JP3343842B2 - 接着剤との接着性および耐パウダリング性に優れたアルカリ可溶型樹脂皮膜被覆亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents

接着剤との接着性および耐パウダリング性に優れたアルカリ可溶型樹脂皮膜被覆亜鉛系めっき鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、部材に加工後、接着剤
を部分的に塗布し、その後アルカリ脱脂する工程で部材
を処理する用途に好適な亜鉛系めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来技術】自動車車体には、亜鉛系めっき鋼板製の部
材を組み込んだ部品が使用されているが、この部品の自
動車メ−カ−における製造は鉄鋼メ−カ−から防錆油を
塗布した亜鉛系めっき鋼板を購入して、防錆油が付着し
たままプレス加工することにより部材を製造した後、そ
の部材を脱脂せずに部品に組み込み、その後、部品全体
を一括脱脂して、リン酸塩処理、電着塗装を施す方法で
行われている。ここで、主に使用されている亜鉛系めっ
き鋼板は溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼
板、溶融Zn−Al合金めっき鋼板、電気Zn−Ni合
金めっき鋼板、電気Zn−Fe合金めっき鋼板などであ
る。
【0003】このような部品製造において、亜鉛系めっ
き鋼板製部材の組み込みはスポット溶接だけでなく、接
着剤による接合で応力を分散させることも行われてい
る。例えば、フ−ド、トランクリッド等の部品は外板と
補強材の内板との接合をスポット溶接ばかりでなく走行
中に生じる振動音防止のため、防錆油と接着性を有する
塩化ビニル系樹脂の接着剤を接合部に塗布している。ま
た、ドアパネルでもヘミング加工部の内外板接合シ−ル
性を高めるため、接合には同様のエポキシ系や塩化ビニ
ル系樹脂の接着剤を塗布して、内外板を圧着させた後、
スポット溶接する方法で行われている。このため、この
ような部品に使用する部材には接着剤による接着性を必
要とする。
【0004】ところで、部材製造に使用する亜鉛系めっ
き鋼板には、車体外部が寒冷地の冬季では道路に散布さ
れる腐食性の凍結防止剤にさらされるため、耐久性向上
の目的で厚目付のものを使用していたが、亜鉛系めつき
鋼板が厚目付であると、防錆油では潤滑性が不十分なた
め、プレス加工時にめっき層表面が金型により削られ、
めっき層が粉末状に剥離するパウダリング現象が顕著に
なる。このため、部材の加工部耐食性が低下したり、金
型の手入れが頻繁になったりしていた。
【0005】そこで、めっき層表面に潤滑性、塗装性に
優れた水分散性もしくは水溶解性のウレタン系樹脂、ア
クリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂皮膜、または
これにポリオレフィン樹脂やフッ素樹脂などの樹脂粉末
を添加して、潤滑性をさらに高めたものを薄く形成し、
加工時のパウダリング現象を防止するとともに、加工後
には樹脂皮膜を除去することなくスポット溶接、アルカ
リ脱脂、電着塗装を可能にする方法が従来より種々提案
されている。この方法での樹脂皮膜はアルカリ脱脂し
て、電着塗装の下地として利用するものであるため、耐
水性、耐アルカリ性を必要とする関係上、樹脂には架橋
密度が高く、遊離酸基の存在するものは酸価の低いもの
を使用していた。
【0006】このような樹脂皮膜を形成した部材を接着
剤で部品に組み込んで部材が接着剤と十分接着されるた
めには、接着剤中の溶剤で樹脂皮膜が膨潤して、接着剤
用樹脂と物理的に混合一体になり、また、樹脂皮膜表面
に接着剤用樹脂との相互作用が可能な官能基を充分に有
する必要があるが、アクリル系樹脂皮膜のように酸価の
低いものでは、エポキシ系樹脂のような極性接着剤を使
用した場合と塩化ビニル系樹脂のような無極性接着剤を
使用した場合とでは接着性が変化してしまい、ウレタン
系樹脂のように遊離酸基の存在しないものでは接着性が
劣るという欠点があった。また、電着塗料には樹脂皮膜
との密着性が劣るものもあるため、電着塗料の種類が限
定されるという欠点もあった。さらに、樹脂皮膜中にポ
リオレフィンやフッ素樹脂等の合成樹脂粉末が添加され
ていると、合成樹脂粉末によっては電着塗膜が剥離する
という欠点もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの欠
点を解決した樹脂皮膜被覆亜鉛系めっき鋼板を提供する
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、表面にウレタ
ン樹脂の皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板において、前
記ウレタン樹脂として、分子中にカルボキシル基を有す
るウレタン樹脂を用い、しかも、このカルボキシル基含
有ウレタン樹脂の酸価が40〜70なる範囲内であり、
25℃における該樹脂の弾性率が1000〜40000
N/cm2なる範囲内であるものとし、かつ、該カルボ
キシル基含有ウレタン樹脂により形成される皮膜を0.
