JP3369845B2 - ポリグルコサミンの変性方法 - Google Patents

ポリグルコサミンの変性方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリグルコサミン
の誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリグルコサミンは、グルコースモノマ
ー単位を有する多糖の主鎖中にアミン官能価を有する多
糖である。代表的なポリグルコサミンは、例えばキチ
ン、キトサン、並びにN−アセチルグルコサミンと種々
のグリカン糖、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン、
ヘパリン、ケラタン及びデルマタンとのコポリマーであ
るポリグルコサミノグリカンを含む。
【0003】キチン及びキトサンは、一般的に用いられ
ているポリグルコサミンである。キチンは、窒素を含有
し、構造がセルロースと同様なグルコサミン多糖であ
る。キチンは、シュリンプ、カニ及びロブスターのよう
な種々の甲殻類のシェルの主たる置換分である。それ
は、また、幾種かの菌類、藻類、昆虫及び酵母中にも見
出される。キチンは、決まった化学量論を有するポリマ
ーの一種ではなく、異なる結晶構造及び脱アセチル化の
度合を有しかつ種から種にかなり大きなばらつきを有す
るN−アセチルグルコサミンのポリマーのクラスであ
る。キトサンは、キチンの脱アセチル化誘導体について
の総称である。一般的に言うと、キトサンは、ベータ−
1,4−グルコサミン及びN−アセチル−ベータ−1,
4−グルコサミンの水不溶性のランダムコポリマーであ
る。キトサンの脱アセチル化の度合は、50%程に小さ
い値のものが商業上生産されてきたが、約70〜100
%が典型的である。
【0004】キチン及びキトサンは、共に、水、希薄な
水性塩基及びほとんどの有機溶剤に不溶性である。しか
し、キトサンは、キチンと異なり、希薄な水性酸、例え
ばカルボン酸にキトサン塩として可溶性である。従っ
て、希薄な水性酸へ可溶性であることは、キチンとキト
サンとを区別する簡単な方法である。
【0005】キトサンは、それが第一級アミン基を含有
する多糖である点で独特である。従って、キトサン及び
その誘導体は、金属回収、イオン交換樹脂、包帯、縫合
糸、眼帯、接眼レンズ、及びその他の生物医学における
用途における物質として用いられることがしばしばあ
る。キトサンは、多くの有機酸及び無機酸と溶性の塩
を形成し、これらのキトサン塩誘導体もまた、生物医学
における用途において用いられることがしばしばある。
【0006】例えばキトサン塩のようなポリグルコサミ
ン塩は極めて有用であるのが分かったが、そのような塩
は、それらが用いられる系のpHがポリグルコサミンの
等電点よりも高く上昇する場合に、機能的欠点を有し得
る。このpHにおいて、(典型的には7.0より大きい
pHにおいて)、塩は遊離アミンとなり、よって水不溶
性になる。
【0007】ポリグルコサミンの水不溶性に付随する困
難を回避するために、ポリグルコサミンを種々の親水性
求電子物質で変性(derivatize)してポリグ
ルコサミンの第二結晶構造を崩壊してポリマーを水溶液
に一層容易に溶解させることができる。そのようなキト
サンの誘導体を造るのに用いられる既知の試薬の内のい
くつかは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシ
ド、第四級アンモニウム試薬、モノクロロ酢酸及び種々
の無水物を含む。これらの誘導体の内のいくつかの調製
は、エチレンオキシドのような高い蒸気圧物質、強酸及
び強塩基のような極めて腐食性の物質、アルキレングリ
コール、トルエン、モノクロロ酢酸及び無水物のような
望ましくない反応体、溶剤及び副生物の分離並びに制御
を取り扱うために特殊な装置を使用することを必要とし
得る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】例えば上記したキトサ
ン誘導体のような所定のポリグルコサミン誘導体を製造
するのに付随する困難に鑑みて、慣用の装置及び毒性の
低い反応体を用いることができるそのようなポリグルコ
サミン誘導体を製造するための新規な方法が所望され
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、共有結合され
た置換基を有するポリグルコサミン誘導体を製造する方
法を提供する。本発明により、今、希薄な苛性アルカリ
媒体を、水混和性有機溶剤、例えばアセトン、2−プロ
パノール、等と共に或は水混和性有機溶剤を伴わずに用
い、かつ強塩基或は例えばトルエン、ヘキサン、等のよ
うな望ましくない水不混和性有機溶剤を使用することを
要しない方法によって、共有結合された置換基を有する
ポリグルコサミン誘導体を製造することが可能である。
【0010】極めて驚くべきことに、本発明の一態様に
従えば、反応は、ポリグルコサミン塩の希薄な苛性アル
カリ媒体におけるスラリーで開始し、希薄な苛性アルカ
リ媒体に溶解した共有結合された誘導体で終わる。その
結果、反応生成物から残留する不溶性物質を容易に除く
ことが可能である。
【0011】本発明は、また、例えばエポキシこはく酸
のような求電子性有機試薬で置換されたポリグルコサミ
ン誘導体も提供する。本発明により、今、共有結合され
た及びイオン結合されたの両方の形態の水溶性ポリグル
コサミン誘導体を提供することが可能である。その上、
本発明のポリグルコサミン誘導体は、両性でありかつ官
能基を複数含有することができる。その結果、これらの
誘導体は、高い反応性、例えば金属キレート化剤として
の高い反応性、並びに化粧品及び生物医学用途における
高い性能を有することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明において用いるのに適した
ポリグルコサミンは、サッカリド主鎖中にアミン官能
