JP3372283B2 - 炭素を含む窒化物人工格子およびその作製方法 - Google Patents

炭素を含む窒化物人工格子およびその作製方法

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則昭 中山
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭素を含む人工格子及
びスパッタリングにより基板上に人工格子を作製する方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】2種類の単元素、合金、または化合物
(窒化物、酸化物、半導体など)A及びBを、それぞれ
厚さλA 、λB として合計Λ(=λA +λB )の周期長
でN層積みあげた薄膜を、人工格子あるいは超格子と呼
ぶ。人工格子は天然に存在しない物質であり特殊な機能
が期待できる。人工格子は当初MBE(分子線エピタキ
シ)によるGaAs系化合物半導体エピタキシャル成膜
技術として研究され、現在、GaAs系化合物半導体は
MBE技術により量産化されている。最近、人工格子の
材料として化合物半導体以外の金属、炭化物、窒化物及
び酸化物へ研究対象が拡大し、その作製方法も、スパッ
タリング法やレ−ザ−アブレ−ション法、イオンビ−ム
スパッタリング法等の種々の方法が試みられている。ま
た、応用面からも、それらの人工格子は、超高周波半導
体素子以外に、X線顕微鏡、モノクロメ−タ、ICマス
ク、超伝導素子、磁気抵抗素子、次世代光磁気ディスク
等々の多くの可能性がある。
【0003】従来、遷移金属と炭素からなる人工格子が
知られている。また、2種類の遷移金属窒化物からなる
人工格子も知られている。それらの一例を次に示す。P.
Boher et al, J.Appl.Phys. 68(12), pp.6133 〜6142(1
990)に示されるごとく、炭素(C)タ−ゲットとタング
ステン(W)タ−ゲットを用いて、Ar/N2混合ガス
雰囲気中もしくはArガス雰囲気中で、RFスパッタリ
ング法により窒化タングステン(WN)厚膜と、炭素
(C)/タングステン(W)多層膜を形成している。
【0004】H.Nakajima and H.Fujimori, J.Appl.Phy
s. 63(4), pp.1046〜1051(1987)に示されるごとく、モ
リブデン(Mo)金属タ−ゲットとシリコン(Si)タ
−ゲットを用いて、Ar/N2混合ガス雰囲気中でスパ
ッタリング法によりMoNx/SiNy多層薄膜を形成し
ている。
【0005】J.M.Murduck et al, J.Appl.Phys.62(10),
pp.4216 〜4219(1987)に示されるごとく、ニオブ(N
b)金属タ−ゲットとアルミニウム(Al)金属タ−ゲ
ットを用いて、Ar/N2混合ガス雰囲気中でDCスパ
ッタリング法によりNbN/Al多層薄膜(30層)を
形成している。
【0006】U.Helmersson et al, J.Appl.Phys. 62
(2), pp.481〜484(1987) に示されるごとく、チタン
(Ti)金属タ−ゲットとバナジウム(V)金属タ−ゲ
ットを用いて、N2ガス雰囲気中でDCスパッタリング
法によりTiN/VN超格子(各膜厚0.75〜16n
m、超格子周期1.5〜32nm、合計膜厚2.5μ
m)をを形成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】人工格子の主要な用途
としてX線光学材料が挙げられ、高いX線反射率が期待
される。一般に、高いX線反射率を示すような人工格子
を作製するには、その構成物質として次の二つの条件を
満足する必要がある。 (1)使用するX線に対するフレネル複素反射率の絶対
値が大きい物質と小さい物質の組み合わせであること。
フレネル複素反射率の絶対値は、吸収端から離れた正常
分散波長領域では、ほぼ物質中の電子密度に比例する。
したがって、重元素と軽元素の組み合わせであることが
高い反射率を得るための条件である。 (2)人工格子を構成する2種類の物質の両方とも、使
用するX線に対する吸収係数が小さいこと。吸収係数は
フレネル係数の虚数部にほぼ比例するとみることができ
る。また、吸収端より少し長い波長領域で吸収係数は著