5〜5μmの厚さにした。そして、皮膜には必要に応じ
て平均粒径0.1〜3μmの合成樹脂粉末を1〜25質
量%含有させた。
【0009】
【作用】従来の樹脂皮膜は、亜鉛系めっき鋼板を部材に
プレス加工した後も付着したままにして、電着塗装の下
地として利用していたが、本発明者らは、部品に組み立
て後電着塗装前に通常実施されるアルカリ脱脂で樹脂皮
膜を溶解除去して、樹脂皮膜をプレス加工の時にのみ利
用する方法を案出した。このようにすれば、電着塗装は
亜鉛系めっき鋼板に直接塗装するので、電着塗料は限定
されず、また、樹脂皮膜に電着塗膜の密着性を阻害する
樹脂粉末が添加されていても、樹脂粉末は樹脂皮膜とと
もに電着塗装前に除去されてしまうので、電着塗膜の密
着性を向上させることができる。
【0010】しかし、加工性の優れたウレタン系樹脂を
使用して、上記のような方法を実施するに当たっては、
部品に組み込みの際に使用してある接着剤塗布部分の樹
脂皮膜がアルカリ脱脂の時に溶解されないように接着剤
が樹脂皮膜に強固に接着して、接着剤と樹脂皮膜との間
にアルカリ脱脂剤の侵入を防止する必要がある。このた
め、樹脂皮膜は接着剤の極性、無極性に関係なく接着性
が良好なものにする必要がある。
【0011】そこで、本発明者らは、電着塗装前のアル
カリ脱脂で溶解除去可能で、接着剤の種類に関係なく接
着性の優れた樹脂皮膜を開発すべく種々検討した結果、
ウレタン系樹脂に分子中に遊離カルボキシル基を有する
ものを用いて、樹脂の酸価と弾性率を調整すれば可能で
あることを見いだした。
【0012】一般に、樹脂の分子中に遊離カルボキシル
基を導入して、その酸価を大きくすれば、樹脂皮膜はア
ルカリ脱脂で溶解除去し易くなることは知られている
が、樹脂皮膜に対する接着剤の接着性は接着剤が極性、
無極性であるかにより適性酸価の範囲が異なり、接着剤
が極性の場合には樹脂皮膜の酸価が大きい程接着剤の極
性基と樹脂皮膜のカルボキシル基の相互作用により接着
性は良好になる。しかし、接着剤が無極性の場合は酸価
の大きい極性樹脂との接着性は劣り、樹脂皮膜の酸価は
小さい方がよいのである。なお、酸価とはウレタン樹脂
1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸
化カリウムのmg数をいう。
【0013】そこで、本発明者らは、アルカリ溶解性と
接着剤の極性、無極性に関係なく接着性の良好な酸価の
範囲を検討した結果、酸価を40〜70の範囲にすれば
よいことを見いだしたのである。酸価が40以上であれ
ば、アルカリ脱脂で溶解除去可能で、極性接着剤の接着
性も良好であるが、70を超えると、無極性接着剤の接
着性が不充分となる。特に、アルカリ溶解性と接着剤の
接着性を調和させるには40〜60の範囲が望ましい。
なお、樹脂をカルボキシル基を有するものにするには後
述のようにカルボキシル基含有親水性化合物をジイソシ
アネ−トと反応させることにより行えばよい。
【0014】本発明では、樹脂皮膜の酸価のほかに弾性
率も調整するのであるが、これはプレス加工の際の亜鉛
系めっき鋼板のパウダリング現象を抑制し、プレス加工
後も樹脂皮膜の密着性が良好に維持されるようにするた
めである。プレス加工でパウダリング現象を抑制するに
は、樹脂皮膜の延性を大きくして、絞りに追従させるこ
とにより金型と亜鉛系めっき鋼板とが直接接触しないよ
うにするとともに、プレス加工後も樹脂皮膜が亜鉛系め
っき鋼板に密着して、アルカリ脱脂の際に処理液が侵入
しないようにする必要がある。
【0015】このためには、樹脂皮膜の弾性率を小さく
すればよいのであるが、あまり小さくすると、樹脂皮膜
の粘着性が増加して、耐ブロッキング性が低下し、プレ
ス加工の際、潤滑性を発揮しなくなる。本発明者らはこ
の耐ブロッキング性と延性とを調和させるのに樹脂皮膜
の弾性率を25℃にて1000〜40000N/cm2
にすればよいことを見いだした。弾性率が1000N/
cm2未満であると、耐ブロッキング性が不充分であ
り、40000N/cm2を超えると、延性が小さくな
って、プレス加工時に樹脂皮膜が剥離する場合がある。
【0016】分子中にカルボキシル基を有し、酸価が4
0〜70、25℃での弾性率が1000〜40000N
/cm2のウレタン樹脂の具体例としては、(A)カル
ボキシル基含有親水性化合物、(B)有機ポリイソシア
ネ−ト化合物、(C)ポリエ−テルポリオ−ル、ポリエ
ステルポリオ−ルおよびポリエ−テルポリエステルポリ
