JP3353273B2 - 掘削工事用シミュレーション装置に用いる背面側の水平地盤反力係数設定方法及び最小土圧設定方法 - Google Patents

掘削工事用シミュレーション装置に用いる背面側の水平地盤反力係数設定方法及び最小土圧設定方法

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JP3353273B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は掘削工事に使用さ
れる土留め壁の応力と変形量を算出して完全か否かを判
定する掘削工事用シミュレーション装置に用いる背面側
の水平地盤反力係数設定方法及び最小土圧設定方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】本出願人は特許第2654913号明細
書で「掘削工事用シミュレーション装置」を提案し、更
に特許第2989818号明細書で「掘削工事用シミュ
レーション装置に用いる水平地盤反力係数設定方法」を
提案した。この発明は先に提案した「掘削工事用シミュ
レーション装置に用いる水平地盤反力係数設定方法」の
改良に関するものであり、特に掘削面側の地盤と背面側
の地盤の双方に地盤ばねが存在するものと仮定して、そ
の双方に水平地盤反力係数を設定することを特徴とする
ものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】先に提案した水平地盤
反力係数設定方法は掘削面側の地盤にのみ地盤ばねが存
在すると仮定して水平地盤反力係数を設定する方法を提
案した。然し乍ら近年、土木技術の向上により、地下タ
ンク、地下鉄道等の地下構造物の大規模化が進んでい
る。そしてこれらの構造物を建設するための土留め工事
では掘削深度も増大する傾向にある。このような深い掘
削を行う場合の土留め壁の設計では、安全性や周辺地盤
への影響を考慮して掘削面側の地盤に地盤ばねが存在す
ると仮定することは元より、土留め壁の背面側の地盤に
も地盤ばねが存在すると仮定して背面側地盤反力係数、
及び最小土圧を設定する必要性が生じた。
【0004】この発明の目的は地下構造物の大規模化に
適応して土留め壁の掘削面側及び背面側の双方に地盤ば
ねが存在すると仮定して背面側の水平地盤反力係数及び
最小土圧を設定する設定方法を提案しようとするもので
ある。この発明はこの先に提案した掘削工事用シミュレ
ーション装置を用いることを前提としているから、ここ
では先に提案した掘削工事用シミュレーション装置につ
いてその概要を予め説明する。図36に先に提案した掘
削工事用シミュレーション装置の実施例を示す。図中1
00はこの先に提案した掘削工事用シミュレーション装
置を示す。この装置は一般によく知られているパーソナ
ルコンピューターによって構成することができる。
【0005】コンピューターは中央演算処理装置101
と、リードオンリーメモリ(ROM)102と、書き換
え可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、
フレキシブルディスクのような外部記憶装置104と、
入力ポート105、出力ポート106、キーボード10
7、等によって構成される。出力ポート106にはモニ
タ200と、プリンター300が接続されシミュレーシ
ョンした結果の表示と印刷及び土質条件を入力する場合
の入力用画面を表示する。外部記憶装置104から掘削
工事用シミュレーション装置のプログラムを読み込むこ
とにより、ランダムアクセスメモリ103の一部の記憶
領域を用いて背面側土質条件記憶手段103Aと、掘削
面側土質条件記憶手段103Bと、改良地盤土質条件記
憶手段103Cと、土留め壁曲げ剛性記憶手段103D
と、切ばり剛性記憶手段103Eと、最終結果記憶手段
103Fと、施工順序記憶手段103Gとを設けると共
に、他の記憶領域を用いて、土留め壁水平変位演算手段
103Pと、掘削面側水平地盤反力算出手段103Q
と、塑性化検出手段103Rと、弾塑性境界点検出手段
103Sと、地盤強度置換手段103Tと、応力記憶手
段103Uとを設ける。
【0006】以下に各部の構成動作について説明する。
背面側土質条件記憶手段103Aには図37に示すよう
に、土留め壁1を境に背面側2の土質を予め調査し、そ
の調査結果をキーボード107を通じて入力する。土質
条件としては単位体積重量γ(トン/m3)と、内部摩
擦角φ(°)と、粘着力C(トン/m3)と、水平地盤
反力係数KH(トン/m3)及び図示しないがピーク強度
とを入力する。図37の例では単位深さを5メートルと
し、5メートル毎に30メートルまで土質条件を調査
し、この結果を記憶手段103Aに記憶した状態を図化
して示す。
【0007】この背面側2の土質条件により背面側2の
土圧(水圧も含む)を各深さ位置毎に演算により算出す
ることができる。掘削面側土質条件記憶手段103Bに
も同様に掘削面側3の土質条件を記憶する(尚、背面側
2と掘削面側3の何れも土質に大差が無ければ何れか一
方だけ地質の調査を行いその結果を共用することもあ
る)。掘削面側3の土質条件にはピーク強度の他に土が
弾性体として働く破壊前の土質条件と塑性体として働く
破壊後の土質条件も付記される。一方地質の状態に応じ
て掘削面側3には地盤の改良を行う場合がある。この場
合には地盤改良による土質条件の変化を推定し、その結
果を改良地盤土質条件記憶手段103Cに記憶する。こ
の改良地盤の土質条件にも土の破壊前と後の土質条件を
付記する。
【0008】その他として土留め壁曲げ剛性記憶手段1
03Dには土留め壁1の曲げ剛性を記憶し、切ばり剛性
記憶手段103Eには切ばり4の剛性(圧縮剛性)を記
憶する。以上の条件を入力した後に、掘削開始の指示を
入力し、シミュレーションを開始させる。シミュレーシ
ョンの順序として、1次掘削を例えば2メートルとし、
2次掘削以降3メートルと仮定してシミュレーションを
実行させる。1次掘削が終了したものとして切ばり4
(図37及び図38参照)を施工し、その状態で土留め
壁1の各部の水平変位量を求める。この演算は土留め壁
水平変位量を求めるために土留め壁水平変位演算手段1
03Pで実行される。演算により、土留め壁1の変位
(背面側2の土圧による変位)が求められると、この変
位により掘削面側3の土に与えられる反力(掘削面側3
の土からの反力と等価)を求める。この演算は掘削面側
水平地盤反力算出手段103Qによって行われる。
【0009】掘削面側水平地盤反力算出手段103Qで
はその掘削位置における地盤強度と静止土圧の和を求め
る。図38に示す曲線Prは掘削面側の地盤反力、Po
は掘削面側静止土圧、曲線Ptは地盤反力と静止土圧と
を加算した根入れ部の土圧を示す。地盤反力Prは Pr=KH・δH で求められる。KHは図37に示した掘削面側の地盤反
力係数、δHは土留め壁水平変位(演算手段103Pで
算出した土留め壁1の水平変位)を示す。
【0010】静止土圧Poは Po=Ko・γt・Z’ で求められる。Koは静止土圧係数、γtは図37に示
した単位体積量、Z’は掘削面から計った計算点の深さ
を示す。これらの数値は土質条件として与えられてい
る。根入れ部の土圧Pt=Pr+Poで求められる。根
入れ部の土圧Ptが求められたことにより、その算出結
果を塑性化検出手段103Rに引き渡す。
【0011】塑性化検出手段103Rは根入れ部の土圧
Ptとその掘削面位置におけるピーク強度Ppと比較
し、Pp>Ptであれば掘削面側の土は破壊していない
と判定し、その場合は土留め壁水平変位演算手段103
Pで算出した土留め壁の変位と応力をそのまま応力記憶
手段103Uに記憶する。応力記憶手段103Uにはそ
の他に切ばり応力を一時記憶する。一方根入れ部の土圧
Ptがピーク強度より大きいPp<Ptである場合には
掘削面側3の土が破壊されていると判定する。破壊と判
定された場合、動作は弾塑性境界点検出手段103Sに
引き渡される。弾塑性境界点検出手段103Sは根入れ
部の土圧Ptの演算を掘削面からは漸次深さ方向に位置
を変えながら実行し、位置の変更毎にその算出結果とピ
ーク強度Ppとの比較を繰り返す。
【0012】この計算中にPp=Ptとの比較結果から
得られると、その深さ位置が土の破壊と非破壊の境界
点:つまり弾塑性境界点と決定する。Pp<Ptの状態
からPp>Ptの状態に変化した場合は演算対象位置を
上方に戻し、再度その深さ位置における根入れ部の土圧
Ptを求め、その根入れ部の土圧Ptとピーク強度Pp
とを比較し、Pp≒Ptとなるまでその動作を繰返す。
弾塑性境界点X(図38)が求められると、動作は地盤
強度置換手段103Tに移る。地盤強度置換手段103
Tでは弾塑性境界点Xから上側の土質条件を上の破壊デ
ータ(ピーク強度Pp以下の値を持つ残留強度)に置換
し、その置換したデータにより破壊後の根入れ部の土圧
Pt´を求める。
【0013】根入れ部の土圧PtがPt´に置き換えら
れたことにより、土留め壁1にかかる反力も変化するか
ら土留め壁1の変位を土留め壁水平変位演算手段103
Pで再計算し、その算出結果を最終結果記憶手段103
Fに記憶させる。この時切ばり応力及び根入れ部の土
圧、土留め壁の曲げモーメントも合わせて最終結果記憶
手段103Fに記憶する。上述したシミュレーション装
置による解析方法を以下では弾塑性法と称すことにす
る。以上の動作をN次掘削まで繰返し、各掘削時の土留
め壁1の変位と、曲げモーメント及び切ばり4の応力を
最終結果記憶手段103Fに記憶させる。
【0014】最終結果記憶手段103Fに記憶された土
留め壁1の変位及び曲げモーメントをモニター200ま
たはプリンタ300に出力し、例えば図37に示す変位
と曲げモーメントのシミュレーション出力を表示する。
図37の例では最上部の変位が21.8mm、最大変化
が42.5mmであった場合を示す。この最大変位が例
えば許容範囲を超えている場合はその最大変位が発生す
る位置の土質を改良し、補強する必要があることがわか
る。土質改良工事を施工後、再度土質調査を行い、同様
のシミュレーションを行うことにより工事が安全に達成
できるか否かを判定することができる。
【0015】以上説明した掘削工事用シミュレーション
装置の特徴とする点は図38に示した弾塑性境界点Xか
ら上側の地盤反力を土の破壊後は図39Aに示すように
ピーク値Ppより小さい値P´tに置換して再度シミュ
レーションを繰返す点にある。図39Bに示す地盤反力
はこの提案以前に用いられていた地盤反力に対する考え
方である。この図39Bに示す地盤反力の考え方によれ
ば土の破壊後に地盤反力が低下しているにも係わらず地
盤反力をピーク強度のままとしているから、危険側であ
っても安全側の結果を出力する恐れがある。
【0016】特許第2654913号明細書出提案した
掘削工事用シミュレーション装置はこの点を改善した点
で優れている。上述した掘削工事用シミュレーション装
置100では土質条件の一つとして水平地盤反力係数K
Hが予め与えられ、掘削面側土質条件記憶手段103B
に記憶するものとして説明した。従来より水平地盤反力
係数KHは掘削面側3の下方に存在する硬い地盤の影響
を考慮しない計算式で求められるている。因みにその計
算式は、 KH=(1/0.3)・α・Eo・(B/0.3)-3/4 ここに、KH:水平地盤反力係数 α:補正係数 Eo:地盤の変形係数 B:載荷幅(一般にB=10m) で求められている。すなわち、従来は水平地盤反力係数
Hは実質的に地盤係数Eoのみの関数として表現され
ている。
【0017】しかし、実際の現場では下方に硬い地盤が
存在することが多く、そのような場合に、上述の計算式
によって水平地盤反力係数KHを求めると、計算される
水平地盤反力係数は実際の値より小さくなり、また硬い
地盤の上面付近では実際には生じないと考えられる変位
が算出される等の不合理な現象が発生する欠点がある。
この欠点を解消するために本出願人は他の発明として特
許第2989818号を提案した。この他の発明では、
実際に即した水平地盤反力係数を得ることができる計算
式を導出することにより、この不合理を解消し、現実に
沿った土留め壁の応力と変形ならびに切ばり軸力を算出
することができる掘削工事用シミュレーション装置を提
案した。
【0018】この先に提案した他の発明では硬い地盤の
表面から上の対象とする地盤の厚みH0が掘削幅Bの2
倍以上2.0B<H0で、更に掘削面側において土留め
壁表面と地盤との間にせん断抵抗(すべり抵抗)がある
場合に、地盤の変形係数をE、地盤のポアソン比をνと
すると、水平地盤反力係数KHτi(i=1、2、3)を
地表面側から順にKHτ1=2.8E/(1−ν2)B
と、KHτ2=(1−ν)E/0.6(1−ν−2ν2
Bと、KHτ3=(1−ν)E/0.2(1−ν−2
ν2)Bによって設定する水平地盤反力係数設定方法を
提案した。
【0019】また、硬い地盤の表面から上の対象とする
地盤の厚みH0が掘削幅Bに対して0.70B≦H0
2.0Bで、更に土留め壁と掘削面側の地盤との間にせ
ん断抵抗がある場合は水平地盤反力係数KHτiを地表側
から掘削幅Bの約1/2の深さまではKHτ1=2.8E
/(1−ν2)Bによって設定し、それより深い位置で
はKHτ4=10.6E/H0によって設定する水平地盤
反力係数設定方法を提案した。更に硬い地盤の表面から
上の対象とする地盤の厚みH0が掘削幅Bに対して0.
