JP3385767B2 - ランゲリア指数の測定及び演算装置 - Google Patents

ランゲリア指数の測定及び演算装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は上水道の浄水工程水の腐
食性を示す指数であるランゲリア指数を測定及び演算す
る装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、都市部での水環境の悪化に伴って
河川とか湖沼の水質汚濁が進んでおり、従来の凝集沈澱
とか砂濾過処理及び塩素処理との組み合わせだけでは、
水道用原水中の色度,臭気の除去作用に限界点が生じて
いる現状にある。特に我国の水道水として利用される水
源の約70%は、地表水と呼ばれる湖沼水,ダム水及び
河川水に依存しており、これら湖沼水とかダムには富栄
養化に伴う生物活動が活発化することによるカビ臭とか
藻臭の発生があり、他方の河川水には各種排水に含まれ
ている有機物とかアンモニア性窒素が流入され、河川の
自然浄化作用によってこれらの流入物を完全に浄化する
ことは期待できない状況にある。
【0003】一方、1993年12月から施行された水
道水の新水質基準では、水道管の腐食対策としてランゲ
リア指数(LIと呼称される)が加えられた。このラン
ゲリア指数とは水の腐食性を表わす指標であり、他にも
侵食性指数(AIと呼称される)があるが、このLIと
AIは、pH,水温,カルシウム(Ca)硬度,アルカ
リ度,全固形物量から計算できる指数である。そして上
記LIを−1.0以上で且つ極力0に近づけると防食効
果が期待できると言われている。
【0004】上記のLI値を求めるには、全固形物量
A′[mg/l],水温B′[℃],カルシウム硬度
C′[CaCO3(mg/l)]及びMアルカリ度D′
[CaCO3(mg/l)]の4指標とpH測定が必要
である。
【0005】上記の全固形物量は、100mlの検水を
蒸発皿に取り、100℃で蒸発させた後の浮遊物イオン
の量をmg単位で重量測定して求める。カルシウム硬度
は、イオンクロマトグラフを用いてCa2+イオン濃度を
測定し、これをカルシウム硬度に換算する方法が採ら
れ、又、Mアルカリ度は滴定法で測定する。
【0006】LIは検水のpH,水温,カルシウム硬
度,Mアルカリ度,全固形物量から演算によって求める
ことができるが、実際には表1に示したランゲリア指数
を計算する表に基づいてLIを求めている。
【0007】
【表1】
【0008】
【発明が解決しようとする課題】水道水の新水質基準に
よれば、ランゲリア指数(LI,腐食性指数)を−1程
度以上にするとともに極力0に近づけるようにし、又、
pH値を7.5程度にするように目標値が示されてい
る。LIを演算によって求めるには、検水の水温とpH
以外の前記3指標A′B′C′は手分析によって測定せ
ざるを得ないが、これは多くの手間と時間を要する上、
プロセス用の水質計器を用いた測定は多額の費用がかか
ってしまい、しかも連続的に算出するには測定精度上で
必ずしも満足できないという問題がある。
【0009】現状では、手分析によってpH、水温、カ
ルシウム硬度、Mアルカリ度、全固形物量を測定してか
ら演算によってLIを求める方法が主に採用されている
が、測定時間が約半日もかかってしまうため、迅速性に
欠けるという難点がある。
【0010】更に手分析による測定時においても以下の
ような問題点が生じる。即ち、カルシウム硬度はイオン
クロマトグラフにより測定できるが、この分析装置は高
価であり、連続測定するには装置の維持管理を十分に行
う必要がある。又、全固形物量は1リットルの水道水中
に何mgの固形物があるかを求める必要があり、一般に
は蒸発法による手分析で行われているため多くの時間を
要し、しかも手分析による測定では連続測定は困難であ
る。
【0011】そこで本発明は上記に鑑みてなされたもの
であり、水道水のLIを簡易な手段で連続的に測定して
上水道の水質モニタとして利用することができるランゲ
リア指数の測定及び演算装置を提供することを目的とす
るものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達
成するために、浄水工程水の腐食性を示す指数であるラ
ンゲリア指数を測定及び演算する装置であって、検水の
pH,水温,濁度,色度,導電率を測定する水質計器
と、水質相関試験によって演算式の係数を決定する決定
回路と、水質の測定値から全固形物量,カルシウム硬
度,Mアルカリ度を推定する推定回路と、全固形物量、
温度係数、カルシウム硬度及びMアルカリ度を決定する
決定回路と、上記推定及び決定に基づいて演算式により
ランゲリア指数を求めるための演算回路とを具備して成