を有するグルコースモノマー単位を有する多糖である。
ポリグルコサミンは、遊離アミン基を、好ましくは求電
子性有機試薬(本明細書以降に説明する)との共有結合
を助成する程の量の遊離アミン基を含有するのが望まし
い。本明細書中で用いる通りの「遊離アミン」なる用語
は、求核性の、すなわち求電子物質と共有結合を形成す
ることができるアミン基を意味する。遊離アミン基は、
第一級アミン基であるのが一層好ましい。また、ポリグ
ルコサミン中のアミン基の少なくとも50%、一層好ま
しくは少なくとも75〜100%が遊離アミンであるの
が好適である。
【0013】本発明に従って用いるのに適したポリグル
コサミンの分子量は、約1000〜3,000,000
グラム/グラムモルの範囲が典型的であり、約10,0
00〜1,000,000グラム/グラムモルの範囲が
好ましく、約10,000〜750,000グラム/グ
ラムモルの範囲が一層好ましい。本明細書中で用いる通
りの「分子量」なる用語は、重量平均分子量を意味す
る。ポリグルコサミンの重量平均分子量を求める方法
は、当業者に知られている。典型的な方法は、例えば光
散乱、極限粘度及びゲルパーミエーションクロマトグラ
フィーを含む。本発明に従えば、ゲルパーミエーション
クロマトグラフィーによって重量平均分子量を求めるの
が好適である。本発明に従って用いるのに適したポリグ
ルコサミンの粘度は、約1.1〜10,000mPa・
s(センチポイズ)の範囲が典型的であり、約1.1〜
2000mPa・s(センチポイズ)の範囲が好まし
い。本明細書中で用いる通りの「粘度」なる用語は、そ
の他の方法で示さない場合は、ブルークフィールド粘度
計によって25℃において測定するポリグルコサミンの
1.0重量%の希薄な酸水溶液の粘度を言う。そのよう
な粘度測定技術は、当業者に知られている。
【0014】本発明に従って用いるのに適したポリグル
コサミンの例は、例えば下記を含む:キチン、キトサ
ン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン、例えば
コンドロイチンスルフェートとして、ケラタン、例えば
ケラタンスルフェートとして、及びデルマタン、例えば
デルマタンスルフェートとして。キトサンは、本発明に
従って用いるのに適した好適なポリグルコサミンであ
る。ポリグルコサミンは、少なくとも一部脱アセチル化
して遊離アミン基をもたらすのが典型的である、ポリグ
ルコサミンの脱アセチル化度は、約50〜100%が好
ましく、約70〜99%が一層好ましく、約75〜95
%が最も好ましい。ポリグルコサミンを脱アセチル化す
る方法は、当業者に知られている。加えて、そのような
脱アセチル化されたポリグルコサミンは市販されてい
る。
【0015】本発明に従って用いるのに適した求電子性
有機試薬は、分子当り炭素原子約2〜18又はそれ以上
を含有し、分子当り炭素原子約2〜10を含有するのが
典型的である。加えて、求電子性有機試薬は、反応性
の、すなわち求核物質と共有結合を形成することができ
る基を意味する。典型的な求電子性有機試薬は、例えば
下記を含む:エチレンオキシド;プロピレンオキシド;
ブチレンオキシド;グリシドール;3−クロロ−1,2
−プロパンジオール;塩化メチル;塩化エチル;イサト
酸無水物;無水こはく酸;無水オクテニルこはく酸;無
水酢酸;ガンマ−ブチロラクトン;β−プロピオラクト
ン;1,3−プロパンスルトン;アクリルアミド;グリ
シジルトリメチルアンモニウムクロリド;グリシジルジ
メチルアルキルアンモニウムクロリド、例えばラウリ
ル;ナトリウムクロロスルホネート;ジメチルスルフェ
ート;ナトリウムクロロエタンスルホネート;モノクロ
ロ酢酸;アルキルフェニルグリシジルエーテル;グリシ
ジルトリメトキシシラン;1,2−エポキシドデカン。
一種の好適なクラスの求電子性有機試薬は、エポキシド
基、少なくとも1つの酸基、好ましくはジ酸基を含有
し、かつ分子当り炭素原子約3〜18、好ましくは3〜
6を有するそれらの求電子性有機試薬を含む。その他の
好適な求電子性有機試薬は、シス−エポキシこはく酸
びトランス−エポキシこはく酸を含み、シス−エポキシ
こはく酸が特に好適である。本発明に従って用いるのに
適した求電子性有機試薬の製造方法は、当業者に知られ
ている。加えて、そのような物質は市販されている。
【0016】本発明に従えば、求電子性有機試薬は、ポ
リグルコサミンの遊離アミンか又は未変性合成のヒドロ
キシル基のいずれかと反応してよい。そのような反応
は、起きるとすれば、試薬の求電子度に依存することに
なる。例えば、モノクロロ酢酸は、非常に反応性の求電
子物質である。本発明の方法によって、ポリグルコサミ
ンとモノクロロ酢酸との反応は、ポリグルコサミンのア
ミン基及びヒドロキシル基の両方で起きることになる。
他方、ずっと弱い求電子物質であるシス−エポキシこは
く酸は、ほとんどもっぱらポリグルコサミンのアミン基
上で反応する。同様に、ポリグルコサミンのアミン官能
が、一般にヒドロキシル基より強い求核部位と見なさ
れることは当業者に知られている。よって、求電子物質
は弱い程、ポリグルコサミンのヒドロキシル基とよりも
アミン基と一層容易に反応する傾向になる。ポリグルコ
サミンのヒドロキシル基への求電子性有機試薬の置換
は、好ましいことに実質的に回避される、すなわち、求
電子性有機試薬で置換されるポリグルコサミン上のヒド
ロキシル基は、10%より少ないのが好ましく、2%よ
り少ないのが一層好ましい。
【0017】ポリグルコサミン誘導体の所望の性質を達
成するのに有効な量の求電子性有機試薬がポリグルコサ
ミンに置換されるのが好ましい。本明細書中で用いる通
りの「モル置換」(また、「MS」とも言う)なる用語
は、1モルのグルコサミンモノマー単位当りのポリグル
コサミン上で置換される求電子性有機試薬のモルを意味
する。本発明のポリグルコサミン誘導体は、1モルのグ
ルコサミンモノマー単位当りの求電子性有機試薬約0.