25B≦H0≦0.70Bの関係にあり、土留め壁と掘
削面側の地盤との間にせん断抵抗がある場合において、
硬い地盤の表面から所定距離Y4までの水平地盤反力係
数をKHτ4=10.6E/H0で設定し、それより上部
ではKHτ1=2.8E/(1−ν2)Bによって設定す
る水平地盤反力係数設定方法を提案した。
【0020】更に硬い地盤の表面から上の対象とする地
盤の厚みH0が掘削幅Bに対してH0≦0.25Bの関係
にあり、土留め壁と掘削面側の地盤との間にせん断抵抗
がある場合において、硬い地盤の表面から対象とする地
盤の厚みH0のほぼ全域でKHτ4=10.6E/H0で水
平地盤反力係数を設定し、地表側ではKHτ5=0.88
E/H0で水平地盤反力係数を設定する水平地盤反力係
数設定方法を提案した。更に掘削面側の土留め壁と地盤
との間にせん断抵抗がない場合の水平地盤反力係数設定
方法を提案した。
【0021】つまり、硬い地盤の表面から上の対象とす
る地盤の厚みH0が掘削幅Bに対して0.22B≦H0
関係にある場合に、硬い地盤の表面から掘削幅Bの約1
/2までの領域ではKH03=6E/(1−ν2)Bで水平
地盤反力係数を設定し、それより上部ではKH01=2E
/(1−ν2)Bによって水平地盤反力係数を設定する
水平地盤反力係数設定方法を提案した。更に地盤の表面
から上の対象とする地盤の厚みH0が掘削幅Bに対して
0≦0.22Bの関係にある場合に、硬い地盤の表面
から対象とする地盤の厚みH0のほぼ全域ではKH04=1
1.2E/H0により水平地盤反力係数を設定し、地表
側ではKH05=0.63E/H0により水平地盤反力係数
を設定する水平地盤反力係数設定方法を提案した。
【0022】この先に提案した各水平地盤反力係数設定
方法によれば、掘削面の下部に硬い地盤が存在する場合
に、その硬い地盤の影響を考慮して水平地盤反力係数を
設定することができる。この結果実状に即した水平地盤
反力係数を設定することができ、精度の高いシミュレー
ションを実現することができる利点が得られる。尚、上
述した水平地盤反力係数KHτ1〜KHτ5及び、KH01
H05を設定する数式の導出過程に関しては本出願発明
者等が1998年6月に発表した土木学会論文集No.
595/VI−39・141項〜158項を参照された
い。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】先に本出願人が提案し
た二つの特許では掘削面側の地盤のみに地盤ばねが存在
するものとして水平地盤反力係数の設定方法を提案した
が、地盤改良工法や切ばりプレロード工法を採用した掘
削土留め工では、一般の場合と比較して土留め壁の変形
が小さく、結果として背面側土圧が一般の場合より大き
くなると考えられることから、背面側土圧を土留め壁の
変位に関係なく既知量として与える設計方法を用いるこ
とは適切ではない。
【0024】このような場合には背面側にも地盤ばねを
与える計算法を使用することが考えられる。然し乍ら、
これに必要となる背面側の水平地盤反力係数と最小土圧
の設定には確立した方法がない。この発明では、背面側
の水平地盤反力係数と、最小土圧の設定方法を提案しよ
うとするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1で
は、上述した掘削工事用シミュレーション装置におい
て、土留め壁の背面側及び掘削面側の双方に地盤ばねが
存在すると仮定し、背面側の地盤の変形係数をE、補正
係数をαKとした場合に、背面側の水平地盤反力係数KH
をKH=αK・Eによって設定する掘削工事用シミュレー
ション装置に用いる水平地盤反力係数設定方法を提案す
る。この発明の請求項2では、請求項1記載の水平地盤
反力係数設定方法において、各掘削時の掘削底面より上
方の水平地盤反力係数に関して、1次掘削を行う間は補
正係数αKをαK≒0.090に設定すると共に、2次掘
削以降では補正係数αKをαK≒0.180に設定する掘
削工事用シミュレーション装置に用いる水平地盤反力係
数設定方法を提案する。
【0026】この発明の請求項3では土留め壁の背面側
及び掘削面側の双方に地盤ばねが存在すると仮定し、各
掘削時の掘削底面より下方の水平地盤反力係数に関し
て、掘削底面から下部の硬い地盤の上面までの厚さをH
0、係数をαU、αL、地盤の変形係数をEとした場合、
掘削底面位置の背面側水平地盤反力係数KHUを KHU=αU・E/H0 土留め壁下端位置の背面側水平地盤反力係数を KHL=αL・E/H0 によって設定する掘削工事用シミュレーション装置の水
平地盤反力係数設定方法を提案する。
【0027】この発明の請求項4では、掘削用シミュレ
ーション装置において、土留め壁の背面側及び掘削面側
の双方に地盤ばねが存在すると仮定すると共に、任意の
土圧計算点の深さをZC、この任意の土圧計算点におけ
る掘削後の背面側土圧をPC、土の単位体積重量をγt
土の粘着力をC、補正係数をβとした場合、掘削後の背
面側土圧の最小値PCを、PC=βγtC−2Cによって
設定する掘削工事用シミュレーション装置の背面側の最
小土圧設定方法を提案する。
【0028】作用 この発明によれば、掘削面側及び背面側の双方に地盤ば
ねが存在するものと仮定して掘削時に発生する水平地盤
反力を求めるための水平地盤反力係数設定方法と、任意
の土圧計算点における背面側の最小土圧を設定すること
を可能としたから、掘削工事のためのシミュレーション
の信頼性を向上させることができ、工事の安全性を高め
ることができる利点が得られる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下に本発明の発明者等が土木学
会論文集No.665/VI−49、117−136、
2000.12で発表した論文の論旨に沿って、本発明
による掘削工事用シミュレーション装置の水平地盤反力
係数及び最小土圧の設定方法について説明する。 1.まえがき 掘削土留め工の設計には、土留め壁を弾性のはり、切ば
り支点を弾性支承、そして地盤の抵抗を弾塑性の分布ば
ねとしてモデル化する、いわゆる「弾塑性法」が広く使
用されている。文献1)、4)参照(以下単に文献番号
のみを付記する)。この弾塑性法は、背面側土圧の扱い
方により、背面側土圧を土留め壁の変位と関係なく既
知量として与える方法2)と、土留め壁背面にも掘削面
側と同様に地盤ばねを想定することにより背面側土圧を
土留め壁の変位と関係付ける方法 3)との、2方法に大別
できる1)
【0030】掘削面側にのみ地盤ばねを有するの方法
の方が先に実用に供せられたが、これは実測値に基づい
た背面側土圧に関する研究が精力的に行われたこと、
の方法で使用する背面側ばねの値(水平地盤反力係数)
や最小土圧の合理的な設定方法が確立していないこと、
およびの方法では背面側地盤の局部変位に対する連続
体としての応力再配分作用としてのグラウンドアーチの
影響を考慮できないことなどがその主な理由と考えられ
る。の方法に用いる背面側土圧の設定方法として、数
多くの現場で得られた土圧の実測値を、設計用に整理し
た土圧式が広く使用されているが1)4)、これらの土圧
の設定式は、土圧計算点の深さ、各掘削時の掘削深さ、
土の単位体積重量及び強度の関数として与えられてい
る。
【0031】一方、本発明者らは地盤を弾性塑性体とし
た有限要素法モデルを用いて掘削過程の解析を行い、そ
の結果を整理して、の方法に用いる新たな背面側土圧
の設定方法を提案した5)。この提案は、従来から要因と
して考えられてきた掘削深さ、地盤の単位体積重量と強
度の他に、掘削前の静止土圧と、土留め壁の変位に関係
する要因(掘削幅、土留め壁の曲げ剛性、切ばりのばね
定数、及び掘削面側地盤の安定数)を含んだものとなっ
た。本発明者らの提案した背面側土圧の設定式が、土留
め壁の変位に関する要因を含んでいることは、の方法
に比較しての方法の方が汎用性があることを意味して
いる。特に、地盤改良工法やプレロード工法を採用する
場合のように、土留め壁の変位が一般の場合に比較して
著しく小さくなる場合には、本発明者らの提案した土圧
の設定式を使用するとしても、このような場合の土圧を
適切に表現しないことから、の方法よりの方法を使
用する方が合理的であると考えられる。なお地盤改良や
切ばりプレロードを行わない一般の場合には、の方法
を使用することとして、これに本発明者らの提案した背
面側土圧を入力することにより、背面側地盤のグラウン
ドアーチも考慮することができるので、合理的な設計が
できる。
【0032】前述のように、土留め壁の変位が一般の場
合に比較して著しく小さくなる場合には、の方法
(「背面側に地盤ばねを有する弾塑性法」と呼ぶ)を使
用することが合理的であるが、現状ではこの方法に入力
する水平地盤反力係数や最小土圧などの設定方法が確立
されていないために、この方法を用いても十分な精度で
