JP3316831B2 - 鉄道車両用ブレーキディスク - Google Patents

鉄道車両用ブレーキディスク

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    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
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    • F16D65/02Braking members; Mounting thereof
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  • Mechanical Engineering (AREA)
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  • Manufacture Of Alloys Or Alloy Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄道車両用ブレーキディ
スク、特に高速車両用のブレーキディスクに係る。
【0002】
【従来の技術】たとえば、J.Rの新幹線車両用に使用
されているブレーキディスクについては、創業当時の研
究開発を通じて低合金鋳鉄が長い間、専用的に採用され
てきた。この特殊鋳鉄は通称NCM鋳鉄と呼ばれ、鋳鉄
成分に、ニッケル:1.0〜2.0、クローム:0.3
〜0.6%、モリブデン:0.3〜0.5%程度の添加
金属を配合したもので、基地はこれら配合金属を固溶し
て強化したパーライト相であり、この基地内にやや太く
て短い黒鉛を芋虫状に析出した組織から成り立ってい
る。鉄道車両用のブレーキディスクとして特に求められ
ることは、通常停止のときも非常停止のときも、すなわ
ち制動のかかる瞬間の車両速度が高速のときも低速のと
きもほぼ変らない摩擦特性を具えて、高速時の制動で強
大な押圧力を加えられてもこれに耐える強度と耐摩耗性
を有するとともに、瞬間的に摺動面が温度上昇したとき
もこれに耐えて熱亀裂の進行がきわめて緩慢であること
を大事な要件とされている。
【0003】この点、添加合金の固溶によって強化され
たパーライト相を母相とする鋳鉄は、ブレーキ摺動面に
析出している黒鉛が一種の潤滑材の役割を果して耐摩耗
性が高い上、熱影響による変形を吸収する一種の緩衝材
の役割も果すので、ブレーキディスク材としては、他の
金属材料には得られない優れた特性を具えたものとして
広く採用されている。この中でも先に述べた摩擦特性、
すなわち制動の瞬間における初速度が高速(たとえば2
40km/h)であっても、低速(たとえば30km/
h)であっても殆ど変ることのない摩擦係数を保持して
いるという材質的な特徴が具わっているため、他の材料
に抜きん出て高い評価を与えられる主な理由となってい
る。
【0004】しかしながら、最近は新幹線のスピードア
ップがJ.R各社の技術的な主目標となり、かって最高
240km/h程度で運行していた車両が300km/
hを指向する開発競走が激しく行われるようになり、こ
れに伴って車両に取り付けるブレーキディスクも従来の
NCM鋳鉄ではこの苛酷な使用条件に耐えることが難し
くなり、ブレーキディスク用の新しい材質の開発が急が
れる状況となっている。その開発の方向としては大別し
て二つの傾向がうかがわれ、その一つは複合材料、たと
えば鋼材を基盤にして耐摩耗性を具えた特殊鋳鉄を貼り
合わせた材料など二以上の材料を緊密に重ね合せて相互
の長所を活用して苛酷な条件に耐えられるように図った
ものである。しかし、複合材料は製作に当って一般的に
手数がかかり、生産能率が低くコストが高く嵩む欠点が
最大の課題である。
【0005】材質そのものを低合金鋳鉄から他の種類に
変換するのがもう一つの開発方向である。機械的な強度
を向上する点に主眼点をおいたものとしては鍛造鋼を使
用するものが知られているが、耐摩耗性について従来の
鋳鉄に及ばないことは材料の本質から見て容易に想像で
きる。これに反し車両の軽量化を図るのに最も有力な手
段としてアルミニュウムを主体とする軽金属を活用する
着想が浮上し、これについても幾つかの提案が既に公開
されている。
【0006】特開平2−25538号公報や、特開平3
−47945号公報などはこの一例であって、後者につ
いて見るとアルミニュウムをベースとする母相にセラミ
ックスを分散強化したアルミニュウム複合体であり、具