オ−ルからなる群から選ばれたポリオ−ル、(D)低分
子量ポリヒドロキシル化合物および/または(E)ポリ
アミン系鎖伸長剤を反応させることにより得られるもの
である。
【0017】ここで、カルボキシル基含有親水性化合物
としては、2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸、2,2−
ジメチロ−ル酪酸、2,2−ジメチロ−ル吉草酸、ジオ
キシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジ
アミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物およびこれら
の誘導体が挙げられる。
【0018】また、有機ポリイソシアネ−ト化合物とし
ては、フェニレンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシ
アネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ナフタ
レンジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネ−トやヘ
キサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジジイソシアネ
−ト、シクロヘキサンジイソシアネ−ト、イソホロンジ
イソシアネ−ト、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ
−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、テトラメチルキシ
リレンジイソシアネ−ト等の脂肪族あるいは脂環族ジイ
ソシアネ−トが挙げられる。
【0019】ポリオ−ルとしては、ポリエステル系ジオ
−ル、ポリエ−テル系ジオ−ル、ポリエ−テルポリエス
テル系ポリオ−ルの単独あるいは混合物が挙げられる。
ポリエステル系ジオ−ルとしては、エチレングリコ−
ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロピレン
グリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、1,4−ブチ
レングリコ−ル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジ
オ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5
−ペンタンジオ−ル、1,8−オクタンジオ−ル、ジエ
チレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ジプロピ
レングリコ−ル、トリプロピレングリコ−ル、シクロヘ
キサン−1,4−ジオ−ル、シクロヘキサン−1,4−ジ
メタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等の1種または2種
以上の低分子量ジオ−ルとコハク酸、マレイン酸、アジ
ピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼラ
イン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフ
タル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等のジカルボン酸の
1種または2種以上との縮合物等が挙げられる。また、
前記低分子量ジオ−ルを開始剤とするγ−ブチロラクト
ン、ε−カプロラクトン等の開環重合物が挙げられる。
さらにまた、前記低分子量ジオ−ルの1種または2種以
上とジアリルカ−ボネ−トまたはジアルキルカ−ボネ−
トあるいはアルキレンカ−ボネ−ト等との縮合により得
られるポリ(アルキレンカ−ボネ−ト)ジオ−ルが挙げ
られる。ポリエ−テル系ジオ−ルとしては、例えば、前
記低分子量ジオ−ルの1種または2種以上を開始剤とす
るエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレ
ンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラ
ンの1種または2種以上の開環重合物が挙げられる。こ
れらのジオ−ルの数平均分子量は通常500〜5000
である。