03〜10.0モルのM.S.を有するのが好ましく、
約0.5〜5.0モルのM.S.を有するのが一層好ま
しく、約0.2〜1.0モルのM.S.を有するのが最
も好ましい。
【0018】本発明に従えば、極めて有利なことに、ポ
リグルコサミン誘導体は、塩形態、すなわちイオン結合
された形態か又は共有結合された形態のいずれかで製造
することができる。
【0019】加えて、求電子性有機試薬基に加えて、そ
の他の置換基、例えばヒドロキシアルキルエーテル基
(例えばヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルエー
テル基)、カルボキシアルキルエーテル基(例えばカル
ボキシメチル基)、アミド基(例えばスクシニル基)、
エステル基(例えばアセテート基)或はアミノ基(例え
ば3−(トリメチルアンモニウムクロリド)−2−ヒド
ロキシプロピル又は3−(ジメチルオクタデシアンモニ
ウムクロリド)−2−ヒドロキシプロピルエーテル基)
も含有する更に改質されたポリグルコサミンを製造して
もよい。これらのその他の置換基は、求電子性有機試薬
と反応させる前に又は反応させた後に導入しても、或は
ポリグルコサミン塩と求電子性有機試薬及びその他の変
性用試薬とを反応させることにより同時に導入してもよ
い。当業者ならば、エステル化反応を、その他の変性反
応の後に、エステルの加水分解を避けるために、本発明
の誘導体を形成するのに要するアルカリ性条件下で行う
べきことを認めるものと思う。
【0020】加えて、当業者ならば、本発明のポリグル
コサミン誘導体を、ホルムアルデヒド、エピクロロヒド
リン、或はその他の二官能価架橋剤を含み、これらに限
定しない多数のアミン又はヒドロキシル反応性架橋剤の
内のいずれかにより、或は本発明のジカルボキシレート
官能基とイオン性相互作用により誘導体を架橋する、例
えばカルシウム或はアルミニウムのような多価金属イオ
ンを使用して官能的に架橋することによって更に改質す
ることができることを認めるものと思う。その上、当業
者ならば、本発明の誘導体を、誘導体を種々の有機酸或
は鉱酸(例えば、HCl、H3 PO4 、酢酸、乳酸、グ
リコール酸、ピロリドンカルボン酸)の内のいずれかに
よって酸性にすることによって造るカルボン酸塩(例え
ば、ナトリウム、カリウム又はカルシウム)、カルボキ
シレートエステル、アミド又は無水物、及びアミン塩の
形成を含み、これらに限定しない当業者に知られている
標準反応によって更に改質することができることを認め
るものと思う。
【0021】本発明のポリグルコサミン誘導体は水溶性
である。本明細書中で用いる通りの「水溶性」なる用語
は、25℃及び1気圧において水100グラムにポリグ
ルコサミン誘導体少なくとも1グラム、好ましくは少な
くとも2グラムが可溶性であることを意味する。水溶性
の程度は、ポリグルコサミン上の求電子性有機試薬の置
換の程度を調節することによって変えることができる。
そのような水溶性を調節する技術は当業者に知られてい
る。
【0022】本発明のポリグルコサミン誘導体のイオン
結合された形態は、キトサン塩のようなポリグルコサミ
ン塩を製造する既知の方法に従って製造することができ
る。ポリグルコサミンは、水性溶媒、例えば水約5〜5
0%溶媒中にスラリー化されるが、溶解されないのが普
通である。典型的な溶媒物質は、例えばアセトンのよう
なケトン、メタノール、エタノール、N−プロパノー
ル、イソプロパノール、t−ブタノールのようなアルコ
ール及び例えばアセトニトリル、テトラヒドロフラン、
ジオキサン、2−エトキシエタノール、ジメトキシエタ
ン、等のようなその他の種々の溶媒を含む。次いで、求
電子性有機試薬を、所望の置換度の約0.5〜5倍過剰
の量で、好ましくは約0.5〜3倍過剰の量でスラリー
に加える。求電子性有機試薬の添加は、温度ほぼ室温〜
100℃、一層好ましくは約35°〜80℃、最も好ま
しくは約45°〜75℃の液相において行うのが好まし
い。求電子性有機試薬を導入する圧力は臨界的なもので
はなく、約0〜1000psig(0〜70Kg/cm2G)
の範囲が典型的である。塩を製造するための典型的な反
応時間は、約30分〜5時間、好ましくは約30分〜2
時間、一層好ましくは約30分〜1時間の範囲である。
生成するポリグルコサミン塩は、ろ過、洗浄及び抽出に
よって分離することができる。上記の製法に関するそれ
以上の詳細は、当業者に知られている。例えば、Uni
on Carbide Chemicals and Pl
astics Company Inc.に譲渡された米
国特許第4,929,722号を参照。
【0023】本発明に従って製造されるポリグルコサミ
ン塩は、例えば、キトサンが用いられる、生物医学用
途、例えばやけど治療並びに発疹や菌類感染用の局所医
療用配合物を含み、これらに限定しない事実上すべての
知られている用途用に用いることができるが、本発明の
ポリグルコサミン塩は、またポリグルコサミンの共有結
合形誘導体の製造において反応性中間体として利用する
こともできる。
【0024】本発明の共有結合されたポリグルコサミン
誘導体は、求電子性有機試薬がプロセスの条件下で反応
性でありさえすれば、当業者に知られている方法に従っ
て製造することができる。ポリグルコサミンの誘導体を
製造するいくつかの知られている方法は、上に引用する
米国特許第4,929,722号、CanadianP
atents and Development Lt
d.に譲渡された米国特許第4,424,346号、N
ova Chem Limitedに譲渡された米国特許
第4,619,995号、及びWella Aktie
ngesellscaftに譲渡された米国特許第4,
780,310号を含む。
【0025】本発明の共有結合されたポリグルコサミン
誘導体は、下記の手順に従って製造するのが好ましい。
出発原料は、上記のポリグルコサミン及び下記を含み、
これらに限定しない種々の既知の酸から製造することが
できるポリグルコサミン塩である:ギ酸、酢酸、モノク
ロロ酢酸、N−アセチルグリシン、アセチルサリチル
酸、フマル酸、グリコール酸、イミノジ酢酸、イタコン
酸、DL−乳酸、マレイン酸、DL−リンゴ酸、ニコチ
ン酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、サリチル酸、
スクシンアミド酸、こはく酸、アスコルビン酸、アスパ
ラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、マロン酸、ピル
ビン酸、スルホニルジ酢酸、チオジ酢酸及びチオグリコ
ール酸、並びに塩酸、硫酸、リン酸、等を含む種々の鉱
酸。典型的な塩は、例えば下記を含むことができる:キ
トサンラクテート、キトサンエポキシスクシネート、キ
トサンモノクロロアセテート、キトサンサリチレート、
キトサンイタコネート、キトサンピロリドンカルボキシ
レート、キトサングリコレート、キトサン塩酸塩及びこ
れらの混合物。好適な塩は、例えば下記を含む:ニュー
ジャージー、エジソン在Amerchol Corpo
rationからKytamer(登録商標) Lとし
て入手可能なキトサンラクテート及びまたAmerch
ol CorporationからKytamer PC
として入手可能なキトサンピロリドンカルボキシレー
ト。対応する共有結合された誘導体を製造することを所
望する場合には、例えばキトサンのcis−エポキシこ
はく酸塩のような本明細書中に記載する求電子性有機試
薬の塩もまた反応することができる。
【0026】塩を、水性スラリー、水性有機溶剤中のス
ラリーとしてか、或は好ましくは実質的に乾燥した粉末
としてのいずれかで苛性アルカリを含有する水性媒体と
組み合わせて水性媒体中の塩のスラリーを形成する。苛
性アルカリの選定は臨界的なものではなく、例えば水酸
化ナトリウム或は水酸化カリウムのような苛性アルカリ
を利用することができる。水性媒体中の苛性アルカリの
濃度は、水性媒体、すなわち希薄な苛性アルカリ媒体の
重量を基準にして約1〜50重量%にするのが典型的で
あり、約2〜25重量%にするのが好ましく、約3〜1
0重量%にするのが一層好ましい。苛性アルカリの添加
量は、次に導入する求電子性有機試薬の酸、並びにポ
リグルコサミン塩上の酸を中和するのに有効なものに
すべきである。加えて、例えばモノクロロ酢酸のような
いくつかの求電子性試薬は、それらが反応するにつれて
酸性種を発生する。これらは、反応のために要求される
苛性アルカリの量を計算する際に、計算に入れなければ
ならない。加える苛性アルカリの有効な量は、導入する
或は反応の間に生成されるすべての酸性種に加えて、反
応混合物がpH約7.5〜14.0、好ましくは約8.