体的にはアルミニュウム金属母相としてはAl−Mg合
金を、また、セラミックスとしてはアルミナ(Al2O
3)または炭化珪素(SiC)をそれぞれ実施態様とし
て開示ししている。ここで母相としてAl−Mg合金を
選んだ理由としては、摩擦熱による強度低下が小さいこ
とを挙げている。またセラミックスの配合による作用と
しては、耐摩耗性の向上の他、表面温度の急激な上昇に
よって母金属のアルミニュウムが溶融寸前にまで加熱さ
れ焼き付く現象に対抗できることを説明している。
【0007】また、特開昭59−173234号公報に
係る別の従来技術では、Al−過共晶Si合金中にセラ
ミック耐摩材および/または固体潤滑材を分散させたブ
レーキロータ用アルミニウム合金を対象とし、自動車、
二輪車のブレーキロータに限り、かつ、Al−Si合金
の中でもAl−過共晶Si合金に限定している。その理
由として、Al合金をAl過共晶Si合金としたのは、
鋳造時にSiの初晶を析出させることにより、表面の荒
れを少なくし、ブレーキパッドに対する攻撃性も少なく
するためであり、Si量は13重量%以上が好ましい、
と明確に臨界的意義を記載している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】アルミニュウムをベー
スとした合金のうち、Al−Mg合金は多くの分野にお
いて比較的よく使用される材質である。しかしながら、
Al−Mg合金を母相としてその中にセラミックスを配
合分散する場合を考えてみると、炭化珪素の粉体を適用
したときは、炭化珪素中のシリコンが溶融アルミニュウ
ムと反応して炭化アルミニュウムを形成し、この炭化ア
ルミニュウムは溶湯の流動性を著しく損なう性質があっ
て、鋳造性に大きな障害となる。一方、ブレーキディス
クには種々の形状があるが、共通している点は制動時の
発生熱を速やかに発散して摺動面の熱衝撃を軽減するた
め、摺動面の反対側の表面に円周方向へ放射状に多数の
リブを設けていることが基本であり、また車軸へ外嵌す
る中心孔の当り部も調整用の多数の突起を具えているこ
とが多い。全体の基本的な形状が広い表面積に対して比
較的薄い板厚からなることも加わり、複雑な形状で鋳造
の難しい製品の一つであると言ってよい。このような難
しい条件があるところへ、流動性の悪い溶湯を鋳込んで
も到底良品を得ることは困難であるという課題がある。
アルミニュウム合金の鋳造は、溶湯の鋳込み時における
酸化作用を受けやすく酸化物が溶湯中に巻き込んで欠陥
の原因となりやすいのに、鋳込み中の湯流れが悪いとこ
の傾向に拍車をかけ、条件をますます悪くすることとな
る。アルミニュウム合金の鋳造にはダイキャスト法が広
く用いられるが、鋳造の方式を問わず、湯流れをよくす
るために溶湯温度を高めると、前記の炭化アルミニュウ
ムの反応がますます促進されて湯流れをさらに悪くする
という悪循環を招く。
【0009】結局、Al−Mg合金は強さ、伸び、靭性
に優れ、溶接性も良好な材料であるが、溶融合金の酸化
が激しくドロス発生量が多いため、湯流れ、押湯効果、
型充填性が悪く、普通鋳造には馴染まない本質があり、
前記従来技術の実施例である5083合金のような展延
材としてのみ使用するのが通常であって、ブレーキディ
スクの成形加工へ適用するためには、コンポキャスティ
ングと呼ばれる溶湯鍛造法や粉末冶金法(焼結成形)な
どに依存せざるを得ず、生産性が低く製造コストの負担
が過大に失するという実施上の重大な難点に直面する。
【0010】一方、品質の面では5083合金のように
Mgを多く含む材質は、過度の冷間加工を与えたまま高
温での使用が繰り返されると、応力腐食割れを生じるこ
とがあるとされ(軽金属協会編 アルミニウム技術便覧
カロス出版:第70ページ)、急冷を伴う溶湯鍛造
(コンポキャスティング)などで成形したブレーキディ
スクを使用した場合、熱衝撃が日常的に繰り返し負荷す
る条件下では、熱亀裂の発生と進行に拍車をかける可能
性もあって、単に高温での強度低下が小さいという理由
だけで選択してよいのか疑問も残り、ブレーキディスク
としては実用上、取り扱いにかなり難しい材料であると
言わざるを得ない。
【0011】Al−Mg合金を母相とする合金を選んだ
場合、この中へ分散するセラミックスを炭化珪素とした
ときの障害は前述の通りであるが、セラミックスをアル
ミナとしたときにはこのような問題は起こらない。とこ
ろがアルミナは一般的に溶湯との濡れ性が悪く、母相内
で均等に分散した鋳造品をつくることはかなり困難とさ
れている。すなわち、この従来技術においては材質のブ