土留め工の挙動を推定することは難しい。背面側に地盤
ばねを有する弾塑性法では、地盤の挙動を表現するため
に、背面側では、水平地盤反力係数、掘削前の静止土
圧、最小土圧、及び最大土圧を、また掘削面側では各掘
削段階毎に、水平地盤反力係数、静止土圧(平衡土圧と
呼ぶこともある)、及び最大土圧を設定する必要がある
3)。これらの地盤に関する入力値のうち、掘削面側の入
力値についてはの方法でも必要になることから、現在
までに研究が進んでいて6)7)8)、実用に供し得る状態
になっているものの、背面側の入力値については研究が
遅れており、特に水平地盤反力係数、最小土圧、及び最
大土圧に関する研究は皆無に近い。
【0033】このような現状を踏まえて、この発明では
最初に、背面側に地盤ばねを有する弾塑性法に入力する
背面側土圧に関する諸数値の設定方法を提案することと
し、既報の研究5)で行った地盤を弾塑性体とした有限要
素法モデルによる掘削過程の計算結果を分析すると共
に、新たな有限要素法モデルを用いた検討も行い、それ
らを整理してこの発明では汎用性のある入力値の設定式
を導く。そして次に、土留め壁の変位が一般の場合に比
較して著しく小さくなるために、背面側に地盤ばねを有
する弾塑性法を使用することが適当であるケースとし
て、掘削面側地盤を改良した場合と、切ばりプレロード
工法を採用した場合をとり挙げ、提案した背面側の水平
地盤反力係数と、背面側土圧の最小値の設定方法の妥当
性と適用性について検討する。
【0034】なお、この明細書では全応力解析が可能な
粘性土地盤を対象としており、従って「土圧」は有効応
力と間隙水圧の和を意味する。 2.掘削土留め工の設計に用いられる水平地盤反力係数
に関する従来の研究 背面側に地盤ばねを有する弾塑性法に入力する水平地盤
反力係数の検討に先立ち、掘削土留め工の計算に用いら
れる水平地盤反力係数に関する従来の研究を概観する。
地盤を押した場合の地盤の抵抗が、互に独立した分布ば
ねで表現できるとするWinklerの仮説9)は、杭基
礎などの基礎の設計に広く使用されており10)、掘削土
留め工の一般的な計算法である弾塑性法にも、地盤の抵
抗を表現するために使用されている2)
【0035】現在、杭の設計における水平地盤反力係数
の計算には、地盤の変形係数と載荷幅を関数とする次式
が一般に使用されている10)
【0036】
【数1】
【0037】ここに、kH:水平地盤反力係数(kN/
3) α :E0の算定方法に関する補正係数 E0:各種試験により求められる地盤の変形係数(kN
/m2) B :載荷幅(m) 掘削土留め工においても掘削面側の水平地盤反力係数の
計算に、載荷幅Bを5〜10m程度として式(1)を用
いることが多かった11)。本発明者らは、掘削面側の水
平地盤反力係数の計算式には、地盤の変形係数の他に、
掘削面側地盤の変形特性を要因として含むべきであると
考え、掘削面側地盤を対象として有限要素法による検討
を行った。この結果として、掘削幅、土留め壁表面のせ
ん断抵抗、地盤のポアソン比(静止土圧係数)、及び土
留め壁の根入れ長を、要因として新たに加えるべきであ
ることが判明したので、これらの要因を含んだ水平地盤
反力係数の設定法を提案した7)
【0038】また、本発明者らは上記の方法を、実際の
現場がそうであることが多い、下方に硬い地盤が存在す
る場合にも適用し得るように拡張した方法を提案し
8)。この提案には上記の要因の他に、対象地盤の厚
さ、掘削面からの深さ、及び下方の硬い地盤から計算点
までの距離が新しく要因として含まれている。掘削面側
の水平地盤反力係数に関しては、上記のように詳細な研
究が進んで、実用上充分な精度でその値を設定できる状
況にある。しかし、背面側の水平地盤反力係数に関する
研究の数は非常に少なく、文献12)に数多くの現場実
測値を整理した結果の報告がある程度である。その報告
によると、背面側2の水平地盤反力係数は、掘削面側の
それに比較して値が小さく、掘削面側の値の46〜91
%程度であるとされる。特に一軸圧縮強度が50kN/
2以上の粘性土地盤であれば、掘削面側の値のほぼ5
0%程度と小さくなると報告されている。背面側は地盤
が無限に広がっていて、荷重が作用した場合に掘削面側
より変形しやすいと考えられることから、この報告で示
された傾向は肯定できる。
【0039】3.地盤を弾塑性体とした有限要素法によ
る掘削過程の計算結果の分析 本発明者等は粘性土地盤を対象として土留め工の挙動に
影響を与える要因を種々に変形させた計算ケースを設定
し、地盤を弾塑性体とした有限要素法モデルを使用して
掘削過程に沿って計算を進め、その計算結果を整理して
背面側土圧を定量的に扱うための研究を行った5)。以下
では、その研究の過程で得られた背面側土圧の変化と土
留め壁の変位を分析して、背面側の水平地盤反力係数と
背面側土圧の最小値の傾向を把握すると共に、背面側地
盤のグラウンドアーチを考慮した補正方法についても検
討する。
【0040】(1)計算モデルと計算ケースの概要 計算モデルは図1に示すように、高さHを50m、幅W
を掘削幅の1/2に100mを加えた値以上の長さと
し、土留め壁1は弾性のはり、切ばりは弾性支承、地盤
はDrucker−Pragerの弾塑性論理を用いた
非線形解析が適用できる粘性土地盤を2次元平面ひずみ
の面要素で、それぞれ表現したのである。背面側土圧に
関する本分析では、背面側土圧に影響を与えることが考
えられる要因(掘削幅、土留め壁1の曲げ剛性、土留め
壁1の表面のせん断抵抗、切ばりのばね定数、地盤の安
定数、及び静止土圧係数)を、一般の掘削工事で想定さ
れる範囲で変化させた図2に示す11のケースを対象と
する。ケース[N]は、各要因に対して想定される範囲
の中央値を与えるケースであり、中央値として採用する
値を図3に示した。ケース[N]を除く各ケースはケー
ス[N]を基準として、図2に記した要因のみを変更し
たものである。
【0041】(2)背面側土圧の変化 まず、掘削に伴う背面側土圧の変化の傾向を調べる。図
4は、図2に示した全計算ケースの、掘削深さがD=8
mからD=11mへと変化する際に生じた背面側土圧の
変化量を示したものである。この図から、全体として背
面側土圧の変化量にはばらつきがあるものの、掘削底面
より約2m上方の点を境として、それより上方では背面
側土圧は増加するのに対して、その点より下方では減少
することがわかる。
【0042】掘削底面より下方の土圧の減少量に着目し
て、土留め壁表面のせん断抵抗を無視し、静止土圧係数
をK0=0.8、土の単位体積重量をγt=15.6kN
/m 3、掘削厚さをd=3mとすると、掘削による掘削
面側の平衡土圧の減少量はΔp=37.63kN/m2
となる。一方、図4によると背面側土圧の減少量は概ね
Δp´=8〜15kN/m2となっていて、平衡土圧の
減少量のおよそ1/3である。したがって掘削面側で受
け持つ平衡土圧の減少量は約2/3となり、背面側の水
平地盤反力係数は掘削面側のそれの1/2となることが
わかる。この傾向は文献12)で示された傾向と一致す
る。
【0043】(3)背面側土圧の変化と土留め壁変位と
の関係 上記背面側土圧の変化量を土留め壁の変位量との関係で
表すために、掘削深さがD=8mからD=11mへと変
化する際に生じた土留め壁の水平変位の変化量を図5に
示した。この図から、最下段切ばり設置位置より上方で
はケース[K−1]を除いて水平変位の値は小さいこ
と、最下段切ばり設置位置より下方では土留め壁は掘削
面側に変位することがわかる。この土留め壁の変位を図
4に示した背面側土圧の変化との関係で見ると、掘削底
面以下では土留め壁が掘削面側へ変位して土圧が減少し
ているのに対して、最下段切ばり設置位置より上方では
土留め壁が背面側へ変位しないのにも係わらず、背面側
地盤のグラウンドアーチの影響により土圧は増加してい
ることがわかる。このことより、掘削底面以下では、背
面側の土圧を水平地盤反力係数を用いて土留め壁の変位
と関係付けることが妥当であると判断できるが、最下段
切ばり設置位置より上方(以下では少し範囲を広げて
「掘削底面より上方」とする)の部分では、上記の方法
をそのまま適用することは適切でなく、何らかの補正が
必要であることがわかる。
【0044】(4)水平地盤反力係数(掘削底面より下
方) ここでは掘削底面より下方の地盤に対象を限定して、背
面側の水平地盤反力係数について検討する。有限要素法
の計算結果より、掘削深さがD=8mからD=11mへ
と変化する際の背面側地盤の水平地盤反力係数は次式に
より求められる。
【0045】
【数2】
【0046】ここに、khc:有限要素法の計算結果から
得られる背面側の水平地盤反力係数(kN/m3) Δp:有限要素法から得られる背面側土圧のD=8mか
らD=11mまでの減少量(kN/m2) Δδ:有限要素法から得られる土留め壁変位のD=8m
からD=11mまでの増分(m) 検討の対象としている地盤は、地表面からの距離に比例