0〜13.0においてポリグルコサミンの膨潤スラリー
になるように必要とする追加の量を中和するのに十分な
ものにするのが典型的である。求電子性有機試薬塩或は
ポリグルコサミンのモノクロロ酢酸塩を出発ポリマーと
して用いるならば、苛性アルカリの最少要求量は減少さ
せることができる、というのは、これらの場合では、塩
の一部はポリグルコサミンによってすでに中和されてい
るからである。ポリグルコサミン塩の水性媒体への添加
は、攪拌条件下でかつ液相において約1〜3時間、好ま
しくは約1時間の期間行うのが好ましい。この初期工程
の間にポリマーを膨潤させるために用いる温度及び圧力
は、それぞれほぼ室温〜100℃及び大気圧にするのが
典型的であるが、温度も圧力もこの工程について臨界的
なものではない。
【0027】ポリマーを希薄な苛性アルカリ媒体中で初
期膨潤した後に、求電子性有機試薬を適した量で加えて
ポリグルコサミン上の求電子性有機試薬の所望の置換度
を達成する。導入する求電子性有機試薬の量は、グルコ
サミンモノマー単位1モル当り約0.05〜10モルの
範囲にするのが典型的であり、約0.5〜5モルの範囲
にするのが一層好ましい。当業者ならば、共有結合置換
を行うために加えることを必要とする求電子性有機試薬
の量は、求電子性有機試薬(求電子性有機試薬が酸であ
る場合)の塩を出発原料として用いる場合に、少なくな
ることを認めるものと思う。共有結合置換は、混合物
を、例えば加熱することによって約200℃より低い、
好ましくは約30°〜150℃、一層好ましくは約80
°〜100℃の温度に保つことによって行う。置換を行
うのに用いる圧力は臨界的なものではないが、但し、系
を液相に保つのが好適である。いくつかの反応、例えば
エチレン或はプロピレンオキシドのようなアルキレンオ
キシドとの反応は、揮発性試薬の反応からの損失を最少
にするために、密封反応容器中で行うのが最良である。
これらの反応では、圧力は大気圧を越えてもよい。しか
し、かかる反応は、本発明の方法では、反応のために要
求される高い反応温度におけるこれらの求電子物質の損
失を最少にするために十分に有効な凝縮機構を採用する
ならば、開放系において大気圧で行われることになる。
反応は、約1〜48時間の期間行うのが典型的であり、
約8〜24時間の期間行うのが一層典型的である。
【0028】本発明の方法に従えば、共有結合されたポ
リグルコサミン誘導体は、生成時に反応媒体中に溶解す
る。これが行われるにつれて、反応媒体の粘度は、ポリ
グルコサミン分子量が大きくなるにつれて増大して溶液
の粘度は高くなる。反応生成物の溶解は、反応が完了す
る時を求めるための簡便な手段になる。別法として、反
応の程度は、例えば赤外分析或はガスクロマトグラフィ
ーのような当業者に知られている方法によって求めるこ
とができる。反応の完了時に、反応混合物を冷却して、
好ましくは室温、すなわち約25°〜30℃にする。発
明の好適な態様では、次いで、反応混合物を、例えば、
HCl、H3 PO4、酢酸、乳酸或は同様の酸のような
有機酸或は無機酸によって中和する。
【0029】生成物は、反応の完了時に直接に或は中和
した後に或は共有結合されたポリグルコサミン誘導体を
反応生成混合物から一部もしくは完全に分離した後に、
用いることができる。これより、反応生成物は、ポリグ
ルコサミン誘導体約0.1〜99.9重量%及び反応か
らの種々の有機副生物約0.1〜99.9重量%を含有
する組成物を含む。これらの副生物は、ポリグルコサミ
ン塩出発原料からの酸及び求電子性有機試薬からの加水
分解生成物であるのが典型的である。加えて、特にアル
キレンオキシドを用いるならば、種々のダイマー及びホ
モポリマー副生物が生成し得る。酸副生物は、酒石酸、
乳酸、酢酸、グリコール酸、ピロリドンカルボン酸、も
しくは塩酸或はこれらの塩及びこれらの酸もしくは塩も
しくは両方の混合物からなる群より選ばれる。組成物
は、ポリグルコサミン誘導体の分離の程度に応じて、更
に、組成物の全重量を基準にして約0.1〜90重量%
の水、しばしば約10〜80重量%の水を含み得る。組
成物は、ポリグルコサミン誘導体約0.05〜30重量
%、上述した副生物約0.01〜15重量%及び水約5
5〜99.94重量%を含むのが典型的である。
【0030】反応からの残留副生物は、また、例えば初
期ポリグルコサミン酸塩出発原料のナトリウム塩、残留
無機塩、例えばNaCl、KCl、NaOH、等及び低
分子アミノグルカンも含み得る。反応を、ポリグルコサ
ミン求電子性有機酸塩、例えばキトサンエポキシスクシ
ネート或はキトサンモノクロロアセテートで開始するこ
との利点は、これらの反応の完了時に対応する酸、酒石
酸及びグリコール酸がそれぞれ残留副生物として存在す
ることである。例えば、反応において初めにキトサンエ
ポキシスクシネート或はキトサンモノクロロアセテート
を用いることによって、更に残留有機酸を除く問題を最
小にし、主要な汚染物は無害の無機酸になる。そのよう
な条件下で、生成物が製造され、副生物酸塩を含有する
溶液として用いることができる。
【0031】ポリグルコサミン誘導体を分離することを
所望する場合、当業者に知られている種々の選択が存在
する。一つの選択は、例えば、ポリマーを強いて沈殿さ
せるために、有機溶媒、例えばアセトン又は2−プロパ
ノールを加えることによる。別の一層好適な方法は、中
和した反応生成混合物を膜を通過させることによってポ
リマーを分離することにある。そのような膜分離は、例
えば限外ろ過、マイクロろ過、逆浸透、ナノろ過、透析
或は電気透析を含む。そのような膜技術に関する詳細は
当業者に知られている。最終生成物を濃縮して溶液とし
て用いることができ或は凍結乾燥、スプレー乾燥、ドラ
ム乾燥又は当業者に知られているそのような水溶液を乾
燥させる多数の更なる方法の内のいずれかによって乾燥
させて粉末にすることができる。
【0032】ポリグルコサミン上に複数の官能基を有す
ることを所望する場合、そのような基をポリグルコサミ
ンに連続して或は同時にのいずれかで反応させて所望の
誘導体にすることができる。例えば、求電子性有機試薬
を遊離アミン基上に及びモノクロロ酢酸をヒドロキシル
基上に有するキトサンを変性することが望ましいかもし
れない。この場合、求電子性有機試薬を連続して反応さ
せた後にモノクロロ酢酸で処理すれば、これを達成する
ことになる。他方、ポリグルコサミン窒素上のモノクロ
ロアセテート基の一層大きな置換を所望するならば、反
応を同時にランさせることができる。当業者ならば、本
発明の方法によって造られる化合物を、ポリグルコサミ
ン誘導体を種々の有機酸或は鉱酸(例えば、HCl、H
3 PO4、酢酸、グリコール酸、乳酸又はピロリドンカ
ルボン酸)の内のいずれかによって酸性にすることによ
