JP3349833B2 - ケーブルクレーンの運転方法 - Google Patents

ケーブルクレーンの運転方法

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JP3349833B2
JP3349833B2 JP21739094A JP21739094A JP3349833B2 JP 3349833 B2 JP3349833 B2 JP 3349833B2 JP 21739094 A JP21739094 A JP 21739094A JP 21739094 A JP21739094 A JP 21739094A JP 3349833 B2 JP3349833 B2 JP 3349833B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、最短経路の算出と振れ
止めパターンとを用いるケーブルクレーンの運転方法に
係り、特に、安全な経路が設定でき、位置精度と振れ止
め精度とを共に向上でき、障害物の変化にも対応できる
ケーブルクレーンの運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ケーブルクレーンは、図15に示される
ように、巻上げロープ151によってバケット152を
昇降するトロリ153と、機械塔154と副塔155と
の間に掛け渡されトロリ153を伝わせる主ロープ15
6と、主ロープ156に添えられトロリ153を横行さ
せる横行ロープ157とを有する。横行ロープ157
は、一端がトロリ153に固定され、その固定箇所から
主ロープ156に沿って副塔155に至り、副塔155
に設けたローラ158に掛けられ、主ロープ156の上
方を戻されて機械塔154に至り、機械塔154の横行
ドラム159に巻き回され、機械塔154から主ロープ
156に沿ってトロリ153まで延ばされて、反対端が
トロリ153に固定されている。横行ドラム159を回
転させると、横行ロープ157が一方では巻き取られ他
方では繰り出される。これにより、トロリ153から副
塔155までの横行ロープ156の長さと機械塔154
からトロリ153までの横行ロープ156の長さとを増
減させ、トロリ153を機械塔154と副塔155との
間で移動させることができる。また、巻上げロープ15
1は、一端が副塔155に固定され、その固定箇所から
主ロープ156に沿ってトロリ153に至り、トロリ内
のローラ160に掛けられて下方へ垂らされ、バケット
152のローラ161に掛けられて上方へ立ち上げら
れ、トロリ内の別のローラ162に掛けられ、このロー
ラ162から主ロープ156に沿って機械塔154に至
り、機械塔154の巻上げドラム163に巻き取られて
いる。巻上げドラム163を回転させることにより、巻
上げロープ151の垂下量を増減してバケット152を
昇降することができる。トロリ153が横行しても巻上
げロープ151の垂下量には影響がない。巻上げロープ
151の駆動と横行ロープ157の駆動とを並行するこ
とにより、トロリ153を一定速度で横行させつつバケ
ットを一定速度で昇降させて高所にある供給源より低所
にある主ロープ沿いの供給先へバケット内の荷を運搬す
ることができる。
【0003】ケーブルクレーンにあっては、トロリ横行
の加速を行うとバケットが振り子の作用により振れてし
まう。この振り子運動はバケットが到着した後も続くの
でバケットへの内容物の出し入れを困難にし、危険な場
合もある。この荷振れ止めの方法として、振り子の周期
を利用した方法が知られている。この方法は、吊り下げ
部分を単振り子と仮定し、巻上げロープ長、即ち振り子
の長さから振り子の半周期τを求める。
【0004】一度、トロリ横行の加速を行った後、時間
τが経過してから再び加速すると、最初の加速で生じた
バケットの振れが、2段目の加速によって相殺され、振
れが止まる。この方法を、二段階加速法と呼び、時間T
を二段階加速タイミングと呼ぶ。二段階加速タイミング
は巻上げロープ長によって一意的に決まる。なお、加速
はトロリ横行を開始するときとトロリを停止するとき
(減速)とに必要になるので、二段階加速タイミングに
よる速度変化を時間に沿って表したパターンは図12に
示されるように、二重の台形状を呈する。
【0005】図14は、その制御装置を示している。ま
