JP3316186B2 - 固体電解質の製造方法 - Google Patents
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Description
ム−硫黄電池等に用いられる固体電解質の製造方法に関
し、詳しくは、電池寿命に悪影響を及ぼす繊維状異物を
確実に除去し得る固体電解質の製造方法に関する。
350℃の高温で作動する高温2次電池であり、例えば
耐熱性・耐食性に優れるアルミニウム合金等により構成
された陽極容器内に、活物質である金属ナトリウム及び
硫黄を固体電解質により隔離収納した構造を採ってい
る。通常、固体電解質としては、Naイオンのイオン伝
導率が極めて高いベータアルミナ固体電解質が使用され
ており、従来は例えば図2に示すような工程で固体電解
質の製造が行なわれていた。
マグネシウム原料種等の所定量の原料粉末に水を加え、
攪拌槽型攪拌ミル(例えば、商品名;アトライタ(三井
三池化工機(株))等)により混合・粉砕してスラリー
を形成し、当該スラリー中に混在する粗大粒子を濾過除
去(濾別)して分級した後、乾燥し、乾燥粉末を仮焼し
てベータアルミナ化する。
を加えて粉砕し、スラリーとし、分級したスラリーをス
プレードライヤにて造粒し、ふるい分け機を用いて整粒
(乾式分級)し、整粒された顆粒を成形型に投入して加
圧成形し、加圧成形体を焼成してベータアルミナ固体電
解質を製造していた。
ルミナ仮焼体を製造する工程を省略し、直接アルミナ原
料、アルカリ原料種、マグネシウム原料種等の各原料を
混合・粉砕し、造粒した後、成形し、次いで焼成するこ
とによりベータアルミナ固体電解質を製造する方法も開
示されている(特開平7−272749号公報)。
タアルミナ固体電解質は、不良発生率が1/106以下
の高い信頼性を求められるため、厳しい品質管理下で工
業的な生産が行われている。しかしながら、10万個に
1個程度という僅かな比率ではあるが、通常2500充
放電サイクル程度のナトリウム−硫黄単電池の耐用寿命
が、約500充放電サイクル程度となる不良単電池が発
生していた。
高い信頼性を求められるものであることに加え、1個の
断熱容器内に設置された多数の単電池を直並列に電気接
続したモジュール電池の形で使用される。従って、モジ
ュール電池において大量の単電池を使用する場合には、
このような低い頻度であっても不良単電池が発生するこ
とは好ましくない。
は、不良単電池のベータアルミナ固体電解質の局部に存
在する欠陥について徹底的に解析調査を行った。その結
果、不良単電池のベータアルミナ固体電解質に光透過検
査、浸透探傷法等では容易には検出できない極微小のピ
ンホール(繊維状異物の焼失孔:例えば、直径約10μ
m、長さ約1000μm)が存在することを確認した。
これは、固体電解質を製造する工程において作業者の衣
服、手袋、体毛等に起因する極めて少量の繊維状異物が
原料スラリー中に混在したためである。
微細化されればその後の工程で問題とならないが、微細
化されず残留した場合には、焼成時に焼失し前記ピンホ
ールの発生要因になるものと推察される。従って、不良
発生率が1/106以下の高い信頼性のある固体電解質
を提供するためには、上述のような繊維状異物を確実に
除去し得る固体電解質の製造方法を確立する必要があ
る。
上記従来の固体電解質の製造方法における問題を解決す
るため、種々検討を重ねた結果、電池寿命に悪影響を与
える繊維状異物を確実に除去し得る製造方法を完成し
た。
・混合してスラリーを製造する粉砕・混合工程と、当該
スラリー中に混在する粗大粒子を濾過除去する分級工程
と、前記スラリーを造粒・乾燥して顆粒状物とする造粒
工程と、当該顆粒状物を成形型に投入し、加圧成形して
成形体とする成形工程と、当該成形体を焼成する焼成工
程とを含む固体電解質の製造方法であって、スラリーの
流れを少なくとも1回以上屈曲させる濾過膜を通過させ
ることにより、スラリー中に混在する繊維状異物を濾過
除去する繊維濾過工程を備えたことを特徴とする固体電
解質の製造方法が提供される。
合工程が、攪拌槽型攪拌ミルを用いて原料粉末のスラリ
ーを循環しながら粉砕・混合する方法によるものであっ
て、前記スラリーの循環経路に繊維濾過工程を併設する
ことが好ましく、分級工程における粗大粒子の濾過除去
と、繊維濾過工程における繊維状異物の濾過除去を同時
に行うことが好ましい。
級工程から造粒工程にスラリーを輸送するパイプライン
の途中に繊維濾過工程を備えることが好ましく、顆粒状
