JP3350695B2 - 天然植物油の脱ガム法 - Google Patents

天然植物油の脱ガム法

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光敏 中嶋
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然植物油からリ
ン脂質や粘液質のガムを膜を用いて除去する脱ガム法に
関する。
【0002】
【従来の技術】大豆油や菜種油等の天然植物油は、油糧
種子を機械的に圧搾したり、ヘキサン等の有機溶媒を用
いて油を抽出し、この後、一連の精製操作を経て食用に
適したものにされる。
【0003】この一連の精製操作のうちの最初の工程が
脱ガムである。この脱ガム工程で油の色を黒っぽくした
り香り消失の原因物質となるリン脂質等のガム成分を除
去している。
【0004】ここで、天然の植物油中には異なるタイプ
のリン脂質が含まれている。即ち、ホスファチジルコリ
ン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホ
スファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジ
ル酸(PA)及びフィトスフィンゴ脂質等である。ま
た、リン脂質は水和性リン脂質と非水和性(親油性)リ
ン脂質とに分けられる。水和性リン脂質は主としてホス
ファチジルコリン(PC)からなり、非水和性リン脂質
は主としてホスファチジル酸(PA)あるいはホスファ
チジルエタノールアミン(PE)のカルシウム塩やマグ
ネシウム塩からなっている。
【0005】工業的に利用されている従来の脱ガム法と
しては、水−脱ガム法および酸−脱ガム法がある。水−
脱ガム法では、高温(60〜75℃)の水または蒸気を
用いた処理によって水和性リン脂質が簡単に油中から取
り除かれる。この処理ではリン脂質は水和性リン脂質と
なり、油に混ざらなくなる。そして、水和性リン脂質と
ガムは沈殿、フィルタリング、遠心分離によって油から
分離される。
【0006】一方、酸−脱ガム法では、リン酸またはク
エン酸を添加することで、非水和性リン脂質を構成する
ホスファチジル酸(PA)あるいはホスファチジルエタ
ノールアミン(PE)のカルシウム塩やマグネシウム塩
の水和性を増加する。しかしながら、この方法で得られ
るレシチンは低品質である。
【0007】上記以外の脱ガム法として、膜法、逆電流
圧搾法、超臨界CO2法、超音波法等が報告されている
が、膜法は他の方法に比較してかなりシンプルであり、
本発明も膜法を改良したものである。
【0008】限外濾過膜を用いたヘキサン−油のミセラ
からの脱ガム法について報告が多数なされている。Lin
et.al.は、ヘキサン耐性を有する膜を用いてヘキサン−
油のミセラからの脱ガム法をベンチスケールで最適化し
ている(Journal of Membrane Science:1997)。
【0009】また、以前我々が行った非多孔質の高分子
複合膜を用いた実験では、リン脂質の阻止率は97.4
〜99.9%に達することが示された。この場合、希釈
等の予備処理を行っておらず、透過油中のリン脂質含有
量は240mg/kg以下であった。上記の膜法によれ
ば、水和性リン脂質のみでなく非水和性リン脂質もほぼ
完全に阻止された。(Proceedings of 4th Internation
al Congress on Membranes and Membrane processes:19
96)
【0010】これらの膜法によって、油中にα−トコフ
ェロール(ビタミンE)を残したまま、色素やリン脂質
に付随する酸化物を効果的に阻止できることも我々は確
認した。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】膜法を除いた他の脱ガ
ム法はいずれも装置が大掛りとなり、消費エネルギー、
環境への温度影響、化学物質の添加、栄養成分や有用物
質の保持等において問題がある。
【0012】一方、非多孔質疎水性膜を用いた方法は他
の方法に比較してシンプルで、リン脂質の選択的阻止率
も高いのであるが、工業的に利用するには透過流束が小
さいという致命的な欠陥がある。しかるに、限外濾過膜
や精密濾過膜を用いた方法は、ヘキサン・ミセラの利用
に限られており、溶媒で希釈しない無溶媒系でのリン脂
質の阻止性能は低いという欠点がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明に係る天然植物油の脱ガム法は、膜法を前提と
し、バッチ式の場合には天然植物油にレシチンと水を添