しく低下する。
【0008】ところで、波長が5nmの軟X線を用いた
X線縮小投影リソグラフィにおいて、このリソグラフィ
に用いられる多層膜X線光学素子を開発するためには、
周期が25nm程度の短周期多層膜を作製する必要があ
る。波長が5nmの軟X線に対して高い反射率を示す人
工格子を構成する物質の組み合わせとしては、上述の条
件を考慮すると、3d遷移金属と炭素の組み合わせが最
適である。炭素の吸収端は4.4nmにあるために、波
長5nmの軟X線に対する炭素の吸収係数は非常に小さ
くなるからである。なお、炭素と組み合わせる物質とし
て、3d遷移金属以外の金属を用いた場合は、フレネル
複素反射率の絶対値は大きくても、その吸収係数が大き
いという難点がある。
【0009】本明細書において、3d遷移金属とは、原
子の電子配置において、最外殻が4sであって、かつ、
その内側の3d殻の電子数が10未満であるか、または
10であっても、このときの4s殻の電子数が2未満で
あるような元素を指す。すなわち、3d遷移金属とは、
原子番号が21〜29の元素を指し、Sc、Ti、V、
Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuが該当する。
【0010】このような3d遷移金属と炭素とからなる
人工格子は公知であり、この人工格子は上述のように波
長が5nmの軟X線に対して高い反射率が期待される
が、次のような問題点がある。すなわち、3d遷移金属
と炭素の界面において相互拡散や化学反応が起こり、各
層間の境界が明確にならない、という問題がある。一例
をあげると、Ni/C人工格子薄膜では、界面にNi3
Cが生成されてしまうため、高品質の短周期多層膜の形
成が困難である。
【0011】そこで、本発明の目的は、3d遷移金属と
炭素の組み合わせからなる人工格子の利点を維持しつ
つ、3d遷移金属と炭素との境界を明確にして、短周期
構造でも高い反射率を可能にした人工格子を提供するこ
とである。また、本発明の別の目的は、このような人工
格子を、再現性良く、かつ精度良く作製できる方法を提
供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明の主要な
ポイントは、3d遷移金属と炭素とからなる人工格子の
利点を維持しつつ、3d遷移金属と炭素との境界を明確
にすべく、この種の人工格子に窒素原子を導入したこと
にある。すなわち、3d遷移金属と炭素の少なくとも一
方を窒化物としている。請求項1の発明は、3d遷移金
属窒化物からなる第1層と窒化炭素からなる第2層とを
交互に繰り返し積層したことを特徴とする人工格子であ
り、3d遷移金属と炭素の両方を窒化物にしている。請
求項2の発明は、3d遷移金属窒化物からなる第1層と
炭素からなる第2層とを交互に繰り返し積層したことを
特徴とする人工格子であり、3d遷移金属だけを窒化物
にしている。請求項3の発明は、3d遷移金属からなる
第1層と窒化炭素からなる第2層とを交互に繰り返し積
層したことを特徴とする人工格子であり、炭素だけを窒
化物にしている。本発明の人工格子においては、3d遷
移金属として、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、C
o、Ni、Cuのいずれか1種類、またはこれらの組み
合わせを用いることができる。
【0013】本発明の人工格子は、窒素原子を導入する
ことにより、3d遷移金属と炭素の界面での相互拡散や
化学反応を防止することができる。これにより、界面で
の組成勾配を急峻に保つことができ、3d遷移金属と炭
素のそれぞれの層の厚さを薄くしても明確な層構造を得
ることができる。なお、窒素の吸収端は3nmにあり、
波長が5nmの軟X線に対する吸収係数は比較的小さい
ため、窒化物を形成した場合のフレネル係数の変化は小
さい。したがって、本発明によれば、3d遷移金属/炭
素系の利点である高反射率を維持しつつ、層間の境界を
明確にして、より高反射率の短周期人工格子を得ること
ができる。例えば、周期が3nm以下で高い反射率を示
す良質な人工格子が得られる。このような人工格子は、
波長が5nm付近の軟X線を用いる縮小投影リソグラフ
ィにおけるX線光学材料として非常に有用である。ま
