JP3323258B2 - 抗ヒトadfモノクローナル抗体及びそれを用いたヒトadfの測定方法 - Google Patents

抗ヒトadfモノクローナル抗体及びそれを用いたヒトadfの測定方法

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JP3323258B2 JP33802892A JP33802892A JP3323258B2 JP 3323258 B2 JP3323258 B2 JP 3323258B2 JP 33802892 A JP33802892 A JP 33802892A JP 33802892 A JP33802892 A JP 33802892A JP 3323258 B2 JP3323258 B2 JP 3323258B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒト成人T細胞白血病
細胞(Adult T Cell Leukemia, ATL) 由来因子(以下ヒ
トADFと略する)に特異的に反応するモノクローナル
抗体、及びそのモノクローナル抗体を用いたヒト体液中
等のヒトADFの測定・定量法、更にその測定・定量法
に基づく扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌等の癌、あるい
は膵炎、肝炎などの炎症性臓器障害、肝炎ウイルス、H
TLV−1などのウイルス感染症等の疾患の診断法に関
する。
【0002】本発明の抗ヒトADFモノクローナル抗体
は、癌、臓器障害、ウイルス感染症等の診断薬のみなら
ず、治療薬としても利用し得る有用な物質である。
【0003】
【従来の技術】現在、癌は本邦において死亡原因の第一
位を占める疾患である。発癌のメカニズムは完全には解
明されておらず、現時点での癌の予防を行うことは難し
い。しかし、近年外科手術の手技が向上し、早期に癌を
発見できた場合の治癒率は飛躍的に上昇してきている。
従って、癌を初期の段階で確実に診断できる方法があれ
ば、癌患者の治療のために非常に有用である。
【0004】現在の癌の診断法のほとんどは、癌細胞特
異的に産生されるいわゆる腫瘍マーカーを組織学的に、
あるいは生化学的に検出することにより行われている。
例えば、哺乳類の胎生期において卵黄嚢、及び肝臓で合
成される血清蛋白質として知られるαフェトプロテイン
(以下AFPと略する)は、通常出生後にはその合成が
ほとんど停止するが、肝癌等の発生により合成が再開さ
れ血中に出現するように成る。従って、このAFPを抗
AFP抗体を用いた免疫化学的測定法により定量するこ
とにより肝癌の診断が可能となる。腫瘍マーカーとして
は、AFPのほかにも、癌胎児性抗原(CEA)、フェ
リチン、糖鎖抗原等が知られ臨床応用されている。
【0005】しかし、これらの腫瘍マーカーはそれぞれ
ある一部の限定された癌にしか発現していないものが多
い。従って、癌が発生していても、これらの腫瘍マーカ
ーを発現していない場合には発見することが不可能であ
り、現在臨床応用されている腫瘍マーカーの測定のみで
は、種々の癌の早期発見は事実上困難を極めているた
め、新たな癌の診断法が待たれている。
【0006】さて、IL−2レセプター誘導因子として
本発明者らの見いだしたヒトADF(特開昭64−85
097)は、ヒトチオレドキシンとして生体内に広く存
在することが明らかとなった。またヒトADFは、活性
部位に2つのSH基を有しており、活性酸素還元活性、
及び酸化により変性した蛋白質を賦活化する活性を有す
ることが明らかとなった(三井彰ら、生化学、62巻、
1047頁、1990年)。更にヒトADFは、紫外線
や放射線照射により誘導され、ウイルス感染細胞や再生
肝にも強く発現がみられることから、ヒトADFは細胞
の活性化、増殖等に際して生ずるフリーラジカルなどの
種々の酸化ストレスに対する生体応答防御因子として働
いている可能性が示唆されてきている(中村肇ら、実験
医学、9巻、8月号、1991年)。
【0007】この様にヒトADFは増殖の盛んな細胞や
組織において発現が亢進し、細胞の傷害を防御している
と考えられているが、一般に癌細胞は生体から逸脱して
増殖し続けるため、ヒトの癌細胞は自身の防御の為に特
に大量のヒトADFを発現、産生している可能性が考え
られる。実際、ヒトADFの部分ペプチドを免疫したウ
サギの抗血清より調製したポリクローナル抗体を用い
