程を省略することができる。切断時に約0.
3mmの切り代が損失になっていたがこれもなくなる。
これは工程の削減、切り代損の低減により原料コストを
下げる効果がある。
【0015】原料製造業者の方で、粉砕をするので、こ
れを購入したデバイス製造業者は粉砕の必要がない。デ
バイスメ−カ−側でも便利である。さらに粒子の大きさ
が揃っているという長所がある。これは大きいインゴッ
トを直接に粉砕するからである。一旦ウエハにしたもの
は、ウエハの厚みより大きい厚みの砕片ができない。た
めに微少な粉末に成りやすい。このために再び原料損失
が発生する。
【0016】インゴットを粉砕すると、厚みによる制限
がないし、劈開面が出やすいので、寸法と形状の揃った
粒子を作ることができる。さらに破砕機で破砕する場
合、往復運動の範囲にも適当な範囲がある。揺動する刃
によってインゴットを破砕する場合は、往復回数を60
回/分〜250回/分程度が適当である。60回/分以
下では粉砕の速度が遅くて能率が悪い。250回/分以
上では、衝撃力が強くなり過ぎて、微少な粉末が交じる
ようになる。粉末は篩で除かれるが、原料損になるか
ら、望ましくない。粉砕機は揺動運動するジョ−クラッ
シャ−に限らない。固定刃と回転刃の組合せによる破砕
機を用いることもできる。この場合も刃数、刃径により
異なる最適回転数がある。さらに、単純な圧縮力を発生
するプレス式のものでも同様の加工が可能である。
【0017】また、砕かれた粒子は殆どが単結晶の粒子
である。つまり多結晶インゴットは単結晶粒子の集合で
あるが、粉砕により粒界でこれらの粒子を分離するから
こうなるのである。殆どが単結晶の粒子であって、これ
の厚みが0.5mm〜6mmで、縦、横が4mm〜20
mmであるから、多結晶インゴットははじめからこのよ
うな大きさの単結晶粒子の集まりである必要がある。そ
れで、はじめのインゴットは、3mm角の単結晶粒子が
30%以上を占めている必要がある。好ましくは40%
以上を占めるようにする。いかにインゴットを粉砕する
とどうして劈開面が表れるように切断されるかを説明す
る。
【0018】III-V族化合物半導体単結晶は、{11
0}面に非常に脆い劈開面を持つ。図1はIII-V族化合
物半導体単結晶の主要な面構造と劈開面を示す。図1の
(1)は主要面を示す平面図であり、図1の(2)は斜
視図である。結晶成長の基板とする場合は(100)面
を表面とするウエハを作る場合が多い。この場合2種類
のオリエンテ−ションフラットOF、IFを付ける。
【0019】いずれも劈開面である。劈開面は(01
1)、(−110)など一般に{km0}(k=±1,
m=±1)によって表される。{}は面方位を概括的に
表現するもので、(km0)、(0km)、(K0m)
などを含む。−1は1の上に−を引いたものであるがJ
ISではこのような表現ができないので−1と書いてい
る。
【0020】図1において、この塊状の結晶は26の面
を持つように描いているが、この内劈開面は12面あ
る。劈開面同志は60度または90度の角度を成す。劈
開面は6つずつの等価な群に分けられる。しかしいずれ
も劈開面であって、この面に沿って割れやすい。一般に
角柱の材料に押圧力を掛けると力の作用線に対して45
度を成す面(主応力面)に強いずり応力が発生する。図
2にこれを示す。ずり応力はどの面にも想定できるが、
主応力面と成す角度の余弦に比例する。だから主応力面
に沿ってずりが起こりやすい。通常の異方性のない等方
的な金属部材の場合は、塑性変形等が関係するため主応
力面に沿ってきれいに切断されるということはない。
【0021】しかしIII-V族多結晶の場合は、脆性材料
でありかつ単結晶の集まりであるので、主応力面に近い
劈開面に沿って割れる。段差が表れるが、それぞれの段
は劈開面の一つである。割れて露呈した面は劈開面であ
る。図3に示すように粒界の面が力の作用する面になる
から、これと45度の角度を成す面が主応力面である。
これに最も近い劈開面で割れる。結局破断面の殆どが劈