加するようにし、また濃縮油を循環させる連続式の場合
には、天然植物油または再分離前の濃縮油にレシチンと
水を添加する構成としてもよい。
【0014】前記レシチンはホスファチジルコリン(P
C)でエンリッチされたものを用いることが可能であ
る。このようなレシチンを用いることで、膜によりリン
脂質の阻止も効果的に行うことができる。
【0015】また、前記天然植物油の例としては、大豆
油、菜種油、パーム油、ヒマワリ油が挙げられ、前記膜
としては、例えばポアサイズが30〜1000nmの精
密濾過膜を用い、更に膜の材料としては、ポリエチレン
(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
ポリビニリデンディフロライド(PVDF)等の疎水性
膜の何れかが適当である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
する。 (用意した膜)ポリエチレン精密濾過膜(ポアサイズ3
0nm)は東燃化学から得た。疎水性ポリテトラフルオ
ロエチレン(ポアサイズ100nm、1000nm(F
AWP))、ポリビニリデンディフロライド(PVD
F)(ポアサイズ450nm(HVHP))及び親水性
ポリテトラフルオロエチレン(ポアサイズ100nm、
(JVWP)の精密濾過膜は日本ミリポアから提供され
た。膜はセルに適合するように、直径7.5cm、有効
エリア32cm2の円板状に切断した。
【0017】(膜ユニットの構成)実験は、平膜を組み
込んだテストセル(C40−B:日東電工)を用いて窒
素雰囲気にて行った。テストセルは磁気撹拌装置上にセ
ットし、撹拌用の磁気バーをセル内に投入した。セルと
磁気撹拌装置は温度コントロールされた培養器内にセッ
トし、実験の細かな設定とスキームダイアグラムについ
ては別に決定した。窒素シリンダからなるレギュレータ
を調整することで、テストセルに所定の圧が供給され、
膜ユニットはセルに100gの天然油を供給するバッチ
モードで操作される。圧力、温度及び撹拌バーの回転速
度はそれぞれ、0.3MPa、40℃及び400rpm
とした。透過油は膜サポートの下にあるポートを通して
集められ、集めた透過油が約50gになった時点で実験
を停止する。
【0018】(材料)天然大豆油と菜種油は日本リーバ
から提供された。大豆レシチンは和光純薬(カタログナ
ンバー:124-00835)から得た。適量のレシチンを10
0gの天然油に溶解させた。この油には予め決められた
量の水が加えられ、膜を装填したセルに供給される前に
磁気撹拌装置を用いて1時間撹拌した。
【0019】(分析方法)リンとカルシウムについての
検出は、誘導型プラズマ原子−エミッション スペクト
ロホトメータを用いて行った。ホスファチド及びリン脂
質当量はリン含有物の30ものファクターを計算するこ
とで得た。マグネシウム含有物についての検出は、原子
吸収スペクトロホトメータを用いて行った。油中の個別
のリン脂質の決定は、AOCS法(Ja 7b-91)を用い
たHPLC(高速液体クロマトグラフ)にて行った。
【0020】(パラメータの特性)脱ガムの特性は処理
された油中のリンまたはリン脂質がどれだけ除去された
かによって表される。評価は膜技術についてなされるた
め、見掛け上の阻止率と透過流束も脱ガムの特性を表
す。トータル除去率(TR)は精製油にするために供給
された物質のそれぞれの除去率を含む。有効除去率(E
R)は実際の天然油から精製油になる際の天然油を構成
する各物質の除去率を指す。TRとERは以下の式にて
算出される。 TR(%)=100(CF−CP)/CF・・・・・・・・・・・・・・(1) ER(%)=100(CC−CP)/CC・・・・・・・・・・・・・・(2) ここで、CC、CFおよびCPはそれぞれ、天然植物油、
膜を透過しなかった植物油(以下、濃縮油とする)およ
び膜を透過した植物油(以下、透過油とする)の容量で
ある。バッチプロセスでは濃縮油の濃度は操作中常に変
化し、除去率は見掛け上の除去率である。各透過物を集
めた見掛け上の除去率(RO)は、以下の等式を用いて
決定される。 RO(%)=100[ln(CRf/CRi)]/ln(Wi/Wf)・・・・・・・・(3) ここで、CRiとCRfは、保持物(残留物)を構成する各
物質の最初と最後の容量(mg/kg-oil)であり、WiとW
fは保持物(残留物)を構成する各物質の最初と最後の
重量(kg-oil)である。
【0021】(実験結果と考察)大豆から油をヘキサン
抽出し、ヘキサンを除いた大豆粗油を対象にして、精密
濾過膜を用いて濾過した場合のリン脂質の阻止率は、精