るランゲリア指数の測定及び演算装置を提供する。
【0013】更に請求項3により、水道水の浄水池に後
アルカリ注入制御装置を配備するとともに、該浄水池の
pH値に基づいて全固形物量、カルシウム硬度、アルカ
リ度を推論し、ランゲリア指数の測定及び演算に基づい
て浄水池の目標とするpHを決定して、前記後アルカリ
注入制御装置のアルカリ注入率を制御するようにしてい
る。
【0014】
【作用】かかるランゲリア指数の測定及び演算装置によ
れば、水質計器によって検水の水質であるpH,水温,
濁度,色度,導電率が測定され、水質相関試験によって
演算式における係数a1〜a5及びb1〜b3が決定され
る。この水質計器で測定された濁度,色度,導電率が推
定回路に入力され、更に水質計器によって測定されたp
H値と水温値が全固形物量、温度係数、カルシウム硬度
及びMアルカリ度の決定回路に入力される。すると推定
回路は検水の濁度,色度,導電率に基づいて全固形物
量,カルシウム硬度,Mアルカリ度を推定して決定回路
に送り込み、これにより演算装置によって全固形物量、
温度係数、カルシウム硬度及びMアルカリ度の各係数が
決定され、この係数に基づいて演算回路により前記
(4)式、(5)式を用いてランゲリア指数LIが求め
られる又、水道水の浄水池に後アルカリ注入制御装置を
配備するとともに、該浄水池のpH値に基づいて全固形
物量、カルシウム硬度、アルカリ度を推論し、本実施例
にかかるランゲリア指数の測定及び演算に基づいて浄水
池の目標とするpHを決定して、前記後アルカリ注入制
御装置のアルカリ注入率を制御することにより、ランゲ
リア指数LIを指標として水道施設の配水管とか給水管
の腐食状況を常時監視することができる。
【0015】
【実施例】以下本発明にかかるランゲリア指数の測定及
び演算装置の具体的な実施例を説明する。前記したよう
に従来は検水の水温,カルシウム硬度,Mアルカリ度,
全固形物量から表1に基づいてランゲリア指数を求めて
いるが、この表1を図形化すると、図5〜図8に示すグ
ラフが得られる。ここで図5,図7,図8の全固形物量
[mg/l],カルシウム硬度[mg/l]及びMアル
カリ度[mg/l]の3指標は水中の基本水質である温
度(TB)、色度(Co)、導電率(Cond)からあ
る程度の精度で相関式を求めて推定することができる。
推定式は 全固形物量=a1TB+a2Co+a3Cond+b1 ・・・・・・(1) カルシウム硬度=k(a4Cond+b2) ・・・・・・・・・・・・・・(2) Mアルカリ度=a5Cond+b3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) ここでa1〜a5及びb1〜b3は相関関係から求まる係
数、kは換算係数であり、これらの係数は水質相関試験
によって決定される。
【0016】上記の式(1)〜(3)により図5,図
7,図8のX軸を決定し、図6の水温は直接測定して求
める。そしてこの図5〜図8を用いて下記の係数A〜D
を決定して(4)式、(5)式によってランゲリア指数
LIを求める。
【0017】 LI=pH−pHs・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4) pHs=9.3+A+B−(C+D)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5) ここでA:全固形物量、B:温度係数、C:カルシウム
硬度、 D:Mアルカリ度、pHs:水道水のpH である。
【0018】前記式(1)〜(3)における全固形物
量,カルシウム硬度及びMアルカリ度が一定の範囲内の
値であれば、Y軸の各A,B,C,D値も一定の値をと
るので、X軸の値の推定によって精度が低下してもY軸
の値の決定は可能である。上記式(1)〜(3)の係数
を水質相関試験(データ数20程度)から決定する。こ
の相関係数は0.6程度あればよい。それは全固形物
量,カルシウム硬度及びMアルカリ度がどの範囲に入っ
ているかを求めるからであり、多少ずれても得られたL
Iの誤差は0.1程度である。
【0019】図1は上記の測定原理に基づいて得られた
ランゲリア指数の測定及び演算装置の概要図であり、図
中の2は水質計器であって、この水質計器2によって検
水のpH,水温,濁度,色度,導電率等が測定される。
3は前記式(1)〜(3)における係数a1〜a5及びb
1〜b3の決定回路、4は全固形物量,カルシウム硬度,
Mアルカリ度の推定回路、5は演算装置に内蔵したA,
B,C,D決定回路、6は前記(4)式、(5)式によ
ってランゲリア指数LIを求めるための演算回路であ
る。
【0020】図1の基本的な動作を図2のランゲリア指