て、各種癌細胞を免疫組織化学的方法により染色してみ
ると、正常組織では全く染色されないのに対し、殆どす
べての扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌さらに前癌状態の
細胞などが染色されることが明らかとなり、ヒトADF
を検出することは従来にない汎用性の高い癌の診断法と
なりうることが判明した(特願平1−21626)。し
かし、本抗体は組織を免疫組織染色するというものであ
り、操作は煩雑な上に、患者の組織より標本を作る必要
がある。またヒトADFは、正常状態もしくは疾患状態
において、体液中に存在するか否かは全く不明であり、
まして体液中のヒトADF濃度と癌などの各種疾患との
関係は不明であった。
【0008】一般に微量の物質の定量は、抗原抗体反応
を応用した免疫化学的測定法により行われる。免疫化学
的測定法を行うためには、抗原に特異的でかつ認識エピ
トープの異なる複数のモノクローナル抗体が必要である
が、本発明以前にはヒトADFに対するモノクローナル
抗体については全く知られず、本発明者らも組換え体ヒ
トADFを得て以来、3年有余の間モノクローナル抗体
を作成することができなかった。
【0009】一方、膵炎や肝炎等の重篤な臓器障害が起
こると、細胞や組織の破壊が生じるが、この破壊は主に
蛋白分解酵素とフリーラジカルによると考えられている
(肝胆膵、9巻、1127頁、1984年、J.Ac
t.Oxyg.Free.Rad.2巻、623頁、1
991年)。ヒトADFは生体内においてフリーラジカ
ルなどの酸化ストレスから組織を防御する働きを有して
いて、臓器障害時には、その障害を抑制するために、ヒ
トADFの発現が亢進するものと考えられる。更に障害
が持続した場合には重篤な炎症が発症し、細胞壊死や組
織破壊に至る。従ってヒトADFを測定、定量すること
ができれば、重篤な臓器障害の診断が可能となるものと
予想されるが、本発明以前には血中にヒトADFが存在
するか否かが不明であり、まだ測定手技も存在しなかっ
た。本発明で得られた抗ヒトADFモノクローナル抗体
を用いて、本発明による診断手技により血中のヒトAD
F濃度を定量する方法が完成し、癌や臓器障害を起こし
ている患者の血清中では、正常人に比較して有意に異な
るヒトADF動態が見られることを初めて見出し本発明
を完成した。
【0010】また、HIVウイルスの活性化に関与して
いる転写因子として知られているNFκBの転写活性が
酸化剤添加で抑制されるのに対し、ヒトADFの添加で
回復すること(岡本尚ら、International Immunology,
4巻、811頁、1992年)、HTLV−I感染細胞
を還元剤無添加で培養するとその増殖が抑制されるが、
ヒトADFを添加すると増殖亢進が見られること(山内
清明ら、Molecular Immunology, 29巻、263頁、1
992年)などから、ウイルスの複製、ウイルス感染細
胞の増殖にヒトADFは必須であるものと推定される。
従って、ヒトADFの働きを抑制できれば、癌の防御機
構を破壊することによる癌の治療、ウイルスの複製の抑
制などによるウイルス感染症の治療が可能となるものと
考えられ、ADF活性を中和する抗体は、新しいタイプ
の制癌剤、抗ウイルス感染症薬となるものと考えられ
る。従来このような考えに基づく癌やウイルス感染症の
治療法はなく、ヒトADF活性を抑制する活性を持つ物
質も知られていない。
【0011】
【発明が解決しようとしている課題】本発明の目的は、
血清などのヒト体液中のヒトADFの定量、それに基づ
く癌、臓器傷害、ウイルス感染症などの疾患の診断法の
提供、及びヒトADFの定量、癌、臓器傷害、ウイルス
感染症などの疾患の診断、及び治療に用いることのでき
るヒトADFに対して特異的モノクローナル抗体の提供
である。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために鋭意研究を行った結果、ヒトADFに対
するモノクローナル抗体を得ることに成功し、得られた
モノクローナル抗体を用いてヒトADFを高感度に定量
する方法を開発し、癌、臓器傷害、ウイルス感染症など
の疾患の診断をすることを可能とせしめ本発明を完成し
た。以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】本発明の方法に用いられるモノクローナル