ず、位置計算装置141によって現在位置(例えば供給
源)から目的位置(供給先)にバケットを移動させるた
めに必要な横行ドラム、巻上げドラム、走行モータ(主
ロープを側方に走行させる場合)の駆動量を計算する。
次に、振止めパターン生成装置143によって、バケッ
トの振れをとめるための横行速度パターンを計算する。
この振止めパターンは前述のように巻上げロープ長によ
って決定されるバケットの固有振動数から算出する。そ
のため、振止めパターン生成装置143には、予め設定
した巻下げ開始点(往路の場合)から計算されるおおよ
その巻上げロープ長をデータとして与える。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術には以
下の問題がある。
【0007】1)巻下げ開始点を固定しているため、横
行に要する時間(横行時間)に比べ巻下げに要する時間
(巻下げ時間)が短い場合、図12に示されるように、
巻下げが終わっても横行が終わっておらず、図13に示
されるように、バケットが作業現場を低い高さで移動す
ることになり危険である。
【0008】2)横行の減速開始時間と減速開始時の巻
上げロープ長とを同時に求めることができないため、ど
ちらかに誤差が生じる。前者は横行の停止位置の精度、
従って、運搬の位置精度に関係し、後者は振れ止め精度
に関係する。
【0009】3)主ロープの下に障害物がある場合、こ
れを避けて経路を設定しなくてはならないが、例えばコ
ンクリート打設に使用する場合、打設が進むに従って障
害物が成長し、このような障害物に対応できない。
【0010】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決
し、安全な経路が設定でき、位置精度と振れ止め精度と
を共に向上でき、障害物の変化にも対応できるケーブル
クレーンの運転方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、掛け渡された主ロープ上でトロリを一定速
度で横行させつつそのトロリより巻上げロープで吊り下
げたバケットを一定速度で昇降させて高所にある供給源
より低所にある主ロープ沿いの供給先へバケット内の荷
を運搬し、横行の開始・終了時に荷振れを相殺するため
の段階加速・減速を行うケーブルクレーンにおいて、往
復の横行時間と巻下げ/巻上げ時間とを予測し、往路で
、段階加速終了から横行終了までの時間が巻下げ時間
より長い場合、まず横行を開始した後、横行と巻下げと
が同時に終了するように巻下げを開始し、巻下げ時間が
段階加速終了から横行終了までの時間より長い場合、ま
ず横行を開始して横行の段階加速のあと巻下げを開始
し、復路では、横行開始から段階減速開始までの時間
巻上げ時間より長い場合、横行と巻上げとを同時に開始
し、巻上げ時間が横行開始から段階減速開始までの時間
より長い場合、まず巻上げを開始した後、巻上げが終了
するときに横行の段階減速に入るように横行を開始する
ものである。
【0012】上記複路で、横行の段階加速の間は巻上げ
の速度を半減してもよい。
【0013】バケットの位置を表す幾何平面に供給源か
ら昇降なしで横行させた場合のバケットの軌跡と供給先
直上に立てた鉛直線とを描き、横行速度と昇降速度との
比による傾斜を有する直線を上記軌跡に段階加速終了点
より供給先側で交わりかつ上記鉛直線に供給先より上側
で交わるように描き、これらの交点を巻下げ開始点及び
段階減速がないものとした仮の横行終了点とし、この仮
の横行終了点での仮の巻上げロープ長を求め、この仮の
巻上げロープ長を用いて仮の段階減速開始点を算出し、
この仮の段階減速開始点と上記仮の横行終了点とを結ぶ
線分を上記直線と鉛直線とを結ぶように平行移動し、平
行移動で得た交点を段階減速開始点及び横行終了点と
し、供給源−段階加速終了点−巻下げ開始点−段階減速
開始点−横行終了点−供給先を繋ぐ往路の経路を定めて
もよい。
【0014】主ロープ沿いに障害物の高さを記憶してお
き、この記憶に基づいて上記幾何平面に障害物の頂点を
配置し、これらの障害物の頂点が上記直線を越えないよ
うに上記直線を平行移動させてもよい。
【0015】主ロープを側方に走行させて二次元に展開
された供給先に荷を運搬する場合、走行方向沿いの障害
