JP3365840B2 - 蒸着膜の検査方法および装置 - Google Patents

蒸着膜の検査方法および装置

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JP3365840B2 JP31492693A JP31492693A JP3365840B2 JP 3365840 B2 JP3365840 B2 JP 3365840B2 JP 31492693 A JP31492693 A JP 31492693A JP 31492693 A JP31492693 A JP 31492693A JP 3365840 B2 JP3365840 B2 JP 3365840B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透光性プラスチックフ
ィルムに対して真空蒸着された蒸着膜の厚みを真空中で
検査する蒸着膜の検査方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば電解コンデンサの陽極金属とし
て、真空蒸着によりプラスチックフィルムにタンタルを
蒸着したものがある。このものでは、タンタル層、言い
換えれば蒸着膜の厚みによって電気抵抗値(したがっ
て、電解コンデンサの性能)が異なるので、その蒸着膜
を所定の厚みに製造することが望まれている。
【0003】しかし、蒸着は、真空中で材料を加熱溶融
して蒸発させ、この蒸気中に走行するプラスチックを爆
気させることにより行われるので、その蒸着膜の厚みを
検査する適当な方法および装置は従来提供されていなか
った。
【0004】なお、一部には真空蒸着釜にテレビカメラ
を組込んで、このカメラでプラスチックフィルムの蒸着
膜が付けられた蒸着済み部分を撮像して、それをモニタ
ーテレビ上に表示して蒸着膜を監視する工夫が採用され
たことがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、テレビカメラ
で撮像するものでも、肉眼で真空蒸着釜内を覗き窓から
前記蒸着済み部分を監視することと等しく、蒸着膜の厚
み情報を得ることはできなかった。また、材料の蒸発量
とプラスチックフィルムの走行速度との兼ね合いで蒸着
膜の厚みが変動するが、真空蒸着中において前記蒸着済
み部分を取出すことが不可能であることに伴い、サンプ
リングをして蒸着膜の厚みを計測することは従来不可能
であった。
【0006】そのため、現状においては経験に基づいて
材料の加熱温度、およびプラスチックフィルムの走行速
度などを定めて真空蒸着作業を行ない、この後、真空を
解除して蒸着された製品を真空蒸着釜から取出してか
ら、その厚み検査を行い、そして、規格値に合格するも
のだけを合格品として選択し、その他の不合格品は廃棄
処分をしている。
【0007】したがって、以上のような経験に基づく製
造管理では、必ずしも所定厚みの蒸着膜を製造できると
は限らず、そして、厚み情報を得ることができないこと
に起因して、製造中における製造条件を変更する基準が
ないから、従来においては歩留まりが極めて悪いもので
あった。本発明の目的は、真空蒸着作業中に蒸着膜の厚
み評価をリアルタイムでできる蒸着膜の検査方法および
装置を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の請求項1に係る蒸着膜の検査方法は、真空
蒸着釜内を走行する透光性プラスチックフィルムのスト
ライプ状をなして蒸着膜が付けられた蒸着済み部分につ
いて検査位置に配置された光源および前記フィルムの幅
方向に走査される一次元CCDイメージセンサを有した
検査カメラ間を通る前記蒸着済み部分を透過した前記光
源からの透過光を前記検査カメラで受光して、前記蒸着
膜が付いた膜部分のみを通った透過光についての受光量
に応じた電圧レベルの膜部データを平均化処理して電圧
レベルの膜部検査データを求めた後、前記膜部分の透過
光量に応じた電圧レベルと、蒸着されたプラスチックフ
ィルムを所定の大きさに切断して、その切断フィルムの
蒸着膜の厚みに応じて予め実験して求めた各種厚みの蒸
着膜の電気抵抗値とを換算する判定テーブルを用いて、
前記膜部検査データの電圧レベルに対応する前記膜部分
電気抵抗値を求めて、この抵抗値により前記蒸着膜の
厚みを評価することを特徴とするものである。
【0009】また、前記膜部検査データの正確性を高め
て蒸着膜の厚み評価に高い信頼性を得るために、本発明
の請求項2は、請求項1に係る蒸着膜の検査方法におい
て、透光性プラスチックフィルムにストライプ状をなし
て付けられた蒸着膜を有する前記プラスチックの蒸着済
み部分についての前記膜部検査データを求めるのに、前
記光源と前記検査カメラとの間を通る前記蒸着済み部分
を透過した前記光源からの透過光を前記検査カメラで受
光し、その受光量に応じた電圧レベルの電気信号をこれ
にしきい値を与えて前記蒸着膜が付けられた膜部分に相
当する信号成分とそれ以外の隣接フィルム部分に相当す
る信号成分とに分離し、これら信号成分の境界を前記膜
部分側に移動させてマスク領域を拡大するとともにこの
拡大されたマスク領域及び互いに隣接した前記拡大され
たマスク領域間に位置する前記隣接フィルム部分に渡る
拡大マスクを付けて遮蔽し、前記膜部分の信号成分のみ
を抽出して、電圧レベルの膜部データを求めた後に、更
に前記検査カメラの一次元CCDイメージセンサが1走
査されるごとに前記膜部分の信号成分のみを抽出して得
られる新たな膜部データと、この新たな膜部データの前
に既に前記膜部分の信号成分のみを抽出して得た過去の
膜部データとの比較に基づき、前記しきい値を逐次自動
更新しながら、前記抽出された膜部分についての受光量
に応じた電圧レベルの膜部検査データを求めることを特
徴とするものである。
【0010】また、前記目的を達成するために、本発明
の請求項3に係る蒸着膜の検査方法は、真空蒸着釜内を
走行する透光性プラスチックフィルムにストライプ状を
なして付けられた蒸着膜を有する前記プラスチックの蒸
着済み部分についての検査位置に配置された光源と前記
フィルムの幅方向に走査される一次元CCDイメージセ
ンサを有した検査カメラとの間を通る前記蒸着済み部分
を透過した前記光源からの透過光を前記検査カメラで受
光し、その受光量に応じた電圧レベルの電気信号を、こ
れにしきい値を与えて前記蒸着膜が付けられた膜部分に
相当する信号成分とそれ以外の隣接フィルム部分に相当
する信号成分とに分離し、これら信号成分の境界を前記
膜部分側に移動させてマスク領域を拡大するとともにこ
の拡大されたマスク領域及び互いに隣接した前記拡大さ
れたマスク領域間に位置する前記隣接フィルム部分とに
