JP3317936B2 - 低周波音低減装置 - Google Patents

低周波音低減装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は振動篩、空気圧縮
機、燃焼機械等の低周波音(超低周波音を含む)を発生
する機器のための共鳴構造を有する低周波音低減装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】振動篩、空気圧縮機、燃焼機械等は、周
波数が50Hz程度以下の低周波音を発生することで知
られている。この低周波音の波長は60m程度と長く、
防音ハウス又は遮音室などの可聴音を対象とした通常の
防音室を用いても殆ど低減できない。また、伝搬に伴う
減衰が少ないために、長距離を伝搬して窓などの建具を
揺らすといった公害を引き起こすことがある。シールド
工事などで使用される振動篩の篩面は、一般に1,00
0rpmで回転するため、16〜17Hz前後に卓越成
分を持つ低周波音が発生する。低周波音の波長は可聴音
と比較して長いため、在来の防音ハウス又は遮音室に用
いる遮音材、防音材を用いて可聴音と同様の防音対策を
行おうとすると、寸法が大きくなり設備が大掛かりとな
ってしまう。
【0003】従来から行われてきた振動篩の低周波音対
策のうち、機器側に関しては、本体各部に孔開き部材を
使用して低周波音の放射面積を小さくする方法が知られ
ているが、振動篩では篩面自体が主要な音源であること
から、その効果には限界がある。
【0004】また、伝搬経路上の対策として、数10c
m厚の鉄筋コンクリート壁で構成した遮音室内に振動篩
を設置する方法や、振動篩を地下に設置して上面を覆工
板と舗装材で覆うなどの方法があるが、この方法は敷地
に制限がある場合には実施が困難であり、壁体の施工、
解体、解体後に発生する産業廃棄物処理に掛かるコスト
も大きく、作業が面倒である。そして、これらの従来技
術による対策は、工事着工前に行う必要があり、工事開
始後に対策が必要となった場合には、実施が困難である
ことが多い。
【0005】なお、空気圧縮機などが発生する低周波音
については、管内を伝搬する間に共鳴吸収を利用して低
減する対策が有効であるが、振動篩などが発生する低周
波音は、発生直後から3次元的に広がって伝搬するため
に対策が困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した様
な従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、特
定周波数の音を吸収することで知られているヘルムホル
ツ共鳴器を設け、比較的寸法の小さい薄型でも効率的に
吸音できるパネルを用いた低周波音低減装置を提供する
ことを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、内部に
低周波音を発生する機器(4)を設け、パネル(3)で
構成された低周波音低減装置において、前記パネル
(3)には断面形状が円形で機器側に設けた首部(1
a)とその首部に対して反機器側に設けられ断面形状が
円形の空洞部(13)とよりなる複数のヘルムホルツ共
鳴器(1)が形成され、これらのヘルムホルツ共鳴器
(1)の間にできる空間に複数の小型のヘルムホルツ共
鳴器(1A)が配置され、前記ヘルムホルツ共鳴器
(1)の共鳴周波数は機器が出す低周波振動数に実質的
に一致し、前記小型のヘルムホルツ共鳴器(1A)の共
鳴周波数は機器が出す高周波成分の周波数振動数に実質
的に一致した値である。
【0008】また本発明によれば、内部に低周波音を発
生する機器(4)を設け、パネル(3)で構成された低
周波音低減装置において、前記パネル(3)には断面形
状が円形で機器側に設けた首部(1a)とその首部に対
して反機器側に設けられ断面形状が六角形の空洞部(1
3)とよりなる複数のヘルムホルツ共鳴器(1)が形成
され、前記ヘルムホルツ共鳴器(1)の共鳴周波数は機
器が出す低周波振動数に実質的に一致している。
【0009】さらに本発明によれば、首部(1a)に絞
り機構(1e)を設けてある。
【0010】そして本発明によれば、首部(1a)に円
