JP3339931B2 - プラズマアークトーチ - Google Patents

プラズマアークトーチ

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,プラズマアーク溶接ま
たは切断に用いられるプラズマアークトーチ,特に二重
構造あるいは三重構造のノズルからなるプラズマアーク
トーチに関する。
【0002】
【従来の技術】図2により従来のプラズマアークトーチ
について説明する。図2はプラズマアークトーチの一部
断面を示し,1はタングステン材料などからなる棒状電
極,2及び3は棒状電極1を中心にして互いに同心的に
配置された第1,第2のノズルである。第1のノズル2
は製造面から,内側ノズル部材2Aと外側ノズル部材2
Bとをろう付け箇所J1でろう付けしてなり,先端部分
まで延びる冷却液体通路2Cを備える。第1のノズル2
の外側に位置する第2のノズル3も,製造が比較的容易
という点で内側ノズル部材3Aと外側ノズル部材3Bと
をろう付け箇所J2でろう付けしてなり,先端部分まで
延びる冷却液体通路3Cを備える。
【0003】第2のノズル3の内側ノズル部材3Aは,
棒状電極1と平行な円筒状部3A1と,円筒状部分3A
1から棒状電極1の中心線X方向へある一定傾斜で向か
うテーパー部分3A2と,プラズマアークを狭窄する環
状の狭窄孔画成部3A3とからなる。その外側ノズル部
材3Bは,棒状電極1と平行な円筒状部3B1と,円筒
状部分3B1から棒状電極1の中心軸線X方向へ一定傾
斜で向かうテーパー部分3B2とからなる。なお,第1
のノズル2も環状の狭窄孔画成部を除いて第2のノズル
3の構造とほぼ同様である。なお,6は第2のノズル3
の外壁との間にシールドガス通路7を形成するシールド
ガスノズルであり,8は第2のノズル3外壁に取り付け
られたシールドガスリングである。
【0004】そして棒状電極1と第1のノズル2との間
にはアルゴンガスのような不活性ガスを流す第1のガス
通路4が形成されており,第1のノズル2と第2のノズ
ル3との間にはプラズマガスを流す第2のガス通路5が
形成されている。このようなプラズマアークトーチは,
棒状電極1の周囲を無気流の状態に維持しながら棒状電
極1と被加工品(図示せず)との間にプラズマアークを
発生させてその熱で加工するのに適している。棒状電極
1の周囲を無気流の状態に維持することは,棒状電極1
の寿命を長期化することとして知られている。
【0005】このような構造のプラズマアークトーチ
は,最も過酷な高熱条件に曝される環状の狭窄孔画成部
3A3をできるだけ冷却するために,冷却液体通路3C
は環状の狭窄孔画成部3A3まで延びるよう形成されて
おり,したがって内側ノズル部材3Aと外側ノズル部材
3Bとのろう付け箇所J2はプラズマアークの狭窄口の
近くにならざるを得ない。環状の狭窄孔画成部3A3は
プラズマアークの狭窄条件などによりむやみに大きくで
きず,また第2のノズル3の内側ノズル部材3Aのテー
パー部分3A2の傾斜と外側ノズル部材3Bのテーパー
部分3B2とは同一角度(例えば,棒状電極1の中心軸
線Xに対してほぼ60°),つまり図2(B)に示すよ
うに第1,第2のノズル2,3の各テーパー部分の内壁
面,外壁面の傾斜Y1,Y2,Y3,Y4は皆互いに平
行になっているので,実際上は冷却液体通路3Cの先端
部は細くならざるを得ない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のプラズマアークトーチにおいては,各ノズル
とも棒状電極と平行な部分から延びるテーパー状先端部
分の肉厚がほぼ等しく,またその肉厚を厚くすれば冷却
は良くなるが,実際上は環状の狭窄孔画成部3A3を狭
窄条件などによりむやみに大きくできないので,その先
端部分の冷却効率が悪くならざるを得ず,電流容量が制
限された。また,このような欠点があるため従来のプラ
ズマトーチでは先端部まで冷却液体通路を設けて冷却を