渡る拡大マスクを付けて遮蔽し、前記膜部分の信号成分
のみを抽出して、電圧レベルの膜部データを求めた後、
更に前記蒸着膜が付いた膜部分のみを通った透過光につ
いての受光量に応じた電圧レベルの膜部データを平均化
処理して電圧レベルの膜部検査データを求め、予め定め
られた適正厚みの蒸着膜が付いた基準膜部分の透過光量
についての電圧レベルの膜厚基準データと前記膜部検査
データとを比較して、前記蒸着膜の厚みを評価する蒸着
膜の検査方法であって、前記検査カメラの一次元CCD
イメージセンサが1走査されるごとに前記膜部分の信号
成分のみを抽出して得られる新たな膜部データと、この
新たな膜部データの前に既に前記膜部分の信号成分のみ
を抽出して得た過去の膜部データとの比較に基づき、前
記しきい値を逐次自動更新しながら、前記抽出された膜
部分についての受光量に応じた電圧レベルの前記膜部検
査データを求めることを特徴とするものである。
【0011】また、材料を加熱溶融する材料加熱部と同
数の検査カメラを並設して用いる場合にあって、各材料
加熱部に対応して形成されるストライプ状の蒸着膜の製
造条件の差異を知るために、前記膜部データに基づく膜
部検査データをストライプ状をなした蒸着膜の各条ごと
に夫々求めるとよい。
【0012】また、前記目的を達成するために、本発明
の請求項5に係る蒸着膜の検査装置は、真空蒸着釜内を
走行する透光性プラスチックフィルムにストライプ状を
なして蒸着膜が付けられた蒸着済み部分が通る検査位置
に配置された光源と、前記フィルムの幅方向に走査され
る一次元CCDイメージセンサを有して前記検査位置に
前記光源と対向して配置された検査カメラと、前記光源
と前記検査カメラとの間を通る前記蒸着済み部分につい
ての前記光源からの透過光に応じた電圧レベルで前記セ
ンサから出力された電気信号を、これにしきい値を与え
て前記蒸着膜が付けられた膜部分に相当する信号成分
それ以外の隣接フィルム部分に相当する信号成分とに分
離し、これら信号成分の境界を前記膜部分側に移動させ
てマスク領域を拡大するとともにこの拡大されたマスク
領域及び互いに隣接した前記拡大されたマスク領域間に
位置する前記隣接フィルム部分とに渡る拡大マスクを付
けて遮蔽し、前記膜部分の信号成分のみを抽出するマス
キング部と、適正厚みの蒸着膜が付いた基準膜部分の透
過光量に応じて予め定められた電圧レベルの膜厚基準デ
ータが記録されるメモリと、前記マスキング部で抽出さ
れた前記膜部分のみを通った透過光についての受光量に
応じた電圧レベルの膜部データを平均化処理して電圧レ
ベルの膜部検査データを求める膜部データ演算部と、前
記膜部検査データと前記膜厚基準データとを比較して前
記蒸着膜の厚みを評価する比較部とを具備したものであ
る。
【0013】
【作用】請求項1に係る蒸着膜の検査方法において、検
査位置に設置された検査カメラの一次元CCDイメージ
センサは、前記検査カメラと光源との間を通る透光性プ
ラスチックフィルムの蒸着済み部分におけるストライプ
状の蒸着膜が付いた膜部分のみについての前記光源から
の透過光を受光して、その受光量に応じた電圧レベルの
膜部データを出力する。それに基づき各蒸着膜について
の膜部データを平均化処理して膜部検査データを求め
る。そして、この後、予め実験して求められ、かつ、蒸
着膜が付いた膜部分の透過光量に応じた電圧レベルと各
種厚みの蒸着膜の電気抵抗値とを換算する判定テーブル
を用いて、前記膜部検査データをその電圧レベルに対応
する電気抵抗値に換算し、それにより前記蒸着膜の厚み
を評価する。したがって、この方法によるときは、検査
カメラでの撮像によりプラスチックフィルムの全幅に渡
る検査データを得ることに伴って、蒸着膜が付いた膜部
分のみの厚みに応じた電圧レベルの膜部データを平均化
処理して得た膜部検査データから判定テーブルを用いて
換算される電気抵抗値として、真空蒸着作業中にリアル
タイムで蒸着膜の厚みを評価できる。
【0014】
【0015】請求項2に係る蒸着膜の検査方法では、ま
ず、光源と前記検査カメラとの間を通る前記蒸着済み部
分についての前記光源からの透過光を前記検査カメラで
受光し、その受光量に応じた電圧レベルの電気信号を、
これにしきい値を与えて前記蒸着膜が付けられた膜部分
に相当する信号成分とそれ以外の隣接フィルム部分に相
当する信号成分とに分離する。次ぎに、前記両信号成分
の境界を前記膜部分側に移動させてマスク領域を拡大す
るとともにこの拡大されたマスク領域及び互いに隣接し
て前記拡大されたマスク領域間に位置する隣接フィルム
部分とに渡る拡大マスクを付けて遮蔽し、前記膜部分の
信号成分のみを抽出して、電圧レベルの膜部データを求
める。この場合、前記膜部分の信号成分のみについて既
に抽出した膜部データと、検査カメラの一次元イメージ
センサの1走査ごとに前記膜部分の信号成分のみを抽出
して得られる新たな膜部データとの比較に基づき、前記
1走査ごとに前記しきい値を逐次自動更新しながら、前
記抽出された膜部分を通った透過光のみについての膜部
データを求める。したがって、この検査方法によるとき
は、隣接フィルム部分に相当する電気信号に発生するブ
ルーミングの影響を前記拡大マスクにより防止して、こ
のブルーミングを含まない膜部分のみについての膜部デ
ータを得て蒸着膜の厚みを評価するので、評価誤差を少
なくできる。そして、前記拡大マスクを付すための基準
をなすしきい値を前記イメージセンサの1走査ごとに逐
次自動更新させる学習方式を採用したから、プラスチッ
クフィルムに蛇行を生じても、それに応じて拡大マスク
も動かされて蛇行の影響を防止するので、蒸着膜の厚み
評価についての誤差を少なくできる。
【0016】請求項3に係る蒸着膜の検査方法におい
て、検査位置に設置された検査カメラの一次元CCDイ
メージセンサは、前記検査カメラと光源との間を通る透
光性プラスチックフィルムの蒸着済み部分におけるスト
ライプ状の蒸着膜が付いた膜部分のみについての前記光
源からの透過光を受光して、その受光量に応じた電圧レ
ベルの膜部データを出力する。それに基づき各蒸着幕に
ついての膜部データからこれを平均化処理した電圧レベ
ルの膜部検査データを求める。そして、この後、前記膜
部検査データを、適正厚みの蒸着膜が付いた基準膜部分
の透過光量について予め定められた電圧レベルの膜厚基
準データと比較し、それにより、蒸着膜の厚みを評価す
る。したがって、この方法によるときは、検査カメラで
の撮像によりプラスチックフィルムの全幅に渡る検査デ
ータを得るだけではなく、そのデータが透過光を受光し
て得ることに基づき蒸着膜が付いた膜部分のみの厚みに
対応するものであるから、それと膜厚基準データとの比