物のうち走行範囲内で最高の障害物を選び、その頂点を
主ロープ沿いに上記幾何平面に配置し、これらの障害物
の頂点が上記直線を越えないように上記直線を平行移動
させてもよい。
【0016】
【作用】供給源は固定であり、供給先が与えられれば、
横行速度及び昇降速度は加減速時を除けば一定であるか
ら、横行距離と高低差とから往復の横行時間と巻下げ/
巻上げ時間とを予測することができる。
【0017】図6に示されるように、横行時間内の速度
変化は、横行開始(段階加速開始)61、段階加速終了
62、段階減速開始63、横行終了64となる。
【0018】往路では、段階加速終了から横行終了まで
の時間が巻下げ時間より長い場合、まず横行を開始す
る。もちろん、このとき段階加速が行われる。段階加速
中に巻上げロープ長が変化しないので振止めが容易であ
る。その後、横行と巻下げとが同時に終了するように巻
下げを開始する。図6において、巻下げ開始66、巻下
げ終了67となり、横行中に巻下げが開始され、横行と
巻下げとが同時に終了しバケットが供給先に到着する。
これによりバケットが作業現場を低い高さで移動するこ
とがなくなる(図13)。
【0019】巻下げ時間が段階加速終了から横行終了ま
での時間より長い場合、まず横行を開始し、横行の段階
加速を行う。段階加速中に巻上げロープ長が変化しない
ので振止めが容易である。段階加速のあと巻下げを開始
する。図6において、巻下げ開始68、巻下げ終了65
となり、横行が先に終了し、巻下げのみでバケットが供
給先に到着する。
【0020】復路では、横行開始から段階減速開始まで
の時間が巻上げ時間より長い場合、横行と巻上げとを同
時に開始する。往路の場合と同様に、バケットが作業現
場を低い高さで移動することがない。巻上げが先に終了
し、その後は横行のみで供給源に到着する。段階減速中
の巻上げロープ長は一定となる。
【0021】巻上げ時間が横行開始から段階減速開始ま
での時間より長い場合、まず昇降を開始する。その後、
巻上げが終了するときに横行の段階減速に入るように横
行を開始する。従って、巻上げ中に横行が開始され、巻
上げが終了してから段階減速となり、段階減速中の巻上
げロープ長は一定となる。
【0022】このとき複路では、バケットが軽いので巻
上げ速度が速くなる傾向がある。巻上げ速度は遅いほう
が振止めが容易であるから、振止めを行う横行の段階加
速の間は巻上げの速度を半減するとよい。
【0023】さて、上記の方法にあっては、バケットの
経路決定には横行開始と昇降開始との時間的ずれが重要
となる。即ち、往路では横行開始から巻下げ開始までの
時間であり、複路では巻上げ開始から横行開始までの時
間である。ここでは、往路において、横行終了時の巻上
げロープ長を最初に求め、巻上げロープがその長さにな
るための時間を予測した横行終了時間から減じて上記ず
れの時間を算出する。また、複路において横行開始時の
巻上げロープ長を最初に求め、巻上げに必要な時間を横
行終了時間から減じて上記ずれの時間を算出する。これ
は、段階加速タイミングが巻上げロープ長に関係してい
るため、バケットを所望の目的位置に位置決めするに際
して段階加速・減速開始時間が変化すると段階加速・減
速開始時の巻上げロープ長が変化するということを防止
することを目的としている。
【0024】このためには、幾何計算を用いるのがよ
い。即ち、幾何計算では、バケットの位置を表す図3の
ような幾何平面を用意する。図3において、この幾何平
面は主ロープに沿った鉛直平面に相当し、まず、水平線
301、無負荷時の主ロープ302、有負荷時の主ロー
プ303、供給源304から昇降なしで横行させた場合
のバケットの軌跡305、供給先306直上に立てた鉛
直線307が描かれている。横行開始時には段階加速が
行われ、その間は巻下げは行わないから、往路の最初の
経路は軌跡305に重なることになる。
【0025】次に、横行速度と昇降速度とはそれぞれ一
定であるから横行と昇降とを同時に行うとバケットは両
速度の比による傾斜を有する直線を通ることになる。そ
こで、その直線308を軌跡305に段階加速終了点3
09より供給先側で交わりかつ鉛直線307に供給先3
06より上側で交わるように描く。これによって生じる
2つの交点を、ひとつは巻下げ開始点310とし、他は
段階減速がないものとした仮の横行終了点311とす