た、本発明の人工格子は、高エネルギ−照射に対しても
安定である。
【0014】請求項5の発明は、複数のタ−ゲットをス
パッタリングすることによって請求項1から3までのい
ずれか1項に記載の人工格子を基板上に作製する方法に
おいて、次の特徴を備えるものである。 (イ)少なくとも1つのタ−ゲットは炭素であり、その
他のタ−ゲットは3d遷移金属である。 (ロ)人工格子の作製中は基板が各タ−ゲットに順番に
繰り返し対向するように基板と各ターゲットとの相対位
置関係を一定周期で変更させる。 (ハ)各タ−ゲットに印加する電力は独立に制御する。 (ニ)窒素ガスを含んだスパッタリングガスを用いる。
【0015】本発明によれば、基板が炭素ターゲットに
対向するときには炭素またはその窒化物が堆積し、基板
が3d遷移金属ターゲットに対向するときには3d遷移
金属またはその窒化物が堆積する。基板が2種類のター
ゲットに対して順番にかつ繰り返して対向することによ
り、第1層と第2層とがN周期だけ繰り返された人工格
子が形成される。なお、窒化物を堆積するには窒素(N
2)ガスを含んだスパッタリングガスを導入しながらス
パッタリングを行う。基板を各ターゲットに順番に対向
させるには、複数のターゲットを静止させておいて基板
を周期的に移動させてもよいし、あるいは、基板を静止
させておいて複数のターゲットを移動させてもよい。各
層の堆積速度や堆積厚さを良好に制御するには、各ター
ゲットへの印加電力を独立して制御できるようにするこ
とが必要である。3d遷移金属ターゲットは、1種類の
3d遷移金属で構成する以外に、2種類以上の3d遷移
金属からなる合金または混合物であってもよい。また、
1個の3d遷移金属ターゲットの代わりに、種類の異な
る2個以上の3d遷移金属ターゲットを用いてもよい。
【0016】3d遷移金属窒化物/窒化炭素人工格子を
作製するには、窒素ガスを含んだスパッタリングガスを
常に処理室に供給しながら基板上に人工格子を作製すれ
ばよい。これに対して、どちらか一方だけを窒化物とす
る場合、すなわち、3d遷移金属窒化物/炭素人工格
子、または、3d遷移金属/窒化炭素人工格子を作製す
るには、窒化物とする側のターゲットに基板が対向する
ときだけ、窒素ガスを含んだスパッタリングガスを処理
室に供給し、一方で、窒化物としない側のターゲットに
基板が対向するときには窒素ガスを含まないスパッタリ
ングガスを処理室に供給する。窒素ガスを含んだスパッ
タリングガスとしては、窒素ガス単体か、あるいは、窒
素ガスとアルゴンガスの混合ガスを用いるのが一般的で
ある。窒素ガスを含まないスパッタリングガスとして
は、アルゴンガスを用いるのが一般的である。
【0017】
【実施例】以下に、本発明の実施例を添付図面に基づい
て説明する。図1は本発明の方法を実施するための基板
とタ−ゲットの配置例を示すものである。(A)は平行
平板型基板回転方式の配置を示す斜視図であり、(B)
はカル−セル型基板回転方式の配置を示す平面図であ
り、(C)は平行平板型基板並進移動方式の配置を示す
正面図である。
【0018】図1の(A)に示す平行平板型基板回転方
式の配置では、複数のタ−ゲット8と基板ホルダ−2と
がほぼ平行に対向して、基板ホルダ−2の回転軸が基板
面に垂直になるように構成されている。この図では基板
ホルダ−2に基板4が4個取り付けられている。矢印6
の方向に基板ホルダ−2が低速かつ一定速度で回転し、
基板4が各タ−ゲット8の上方を順に通過して基板4上
に多層膜が堆積する。
【0019】図1の(B)に示すカル−セル型基板回転
方式の配置では、複数のタ−ゲット10が円筒状基板ホ
ルダ−12を包囲するように配置され、基板ホルダ−1
2の回転軸が基板14の表面に平行になるように構成さ
れている。この図では基板ホルダ−12に基板14が4
個取り付けられている。矢印16の方向に基板ホルダ−
12が低速かつ一定速度で回転し、基板14が各タ−ゲ
ット10の正面を順に通過して基板14上に多層膜が堆
積する。
【0020】図1の(C)に示す平行平板型基板並進移
動方式の配置では、複数のタ−ゲット18と基板ホルダ
−20がほぼ平行に対向して、複数のタ−ゲット18が
一列になるように構成されている。この図では基板ホル
ダ−20に基板22が1個取り付けられている。矢印2