密濾過膜のポアサイズが10,20,30nmの場合、
それぞれ、12.1、9.8及び8.7%であった。リ
ン脂質のミセルは膜のポアサイズよりも小さく、リン脂
質の阻止率は低かった。本実験において、天然の大豆油
に水を0.5%及び1.0%添加し、これをポリエチレ
ン膜に通したところ、それぞれ、85.9%と87.2
%の阻止率を示した。対応する透過油のリン含有量は、
それぞれ、56mg/kg及び51mg/kgであった。従来の遠
心分離法の場合、処理油のリン含有量は60mg/kgと2
00mg/kgの間である。
【0022】特性値を更に高めるため、レシチンの添加
を試みた。実験は、少量のレシチンを天然の大豆粗油に
添加した。レシチンと水の割合が異なる4種類の添加物
を用いた場合の、天然の大豆油中、濃縮油及び透過油中
のリン含有量、リン脂質の合計除去率(TR)、リン脂
質の有効除去率(ER)、リン脂質の見かけの除去率
(RO)を(表1)に示す。
【0023】
【表1】
【0024】全てのケースにおいて、リン脂質の有効除
去率(ER)はかなり高い(84.5〜94.5%)。
水の添加量を一定(1%)にし、レシチンの添加量を
2.1%から4.0%にすると、リン脂質の有効除去率
(ER)は84.5%から94.5%に上昇し、透過油
のリン含有量は57mg/kgから20mg/kgに減少した。
【0025】しかしながら、レシチンの添加量を6.2
%に増やすと、リン脂質の有効除去率(ER)が94.
5%から92.5%に僅かに減少し、これに伴って、透
過油のリン含有量が20mg/kgから28mg/kgへ僅かに増
加した。
【0026】レシチンの一定量添加(4%)では、リン
脂質の除去率と透過油のリン含有量の減少量は、水の添
加量を1%としても2%としてもそれほど変わらない。
そこで、レシチン4%、水1%を固定し、天然油の品質
と異なる膜の評価を行った。
【0027】(脱ガムに対する天然油の質の影響)リ
ン、カルシウム及びマグネシウム含有量と、各含有量の
除去率を以下の(表2)に示す。本実験で使用した天然
大豆粗油と菜種粗油のリン脂質の含有量は、それぞれ、
0.84〜2.0%及び0.79〜1.13%であっ
た。この値は、一般的な大豆粗油の含有範囲1.5〜
2.1%と菜種粗油の含有範囲1.0〜1.5%に近
い。
【0028】
【表2】
【0029】本膜法において、リン脂質の阻止率は、大
豆粗油と菜種粗油においてそれぞれ95.9〜98.2
%及び91.3〜95.3%であった。大豆粗油におい
ては、リン脂質の有効除去率(ER)も殆ど同じで、菜
種粗油においては、リン脂質の有効除去率(ER)はリ
ン脂質の量と天然油の品質によって変化した。これを上
記の(表2)に示した。
【0030】透過油のリン含有量については、大豆粗油
の場合は20〜58mg/kgの範囲で変化し、 菜種粗油の
場合は63〜94mg/kgの範囲で変化した。添加したレ
シチンは水和が早く進行するリン脂質を含んでおり、膜
はそれらリン脂質をを直ちに阻止する。このことは、実
験が精製された大豆粗油について行われた際に添加され
たレシチンがすべて阻止されるという事実から明らかで
ある。
【0031】天然油中の水和性が低いか若しくは水和が
ゆっくり進行するリン脂質の濃度はリン脂質の有効除去
率(ER)と透過油のリン含有量に影響を及ぼす可能性
がある。ここで、水和性が低いか若しくは水和がゆっく
り進行するリン脂質としては、例えば、ホスファチジル
エタノールアミン(PE)、ホスファチジル酸(PA)
及びフィトスフィンゴ脂質、PEまたはPAのカルシウ
ム塩またはマグネシウム塩などがある。
【0032】マグネシウムはカルシウムよりも除去され
る割合が比較的大きい。このことはリン脂質のうちマグ
ネシウム塩はカルシウム塩よりも容易に水和されること
を意味する。
【0033】菜種粗油においては、大豆粗油に比べてリ
ン脂質の除去率が低い。これは菜種粗油中のカルシウム
とマグネシウムの割合が高いため、非水和性塩の割合が
多くなっているからと思われる。脱ガム特性は、リン脂
質の総量だけでなく天然の植物油中に最初から含まれる
非水和性リン脂質の割合によっても左右される。
【0034】(工業的に脱ガムされた油の膜処理特性)
従来の方法で脱ガムされた大豆粗油で、リン脂質の含有
量が異なる2種類のグレードのものについて本発明の膜
による脱ガム処理を行った。リンの除去率、カルシウム
とマグネシウムの含有量を(表3)に示す。
【0035】
【表3】
【0036】レシチンの添加量を4.3%とし水の添加
量を1.0%としたときのリン脂質の有効除去率(E
R)は70.9%であった。添加量を倍にした場合も、
リン脂質のカルシウム塩とマグネシウム塩の割合が高い