数算出フロー図を併用して説明すると、先ず水質計器2
によって検水の水質であるpH,水温,濁度,色度,導
電率が測定され(図2のステップ101)、水質相関試験
によって前記式(1)〜(3)における係数a1〜a5
びb1〜b3が決定される(同ステップ102)。この水質
計器2で測定された濁度,色度,導電率が推定回路4に
入力され、更に水質計器2によって測定されたpH値と
水温値がA,B,C,D決定回路5に入力される。推定
回路4は検水の濁度,色度,導電率に基づいて全固形物
量,カルシウム硬度,Mアルカリ度を推定して(同ステ
ップ103)A,B,C,D決定回路5に送り込み、これ
によって演算装置5によってA,B,C,Dの各係数が
決定され(同ステップ104)、この係数に基づいて演算
回路6により前記(4)式、(5)式を用いてランゲリ
ア指数LIが求められる(同ステップ105)。
【0021】前記水質相関試験を実施するには、図3に
示した配水水質モニタ局10が使用される。この配水水
質モニタ局10は、水質測定部とコントロールユニット
部及びデータ伝送部を備えており、水質測定部において
配水の濁度,色度,残塩量,pH,UV値(紫外線吸光
度),導電率,水温,水圧が測定され、コントロールユ
ニット部で符号化処理されて、データ伝送部からモニタ
信号Fが出力される。本実施例のランゲリア指数の測定
及び演算装置には上記配水水質モニタ局10が内蔵され
ている。
【0022】本実施例によれば、水道施設の配水管とか
給水管の腐食状況を、ランゲリア指数LIを指標として
常時監視することができる。又、浄水工程水で苛性ソー
ダ等のアルカリ剤を注入することにより、ランゲリア指
数LIの制御が可能となる。図4に基づいてLIを上水
道の配水水質モニタとして実施する実際例を説明する
と、沈澱池の沈澱水11が砂濾過池12に流入して砂濾
過が行われ、この砂濾過池12の濾過水13の水質(p
H,水温,濁度,色度,導電率)が水質計器2によって
測定されて本実施例にかかるLI測定及び演算装置1に
入力される。
【0023】次に濾過水13は浄水池15に流入し、浄
水16として配水池17を介して配水管網18へ給水さ
れるが、この浄水池15のpH値がLI測定及び演算装
置1に入力され、このLI測定及び演算装置1の出力信
号がpH制御装置19に伝達される。そしてpH制御装
置19により濾過水13に対する後アルカリ注入14が
実施される。
【0024】ここで濾過水13に注入されるアルカリ剤
(苛性ソーダ,消石灰)の注入前のランゲリヤ指数をL
0、pHをpH0とし、アルカリ剤注入後の目標ランゲリ
ヤ指数をLIset、目標pHをpHsetとすると、 LIset = pHset−pHs=−1〜0・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6) LI = pH−pHs LI ≧ LIset ⇒ pH ≧ pHset・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7) となる。この(7)を用いて注入前のLI演算値
(L0),注入後の目標LI値(LIset),注入前のp
H値(pH0)からアルカリ剤注入後の目標pH(pHs
et)を求めることができる。従って浄水工程水で苛性ソ
ーダ等のアルカリ剤の注入処理を実施することでランゲ
リア指数の制御が可能である。
【0025】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にか
かるランゲリア指数の測定及び演算装置によれば、水質
計器によって検水の水質であるpH,水温,濁度,色
度,導電率が測定され、水質相関試験によって演算式に
おける係数a1〜a5及びb1〜b3が決定されてから水質
計器で測定された濁度,色度,導電率が推定回路に入力
され、更に水質計器によって測定されたpH値と水温値
が全固形物量、温度係数、カルシウム硬度及びMアルカ
リ度の決定回路に入力されて、推定回路は検水の濁度,
色度,導電率に基づいて全固形物量,カルシウム硬度,
Mアルカリ度を推定して決定回路に送り込み、これによ
り演算装置によって全固形物量、温度係数、カルシウム
硬度及びMアルカリ度の各係数が決定され、この係数に
基づいて演算回路によりランゲリア指数を求めることが
できる。
【0026】従来は検水の水温とpH以外の3指標は手
分析によって測定せざるを得ず、多くの手間と時間を要
する上、プロセス用の水質計器のように高価な設備を必
要としていたのに対して、本実施例では格別高価な施設
を要することなく、簡易な構成でランゲリア指数の連続
的な測定を可能とするとともに測定時間と測定精度上か
らも満足する結果が得られる。
【0027】更に水道水の浄水池に後アルカリ注入制御