較により、真空蒸着作業中にリアルタイムで蒸着膜の厚
みを評価できる。しかも、この評価においては、膜部検
査データを請求項2の発明のように拡大マスクを付し
て、蒸着膜が付された膜部分の信号成分のみを抽出して
求めるので、隣接フィルム部分に相当する電気信号に発
生するブルーミングを含まない膜部分のみについての蒸
着膜の厚みを評価して、評価誤差を少なくできるととも
に、前記拡大マスクを付すための基準をなすしきい値を
イメージセンサの1走査ごとに逐次自動更新させたか
ら、プラスチックフィルムの蛇行に応じて拡大マスクも
動かされ蛇行の影響を防止するので、蒸着膜の厚み評価
についての誤差を少なくできる。
【0017】
【0018】
【0019】請求項4に係る蒸着膜の検査方法は、材料
を加熱溶融する複数の材料加熱部と同数の検査カメラを
並設して用いる場合にあって実施される。この実施にお
いて、前記膜部検査データをストライプ状をなした蒸着
膜の各条ごとに夫々求めて、真空蒸着作業中にリアルタ
イムで蒸着膜の厚みを評価できることに基づき、各材料
加熱部に対応して形成される蒸着膜ごとの厚みの差異、
つまり、プラスチックフィルムの幅方向に間隔的に蒸着
された膜部分相互間の厚みむらを知ることができる。請
求項5に係る蒸着膜の検査装置は、しきい値を自動的に
学習方式で変更する点を除いて前記請求項3の検査方法
を実施する。したがって、検査カメラでの撮像によりプ
ラスチックフィルムの全幅に渡る検査データを得るだけ
ではなく、そのデータが透過光を受光して得ることに基
づき蒸着膜が付いた膜部分のみの厚みに対応するもので
あるから、それと膜厚基準データとの比較により、真空
蒸着作業中にリアルタイムで蒸着膜の厚みを評価でき
る。しかも、この評価においては、膜部検査データに拡
大マスクを付して、蒸着膜が付された膜部分の信号成分
のみを抽出して求めるので、隣接フィルム部分に相当す
る電気信号に発生するブルーミングを含まない膜部分の
みについての蒸着膜の厚みを評価して、評価誤差を少な
くできる。
【0020】
【実施例】以下、図1〜図7を参照して本発明の一実施
例を説明する。図1は電解コンデンサの陽極金属をなす
タンタルを透光性プラスチックフィルムにストライプ状
に真空蒸着する真空蒸着装置の構成を示す断面図であっ
て、同図中1は真空蒸着釜である。この釜1は、円筒状
をなし、その外面に排気口2および多数の覗き窓3が設
けられた釜シリンダ1aの一端に固定端板1bを設ける
とともに他端に閉鎖端板(図示しない)を設けてなる。
【0021】釜シリンダ1aと前記閉鎖端板とは一体的
に連結されていて、固定端板1bに対して釜シリンダ1
aは接離可能に設けられていて、それにより、真空蒸着
釜1内への出し入れ等を可能としている。図1中4は釜
シリンダ1aの軸方向に延びて固定端板1bに片持ち支
持された金属製のレールで、これに転接する図示しない
車輪を介して釜シリンダ1aがその軸方向に移動される
ようになっている。
【0022】また、図1中5は金属製の冷却ローラ、6
はテープ案内ローラ、7はマスクテープ、8は上面が開
口されたるつぼ8aを有した材料加熱部、9はハの字形
に配置される冷却板9aを備えた爆気フレーム、10は
透光性プラスチックフィルム11が巻かれたフィルム繰
出しローラ、12は巻取りローラ、13a〜13cはフ
ィルムガイドローラ、14は巻取りローラ12へのフィ
ルム巻取量に応じて回動される回動板、15は回動板1
4を回動させる駆動歯車である。なお、これらはいずれ
も固定端板1bに支持されている。
【0023】プラスチックフィルム11は、フィルム繰
出しローラ10から繰出されるとともに、このローラ1
0側のフィルムガイドローラ13aを経由して冷却ロー
ラ5の下部に巻付けられた後、巻取りローラ12側のフ
ィルムガイドローラ13b、13cを経由して巻取りロ
ーラ12に巻き取られる。プラスチックフィルム11の
移動速度と冷却ローラ5の周速度とは等しい。また、フ
ィルムガイドローラ13cは回動板14に支持されてい
て、この板14によって巻取りローラ12に対して接離
されるように移動される。
【0024】前記材料加熱部8は冷却ローラ5の真下に
配置されているとともに、爆気フレーム9は、冷却ロー
ラ5の下部の材料加熱部8に対する露出面積、言い換え
れば、爆気領域を決定して配置されている。また、材料
加熱部8は釜シリンダ1aの軸方向に複数所定間隔で並
設(なお、図1では一つのみ図示する。)されていると
ともに、夫々のるつぼ8aに対する電気ヒータ等の加熱
手段は夫々別々に制御されるようになっている。
【0025】テープ案内ローラ6は爆気フレーム9の外
側を囲んで設けられ、これらのローラ6に渡って巻き掛
けられた複数本のマスクテープ7は、釜シリンダ1aの
軸方向に一定間隔ごとに配設されているとともに、前記
冷却ローラ5の下部に巻き掛けられた前記プラスチック
フィルム11に重なって、言い換えれば、前記爆気領域
を経由して無端走行される。これらマスクテープ7はプ
ラスチックフィルム11と同速度で走行される。
【0026】したがって、この真空蒸着装置は、真空中
(10-5mmHg) で材料加熱部8において金属元素である
タンタルを溶融蒸発させることにより、その金属蒸気を
冷却ローラ5に巻かれたプラスチックフィルム11に蒸
着させることができるが、その際にプラスチックフィル
ム11の爆気領域にはマスクテープ7が位置しているの
で、これらテープ7で覆われたフィルム部分は爆気され
ることがない。
【0027】そのため、プラスチックフィルム11には
図5に示されるようにストライプ状の蒸着膜(なお、識
別を容易にする都合上、この蒸着膜部分は斜線を付して
示されている。)が付けられるものであり、この爆気部
分は以下膜部分Aと称し、かつ、前記マスクテープ7で
覆われた部分に相当する非蒸着部分は以下隣接フィルム
部分Bと称するとともに、蒸着膜そのものは図4に符号
Cで示す。そして、これら各部分A、Bはいずれもプラ
スチックフィルム11の走行方向(図5中矢印Dで示
す)に延びて設けられるとともに、図5中Eは各材料加
熱部8がプラスチックフィルム11の幅方向について蒸
着を担当領域幅を示している。
【0028】図1に示されるように前記真空蒸着釜1内
の検査位置には光源21と検査カメラ22とが相対向し
て配置されている。検査位置は、プラスチックフィルム
11の蒸着膜Cが付けられた蒸着済み部分が通る位置、
例えば前記フィルムガイドローラ13bで案内される部
分に設定されていて、この検査位置において蒸着膜Cと
対向するように光源21が設けられている。この光源2
1には蛍光灯が使用される。
【0029】検査カメラ22は、前記蒸着済み部分にお