開面であるということになる。そして粉砕粒子のそれぞ
れは単結晶である。もちろんこうなるためには、はじめ
の多結晶インゴットが、かなり大きい結晶粒よりなるも
のである必要がある。3mm角以上の粒子が30%以
上、好ましくは40%以上存在することが望まれる。さ
らに、粉砕条件としては前述の静的な応力条件を達成す
るため衝撃力の小さい条件が必要となる。
【0022】劈開面だけを持ち、他の面を持たない粒子
が存在するかどうかということを考察する。劈開面は図
1に示すように固まりを囲んで12面ある。低指数面だ
けを示しているが、図1では全部で低指数面は26面あ
る。劈開面だけで囲まれるためには、残りの14面が現
われるのを抑制する必要がある。完全に劈開面だけから
なる形状はいずれかの主軸に平行な劈開面を除いた8つ
の劈開面からなる8面体である。たとえばZ軸に対して
平行な4つの劈開面を除き、Z軸と45度の角度をなす
8つの劈開面で囲まれる8面体である。{k0m}、
{0km}の一般式(k,m=±1)で現される面であ
る。面角は120度と90度である。完全に劈開面から
成るのはこれ以外にない。
【0023】典型的な形状は4回対称性のある8面体で
ある。これを図9に示す。どの面を平行に動かしても劈
開面のみでなるという性質が失われないので、扁平な8
面体が可能である。扁平な8面体は、図10に示すよう
なものがある。これは6角形の表面と裏面を持つ。側辺
は台形状の辺になる。図10のものは図9のものの平行
面から大体等距離離れた平行面で切断したものである。
この場合、表面と裏面の6角形が正6角形に近くなる。
内角は120度であるが、辺の長さが異なる。この場合
は、表面は2種類の辺の長さX、Yがあり、X、Y、
X、Y、X、Yの順で並んでいる。裏面も2種類の辺の
長さZ、Wがあり、Z、W、Z、W、Z、Wの順で並ん
でいる。表面と側辺の交角は120度と60度である。
側辺同志の交角は90度である。
【0024】図11は、平行2面の位置が一方にずれた
ものを示す。これは表面、裏面ともに6角形ではある
が、正3角形に近似してくる。正3角形の頂点を60度
の角度を成すように切断したものである。先程述べた面
角の関係は、同様に成り立つ。表面、裏面と側面の交角
は120度、60度である。側辺同志の交角は90度で
ある。これはひと組みの平行2面のみを図9の基本形か
ら平行移動させたものであるが、平行2面の組は4組あ
るから、これ以外の平行2面間の間隔をも変化させるこ
とができる。図12はこのようなより一般的な形状を示
す。
【0025】結局劈開面で囲まれる8面体を決めるパラ
メ−タは5つである。これは組になっている平行2面の
距離H、K、L、Mと、平行のずれのパラメ−タQであ
る。パラメ−タQの存在は直感的には分かりにくいが、
4組の面間隔を決めても形状が完全に決まらないことか
らこのパラメ−タの存在がわかろう。図12において、
厚みHが最小の面間隔に等しいことは直ぐに分かる。辺
ABCDEFの長さは3次元の面の方程式を解き距離を
計算することによって得られる。
【0026】 AB2 =(3/2)(H−L+Q)2 (1) BC2 =(4/2)(H+Q)2 (2) CD2 =(3/2)(H−M+Q)2 (3) DE2 =(3/2)(H−M+K+Q)2 (4) EF2 =(4/2)(M+L−H−K−Q)2 (5) FA2 =(3/2)(H+K−L+Q)2 (6)
【0027】 GJ2 =(3/2)(−L+Q)2 (7) JN2 =(4/2)Q2 (8) NP2 =(3/2)(−M+Q)2 (9) PR2 =(3/2)(−M+K+Q)2 (10) RS2 =(4/2)(M+L−K−Q)2 (11) SG2 =(3/2)(K−L+Q)2 (12)
【0028】 GA2 =(4/2)H2 (13) JB2 =(3/2)H2 (14) NC2 =(3/2)H2 (15) PD2 =(4/2)H2 (16) RE2 =(3/2)H2 (17) SF2 =(3/2)H2 (18)