して変形係数が増加することとしている(図2、図3参
照)ので、式(2)で得られる値を地盤の変形係数で除
した値(khc/E)で整理し、結果を図6に示した。
【0047】この図から、ばらつきの大きいケース[B
−1]および[S−2]の2ケースを除く各ケースの水
平地盤反力係数の変形係数に対する比の値(khc/E)
はほぼ一定となり、深さ方向にも大きな変化をしないこ
と、及びこの計算モデルに限定されるが、背面側地盤の
水平地盤反力係数は次式で与えられることがわかる。 khc=(0.03〜0.10)E (3) ここに、E:地盤の変形係数(実用上は式(1)を参照
してE=αE0で与える)(kN/m2) ばらつきの大きいケース[B−1]は極端に掘削幅を狭
くしたケースであるが、図6によると掘削底面からほぼ
掘削幅に等しい距離だけ下方の点を境として、それより
下方では負の値となっているのに対して、その点より上
方ではその他のケースに近い値を与えている。土留め壁
の曲げモーメントや変位の最大値が掘削底面付近に発生
することを考えると、誤差が少し大きくなることを許せ
ば、このケースでも背面側にばねを有する弾塑性法が適
用できそうである。なお、このケースの値が複雑なもの
となったのは、掘削面側の水平地盤反力係数が掘削底面
より少し下方で急激に変化していることが原因であ
8)
【0048】また図6によると、地盤の安定数をNb
8としたケース[S−2]の計算結果もばらつきが大き
くなっているが、平均してみると他のケースと近似した
値を与えるので、このケースもケース[B−1]と同様
に誤差が少し大きくなることを許せば、背面側にばねを
有する弾塑性法が適用できそうである。なお、このケー
スの値がばらついているのは、地表からの深さが20m
を超える部分の地盤の安定数をヒービングが発生しない
ようにNb=5としたことに起因している。 (5)背面側土圧の最小値 背面側に地盤ばねを有する弾塑性法での背面側土圧は、
掘削前の静止土圧から掘削に伴う土留め壁の変位量(掘
削面側への変位を正とする)に水平地盤反力係数を乗じ
て得られる土圧を減じたものとなることから、条件によ
っては土留め壁が掘削面側へ大きく変位し、背面側土圧
として著しく小さな値(場合によっては負の値)が計算
されることもあり得る。
【0049】現実には背面側地盤が塑性化することによ
り、土留め壁の変位が大きくなっても、ある値(「最小
土圧」と呼ぶ)より小さな値とならないと考えられるの
で、弾塑性法の計算では最小土圧を下回らないようにす
る必要がある。この最小土圧は、前述のように背面側地
盤が塑性状態となった場合の土圧であると考えられるこ
とから、従来は主働土圧が用いられてきた3)。しかし、
土留め壁の変位が掘削底面付近で最大となる曲線となる
のが一般的であるために、背面側地盤がある程度以上の
強度を有する場合には、掘削底面付近だけが局部的に塑
性化するものの、背面側地盤全体が主働状態とはならな
いと考えられるので、最小土圧として主働土圧を用いる
ことには疑問がある。
【0050】そこで、図2に示した有限要素法の計算結
果を分析するために図7を作成した。図7には、掘削深
さDが11mおよび20mの段階で掘削前土圧からの減
少量が最も大きい計算点(「土圧最大減少点」と呼ぶ)
の深さzcと、土圧最大減少点における、掘削後の背面
側土圧pC、掘削後の背面側土圧の静止土圧に対する比
η、および次式を満足するβを示した。 pc=βσv0−2c=βγtc−2c (4) ここに、pc:有限要素法により得られた土圧最大減少
点における掘削後の背面側土圧(kN/m2) σv0:土圧最大減少点での掘削前の鉛直圧力(kN/m
2) γt:土の単位体積重量(kN/m3) zc:土圧最大減少点の深さ(m) c:土の粘着力(kN/m2) β:補正係数(有限要素法の結果から逆算) なお式(4)は、土の内部摩擦角がφ=0である場合の
Rankine−R´esalの主働土圧式を基本とし
て、第1項に補正係数を乗じたものである。土の内部摩
擦角がφ=0である場合のRankine−R´esa
lの主働土圧式の第1項は計算点の鉛直圧力に相当する
が、掘削に伴って土留め壁が土圧最大減少点付近で大き
く変位することにより、背面側地盤はその部分で局部的
に水平方向に伸び、その結果、局部的に鉛直圧力が減少
すると考え、第1項に補正係数を乗じることとした。
【0051】この表から、土圧最大減少点の位置は各掘
削段階の掘削底面付近であること、及び有限要素法によ
り得られた土圧最大減少点における掘削後の背面側土圧
は相当小さな値となっているものもあることがわかる
(ケース[R−1]のD=20mでは掘削後の背面側土
圧の静止土圧に対する比はη=0.15である)。図7
に示した計算ケースは、一般に考えられる状況を想定し
て各要因を変化させているので、土留め壁の変位の大き
なケースと小さなケースが混在していて、背面側地盤に
局部的な塑性域が発生するために充分な変位を発生させ
ていないケースも含まれていると考えられる(例えば、
D=11mのケース[R−2])が計算により得られた
補正係数βと土圧最大減少点の土留め壁の変位との関係
をそのまま図8に示した。
【0052】この図によると、掘削深さがD=11mの
場合では、土留め壁を剛性の大きい地下連続壁としたケ
ース[R−2]と、軟弱地盤(Nb=8)を想定したケ
ース[S−2]の補正係数はβ≒1.0となるが、これ
らの2ケースを除く他のケースの補正係数は1.0より
小さくなること、及び土留め壁の変位が大きくなるのに
伴って補正係数βは減少することがわかる。ケース[S
−2]において補正係数がβ≒1.0となったのは、背
面側地盤の強度が小さいために、掘削により背面側地盤
の広い範囲が塑性状態となることが原因であり、この場
合には最小土圧としてRankine−R´esalの
主働土圧式を使用することが妥当である。
【0053】また、この図から曲げ剛性の小さな鋼矢板
III型を使用したケース[R−1]では、他のケースに
比較してβの値が著しく小さくなっていることもわか
る。 (6)最下段切ばり位置より上方の土圧 前述[3.(3)]のように、各掘削段階での最下段切
ばりより上方では、グラウンドアーチの影響により背面
側土圧が増加するが、背面側に地盤ばねを有する弾塑性
法ではグラウンドアーチの影響を表現することが出来な
いので、この方法を使用する場合には、何らかの補正を
施す必要がある。
【0054】補正は、弾塑性法からのアウトプットであ
る、土留め壁の応力と変位、及び切ばり軸力が対象とさ
れるべきであるが、一般の土留め壁での応力と変位の最
大値は、各掘削時点での掘削底面付近かそれ以深に発生
し、ここで対象としている最下段切ばり位置より上方で
発生することはほとんどないと考えられることから、補
正は切ばり軸力のみを対象に行う。図9は、グラウンド
アーチによる切ばり軸力の増加量について検討するため
に作成したもので、図2に示した計算ケースの各掘削段
階での最下段切ばりより上方の土圧の増分を示したもの
である。ここで、土圧の増分は着目している掘削段階の
1段階前の時点から着目している掘削時までの増分で、
最大値を含む3m間の平均値である。
【0055】この最下段切ばりより上方の土圧の増分
は、掘削に伴う背面側地盤のグラウンドアーチの影響に
よるものであることから、これを掘削底面位置での背面
側土圧の減少分との関係で定義することとし、図9に示
した全ケースに対して図10を作成した。この図から両
者には強い相関関係が見られたので、最小自乗法により
両者を関係付ける直線式を作成し、次式を得た。なお、
直線式は原点を通ることとし、背面側土圧の減少分に1
次比例する重みをつけた。
【0056】 Δpu,i=0.88Δpb,i=0.88(pb,i-1−pb,i)(5) ここに、Δpu,i:i次掘削時の最下段切ばりより上方
の土圧の増分(kN/m2) Δpb,i:i次掘削時の掘削底面位置での背面側土圧の
減少量(kN/m2) 式(5)の直線を図10に合わせて示したが、この式は
計算結果を代表していることがわかる。
【0057】実際の設計では、式(5)の土圧の増分を
用いて、土圧による設計用の切ばり軸力を次式で求め
る。 Nd,j=Nd0,j+Δpu,is,jΔHj (6) ここに、Nd,j:土圧によるj段切ばり(i次掘削時の
最下段切ばり)の設計用軸力(kN) Nd0,j:背面側にばねを有する弾塑性法により得られた
全掘削段階を通してのj段切ばりの最大軸力(kN) Bs,j:j段切ばりの水平方向の間隔(m) ΔHj:j段切ばり上下の切ばり鉛直間隔(m) 4.掘削底面より下方の水平地盤反力係数の設定方法に
関する検討 上記3.の分析から、背面側にばねを有する弾塑性法
は、水平地盤反力係数を適切に定め得れば実用に供し得
る見通しがついたので、背面側の水平地盤反力係数の設
定方法について検討を行うこととし、まず上記3.