筒(1f)が着脱自在に取付けられている。
【0011】したがって、機器から発生した低周波音は
ヘルムホルツ共鳴器で吸収される。したがって、その低
周波音の周波数に一致する共鳴周波数のヘルムホルツ共
鳴器を設けることが必要である。
【0012】しかしながら、機器からの低周波音の周波
数は種々あるので、2種又はそれ以上のヘルムホルツ共
鳴器を設けるか、或いは首部の開口面積又は長さを制御
して調整すればよい。
【0013】また、ヘルムホルツ共鳴器の空洞部は実質
的にパネルの全面に区画して構成でき、その結果、比較
的に薄くても容積の大きい空洞部を構成でき、超低周波
数を含む低周波音を効果的に吸音できる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照にして、本
発明の実施の形態を説明する。図1に示すように、ヘル
ムホルツ共鳴器1とは、細長い首部1aとその背後の空
洞部1bから構成される容器で、主として空洞部1bの
容積v、首部1aの面積s、首部1aの長さl、及び音
速により共鳴周波数が決まる。この共鳴周波数の音波が
ヘルムホルツ共鳴器1に入射すると、首部1aの空気は
激しく振動して、摩擦損失により音のエネルギが失われ
て吸音される。なお、ヘルムホルツ共鳴器1は、吸収の
ピークが鋭く、共鳴周波数付近の比較的狭い周波数範囲
の音を効率良く吸収するので、低周波音のように、卓越
成分をもつ音の低減に適している。
【0015】図2に示すように、本発明を実施した低周
波音低減装置2は、ヘルムホルツ共鳴器1を設けたパネ
ル3で構成され、この低周波音低減装置2内に音源であ
る振動篩4が設置されている。そして、低周波音低減装
置2は、従来から実施されている公知の防音ハウス又は
遮音室5内に設置されている。
【0016】図3、4に示す本発明の第1の実施の形態
では、パネル3に設けられているヘルムホルツ共鳴器1
の首部1a及び空洞部1bの断面形状は共に円形に形成
されている。このヘルムホルツ共鳴器1の間にできる空
間に、小型のヘルムホルツ共鳴器1Aを配置している。
ヘルムホルツ共鳴器1の共鳴周波数は、音源である振動
篩4が出す低周波振動数に実質的に一致した値で、小型
のヘルムホルツ共鳴器1Aの共鳴周波数は、振動篩4が
出す高調波成分の周波振動数に実質的に一致した値とな
っている。そして、ヘルムホルツ共鳴器1で卓越超低周
波音を低減し、別の小型のヘルムホルツ共鳴器1Aでそ
の卓越高次成分を低減するようにしている。このよう
に、振動篩4からは、篩面の振動数を基本周波数とする
高調波成分音も発生するため、高調波成分の周波数と等
しい共鳴周波数を持つ小型のヘルムホルツ共鳴器1Aを
パネル3内に併設することで、高調波成分も併せて低減
することができる。
【0017】そして、図5、6に示す第2の実施の形態
では、パネル3に設けられているヘルムホルツ共鳴器1
の首部1aの断面形状は円形で、空洞部1bの断面形状
は四角形に形成されている。このヘルムホルツ共鳴器1
の共鳴周波数は、音源である振動篩4が出す低周波振動
数に一致した値となっている。この実施の形態ではパネ
ル3にヘルムホルツ共鳴器1を隙間なく配置でき、低周
波振動音の吸音効果を高めることができる。
【0018】また、図7、8に示す第3の実施の形態で
は、パネル3に設けられているヘルムホルツ共鳴器1の
首部1aの断面形状は円形で、空洞部1bの断面形状は
六角形に形成されている。このヘルムホルツ共鳴器1の
共鳴周波数も、音源である振動篩4が出す低周波振動数
に一致した値となっている。この実施の形態でもパネル
3にヘルムホルツ共鳴器1を隙間なく配置でき、低周波
振動音の吸音効果を高めることができる。
【0019】そして、本発明の低周波音低減装置2に
は、音源である振動篩4が発生する超低周波音を現場で
測定、分析した後、その卓越周波数とヘルムホルツ共鳴
器1の共鳴周波数が一致するように、首部1aの開口径
あるいは開口部深さを調整するための共鳴周波数の制御
機構が設けられている。
【0020】図9に示す実施の形態は、開口径の異なる
円盤1cを予め複数用意し、ねじ1dなどの係止手段に
より首部1aに着脱自在に設けたものである。このよう
に開口径の異なる円盤1cを首部1aに着脱自在に設け