【0029】このようになるのであるが、最小の面間隔
をHとする。これが厚みとして測定される。ここで最も
長い面間隔をKとする。この場合、縦として、辺EFと
辺BDの距離を測定することになる。実際には表面と側
面が120度の角度を成すので、面間隔Kの2/31/2
が縦の寸法ということになる。
【0030】厚みと縦は面間隔の方向にほぼ関連付けら
れる。しかし横方向はそうでない。6角形の形状である
からである。長手方向にほぼ直交する辺ADの、縦方向
と直角の方向の成分は(M+L)/21/2 である。表面
の上からみると6角形で内角はすべて120度である。
横の寸法が最小をとるのは、辺EF、BCが消える極限
である。このとき、横の長さは縦の3-1/2である。これ
は縦/横の比でいうと1.73である。後に縦/横の寸
法比の最大は、図6を実測して1.8であるということ
を述べる。これにピタリと対応するのである。
【0031】反対に縦横比の最小は、表面が正六角形の
時である。このときは、縦横比は2/31/2=1.15
となる。後に図6のデ−タを実測して縦横比の最小は
1.2であることを述べる。これも幾何学的考察にピタ
リと合致する。このようなわけで本発明の方法によって
粉砕した粒子が劈開面のみよりなるものであることが裏
付けられる。
【0032】本発明の方法で製造した原料粒子の表面は
殆ど劈開面である。劈開面以外の面を含むこともある
が、劈開面は60%以上存在する。従来のようにウエハ
にしてから粉砕したものは、ウエハ面が残るので、表面
の50%以上が非劈開面であるものがある。また劈開面
だけではできないので、縦横比が1〜1.2のものもあ
るし、1.8以上のものもある。
【0033】
【実施例】結晶粒が大きくなるHB法(水平ブリッジマ
ン)で製造したGaAs多結晶インゴットを用いた。こ
れをそのまま(ウエハに加工せず)圧縮力を利用した粉
砕機(ジョ−クラッシャ−)で粉砕した。図5に粉砕機
でGaAs多結晶を破壊している状態を示す。この粉砕
機は4つのリンクと、リンクの先に取り付けられている
押さえ板(刃)とりよりなる。クランクが回転すること
により押さえ板が揺動する。多結晶が押さえ板(刃)に
よって押されて細かく破壊される。
【0034】粉砕機の刃の往復回数を少なくすると粉砕
の能率が悪い。反対に粉砕機の刃の往復回数を速く設定
すると、圧縮力よりも衝撃力が強くなるために劈開面が
出にくくなる。ために劈開面以外の面が露呈しやすい。
こうなると表面状態が悪化するし破壊面から発生する微
粉が増大し、さらには形状がばらつく。そこでここでは
刃の往復回数を150回/分に設定して加工した。適当
な往復回数はインゴットの大きさにもよるが、50〜2
50回/分の程度である。これによりサイズや形状のの
揃ったGaAs粒子が得られる。表面に露呈しているの
は殆ど劈開面である。
【0035】これを3mmのメッシュの篩に掛ける。粉
末はこれによって除かれる。3mm以上の粒子が選ばれ
る。これを硫酸−過酸化水素水−水系のエッチング液で
数分エッチングし、水洗乾燥する。エッチングにより不
純物などが除かれるし、水洗により微粉末が除かれる。
これにより、サイズが3〜10mm角で、汚染の少ない
液相エピタキシャル用GaAs原料を製造することがで
きた。材料ロスは約20%であった。
【0036】従来法によって、2mm厚さのウエハを粉
砕した場合、多結晶インゴット段階から最終使用時まで
のロス(切り代、破壊時のロスなど)が約30%もあっ
た。本発明の方法で行なうとロスは約20%であるから
ロスが約2/3に減少している事になる。さらにウエハ
に加工するためのスライス工程が省かれたため、工程が
半分に短縮される。リ−ドタイムが1/3に減少する。
材料ロスが減り加工時間が減少したので、材料コストが
低減した。劈開面が露呈した粒の揃った粒子になり品質
面でも優れている。さらに処理時間が短くなり納期の点
でもメリットが現われた。
【0037】ジョ−クラッシャ−の往復運動の速度を、
350〜360回/分にすると、粉砕時に微粉末が発生
