JP3372971B2 - 抗血栓性材料の製造方法 - Google Patents

抗血栓性材料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘパリンの抗血液
凝固能とリン脂質の血漿蛋白質がもつ付着抑制能の両効
果を併せ持つ、優れた抗血栓性材料の製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】ヘパリンを固定化した抗血栓性材料は、
ヘパリンを共有結合して表面に固定化したもの(薮下
ら、特開昭54−157816号公報)や、基材表面に
アンモニウム基を生じせしめ、これらを利用してヘパリ
ンをイオン的に結合したもの(島津ら、人工臓器、12
(1),195,(1983))等が知られている。
【0003】しかしながら、ヘパリンを共有結合により
固定化すると、特定の分子量範囲の成分が選択的に固定
化されたり、固定化反応の際に化学的損傷を受けるた
め、抗凝血機能に影響を及ぼす場合がある。一方、ヘパ
リンだけを材料表面に吸着させると、血液の凝固はある
期間は抑えられるが、血小板をはじめとする血漿蛋白質
の付着が生じ、付着物がヘパリンの徐放を阻害する問題
を生じる。
【0004】また、基材表面にイオン的に結合させたヘ
パリンを徐放させる材料では、長期間血液と接触させる
と血漿蛋白質が表面に付着し、表面が蛋白質によって覆
われ、固定化したヘパリンの効果やヘパリンの徐放性が
阻害されてしまうという問題点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来のこのよ
うな問題点を解決しようとするもので、基材表面にリン
脂質−高分子複合体を塗布し、これをヘパリン水溶液に
浸漬することによってリン脂質にヘパリンをイオン的に
結合させた材料が極めて抗血栓性に優れ、なおかつ血漿
蛋白質の付着が少ないことを見いだし、鋭意研究を進め
本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、 (1)スチレン系エラストマーあるスチレン−ブタジ
エン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン3元共
重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン3元共重
合体を水素添加したものから選ばれた少なくとも1種及
び/またはジエン系エラストマーであるイソプレン重合
体、ブタジエン−スチレン共重合体、線状ポリブタジエ
ン、1,2−ポリブタジエン、ブチルゴム(イソプレン
−イソブチレン共重合体)及びクロロプレン重合体から
選ばれた少なくとも1種とリン脂質とを、n−ヘキサ
ン、ジエチルエーテル、石油エーテル、ベンゼン、トル
エン及びクロロホルムから選ばれた1種、もしくはこれ
らの混合物である揮発性有機溶媒に溶解して、リン脂質
−高分子複合体溶液を調製し、該溶液中に基材を浸漬
し、もしくは該溶液を基材表面に塗布して乾燥すること
により基材表面に形成したリン脂質−高分子複合体薄膜
中のリン脂質に、ヘパリンをイオン的に結合させたこと
を特徴とする抗血栓性材料、 (2)リン脂質が、ホスファチジルコリン類、これらの
水素添加物、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれ
た少なくとも一種である(1)記載の抗血栓性材料、
【0007】(3)スチレン系エラストマーであるスチ
レン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブタ
ジエン3元共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジ
エン3元共重合体を水素添加したものから選ばれた少な
くとも1種及び/またはジエン系エラストマーであるイ
ソプレン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、線状
ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ブチルゴム
(イソプレン−イソブチレン共重合体)及びクロロプレ
ン重合体から選ばれた少なくとも1種とリン脂質とを、
これらのリン脂質−高分子複合体中に占めるリン脂質の
濃度が5乃至80wt%、揮発性有機溶媒に対する該複合
体の濃度が1乃至30wt%になるように、前記エラスト
マーとリン脂質との共通の揮発性有機溶媒であるn−ヘ
キサン、ジエチルエーテル、石油エーテル、ベンゼン、
トルエン及びクロロホルムから選ばれた1種、もしくは