ける蒸着膜Cが付けられた面とは反対の面に対向するよ
うにして、図示しない金属製のブラケットを介して前記
レール4に支持されている。このカメラ22は前記複数
の材料加熱部8と同数用いられて、プラスチックフィル
ム11の幅方向に一定間隔毎に並設されている。したが
って、各検査カメラ22はプラスチックフィルム11を
その幅方向に分割撮像し、その視野は前記担当領域幅E
に等しくなっている。
【0030】各検査カメラ22の構成は図2に示される
ように金属箱製のシャーシ23内に並設されている。そ
して、各検査カメラ22は、シャーシ23内に固定され
た支持体24にレンズユニット25を取付けるととも
に、このユニット25の投影位置にセンサ用印刷回路基
板27に支持された一次元CCDイメージセンサ28を
配置している。このセンサ28は、前記基板27と並行
に配置された駆動用印刷回路基板29に実装されたI
C、パワートランジスタ、抵抗その他の電気部品30
(図3参照)で駆動されて、前記プラスチックフィルム
11の幅方向に走査されるようになっている。
【0031】なお、シャーシ23には検査カメラ22へ
の入射光路を屈曲させる反射鏡26が内蔵されている。
この反射鏡26は各検査カメラ22の共通部品であると
ともに、図2中31は、支持体24に固定されるととも
に前記両基板27、29を支持した基板ホルダー、32
は光学窓、33は印刷回路基板29に接続された図示し
ない電線をシャーシ23外に導き出すためのゴム製の通
線部である。
【0032】また、図3に示されるように印刷回路基板
29に実装された電気部品30は、熱伝導性が良くかつ
耐熱性が高い材料例えばシリコンゴム34内に埋められ
ており、このゴム34の前記基板29と並行な表面には
アルミ箔製の熱伝導体35の一端部が接着されている。
この熱伝導体35と電気部品30との間にあるシリコン
ゴム34の層の厚みtは、電気部品30から熱伝導体3
5への伝熱抵抗が極力小さくなるように薄くしてある。
そして、熱伝導体35の他端部は熱容量が大きい前記シ
ャーシ23に接着されている。なお、図3中36は熱伝
導体35の幅に略等しい長さの押さえ板、37は固定ね
じ、38は前記両基板27、29間を電気的につないだ
可撓性の印刷配線基板である。
【0033】各検査カメラ22が以上のように、電気部
品30の発熱を熱伝導によりシャーシ23、ひいては前
記ブラケットを介してレール4に逃がす構成を備えてい
るので、真空中で検査カメラ22が動作されることに伴
い電気部品30のうちトランジスタ等の発熱をする電気
部品等の温度が上がり過ぎることを防止できる。
【0034】つまり、真空中では対流による周囲への放
熱は望めないので、熱を発生する電気部品は、自己の熱
を蓄積して高温(例えば周囲温度が30℃の真空中では
90℃〜 100℃)となり、容易に許容温度を越えてしま
い、検査カメラ22の特性を劣化させたり、故障を招く
に至る。しかし、既述のような熱伝導による放熱構造を
採用したことにより、前記と同一条件においても前記電
気部品の温度を50℃〜60℃と低く維持して、検査カメラ
22を正常に動作させることができた。
【0035】図4は前記検査カメラ22から出力される
電気信号を処理する信号処理部の構成を示すブロック図
である。図4において符号41は各検査カメラ22を順
次選択して、選択された検査カメラ22から出力される
電気信号を通すカメラセレクタで、これを介して各検査
カメラ22の出力端は増幅器42に接続されている。増
幅器42にはその増幅率を任意に変更できるものが使用
されており、その出力端は例えば8ビットのA/D変換
器43を介してラスタメモリ44に接続されている。ラ
スタメモリ44は前記各検査カメラ22の一次元CCD
イメージセンサ28から読み出された1ラスタ分の撮像
信号を記憶する記憶容量を有している。なお、以上のカ
メラセレクタ41、増幅器42、A/D変換器43、お
よびラスタメモリ44は、前記信号処理部から外して前
記検査カメラ22側に設けてもよいとともに、これらは
後述の制御部53により制御される。
【0036】前記信号処理部は、メモリ読み込み部4
5、マスキング部46、メモリ47、膜部データ演算部
48、比較部49、抵抗値演算部50、フィルム部デー
換算部51、フィルム部厚み換算部52、および制御
部53を備えている。さらに、信号処理部は光量コント
ローラ54も備えている。
【0037】前記光源21に制御出力を与える光量コン
トローラ54は、前記センサ28の受光感度等に応じて
光源21が出射する光の量を調節する。さらに、このコ
ントローラ54は、光源21の近傍に配置された光量セ
ンサ55の検出出力が入力される制御部53により制御
されて、光量調節動作をするようになっている。
【0038】この光量調節動作は、図7に示されるよう
に検査カメラ22から出力される撮像信号の電圧レベル
が、大きくなる程ばらつき(図7中点線で示す)が大き
くなるので、それを吸収するために例えば蒸着膜Cの電
気抵抗値1Ωごとに実施される。この光量調節において
は、蒸着膜Cの電気抵抗値が小さい程光源21の照度を
上げるとともに、蒸着膜Cの電気抵抗値が大きい程光源
21の照度を下げるという調節を行う。それにより、撮
像信号の電圧レベルのばらつきを吸収して、測定精度の
ばらつきを向上させるものである。
【0039】制御部53により制御されるメモリ読み込
み部45の入力端は前記ラスタメモリ44に接続されて
おり、この読み込み部45の読み込み動作によりラスタ
メモリ44に蓄積された撮像信号が、メモリ読み込み部
45の出力端に接続されたマスキング部46に入力され
る。
【0040】制御部53により制御されるマスキング部
46は前記膜部分Aのみを抽出するためのマスキング処
理を行う。詳しくは、このマスキング部46は、前記蒸
着済み部分についての透過光量に応じた電気信号を、そ
にしきい値を与えて、蒸着膜Cが付けられた膜部分A
に相当する信号成分とそれ以外の隣接フィルム部分B
相当する信号成分とに分離し(本発明では2値化とも称
する。)、これら信号成分の境界を膜部分A側に移動さ
せてマスク領域を拡大して、この拡大されたマスク領域
及び互いに隣接する前記拡大されたマスク領域間に位置
する隣接フィルム部分Bとに渡る拡大マスクを付ける処
理を行い、それによって、隣接フィルム部分Bとその両
側に拡大されたマスク領域とを遮蔽し、膜部分Aの幅方
向中間部(つまり、膜部分Aの両側部分を除いた領域)
を透過する光量に応じた電気信号のみ、言い換えれば、
膜部分Aの信号成分のみを抽出する構成である。
【0041】さらにマスキング部46は、その拡大マス
クを学習方式によって逐次自動更新する構成である。詳
