JP3351906B2 - タイヤの摩耗状態予測方法 - Google Patents

タイヤの摩耗状態予測方法

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JP3351906B2 JP18040394A JP18040394A JP3351906B2 JP 3351906 B2 JP3351906 B2 JP 3351906B2 JP 18040394 A JP18040394 A JP 18040394A JP 18040394 A JP18040394 A JP 18040394A JP 3351906 B2 JP3351906 B2 JP 3351906B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、タイヤの負荷転動に
よってそこに発生する摩耗状態、とくには不規則摩耗
を、簡易に、しかも正確に予測する方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】タイヤのトレッド表面の不規則摩耗状態
を測定する従来技術としては、たとえば、特開平3−6
7708号公報に開示されたものがある。
【0003】これは、たとえば五色の着色塗料のそれぞ
れを、タイヤのトレッド面に層状に適用し、塗料層をト
レッド表面に接着させるとともに、塗料層同士を相互接
着させたタイヤを、短い距離だけ負荷転動させて塗料層
を摩耗させ、露出した色によってトレッド面の摩耗の度
合を評価するものであり、これによれば、短期間の簡単
な測定で、タイヤの実際の使用時におけるトレッド各部
位の偏摩耗を正確に、かつ容易に予測評価できるとす
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、タイヤのト
レッド部の不規則摩耗は、タイヤが路面上を負荷転動す
る際に陸部表面に作用する摩擦力によってその陸部表面
に生じる、路面に対するスリップ量が、この陸部表面内
で、および/または陸部表面相互間で不均一となること
を主たる原因として発生するものであり、従って、トレ
ッド部、ひいては、タイヤの摩耗状態を正確に予測する
に当っては、陸部表面を、路面等に実際に接触させて、
タイヤの現実の負荷転動状態にできるだけ近似した転動
条件を与えることが必要になる。
【0005】しかるに、前記従来技術では、タイヤのト
レッド表面の全体を複数層の着色塗料層によって被覆し
ており、そのタイヤの負荷転動に当っては、トレッドゴ
ム表面が路面等に直接接触することがないので、この従
来技術をもってしては、トレッド各部の偏摩耗を高い精
度で予測評価することが実質的に不可能であるという問
題があった。
【0006】この発明は、従来技術の有するこのような
問題点を解決することを課題として検討した結果なされ
たものであり、この発明の目的は、タイヤに、それの現
実の負荷転動状態に極めて近似した条件の下での転動を
行わせることにより、トレッド部の摩耗状態を、トレッ
ドゴムのゴム質の影響を含めて高い精度で予測可能なら
しめる、タイヤの摩耗状態予測方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明の、タイヤの摩
耗状態予測方法は、タイヤのトレッド表面に、そのトレ
ッド表面との明度差が大きく、かつトレッド表面の変形
に追従して変形する塗料を、格子状,網目状もしくはト
レッド状に規則的に塗布し、その後、タイヤを、好まし
くは路面上で負荷転動させて、塗布した塗料の摩滅度合
からそのタイヤの摩耗の発生状況、多くは、不規則摩耗
の発生状況を予測するものである。
【0008】ここで好ましくは、塗料の塗布面積を、ト
レッド表面積に対して10〜50%の範囲とし、また好
ましくは、塗料の塗布による格子,網目もしくはドット
の間隔を1〜2mmの範囲とする。そしてさらに好ましく
は、タイヤ周方向での塗料の塗布長さを、タイヤ周長の
1/4〜1/8程度とする。
【0009】
【作用】この摩耗状態予測方法では、タイヤの負荷転動
によって塗料が路面に擦れて摩滅するに当り、格子状,
網目状もしくはドット状に規則的に塗布した塗料の摩滅
量は、トレッド表面、ひいては、それぞれの陸部表面に
発生する、現実の摩擦力に起因するスリップ量に応じて
大きくなるので、塗料のその摩滅状態を観察すること
で、タイヤの摩耗状態、とくには不規則摩耗状況を正確