し、ロスが25%に増大した。つまり粉砕に関して歩留
まりが75%である。3000回/分の場合は歩留まり
が25%に低下した。反対に往復速度を60回/分以下
にすると粉砕機の必要なトルクが大きくなりすぎて設備
費が高くなる。この粉砕機の場合、往復回数は60回/
分〜250回/分が、加工時間とロスの点で望ましい。
より望ましくは100回/分〜200回/分の範囲とす
る。
【0038】さて品質の点であるが、粒子の表面の粗さ
を比較する。図4はこれを示す。図4(1)は従来のウ
エハに切り出した面の表面を表面粗さ計で測定した結果
を示す。従来はウエハを粉砕していたので、ウエハの表
面がそのまま残り粒子の表面の大部分を構成する。この
結果から、ウエハ表面には1μm〜2μmの細かい凹凸
が大量に存在することが分かる。ピ−クからピ−クまで
の凹凸の最大値は4μmにも達する。
【0039】これに対して本発明の粒子の表面の粗さは
図4(2)に示すようにきわめて平滑である。表面粗さ
計の検出感度以下の凹凸しかない。これは劈開面で切断
しているからである。このように本発明で作製した粒子
は表面がきわめて平坦であるということが分かる。液相
エピタキシャル成長の原料であるから、表面の粗さなど
はあまり関係がないが、本発明の場合は、破砕のあとエ
ッチングしないでもこのように平坦な表面が得られる。
【0040】破砕の後、篩わけをするが、これにより破
砕の際に発生した刃物や器具の屑などを除くことができ
る。表1は、粉砕後の製品(篩上の粒子)と粉(篩落と
された微粉)の不純物分析の結果を示す。製品に含まれ
る鉄は0.0001wt%未満であった。製品中のクロ
ム濃度は0.0001wt%未満である。篩によって除
かれた粉に含まれる鉄、は0.0015wt%である。
クロムは0.0004wt%であった。鉄やクロムは主
に、破砕装置の刃や、器具の磨耗により混入したもので
ある。設備を鉄等のGaAs等よりはるかに硬く破壊じ
ん性の強い材質で構成することにより、設備より発生す
る粉は微細な粉末となるため、篩による選別により容易
に除かれる。
【0041】
【表1】
【0042】次に本発明の方法で製造した液相エピタキ
シャル成長原料の粒子の寸法を測定した。粒子は表面の
殆どが劈開面で形成されているが、劈開面でない面もあ
る。それで一般には不定形である。先述のように劈開面
だけで囲まれる図形としても簡単な形状ではない。立方
体、直方体のようにはならない。不定形であるが、3方
向に寸法を取り、最も小さい寸法を厚み、次に大きい寸
法を横、いちばん大きい寸法を縦と表現しよう。厚みは
対向する2面の最小の寸法として定義されるから、一義
的に決まる。
【0043】厚みが決まるとこれに直交する面上に、縦
と横が存在することになる。これもさまざまな2辺の取
り方が可能である。しかしこの中で最小の直径を与える
方向を横と定義する。これもほぼ一義的に決まる。厚み
と横に直交する方向の長さを縦と決める。こうして厚
み、横、縦を決めて寸法を測る。だから、ここで縦、
横、厚みという寸法を測定してあげているからといっ
て、これらが直方体であるということではない。当然粒
子の体積も、これらの積ではなく、もっと小さい。
【0044】図6は本発明の方法で作製した液相エピタ
キシャル成長原料粒子の寸法の分布を示す分布グラフで
ある。横軸は厚さ(mm)である。厚さは0.5mm〜
6mmの間に分布している。縦軸は同じ試料の縦寸法を
□で表し、横寸法を◇で表わしている。同じ厚みの値に
対して、縦のデ−タと横のデ−タが対になって存在す
る。ここでは試料の数は33個である。
【0045】定義から、どの試料でも縦の方が横よりも
長いが、その比率が小さくしかも比較的安定している。
さらに厚みが増えると縦横が少し増える傾向があるよう
である。しかしこの依存性は大きくない。始めの試料は
厚み0.6mm、横4mm、縦5.3mmである。次の
試料は厚み1.1mm、横6.2mm、縦10.5mm
である。同じようにグラフから寸法を読み取ることがで