しくは、マスキング部46は、既に抽出した膜部分Aに
ついてのデータおよび拡大マスクデータを記憶する記憶
部と、検査カメラ22が現在撮像している現在の撮像信
号を2値化する現在信号2値化部と、この2値化部から
出力されるデータを遅延させるディレー部と、このディ
レー部を通ったデータと前記記憶部に記憶された前記イ
メージセンサ28の前の走査に係る過去のデータとを比
較する比較部とを備えている。
【0042】したがって、このマスキング部46は、膜
部分Aを既に抽出して記憶された過去のデータと、前記
イメージセンサ28の1走査ごとに得られる新たなデー
との比較により、隣接フィルム部分Bに対応する信号
の立上がりおよび立下がりの位置、つまり、前記両信号
成分の境界の位置が変位するかどうかを検出し、変位が
検出された場合にそれに応じて前記拡大マスクデータを
付ける位置も同様に移動されるように前記各2値化部の
しきい値のレベルを変更し、それにより拡大マスク
動更新させることができる。
【0043】制御部53により制御される前記メモリ4
7には、裸光基準データ、フィルム部基準データ、膜厚
基準データ、および判定テーブルデータ等が記憶され
る。裸光基準データは、前記光源21の光量変化につい
て初期化をするためのデータ、つまり、光源21からの
出射光を検査カメラ22が直接受けた際の受光量に応じ
た電圧レベルのデータである。フィルム部基準データ
は、使用するプラスチックフィルムの材質、厚さ、およ
び表面状態などの特性によるフィルム固有の光減衰量に
ついて初期化をするためのデータ、つまり、前記各種の
プラスチックフィルムのみについての光源21からの透
過光を検査カメラ22が受けた際の受光量に応じた電圧
レベルのデータである。これらは初期設定の際における
検査カメラ22の出力に基づきメモリ47に記憶され
る。膜厚基準データは、適正な厚みの蒸着膜Cが付され
た基準膜部分の透過光量に応じて予め定められた電圧レ
ベルのデータである。なお、各データには夫々許容値が
付される。
【0044】また、判定テーブルデータは、蒸着膜Cの
厚みに応じた電気抵抗値と蒸着膜の透過光に応じた電圧
レベルとを換算する判定テーブルをなすデータであっ
て、実験によって求めたデータが採用される。この実験
は、真空蒸着装置で蒸着されたプラスチックフィルムを
電解コンデンサの陽極金属に使用する大きさに切断し
て、その陽極金属にテスタを当てて一つ一つの電気抵抗
値を測定するとともに、夫々の陽極金属を光透過法によ
り測定した検査カメラ22から出力される撮像信号の電
圧レベルを測定して、その相関を求めたものである。
【0045】その結果は例えば図7は示されており、こ
の図7から分かるように検査カメラ22から出力される
撮像信号の電圧レベル(単位V)は、その値が大きくな
る程蒸着膜Cの電気抵抗(単位Ω)が大きくなってい
る。言い換えれば、蒸着膜Cの厚みが厚い程電圧レベル
が小さいとともに同厚みが薄い程電圧レベルが大きくな
る比例的関係にあることが明らかとなった。そして、こ
の図7に相当するデータを判定テーブルとしてはメモリ
47に記憶したものである。
【0046】前記マスキング部46で抽出された膜部分
Aについての膜部データは、マスキング部46から出力
されて制御部53で制御される前記膜部データ演算部4
8に入力される。また、マスキング部46は、前記拡大
マスクが付される部分についてのデータ(したがって主
として隣接フィルム部分Bについてのデータ)を抽出す
るフィルム抽出部も備えている。この抽出部で抽出され
たフィルム部抽出データは、マスキング部46から出力
されて制御部53により制御される前記フィルム部デー
タ演算部51に入力される。
【0047】膜部データ演算部48は、これに入力され
たストライプ状膜部分Aの夫々についての膜部データを
加算し、平均化処理して、膜部分Aについての平均の透
過光量データを算出するとともに、それに対応する電圧
レベルの膜部検査データを算出する構成であって、この
演算部48の出力は制御部53で制御される差動増幅器
等からなる比較部49に入力される。比較部49は、そ
れに入力される膜部検査データとメモリ47から読み出
された膜厚基準データとを比較して、電圧レベルの差を
算出することにより蒸着膜Cの厚みの適否を評価する。
【0048】比較部49から出力されるレベル差のデー
タは制御部53に入力され、この制御部53により蒸着
膜の厚みデータとして図示しない表示器や記録装置に出
力される他、前記真空蒸着装置の運転制御情報として出
力されるようになっている。
【0049】また、制御部53により制御される抵抗値
換算部50には、膜部データ演算部48から出力される
前記膜部検査データがメモリ47を通して入力される。
この換算部50は、それに入力される前記膜部検査デー
タとメモリ47に記憶された判定テーブルデータから前
記膜部検査データの電圧レベルに対応する電気抵抗値を
求めて、それにより蒸着膜の厚みを評価する。
【0050】この抵抗値換算部50から出力される電気
抵抗値は制御部53に入力され、この制御部53により
蒸着膜の厚みデータとして図示しない表示器や記録装置
に出力される他、前記真空蒸着装置の運転制御情報とし
て出力されるようになっている。
【0051】前記フィルム部データ演算部51は、スト
ライプ状膜部分Aの夫々に隣接した隣接フィルム部分B
について夫々入力されたフィルム部データを加算し、平
均化処理して隣接フィルム部分Bについての平均の透過
光量データを算出するとともに、それに対応する電圧レ
ベルのフィルム部検査データを算出する構成であって、
この演算部51の出力は制御部53で制御されるフィル
ム部厚み換算部52に入力される。フィルム部厚み換算
部52は、隣接フィルム部分Bについての平均の透過光
量データを厚み(単位mm)に換算する構成である。そし
て、この換算部52から出力される換算データは制御部
53に入力され、この制御部53によりフィルム部分B
の厚みデータとして図示しない表示器や記録装置に出力
される他、前記真空蒸着装置の運転制御情報として出力
されるようになっている。
【0052】このような実施例においては、まず、真空
蒸着装置にプラスチックフィルム11を装着しない状態
で、検査装置を動作させる。それにより、光源11から
の出射光が検査カメラ22の一次元CCDイメージセン
サ28に直接受光され、その受光量に応じた電圧レベル
の裸光基準信号が検査カメラ22から出力される。この
裸光基準信号は図6中イで示される。この出力信号は、
カメラセレクタ41、増幅器42、A/D変換器43、
ラスタメモリ44、メモリ読み出し部45、マスキング
部46、および膜部データ演算部48を通して裸光基準