って造るカルボン酸塩(例えば、ナトリウム、カリウム
又はカルシウム)、カルボキシレートエステル、アミド
又は無水物、及びアミン塩の形成を含み、これらに限定
しない当業者に知られている標準反応によって更に改質
することができることを認めるものと思う。
【0033】本発明のポリグルコサミン誘導体は、下記
を含む種々の用途を有し、これらに限定されない:中和
薬剤(neutraceutical)、医薬品、化粧
品及び治療、並びに例えば、水処理、洗浄剤、或は吸
着、金属錯生成、紙凝集、織物サイジング、食品コーテ
ィング及びガス分離のような膜用途、クロマトグラフィ
ー固定相用固体保持体としてを含む種々の工業用途。
【0034】本発明のポリグルコサミン誘導体について
の好適な最終用途は、パーソナルケア組成物、例えばス
キンクリーム、ローション、クレンジング製品、コンデ
ィショナー、ヘアスプレー、ムース、ゲル、等における
成分としてであり、該組成物はポリグルコサミン誘導体
及びその他のパーソナルケア成分を含む。本明細書中で
用いる通りの「パーソナルケア成分」なる用語は、下記
を含み、これらに限定されない:有効成分、例えば殺精
薬、抗ウイルス薬、鎮痛剤、麻酔剤、抗生物質、抗菌性
物質、防腐剤、ビタミン、コルチコステロイド、抗真菌
薬、血管拡張薬、ホルモン、抗ヒスタミン、オータコイ
ド、ケロリチック(kerolytic)剤、下痢止め
剤、抗脱毛剤、抗炎症剤、緑内障剤、ドライアイ組成
物、創傷治療剤、抗感染症剤、等、並びに溶剤、希釈剤
及び補助剤、例えば水、エチルアルコール、イソプロピ
ルアルコール、一層高級なアルコール、グリセリン、プ
ロピレングリコール、ソルビトール、保存剤、界面活性
剤、メントール、ユーカリ油、その他の精油、香気、粘
度調整剤、等。そのようなパーソナルケア成分は市販さ
れており、当業者に知られている。
【0035】パーソナルケア組成物中に存在するポリグ
ルコサミン誘導体の量は、特定のケア組成物に応じて変
わることになるが、パーソナルケア組成物は、本発明の
ポリグルコサミン誘導体を約0.1〜99重量%含むの
が典型的である。典型的な配合物は、例えばポリグルコ
サミン誘導体を90重量%含有することができる。パー
ソナルケア組成物中のポリグルコサミン誘導体の濃度
は、パーソナルケア組成物を基準にして約0.5〜50
重量%の範囲になるのがしばしばであり、約0.5〜1
0重量%の範囲になるのが一層しばしばである。
【0036】典型的なクレンジング系は、水、アンモニ
ウムラウリルスルフェート及びアンモニウムラウレス
(laureth)スルフェートのような界面活性剤、
及びラウラミドDEA又はココベタインのような補助サ
ーファクト、NaCl、ヒドロキシプロピルセルロース
又はPEG−120メチルグルコースジオレエートのよ
うな増粘剤、クエン酸又はトリエチルアミンのようなp
H調整剤並びに四ナトリウムEDTAのようなキレート
化剤を含有することができる。同様に、固形石けんは、
タローエート又はココエートのような界面活性剤及びグ
リセリンのようなフィールモディファイアーを含有する
ことができる。
【0037】典型的なエアゾール及び非エアゾールヘア
エアゾールスプレーは、低分子アルコール及び、又は水
のような溶剤、ジメチルエーテル或は炭化水素のような
噴射剤、ポリ(ビニルピロリドン)/ビニルアセテート
コポリマー及び、又はポリ(ビニルメタクリレート)/
メタクリレートコポリマーのような樹脂、ジメチコーン
コポリオールのような可塑剤及びアミノメチルプロパノ
ールのような中和剤を含有することができる。典型的な
クリームは、鉱油のような油、水、メチルグルコースセ
スキステアレート又はPEG−20メチルグルコースセ
スキステアレートのような乳化剤、イソプロピルパルミ
テート又はPEG−20メチルグルコースジステアレー
トのようなフィールモディファイアー、メチルグルセス
(gluceth)−20のような多価アルコール及び
カルボマーのような安定剤を含有することができる。
【0038】典型的なムースは、水及び、又はアルコー
ルのような溶剤、オレス(oleth)−10のような
界面活性剤、イソプロピルパルミテートのようなフィー
ルモディファイアー及びポリクオーターニウム(pol
yquaternium)−10又はポリ(ビニルメタ
クリレート)/メタクリレートコポリマーのような樹脂
を含有することができる。典型的なゲルは、カルボマー
のような増粘剤、水及び、又はアルコールのような溶
剤、ポリ(ビニルメタクリレート)/メタクリレートコ
ポリマーのようなスタイリング樹脂,アミノメチルプロ
パノールのような中和剤及びメチルグルセス−20のよ
うなフィールモディファイアーを含有することができ
る。
【0039】上記したようなパーソナルケア組成物の成
分、成分の量及び調製方法に関するそれ以上の詳細は、
当業者に知られている。例えば、上に挙げた米国特許第
4,780,310号を参照。下記の例は、例示するた
めに挙げるものであり、特許請求の範囲に記載する範囲
を制限する意図のものではない。
【0040】
【実施例】下記の成分を例において使用した:2−プロ
パノール−ウイスコンシン、ミルウォーキー、Aldr
ich Chemical Co.から入手可能。Chi
tosan−1− ニューヨーク、ロンコンコマ、Fl
ukaから入手可能な低分子質量物質(Mr 〜70,0
00)。シス−エポキシこはく酸−オレゴン、ポートラ
ンド、TCI Americaから入手可能。NaOH
−ニュージャージー、フィリップスバーグ、J.T.B
arkerから入手可能な水酸化ナトリウム。酒石酸−
ウイスコンシン、ミルウォーキー、Aldrich C
hemicalCo.から入手可能。Kytamer
(登録商標)L−ニュージャージー、エジソン、Ame
rchol Corporationから入手可能なモ
ル当りの重量平均分子量300,000〜750,00
0グラムを有するキトサンラクテート。
【0041】酢酸−ウイスコンシン、ミルウォーキー、
Aldrich ChemicalCo.から入手可
能。トランス−エポキシこはく酸−オレゴン、ポートラ
ンド、TCI Americaから入手可能。フマル酸
−ウイスコンシン、ミルウォーキー、Aldrich
Chemical Co.から入手可能。マレイン酸−
ウイスコンシン、ミルウォーキー、Aldrich C
hemical Co.から入手可能。Chitosa
n−2−ニューヨーク、ロンコンコマ、Flukaから
入手可能な中位の分子質量物質(Mr 〜750,00
0)。Polymer JR(登録商標)−ニュージャ
ージー、エジソン、Amerchol Corpora
tionから入手可能なカチオン性セルロース系材料。
HCl−ニュージャージー、フィリップスバーグ、J.