たので、音源に応じてヘルムホルツ共鳴器1の共鳴周波
数を現場で最適に調整でき、吸音効果を高めることがで
きる。
【0021】そして、図10に示す実施の形態は、首部
1aに絞り機構1eを設けたものである。このように、
首部1aに絞り機構1eを設けたので、音源に応じてヘ
ルムホルツ共鳴器1の共鳴周波数を現場で最適に調整で
き、吸音効果を高めることができる。
【0022】さらに、図11に示す実施の形態は、開口
径及び開口の深さが異なる円筒1fを複数用意し、ねじ
1dなどの係止手段により首部1aに着脱自在に設けた
ものである。このように、円筒1fを首部1aに着脱自
在に設けたので、音源に応じてヘルムホルツ共鳴器1の
共鳴周波数を現場で最適に調整でき、吸音効果を高める
ことができる。
【0023】また、図12に示す実施の形態は、首部1
aに伸縮円筒1gを設けて首部1aの深さを調整できる
ようにしたものである。このように、首部1aに伸縮円
筒1gを設けたので、音源に応じてヘルムホルツ共鳴器
1の共鳴周波数を現場で最適に調整でき、吸音効果を高
めることができる。
【0024】以下に約25分の1の大きさの模型による
実験結果を示す。この実験で使用したヘルムホルツ共鳴
器1の首部1aの開口径は5〜21mm、空洞部の厚さ
は7〜18mm、空洞部の幅は54〜109mm、音源
である振動篩4が発生する超低周波音の周波数は20H
z前後であるので、約25倍の500Hz前後の音源を
使用した。
【0025】図13は上述した模型による共鳴部の体積
と減音量の関係を示すものである。この図において、丸
印は空洞部1bの断面形状が円形、dは首部1aの開口
径、hは空洞部1bの厚さ、Dは空洞部1bの直径であ
る。そして、四角印は空洞部1bの断面形状が四角形、
dは首部1aの開口径、hは空洞部1bの厚さ、Wは空
洞部1bの一辺の長さである。
【0026】この実験結果から判るように、全般に共鳴
部の体積が大きくなる(共鳴部が厚くなる)とともに、
減音量が大きくなる傾向が見られる。また、共鳴部の空
洞断面形状の影響については、空洞部の(厚さ/幅)比
が大きいものほど(空洞部の扁平度が小さいものほど)
減音量が大きく、また空洞部断面形状は円形の方が四角
形のものよりも減音量が大きくなる傾向が見られる。
【0027】図14は上述した模型による共鳴部の厚さ
と共鳴部単位体積当たりの減音量の関係を示したもので
ある。この図において、丸印は空洞部1bの断面形状が
円形、dは首部1aの開口径、hは空洞部1bの厚さ、
Dは空洞部1bの直径である。そして、四角印は空洞部
1bの断面形状が四角形、dは首部1aの開口径、hは
空洞部1bの厚さ、Wは空洞部1bの一辺の長さであ
る。
【0028】この実験結果から判るように、全般に共鳴
部の厚さが大きくなるに従い、単位体積当たりの減音量
が大きくなる傾向が見られる。また、空洞部の断面形状
の影響については、断面が円形状のものは四角形のもの
と比較して同じ厚さでも単位体積当たり大きな減音量が
得られていることがわかる。
【0029】これらのことから、共鳴部空洞の断面形状
を円形などにすることで、共鳴器の吸音効率を高め、パ
ネルの薄型化が可能になることがわかる。
【0030】
【発明の効果】以下に本発明の効果を列挙する。 (1) 吸音材、遮音材による在来の低周波音低減装置
によれば、超低周波音の伝搬防止には大規模な設備が必
要であったが、本発明の低周波音低減装置によれば、よ
り簡易な設備で低減でき、対策に要する工期を短縮で
き、対策費用の低減が可能となる。 (2) 本発明の低周波音低減装置を薄型化するために
共鳴器を平板状にすると吸音能力が低下するという問題
があるが、ヘルムホルツ共鳴器の空洞部の断面形状を単
純な四角形とせず、円形や六角形などにすること、単位
面積当たりの開口部総面積(開孔率)を大きくするこ
と、あるいは空洞部の偏平率(厚さ対幅比)を工夫する
ことにより吸音能力の向上を図ることができる。 (3) 本発明の低周波音低減装置を防音ハウス又は薄
型のコンクリート遮音室内に設置するなどして、既存の
方法と組み合わせて使用すれば、超低周波音と同様に可
聴騒音の低減も可能となる。 (4) 従来困難であった施工開始後(振動篩の運転開