データとしてばらつきを付されてメモリ47に記憶され
る。
【0053】次に、真空蒸着装置内に蒸着すべき金属材
料を各材料加熱部8のるつぼ8aに収納するとともに、
プラスチックフィルム11、およびマスクテープ7を夫
々セットした後、真空蒸着釜1内を排気して真空状態と
して、前記検査装置を動作させる。そうすると、光源2
1と検査カメラ22との間にはプラスチックフィルム1
1が通されているので、このフィルム11のみを通る光
源21から透過光が検査カメラ22に受光され、その受
光量に応じた電圧レベルのフィルム部検出信号が検査カ
メラ22から出力される。このフィルム部検出信号は図
6中ロで示される。それに伴い、このフィルム部検出信
号は、デジタルデータに変換された後にメモリ47に記
憶されている前記使用フィルム11に固有のフィルム部
基準データとの差異が制御部53により演算される。そ
して、この演算により差に応じた初期ゲイン補正値が制
御部53により増幅器42に与えられて、その増幅率が
自動調整される。このようにして初期化されたフィルム
部データは図6中ロで示される。
【0054】この後、真空蒸着釜1内が所定温度に達し
て金属蒸着が開始されるようになると、プラスチックフ
ィルム11およびマスクテープ7などが同期して動かさ
れ、プラスチックフィルム11に対する蒸着が実施され
る。それに伴い、光源21と検査カメラ22との間には
プラスチックフィルム11の蒸着済み部分が通され、こ
れ以降は前記蒸着済み部分のみを通る光源21から透過
光が検査カメラ22に受光される。
【0055】そのため、検査カメラ22はその受光量に
応じた電圧レベルの検査用撮像信号を出力する。この信
号は、図6ハに示される。そして、この撮像信号は、カ
メラセレクタ41、増幅器42、A/D変換器43、ラ
スタメモリ44、メモリ読み出し部45を順次通してマ
スキング部46に入力され、ここにおいてマスキング処
理される。
【0056】このマスキング処理により、まず、前記蒸
着済み部分についての透過光量に応じた電気信号を、こ
にしきい値(図6ニにおいて一点鎖線で示す。)を与
えて、蒸着膜Cが付けられた膜部分Aに相当する信号成
とそれ以外の隣接フィルム部分Bに相当する信号成分
とに分離し、次に、これら信号成分の境界を膜部分A側
に移動してマスク領域を拡大して、この拡大されたマス
ク領域と互いに隣接するマスク領域間に位置する隣接フ
ィルム部分Bとに渡る拡大マスクが付けられる。それに
よって、隣接フィルム部分Bとその両側に拡大されたマ
スク領域とが遮蔽されるとともに、膜部分Aの幅方向中
間部(膜部分Aの両側部を除いた領域)、すなわち、膜
部分Aのみを透過した光量に応じた電気信号のみが抽出
される。なお、図6ニ中Hは前記拡大マスクが施される
マスク領域全体であって、そのうちIは隣接フィルム部
分Bそのものについて施されるマスク領域、Jは前記境
界が移動されることにより膜部分A側に拡大されたマス
ク領域を示している。
【0057】このようなマスキングにより隣接フィルム
部分Bについての検査情報が消去されるから、透過光を
受光して得ることに基づき蒸着膜Cが付いた膜部分A
幅方向中間部(膜部分Aの両側部を除いた領域)のみに
ついての蒸着膜Cの厚みに対応する電圧レベルの膜部デ
ータが検出される。このデータは膜部データ演算部48
に入力されて、ここにおいて加算されるとともに平均化
処理される。それにより、蒸着膜Cの厚みに応じた平均
の透過光量データが算出され、かつ、それに対応する電
圧レベルの膜部検査データが算出される。
【0058】そして、この膜部検査データは比較部49
においてメモリ47に記憶された膜厚基準データと比較
され、この膜厚基準データに対する前記膜部検査データ
の適否が判定されるとともに、判定が否の場合には膜厚
基準データに対してどの程度の差があるのかも判定され
る。この判定結果は制御部53を通して出力される。
【0059】したがって、以上の厚み判定によるとき
は、検査カメラ22での撮像によりプラスチックフィル
ム11の全幅に渡る検査データを得るだけではなく、そ
のデータは透過光を受光して得ることに基づき蒸着膜C
が付いた膜部分Aの幅方向中間部のみについての蒸着膜
Cの厚みに対応する膜部検査データを得て、それをメモ
リ47に記憶されている膜厚基準データと比較して蒸着
膜Cの厚みを評価するため、真空蒸着作業中にリアルタ
イムで蒸着膜Cの厚みを評価できる。
【0060】また、以上の厚み評価とは別に、以下の厚
み評価もなされる。つまり、前記膜部データ演算部48
で処理された蒸着膜Cの厚みに応じた膜部検査データ
は、メモリ47を通して抵抗値演算部50に入力される
から、この演算部50においてメモリ47に記憶された
判定テーブルを用いて、前記膜部検査データに対応する
電気抵抗値に変換される。
【0061】そして、このように電気抵抗値として前記
蒸着膜Cの厚みを評価した結果は、制御部53を通して
出力される。したがって、この厚み評価系統においても
真空蒸着作業中にリアルタイムで蒸着膜Cの厚みを評価
できるのみならず、電気抵抗値を最終的に問題とする電
解コンデンサ用の陽極金属の製造に適用される場合に
は、その最終結果を直接知ることができる。
【0062】したがって、以上のようにリアルタイムで
2系統の厚み評価ができる検査装置により、そのいずれ
かの出力をもとに、材料加熱部7により加熱加減すなわ
ち蒸発量の調整、およびプラスチックフィルム11の走
行速度の調整など真空蒸着装置の運転状態を手動または
自動で制御することができる。そして、このようなフィ
ードバック制御をするときは、製造される蒸着膜Cの厚
みを均一化でき、そのため、蒸着製品の歩留まりを大き
く向上させることができる。
【0063】前記のような検査時において、光源21の
光量は光量センサ55で常に検出され、その検出情報は
前記メモリ47に記憶された光量基準データと比較され
るから、光量が低下した場合には、それに応じて光量コ
ントローラ54での電圧または電流の制御を介して光源
21の発光量が多くなるように制御される。しかも、検
査カメラ22の一次元CCDイメージセンサ28の受光
感度は、蒸着膜Cの厚みが薄くなるほど大きくなり、そ
れが大きすぎると評価のばらつきが大きくなる傾向があ
るが、そのような事態に至る受光感度領域については制
御部52により光量コントローラ54を介して光源21
の発光量を抑制する制御がされて、検査条件を一定にで
きる。
【0064】また、前記マスキング部46は、既述のよ
うに膜部分Aの内で幅方向中間部(膜部分Aの幅方向両
側部を除いた領域)の膜部データに相当する信号成分
みを抽出して膜部データ演算部51に入力させるから、
隣接フィルム部分Bに相当する電気信号に発生するブル