これらの混合物に溶解してリン脂質−高分子複合体溶液
を調製し、これを基材に塗布した後、乾燥することによ
り基材表面にリン脂質−高分子複合体薄膜形成し、これ
をpH2乃至7になるように調製した緩衝溶液にヘパリ
ンを濃度が0.1乃至10wt%になるように溶解した溶
液中に、0℃乃至40℃にて3乃至96時間浸漬するこ
とによって、リン脂質−高分子複合体薄膜中のリン脂質
にヘパリンをイオン的に担持させることを特徴とする抗
血栓性材料の製造方法、 (4)リン脂質が、ホスファチジルコリン類、これらの
水素添加物、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれ
た少なくとも一種であることを特徴とする(3)記載の
抗血栓性材料の製造方法、である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において使用するスチレン
系エラストマーはスチレン−ブタジエン共重合体、スチ
レン−エチレン−ブタジエン3元共重合体、スチレン−
エチレン−ブタジエン3元共重合体を水素添加したもの
が利用できる。また、ジエン系エラストマーはイソプレ
ン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、線状ポリブ
タジエン、1,2−ポリブタジエン、ブチルゴム(イソ
プレン−イソブチレン共重合体)、クロロプレン重合体
が利用できる。
【0009】ここで重要なことは、これらのスチレン系
エラストマー及びジエン系エラストマーが他の高分子と
は異なり、リン脂質との共通溶媒が見いだせる点と、ま
た塗布後、医療用具に使用される基材高分子の表面に良
く接着し、かつ基材高分子のしなやかさを維持したまま
表面に薄膜を形成できる点である。
【0010】本発明におけるスチレン系エラストマー及
び/またはジエン系エラストマーとリン脂質との共通の
揮発性有機溶媒は、クロロホルム、n−ヘキサン、ジエ
チルエーテル、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等で
ある。本発明において重要なことは、共通溶媒の選択で
あり、スチレン系エラストマー及びジエン系エラストマ
ーとリン脂質との組み合わせ、あるいは配合比によって
これらの溶媒を適宜選択することである。また場合によ
って、これらの共通溶剤を任意の比率で組み合わせた混
合溶媒を用いることもできる。また、医療用具に塗布し
て表面に薄膜を形成するためには、比較的揮発性の高い
溶媒が適している。
【0011】本発明において使用するリン脂質は、ジパ
ルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホス
ファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリ
ン、ジリノレオイルホスファチジルコリン等のホスファ
チジルコリン類、これらの不飽和脂肪酸を水素添加した
もの、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少な
くとも1種である。
【0012】本発明においては、リン脂質とスチレン系
エラストマーまたはジエン系エラストマーとの複合体中
の各成分の濃度が極めて重要であり、コストや血液適合
性の点から、リン脂質の全組成物に対する濃度は5wt
%乃至80wt%が適切である。この理由は明確ではな
いが、リン脂質の濃度が5wt%未満と低い濃度では、
材料表面を完全にリン脂質で覆うことができないため、
基材高分子の露出している部分が生じ、このような部分
にはアンモニウム基がないためヘパリンを結合できず、
フィブリンの発生を抑えられないし、露出した基材高分
子からの異物反応が開始されるためであると推測され
る。また、複合体中のリン脂質濃度は高いほど、後の工
程でその表面に担持できるヘパリンの量が多くなるた
め、抗血栓性という点では望ましいが、80wt%を越
えると、疎水性の基材高分子には馴染むことができず、
はじいてしまい良好なリン脂質複合体の被膜の形成が不
可能であリ、また、複合体が膨張し易くなるなどの欠点
が生じる。
【0013】このような複合体を塗布した血液適合性表
面の親水性の程度は、リン脂質と基材高分子との混合比
によって自由に変化させることが可能で、水の接触角で
100°から0°の範囲で変化させることができるが、
優れた血液適合性のためには水の接触角が20°以下の
親水性の表面が適している。
【0014】基材表面に塗布したリン脂質−高分子複合
体にヘパリンを結合させる工程で用いる緩衝溶液は、A