きる。最終の試料は厚みが5.5mm、横7.8mm、
縦13.5mmである。
【0046】縦長さを横長さで割った値は、1.3〜
1.8の程度である。縦横の比率が安定しているので粒
子の形状は大体において似通っているのである。劈開面
によって囲まれる粒子の形状は先程述べたように8面体
であるが、劈開面の現われる面が平行移動することによ
り多様な寸法を取り得る。しかし粉砕して出現する粒子
はその縦横の比率が比較的安定しているのである。縦横
の長さは4mm〜14mmの範囲にばらついている。こ
れは粉砕機の速度や、時間により異なるが、最大でも2
0mm程度である。
【0047】比較のために、従来のようにウエハに成形
したものをさらにハンマ−で粉砕した粒子の寸法も測定
した。この結果を図7に示す。試料の数は19個であ
る。横軸は厚さである。縦軸はその厚さ試料の縦□と横
◇の寸法である。同じ厚みのところに縦と横のデ−タが
対になって存在する。厚さ4.4mm、横9mm、縦
9.6mmの試料は、縦横の比率が1に近い。厚さ4.
5mm、横9.6mm、縦9.6mmの試料は縦横の比
率が1である。さらに厚みが6.2mm、横6.8m
m、縦7mmの試料も縦横比が1に近い。このようにウ
エハを衝撃力で破砕したものは、縦横比が1のものもあ
り、形状がそろわない。
【0048】反対に縦横比が大きいものある。厚み2.
7mm、横2.5mm,縦20mmの試料もある。縦横
比が8倍にもなる。厚み2.4mm、横6.5mm、縦
17.5mmの試料もある。縦横比は約3である。厚み
0.8mm、横6mm、縦15.7mmの試料もある。
縦横比は2.7である。厚み3.3mmの試料は、縦の
長さは22mm以上であり、このグラフに入らない。
【0049】ウエハの厚みは5mmである。ウエハ面は
劈開面ではないので、これを粉砕した場合、非劈開面も
表面に現われる。非劈開面の割合が50%以上のものも
多数存在した。劈開面だけで囲まれるという条件がない
ので、形状のバラツキ、寸法のバラツキがより大きくな
る。ために縦横に比率が1倍ものものもあるし8倍のも
のもある。
【0050】本発明は粉砕粒子の形状、寸法のバラツキ
が小さいという特徴がある。これは次のようにふたつの
点で利益をもたらす。 ある範囲の重量の粒子が必要な時に、予め篩わけし
て分けやすい。液相エピタキシャル成長の原料であるか
ら、ある重量の原料粒子が必要なときがある。すべての
粒子の重量を測定するのは面倒である。本発明の場合は
形状が安定しているので、篩によって分けると大体重量
によって分けたことになる。形状のバラツキが大きいと
このように篩によって分けてもこれが必ずしも重量によ
る分類に対応しない。
【0051】 形状寸法が安定しているから、スペ−
ス効率が良い。液相エピタキシャル成長の原料溶解部を
小型化できる。図8によってこれを説明する。これは原
料溶解部に原料粒子を充填したものである。図8(1)
は本発明によって製造した原料粒を充填したものであ
る。粒が揃っているから空隙が少ない。同じ容積により
多くの原料を収納することができる。図8(2)はウエ
ハを粉砕した原料の充填を示す。形状がさまざまである
から空隙部が広い。空間利用の点で問題である。
【0052】
【発明の効果】一旦ウエハに加工すると内周刃スライサ
−で切断しなければならない。これは0.3mmもの切
り代が発生し材料損失が大きい。また切削水を流しなが
ら劈開面でない面を強制的に切断するので内周刃や器具
に半導体材料が強く付着する。これは刃や器具を汚染
し、作業環境を劣化させる問題がある。さらには、切削
水中に混入したGa等の貴重な金属の回収が難しくな
る。
【0053】本発明はウエハに加工しないので、切り代
損失がまったくない。材料損失が少ない。内周刃を用い
ないので、刃や器具の汚染も少ない。圧縮力により、劈
開面で結晶を破壊するので歩留が良い。水などを使わず
圧縮だけで粉砕するので環境を汚さない。ふるいわけら
れた微粉は回収しやすいし、また粒子に加工するコスト