(4)の分析においてある程度の傾向を把握した掘削底
面より下方の部分について検討する。
【0058】(1)検討方法 掘削面側の水平地盤反力係数に関する本発明者らの研究
7)8)より、背面側地盤の掘削底面以下での水平地盤反
力係数の設定式は、地盤の変形係数、ポアソン比、及び
対象地盤の厚さを、その要因として含むべきであること
が類推できる。また背面側地盤は支保工により支えられ
ているという背面側地盤の特性を考えると、支保工の設
置の影響(掘削段階で表現する)も要因に含むことが必
要となる。
【0059】こうした観点から、掘削底面以下の背面側
の水平地盤反力係数の検討には、図11及び図12に示
した計算モデルを用いることとする。すなわち地盤の弾
性挙動を表現する水平地盤反力係数の検討を目的として
いるので、地盤を弾性の有限要素法モデル(2次元平面
ひずみ状態)で表現することとし、全体の幅をBT=1
00m、高さをHT=20mと32mの2ケースとし、
モデルの下面は背面側地盤の下方に存在する硬い地盤の
上面と考えて固定とした。
【0060】モデルの幅を高さの3倍以上としたのは、
掘削面側の水平地盤反力係数に関する本発明者らの研究
8)を参考にして、モデルの幅の影響を受けないようにし
たものである。地盤の変形係数はE=9800kN/m
2とし、ポアソン比は非排水条件で一般に使用されるν
=0.480と、静止土圧係数をK0=0.80とした
場合に相当するν=0.444の2ケースを想定する。
土留め壁は、曲げ剛性を無視し、軸方向剛性のみを考慮
するが、曲げ剛性を無視するのは背面地盤のみに着目す
ることにしたことによるものであり、軸方向剛性を考慮
するのは、土留め壁表面のせん断抵抗による背面側地盤
の拘束を表現するために必要であることによる。ここで
土留め壁の軸方向剛性は、厚さ1mの地下連続壁を想定
してEA=1.96×107kNとした。
【0061】土留め壁表面のせん断抵抗について、それ
が存在する場合と存在しない場合とについて検討するた
めに土留め壁と地盤の間にジョイント要素を挿入し、ジ
ョイント要素のせん断ばね定数の値を、それぞれKG
9.8×105kN/m3、9.8×10-2kN/m3
した。図12に示した各ケースについて掘削過程を想定
して細分化し、BT=20mのモデルで7ケース、BT
32mのモデルで11ケースの計算を行うこととし、そ
の際の荷重と支保工の設置位置を図13のように設定し
た。
【0062】すなわち、1次掘削深さをD=3m、2次
掘削以降の掘削厚さをd=3mとし、HT=20mのモ
デルではD=17mまで、HT=32mのモデルではD
=29mまで掘削することとした。また支保工は前掘削
時掘削底面の上方1mの位置に設置することとし、その
点を水平方向に固定とした。また、荷重は弾性解析であ
ることを考慮して、単位の荷重w=9.8kN/m
2(=1.0tf/m2)を、全てのケースに対して作用
させることとした。 (2)地盤の水平変位と水平地盤反力係数 有限要素法の計算結果のうち、各掘削段階での掘削底面
より下方の土留め壁位置での地盤の水平変位の一例を図
14に示した。この図から、土留め壁の水平変位は、曲
線状となっていること、掘削底面から下部の硬い地盤の
上面(このモデルでは下端境界)までの厚さ(「対象地
盤の厚さ」と呼ぶ)が薄くなると土留め壁の水平変位も
小さくなること、1次掘削時の水平変位は他の掘削時の
変位と傾向が少し異なる(各掘削時の掘削底面での水平
変位を結ぶと理解できる)ことなどがわかる。
【0063】次にポアソン比の影響を見るためにケース
[LF−1]と[LF−2]の水平変位を比較して図1
5に示したが、これよりポアソン比の影響は無視できる
ことがわかる。このような傾向は、HT=32mのモデ
ルでも、また土留め壁表面のせん断抵抗のないケースで
も同様に確認できた。また、土留め壁表面のせん断抵抗
の影響を見るために、ケース[LF−1]と[LS−
1]の水平変位を比較して図16に示した。この図か
ら、水平変位の分布形状は近似していること、及び土留
め壁表面のせん断抵抗がある場合には、ない場合に比較
して地盤の水平変位が少し大きくなることがわかる。
【0064】以上の検討から、地盤の水平変位に影響す
る要因は、荷重の大きさと地盤の変形係数の他に、支保
工の有無(1次掘削時か2次掘削以降か)、対象地盤の
厚さ、土留め壁表面のせん断抵抗の有無であることが分
かったので、これらを含んだ地盤の水平変位の計算式を
導く。地盤の水平変位は、取扱いの簡便さを考えて折れ
線で定義し、折れ点は対象地盤の厚さの中央として、折
れ点より上方(折れ点から掘削底面まで)では、有限要
素法の計算結果を代表する一定値とした。また折れ点よ
り下方(折れ点から下方の硬い地盤の上面まで)では、
折れ点で上方の値をとり、それより下方では有限要素法
の計算結果に近似する直線とし、最小自乗法によりこの
直線式を求めたところ、次式を得た(図17A参照)。
【0065】
【数3】
【0066】ここに、δU、δL:地盤の上部と下端の水
平変位(m) w:地盤に作用する水平方向の荷重(kN/m2) H0:対象地盤の厚さ[掘削底面から下部の硬い地盤の
上面までの厚さ](m) αU、αL:係数(図19参照) E:地盤の変形係数(kN/m2) 式(7)により得られる水平変位と、有限要素法の計算
結果を比較して図18に示したが、式(7)は近似式と
して使用できることがわかる。
【0067】上記の検討により等分布荷重を作用させた
際の背面側地盤の水平変位量が計算できたので、背面側
地盤の水平方向地盤反力係数は、等分布荷重を変位で除
すことにより次式のように求められる(図17B)。
【0068】
【数4】
【0069】(3)従来の技術との照合 上記のようにして得られた背面側の水平地盤反力係数の
設定式を従来の技術内容と照合する。まず地盤を弾塑性
体とした掘削過程の計算の分析結果と照合することと
し、係数αUを1.39と1.25、対象とする地盤の
厚さをH0=37.5m(2次掘削時から7次掘削時ま
での対象地盤の平均高さ)として、式(8a)からkHU
を求めると、kHU=0.037EとkHU=0.033E
となる。これは式(3)の範囲内の値であり、前記の分
析結果と整合するものである。
【0070】次に、掘削の一般的な規模を想定して、掘
削幅をB=20m、対象地盤の厚さをH0=20m、対
象地盤の厚さをH0=20m、ポアソン比をν=0.4
80として、文献8)から掘削面側の掘削底面付近の水
平地盤反力係数を求めるとKHτ1=0.18Eとなる。
一方、対象とする地盤の厚さをH0=20mとし、係数
をαU=1.39とすると、式(8a)から背面側の掘
削底面付近の水平地盤反力係数はkHU=0.07Eとな
る。すなわち背面側の水平地盤反力係数は掘削面側のそ
れの約1/2.5となっていて文献12)の内容とほぼ
一致する。
【0071】5.掘削底面より上方の水平地盤反力係数
の設定方法に関する検討 掘削底面より上方の地盤は支保工で支持されているため
に、プレロードを作用させる場合を除いて、水平方向の
変位は発生しないか、発生しても非常に小さな値であ
る。このような状態では、土留め壁の挙動は水平地盤反
力係数とは無関係となるので、掘削底面より上方の水平
地盤反力係数はプレロード作用時のみに着目して設定す
ることにする。ただし、このように設定された水平地盤
反力係数を、プレロードが作用しない場合に使用しても
切ばり支点での土留め壁の変位は小さいので問題はな
い。
【0072】(1)検討方法 検討には計算モデルとして、弾性の有限要素法モデルと
弾性床上のはりモデルを用いる。有限要素法モデルの計
算は、掘削底面より下方の水平地盤反力係数の検討で使
用した、図11、図12のHT=20mに対するケース
[LF−1]のモデルを使用することとし、土留め壁の
曲げ剛性と軸方向剛性を与えて、プレロード作用時のプ
レロード作用位置での土留め壁の水平変位量を計算す
る。
【0073】次に図20に示した弾性床上のはりモデル
により、プレロード作用位置の土留め壁の水平変位量を
計算する。その際、切ばり4によるプレロードの値、土
留め壁1の曲げ剛性、および支保工6の設置位置は、有
限要素法モデルと同じとする。そしてプレロード作用位
置の土留め壁変位量に着目し、有限要素法モデルと弾性
床上のはりモデルの計算値を等しいと置くことにより、
弾性床上のはりモデルでの水平地盤反力係数と、有限要
素法モデルでの地盤の変形係数との関係式を導く。これ
を基に設計に用いる水平地盤反力係数の設定式を提案す
る。
【0074】計算に使用する諸数値を図21に示す。有
限要素法モデルでは、掘削段階、地盤の弾性係数、土留
め壁の曲げ剛性を図21に示すようにそれぞれ3ケース
ずつ計算することから、全部で27ケースの計算を行
う。同様に弾性床上のはりモデルでも、掘削段階、水平
地盤反力係数、土留め壁の曲げ剛性をそれぞれ3ケース
ずつ想定し、全部で27ケースの計算を行う。なお、地
盤のポアソン比を固定値(ν=0.48)としたのは、
上記4.の検討から、その影響が小さいことが明らかと
なったことによる。
【0075】(2)水平地盤反力係数 有限要素法により得られたプレロード作用位置での土留
め壁の水平変位の値を図22に、土留め壁の水平変位と
地盤の変形係数との関係の一例を図23に示した。図2
2および図23から、変形係数および土留め壁の曲げ剛
性の増加に伴って土留め壁の変位が減少していること、
1次掘削時の変位は他のケースに比較して大きいこと、
2次掘削と3次掘削ではほぼ等しい変位となることなど
がわかる。
【0076】同様に、弾性床上のはりの計算により得ら
れたプレロード作用位置での土留め壁の水平変位の値を
図22に、土留め壁の水平変位と地盤の水平地盤反力係
数との関係を図24に示す。弾性床上のはりモデルによ
る計算結果のうちの、プレロード作用位置での土留め壁
の水平変位量を次式であらわすこととし、水平地盤反力
係数の相違による3個の計算値から、3個の係数C1
2、C3を各壁種の各掘削毎に決定する。なお、式
(9)は種々の関数を用いた試算の中から有限要素法の
結果との整合のよいものを選定したものである。
【0077】
【数5】
【0078】ここに、δ:プレロード作用位置での土留
め壁の水平変位(弾性床上のはりモデル)(m) P0:プレロード(kN) kH:水平地盤反力係数(kN/m3) C1、C2、C3:係数 弾性床上のはりの計算結果から式(9)の係数が決定さ
れ、したがって図21に示した掘削段階と土留め壁の曲
げ剛性に対して、プレロード作用位置での土留め壁の水
平変位量が任意の水平地盤反力係数kHの関数として計
算できるようになった。そこでこの式を用いて、図21
に示した条件の下で有限要素法により得られたプレロー
ド作用位置での土留め壁の水平変位量と同じ変位量を与
える、弾性床上のはりモデルでの水平地盤反力係数を逆
算することができる。
【0079】そして、逆算により得られた水平地盤反力
係数を、次式により有限要素法での地盤の変形係数と関
係付け、得られた補正係数αkを図25に示す。なお、
図25の平均値は有限要素法の水平変位量に1次比例す
る重みをつけて求めたものである。 kH=αkE (10) ここに、kH:水平地盤反力係数(kN/m3) αk :補正係数(m-1) E:有限要素法での地盤の変形係数(kN/m2) 図25より、補正係数αkの値は2次および3次掘削時
のE=1960kN/m2の場合を除いて各掘削時でほ
ぼ等しくなること、地盤の変形係数および土留め壁の曲
げ剛性の変化との間には明確な関係がないこと、1次掘
削時に対する値と2、3次掘削時に対する値とは異なっ
ていることなどがわかる。
【0080】上記の考察から実用上の簡便さを考えて補
正係数αkをこの発明では次式のように扱うことを提案
する。 1次掘削 αk=0.090 (11a) 2次掘削以降 αk=0.180 (11b) 6.最小土圧の設定方法に関する検討 地盤の安定数NbがNb=8.0とした軟弱地盤での背面
側土圧の最小値は一般に考えられている主働土圧に近似
したものとなるが、地盤の強度が大きくなる(Nb
5.0)と、背面側土圧の最小値は一般に考えられてい
る主働土圧より小さくなることが分かったので、Nb
5.0の地盤を対象として、最小土圧の設定方法を検討
する。
【0081】(1)検討方法 最小土圧の検討には、図26に示す有限要素法モデルを
使用する。このモデルは背面側地盤だけに着目したもの
であり、地盤はDrucker−Pragerの弾塑性
理論を用いた非線形解析が適用できる粘性土地盤とし
(2次元平面ひずみ状態)、モデルの大きさは、高さ
(深さ)を36m、幅を50mとする。モデルの左側面
を土留め壁に接している面としているが、この面を図2
6に示すように部分的に高さD0だけ解放面(窓)Wと
し、残りの部分は水平方向を、或いは水平方向と鉛直方
向の両方を固定する。解放面Wは、土留め壁が局部的に
掘削面側へ変形する部分を想定したもので、解放高さと
してD0=4mと、D0=8mの2ケースを考えることと
し、解放面中心位置の地表からの深さz0として、7、
14、24mの3ケースを考える。
【0082】地盤は均質な粘性土地盤を想定して、土の
単位体積重量はγt=16kN/m3ポアソン比νは0.