脱ガムされた油に対してはリン脂質の有効除去率(E
R)は56.0%と低くなることが分る。
【0037】しかも、この場合の透過油中のリン脂質濃
度は、大豆粗油を膜処理した場合の透過油に比べて若干
高くなっている。これは、従来法で脱ガムされた油中で
は水和の速度が遅いリン脂質が殆どを占めているからと
考えられる。従来の脱ガムプロセスにおいては、水和性
リン脂質は除去されており、脱ガムされた油中には非水
和性リン脂質が主として含まれる。
【0038】モル分率(Mg+Ca)/Pは従来の工業的
な脱ガム処理の前よりも後の方が大きくなったとの報告
がなされている。従来法で脱ガム処理された2種類の油
のモル分率(Mg+Ca)/Pの値は、それぞれ0.5と
0.9であり、(表2)に示した4種類の大豆油のモル
分率(Mg+Ca)/Pの値は約0.3であった。カルシ
ウムとマグネシウムのリン含有物に対する高い割合は、
工業的に脱ガムされた油中に非水和性リン脂質の量が多
いことを示し、脱ガム特性に影響を及ぼす。そこで、プ
ロセスの経済的な観点からは、本膜法は直接天然粗油に
適用する方が、従来法で脱ガム処理された油に適用する
よりも好ましいといえる。
【0039】(水和されやすいリン脂質の役割)天然粗
油中、濃縮油および透過油のそれぞれのリン脂質の量、
ホスファチジルコリン(PC)とリン脂質の除去量を
(表4)に示す。
【0040】
【表4】
【0041】異なるリン脂質、即ち、ホスファチジルコ
リン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、
ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチ
ジル酸(PA)の水和率は任意のスケールを100とし
て、それぞれ100,44,16および8.5との報告
がある。PEとPAのカルシウム塩の水和性は上記のス
ケールに基づくと、極めて小さく、1よりも小さい。ま
た、水和したリン脂質は他の水和していないリン脂質を
包み込む性質があるとの報告もある。
【0042】HPLC(高速液体クロマトグラフ)の分
析では、透過油中のホスファチジルコリン(PC)の含
有量は、大豆油中のトータルのリン脂質量に対して極め
て低く5.7%、同じく菜種油中のトータルのリン脂質
量に対しても極めて低く1.3%であった(表4)。そ
のため、トータルのリン脂質を完全に除去するには不十
分であると考えられる。
【0043】ホスファチジルエタノールアミン(PE)
やホスファチジル酸(PA)のような水和の遅いリン脂
質はトータルのリン脂質の35〜38%であった。ホス
ファチジルイノシトール(PI)の割合は実験的には求
められていないが、PEとPAの間と予想される。他の
リゾ化合物の割合はトータルのリン脂質の34〜46%
になる。
【0044】PAとPEは、PCとの相互作用によって
それ自身のみの場合と比べて油中においてより水和性が
増す。この膜プロセスにあっては、水和の前にレシチン
を添加することによって水和されやすいリン脂質の量を
増加し、その結果、一連の膜処理にて電解質を使用する
ことなくリン脂質の除去率を高め得るようにした。水和
されたリン脂質は膜で阻止され簡単に除去される。
【0045】濃縮油側でのホスファチジルコリン(P
C)を増加せしめるべく、レシチンの代りにPCでエン
リッチされたレシチンを用いる。PCでエンリッチされ
たレシチンは、大豆油レシチンのアセトン不溶解画分の
中のエタノール溶解画分からエタノールを蒸発させて得
られる。
【0046】PCでエンリッチされたレシチンを膜プロ
セスで使用すると、トータルのレシチンの要求量を下げ
ることができる。菜種粗油の場合、PCでエンリッチさ
れたレシチンの添加量は2.1%であり、これと同等の
リン脂質の有効除去率(ER)と透過油側でのリン含有
量を得るには4.1%のレシチンを加える必要がある。
【0047】結果的に、本膜法によればホスファチジル
コリン(PC)の殆どを阻止することができ、トータル
のリン脂質除去率は98.5%以上となった。
【0048】(異なる膜の特性)天然粗油中、濃縮油中
及び透過油中のリン、カルシウム、マグネシウムの含有
割合を(表5)に示す。
【0049】
【表5】
【0050】使用した各精密濾過膜は異なる材料からで
きている。即ち、PE、PTFE及びPVDFは濃縮油
の粒子に対して異なるサイズのポアを有しているが、リ
ン脂質の阻止に関しては極めて類似した振舞いを見せ
た。
【0051】疎水性膜は一般的に油のような水を含まな
いものの処理に適している。しかしながら、親水性のP
TFE膜(ポアサイズ:100nm)は、同ポアサイズ