レーキディスクにおける適性が認められたとしても、工
業的にこれを量産することがかなり難しいのが現状であ
り、実用化を阻む大きな要素である。
【0012】また、別の従来技術であるAl−過共晶S
i合金について検討するために図1のAl−Si平衡状
態図を見ると、11.6%Si組成で共晶組織がある
が、実際には鋳造するときのように冷却がかなり急に行
なわれるとSiは過冷の傾向が強く、この共晶組成の合
金ではα−固溶体が初晶となって出やすく、見掛け上で
は共晶点がSi側に移動し、14%Si程度のところと
なる(椙山:非鉄金属材料 コロナ社:第159ペー
ジ)。すなわち、この従来技術はα+Si共晶と初晶S
i粒子の組織よりなり、Si初晶の存在が最大の特徴で
ある。しかし過共晶Si域で析出する初晶Siは、六角
板状の粗大な結晶が成長しやすく機械的強度を劣化させ
る原因となる。この結晶を微細化するためには通常、N
aやPを添加することが慣用化されているが、普通鋳造
法を適用すれば、添加したNaと鋳型間の反応による欠
陥(ピンホール)の発生が懸念され、製造方法を限定す
るという課題も残る。
【0013】また、ブレーキディスクの重要な別要件と
して前記の熱亀裂の問題がある。熱亀裂は繰り返し受け
る熱衝撃に耐え切れずに発生し進行するから、基本的に
高温における伸びと強度が大きく、熱膨張率が小さく、
熱伝導率が大きいほど耐性が向上する。図2(A)、
(B)は250℃および常温におけるSi%と伸び、引
張り強度の関係を示したものであり(前出アルミニウム
技術便覧:第127ページ)、特に高温においてはSi
共晶点を境にSiの増加と共に強度は増加するが、伸び
は大幅に失われていく傾向を明示している。すなわち過
共晶Si合金をブレーキディスク材に適用した場合に
は、プラスの要因とマイナスの要因が同居することを示
唆している。さらに熱伝導率についてはAl純度の高い
方が大きいことは自明の理であり、この三要素が相乗作
用として働けば、純度の落ちた過共晶Si合金が、熱亀
裂の点でブレーキディスク材として果たして優越するの
か、大きな疑問の残るところである。
【0014】本発明は以上に述べた課題を解決するため
に、セラミックとして炭化珪素を選んでも鋳造性が優れ
容易に良品が得られる上、車両用ブレーキディスクとし
て求められる摩擦特性が、現在よりも高速の制動条件で
あっても少なくとも従来のNCM鋳鉄とほぼ同等の水準
を保持できる材質の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明に係る車両用ブレ
ーキディスクは、シリコンを6〜13%含むAl−亜共
Si合金を母相とし、粒径が3〜50μmの炭化珪素
を母相金属に対し5〜30重量%の範囲で均等に分散強
化して鋳造し、現在より増速した制動力の変動にも安定
して対応することによって前記の課題を解決した。
【0016】
【作用】シリコンを含むアルミニュウムも軽金属の製品
として種々の用途に適用されているが、このAl−亜共
Si合金の溶融状態において炭化珪素を添加したとき
に、溶湯がAl−Mg合金の場合と決定的に違う点は、
溶湯中にシリコンが含まれているために、炭化珪素が分
解して遊離シリコンと炭化アルミニュウムなることを阻
止することである。これは溶融状態におけるシリコンと
アルミニュウムとの冶金的な反応エネルギーの平衡関係
を考えても推断できる相違点であり、炭化珪素はそのま
まの分子構造を保って独立した一相を形成して母相内に
分散し、溶湯中のシリコンは凝固過程においてアルミニ
ュウムとの間に二元共晶物を晶出して母相を形成する。
すなわち溶湯の流動性を阻害する炭化アルミニュウムの
生成を大幅に抑制するから、鋳造性を損うことが少なく
複雑な形状のブレーキディスクの鋳型へ鋳込んでも欠陥
のない良品を得ることができる。
【0017】また、本発明はα−Alデンドライトとα
+Si共晶の組織であり、引用した従来技術のAl−過
共晶Si合金はα+Si共晶と初晶Si粒子の組織より
なり、Si初晶の存否がその大きな相違点であると言え
る。従来技術ではSi初晶による表面荒れの軽減を発明
の要旨とするのに対し、本発明では流動性に優れ熱間
性がないので鋳造が容易で複雑な形状に適している点を
重視してSi初晶の発生する領域を排除したという基本
的な違いがある。
【0018】このブレーキディスクは鉄道車両用の中で
も高速鉄道を主な対象にしているから、炭化珪素の配合
率は少なくとも5%が必要であり、これ以下であれば摩
擦および摩耗特性が落ち、非常制動のような高速からの