向上させているが,プラズマトーチの使用により冷却液
体通路に水あかなどが付着し,当然ながら冷却液体通路
先端には冷却液体が最も流れ難い状態が発生するため,
プラズマトーチ先端部の温度が上昇し,内側ノズル部材
と外側ノズル部材とのろう付け箇所のろうが溶融を始
め,冷却液体通路から冷却液体が漏れ出すという問題が
発生する。
【0007】本発明はこのような従来装置の欠点を除去
し,比較的冷却が良好でろう付け箇所の溶融などの問題
が発生しない比較的小型のプラズマアークトーチを提供
することを目的としている。
【0008】
【問題を解決するための手段】本発明のプラズマアーク
トーチはこのような目的を達成するため,棒状電極を中
心に同心的にそれぞれ配置された第1のノズルと第2の
ノズルとその第2のノズルの先端部分に位置する狭窄孔
画成部により形成されたアーク狭窄孔とを少なくとも備
え,前記第1のノズル及び第2のノズルがそれぞれ内側
ノズル部材と外側ノズル部材とをそれらの先端部分でろ
う付けすることによりそれぞれ先端部に冷却液体通路を
備えてなるプラズマアークトーチにおいて,前記棒状電
極に対する前記第1のノズルの先端部分外壁の角度が先
端部分内壁の角度に比べて大きく,また前記棒状電極に
対する前記第2のノズルの先端部分外壁の角度が先端部
分内壁の角度に比べて大きく,かつ前記第2のノズルの
先端部分内壁の角度は前記第1のノズルの先端部分外壁
の角度とほぼ等しくしたことにより前記狭窄孔画成部を
長くして、前記ろう付けした箇所が前記アーク狭窄孔の
中心からより離れるような構造になっている。
【0009】
【実施例】以下図1により本発明の一実施例について説
明を行う。図2の記号と同一の記号は図2に示した部材
に相当する部材を示すものとする。この実施例において
は各ノズル2,3のテーパー部の角度が異なる点,及び
第2のノズル3の冷却液体通路3Cの先端が第1のノズ
ル2の冷却液体通路2Cの先端よりも,棒状電極1の中
心軸線Xの方向において前方に位置し,かつその中心軸
線Xから離れた位置にあることが特徴である。
【0010】そしてこのトーチでは,第1と第2のノズ
ル2,3はほとんど同一の構造であるので,第2のノズ
ル3を中心に述べる。図1(B)に示すように,内側ノ
ズル部材2Aは棒状電極1の中心軸線Xに対して角度α
1の内壁面と,角度α1より大きな角度α2の外壁面を
備える環状のアーク孔画成部2A3を先端部分に有す
る。外側ノズル部材2Bは,角度α2のテーパー部2B
2を有し,接合部J1で内側ノズル部材2Aにろう付け
される。このろう付けは銀ろうなど溶融点の高いろう材
で行われる。
【0011】第2のノズル3は,棒状電極1と平行な円
筒状部3A1と,円筒状部3A1から棒状電極1の中心
線X方向へある一定傾斜で向かうテーパー部分3A2
と,プラズマアークを狭窄する環状の狭窄孔画成部3A
3とからなる内側ノズル部材3A,及び棒状電極1と平
行な円筒状部3B1と,円筒状部分3B1から棒状電極
1の中心軸線X方向へ一定傾斜で向かうテーパー部分3
B2とからなる外側ノズル部材3Bを有する。そしてこ
れら円筒状の内側ノズル部材3Aと円筒状の外側ノズル
部材3Bは円周状の接合部J2でろう付けされている。
テーパー部分3A2の内壁面は,第1のノズル2の外壁
面の角度α2と等しい角度で拡がっており,テーパー部
分3B2は角度α2より大きいα3に等しい角度で拡が
る外壁面を有する。
【0012】そしてまた,第2のノズル3の冷却液体通
路3Cは,第1のノズル2の冷却液体通路2Cの先端よ
りもトーチ先端方向に位置し,また棒状電極1の中心軸
線Xよりも離れた位置に存在する構造とする。このよう
な構造をすることにより,プラズマトーチにおいて最も
高温になる第2のノズル3の環状の狭窄孔画成部3A3
を比較的長くすることができ,第1のノズル2と第2の
ノズル3との接合部J2をアーク狭窄孔の中心より比較
的離すことができ,かつテーパー部分3B2が角度α2
よりも大きいα3に等しい角度で拡がる構造になってい