の疎水性膜と同程度のリン脂質の阻止率を示すととも
に、同程度の透過流束を示す。膜のポアサイズを30n
mから100nmにすると、大豆油の透過流束は3〜4
倍上昇する。ポアサイズが100nmを超えると、大豆
油の透過流束には顕著な変化は見られなくなる。
【0052】菜種油は大豆油に比較すると透過流束が大
きく、膜のポアサイズが30nmのときで1.2倍程大
きく、ポアサイズが450nmのときで1.9倍程大き
い。透過流束の値は工業的に採用できるレベルにある。
リン脂質の阻止率は天然粗油の品質とタイプ、同様に濃
縮油中でのリン脂質の構成に依存することが分る。
【0053】(大豆粗油に対する半連続の膜式脱ガムの
実験)膜プロセスにおいて要求される特性を発揮するた
めに必要とされる水和性リン脂質の除去について半連続
の実験をいくつか行った。要求される特性とは即ちリン
脂質の有効除去率(ER)と阻止率であり、これらを
(表6)に示す。
【0054】
【表6】
【0055】実験においては、50gの油が膜を透過し
た後に、セルを減圧し、膜ユニットの運転再開前に50
gの新たな天然油を残りの部分に追加した。このステッ
プは3回連続して行うとともに1回毎に透過油を回収し
た。最初の3回の透過油中のリン含有量はそれぞれ2
0,71及び206mg/kgであり、リン脂質の有効除去
率(ER)はそれぞれ92.8%、74.4%及び2
6.2%であった。リン脂質の有効除去率(ER)の漸
減は、追加した新たな天然粗油中に存在するリン脂質の
水和に有効な水の量が不足していたからと推察される。
【0056】一方、他の実験では、1回目の透過油が回
収された後に、新たに追加する50gの天然油に1.1
gのレシチンと0.5gの水を加えた。最初の3回目ま
でに回収した透過油中のリン含有量はそれぞれ28,3
0及び40mg/kgであり、リン脂質の有効除去率(E
R)はそれぞれ90.0%、89.1%及び85.8%
であった。
【0057】更に別の実験では、1回目の透過油を回収
した後に、新たに追加する50gの天然油に1.0gの
水を加えた。最初の3回目までに回収した透過油中のリ
ン含有量はそれぞれ43,40及び42mg/kgであり、
リン脂質の有効除去率(ER)はそれぞれ84.6%、
85.6%及び84.8%であった。
【0058】水の添加は濃縮油中のリン脂質の水和に有
効であり、連続処理におけるリン脂質の除去が可能にな
った。濃縮油中のリン脂質が水和性リン脂質になること
で、電解質の添加なくして濃縮能力を高め、膜プロセス
における脱ガム効率を向上できる。この試みは、プロセ
ス中で得られるレシチンの質と量の向上を導き出す。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、天然の大豆粗油や菜種
粗油等の植物油を精密濾過膜を用いて脱ガムするにあた
り、レシチンと水を添加することで、電解質を添加する
ことなく、リン脂質の阻止率を高め、且つ透過流束を大
きくし、工業的利用を可能とした。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−35709(JP,A) 特開 平2−255896(JP,A) 特開 昭58−93798(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C11B 3/00 C11B 3/16 C11B 5/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 膜を介して天然植物油をガム成分を含む
    濃縮油とガム成分を除去された透過油に分離する脱ガム
    法において、前記天然植物油にホスファチジルコリン
    (PC)にてエンリッチされたレシチンと水を添加する
    ことを特徴とする天然油脂の脱ガム法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の脱ガム法において、
    記膜は疎水性のポリエチレン(PE)または疎水性のポ
    リテトラフルオロエチレン(PTFE)でああり、ポア
    サイズが30〜100nmであることを特徴とする天然
    油脂の脱ガム法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の脱ガム法において、前
    記天然植物油は、大豆油、菜種油、パーム油またはヒマ
    ワリ油の何れかであることを特徴とする天然油脂の脱ガ
    ム法。
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