4の方向に基板ホルダ−2が低速かつ一定周期で往復運
動し、基板22が各タ−ゲット18の下方を順に通過し
て基板22上に多層膜が堆積する。上述の三つの配置方
式のいずれも、本発明の人工格子の作製に利用できる。
【0021】図2は、本発明の方法を実施するためのカ
ル−セル型のスパッタリング装置の一実施例の平面断面
図である。この装置は直径3インチの2個のタ−ゲット
26、28を備えており、各タ−ゲットには整合回路3
0と高周波電源32が接続されている。基板ホルダ−3
4は6個の基板36を取り付けることができて回転可能
である。基板36を取り出すときは、基板搬送機構38
を用いることにより、処理室すなわち真空容器40を大
気にすることなく、基板36を外部に取り出すことがで
きる。スパッタリングガスとしてはArかN2ガス、ま
たはこれらの混合ガスを任意に選択して供給できる構造
になっている。スパッタリングガスは、マスフロ−メ−
タ−(図示せず)で流量制御しながら、リング状パイプ
42から真空容器40内に導入する。このリング状パイ
プ42には、複数個のガス吹き出し孔を均等に形成して
ある。基板36としては、カバ−ガラス、結晶方位が
(001)の岩塩、石英ガラス、結晶方位が(100)
のSi、ポリイミド等を用いている。一方のタ−ゲット
26は炭素であり、もう一方のタ−ゲット28は3d遷
移金属である。後述の実験データを得るのに実際に使用
した3d遷移金属タ−ゲットは、Cr、Cu、V及びN
iである。
【0022】次に、この装置を使用して炭素を含む窒化
物人工格子を作製する方法を説明する。真空容器40内
を10-5Pa以下の真空状態にしてから、Arガスもし
くはN2ガスまたは両者の混合ガスを前記リング状パイ
プ42から導入し、マスフロ−メ−タ−と主排気系メイ
ンバルブの調整により真空容器40内の圧力を1Pa程
度に保つ。2個のタ−ゲット26、28には0〜300
Wの電力を独立に制御して供給する。基板ホルダ−34
を2rpmの低速度で回転しながら2個のカソ−ドを同
時に放電して、シャッタ−44を同時に開けることによ
り、6個の基板36上に、それぞれのタ−ゲット26、
28から飛来するスパッタリング粒子を交互に堆積させ
る。この場合、タ−ゲットに投入するRF電力によって
各膜の厚さを調整する。基板36は一定の速度で回転し
ているので、薄膜の厚さはRF電力によって制御するこ
とになり、これが非常に重要である。
【0023】図3は、Cu、Cr、V、Cの各ターゲッ
トについて、その成膜速度とRF投入電力の関係を示し
たグラフである。グラフの上に表示してあるのは堆積膜
の材質であり、窒化物の膜については、ターゲットを窒
素ガス雰囲気中でスパッタリングして作製したものであ
る。また、カッコ内に記載してあるのはスパッタリング
ガスの種類である。例えば、Cu(Ar)は、Cuター
ゲットをArガス雰囲気中でスパッタリングして作製し
たCu膜を意味し、Cu3N(N2)は、Cuターゲット
を窒素ガス雰囲気中でスパッタリングして作製したCu
3N膜を意味する。すべてのデータについて、スパッタ
リングガスの圧力は5mTorrであり、基板は図2の
装置において2rpmで連続的に回転させている。
【0024】図4は、図3と同様に、Ni及びCターゲ
ットについて、その成膜速度とRF投入電力の関係を示
した別のグラフである。このグラフにおいて、同時放電
とあるのは、NiターゲットとCターゲットを同時に放
電して、基板上にNi膜のみ(この場合は炭素ターゲッ
トのシャッターを閉じておく)、あるいは、炭素膜のみ
(この場合はNiターゲットのシャッターを閉じてお
く)を堆積したものである。この同時放電の実験は、同
時放電が堆積速度にどのような影響を及ぼすかを調べた
ものであるが、単独放電と同様の堆積速度/電力比例関
係が得られている。図4においても、スパッタリングガ
スの圧力は5mTorrである。
【0025】図3及び図4から分かるように、タ−ゲッ
トと同じ材質の膜、またはそれらを窒化した膜の両方に
ついて、その成膜速度は、雰囲気ガスがArか窒素かに
よらずに、RF電力に対してほぼ比例する。したがっ
て、ターゲットの投入電力を制御することにより膜厚を
精密に制御できることが確認された。
【0026】図5は、図2の装置で作製した窒化クロム
(CrN)/窒化炭素(CN)多層薄膜からなる人工格