CES(N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタン
スルホン酸)−NaOH 緩衝液、ADA(N−(2−
アセトアミド)イミノ二酢酸)−NaOH緩衝溶液、D
ES(N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−2−アミ
ノエタンスルホン酸)−NaOH緩衝溶液、ジ−トリ
(ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノ−トリ(ヒドロ
キシメチル)メタン)−NaOH緩衝溶液、コラミンク
ロリド((2−アミノエチル)トリメチルアンモニウム
クロリド塩酸塩)−NaOH緩衝溶液、HEPES(N
−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタン
スルホン酸)−NaOH緩衝溶液、MES(2−(N−
モルホリノ)エタンスルホン酸)−NaOH緩衝溶液、
MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン
酸)−NaOH緩衝溶液、PIPS(N,N'−ジ(2
−スルホキシエチル)ピペラジン)−NaOH緩衝溶
液、TES(N−トリ(ヒドロキシメチル)メチル−2
−アミノエタンスルホン酸)−NaOH緩衝溶液等の双
性イオン性の緩衝溶液で、溶液のpHを2乃至7に調製
できるものが良い。
【0015】この理由は、溶液のpHが2以下ではヘパ
リンが加水分解を受けて失活してしまうし、pHが7以
上ではリン酸基が解離して、結果としてコリン含有リン
脂質が電気的に中性となってしまうため、電気的陰性の
ヘパリンをイオン的に結合することができない為であ
る。また、双性イオン性の緩衝溶液が望ましいのは、ヘ
パリン緩衝溶液剤とが錯形成しないことがヘパリンの担
持に重要であるためである。 また、ヘパリン緩衝溶液
の調製時、及び基材を浸漬する際のヘパリン溶液の温度
は、0℃乃至40℃が適している。この理由は、高温で
はヘパリンの加水分解が進行し易く失活し易いためであ
る。
【0016】緩衝溶液中に溶解するヘパリンの濃度は特
に限定はしないが、リン脂質による担持効率の上昇の為
には濃度は高い方が良いが、高すぎても吸着されるヘパ
リンが増加し、初期のしかも短時間で徐放されるヘパリ
ン量が多くなってしまうため、イオン的に担持された量
は余り変わらないと推測できる。従って、コスト及び担
持効率の面から0.1wt%乃至10wt%とするのが
適切である。
【0017】
【実施例】以下に、実施例によって本発明の効果を説明
する。 [実施例1] 1) 抗血栓性処理チューブの製作 ペレツト状のスチレン−エチレン−ブタジエン3元共重
合体のブタジエンセグメントを水素添加したエラストマ
ー(旭化成(株)製、タフテツクH1041)2gを、
ジエチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬特級)
100mlに超音波を照射しながら十分溶解させた。更
に、この溶液中に粉末状のL−α−ジパルミトイルホス
ファチジルコリン(DPPC、和光純薬工業(株)製、
生化学用)1gを、溶液を良く撹拌しながら加えて完全
に溶解させ、高分子に対するリン脂質濃度が33wt%
になるようにしたリン脂質−高分子複合体溶液を作成し
た。
【0018】次に、内径3.5mm、外径5.0mm、
長さ25cmのポリウレタン製チュ一ブ(テコフレツク
スR93A)を用意し、その両端を45度の角度に切断
し、チューブの内面全体に上記溶液を塗布し、逆U字形
に吊るして10分間静置した後、減圧乾燥器内で40
℃、5時間乾燥した。更に、同じチューブの両端からそ
れぞれ5cmの長さを上記溶液に浸漬して塗布し、同様
にして乾燥した。
【0019】更に,1.192gのHEPSに、1Mの
水酸化ナトリウム0.5mlと1MのNaCl 9.5
mlとを加え、100mlに希釈して作成したpH=
6.6のHEPS緩衝溶液100mlに、ヘパリン1g
を溶解した溶液を調製した。このヘパリン溶液に、上記
のエラストマーとDPPCの複合体を塗布したポリウレ
タンチューブを浸漬し、72時間、10℃で静置し、ヘ
パリンを担持させた。ついで、このチューブをイオン交
換水で十分洗浄した。また、比較例として、上記と同仕
様のポリウレタンチューブを用意した。
【0020】2)動物実験 体重22kgの雑種成犬(雄性)をアトロピンにて前処
理し、フルニトラゼパム0.1mg/kg,ケタミン3
mg/kgの静脈注射によって導入麻酔を実施した。こ
の犬を手術台に固定した後、フローセンによる麻酔を維
持しながら、頸部を切開して左右両頸静脈を露出し、事