る。段階加速終了点309と巻下げ開始点310とは一
致させてよい。
【0026】次に、仮の横行終了点311での仮の巻上
げロープ長l´を求める。この仮の巻上げロープ長l´
を用いて振止めのための減速タイミングを算出する。こ
の減速タイミングは仮のものであり、仮の段階減速開始
点312が得られる。仮の段階減速開始点312から仮
の横行終了点311までの傾斜が急になっているのは段
階減速中の横行速度が半減するからである。仮の減速タ
イミングによると、巻下げ開始点が313になってしま
う。もし、このまま経路として採用すると、巻下げ開始
点が309から313まで遅れたために運転時間が長く
なってしまう。そこで、仮の段階減速開始点312と仮
の横行終了点311とを結ぶ線分314を直線308と
鉛直線307とを結ぶように平行移動する。この平行移
動で得た2つの交点を、ひとつは段階減速開始点315
とし、他は横行終了点316とする。
【0027】供給源304−段階加速終了点309(巻
下げ開始点310)−段階減速開始点315−横行終了
点316−供給先306を繋ぐ往路の経路が定まる。
【0028】主ロープ沿いに障害物の高さを記憶してお
き、図4に示されるように、この記憶に基づいて上記幾
何平面に障害物の頂点(x印)を配置する。段階加速終
了点309を通る直線308aを描くと、これらの障害
物の頂点が直線308aを越えてしまう。そこで、直線
308aを平行移動させて直線401とする。いちばん
直線401に近い障害物の頂点402を含む全ての障害
物の頂点は、直線401を越えていない。従って、この
直線401を用いた経路は障害物を回避でき、最短時間
で運転できかつ振止めを有する経路となる。
【0029】主ロープを側方に走行させて二次元に展開
された供給先に荷を運搬する場合、横行、昇降、走行が
同時に行われる。障害物の高さは走行方向沿いにも変化
がある。横行、走行が同時に行われることによりバケッ
トは、上から見てほぼ斜めに移動することになるが、横
行速度と走行速度との比率は一定でないため、軌跡は直
線でない。従って、どの障害物が回避対象になるか分か
らない。そこで、走行方向沿いの障害物のうち走行範囲
内で最高の障害物を選び、その頂点を主ロープ沿いに上
記幾何平面に配置する。これにより側方から見た回避対
象になりうる最高の障害物が配置されたことになる。こ
れらの障害物の頂点が図4の直線401を越えないよう
に直線308aを平行移動させる。この直線401を用
いた経路は走行が加わっても全ての障害物を回避する経
路となる。
【0030】
【実施例】以下本発明の一実施例を添付図面に基づいて
詳述する。
【0031】本発明は図15で説明したケーブルクレー
ンに適用される。このケーブルクレーンはコンクリート
打設に使用されるもので、バンカーライン(供給源)で
コンクリートを供給されたバケットを任意の打設地点
(供給先)に移動する往路の動作と、打設地点から空バ
ケットをバンカーラインに移動する復路の動作とを繰り
返し行うものである。
【0032】本発明に係るケーブルクレーンの運転制御
装置は、図1に示されるように、位置計算装置1、経路
計算装置2、振止めパターン生成装置3及び位置決め装
置4から構成される。位置計算装置1は現在のモータ回
転数と目的位置とを入力とする。現在のモータ回転数
は、横行ドラム及び巻上げドラムの駆動モータの回転し
た回数であり、バケットの現在位置を表す。往路ではバ
ンカーラインが現在位置、打設地点が目的位置となり、
復路では打設地点が現在位置、バンカーラインが目的位
置となる。位置計算装置1は、現在のモータ回転数をも
とに、目的位置にバケットを移動させるために必要なモ
ータ回転数を計算し、横行時間と巻下げ/巻上げ時間と
を予測するものである。経路計算装置2は、位置計算装
置1の出力のほかに、オペレータ操作履歴とを入力とす
る。なお、本実施例では障害物の位置は打設地点を主ロ
ープ沿いに所定間隔でブロックに区画して表し、かつ障
害物の高さは所定打設量を1単位として表している。オ
ペレータ操作履歴はオペレータが手動運転したときの経
路を記憶しておいたものである。経路計算装置2は、バ
ケットの軌道を予測し、このバケットの予測軌道と障害
物情報などから横行ドラム、巻上げドラムの動作タイミ
ングを計算するものであり、一回目は振止めを行わない