に予測することができる。
【0010】ここで、塗料の摩滅状態の観察は、目視に
よって直接的に行うことの他、各種の撮影画像を介して
行うこともでき、また、その観察は、摩滅の有無だけを
観る定性観察とする他、摩滅の程度をも考慮して、数値
等をもって摩滅量を評価する定量観察とすることもでき
る。
【0011】ところで、この方法では、塗料を格子状,
網目状もしくはドット状に塗布することで、トレッド表
面それ自体を十分に露出させることができ、この結果と
して、塗料の摩滅に、トレッドゴムの摩擦特性を確実に
反映させることができるので、摩耗状態の予測精度が大
きく向上することになる。
【0012】図1はこのことを例示するグラフであり、
これは、摩擦係数の異なる二種類のゴムに関し、塗料を
トレッド表面にドット状に塗布した場合と、トレッド表
面の全体を塗料で被覆した場合とのそれぞれにつき、塗
料がトレッド表面の摩擦係数に及ぼす影響を調べたもの
である。
【0013】ここで、ゴム種は、SBRおよびNR/B
Rの二種類とし、塗料として、皮靴用塗料スプレー(ア
サヒペン(株)製)の白色を用い、また、塗料のドット
状の塗布は、ドット径を2.0mm、ドット間隔を1.0
mmとすることにより行なった。
【0014】このグラフによれば、トレッド表面を塗料
で完全に被覆した場合には、トレッド表面と路面との間
の摩擦係数は、それぞれのゴム種に個有の摩擦係数に影
響されることなく実質的に一定値となるに対し、塗料を
ドット状に塗布した場合には、トレッド表面と路面との
間のそれぞれの摩擦係数に、塗料を塗布しない場合の摩
擦係数の差とほぼ対応する差が表われることが明らかで
ある。従って、上述した予測方法では、トレッドゴムの
摩擦力に起因してトレッド表面に発生するスリップ量
を、タイヤの現実の負荷転動時におけるそれに十分に近
づけることができ、予測精度を大きく向上させることが
できる。
【0015】ところで、この方法において、塗料の塗布
面積を、トレッド表面積に対して10〜50%の範囲と
した場合には、摩耗状態の予測精度を一層高めることが
できる。いいかえれば、それが10%未満では、格子等
が粗くなりすぎて、詳細な予測が困難となり、一方、5
0%を越えると、トレッド表面の露出量が不足して、ト
レッドゴムの摩擦特性よりもむしろ、塗料の摩擦特性の
影響が大きくなって、正確な予測が困難になる。
【0016】またここで、格子,網目もしくはドットの
間隔を1〜2mmとした場合には、塗料の塗布面積率を高
く維持しつつなお、トレッドパターンにおける偏摩耗の
発生の詳細な予測を十分に可能ならしめることができ
る。
【0017】なおここにおいて、タイヤ周方向での、塗
料の塗布長さを、タイヤ周長の1/4〜1/8程度とし
た場合には、塗料の塗布作業を簡単かつ容易ならしめる
ことができる他、塗膜厚みの均一化を容易に実現するこ
とができる。
【0018】
【実施例】以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図2は、トレッド表面に、塗料をドット状に塗
布したタイヤを示す正面図である。ここにおいて、1は
トレッド踏面部を、2はトレッドセンターに位置する直
線状周方向溝をそれぞれ示し、そして3は傾斜主溝を、
4は傾斜副溝をそれぞれ示す。
【0019】ところで、トレッド表面ひいては、陸部5
の表面への塗料の塗布に当っては、陸部表面の、塗料の
付着を妨げる物質を除去し、併せて、陸部表面積を増加
させて、塗料の付着強度を高めるために、その塗布に先
だってタイヤを慣らし走行もしくは転動させることが好
ましい。
【0020】そこでこの例では、塗料の塗布前に、タイ
ヤを装着した車両を、50km/hで25km走行させ、しか
る後、陸部表面の汚れ等を有機溶剤を用いて除去した。
【0021】その後は、陸部表面に、所要のドット模様
の打抜きを施した型紙を、タイヤ周方向に、20cmの距
離にわたって押当てて、その型紙上から、ウレタン樹脂
を主成分とする、缶入りの皮靴用白色スプレー塗料をス
プレー塗布して、図示のような、多数のドット6からな
るドット模様を形成した。ここで、図示の各ドット6は
2mmの直径を有し、それぞれのドット6は1mmの間隔を
おいて位置する。
【0022】なお、この場合における塗膜厚さは、スプ
レーノズルとトレッド表面との距離、塗布速度、塗布回
数などの塗布条件と、塗膜厚さとの関係を、膜厚計その
他によって予め確認し、その確認結果に基づいてスプレ