装置を配備したケースであっても、本発明にかかる測定
及び演算装置を使用することによって後アルカリ注入制
御装置のアルカリ注入率が最適に制御され、且つ上水道
の水質モニタとして利用することができる外、該ランゲ
リア指数を指標として水道施設の配水管とか給水管の腐
食状況を常時監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の測定原理に基づいて得られたランゲ
リア指数の測定及び演算装置の概要図。
【図2】本実施例におけるランゲリア指数算出フロー
図。
【図3】水質相関試験を実施するための配水水質モニタ
局の概要図。
【図4】本実施例にかかる測定及び演算装置を上水道の
配水水質モニタとして実施する実際例を説明する概要
図。
【図5】ランゲリア指数の指標である全固形物量[mg
/l]を表すグラフ。
【図6】同水温[℃]を示すグラフ。
【図7】同カルシウム硬度[mg/l]を示すグラフ。
【図8】同Mアルカリ度[mg/l]を示すグラフ。
【符号の説明】
1…ランゲリア指数の測定及び演算装置 2…水質計器 3…係数決定回路 4…推定回路 5…決定回路 6…演算回路 10…配水水質モニタ局 12…砂濾過池 13…濾過水 14…後アルカリ注入 15…浄水池 16…浄水 17…配水池 19…pH制御装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 清水邦雄,配管系内水質の簡易診断方 法,設備と管理,日本,株式会社オーム 社,1976年10月 1日,第10巻 第11 号,38−39 T.H.MORTON,AN ALG ORITHM FOR THE LAN GELIER INDEX OF PR OCESS WATRERS,Jour nal of The institu tion of Water Engi neers and Scientis ts,1977年 1月,Vol.31,N o.1,26−28 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/18 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 浄水工程水の腐食性を示す指数であるラ
    ンゲリア指数を測定及び演算する装置であって、検水の
    pH,水温,濁度,色度,導電率を測定する水質計器
    と、水質相関試験によって演算式の係数を決定する決定
    回路と、水質の測定値から全固形物量,カルシウム硬
    度,Mアルカリ度を推定する推定回路と、全固形物量、
    温度係数、カルシウム硬度及びMアルカリ度を決定する
    決定回路と、上記推定及び決定に基づいて演算式により
    ランゲリア指数を求めるための演算回路とを具備して成
    ることを特徴とするランゲリア指数の測定及び演算装
    置。
  2. 【請求項2】 ランゲリア指数LIを下記の(4)式
    (5)式によって求めることを特徴とする請求項1記載
    のランゲリア指数の測定及び演算装置。 LI=pH−pHs・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4) pHs=9.3+A+B−(C+D)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5) ここでA:全固形物量、B:温度係数、C:カルシウム
    硬度、 D:Mアルカリ度、pHs:水道水のpH
  3. 【請求項3】 水道水の浄水池に後アルカリ注入制御装
    置を配備するとともに、該浄水池のpH値に基づいて全
    固形物量、カルシウム硬度、アルカリ度を推論し、ラン
    ゲリア指数の測定及び演算に基づいて浄水池の目標とす
    るpHを決定して、前記後アルカリ注入制御装置のアル
    カリ注入率を制御することを特徴とする請求項1記載の
    ランゲリア指数の測定及び演算装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
T.H.MORTON,AN ALGORITHM FOR THE LANGELIER INDEX OF PROCESS WATRERS,Journal of The institution of Water Engineers and Scientists,1977年 1月,Vol.31,No.1,26−28
清水邦雄,配管系内水質の簡易診断方法,設備と管理,日本,株式会社オーム社,1976年10月 1日,第10巻 第11号,38−39

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