抗体は、常法に基づき、ヒトADFを動物に免疫し、そ
の抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させ、得られ
るハイブリドーマから抗ヒトADFモノクローナル抗体
を産生するハイブリドーマを選択し、これを培養して生
産されたモノクローナル抗体を回収することにより得る
ことができる。
【0014】抗原として用いるヒトADFは()遺伝
子組換え法により、ヒトADFのポリペプチドをコード
する遺伝子の上流に他のペプチドをコードする遺伝子を
接続し、大腸菌、酵母、高等動物細胞、植物細胞等の宿
主に導入し、宿主細胞内で融合蛋白質として発現させた
後、蛋白質分解酵素により、ペプチドとヒトADFとし
て切断し、クロマトグラフィー等一般に用いられる手法
により精製する方法(特開平1−85097号)、
)遺伝子組換え法により、ヒトADFのポリペプチ
ドをコードする遺伝子を、大腸菌、酵母、高等動物細
胞、植物細胞等の宿主細胞に導入し、宿主細胞内で発現
させ、(1)と同様に精製する方法、または()化学
的に合成する方法等、いずれの方法により生産されたも
のをも用いることができる。
【0015】下記実施例において詳述するように、上記
方法に基づき作成したヒトADFと特異的に反応するモ
ノクローナル抗体として、モノクローナル抗体ADF1
1及びADF21がある。これらを生産するハイブリド
ーマは微工研に寄託されており、その受託番号はそれぞ
れ微工研菌寄第13025号、及び第13026号であ
る。これらのモノクローナル抗体のサブクラスをオクタ
ロニー法により調べたところ、いずれもIgGI(κ)
であった。なおADF11とADF21は互いに認識す
るエピトープが異なっている。
【0016】更に本発明の免疫化学的測定法によるヒト
ADFの検出、及び定量は以下のようにして行えばよ
い。まず、上記のような方法により調製した2種類のエ
ピトープの異なるヒトADFに対するモノクローナル抗
体を用意する。第1の抗ヒトADFモノクローナル抗体
を、例えばマイクロタイタープレートのウェルの内壁の
ような固相に結合し、非特異的吸着部位をウシ血清アル
ブミン(BSA)等でブロッキングした後、検体を反応
させ、洗浄し、第2の抗ヒトADFモノクローナル抗体
を反応させ、洗浄後固相に結合している第2抗体の量を
測定することにより検体中のヒトADFを測定すること
ができる。第2抗体の量の測定は、従来より免疫分析の
分野において周知の種々の方法により行うことができ
る。例えば、第2抗体を酵素で標識しておき、発色性の
基質あるいは化学発光性の基質を用いて行うことができ
る。あるいは第2抗体にビオチンを結合しておき、この
ビオチンを標識化アビジンと反応させて該標識を測定す
ることによっても行うことができる。更には第2抗体に
特異的に反応する標識化抗体を更に反応させ、該標識を
測定することによっても行うことができる。
【0017】第2抗体の標識には、酵素の代わりに蛍光
色素や放射性物質を用いてもよい。
【0018】なお、ここで用いることのできるモノクロ
ーナル抗体は、ヒトADFに特異的に反応する抗体で、
エピトープが異なっていさえすれば、いかなる抗体を用
いてもよいし、第2抗体としてポリクローナル抗体を用
いることも可能である。
【0019】また、本発明の抗ヒトADFモノクローナ
ル抗体をラテックスや動物の赤血球のような粒子に結合
させ、これと検体を反応させて、粒子の凝集を吸光度測
定等により測定することにより、検体中のヒトADFを
検出または測定することができる。更に本発明の抗ヒト
ADFモノクローナル抗体を含む溶液と検体とを反応さ
せ、その濁度変化を測定することにより、検体中のヒト
ADFを検出または測定することもできる。
【0020】なお、検体としては、ヒト由来の種々の体
液を挙げることができ、例えば、血清及び尿等を挙げる
ことができる。
【0021】更に、本発明のモノクローナル抗体は、常
法に基づき組織免疫染色に用いることもできる。すなわ
ち、癌細胞においてヒトADFの発現が増大するので、
本発明の抗ヒトADFモノクローナル抗体を用いて組織
免疫染色を行えば、癌の診断を行うことが可能である。
この方法は、特に上皮性癌及び腺癌すなわち、例えば、
咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肺癌、皮膚癌及び乳癌のよう