480と0.444の2ケースとする(図28)。地盤
の粘着力は、解放面Wで応力が解放されない状態での塑
性化に対する安全率を深さに関係なく一定とするため
に、深さに比例して増加するものとし、次式で与える。 c=γtz/Nb (12) ここで、c:地盤の粘着力(kN/m2) γt :土の単位体積重量(kN/m3) z:着目点の深さ(m) Nb :地盤の安定数 なお、地盤の安定数は塑性状態を再現することが目的で
あることから、ν=0.480の場合にはNb=10と
し、ν=0.444の場合にはNb=8.33とする。
また、地盤の変形係数は粘着力との関係で次式で与える
13)
【0083】 E=480c (13) ここに、E:土の変形係数(kN/m2) 最初に地盤全体に自重を、また解放面Wに静止土圧を作
用させた、初期応力状態の計算を行う。この場合の土留
め壁部および右側面の支持条件は図26とは関係なく、
全範囲で水平方向のみを固定とする。その後に、左右の
側面の支持条件を図26に示すように変更し、解放面W
での水平方向の荷重を徐々に減少させるステップ解析を
行う。すなわち、解放面Wでの静止土圧を200等分
し、200ステップでゼロとなるように減少させる。
【0084】最小土圧 上記の計算により得られた解放面の中心位置での水平変
位量を横軸に、そのときの解放面に作用している水平方
向荷重の静止土圧に対する比の値を縦軸にとって、両者
の関係を図27に示した。この図27から、ケースによ
るばらつきが大きいこと、荷重の解放に伴い解放面中心
位置の水平変位量は増加するがδ=1cmを超える付近
から変位は急激に増加すること、また土留め壁部を
「粗」としたケースより「滑」としたケースの方が、解
放高さをD0=4mとしたケースより、D0=8mとした
ケースの方が、ポアソン比をν=0.480としたケー
スより、ν=0.444としたケースの方が、それぞれ
応力解放が少ない状態で変位が大きくなることがわか
る。
【0085】水平方向荷重がRankine−R´es
alの主働土圧に等しくなった場合の、水平方向荷重の
静止土圧に対する比の値を図29に示すが、この図29
と図27より最小土圧はRankine−R´esal
の主働土圧より小さいことがわかるので、最小土圧をこ
の発明では式(4)に従って pc=βσv0−2C=βγtc−2C で与えることとする。解放面Wの中心位置での水平変位
量がδc=0〜10.0cmの範囲にある場合に着目
し、解放面Wの水平荷重が式(4)のpcであるとして
係数βを求めて図30に示した。
【0086】この図30から、係数βの値はケースによ
るばらつきが大きいこと、水平変位の増加に伴って減少
すること、その減少の割合は変位が大きくなるほど小さ
くなること、また土留め壁部を「滑」としたケースより
「粗」としたケースの方が、解放高さをD0=4mとし
たケースよりD0=8mとしたケースの方が、ポアソン
比をν=0.480としたケースよりν=0.444と
したケースの方が、それぞれ大きな値となることがわか
る。中でも、解放高さの影響が最も大きくなっている。
【0087】この発明では背面側土圧を図31Aのよう
に考えているが背面側土圧の最小値を考える場合に、こ
の解放高さの設定方法が重要である。このような研究は
過去に行われていないので、ここでは本発明者らが文献
5)で報告した背面側土圧の分布形状を参考にして解放
高さを設定することにする。文献5)によると、背面側
土圧に最も大きな影響を与える要因は土留め壁の曲げ剛
性であることから、解放高さを土留め壁の曲げ剛性で定
義することを考える。図31Bは文献5)に示した種々
の条件の下で計算した背面側土圧の分布のうち、土留め
壁の曲げ剛性を、鋼矢板、柱列式地下連続壁、地下連続
壁とした場合の掘削深さD=11mの値を示したもので
ある。何れも掘削底面付近で土圧が減少しているが、土
圧の減少範囲は土留め壁の曲げ剛性により異なり土留め
壁の曲げ剛性が小さいと減少範囲が狭いことがわかる。
【0088】図31Bには土圧の減少位置に合わせて、
解放高さ(D0=4mおよびD0=8m)を示したが、少
し狭く考えると、鋼矢板と柱列式地下連続壁ではD0
4mを、また地下連続壁ではD0=8mを解放高さとす
ることができる。解放高さを少し狭く考えたのは、実際
の土留め壁では、解放高さ全域で土圧が減少するのでは
なく、その中央で大きく減少することを考えたことによ
る。このように解放高さを定義して、また少し安全側と
なるように考えて図30より係数βを読み取り、設計に
用いる値を以下のように設定する。
【0089】 鋼矢板、柱列式地下連続壁 β=0.8 (14a) 地下連続壁 β=0.9 (14b) なお、背面側地盤全体が塑性域となるような軟弱地盤の
場合にはβ=1.0とする必要がある。 (3)従来技術との照合 上記の最小土圧に関する検討結果と、先に提案した有限
要素法による計算結果との照合を行う。
【0090】βは土留め壁の曲げ剛性の関数であり、そ
の最大値はβ=1.0であると考えられることより、β
を次式で表す。 β=1−(B2/(logEI+B1)) (15) ここに、EI:土留め壁の曲げ剛性(kNm2) B1、B2:係数 有限要素法により得られた係数βの値は、掘削深さD=
20mの場合、鋼矢板でβ=0.52、柱列式地下連続
壁で補正係数β=0.81、地下連続壁でβ=0.95
となっている。このうちの、鋼矢板と柱列式地下連続壁
の値から式(15)の係数を求めると、次式が得られ
る。
【0091】 β=1−(0.366/(logEI−3.43)) (16) 式(16)から地下連続壁に対するβの値を求めるとβ
=0.87となり、有限要素法の値(β=0.95)よ
り少し小さな値となる。この相違は土留め壁の曲げ剛性
が大きいために、有限要素法では背面側地盤が主働状態
となっていないことによるものと考えられる。式(1
6)から、βの値は土留め壁の曲げ剛性の関数ではある
が曲げ剛性が小さい範囲が特に敏感であり、曲げ剛性が
大きくなると鈍感になることがわかる。
【0092】したがって、βを式(14)で与えること
は、特に鋼矢板では誤差を持ち、大きな土圧を与えるこ
とになる。しかし、現状では鋼矢板に対する現場実測値
との照合が出来ていないので、安全側に式(14)とす
る。 7.背面側に地盤ばねを有する弾塑性法の背面側地盤に
関する入力値の設定方法 上記の検討結果を踏まえ、背面側に地盤ばねを有する弾
塑性法を粘性土地盤に用いる場合の背面側地盤に関する
入力値の設定方法を以下に提案する。なお、弾塑性法の
計算では掘削前の静止土圧から、その時点の背面側地盤
の引張り抵抗(土留め壁の変位と水平地盤反力係数の
積)を減じた土圧が、最小土圧と最大土圧の範囲内で作
用することとするが、一般にこの部分の計算はプログラ
ムにより自動的に行われる。
【0093】(1)掘削前の静止土圧 掘削前に土留め壁に作用している土圧は、土留め壁が変
位しない状態の土圧とも考えられることから、土質力学
で定義される静止土圧(狭義の静止土圧と呼ぶ)を採用
するべきであるとの考え方もあるが、土留め壁を構築す
る過程で地盤の水平方向の応力が変化することも考えら
れるので、狭義の静止土圧をそのまま用いることは適当
ではない。このような観点から、文献4)で提案された
成果を設計用の掘削前の土圧として用いることを提案す
る。文献4)では、粘性土地盤での数多くの現場実測値
を整理し、掘削前の静止土圧の計算式として次式を与え
た。
【0094】 p0=K0γtz=(0.75〜0.82)γtz (17) ここに、p0:掘削前の静止土圧(kN/m2) (2)水平地盤反力係数 この発明で検討した結果を設計に用いる。すなわち掘削
底面より上方の水平地盤反力係数は式(11)に示した
係数αkを式(10)へ代入して求め、掘削底面より下
方の水平地盤反力係数は、図19に示した係数αUとαL
を式(8)に代入して求める。なお、土留め壁表面のせ
ん断抵抗に関しては確立された評価法が存在しないの
で、壁の表面が比較的滑らかな鋼矢板や鋼管矢板ではせ
ん断抵抗を考えないことにする。
【0095】(3)最小土圧 掘削次数、背面側地盤の強度、および土留め壁の曲げ剛
性により、図32に示したβの値を式(4)に代入して
最小土圧を求める。その際、PCは任意の土圧計算点に
おける背面側の最小土圧と、またZCは任意の土圧計算
点の深さと、それぞれ読み替える。なお、1次掘削時お
よび軟弱地盤では2次掘削以降もβ=1としたのは、1
次掘削時では切ばりが設置されていないことを、また軟
弱地盤では2次掘削以降も背面側地盤のアーチ効果が見
込めないことを考慮したものである。
【0096】(4)最大土圧 切ばりやグラウンドアンカーへのプレロードの反力は、
背面側地盤には局部的にしか作用しないので、前記6、
の最小土圧に対する検討から類推すると、背面側地盤が
掘削前の状態で受働状態とならない一般の場合には、R
ankine−R´esalの受働土圧式で代表される
極限土圧より大きな土圧まで抵抗できると考えられる
が、一般の設計実務ではそのような大きな土圧を期待す
る必要性がないので、最大土圧としてRankine−
R´esalの受働土圧式を用いることにする。
【0097】(5)グラウンドアーチによる増加土圧 この土圧は、弾塑性法の計算に使用するのではなく、弾
塑性法により計算された切ばり軸力を補正するために用
いる。すなわち、弾塑性法による切ばり軸力とグラウン
ドアーチに起因する増加土圧による軸力の和(式(5)