ー塗布を行うことによりコントロールすることができ
る。
【0023】このようにして、所要のドット模様を形成
した後は、直射日光のあたらない、風通しのよい日影に
て30分間塗料を乾燥させて、樹脂分を十分に硬化させ
た状態の下で、車両を、50km/hの速度で、25kmの距
離にわたってほぼ直線状に走行させて、それぞれのドッ
ト6の摩滅状態を観察した。
【0024】図3は、このような走行を終えた後のドッ
ト模様を示すタイヤ正面図であり、ドット6の剥げ落ち
た部分が、摩耗が激しくなると予想される部分に相当す
る。ちなみに、1200kmを実車走行した後の、タイヤ
の実際の摩耗状態を観察したところ、この予測結果と良
く一致した。
【0025】ところで、ドット模様等を施したタイヤ
は、それを比較的粗い表面を有するドラム上で負荷転動
させて、ドットの剥げ落ちを観察することもでき、この
ことによれば、一層簡単に摩耗状態を予測することがで
きる。
【0026】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、一色の塗
料をトレッド表面に塗布するだけで、簡単かつ容易にタ
イヤを準備することができる他、準備されたタイヤの、
比較的短い距離の実車走行もしくはドラム試験により、
摩耗状態の予測評価をこれもまた、簡単かつ容易に行う
ことができる。
【0027】しかもここでは、塗料をトレッド表面に、
格子状,網目状もしくはドット状に塗布することで、ト
レッドゴムの表面を十分に露出させることができるの
で、摩耗状態を予測するに際して、トレッドゴムの実際
の摩耗特性の影響を十分に反映させて、高い精度の予測
を行うことができる。
【0028】またここで、塗料の塗布面積を、トレッド
表面積に対して10〜50%とした場合には、摩耗状態
の予測精度を一層高めることができ、そして、格子,網
目もしくはドットの間隔を1〜2mmとした場合には、塗
料の塗布面積率を高く維持しつつなお、トレッドパター
ンにおける偏摩耗の発生の詳細な予測を十分に可能なら
しめることができる。
【0029】さらにまた、タイヤ周方向での、塗料の塗
布長さを、タイヤ周長の1/4〜1/8程度とした場合
には、塗料の塗布作業が、極めて簡単かつ容易となり、
しかも、塗膜厚みの均一性をより確実に実現することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】塗料の、摩擦係数に与える影響を示すグラフで
ある。
【図2】トレッド表面へのドット模様の形成例を示すタ
イヤ正面図である。
【図3】一定距離を実車走行した後のドットの剥げ落ち
状態を示すタイヤ正面図である。
【符号の説明】
1 トレッド踏面部 2 直線状周方向溝 3 傾斜主溝 4 傾斜副溝 5 陸部 6 ドット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01M 17/02 B60C 11/24 G01B 5/00 G01B 21/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タイヤのトレッド表面に、そのトレッド
    表面との明度差が大きく、かつトレッド表面の変形に追
    従して変形する塗料を、格子状,網目状もしくはドット
    状に規則的に塗布し、その後、タイヤを負荷転動させ
    て、前記塗料の摩滅度合からタイヤの摩耗の発生状況を
    予測することを特徴とするタイヤの摩耗状態予測方法。
  2. 【請求項2】 前記塗料の塗布面積を、トレッド表面積
    に対して10〜50%の範囲としてなる請求項1記載の
    摩耗状態予測方法。
  3. 【請求項3】 塗料の塗布による格子,網目もしくはド
    ットの間隔を1〜2mmの範囲としてなる請求項1もしく
    は2記載の摩耗状態予測方法。
  4. 【請求項4】 タイヤ周方向での塗料の塗布長さを、タ
    イヤ周長の1/4〜1/8程度としてなる請求項1〜3
    のいずれかに記載の摩耗状態予測方法。
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JP7322605B2 (ja) * 2019-09-04 2023-08-08 住友ゴム工業株式会社 タイヤの評価方法
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