も低減される。劈開面を利用して粉砕するので形状が揃
う。形状が一定するので、篩によって所望の重量の粒子
を選びやすい。ふるいわけという手段により加工時に混
入する不純物が容易に除去される。また液相エピタキシ
ャル成長の成長皿に収納する時にスペ−ス効率が良い。
デバイスメ−カ−でウエハを粉砕する必要がないので手
数がかからず、直ぐに秤量して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】III-V族半導体の劈開面とその他の面を示す
図。(1)は平面図、(2)は斜視図。
【図2】四角柱状の物体に圧力を掛けた時の主応力面が
45度の方向に形成されることと、結晶の場合は劈開面
から割れることを示す図。
【図3】多結晶の両端に押圧力を掛けたときに結晶粒は
主応力面に近い劈開面から割れることを示す説明図。
【図4】従来法と本発明の方法で製造した液相エピタキ
シャル成長原料粒子の表面の粗さを粗さ計で測定して結
果を示すグラフ。(1)が従来法に対応しウエハの表面
の粗さ。(2)が本発明の方法で粉砕した粒子の表面の
粗さ。
【図5】本発明において多結晶インゴットを直接に粉砕
機によって粉砕することを示す説明図。
【図6】本発明の方法で製造した液相エピタキシャル成
長用原料粒子の厚み、横、縦寸法を測定した結果を示す
分布グラフ。横軸が厚み、縦軸は横寸法◇、縦寸法□を
示す。
【図7】従来例に係り一旦ウエハにしたものを粉砕して
作った粒子の厚み、横、縦寸法を測定した結果を示すグ
ラフ。横軸が厚み、縦軸は横寸法◇、縦寸法□。
【図8】本発明の方法で作った原料粒子と、従来法で作
った原料粒子を液相エピタキシャル成長用の容器に入れ
たときに本発明の方法によるものがスペ−ス効率が良い
ことを示す断面図。(1)が本発明によって作ったもの
を収容した図、(2)が従来法によって製造したものを
収容した図。
【図9】III-V族化合物半導体の劈開面だけで表面が構
成される4回対称性のある8面体の斜視図。
【図10】表面がすべて劈開面である形状であって、図
9から平行2面を接近させることにより扁平になってい
る板状のものを示す斜視図。
【図11】表面がすべて劈開面であって、図9の平行2
面を非対称に接近させることにより非対称扁平になって
いるものを示す斜視図。
【図12】表面がすべて劈開面でなる8面体の頂点及び
寸法を示す斜視図。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3mm角よりも大きい寸法の結晶粒を3
    0%以上含む多結晶インゴットを粉砕機によって粉砕
    し、表面の大部分が劈開面よりなる粒子とし、液相エピ
    タキシャル成長用の原料粒子とすることを特徴とするII
    I-V族半導体の液相エピタキシ−用原料の製造方法。
  2. 【請求項2】 1mm〜3mmの網目の篩により、粉砕
    後の粒子を選別し、細かい粉末を除去するようにしたこ
    とを特徴とする請求項1に記載のIII-V族半導体の液相
    エピタキシ−用原料の製造方法。
  3. 【請求項3】 粉砕機が揺動する破砕刃を持つジョ−ク
    ラッシャ−であって、破砕刃の往復回数が60回〜25
    0回/分であることを特徴とする請求項1または2に記
    載のIII-V族半導体の液相エピタキシ−用原料の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 表面の60%以上が劈開面で構成され、
    厚みが0.5mm〜6mm、縦、横の寸法が4mm〜2
    0mmである粒子から構成されることを特徴とするIII-
    V族半導体の液相エピタキシ−用原料。
  5. 【請求項5】 縦長さと横長さの比が1.2〜1.8で
    あり単結晶であることを特徴とする請求項4に記載のII
    I-V族半導体の液相エピタキシ−用原料。
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