ーミングの影響を前記拡大マスクにより防止して、この
ブルーミングを含まない膜部分Aのみについての膜部検
査データを得て蒸着膜Cの厚みを評価できるので、評価
誤差を少なくできる。その上、マスキング部46は、前
記膜部分Aの信号成分のみを抽出して既に得た過去の膜
部データと、前記イメージセンサの1走査ごとに膜部分
Aの信号成分のみを抽出して得られる新たな膜部データ
との比較に基づき前記しきい値を逐次自動更新しなが
ら、前記抽出された膜部分Aのみを通った透過光のみに
ついての受光量に応じた電圧レベルの膜部検査データを
求めるから、プラスチックフィルムの走行に伴う蛇行現
象に応じて拡大マスクも対応して動かされるので、蛇行
の影響を防止して、蒸着膜Cの厚み評価についての誤差
を少なくできる。
【0065】なお、前記マスキング部46はフィルム部
データをフィルム部データ演算部51に出力するから、
ここにおいて演算されたデータをもとにフィルム厚み換
算部52でプラスチックフィルム11の厚みを換算する
演算が行なわれ、その結果は制御部53を通して記録装
置等に出力される。
【0066】なお、本発明は前記一実施例には制約され
ない。例えば、ストライプ状をなす各膜部分Aについて
の膜部データが入力される膜部データ演算部58は、す
べての膜部データ全体の平均を求める演算の他に蒸着膜
Cの各条ごと(言い換えれば各膜部分Aごと)の平均も
算出しているので、これらのデータを利用して比較部4
9において前記各条ごとのデータ比較を行うことによ
り、前記各条ごとの蒸着膜Cの厚みの相互関係を真空蒸
着作業中にリアルタイムで評価できる。
【0067】したがって、材料を加熱溶融する材料加熱
部8と同数の検査カメラを並設して用いる場合にあっ
て、前記評価に基づいて各材料加熱部8に対応して形成
される蒸着膜ごとの製造条件の差異、言い換えれば、プ
ラスチックフィルム11の幅方向に並んだ各膜部分A相
互についての蒸着のばらつき(むら)を知ることができ
る。そのため、このばらつき(プラスチックフィルムの
幅方向に複数並設された材料加熱部に起因するばらつ
き)についての対策を講じることを可能にできる。
【0068】
【発明の効果】本発明の請求項1に係る蒸着膜の検査方
法によれば、真空蒸着作業中にリアルタイムで検出され
た膜部検査データを判定テーブルにより電気抵抗値に変
換して、その電気抵抗値に基づいて蒸着膜の厚みを評価
できる。このため、製造した蒸着膜を電解コンデンサの
陽極金属の用途として使用する場合は、電解コンデンサ
の陽極金属の電気抵抗値が、電解コンデンサの性能を直
接左右するので、蒸着膜の電気抵抗値を評価することに
より、電解コンデンサの性能を直接評価できるという効
果がある。
【0069】本発明の請求項2に係る蒸着膜の検査方法
によれば、電気信号に発生するブルーミングの影響を拡
大マスクにより防止できるとともに、前記拡大マスクを
付すための基準をなすしきい値を逐次自動更新させるこ
とでプラスチックフィルムの蛇行現象に拡大マスクを対
応させて、蛇行の影響を防止できるので、蒸着膜の厚み
評価の誤差を少なくして検出の信頼性を高めることがで
きる。
【0070】本発明の請求項3に係る蒸着膜の検査方法
によれば、検査カメラでの撮像によりプラスチックフィ
ルムの全幅に渡る検査データを得るだけではなく、蒸着
膜が付いた膜部分のみについての厚みに対応する膜部検
査データを膜厚基準データと比較して蒸着膜の厚みを評
価するため、真空蒸着作業中にリアルタイムで蒸着膜の
厚みを評価できる。したがって、この評価をもとに真空
蒸着装置の製造条件を適正となるように適宜調整するこ
とが可能となり、その場合には蒸着製品の歩留まりを大
きく向上させることができる。しかも、電気信号に発生
するブルーミングの影響を拡大マスクにより防止できる
とともに、前記拡大マスクを付すための基準をなすしき
い値を逐次自動更新させることでプラスチックフィルム
の蛇行現象に拡大マスクを対応させて、蛇行の影響を防
止できるので、蒸着膜の厚み評価の誤差を少なくして検
出の信頼性を高めることができる。
【0071】本発明の請求項4に係る蒸着膜の検査方法
によれば、材料を加熱溶融する材料加熱部の数と同数の
検査カメラを並設して用いる場合にあって、各材料加熱
部に対応して形成されるストライプ状の蒸着膜の製造条
件の差異を知ることができる。本発明の請求項5に係る
蒸着膜の検査装置によれば、検査カメラでの撮像により
プラスチックフィルムの全幅に渡る検査データを得るだ
けではなく、蒸着膜が付いた膜部分のみについての厚み
に対応する膜部検査データを膜厚基準データと比較して
蒸着膜の厚みを評価するため、真空蒸着作業中にリアル
タイムで蒸着膜の厚みを評価できるとともに、電気信号
に発生するブルーミングの影響を拡大マスクにより防止
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る蒸着膜検査装置の光源
および検査カメラが組込まれた真空蒸着装置の構成を示
す断面図。
【図2】図1に示された検査カメラの構成を示す断面
図。
【図3】図2中ZーZ線に沿う断面図。
【図4】本発明の一実施例に係る蒸着膜検査装置が備え
る信号処理部の構成を示すブロック図。
【図5】図1に示された真空蒸着装置で蒸着されたプラ
スチックフィルムの蒸着済み部分の一部の構成を示す
図。
【図6】同一実施例に係る蒸着膜検査装置の動作を示す
タイムチャート。
【図7】同一実施例に係る蒸着膜検査装置で使用する判
定テーブルの蒸着膜の厚みに応じた電気抵抗値と蒸着膜
の透過光に応じた電圧レベルとの関係を示す図。
【符号の説明】
1…真空蒸着釜、7…マスクテープ、8…材料加熱部、
11…プラスチックフィルム、21…光源、22…一次
元CCDイメージセンサ、46…マスキング部、47…
メモリ、48…膜部データ演算部、49…比較部、50
…抵抗値換算部、53…制御部、A…蒸着膜が付着され
た膜部分、 B…隣接フィルム部分(非蒸着部分)、 C…
蒸着膜、 H…マスク領域全体、 I…隣接フィルム部分に
施されるマスク領域、 J…境界の移動により拡大された
マスク領域。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−195221(JP,A) 特開 平5−71927(JP,A) 特開 平4−258704(JP,A) 特開 昭59−171807(JP,A) 特公 平4−53255(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01B 11/06 C23C 14/24 G01B 21/08 G01D 1/18