場合のバケットの予測軌道について計算し、二回目は振
止めパターン生成装置から得た振止めパターンを行う場
合のバケットの予測軌道について計算する。振止めパタ
ーン生成装置は、トロリの横行位置や巻上げロープ長か
ら二段階加速のタイミングなどを計算するものである。
位置決め装置は振止めパターン生成装置から送られる振
止めパターン(速度パターン)を横行位置が目的位置に
一致するように整形するものである。
【0033】図2において、オペレータ操作履歴は、手
動運転学習モード時にオペレータの手動運転によるバケ
ットの軌跡が一定時間間隔でサンプリングされ、バケッ
ト位置(x印)として示される。ただし、サンプリング
されたバケット位置が障害物ブロックよりも低い場合に
は障害物ブロックの高さをサンプリング値とする。この
オペレータ操作履歴を使用することにより自動運転時に
は手動運転した軌跡より上を通るようになる。
【0034】ケーブルクレーンの経路を設定する手順を
往路について説明する。
【0035】まず、振止めを考慮しない速度パターン
でのロープ長lを算出する。図3に示されるように、段
階加速終了点309を始点として横行・巻下げが同時に
行われている状態でのバケットの軌跡による直線308
を描く。ただし、図4に示されるように直線308aよ
りも障害物402が上にある場合には直線401を描
く。また、横行終了時のトロリ位置が中央よりも遠い場
合には図5に示されるように、主ロープのサグ(弛み)
が中央で変化するため直線501,502を用いる。
【0036】この直線308,401,502と鉛直線
307とが交わる点311より巻上げロープ長l´を求
める。ただし、l´が供給先に到達したときの巻上げロ
ープ長l0 よりも長いときは、l0 をl´とする。
【0037】l´を用いて振止めのための減速タイミ
ングTdを算出する。図3では仮の段階減速開始点31
2を求めることに相当する。
【0038】減速タイミングTdを用いて巻上げロー
プ長を修正する。即ち、減速タイミングTd中の横行速
度が通常の半分であるため、この間だけバケットの軌跡
の直線は傾斜が2倍となる。その影響で巻下げ開始点が
313になる。図3の斜線部に障害物がないことを確認
し、昇降速度vyを用い、l=l´+vy×Tdとす
る。これが求める横行終了時の巻上げロープ長lであ
る。図3では線分314を平行移動することに相当す
る。この結果、巻下げ開始点は310(段階加速終了点
309)に戻ることになる。
【0039】巻下げ開始点310から横行終了点31
6までの巻下げに必要な時間Tを算出する。
【0040】横行終了の時間から上記巻下げに必要な
時間Tを引いた時間に巻下げを開始するものとする。
【0041】この後、lの変化にともなって再びTdを
算出し、さらに横行終了位置を供給先位置にあわせるた
めに段階減速開始時間を変化させるが、振止めパターン
と巻上げロープ長との関係に変化がないので、振止め精
度が悪くなることはない。
【0042】複路の経路を設定する手順は往路の場合と
ほぼ同様であり、横行開始時の巻上げロープ長を計算
し、これをもとに横行開始時間を決定する。ただし、複
路では振止め精度を補うために段階加速中は巻上げ速度
を半分にしている。このため、バケットの軌跡は傾斜が
2倍にはならず、の手順が省略できる。
【0043】障害物は打設されたブロックの高さとして
表される。ブロックの高さはオペレータの手動運転履歴
から設定する。
【0044】主ロープを側方に走行させるケーブルクレ
ーンでは、図11(a)に示されるように、障害物の位
置は打設地点を主ロープ沿い及び走行方向沿いに所定間
隔でブロックに区画して表す。点Aから点Bへの移動を
行うとき、点Aと点Bとを対角とした四角形に含まれる
ブロック群について、走行方向にあるブロックのうち高
さの高いほうを障害物ブロックとして経路計算を行う。
例えば、ブロック#2の高さが10m、ブロック#8の
高さが20mであればブロック#8を障害物ブロックと
する。従って、図11(b)に示されるように、ブロッ
ク#1,#8,#9,#4,#11,#6が障害物ブロッ
クとなる。
【0045】次に、実際の動作例を説明する。図7〜図
11は、それぞれ(a)が横行速度vx、巻下げ又は巻
上げ速度vyの変化を示し、(b)がバケット152及
び巻上げロープ151の軌跡を示している。71は障害