な扁平上皮癌、腎盂癌及び膀胱癌のような移行上皮癌、
並びに胃癌、胆嚢癌、膵臓癌、大腸癌、甲状腺癌、肺
癌、乳癌及び前立腺癌のような腺癌の診断に有効であ
る。
【0022】また、本発明のモノクローナル抗体は、癌
の治療薬、及びウイルス感染症の治療薬としても有効で
ある。
【0023】なお、上記において用いることのできる抗
体は、本モノクローナル抗体そのものでもよいが、酵素
により切断したF(ab')2 フラグメントやFabフラグメ
ント、あるいは遺伝子操作によりH鎖とL鎖のC領域を
ヒト型に変換した抗体、H鎖とL鎖のC領域を除去し、
ペプチドリンカーにより1本鎖にした抗体、遺伝子操作
により酵素を結合させた抗体などを用いても構わない。
【0024】以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に
説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるもの
ではない。
【0025】
【実施例】
1.組換え体ヒトADFの調製 公知の方法(特開昭64−85097)に従い、組換え
体ヒトADFを調製した。すなわち、ヒトADFcDN
Aを組み込んだプラスミドDNAで大腸菌をトランスフ
ォームし、菌体内にヒトADFを発現させた。この大腸
菌培養液より菌体を集め、破砕後遠心し、その上清を回
収した後、硫安を加え90%飽和として4℃で一晩放置
した。これにより生じた沈澱を遠心して回収し、20m
Mピペラジン−C1、pH6.0の緩衝液に溶解し、同
緩衝液に対して透析を行った。透析された液に5mMに
なるようにジチオスレイトールを加え、4℃で一晩反応
させた後、あらかじめ20mMピペラジン−C1で平衡
化されたQセファロースカラム(ファルマシア社製)に
かけ、0から100mMのNaClの勾配をかけ、Na
Cl濃度55から75mMの分画を回収し、組換え体ヒ
トADF標品を得た。20リットルの大腸菌培養液か
ら、約1gの精製標品が得られた。この標品をSDS−
PAGEで分析したところ、分子量12kDの単一バン
ドを示した。また、ヒトADFを特徴づけるIL−2レ
セプター発現誘導活性、活性酸素還元活性、変性蛋白質
賦活化活性も確認された。
【0026】上記の組換え体ヒトADF標品を、リン酸
緩衝生理食塩水(PBS)に対して一晩透析し、以下の
実施例に用いた。
【0027】2.抗ヒトADFモノクローナル抗体産生
ハイブリドーマの作製 組換え体ヒトADF100μgをフロインド・コンプリ
ートアジュバントを用いてエマルジョンにし、8〜10
週令BALB/c雄マウスの腹腔内に投与した。2週間
の間隔をおいて、更に3回、フロインド・インコンプリ
ートアジュバントとともに投与を繰り返した。最終免疫
は生理食塩水で希釈した組換え体ヒトADF25μgを
尾静脈より注射し、3日後に脾臓を摘出した。単離した
脾細胞とマウスミエローマ細胞P3−X63−Ag8−
U1とを3:1の細胞数で混合し、50%ポリエチレン
グリコール1500を用いて細胞融合を行った。細胞は
HAT(ヒポキサンチン、アミノプリテン、チミジン)
及び、10%牛胎児血清(FCS)添加RPMI164
0培地に懸濁し、96ウェルマイクロカルチャープレー
トに分注し培養した。約10日後、ハイブリドーマが増
殖した培養上清を以下の方法により調べ、特異的なモノ
クローナル抗体を産生するクローンを含むウェルを選択
した。すなわち、ヒト組換え体ADF抗原2μg/ml
をPBSにて調製し、マイクロアッセイプレートに分
注、室温1時間放置し吸着させた。0.05%Twee
n20を含むPBSにより洗浄後、ハイブリドーマ培養
上清を各ウェルに加え、室温で1時間反応させた。洗浄
後、パーオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン
(DAKO社製)を、1000倍に希釈し、分注し、室
温にて1時間反応後、洗浄して基質(0.1%ABT
S,0.031%過酸化水素含有0.1Mリン酸クエン
酸緩衝液(pH4)を加えた。1%シュウ酸を添加して
反応を停止させ、405nmの吸収を測定した。陽性ウ
ェルの細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを
行った。単一コロニーを含むウェルの培養上清の抗体活
性を上記の方法で調べ、選択、培養し、ヒトADFに特