T.Barkerから入手可能な塩酸。プロピレンオキ
シド−ウイスコンシン、ミルウォーキー、Aldric
h Chemical Co.から入手可能。クロル酢酸
ナトリウム−ウイスコンシン、ミルウォーキー、Ald
richChemical Co.から入手可能。
【0042】例1 キトサンラクテートとプロピレンオキシドとの反応 ヒドロキシプロピルキトサン 2000ml丸底フラスコにおいて、Kytamer
L 100gを5重量%NaOH水溶液478g中にス
ラリー化し、ポリマーを1時間膨潤させた。次いで、冷
却したプロピレンオキシド208gを添加漏斗により素
早く加えた。反応を暖めて45℃にし、その際に、穏や
かな還流が始まった。その還流を、−5℃に冷却したコ
ンデンサーを使用することによって抑制した。5時間し
た後に、反応温度は95℃に上昇しており、そこでそれ
を20時間保った。均質な反応生成混合物を冷却して2
5℃にし、50重量%酢酸水溶液で中和してpH9.0
にした。粘稠な溶液を蒸留水に対して24時間透析し
(スペクトル、1000分子量カットオフ(MW
C))、ろ過して不溶性残分を除き、溶液を濃縮して固
形分15重量%の溶液としての生成物1167gをもた
らした。例15に記載する手順に従う生成物の凍結乾燥
した部分のNMR検査は、キトサンが窒素M.S.0.
85及び酸素M.S.1.17を有することを示した。
【0043】例2 キトサンラクテートとクロル酢酸ナトリウムとの反応 カルボキシメチルキトサン 1000ml丸底フラスコにおいて、Kytamer
L 25gを5重量%NaOH水溶液200g中にスラ
リー化し、スラリーを1時間攪拌した。反応混合物を加
熱して90℃にし、クロル酢酸ナトリウム(Aldri
ch)58.2gを固体として4回に分けて10分間隔
で加えた。加える間、酸を加える際に低下したpHを、
4重量%NaOH水溶液を加えることによって10.0
〜10.5に保った。pHを安定にした後に、反応を9
0℃で24時間攪拌した。生成した均質な反応混合物を
冷却して25℃にし、50重量%酢酸水溶液を使用して
中和してpH8.5にした。生成した溶液を蒸留水に対
して透析し(スペクトル、1000MWC)、かつ凍結
乾燥してキトサン生成物11.9gをもたらした。例1
5に記載する手順に従うNMR分析は、生成物が可溶性
であり、N,O−カルボキシメチルキトサンであること
を確認した。NMR分析に基づけば、生成物は窒素M.
S.0.25及び酸素M.S.0.08を有していた。
【0044】例3 N−[(2−ヒドロキシ−1,2−ジカルボキシ)エチ
ル]キトサン 500ml丸底フラスコに、5重量%NaOH水溶液2
16gを装填した。この溶液に、例1からのキトサンエ
ポキシスクシネート15.0gを加え、スラリーを1時
間攪拌してポリマーを膨潤させた。次いで、シス−エポ
キシこはく酸11.2gを加えた(合計のエポキシド
0.12モル、2.0当量)。不均質な混合物を加熱し
て温度100℃にし、かつ24時間還流させた。反応が
進行するにつれて、共有結合されたキトサン誘導体が溶
液に入った。
【0045】生成した均質な反応混合物を冷却して25
℃にし、反応混合物のpHを、15重量%酒石酸水溶液
を加えることによって8.5に調整した。生成混合物を
ろ過して不溶性残分4.2gを除いた。ろ液は生成物及
び残留酒石酸塩を含有し、これを蒸留水に対して24時
間透析した(スペクトル、500分子量カットオフ(M
WC))。生成物を凍結乾燥することによって分離して
N−[(2−ヒドロキシ−1,2−ジカルボキシ)エチ
ル]キトサン10.3gを淡黄色フレークとしてもたら
した。
【0046】例4 N−[(2−ヒドロキシ−1,2−ジカルボキシ)エチ
ル]キトサン 1000ml丸底フラスコ中の5重量%NaOH水溶液
396gに、Kytamer L 25.0gをスラリー
化した。スラリーを1時間攪拌し、その際にシス−エポ
キシこはく酸26.0gを加え、不均質な混合物を36
時間加熱して90℃にした。生成した均質な反応混合物
を冷却して25℃にし、pHを、50重量%酢酸水溶液
を使用して8.5に調整した。溶液をろ過して不溶性残
分1.5gを除き、生成したろ液を蒸留水に対して24
時間透析した(スペクトル、1000MWC)。生成物
を凍結乾燥することによって分離してN−[(2−ヒド
ロキシ−1,2−ジカルボキシ)エチル]キトサン2
4.3gを透明なオフホワイト色フレークとしてもたら
した。
【0047】対照例5 キトサンとシス−エポキシこはく酸との試みの反応 キトサン(キトサン塩ではない)とシス−エポキシこは
く酸とを反応させようと試みた。すなわち、Chito
san−2 7.5gを5重量%NaOH水溶液14
7.2gでスラリー化し、スラリーを1時間攪拌した。
次いで、シス−エポキシこはく酸12.3gを反応に加
え、温度を36時間95℃にもたらした。生成した不均
質な反応混合物を冷却して室温にし、スラリーのpH
を、15重量%酒石酸水溶液を使用して8.5に調整し
た。不溶性物質をろ過しかつ乾燥させて未反応のキトサ
ン6.41gをもたらした。ろ液及び上澄みのNMR検
査は、キトサン及び酒石酸だけを示した。
【0048】例6 キトサンラクテートとシス−エポキシこはく酸、次いで
プロピレンオキシドとの反応 1000ml丸底フラスコにおいて、Kytamer
L(キトサンラクテート)25g(.10モル)を5
%NaOH溶液158.4g中にスラリー化した。スラ
リーを25℃において1時間攪拌した。シス−エポキシ
こはく酸6.53g(.05モル)を加え、加熱して
90℃にして36時間反応させた。次いで、反応装置に
−5℃に冷却したコンデンサーを装着し、プロピレンオ
キシド17.3g(0.30モル)を反応混合物中に導
入した。反応温度を更に36時間90℃に保った。生成
した反応混合物を冷却して25℃にし、pHを15%乳
酸水溶液で8.5に調整した。生成した粘稠な、均質な
溶液を蒸留水に対して24時間透析した(スペクトル
膜、1000MWC)。不溶性残分1.57gをろ過に
よって除き、生成した溶液を凍結乾燥して生成物17.