【0020】低分子量ポリヒドロキシ化合物としては、
前記ポリエステル系ジオ−ルの製造用原料である低分子
量ジオ−ルの1種または2種以上が含まれる。
【0021】ポリアミン系鎖伸長剤としては、エチレン
ジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,2−プロピ
レンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、
ピペラジン、N,N′−ジアミノピペラジン、2−メチ
ルピペラジン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメ
タン、イソフォロンジアミン等の1種または2種以上の
混合物が挙げられる。
【0022】ウレタン樹脂の合成方法は、特に制限がな
く、本発明の効果を損なわない限り溶液重合、乳化重
合、懸濁重合等公知慣用の方法でよい。形態について
も、特に制限はないものの、溶液、水分散、溶剤分散状
のものが塗装作業の観点から好ましく、樹脂粘度の観点
から分散状のものがより好ましい。
【0023】樹脂皮膜の厚みは、0.5μm未満である
と、一次防錆性が不充分であり、また、鋼板の粗度が大
きい場合には鋼板表面を充分被覆できないため、プレス
加工性が劣る。一方、5μmを超えると、部材を接着剤
で接着して、部品にした後のアルカリ脱脂で樹脂皮膜の
一部が処理液により侵食されて、接着性が低下する。こ
のため、樹脂皮膜の厚みは、0.5〜5μm、好ましく
は1〜3μmにする。
【0024】アルカリ脱脂で樹脂皮膜を短時間に溶解除
去するには、樹脂の重量平均分子量を5000〜500
00、望ましくは5000〜20000の範囲に調整す
るとよい。重量平均分子量が5000未満であると、樹
脂合成の際にカルボキシル基含有モノマ−があまり共重
合せず、50000を超えると、酸価の低い場合、アル
カリ溶解性が劣ってしまう。
【0025】樹脂皮膜には、ウレタン樹脂と相溶しない
合成樹脂粉末を潤滑剤として添加すると、潤滑性が向上
し、無塗油でプレス加工が可能になる。しかし、合成樹
脂粉末の添加量が樹脂皮膜の1質量%未満であると、潤
滑性が充分でなく、25質量%を超えると、処理液中へ
の安定な分散が困難になり、ゲル化してしまう。このた
め、樹脂皮膜への添加量は1〜25質量%、好ましくは
1〜10質量%にする。また、合成樹脂粉末は平均粒径
が0.1μm未満であると、樹脂皮膜の摩擦係数は小さ
くなるが、潤滑性があまり得られず、3μmを超える
と、プレス加工時に合成樹脂粉末が脱落し、潤滑性を発
揮しない。このため、平均粒径は0.1〜3μmにす
る。
【0026】合成樹脂粉末の種類としては、特に限定は
ないが、本発明の主旨からして溶融温度が60℃以上
で、表面張力の低いものが好ましい。このようなものと
しては、フッ素樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等
のようなポリオレフィン樹脂、ABSやポリスチレン等
のスチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂や塩化ビニリデン樹
脂等のようなハロゲン化樹脂が挙げられる。これらの樹
脂は1種または2種以上の混合物として使用してもよい
が、合成樹脂粉末の一部は樹脂皮膜より突出させて、潤
滑性が高くなるようにする。合成樹脂粉末の形態には特
に制限はなく、所定の粒子径に機械粉砕したもの、化学
的にあるいは機械的に媒体中に分散懸濁液にしたもので
もよい。
【0027】亜鉛系めっき鋼板表面への樹脂皮膜の形成
は、処理液を塗布することにより行うが、処理液中には
樹脂皮膜を均一にするため、増粘剤、消泡剤、レベリン
グ剤、湿潤剤、架橋剤、防腐防ばい剤、チクソ化剤、撥
水剤、顔料分散剤、凍結安定剤、紫外線吸収剤、酸化防
止剤、皮張り防止剤、難燃剤、ワックス等の公知慣用の
各種添加剤を状態に応じて適宜添加することも可能であ
る。
【0028】亜鉛系めっき鋼板表面への樹脂皮膜形成方
法は、特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂のエマル
ジョン処理液を刷毛、ロ−ラ−、ロ−ルコ−タ−、フロ
−コ−タ−、シャワ−リング、スプレ−のような塗装方
法から経済性と生産性を考慮して塗装方法を選択し、鋼
板に均一皮膜が得られるように塗装した後、常温乾燥、
加熱強制乾燥等で乾燥すればよい。
【0029】
【実施例】