るので,トーチ自体を大型化することなく冷却液体通路
3Cを従来より大きくでき,したがって,ろう付け作業
により容易に各ノズルが得られるにも拘わらず,接合部
J2のろう材が溶け始めるといった問題は一切生じな
い。
【0013】冷却液体通路について少し述べると,内側
ノズル部材3Aの外面と外側ノズル部材3Bの内面間に
は,これらの間の空間を紙面の表側と裏側の室に分ける
隔壁3Dが内側ノズル部材3Aの外面の左右に備えられ
ており,これら2つの室は下部の冷却液体通路3Cによ
り接続されている。したがって,例えば内側ノズル部材
3Aの外面と外側ノズル部材3Bの内面間の紙面表側の
室の上部に導入された冷却液体は,その下方に流れ,下
部の冷却液体通路3Cから裏側の室に入り,その上部か
ら流れだす。この構造では螺旋状の冷却液体通路に比べ
て多量の冷却液体を流すことができ,したがって一層冷
却効果を大きくできる。
【0014】ここで角度α1の好ましい範囲は,20°
≦α1≦45°であり,角度α2の好ましい範囲は,3
0°≦α2≦60°であり,そして角度α3の好ましい
範囲は,40°≦α3≦75°である。これら角度はノ
ズルの加工性,トーチ操作性,ノズルの冷却性などの面
から決定される。なお,第2のノズル3の隔壁3Dは内
側ノズル部材3Aの円筒状部3A1よりもトーチ先端方
向に延びているが,第1のノズル2では隔壁2Dが内側
ノズル部材2Aの円筒状部よりも短くなっており,この
ことは冷却液体が各ノズルの先端部分まで流れて冷却効
果を向上させることを示している。
【0015】
【発明の効果】以上述べたように,本発明によれば,棒
状電極に対する前記第1のノズル及び第2のノズルそれ
ぞれの先端部分外壁の角度が先端部分内壁の角度に比べ
て大きく,かつ第2のノズルの先端部分内壁の角度は第
1のノズルの先端部分外壁の角度とほぼ等しくなってい
るので,比較的小型軽量ながら冷却効率の良好なプラズ
マアークトーチが得られ,プラズマアークトーチの先端
部分のろう付け箇所が溶融する問題も生じない。また,
円周状のろう付け箇所のろう付け作業で容易に各ノズル
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を説明するための図である。
【図2】従来の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
1・・・・棒状電極 4,5・・ガス通
路 2・・・・第1のノズル 6・・・・シール
ドガスノズル 3・・・・第2のノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 10/00 H05H 1/34

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 棒状電極を中心に同心的にそれぞれ配置
    された第1のノズルと第2のノズルと該第2のノズルの
    先端部分に位置する狭窄孔画成部により形成されたアー
    ク狭窄孔とを少なくとも備え, 前記第1のノズル及び第2のノズルがそれぞれ内側ノズ
    ル部材と外側ノズル部材とをそれらの先端部分でろう付
    けすることによりそれぞれ先端部に冷却液体通路を備え
    てなるプラズマアークトーチであって, 前記棒状電極に対する前記第1のノズルの先端部分外壁
    の角度が先端部分内壁の角度に比べて大きく, また前記棒状電極に対する前記第2のノズルの先端部分
    外壁の角度が先端部分内壁の角度に比べて大きく, かつ前記第2のノズルの先端部分内壁の角度は前記第1
    のノズルの先端部分外壁の角度とほぼ等しくしたことに
    より前記狭窄孔画成部を長くして、 前記ろう付けした箇所が前記アーク狭窄孔の中心からよ
    り離れるようにしたことを特徴とするプラズマアークト
    ーチ。
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