5gを白色フレークとしてもたらした。
【0049】対照例7 米国特許第4,929,722号の例1に従うシス−エ
ポキシこはく酸の試みの反応 2−プロパノール92ml及び水48mlに、Chit
osan−2 20.0gを加えた。このスラリーに、
氷酢酸12.0gを2−プロパノール50mlに溶解し
たものを5分かけて加えた。酸を加えた後に、水30m
lを加え、混合物を30分間攪拌した。50%NaOH
水溶液54.4gを加え、混合物を90分間攪拌した。
シス−エポキシこはく酸31.7gを加えた。キトサン
が反応容器中で集合してかたまりとして現れるにつれ
て、反応の粘度は制御し得ないものになった。攪拌を助
成するために、更に2−プロパノール75ml及び水3
9mlを加えなければならなかった。次いで、反応を還
流において36時間加熱した。
【0050】生成した不均質な反応混合物は、かたまり
状でありかつ硬化されており、これを、15%酒石酸水
溶液を加えることによって中和した。ポリマーをろ過
し、小部分を十分に粉砕した。粉砕した物質をソックス
レー抽出装置において2−プロパノールで24時間抽出
しかつ乾燥させて淡褐色固体をもたらし、これは蒸留水
に何らの程度にも可溶性でなかった。
【0051】例8〜12 置換レベル 例4に概略する手順に従い、更に5つの反応を、異なる
置換レベルを用いて行った。これらの反応の置換レベル
及び例において生成された生成物を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】例13 新規な生成物特性表示 NMR分析 これらの例において製造されたサンプルすべてのNMR
スペクトルをBruker AMX−300分光計で
とめた。サンプルを純D2 O又は17重量%CF3 CO
ODに溶解した。この際、純D2 Oへの溶解性はごく僅
かな又はのろいものであった。初期の割当てを助成する
ために、サンプルを、分解を増進させるために55℃に
おいて調べた。これらの温度において、CF3 COOD
は、多糖主鎖及びN−アセチルグルコサミン単位のアセ
チル結合に対して逆であるが、温和な作用を有してい
た。ポリマーの実際の分子構造、特に窒素置換された
(2−ヒドロキシ−1,2−ジカルボキシ)エチル部分
は、NMR条件によって影響されないままであった。
【0054】二次元ヘテロ核相関NMRマップに基づけ
ば、キトサンとシス−エポキシこはく酸との反応生成物
は、モノマー単位を3つ含有する長鎖ランダムターポリ
マーである。モノマーは、グルコサミン窒素への置換に
よって変わり、下記を含む:I)サッカリド−NHCH
(CO2 H)CH(OH)(CO2 H)、II)サッカ
リド−NH2 及びIII)サッカリド−NHC(O)C
3
【0055】構造Iは、シス−エポキシこはく酸と−N
2 基との間の主反応生成物を表わす。反応が利用可能
な−NH2 基に関し化学量論的でなければ、いくつかが
最終生成物の一部として残り、残留構造II単位の内の
いくつかを引き起こす。加えて、アルカリ性反応条件
は、恐らく出発キトサンからのN−アセチルグルコサミ
ン単位の内のいくつかを加水分解して構造II単位をも
たらすことになる。残留するモノマー単位は、元のキト
サン出発原料から存在する構造III N−アセチルグ
ルコサミン単位である。
【0056】例3からの生成物をモデルとして用い、定
量NMR結果を、1個の6員環をユニットとして使用す
ることによって標準化するならば、構造Iの相対濃度
は、0.66+- 0.03であるのが認められる。換
言すれば、利用可能な−NH2基の66%がシス−エポ
キシこはく酸と反応して予期される生成物Iを形成し
た。残留アセテート単位IIIは19%を占め、残り1
5%は構造II単位に起因される。これらの割当てを用
いて予期される燃焼分析結果を計算した。表2は、置換
レベルに関係しない新規なポリマーについての完全なプ
ロトン及び炭素割当てを掲記する。
【0057】
【表2】
【0058】測定の感度の範囲内で、窒素への二重置換
は起きなかった。また、利用可能な酸素への置換のはっ
きりしたNMR証拠は明らかでない。シス−エポキシこ
はく酸が利用可能なヒドロキシ基と反応しているかどう
かを確認するために、反応を、例3に記載する同じ条件
に従い、単にキトサン塩に代えてPolymer JR
25.0gを用いただけでランした。Polymer
JRは、キトサン中の2番の炭素に存在するアミノ基を
ヒドロキシ基で置換する点でキトサンと異なるセルロー
ス多糖である。Polymer JRは、エチレンオキ
シド及び第四窒素含有誘導体で変性することによって水
溶性にされるセルロースの形態である。反応を36時間
行い、均質な反応混合物を冷却しかつ中和した後に、生
成物を蒸留水に対して24時間透析した。生成した溶液
を凍結乾燥し、固体物質17.3gが収集された。生成
した物質のNMR検査は、Polymer JR及び酒
石酸だけを示した。試薬は、これらの条件下で反応性ア
ミノ基を含有しない多糖と反応しないようである。
【0059】IR分析 例3から分離した生成物のFT−IRスペクトルを、1
モル濃度HCl水溶液によってpH2.0に調整した溶
液からろ過によって分離した固体サンプル、並びにpH
10.0のH2 O中のポリマーの溶液及びフィルムに関
して得た。FT−IRスペクトルを、Bio−Rad
FTS−60 FT−IR分光計で記録した。固体サン
プルをKBrペレットを用いて記録した。液体サンプル
スペクトルを、CIRCLE(登録商標)セルを使用し
てランした。フィルムを分析するためにAgClディス
クにキャストした。
【0060】pH10.0における固体状態及び溶液ス
ペクトルは、主バンドに関する限りでは、極めて同様で
あることが分かった。しかし、相対バンド強さ及びピー
ク位置のシフトに関して差異があった。これらは、溶液
状態における水分子との水素結合の変化によると予想さ
れる。CO2 -伸縮バンドは、pH10.0において最も
強いバンドであることが観測される。フィルムでは、そ
れは1601逆センチメートル(cm-1)において現
れ、他方、溶液では、それは1591cm-1にシフトさ
れる。キャストフィルムでは、3352並びに、293
0及び2880cm-1で観測されるバンドは、それぞれ
OH及びCH伸縮振動に割り当てられる。CH曲げバン
ドは、フィルムでは1460、1384、及び1313
cm-1で観測され、かつ溶液では1437、1389、
及び1321cm-1で観測される。IRスペクトルにお
いて通常極めて強いC−O伸縮バンドは、強く、キャス
トフィルムでは1114、1072及び1030cm-1
で観測され、かつ溶液では1115、1070及び10
32cm-1で観測される。通常3200〜3400cm
-1領域において観測されるNH伸縮バンドは、恐らくO
H伸縮バンドと重なる。しかし、1500〜1580c
-1領域において予期されるNH曲げバンドは、観測さ
れない。これは、NH種がpH10.0において有意に
なり得ないことを示す。
【0061】pH2.0において分離された物質の固体
状態スペクトルは、NH2+基によるバンドを示す。26
00〜3000及び2250〜2700cm-1領域にお
けるむしろ広いバンドは、NH2+伸縮バンドに割り当て
可能であり、1640cm-1における強いバンドは、N
2+曲げによる。OH及びCH伸縮バンドは、それぞれ
3424並びに、2943及び2885cm-1で観測さ
れる。アセタールC=O伸縮バンドは、1733cm-1