実施例1 2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸、ヘキサメチレンジ
イソシアネ−ト、アジピン酸、1,4−ブチレングリコ
−ル、エチレングリコ−ル系ポリエステルポリオ−ルの
各成分を変化させて、反応させることにより酸価、弾性
率および重量平均分子量を調整したカルボキシル基含有
ウレタン樹脂のエマルジョン処理液をまず準備した。そ
して、次に、それらの処理液を合金化溶融亜鉛めっき鋼
板(母材;Ti添加極低炭素鋼、板厚;0.7mm、片
面めっき付着量;65g/m2)の表面にバ−コ−タ−
で塗布して、オ−ブンで乾燥し、厚さの異なる樹脂皮膜
を形成した。表1に得られた樹脂皮膜被覆亜鉛系めっき
鋼板を示す。次に、この鋼板について下記の特性を調査
した。この結果を表2に示す。
【0030】(1)皮膜の溶解性試験 試験片をNaOH溶液(pH;12、液温;40℃)に
浸漬して、溶液中で30秒間軽くゆすった後静置して、
皮膜を溶解除去できるまでに要する時間が1分未満のも
のを記号◎、1分以上、2分未満のものを記号○、2分
以上、5分未満のものを記号△、5分以上のものを記号
×で評価した。
【0031】(2)接着性試験 (A)エポキシ系接着剤塗布時の接着性 2枚の試験片(30mm×100mm)の片方の試験片
の樹脂皮膜形成面にエポキシ系接着剤を一定面積(30
mm×50mm)塗布して、他方の試験片の樹脂皮膜形
成面と合わせた後、硬化させて、接着した。次に、接着
した試験片を上記皮膜の溶解性試験で使用したNaOH
溶液に2分間浸漬した後、接着面の引張せん断強度を測
定して、強度が4.0kN以上のものを記号◎、3.5k
N以上、4.0kN未満のものを記号○、3.0kN以
上、3.5kN未満のものを記号△、3.0kN未満のも
のを記号×で評価した。
【0032】(B)塩化ビニル系接着剤塗布時の接着性 2枚の試験片(25mm×200mm)の片方の試験片
の樹脂皮膜形成面に塩化ビニル系接着剤を一定面積(2
5mm×125mm)塗布して、他方の試験片の樹脂皮
膜形成面と合わせた後、硬化させて、試験片の先端を両
側に直角に折り曲げて、T字型にした。次に、接着した
試験片を前記皮膜の溶解性試験で使用したNaOH溶液
に2分間浸漬した後、折り曲げた試験片先端を互いに反
対方向に引張る方法でT型剥離接着強度を測定して、強
度が120N以上のものを記号◎、100N以上、12
0N未満のものを記号○、80N以上、100N未満の
ものを記号△、80N未満のものを記号×で評価した。
【0033】(3)耐パウダリング性 円板試験片を用いて、円筒絞り加工試験(ポンチ径;4
0mmφ、絞り比;1.90、しわ押さえ力;5.0×1
3N、絞り高さ;20mm)を行い、試験後の試験片
重量減少量が20mg未満のものを記号◎、20mg以
上、35mg未満のものを記号○、35mg以上、50
mg未満のものを記号△、50mg以上のものを記号×
で評価した。
【0034】(4)耐ブロッキング性 樹脂皮膜面同士が合わさるように試験片を重ねて、温度
40℃、加圧力1200N/cm2の状態で24時間放
置した後、試験片が自然に離れたものを記号◎、試験片
を強制的に引き剥がし、樹脂皮膜表面に剥離が認められ
ないものを記号○、一部剥離が認められたものを記号
△、全面にブロッキングによる皮膜剥離が認められたも
のを記号×で評価した。
【0035】(5)一時防錆性 試験片(70mm×150mm)に塩水噴霧試験(塩
水;5質量%NaCl溶液、温度;35℃)を2時間実
施した後、試験片の表面を観察して、白錆が認められな
いものを記号◎、白錆発生面積が20%未満のものを記
号○、白錆発生面積が20%以上のものを記号×で評価
した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】実施例2 2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸、イソホロンジイソ
シアネ−ト、イソフタル酸、無水フタル酸、2,2−ジ
メチル−1,3−プロパングリコ−ル、1,4−ブチレン
グリコ−ル系ポリエステルポリオ−ルの各成分を反応さ
せて、酸価が60、弾性率が8200N/cm2、重量
平均分子量が15000のカルボキシル基含有ウレタン
樹脂を合成して、そのエマルジョン処理液にポリエチレ
ン樹脂粉末および/またはフッ素樹脂粉末を添加した
後、ガラス容器に密封して、40℃の雰囲気中に10〜