異的な抗体を産生するハイブリドーマADF11、及び
ADF21を樹立した。これらのハイブリドーマは微工
研に寄託されており、その受託番号はそれぞれ微工研菌
寄第13025号及び第13026号である。
【0028】3.抗体のサブクラスの決定 これらの抗体サブクラスをオクタロニー法により決定し
た。すなわち、ハイブリドーマの培養上清をアガロース
ゲル平板上にあけた穴に加え、隣接した穴に配置したマ
ウスサブクラスに特異的な各種ウサギ抗血清(ICN社
製)と反応させて沈降線を調べたところ、いずれもIg
Gl(κ)であった。
【0029】4.抗ヒトADFモノクローナル抗体の調
実施例1で得られたハイブリドーマADF11及びAD
F21細胞1×107個を、プリスタン0.5ml投与
後2週間のBALB/cマウスにそれぞれ接種した。約
1週間後、抗体を高濃度に含む腹水が貯留してくるので
それを採取した。この腹水を、25mMモルフォリンエ
タンスルフォン酸(MES)緩衝液(pH4.0)で4
倍以上に希釈し、20mMMES(pH5.6)で平衡
化したベーカーボンドABxカラムに吸着させ、500
mM硫酸アンモニウムを含む20mM酢酸ナトリウム
(pH7.0)によるグラジエントで溶出し、モノクロ
ーナル抗体を調製した。
【0030】5.イムノブロッティングによる特異性の
確認 組換え体ヒトADF試料を、当量の試料希釈液(40%
グリセリン、2%SDS、2%2−メルカプトエタノー
ル、20mMトリス塩酸緩衝液)と混合し、沸騰水中で
加熱した後、5〜15%グラジエントゲルによるSDS
−PAGEを行い、これを更にニトロセルロース膜に転
写した。この転写膜を3%BSA−PBSでブロッキン
グし、抗ヒトADFモノクローナル抗体ADF11、及
びADF21を室温で1時間反応させた。Tween2
0−PBSによる洗浄後、POD標識抗マウス免疫グロ
ブリンを室温で1時間反応させ、洗浄後、POD不溶性
基質(4−クロロナフトールー過酸化水素系)を加えて
発色させた。その結果、分子量12kD付近にバンドを
生じ、これは同時に行った、金コロイド染色による蛋白
質のバンドと一致し、このモノクローナル抗体がヒトA
DFを特異的に認識することを確認した。なお、本モノ
クローナル抗体は、大腸菌成分には反応しないことを確
認した。
【0031】6.標識抗原の作製 組換え体 ヒトADFを吉武からの方法(Eur.J,B
iochem.,101,395−399,1979)
を用いて西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼで標識した。
標識された組換え体ヒトADFの濃度は波長280nm
と403nmにおける吸光度を測定することにより5
2.4μg/mlと決定した。該組換え体ヒトADF1
分子当たりに導入された酵素分子は2分子であった。
【0032】7.至適抗体感作量の決定 上記のように作成した標識組換え体ヒトADFを100
ng/mlの濃度となるように緩衝液で希釈し、検出用
の抗原として用いた。96ウェルプレートへの抗体の感
作量の決定は以下の方法で行った。すなわち、抗ヒトA
DFモノクローナル抗体ADF21を280nmにおけ
る吸光度で0.01、0.02、0.04、0.08、
0.16となる濃度になるようにクエン酸緩衝液で希釈
し、96ウェルプレートに100μl/ウェルの割合で
加えた。4℃で一晩放置後、PBSで2回ウェルを洗浄
した。この後1%BSAを300μl/ウェル加えて3
7℃一晩ブロッキングした後、PBSで3回洗浄し、測
定に用いた。
【0033】緩衝液で100ng/mlの濃度となるよ
うに希釈した標識組換え体ヒトADFを200μl/ウ
ェル加え、室温で2時間反応させた。0.05%Twe
en20を含むPBSで4回ウェルを洗浄後、基質溶液
(ABTS)を100μl/ウェルで加えて5分後の吸
光度(波長415nm)を測定した。結果を図1に示
す。図1のように抗体の固相への感作量は280nmに
おける吸光度で0.04以上の濃度であればヒトADF
を効率よく測定することができる。
【0034】8.酵素標識抗体の作成 抗ヒトADFモノクローナル抗体を実施例6の方法と同
様に西洋ワサビ来ペルオキシダーゼで標識した。標識抗
体の濃度は151.8μg/mlと決定した。該抗体1
分子当たりに導入された酵素分子は1分子であった。
【0035】9.ヒトADFの測定 組換え体ヒトADFを50mMリン酸緩衝液(pH6.