と式(6))を設計用切ばり軸力とする。 8.現場実測値と計算値の比較 前節までに、背面側に地盤ばねを有する弾塑性法に適用
するための、背面側地盤の水平地盤反力係数および最小
土圧の設定方法の検討結果を示した。
【0098】ここでは、その適用性を見るために、掘削
面側地盤を改良した掘削現場を対象として、ここで提案
した方法による計算結果と、現場実測値との比較を試み
る。 (1)地盤改良工法を採用した掘削現場での比較 a)比較対象現場の概要 比較の対象として図33に示す2現場(A現場およびB
現場)を選定した。A現場15)は東京下町の軟弱地盤を
GL−19.6mまで掘削する地下鉄工事現場である。
地層構成は地表より20m程度までは沖積層で、その下
はN値が30以上の砂礫層(洪積層)となっていて、掘
削面側はGL−7.68mから最終掘削底面位置までの
10mの範囲を生石灰杭(1.5mピッチの正方形)に
より改良されている。
【0099】土留め壁は、φ450の柱列式地下連続壁
(親杭間隔0.9m)であり、根入れ長は2mで硬い地
盤に根入れされている。土留め支保工は6段の鋼製支保
工(他に路面覆工受桁)と、仮設構造物全体の安全性を
増すために逆巻きした地下1階の床版である。B現場
16)も東京下町の現場で、超高圧地中送電線路の立抗を
築造するために、地表面から21.54mの掘削するも
のである。概略な地層構成は、地表からGL−29.5
mは軟弱な沖積粘性土であり、それ以深はN値20〜4
0程度の洪積層(東京層)となっている。地盤が軟弱で
あることから掘削面側に先行地中ばりを施工することと
し、図33に示したように、GL−10.85m、GL
−13.75m、GL−16.29mを上面とする厚さ
1.5mの範囲およびGL−21.94mを上面とする
厚さ3.0mの範囲を、深層撹拌工法により地盤改良を
施した。
【0100】土留め壁は、厚さt=0.8mの地下連続
壁であり、土留め壁の先端は硬い地盤に根入れされるこ
となく、軟弱地盤中に浮いた状態にある。また、土留め
支保工は鋼製切ばりとなっている。 b)入力値の設定方法 背面側に地盤ばねを有する弾塑性法に入力する背面側地
盤に関する入力値は、前記7.で提案した方法により求
め、掘削面側地盤に関する入力値である、受働土圧、平
衡土圧および水平地盤反力係数は、発明者らの既報の提
6)7)8)に基づいて算定する。
【0101】掘削前の静止土圧係数は、軟弱な粘性土地
盤であることを考えるとK0=0.8とするべきである
が、掘削面側を地盤改良する場合には、地盤改良の施工
により水平方向の圧力が増加することを考慮する必要が
ある。A現場では生石灰杭の施工時に、土留め壁近傍の
圧力解放孔を設けて、土留め壁の変位を制御したと報告
されているので、掘削前の静止土圧はK0=0.8とす
る。また、B現場では文献16)に掘削前の土圧の測定
値が示されていて、この土圧分布を土圧係数に換算する
とほぼK0=1.2となるので、この値を用いる。
【0102】水平地盤反力係数の算定に用いる地盤の変
形係数は、報告に記載がないので次式により算定する。 粘性土層13) E=480c (18a) 砂質土層10) E=2800N (18b) ここに、E:地盤の変形係数(kN/m2) c:地盤の粘着力(改良地盤や砂質土地盤ではc´を用
いる)(kN/m2) N:標準貫入試験のN値 A現場での生石灰杭工法による地盤改良の効果は、次式
で与えられる値の何れか小さい値とする17)
【0103】 c´=2c0 (19a) c´=c0+50 (19b) c´=150 (19c) ここに、c´:改良後の見掛けの粘着力(kN/m2) c0:自然地盤の粘着力(kN/m2) また、B現場での先行地中ばりは脆性的な挙動をすると
考えられるので、この部分を文献18)により脆性材料
として扱う。すなわち、破壊強度はφ=0で粘着力を文
献16)に示された値(c=10tf/m2=98kN
/m2)とし、破壊後の残留強度は有効応力に対してφ
=35°の砂質土(c=0)として、いずれもRank
ine−R´esalの受働土圧式により求める。
【0104】なお、本明細書での提案が粘性土地盤を対
象としているために、埋土と砂質土層を粘性土地盤とみ
なし、その見掛けの粘着力を、掘削前の鉛直圧力σ0
および内部摩擦角φと粘着力cから、c´=σ0tan
φ+cとして算定する。 c)比較結果 掘削面側に地盤改良を施すと、地盤改良時の膨張圧によ
って土留め壁は背面側に変位する。しかし、ここで比較
の対象とした両現場での測定値は、地盤改良を施工した
後の掘削直前の状態を初期状態としたものであることか
ら、比較のための計算も地盤改良後の挙動のみを求め
る。
【0105】A現場の最終掘削時の計算結果と現場実測
値の比較を図34に示す。図中に示した計算値(1)は
本明細書で提案した方法により背面側地盤の入力値を算
定し、その入力値を背面側に地盤ばねを有する弾塑性法
に入力した計算結果である。また、計算値(2)は一般
に広く用いられている掘削面側だけに地盤ばねを有する
弾塑性法による計算結果を示している。この図から、土
留め壁の変形は土留め壁の上部で実測値と計算値(1)
に差が見られるものの、全体として実測値と近似してい
るといえる。なお、この現場では計算値(1)と計算値
(2)とはほぼ等しい値を与えていて、背面側に地盤ば
ねを有する弾塑性法を用いるのではなく、掘削面側だけ
に地盤ばねを有する方法でも、発明者らの既報の提
6)7)8)に基づいて掘削面側の入力値を算定すれば、
比較的精度の高い予測ができるといえる。
【0106】B現場の6次掘削時の計算結果と現場実測
値の比較を図35に示した(計算値(1)と計算値
(2)の定義はA現場と同様)。この図から、計算値
(1)の土留め壁の変形が土留め壁の上部で実測値より
少し大きくなっているものの、全体として実測値と近似
しているといえる。また、計算値(2)は、根入れ部の
受働破壊を生じて大きく変形しているが、これは掘削面
側だけに地盤ばねを有する方法での背面側土圧が、特に
根入れ部で過大であることを意味している。この比較か
ら、地盤改良を施す現場に対して、ここでの提案が有効
であることが確認できた。
【0107】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば
実測値と計算値とがよく一致し、好ましいシミュレーシ
ョンの結果を得ることができる。この結果、掘削土留め
工の安全性が向上し、事故の発生が少ない施工を行うこ
とができる利点が得られる。最後に上述で引用した参考
文献名を列記しておく。 参考文献 1)土木学会:トンネル標準示方書(開削編)・同解
説、1996.12. 2)中村兵次、中沢章:掘削工事における土留め壁応力
解析、土質工学会論文報告集、Vol.12、No.
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pp.9〜14、1986. 4)道路協会:共同溝設計指針、1986.3. 5)中村兵次、平島健一:粘性土地盤における掘削土留
め工の設計用背面側土圧に関する研究、土木学会論文
集、No.504/VI−25、1994.12. 6)中村兵次、平島健一:粘性土地盤における掘削土留
め壁値入れ部の受働土圧に関する研究、土木学会論文
集、No.528/VI−29、1995.12. 7)中村兵次、平島健一:粘性土地盤における掘削土留
め壁値入れ部の水平地盤反力係数に関する研究、土木学
会論文集、No.534/VI−30、1996.3. 8)中村兵次、平島健一:下方に存在する硬い地盤の影
響を考慮した掘削土留め工の水平地盤反力係数の設定方
法の研究、土木学会論文集、No.595/VI−39、
1998.6. 9)Winkler、E.:Die Lehre v.
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it、Prag、pp.182、1867. 10)日本道路協会:道路橋示方書(IV下部構造編)、
1996.12. 11)土木学会:トンネル標準示方書(開削編)・同解
説、pp.86、1986.6. 12)日本国有鉄道東京第一工事局:掘削土留め工の設
計に関する検討報告書、I編仮土留め工、pp.93〜
110、1981.4. 13)西垣好彦:粘土のヤング係数の歪みレベルによる
変化、第26回土木学会年次学術講演会、1971. 14)柳田眞司、渡部留雄、山口伊佐夫、中村兵次、福
島進、水谷進:掘削土留め工の設計用側圧に関する研究
(その1:掘削前の側圧及び側面側側圧)、第16回土
質工学研究発表会、pp.1445〜1448、198
1.5. 15)新井時夫、岸研司:軟弱地盤における立抗の計測
事例、基礎工、Vol.13、No7、pp.75〜8
1、1985.7. 16)増田義孝、入江平門、渡辺吉教:軟弱地盤におけ
る掘削土留め工の現場計測と設計方法について(8号線
湾岸辰巳停車場)、土木学会第41回年次学術講演会、
pp.451〜452、1986. 17)中村兵次、平島健一:掘削面側地盤を脆性材料で
改良した掘削土留め工の応力・変形解析法の提案、土木
学会論文集、No.492/VI−23、1994.6. 18)間瀬淳平、菅澤昭夫、金井隆夫、伊藤勝教:横浜
銀行事務センター新築工事における山止設計及計測管
理、第19回土質工学研究発表会、pp.1125〜1
128、1984. 19)蛇川昌義、中村乙丙、間瀬淳平、澤田一郎:東京
証券取引所改築工事における山留の設計と施工(その
1:新市場館新築工事)、第23回土質工学研究発表
会、pp.1563〜1564、1988.