物ブロックである。
【0046】図7(a)に示されるように、段階加速終
了から横行終了までの時間が巻下げ時間より長い場合、
横行と巻下げとがほぼ同時に終了している。その軌跡は
図7(b)に示されるように、低い位置を横行しないの
で、障害物に接触しにくい軌跡となっている。また、減
速開始時の巻上げロープ長が最小であるため減速タイミ
ング時間が最小となり、横行時間が最小となっている。
【0047】図8(a)に示されるように、巻下げ時間
段階加速終了から横行終了までの時間より長い場合、
段階加速終了とほぼ同時に巻下げを開始している。その
軌跡は図8(b)に示されるようになり、巻下げ終了ま
での時間が最小となっている。実際には、巻下げ開始が
段階加速終了よりもコンマ数秒遅れるが、十分に小さい
誤差である。
【0048】図9(a),図9(b)に示されるよう
に、往路における障害物回避では、障害物を回避しつ
つ、巻下げ終了までの時間が最小となっている。
【0049】また、図10(a),図10(b)に示さ
れるように、複路における障害物回避では、障害物を回
避しつつ、巻上げ終了までの時間が最小となっている。
巻上げ速度パターンは、横行の段階加速中、巻上げ速度
が半分になるパターンとなっている。
【0050】以上説明したように、本発明によれば、巻
下げ開始点が横行終了点からの相対時間に基づいて設定
されるので、位置精度を上げるために位置決め装置によ
って減速時間を変化させても、振止めの精度に影響がな
い。また、振止めの精度や位置決め精度を維持したまま
作業時間を最小とする速度パターンを生成できる。さら
に、障害物を回避する速度パターンを生成することによ
って安全性が高まる。
【0051】
【発明の効果】本発明は次の如き優れた効果を発揮す
る。
【0052】(1)バケットが作業現場を低い高さで移
動することがない安全な経路が設定できる。
【0053】(2)位置精度と振れ止め精度とを共に向
上できるので、所望の供給先に確実にバケットを移動さ
せ、ただちに荷を取り出すことができる。
【0054】(3)障害物の情報を記憶しているので障
害物を回避できると共に障害物の変化にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すケーブルクレーンの運
転制御装置の構成図である。
【図2】本発明に用いる障害物ブロックの概念図であ
る。
【図3】本発明のバケットの軌跡の算出に用いる幾何平
面図である。
【図4】本発明のバケットの軌跡の算出に用いる幾何平
面図である。
【図5】本発明のバケットの軌跡の算出に用いる幾何平
面図である。
【図6】本発明の横行及び巻下げの速度パターン図であ
る。
【図7】本発明を実施したときの(a)横行及び巻下げ
の速度パターン図、(b)ケーブルクレーンの側面図で
ある。
【図8】本発明を実施したときの(a)横行及び巻下げ
の速度パターン図、(b)ケーブルクレーンの側面図で
ある。
【図9】本発明を実施したときの(a)横行及び巻下げ
の速度パターン図、(b)ケーブルクレーンの側面図で
ある。
【図10】本発明を実施したときの(a)横行及び巻下
げの速度パターン図、(b)ケーブルクレーンの側面図
である。
【図11】走行を行うケーブルクレーンにおける(a)
供給先の平面図、(b)側面図である。
【図12】従来の横行及び巻下げの速度パターン図であ
る。
【図13】本発明及び従来のケーブルクレーンの軌跡図
である。
【図14】従来のケーブルクレーンの運転制御装置の構
成図である。
【図15】ケーブルクレーンの構造図である。
【符号の説明】
1 位置計算装置 2 経路計算装置 3 振止めパターン生成装置 4 位置決め装置 304 供給源 306 供給先 309 段階加速終了点 310 巻下げ開始点 315 段階減速開始点 316 横行終了点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村山 茂樹 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川 島播磨重工業株式会社 東二テクニカル センター内 (72)発明者 三好 保馬 東京都江東区毛利一丁目19番10号 石川 島播磨重工業株式会社 江東事務所内 (72)発明者 清水 孝和 