0)で希釈して、それぞれ3、6、12、25、50、
100、200ng/mlの標準組換え体ヒトADF溶
液を調製した。これを試料として用い、以下の方法で測
定した。
【0036】抗ヒトADFモノクローナル抗体を感作し
たプレートに標準組換え体ヒトADF溶液220μlを
加え、室温で2時間放置した。PBSで3回ウェルを洗
浄後50mMリン酸緩衝液で80ng/mlに希釈した
酵素標識抗ヒトADFモノクローナル抗体を200μl
加えて更に2時間放置した。0.05%Tween20
を含むPBSで4回ウェルを洗浄後、基質溶液(ABT
S)を100μl/ウェルで加えて1時間後に吸光度
(波長415nm)を測定した。このようにして得られ
た検量線を図2に示す。この図からわかるように3から
200ng/mlまで直線性を示した。なお、組換え体
ヒトADFの最低検出濃度は3ng/mlであった。
【0037】10.交差性物質の測定 ヒトADFの活性中心Trp−Cys−Gly−Pro
−Cys−Lysと近似した部位を有する甲状腺刺激ホ
ルモンと膵臓由来及びダイズ由来トリプシンインヒビタ
ーの本測定系に及ぼす影響を検討した。両交差性物質の
濃度が16ng/ml、80ng/ml、400ng/
ml、2μg/ml、10μg/mlとなるように適当
な緩衝液を用いて調製し、これを検体として実施例9に
記載した方法により測定した。結果を表1に示す。表1
に示されるように、これらの交差性物質は上記の濃度範
囲で交差反応性はない。
【0038】
【表1】
【0039】11.測定系の希釈直線性 検体を種々の濃度に希釈し、実施例9に記載した方法に
より測定した。結果を表2に示す。表2より、本測定系
は検体の希釈直線性に優れていることがわかる。したが
って、検体は適当な緩衝液及び生理食塩水を用いて希釈
することができる。
【0040】
【表2】
【0041】12.血清中のヒトADFの測定 実施例9に記載した方法により、健常人及び各種疾患を
有する患者の血清中ヒトADF濃度を測定した。結果を
表3に示す。表3に示されるように、健常人の血清中ヒ
トADF濃度は、10.0±7.0ng/mlであった
のに対し、胃癌においては、38.8±11.1ng/
mlと高値に分布した。このように、ヒトADFが血清
中に存在することが見いだされたのは本発明が初めてで
あり、その意義は高い。
【0042】
【表3】 表3 健常人及び各種疾患を有する患者の血中ADF濃度の測定 ────────────────────────────── 平均値 SD ──────────────── 検体 例数 ng/ml ng/ml ────────────────────────────── 胃癌 30 38.8 11.1 肺癌 19 25.7 11.0 乳癌 20 17.3 11.0 肝癌 18 21.8 13.2 肺癌 20 36.9 31.8 肝癌 20 46.0 21.9 肝硬変 5 26.8 10.9 膵炎 8 38.6 15.4 健常者 40 10.0 7.0 ──────────────────────────────
【0043】13.抗ヒトADFモノクローナル抗体に
よるヒトADF活性の中和 抗ヒトADFモノクローナル抗体のヒトADF活性の中
和能の測定は、抗体によるヒトADFのインシュリン還
元活性の阻害能を指標にして行った。
【0044】すなわち、分光光度計用セル(光路長1c
m、日立製作所社製)に、それぞれ最終濃度で0.2m
MのNADPH、Luthmanらの方法(Bioch
emistry、21巻、6628頁、1982年)に
よりラット肝臓から調製した0.28μMのチオレドキ
シン還元酵素、0.07μMの組換え体ヒトADF、
0.14mMのウシ膵臓インシュリン(シグマ社製)、
2mMのEDTA、及び各濃度の抗ヒトADFモノクロ
ーナル抗体を添加した0.1Mトリス塩酸塩緩衝液(p
H7.5)を入れ、経時的に340nmの吸光度を測定
した。
【0045】この系においては、NADPHの減少量、
すなわち340nmの吸光度の減少速度がインシュリン
の還元速度と正の相関を示し、ヒトADF活性として表
される。従って、抗体によるヒトADF活性の阻害能
は、340nmの吸光度の減少速度の抑制として示すこ
とができる。
【0046】その結果、表4に示すようにADF11抗
体、ADF21抗体とも抗体濃度依存的にヒトADFの
インシュリン還元活性を抑制することが明らかとなり、
両抗体がヒトADFの活性の中和能を有していることが