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の基礎となる有限要素法の計算モデル
を説明するための図。
【図2】この発明の基礎となる有限要素法の計算ケース
を説明するための図。
【図3】基本とする計算ケース[N]の計算条件を示す
ための図。
【図4】掘削に伴う背面側土圧の変化を示した図。
【図5】掘削に伴う土留め壁の水平変位の変化を示した
図。
【図6】背面側の水平地盤反力係数の変形係数に対する
比の値を示した図。
【図7】掘削時の土圧最大減少点における背面側土圧と
補正係数βの関係を説明するための図。
【図8】図7に示した補正係数βと土留め壁の変位δと
の関係を説明するためのグラフ。
【図9】掘削時の最下段切ばりより上方の土圧の増分を
ケース別に取得したデータの一例を例示する図。
【図10】図9に示したデータをグラフ化した図。
【図11】掘削底面より下方の水平地盤反力係数の検証
に用いる計算モデルを説明するための図。
【図12】有限要素法の計算条件を説明するための図。
【図13】有限要素法の荷重と支保工設置位置の例を示
す図。
【図14】地盤の水平変位の例を示すグラフ。
【図15】地盤の水平変位に対するポアソン比の影響を
例示したグラフ。
【図16】地盤の水平変位に対する土留め壁表面のせん
断抵抗の影響を例示したグラフ。
【図17】地盤の水平変位と水平地盤反力係数との間の
関係を例示したグラフ。
【図18】この発明による提案式と有限要素法の計算結
果を比較したグラフ。
【図19】この発明の水平地盤反力係数設定法に用いる
係数αUとαLの値を規定した図。
【図20】掘削底面より上方の水平地盤反力係数の検討
に用いる弾性床上のはり計算モデルを説明するための
図。
【図21】図20に示した計算モデルに用いる諸数値の
一例を説明するための図。
【図22】プレロード作用位置の土留め壁の水平変位量
の例を説明するための図。
【図23】土留め壁の水平変位と地盤の変形係数との関
係を説明するためのグラフ。
【図24】図23と同様のグラフ。
【図25】掘削次数と補正係数αKの値を説明するため
の図。
【図26】最小土圧計算モデルを説明するための図。
【図27】除荷に伴う水平変位量の変化を説明するため
のグラフ。
【図28】最小土圧の検討の計算ケースを例示する図。
【図29】水平方向荷重がRankine−R´esa
lの主働土圧となった時の静止土圧に対する比の値を説
明するための図。
【図30】解放面の中心位置での水平変位量と補正係数
βの関係を説明するためのグラフ。
【図31】背面側土圧と最小土圧との関係を説明するた
めのグラフ。
【図32】最小土圧の計算に用いる補正係数βの値を説
明するための図。
【図33】施工現場の土質条件、構造条件、掘削条件を
説明するための図。
【図34】この発明による水平地盤反力係数と最小土圧
設定方法を適用した計算値と実測値との比較を説明する
ための図。
【図35】図34と同様の図。
【図36】先に提案した掘削工事用シミュレーション装
置を説明するためのブロック図。
【図37】掘削工事のシミュレーション時に入力する土
質条件と、土圧入力値、変位の出力結果を説明するため
の図。
【図38】掘削現場で発生する各部の土圧を説明するた
めの断面図。
【図39】掘削現場で発生する地盤反力と土留め壁の変
位の関係を説明するための図。
【符号の説明】
1 土留め壁 2 背面側 3 掘削面 4 切ばり
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−210075(JP,A) 特開2000−162958(JP,A) 中村兵次 平嶋健一,土木学会論文 集,日本,NO.595,141−158 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 17/04 G06F 17/60 104 G06F 19/00 110

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 A、土留め壁の施工の前に背面側の土質
    を深さ毎に調査して得られた土質条件を記憶する背面側
    土質条件記憶手段と、 上記土留め壁の掘削面側の土質を深さ毎に調査して得ら
    れた土質条件を記憶する掘削面側土質条件記憶手段と、 地盤改良工事施工後の改良地盤の土質条件を記憶する改
    良地盤土質条件記憶手段と、 掘削工事の施工順序を記憶する施工順序記憶手段と、 上記土留め壁の曲げ剛性を記憶する土留め壁の曲げ剛性
    記憶手段と、 上記土留め壁を支持する切ばりの剛性を記憶する切ばり
    剛性記憶手段と、 掘削によって発生する上記土留め壁の水平変位を算出す
    る土留め壁水平変位演算手段と、 上記土留め壁水平変位演算手段で算出した土留め壁の水
    平変位が掘削面側の土に与えられることにより発生する
    掘削面側の反力を算出する掘削面側水平地盤反力算出手
    段と、 この掘削面側水平地盤反力算出手段で算出した水平地盤
    反力をピーク強度と比較し、土の破壊、非破壊を判定す
    る塑性化検出手段と、 塑性化検出手段が土の破壊を検出することにより起動さ
    れ、土の破壊と非破壊の境界点を算出する弾塑性境界点
    検出手段と、 弾塑性境界点検出手段が検出した境界点と掘削側の地盤
    表面との間の土の強度を土の破壊後の上記ピーク強度以
    下の値を持つ残留強度に置換し、再度上記土留め壁水平
    変位演算手段で土留め壁の変位を算出させる地盤強度置
    換手段と、 上記塑性化検出手段で土の非破壊を検出した場合は上記
    土留め壁水平変位演算手段の演算結果をそのまま記憶
    し、塑性化検出手段で土の破壊を検出した場合は、上記
    地盤強度置換手段で置換した土の強度により上記土留め
    壁水平変位演算手段で再度演算し、その再演算結果を記
    憶する最終結果記憶手段と、 土留め壁の応力及び切ばり応力を求め、これを記憶する
    応力記憶手段とによって構成した掘削工事用シミュレー
    ション装置において、B、上記土留め壁の背面側及び掘
    削面側の双方に地盤ばねが存在すると仮定し、地盤の変
    形係数をE、補正係数をαKとした場合に、背面側水平
    地盤反力係数KHをKH=αK・Eによって設定すること
    を特徴とする掘削工事用シミュレーション装置に用いる
    水平地盤反力係数設定方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の水平地盤反力係数設定方
    法において、各掘削時の掘削底面より上方の水平地盤反
    力係数に関して、1次掘削を行う間は上記係数αKを約
    αK=0.090に設定すると共に、2次掘削以降上記
    係数αKを約αK=0.180に設定することを特徴とす
    る掘削工事用シミュレーション装置の水平地盤反力係数
    設定方法。
  3. 【請求項3】 A、土留め壁の施工の前に背面側の土質
    を深さ毎に調査して得られた土質条件を記憶する背面側
    土質条件記憶手段と、 上記土留め壁の掘削面側の土質を深さ毎に調査して得ら
    れた土質条件を記憶する掘削面側土質条件記憶手段と、 地盤改良工事施工後の改良地盤の土質条件を記憶する改
    良地盤土質条件記憶手段と、 掘削工事の施工順序を記憶する施工順序記憶手段と、 上記土留め壁の曲げ剛性を記憶する土留め壁の曲げ剛性
    記憶手段と、 上記土留め壁を支持する切ばりの剛性を記憶する切ばり
    剛性記憶手段と、 掘削によって発生する上記土留め壁の水平変位を算出す
    る土留め壁水平変位演算手段と、 上記土留め壁水平変位演算手段で算出した土留め壁の水
    平変位が掘削面側の土に与えられることにより発生する
    掘削面側の反力を算出する掘削面側水平地盤反力算出手
    段と、 この掘削面側水平地盤反力算出手段で算出した水平地盤
    反力をピーク強度と比較し、土の破壊、非破壊を判定す
    る塑性化検出手段と、 塑性化検出手段が土の破壊を検出することにより起動さ
    れ、土の破壊と非破壊の境界点を算出する弾塑性境界点
    検出手段と、 この弾塑性境界点検出手段が検出した境界点と掘削側の
    地盤表面との間の土の強度を土の破壊後の上記ピーク強
    度以下の値を持つ残留強度に置換し、再度上記土留め壁
    水平変位演算手段で土留め壁の変位を算出させる地盤強
    度置換手段と、 上記塑性化検出手段で土の非破壊を検出した場合は上記
    土留め壁水平変位演算手段の演算結果をそのまま記憶
    し、塑性化検出手段で土の破壊を検出した場合は、上記
    地盤強度置換手段で置換した土の強度により上記土留め
    壁水平変位演算手段で再度演算し、その再演算結果を記
    憶する最終結果記憶手段と、 土留め壁の応力及び切ばり応力を求め、これを記憶する
    応力記憶手段と、 によって構成した掘削工事用シミュレーション装置にお
    いて、 B、上記土留め壁の背面側及び掘削面側の双方に地盤ば
    ねが存在すると仮定し、各掘削時の掘削底面より下方の
    水平地盤反力係数に関して、掘削底面から下部の硬い地
    盤の上面での厚さをH0、係数αU、αL、地盤の変形係
    数をEとした場合、掘削底面位置の背面側水平地盤反力
    係数KHUを KHU=αU・E/H0 土留め壁下端位置の背面側水平地盤反力係数を KHL=αL・E/H0 によって設定することを特徴とする掘削工事用シミュレ
    ーション装置の水平地盤反力係数設定方法。
  4. 【請求項4】 A、土留め壁の施工の前に背面側の土質
    を深さ毎に調査して得られた土質条件を記憶する背面側
    土質条件記憶手段と、 上記土留め壁の掘削面側の土質を深さ毎に調査して得ら
    れた土質条件を記憶する掘削面側土質条件記憶手段と、 地盤改良工事施工後の改良地盤の土質条件を記憶する改
    良地盤土質条件記憶手段と、 掘削工事の施工順序を記憶する施工順序記憶手段と、 上記土留め壁の曲げ剛性を記憶する土留め壁の曲げ剛性
    記憶手段と、 上記土留め壁を支持する切ばりの剛性を記憶する切ばり
    剛性記憶手段と、 掘削によって発生する上記土留め壁の水平変位を算出す
    る土留め壁水平変位演算手段と、 上記土留め壁水平変位演算手段で算出した土留め壁の水
    平変位が掘削面側の土に与えられることにより発生する
    掘削面側の反力を算出する掘削面側水平地盤反力算出手
    段と、 この掘削面側水平地盤反力算出手段で算出した水平地盤
    反力をピーク強度と比較し、土の破壊、非破壊を判定す
    る塑性化検出手段と、 塑性化検出手段が土の破壊を検出することにより起動さ
    れ、土の破壊と非破壊の境界点を算出する弾塑性境界点
    検出手段と、 弾塑性境界点検出手段が検出した境界点と掘削側の地盤
    表面との間の土の強度を土の破壊後の上記ピーク強度以
    下の値を持つ残留強度に置換し、再度上記土留め壁水平
    変位演算手段で土留め壁の変位を算出させる地盤強度置
    換手段と、 上記塑性化検出手段で土の非破壊を検出した場合は上記
    土留め壁水平変位演算手段の演算結果をそのまま記憶
    し、塑性化検出手段で土の破壊を検出した場合は、上記
    地盤強度置換手段で置換した土の強度により上記土留め
    壁水平変位演算手段で再度演算し、その再演算結果を記
    憶する最終結果記憶手段と、 土留め壁の応力及び切ばり応力を求め、これを記憶する
    応力記憶手段とによって構成した掘削工事用シミュレー
    ション装置において、 B、上記土留め壁の背面側及び掘削面側の双方に地盤ば
    ねが存在すると仮定すると共に、任意の土圧計算点の深
    さをZC、この任意の土圧計算点における掘削後の背面
    側土圧をPC、土の単位体積重量をγt、土の粘着力を
    C、補正係数をβとした場合、掘削後の背面側土圧の最
    小値PCを、 PC=βγtC−2C によって設定することを特徴とする掘削工事用シミュレ
    ーション装置の背面側の最小土圧設定方法。
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