子の小角X線回折パタ−ンのグラフである。横軸は、X
線源としてCu−Kα特性X線を用いたときの回折角度
2θ(入射X線に対する回折X線のなす角度)であり、
縦軸は回折X線の強度である。この人工格子は、図2の
装置において、ターゲット26に炭素(C)を、ターゲ
ット28にクロム(Cr)を用いて、窒素ガスを常に供
給しながら、基板36を回転させながら作製したもので
ある。このグラフは、窒化炭素(CN)の膜厚を3nm
で一定にして、窒化クロム(CrN)の膜厚の方を2n
m、1nm、0.4nm、0.2nmの4種類に設定し
て、4種類の人工格子を作り、そのX線回折図形を得た
ものである。得られた回折ピークは、CrN層とCN層
とからなるユニットの周期性に起因して生じたブラッグ
反射によるものである。この回折ピークのピーク角度か
ら人工周期を計算すると、これがほぼ設計周期と一致す
ることが確認された。CrNの膜厚が0.2nmと非常
に薄い場合にも明確な回折ピークが得られていることか
ら、原子層のスケールで薄膜の厚さが正確に制御されて
いることが立証された。そして、CrN層とCN層の界
面において相互拡散や化学反応が抑制されているからこ
そ、このようなきわめて薄いCrN層を用いても、明確
な周期構造が得られている。
【0027】図6も図5と同様の小角X線回折パタ−ン
であるが、この場合は、CrNとCNの両方の膜厚を共
に変化させて3種類の人工格子を作製している。すなわ
ち、(A)CrN層を5nm、CN層を5nmとして、
このユニットを20回積層したもの、(B)CrN層を
2.2nm、CN層を2nmとして、このユニットを3
0回積層したもの、(C)CrN層を1.1nm、CN
層を1nmとして、このユニットを61回積層したも
の、の3種類である。これらの人工格子においても、各
ユニットの周期性に起因する回折ピークが明確に得られ
ている。
【0028】図7は、炭素(C)タ−ゲットとニッケル
(Ni)ターゲットを用いて作製した人工格子の小角X
線回折パタ−ンである。図7(A)は、スパッタリング
ガスとしてArガスを用いた場合であり、Ni/C人工
格子が得られている。これに対して、図7(B)は、ス
パッタリングガスとして窒素ガスを用いた場合であり、
NiN/CN人工格子が得られている。グラフ中のΛの
値は2種類の層の厚さの合計値であり、人工格子の周期
を示す。これらの回折パターンにおいても、図5及び図
6と同様に、ほぼ設計周期と一致する人工周期が確認さ
れた。図7の(A)と(B)を比較すると、NiN/C
N人工格子の方が高いピ−ク強度を示しており、窒素原
子を導入したことにより界面の構造が改善されているこ
とが確認された。
【0029】Niターゲットを窒素ガス中でスパッタリ
ングすると、Ni3NまたはNi2Nが得られる。窒化物
多層膜中のNiN層は、Ni3NとNi2Nの2相共存で
あり、粒径30nm以下の微粒子である。一方、窒素ガ
ス中での反応スパッタリング法により作製した窒化炭素
膜はアモルファス構造をもつ。この窒化炭素膜をRBS
(ラザフォード後方散乱法)で調べると、多量の窒素原
子が炭素膜中に存在していることが明らかになった。ま
た、この窒化炭素膜をFT−IR(フーリエ変換赤外吸
収分光法)で調べると、炭素と窒素の結合を示すブロー
ドなスペクトルが認められた。
【0030】さらに、Arガス中でスパッタリングして
作製したNi/C人工格子と、窒素ガス中でスパッタリ
ングして作製したNiN/CN人工格子とについて、次
のような手法により、界面の粗さを比較した。すなわ
ち、両者の人工格子について、1次のブラッグピークの
X線反射率を測定して、これを計算値と比較することに
よりDebye-Waller因子を求め、これを界面の粗さを示す
指標として評価した。窒素ガス中でスパッタリングして
作製したNiN/CN人工格子では、Debye-Waller因子
は0.9nm程度である。これに対して、Arガス中で
スパッタリングして作製したNi/C人工格子では、De
bye-Waller因子は1.3nm程度である。したがって、
窒化により界面の粗さが小さくなっていることが分か
る。これは、Ni層またはC層が窒化物となることによ
り界面での拡散が抑えられたためであると考えられる。
【0031】図8は、炭素(C)タ−ゲットとニッケル