示された。なお、対照として用いたヒトADFを認識し
ないマウスモノクローナル抗体(IgGl、κ)では、
ヒトADF活性の抑制はみられなかった。
【0047】
【表4】 ───────────────────────────── 相対ヒトADF活性(%) ──────────────────── 抗体濃度(μM) ADF11 ADF21 対照抗体 ───────────────────────────── 0 100 100 101 0.03 78 72 99 0.06 55 49 102 0.18 50 42 97 0.56 47 40 98 1.80 45 38 99 ─────────────────────────────
【0048】
【発明の効果】本発明の抗ヒトADFモノクローナル抗
体を用いた、免疫化学的ヒトADFの定量法により、ヒ
ト体液中等に存在するヒトADFを高感度に定量するこ
とが初めて可能となった。本方法により癌、臓器障害、
ウイルス感染症などの疾患の診断が可能となる。また、
本抗体がヒトADF活性の中和能を有していることか
ら、本抗体は癌の治療、ウイルス感染症の治療、更にヒ
トADFの過剰産生が原因となって発症する疾患の治療
薬として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】至適抗体感作量を調べた結果を示す図である。
【図2】本発明のヒトADFの免疫化学的測定法によ
り、組換え体ヒトADF試料を免疫測定して得られた検
量線を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉識 あけみ 東京都新宿区西新宿2丁目7番1号 富 士レビオ株式会社内 (72)発明者 ▲島▼村 俊朗 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1丁目1番 地 味の素株式会社中央研究所内 (72)発明者 平川 忠 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1丁目1番 地 味の素株式会社中央研究所内 (72)発明者 羽室 淳爾 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1丁目1番 地 味の素株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 平2−201266(JP,A) 特開 平3−94694(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 21/08 G01N 33/53 G01N 33/574 G01N 33/577 C12N 15/06 - 15/08 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN) WPI(DIALOG)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗ヒトADFモノクローナル抗体を用い
    た免疫化学的方法、あるいは免疫組織化学的方法により
    検体中のヒトADFを測定する方法。
  2. 【請求項2】 免疫化学的方法が二抗体法である請求項
    1記載の方法
  3. 【請求項3】 抗ヒトADFモノクローナル抗体が、受
    託番号FERM P-13025のハイブリドーマADF11株が産
    生する抗体ADF11、及び/又は受託番号FERM P-130
    26のハイブリドーマADF21株が産生する抗体ADF
    21である請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 血中のヒトADFを測定する請求項1な
    いし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 受託番号FERM P-13025のハイブリドーマ
    ADF11株が産生するモノクローナル抗体ADF1
  6. 【請求項6】 受託番号FERM P-13026のハイブリドーマ
    ADF21株が産生するモノクローナル抗体ADF2
  7. 【請求項7】 請求項5又は6記載のモノクローナル抗
    体を含む、請求項1記載の方法を実施するための試薬キ
    ット。
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