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】真空蒸着釜内を走行する透光性プラスチッ
    クフィルムのストライプ状をなして蒸着膜が付けられた
    蒸着済み部分について検査位置に配置された光源および
    前記フィルムの幅方向に走査される一次元CCDイメー
    ジセンサを有した検査カメラ間を通る前記蒸着済み部分
    を透過した前記光源からの透過光を前記検査カメラで受
    光して、前記蒸着膜が付いた膜部分のみを通った透過光
    についての受光量に応じた電圧レベルの膜部データを
    均化処理して電圧レベルの膜部検査データを求めた後
    、前記膜部分の透過光量に応じた電圧レベルと、蒸着
    されたプラスチックフィルムを所定の大きさに切断し
    て、その切断フィルムの蒸着膜の厚みに応じて予め実験
    して求めた各種厚みの蒸着膜の電気抵抗値とを換算する
    判定テーブルを用いて、前記膜部検査データの電圧レベ
    に対応する前記膜部分の電気抵抗値を求めて、この抵
    抗値により前記蒸着膜の厚みを評価することを特徴とす
    る蒸着膜の検査方法。
  2. 【請求項2】透光性プラスチックフィルムにストライプ
    状をなして付けられた蒸着膜を有する前記プラスチック
    の蒸着済み部分についての前記膜部検査データを求める
    のに、 前記光源と前記検査カメラとの間を通る前記蒸着済み部
    分を透過した前記光源からの透過光を前記検査カメラで
    受光し、 その受光量に応じた電圧レベルの電気信号をこれにしき
    い値を与えて前記蒸着膜が付けられた膜部分に相当する
    信号成分とそれ以外の隣接フィルム部分に相当する信号
    成分とに分離し、 これら信号成分の境界を前記膜部分側に移動させてマス
    ク領域を拡大するとともにこの拡大されたマスク領域及
    び互いに隣接した前記拡大されたマスク領域間に位置す
    る前記隣接フィルム部分に渡る拡大マスクを付けて遮蔽
    し、前記膜部分の信号成分のみを抽出して、電圧レベル
    の膜部データを求めた後、 更に、前記検査カメラの一次元CCDイメージセンサが
    1走査されるごとに前記膜部分の信号成分のみを抽出し
    て得られる新たな膜部データと、この新たな膜 部データ
    の前に既に前記膜部分の信号成分のみを抽出して得た過
    去の膜部データとの比較に基づき、前記しきい値を逐次
    自動更新しながら、前記抽出された膜部分についての受
    光量に応じた電圧レベルの膜部検査データを求めること
    を特徴とする前記請求項1記載の 蒸着膜の検査方法。
  3. 【請求項3】真空蒸着釜内を走行する透光性プラスチッ
    クフィルムにストライプ状をなして付けられた蒸着膜を
    有する前記プラスチックの蒸着済み部分についての検査
    位置に配置された光源と前記フィルムの幅方向に走査さ
    れる一次元CCDイメージセンサを有した検査カメラと
    の間を通る前記蒸着済み部分を透過した前記光源からの
    透過光を前記検査カメラで受光し、 その受光量に応じた電圧レベルの電気信号をこれにしき
    い値を与えて前記蒸着膜が付けられた膜部分に相当する
    信号成分とそれ以外の隣接フィルム部分に相当する信号
    成分とに分離し、 これら信号成分の境界を前記膜部分側に移動させてマス
    ク領域を拡大するとともにこの拡大されたマスク領域及
    び互いに隣接した前記拡大されたマスク領域間に位置す
    る前記隣接フィルム部分とに渡る拡大マスクを付けて遮
    蔽し、前記膜部分の信号成分のみを抽出して、電圧レベ
    ルの膜部データを求めた後、更に前記蒸着膜が付いた膜
    部分のみを通った透過光についての受光量に応じた電圧
    レベルの膜部データを平均化処理して電圧レベルの膜部
    検査データを求め、予め定められた適正厚みの蒸着膜が
    付いた基準膜部分の透過光量についての電圧レベルの膜
    厚基準データと前記膜部検査データとを比較して、前記
    蒸着膜の厚みを評価する蒸着膜の検査方法であって、 前記検査カメラの一次元CCDイメージセンサが1走査
    されるごとに前記膜部分の信号成分のみを抽出して得ら
    れる新たな膜部データと、この新たな膜部データの前に
    既に前記膜部分の信号成分のみを抽出して得た過去の膜
    部データとの比較に基づき、前記しきい値を逐次自動更
    新しながら、前記抽出された膜部分についての受光量に
    応じた電圧レベルの前記膜部検査データを求めることを
    特徴とする 蒸着膜の検査方法。
  4. 【請求項4】前記膜部データに基づく膜部検査データを
    ストライプ状をなした蒸着膜の各条ごとに夫々求める
    とを特徴とした前記請求項2又は3に記載の蒸着膜の検
    査方法。
  5. 【請求項5】真空蒸着釜内を走行する透光性プラスチッ
    クフィルムにストライプ状をなして蒸着膜が付けられた
    蒸着済み部分が通る検査位置に配置された光源と、 前記フィルムの幅方向に走査される一次元CCDイメー
    ジセンサを有して前記検査位置に前記光源と対向して配
    置された検査カメラと、 前記光源と前記検査カメラとの間を通る前記蒸着済み部
    分についての前記光源からの透過光に応じた電圧レベル
    で前記センサから出力された電気信号を、これにしきい
    値を与えて前記蒸着膜が付けられた膜部分に相当する信
    号成分とそれ以外の隣接フィルム部分に相当する信号成
    分とに分離し、これら信号成分の境界を前記膜部分側に
    移動させてマスク領域を拡大するとともにこの拡大され
    たマスク領域及び互いに隣接した前記拡大されたマスク
    領域間に位置する前記隣接フィルム部分とに渡る拡大マ
    スクを付けて遮蔽し、前記膜部分の信号成分のみを抽出
    するマスキング部と、 適正厚みの蒸着膜が付いた基準膜部分の透過光量に応じ
    予め定められた電圧レベルの膜厚基準データが記録さ
    れるメモリと、 前記マスキング部で抽出された前記膜部分のみを通った
    透過光についての受光量に応じた電圧レベルの膜部デー
    タを平均化処理して電圧レベルの膜部検査データを求め
    る膜部データ演算部と、 前記膜部検査データと前記膜厚基準データとを比較して
    前記蒸着膜の厚みを評価する比較部とを具備した蒸着膜
    の検査装置。
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