前に生理的食塩水にてプライミングを行い鉗子でクラン
プしておいた上記2種類のポリウレタンチューブを、右
中枢から左末梢へ及び左中枢から右末梢へ交差させて、
両端をそれぞれ約3cm血管内に挿入し、縫合糸にて固
定した。続いて、2本の試料チューブのほぼ中央部に血
流計のプローブをセットした。血流計は、Transonic Sy
stems社製T201超音波血流計を使用した。
【0021】2本のクランプを同時にはずして血流を再
開させ、血流速度と同時に時間を測定した。そして、1
2時間後、鉗子にて試料チューブを挟み血流を停止さ
せ、中枢及び末梢側の血管を縫合糸にて結び、各試料チ
ューブと血管の接合箇所で、血管が2cm程度残るよう
に切断して試料チューブを摘出した。摘出した、血管の
付いた試料チューブの中枢側から生理的食塩水を静かに
注入し、血液を洗い流した。このとき、流出する血液を
ビーカーに受け、試料チューブ内の凝血塊の有無を確認
した。続いて、試料チューブ両端の血管を縦に切開し、
虫ピンにて、30cm×10cmのゴムシート上に試料
チューブと共に固定して、血管の内側及び試料チューブ
の内外面を目視にて観察し写真撮影した。
【0022】この後、速やかに試料チューブを二つに切
断して、2%グルタールアルデヒド溶液にて固定化処理
した。24時間後に、この試料チューブを純水にて洗浄
し、クリーンベンチ内で2時間風乾した後、12時間減
圧乾燥した。その後、各試料チューブの中間部分を1c
m程度切り出し、3mm×5mm程度の試験片を作り、
走査型電子顕微鏡の試料台に導電性両面テープで固定し
て金蒸着し、500倍、2000倍の倍率にて、表面を
観察した。
【0023】3) 実験結果 実施例及び比較例の各試料チューブの実験結果は、表1
に血流速度の経時変化と血栓の観察結果としてまとめた
通りであった。
【0024】
【表1】
【0025】[実施例2] 1)血栓性処理試験用ストランドの製作 ペレツト状のスチレン−エチレン−ブタジエン3元共重
合体のブタジエンセグメントを水素添加したエラストマ
ー(旭化成(株)製、タフテツクH1041)2gを、
ジエチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬特級)
100mlに、超音波を照射しながら十分溶解させた。
更にこの溶液中に、粉末状のL−α−ジパルミトイルホ
スファチジルコリン(DPPC、和光純薬工業(株)
製、生化学用)3gを、溶液を良く撹拌しながら加えて
完全に溶解させ、リン脂質−高分子複合体溶液を作成し
た。
【0026】一方、塩化ビニル樹脂(住友べ一クライト
(株)製スミコン1170G55、20%造影剤添加)
にて、直径2mm、長さ30cmのストランド(紐状成
形品)を成形した。このストランドに上記溶液を実施例
1とほぼ同様にして塗布した後、乾燥し、更に、実施例
1と同様にしてその塗膜層にヘパリンを担持させた。ま
た、未処理のストランドを比較例として用意した。
【0027】2) 動物実験 体重約15kgの雑種成犬(雄性)を2頭用意し、それ
ぞれを実施例1と同様にして、導入麻酔及び維持麻酔を
施した。次いで、大腿静脈を露出させ、各試料ストラン
ドを各犬の大腿静脈に挿入し、X線透視下に先端を中大
腿静脈を経由して大静脈近傍まで、順行性に挿入した。
試料ストランドの他端は大腿静脈から3cm程度露出し
た状態で血管に一旦固定し、露出した部分は感染防止の
ため皮下に埋入した後、皮膚を縫合した。こうした状態
で1週間試料ストランドを血管内に留置した。
【0028】1週間後に、麻酔下に各試料ストランドを
摘出した。摘出は、そのまま試料ストランドを引き抜く
と、仮に試料ストランド表面に血栓が生じていても剥離
する可能性があるため、犬にレスピレータを装着し、腹
部及び胸部を切開して大静脈から大腿静脈までを露出さ
せ、血管と試料ストランドを同時に摘出し血管内を静か
にヘパリン化生理食塩水にてリンスした後、ゴムシート
上で血管を縦に切開して虫ピンで固定し、血管内及び試
料ストランド表面を目視にて観察した。
【0029】3) 実験結果 実施例のストランドには、大腿静脈の挿入部分を除いて
目視による血栓等の付着は全く見られなかった。それと
は対象的に、比較例のストランドには特に腎静脈等の大
静脈の分岐部分に大きな血栓の形成がみられ、全体的に
も赤色血栓の形成が顕著であった。
【0030】
【発明の効果】以上のように、スチレン系及び/または
ジエン系エラストマーとリン脂質との、数少ない共通溶
媒を見出し、これらの複数体を基材に塗布して乾燥した
上で、ヘパリンをイオン的に結合させた材料は、従来に