急激な摺動作用には適合しない。また、急速な昇温のた
めに焼き付く課題が解決されていないので不適当であ
る。しかし、独立した粉体としてアルミニュウムに均一
に分散する添加割合には製品としての機械的な強度上の
制約があり、炭化珪素が30%を超えると鋳造性も悪く
なりブレーキディスクの加工性の劣化や、脆性の目立っ
た増加が認められるようになって、ブレーキディスクと
しての適性を失う結果となる。一方、炭化珪素の粒度と
しては、比較的広い範囲の粉体が適用可能であり、3〜
50μmの粒度の中からブレーキディスクの大きさや使
用条件を参酌して適宜選択するのが実際的である。最も
望ましくは10〜30μmの粒度範囲であることが以下
に述べる実施例においても確認されている。
【0019】
【実施例】JISに定めるAC4CH(Al−Si合
金)をマトリックスとして3〜50μmの粒度からなる
炭化珪素粉体を分散強化した車両用ブレーキディスクを
試作した。すなわち、「シルミン」と呼ばれるAl−1
2%Siの二元共晶合金は耐食性が比較的良く、熱膨張
が小さいなどブレーキディスク材として好適な長所を具
えるが、強度がさほど高くないという弱点もある。本発
明の実施例はややSiを下げた亜共晶域で、シルミン系
の鋳造性の良さを活かした上で、さらに少量のMgを加
えて熱処理効果を与えて機械的性質を向上したγ−シル
ミン系のJISAC4CHを母材に選択したものであ
り、前期従来技術のAl−過共晶Si合金ではなく、A
l−亜共晶Si合金のなかでも、さらに好ましいAl−
亜共晶Si−Mg系の合金を実施例としたのである。
【0020】この場合、形状ならびに大きさとしては現
在東海道新幹線において実車として稼働しているブレー
キディスクと同一とし、前記の母合金に炭化珪素を10
%および20%配合して鋳造した。ブレーキディスクと
しての特性を確認するために従来のブレーキディスクに
適用しているブレーキ評価試験機を使用し、摩擦の相手
側としてはノンアスベスト系のファイバー入りレジンタ
イプを適用した。試験条件は制動初速度を30、12
0、170、240、270km/hに変え、摺動面へ
の押圧力を1400kgf×2、慣性モーメントは車輪
径910mm、車輪重量8000kgfとして求めた数
値に、試験機の機械損失を考慮に入れて168.6kg
f・s mとし、測定の項目としては平均摩擦係数で表
示することとした。その結果を表1に示している。
【0021】
【表1】
【0022】この実施例の結果からも明らかなように制
動の初速度を低速から計画中の超高速の広い範囲に亘っ
て変化させても平均摩擦係数はある一定の数値の範囲内
に収り、制動力の変動に対して安定した対応をしている
ことを示唆している。現在の新幹線用のブレーキディス
ク(NCM鋳鉄)に対する確性試験においては、この平
均摩擦係数は0.25〜0.30を基準として設計諸元
を計算しているので、現在の実車よりも増速しても変ら
ぬ範囲内に留まることは、将来の高速車両に適用するこ
とが可能であることを明確に例証している。
【0023】
【発明の効果】本発明に係る車両用のブレーキディスク
は以上に述べたように車両の制動初速度が高速から低速
に至る広い範囲に亘ってほぼ変らぬ摩擦特性を維持し、
軽量化とともに現在開発中の超高速車両のブレーキディ
スクとしてきわめて優れた適合性を具えている。しか
も、冶金的に安定した成分から成り立っているので鋳造
性にも恵まれ、複雑な形状のブレーキディスクであるの
に拘わらず良品を量産できる有利な特性を具えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al−Si平衡状態図である。
【図2】Al−Si系合金における高温(A)および常
温(B)の引張り強度、伸びとSi%との関係図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 1/10 C22C 32/00 F16D 65/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリコンを6〜13%含むAl−亜共晶
    Si合金を母相とし、粒径が3〜50μmの炭化珪素を
    母相金属に対し5〜30重量%の範囲で均等に分散強化
    して鋳造し、現在より増速した制動力の変動にも安定し
    て対応することを特徴とする鉄道車両用ブレーキディス
    ク。
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