(Ni)ターゲットを用いて作製した人工格子の小角X
線反射率のグラフである。この実験では、スパッタリン
グガスの導入方法を制御することによって、窒化原子の
導入状況を変更した4種類の人工格子を作製している。
すなわち、(A)は、窒素ガスを常に供給してNiNx
/CNy人工格子を作製したものであり、(B)は、基
板がNiターゲットに対向するときにはArガスを流
し、基板が炭素ターゲットに対向するときには窒素ガス
を流して、Ni/CNy人工格子を作製したものであ
り、(C)は、基板がNiターゲットに対向するときに
は窒素ガスを流し、基板が炭素ターゲットに対向すると
きにはArガスを流して、NiNx/C人工格子を作製
したものであり、(D)は、Arガスを常に供給してN
i/C人工格子を作製したものである。最後の(D)の
Ni/C人工格子だけが従来技術であり、比較のために
示している。
【0032】この図8は、周期が3〜5nm程度の短周
期人工格子のX線反射率パターンであるが、(A)〜
(C)は、少なくともいずれかの層が窒化物となってい
て、人工周期に起因するきれいなパターンが得られてい
る。しかも、反射率のピークの絶対値も比較的大きい。
これに対して、(D)の従来のNi/C人工格子では、
このように短周期にした場合に、反射率パターンが不鮮
明となり、反射率のピークの絶対値も小さくなる。これ
らのことから、Ni/C系人工格子において、少なくと
も一方の層を窒化物とすることにより、界面の構造を改
善できることが確認された。
【0033】本発明の人工格子の一部の例では上述のよ
うに窒化炭素膜が形成されているが、この窒化炭素膜
は、X線回折及び電子線回折の測定結果より、非晶質で
あることが判明している。また、この窒化炭素膜は、赤
外吸収スペクトルの測定結果より、窒素原子が炭素原子
と化学結合していることが判明している。さらに、この
窒化炭素膜は、高エネルギー粒子の照射に対しても高い
耐久性を示すことが確認された。
【0034】これまで各種の人工格子のデータについて
述べてきたが、ここでは、人工格子を構成する窒化物の
組成比について言及する。3d遷移金属及び炭素を窒化
物にした場合、その組成比は元素の種類によって異な
る。発明者が確認したところでは、各種の元素につい
て、以下のような組成比が得られた。 Ni:Ni3N〜Ni2N Cu:Cu3N Cr:CrN1.0〜CrN1.1 C: CN0.6〜CN0.7
【0035】
【発明の効果】本発明は、3d遷移金属/炭素系の人工
格子において、少なくともどちらかの層に窒素原子を導
入したことにより、従来の3d遷移金属/炭素人工格子
と比較して、界面における相互拡散や化学反応を抑制で
き、界面での組成勾配を急峻に保つことができる。した
がって、3d遷移金属/炭素系の人工格子の特徴である
ところの波長5nm付近の軟X線に対する高い反射率を
維持しながら、界面の構造を改善することができ、より
高い反射率を得ることができた。本発明の人工格子は、
特に、軟X線縮小投影リソグラフィにおけるX線反射鏡
用薄膜として有用である。
【0036】また、本発明の人工格子作製方法は、基板
を一定速度で移動させながら複数のターゲットへの印加
電力を独立に制御することによって、容易に、かつ再現
性及び制御性良好に、上述の人工格子薄膜を大量に作製
することができる。また、スパッタリングガスを適宜選
択することにより、使用するターゲットが同じであって
も、窒素原子の導入状況を変更した各種の人工格子を作
製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複数のターゲットを用いたスパッタリング装置
において各種の基板・ターゲット配置方式を示す説明図
である。
【図2】本発明の方法を実施するためのスパッタリング
装置の一例の平面断面図である。
【図3】各種ターゲットの成膜速度とRF投入電力の関
係を示すグラフである。
【図4】Ni及びCターゲットの成膜速度とRF投入電
力の関係を示すグラフである。
【図5】CrN/CN人工格子の小角X線回折パターン
を示すグラフである。
【図6】CrN/CN人工格子の小角X線回折パターン
を示す別のグラフである。
【図7】Ni/C人工格子及びNiN/CN人工格子の
小角X線回折パターンを示すグラフである。