始後)の対策が可能となる。 (5) 各構成要件を組立てて構成する組立て式とする
ことができるので、複数の工事現場で繰り返し使用で
き、解体時のコスト低減、産業廃棄物排出量の低減に寄
与する。 (6) 従来のような数十cmという厚さの鉄筋コンク
リート壁を必要とせずに対策が行えるため、対策費用の
低減が可能となる。 (7) 本発明の低周波音低減装置によれば、遮音材と
吸音材の組み合せによる在来の防音ハウスなどでは困難
であった超低周波音対策を効率的、経済的に行うことが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施した低周波音低減装置のパネルに
設けられているヘルムホルツ共鳴器の断面図。
【図2】本発明を実施した低周波音低減装置の一例を示
す斜視図。
【図3】本発明に使用されるパネルの第1の実施の形態
の正面図。
【図4】同上パネルを断面で示す側面図。
【図5】本発明に使用されるパネルの第2の実施の形態
の正面図。
【図6】同上パネルを断面で示す側面図。
【図7】本発明に使用されるパネルの第3の実施の形態
の正面図。
【図8】同上パネルを断面で示す側面図。
【図9】ヘルムホルツ共鳴器の首部の一例を断面で示す
側面図。
【図10】別の首部の例を断面で示す側面図。
【図11】他の首部の例を断面で示す側面図。
【図12】さらに別の首部の例を断面で示す側面図。
【図13】模型による共鳴部の体積と減音量の関係を示
す図。
【図14】模型による共鳴部の厚さと共鳴部単位体積当
たりの減音量の関係を示す図。
【符号の説明】
1、1A・・・ヘルムホルツ共鳴器 1a・・・首部 1b・・・空洞部 1c・・・円盤 1d・・・ネジ 1e・・・絞り機構 1f・・・円筒 1g・・・伸縮円筒 2・・・低周波音低減装置 3・・・パネル 4・・・音源(機器) 5・・・防音ハウス又は遮音室
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−161281(JP,A) 特開 平6−158751(JP,A) 特開 平7−329828(JP,A) 特開 昭55−36566(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/16 E04B 1/86

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部に低周波音を発生する機器(4)を
    設け、パネル(3)で構成された低周波音低減装置にお
    いて、前記パネル(3)には断面形状が円形で機器側に
    設けた首部(1a)とその首部に対して反機器側に設け
    られ断面形状が円形の空洞部(13)とよりなる複数の
    ヘルムホルツ共鳴器(1)が形成され、これらのヘルム
    ホルツ共鳴器(1)の間にできる空間に複数の小型のヘ
    ルムホルツ共鳴器(1A)が配置され、前記ヘルムホル
    ツ共鳴器(1)の共鳴周波数は機器が出す低周波振動数
    に実質的に一致し、前記小型のヘルムホルツ共鳴器(1
    A)の共鳴周波数は機器が出す高周波成分の周波数振動
    数に実質的に一致した値であることを特徴とする低周波
    音低減装置。
  2. 【請求項2】 内部に低周波音を発生する機器(4)を
    設け、パネル(3)で構成された低周波音低減装置にお
    いて、前記パネル(3)には断面形状が円形で機器側に
    設けた首部(1a)とその首部に対して反機器側に設け
    られ断面形状が六角形の空洞部(13)とよりなる複数
    のヘルムホルツ共鳴器(1)が形成され、前記ヘルムホ
    ルツ共鳴器(1)の共鳴周波数は機器が出す低周波振動
    数に実質的に一致していることを特徴とする低周波音低
    減装置。
  3. 【請求項3】 首部(1a)に絞り機構(1e)を設け
    た請求項1又は2のいずれかに記載の低周波音低減装
    置。
  4. 【請求項4】 首部(1a)に円筒(1f)が着脱自在
    に取付けられている請求項1又は2のいずれかに記載の
    低周波音低減装置。
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