ない長期にわたる高い抗血栓性効果を有する材料である
ことが明白となった。本発明は、体外循環回路等の医療
用具をはじめ、人工臓器など広範囲の循環器系医療分野
で有用な材料である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61L 15/00 - 33/18 C08B 37/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スチレン系エラストマーであるスチレン
    −ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエ
    ン3元共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン
    3元共重合体を水素添加したものから選ばれた少なくと
    も1種及び/またはジエン系エラストマーであるイソプ
    レン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、線状ポリ
    ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ブチルゴム(イ
    ソプレン−イソブチレン共重合体)及びクロロプレン重
    合体から選ばれた少なくとも1種とリン脂質とを、n−
    ヘキサン、ジエチルエーテル、石油エーテル、ベンゼ
    ン、トルエン及びクロロホルムから選ばれた1種、もし
    くはこれらの混合物である揮発性有機溶媒に溶解して、
    リン脂質−高分子複合体溶液を調製し、該溶液中に基材
    を浸漬し、もしくは該溶液を基材表面に塗布して乾燥す
    ることにより基材表面に形成したリン脂質−高分子複合
    体薄膜中のリン脂質に、ヘパリンをイオン的に結合させ
    たことを特徴とする抗血栓性材料。
  2. 【請求項2】 リン脂質が、ホスファチジルコリン類、
    これらの水素添加物、及びこれらの誘導体からなる群か
    ら選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求
    項1記載の抗血栓性材料。
  3. 【請求項3】 スチレン系エラストマーであるスチレン
    −ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエ
    ン3元共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン
    3元共重合体を水素添加したものから選ばれた少なくと
    も1種及び/またはジエン系エラストマーであるイソプ
    レン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、線状ポリ
    ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ブチルゴム(イ
    ソプレン−イソブチレン共重合体)及びクロロプレン重
    合体から選ばれた少なくとも1種とリン脂質とを、これ
    らのリン脂質−高分子複合体中に占めるリン脂質の濃度
    が5乃至80wt%、揮発性有機溶媒に対する該複合体の
    濃度が1乃至30wt%になるように、前記エラストマー
    とリン脂質との共通の揮発性有機溶媒であるn−ヘキサ
    ン、ジエチルエーテル、石油エーテル、ベンゼン、トル
    エン及びクロロホルムから選ばれた1種、もしくはこれ
    らの混合物に溶解してリン脂質−高分子複合体溶液を調
    製し、これを基材に塗布した後、乾燥することにより基
    材表面にリン脂質−高分子複合体薄膜形成し、これをp
    H2乃至7になるように調製した緩衝溶液にヘパリンを
    濃度が0.1乃至10wt%になるように溶解した溶液中
    に、0℃乃至40℃にて3乃至96時間浸漬することに
    よって、リン脂質−高分子複合体薄膜中のリン脂質にヘ
    パリンをイオン的に担持させることを特徴とする抗血栓
    性材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 リン脂質が、ホスファチジルコリン類、
    これらの水素添加物、及びこれらの誘導体からなる群か
    ら選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求
    項3記載の抗血栓性材料の製造方法。
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