20日間放置した。そして、この樹脂のエマルジョン処
理液を実施例1と同一の亜鉛系めっき鋼板表面にバ−コ
−タ−で塗布して、オ−ブンで乾燥し、樹脂皮膜を形成
した。表3にエマルジョン処理液と得られた樹脂皮膜被
覆亜鉛系めっき鋼板に下記試験を実施したときの結果を
示す。
【0039】(1)処理液の安定性 処理液をガラス容器中に密封して、40℃の雰囲気中に
放置する方法で増粘やゲル化の認められる日数を観察
し、20日間放置しても増粘やゲル化の認められないも
のを記号◎、10日間までは増粘やゲル化が生じないも
のを記号○、10日間経過以前に増粘やゲル化の生じた
ものを記号×で評価した。
【0040】(2)加工性 円板試験片を用いて、円筒絞り加工試験(ポンチ径;4
0mmφ、絞り比;2.40、しわ押さえ力;1.0×1
4N)を行い、加工前の試験片径をL1、加工後の試験
片平均径をL2とした場合のL2/L1が0.88未満のも
のを記号◎、0.88〜0.90未満のものを記号○、
0.90〜0.94未満のものを記号△、0.94超のも
のを記号×で評価した。
【0041】
【表3】 (注1)合成樹脂粉末の種類はAがポリエチレン樹脂粉末、Bがフッ素樹脂粉末 、Cが両樹脂粉末の混合物(A/B=9/1)である。 (注2)合成樹脂粉末の添加量は質量%であり、平均粒径はμmである。 (注3)比較例21および27は処理液ゲル化のため、塗布困難であった。
【0042】
【発明の効果】以上のように、本発明の樹脂皮膜被覆亜
鉛系めっき鋼板は、樹脂皮膜の弾性率を25℃で100
0〜40000N/cm2にして、延性、耐ブロッキン
グ性を良好にしてあるので、プレス加工時に耐パウダリ
ング現象が発生しにくい。また、皮膜の樹脂には遊離カ
ルボキシル基を有するものを用いて、その酸価を40〜
70に調整してあるので、接着剤が極性、無極性であっ
ても接着性に優れ、しかも、電着塗装前のアルカリ溶液
で溶解除去されるので、樹脂皮膜に合成樹脂粉末を添加
しても、電着塗装の塗膜密着性は損なわれず、しかも、
電着塗装の塗料が限定されることがない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 幸夫 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株 式会社 技術研究所 表面処理研究部内 (72)発明者 増田 毅 大阪府堺市金岡町704−2 エバ−グリ −ン金岡6−612 (56)参考文献 特開 平3−261553(JP,A) 特開 平1−148544(JP,A) 特開 平5−255587(JP,A) 特開 平3−39485(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08 B05D 7/14

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面にウレタン樹脂の皮膜を形成した亜
    鉛系めっき鋼板において、前記ウレタン樹脂として、分
    子中にカルボキシル基を有するウレタン樹脂を用い、し
    かも、このカルボキシル基含有ウレタン樹脂の酸価が4
    0〜70なる範囲内であり、25℃における該樹脂の弾
    性率が1000〜40000N/cm2なる範囲内であ
    るものとし、かつ、該カルボキシル基含有ウレタン樹脂
    により形成される皮膜を0.5〜5μmの厚さにするこ
    とを特徴とする接着剤との接着性および耐パウダリング
    性に優れたアルカリ可溶型樹脂皮膜被覆亜鉛系めっき鋼
    板。
  2. 【請求項2】 分子中にカルボキシル基を有するウレタ
    ン樹脂の重量平均分子量を5000〜50000にした
    ことを特徴とする請求項1に記載の接着剤との接着性お
    よび耐パウダリング性に優れたアルカリ可溶型樹脂皮膜
    被覆亜鉛系めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1の亜鉛系めっき鋼板の分子中に
    カルボキシル基を有するウレタン樹脂皮膜に平均粒径
    0.1〜3μmの合成樹脂粉末を1〜25質量%含有さ
    せたことを特徴とする接着剤との接着性および耐パウダ
    リング性に優れたアルカリ可溶型樹脂皮膜被覆亜鉛系め
    っき鋼板。
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