で明瞭に規定される。CH曲げバンドは、1380、1
319及び1240cm-1で観測される。加えて、スペ
クトルは、酸性塩種による3250、1560及び14
30cm-1におけるバンドを示す。これらの種の正確な
性質は、現時点ではFT−IRスペクトル単独をベース
にして規定することができない。
【0062】
【表3】
【0063】対照例14 キトサンラクテートとフマル酸との試みの反応 例4に概略する手順に従い、Kytamer L(キト
サンラクテート)25.0gを5重量%NaOH水溶液
398g中にスラリー化した。ポリマーを1時間攪拌
し、その際にフマル酸22.9gを加えた(フマル酸
は、トランス−エポキシこはく酸の未エポキシ化形態で
ある)。反応を還流に加熱して36時間攪拌した。生成
した不均質な反応混合物を冷却して25℃にし、pH
を、15重量%酒石酸水溶液を使用して8.5に調整し
た。反応混合物をろ過し、不溶性残分16.0gが収集
された。ろ液及び上澄みをNMRによって調べ、未反応
のキトサン、乳酸、酒石酸及びフマル酸だけを含有する
ことが分かった。
【0064】対照例15 キトサンラクテートとマレイン酸との試みの反応 例4に概略する手順に従い、Kytamer L(キト
サンラクテート)25.0gを5重量%NaOH水溶液
398g中にスラリー化した。ポリマーを1時間攪拌
し、その際にマレイン酸22.9gを加えた(マレイン
酸は、シス−エポキシこはく酸の未エポキシ化形態であ
る)。反応を還流に加熱して36時間攪拌した。生成し
た不均質な反応混合物を冷却して25℃にし、pHを、
15重量%酒石酸水溶液を使用して8.5に調整した。
反応混合物をろ過し、不溶性残分27.2gが収集され
た。ろ液及び上澄みをNMRによって調べ、未反応のキ
トサン、乳酸、酒石酸及びマレイン酸だけを含有するこ
とが分かった。発明を特定の態様に関して説明したが、
当業者ならば、発明のその他の態様を特許請求の範囲に
含む意図であることを認めるものと思う。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−48616(JP,A) 特開 昭61−192701(JP,A) 特開 昭61−190502(JP,A) 特開 昭59−8701(JP,A) 特開 昭61−60701(JP,A) 特表 昭63−503466(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 37/08 C08B 37/00 CA(STN)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 共有結合されたポリグルコサミン誘導体
    を製造するに、 (a)ポリグルコサミンの塩を、ポリグルコサミン塩を
    中和し、ポリグルコサミンの膨潤を助成しかつ中和され
    たポリグルコサミンのスラリーを形成するのに有効な量
    の水性媒体に分散させ、該水性媒体は水性媒体の重量を
    基準にして1〜50重量%の苛性アルカリを含有し、該
    スラリーはpH7.5〜14.0を有し、該中和される
    ポリグルコサミンは遊離アミン基を含有し; (b)中和されるポリグルコサミンの遊離アミン基と反
    応することができる求電子性有機試薬をスラリーに導入
    し、該求電子性有機試薬はエポキシド基、少なくとも1
    つの酸基を含有しかつ3〜18個の炭素原子を有するか
    又はエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレン
    オキシド、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、塩
    化メチル、塩化エチル、イサト酸無水物、無水こはく
    酸、無水オクテニルこはく酸、無水酢酸、ガンマ−ブチ
    ロラクトン、β−プロピオラクトン、アクリルアミド、
    ナトリウムクロロスルホネート、ジメチルスルフェー
    ト、ナトリウムクロロエタンスルホネート、モノクロロ
    酢酸、アルキルフェニルグリシジルエーテル、グリシジ
    ルトリメトキシシラン、1,2−エポキシドデカン、又
    はこれらの混合物であり; (c)スラリーを、200℃未満の温度に1〜48時間
    保ち、 (i)求電子性有機試薬をポリグルコサミンに置換させ
    て共有結合されたポリグルコサミン誘導体を形成し;及
    び (ii)共有結合されたポリグルコサミン誘導体を水性
    媒体中に溶解させることを促進することを含む共有結合
    されたポリグルコサミン誘導体を製造する方法。
  2. 【請求項2】 ポリグルコサミン塩が、キトサン、ヒア
    ルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン、ケラタン、デル
    マタン及びこれらの混合物からなる群より選ぶポリグル
    コサミンの有機酸アミン塩である請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 ポリグルコサミン塩を、キトサンラクテ
    ート、キトサンエポキシスクシネート、キトサンモノク
    ロロアセテート、キトサンサリチレート、キトサンイタ
    コネート、キトサンピロリドンカルボキシレート、キト
    サングリコレート、キトサンヒドロクロリド及びこれら
    の混合物からなる群より選ぶ請求項1の方法。
  4. 【請求項4】 求電子性有機試薬をモノクロロ酢酸、
    ポキシコハク酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシ
    ド、無水こはく酸、無水オクテニルこはく酸、無水酢
    酸、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリ
    シジルジメチルアルキルアンモニウムクロリド、及びこ
    れらの混合物からなる群より選ぶ請求項1の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一の方法によっ
    て製造される共有結合されたポリグルコサミン誘導体。
  6. 【請求項6】 遊離アミン基を含有するポリグルコサミ
    ンを含み、該アミン基の少なくとも一部はオキシランカ
    ルボン酸により、グルコサミンモノマー単位1モル当り
    オキシランカルボン酸0.05〜1.0モルの量で置換
    される化合物。
  7. 【請求項7】 ポリグルコサミンをキチン、キトサン及
    びこれらの混合物からなる群より選ぶ請求項6の化合
    物。
  8. 【請求項8】 オキシランカルボン酸をシス−エポキシ
    こはく酸、トランス−エポキシこはく酸或はこれらの混
    合物からなる群より選ぶ請求項6の化合物。
  9. 【請求項9】 オキシランカルボン酸がポリグルコサミ
    ンにイオン結合或は共有結合される請求項6の化合物。
  10. 【請求項10】 下記を含む組成物:(i)請求項6の
    化合物0.1〜99.9重量%;並びに(ii)酒石
    酸、乳酸、酢酸、グリコール酸、ピロリドンカルボン酸
    或はこれらの塩、及びこれらの酸もしくは塩もしくは両
    方の混合物からなる群より選ぶ有機酸0.1〜99.9
    重量%。
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