【図8】Ni/C系人工格子において窒素原子の導入状
況を変更して作製した4種類の人工格子の小角X線反射
率パターンを示すグラフである。
【符号の説明】
26、28…ターゲット 30…整合回路 32…高周波電源 34…基板ホルダー 36…基板 40…真空容器(処理室) 42…リング状ガス導入パイプ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−173264(JP,A) 特開 昭61−236687(JP,A) 特開 昭59−184799(JP,A) 特開 平2−269038(JP,A) 特開 昭60−100661(JP,A) 特開 平3−10074(JP,A) 特開 昭63−161403(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 29/68 C23C 14/06 C30B 23/08 C30B 25/06 C30B 29/38

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3d遷移金属窒化物からなる第1層と窒
    化炭素からなる第2層とを交互に繰り返し積層したこと
    を特徴とする、炭素を含む窒化物人工格子。
  2. 【請求項2】 3d遷移金属窒化物からなる第1層と炭
    素からなる第2層とを交互に繰り返し積層したことを特
    徴とする、炭素を含む窒化物人工格子。
  3. 【請求項3】 3d遷移金属からなる第1層と窒化炭素
    からなる第2層とを交互に繰り返し積層したことを特徴
    とする、炭素を含む窒化物人工格子。
  4. 【請求項4】 請求項1から3までのいずれか1項に記
    載の人工格子において、3d遷移金属として、Cr、N
    i、Cu、Vのいずれか1種類を用いることを特徴とす
    る人工格子。
  5. 【請求項5】 複数のタ−ゲットをスパッタリングする
    ことによって請求項1から3までのいずれか1項に記載
    の人工格子を基板上に作製する方法において、次の特徴
    を備える方法。 (イ)少なくとも1つのタ−ゲットは炭素であり、その
    他のタ−ゲットは3d遷移金属である。 (ロ)人工格子の作製中は基板が各タ−ゲットに順番に
    繰り返し対向するように基板と各ターゲットとの相対位
    置関係を一定周期で変更させる。 (ハ)各タ−ゲットに印加する電力は独立に制御する。 (ニ)窒素ガスを含んだスパッタリングガスを用いる。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の作製方法において、窒素
    ガスを含んだスパッタリングガスを常に処理室に供給す
    ることによって請求項1記載の人工格子を作製すること
    を特徴とする作製方法。
  7. 【請求項7】 請求項5記載の作製方法において、基板
    が3d遷移金属ターゲットに対向するときには窒素ガス
    を含んだスパッタリングガスを処理室に供給し、基板が
    炭素ターゲットに対向するときには窒素ガスを含まない
    スパッタリングガスを処理室に供給することによって請
    求項2記載の人工格子を作製することを特徴とする作製
    方法。
  8. 【請求項8】 請求項5記載の作製方法において、基板
    が3d遷移金属ターゲットに対向するときには窒素ガス
    を含まないスパッタリングガスを処理室に供給し、基板
    が炭素ターゲットに対向するときには窒素ガスを含んだ
    スパッタリングガスを処理室に供給することによって請
    求項3記載の人工格子を作製することを特徴とする作製
    方法。
  9. 【請求項9】 請求項6から8までのいずれか1項に記
    載の作製方法において、窒素ガスを含んだスパッタリン
    グガスとして、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスまた
    は窒素ガスを用い、窒素ガスを含まないスパッタリンガ
    スとしてアルゴンガスを用いることを特徴とする作製方
    法。
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