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川 島播磨重工業株式会社 東二テクニカル センター内 (72)発明者 本多 史明 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川 島播磨重工業株式会社 東二テクニカル センター内 (56)参考文献 特開 平6−115875(JP,A) 特開 昭63−247297(JP,A) 特開 昭59−203015(JP,A) 特開 昭48−88644(JP,A) 実開 昭62−153280(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B66C 13/22 B66C 13/48 B66C 21/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 掛け渡された主ロープ上でトロリを一定
    速度で横行させつつそのトロリより巻上げロープで吊り
    下げたバケットを一定速度で昇降させて高所にある供給
    源より低所にある主ロープ沿いの供給先へバケット内の
    荷を運搬し、横行の開始・終了時に荷振れを相殺するた
    めの段階加速・減速を行うケーブルクレーンにおいて、
    往復の横行時間と巻下げ/巻上げ時間とを予測し、往路
    では、段階加速終了から横行終了までの時間が巻下げ時
    間より長い場合、まず横行を開始した後、横行と巻下げ
    とが同時に終了するように巻下げを開始し、巻下げ時間
    段階加速終了から横行終了までの時間より長い場合、
    まず横行を開始して横行の段階加速のあと巻下げを開始
    し、複路では、横行開始から段階減速開始までの時間
    巻上げ時間より長い場合、横行と巻上げとを同時に開始
    し、巻上げ時間が横行開始から段階減速開始までの時間
    より長い場合、まず巻上げを開始した後、巻上げが終了
    するときに横行の段階減速に入るように横行を開始する
    ことを特徴とするケーブルクレーンの運転方法。
  2. 【請求項2】 上記複路で、横行の段階加速の間は巻上
    げの速度を半減することを特徴とする請求項1記載のケ
    ーブルクレーンの運転方法。
  3. 【請求項3】 バケットの位置を表す幾何平面に供給源
    から昇降なしで横行させた場合のバケットの軌跡と供給
    先直上に立てた鉛直線とを描き、横行速度と昇降速度と
    の比による傾斜を有する直線を上記軌跡に段階加速終了
    点より供給先側で交わりかつ上記鉛直線に供給先より上
    側で交わるように描き、これらの交点を巻下げ開始点及
    び段階減速がないものとした仮の横行終了点とし、この
    仮の横行終了点での仮の巻上げロープ長を求め、この仮
    の巻上げロープ長を用いて仮の段階減速開始点を算出
    し、この仮の段階減速開始点と上記仮の横行終了点とを
    結ぶ線分を上記直線と鉛直線とを結ぶように平行移動
    し、平行移動で得た交点を段階減速開始点及び横行終了
    点とし、供給源−段階加速終了点−巻下げ開始点−段階
    減速開始点−横行終了点−供給先を繋ぐ往路の経路を定
    めることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブルク
    レーンの運転方法。
  4. 【請求項4】 主ロープ沿いに障害物の高さを記憶して
    おき、この記憶に基づいて上記幾何平面に障害物の頂点
    を配置し、これらの障害物の頂点が上記直線を越えない
    ように上記直線を平行移動させることを特徴とする請求
    項3記載のケーブルクレーンの運転方法。
  5. 【請求項5】 主ロープを側方に走行させて二次元に展
    開された供給先に荷を運搬する場合、走行方向沿いの障
    害物のうち走行範囲内で最高の障害物を選び、その頂点
    を主ロープ沿いに上記幾何平面に配置し、これらの障害
    物の頂点が上記直線を越えないように上記直線を平行移
    動させることを特徴とする請求項4記載のケーブルクレ
    ーンの運転方法。
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