物を成形型に投入する直前に、フルイ網を通過させて繊
維状異物を除去することが好ましい。
る濾過膜は、綾畳織された網であることが好ましく、綾
織された網、綾畳織された網、綾織された網の順で三層
に積層された複層膜であることが更に好ましい。また、
繊維濾過工程で使用される濾過膜がステンレスからなる
ことも好ましい。なお、本発明の製造方法は、ベータア
ルミナ固体電解質の製造に特に好適に用いることができ
る。
を粉砕・混合してスラリーを製造する粉砕・混合工程、
当該スラリー中に混在する粗大粒子を濾過除去する分級
工程、前記スラリーを造粒・乾燥して顆粒状物とする造
粒工程、当該顆粒状物を成形型に投入し、加圧成形して
成形体とする成形工程、当該成形体を焼成する焼成工程
の各工程を含む点においては従前と同様である。
流れを少なくとも1回以上屈曲させる濾過膜を通過させ
ることにより、スラリー中に混在する繊維状異物を濾過
除去する繊維濾過工程を備えた点において従前とは異な
る。このような繊維濾過工程を備えることにより、通常
の濾過方法では除去し難い繊維状の異物を確実に除去す
ることが可能となる。以下、本発明について詳細に説明
する。
ーの流れを少なくとも1回以上屈曲させる濾過膜を用い
るのは、このような濾過膜によればスラリーが濾過膜を
通過する際にスラリーの流れが屈曲されるため、当該屈
曲時にスラリー中に混在する繊維状異物が濾過膜に確実
に捕捉されるからである。これに対し、図4に示した平
織された網24のように、スラリーの流れが屈曲せず直
線的に通過するような濾過膜では、形状が直線状である
繊維状異物を捕捉することが困難である。
とも1回屈曲させれば足りるが、多数回屈曲させる濾過
膜を用いれば、繊維状異物を捕捉する確率を更に高めら
れる点において好ましい。なお、本発明において「屈
曲」というときは、直線的に屈曲させる場合の他、曲線
的に湾曲させる場合をも包含する。
曲させる濾過膜としては、図3に示すような、綾畳織さ
れた網21が具体例として挙げられる。綾畳織21と
は、畳織を綾織とした織方で、網目を構成する縦線22
と横線23のうち横線23のみが相接触して並列され、
かつ、縦線22と横線23が相互に少なくとも2本づつ
乗り越している織方をいう。
重に重なる構造であるため、網目を通過する際にスラリ
ーの流れが少なくとも1回以上屈曲させられる。従っ
て、当該屈曲時にスラリー中に混在する繊維状異物を確
実に捕捉して、除去することが可能である。
された網、綾畳織された網、綾織された網の順で三層に
積層された複層膜を濾過膜として用いることが更に好ま
しい。このような複層膜によれば、繊維状異物の除去が
確実にできるのみならず濾過による圧力抵抗が少ないた
め濾過速度も速くなるためである。なお、綾織とは、図
5に示す如く、網目を構成する縦線22と横線23が一
定の間隔を保ち、相互に少なくとも2本づつ乗り越して
いる織方をいう。また、繊維濾過工程で使用する濾過膜
は、スラリーを汚染しないステンレス製のものを用いる
ことが好ましい。
る、スラリーの流れを少なくとも1回以上屈曲させる濾
過膜としては、PVA樹脂等からなるスポンジ状濾材
(例えば、商品名;カネボウカネフィール(鐘紡
(株))等)も用いることができる。スポンジ状の気孔
構造を通過する場合にも、上述の綾畳織された網と同様
にスラリーの流れが少なくとも1回以上屈曲させられる
ため、繊維状異物の捕捉性に優れるからである。
うなスラリーの流れを少なくとも1回以上屈曲させる濾
過膜を通過させる繊維濾過工程を、固体電解質の製造工
程中に少なくとも1箇所に備えていれば足りるが、繊維
状異物を確実に濾過除去するため複数箇所に備えている
ことが好ましい。以下、各工程別に好ましい実施態様を
説明する。
所定量の原料粉末と水を加え、粉砕・混合してスラリー
を製造する工程である。本発明においては、粉砕・混合
工程中に繊維濾過工程を備えていることが好ましい。
シウム原料種は粉末状であっても2次粒子であり、混在
する繊維状異物が2次粒子内に咬合されている場合もあ
る。従って、粉砕・混合工程中に繊維濾過工程を備える
ことにより、粉砕時に2次粒子から離脱した繊維状異物
をも除去することができるからである。
型攪拌ミルを用いて原料粉末のスラリーを循環しながら
粉砕・混合する方法によるものであって、前記スラリー
の循環経路に繊維濾過工程を併設することが好ましい。
図6に示すように、攪拌槽型攪拌ミル1(例えば、商品
名;アトライタ(三井三池化工機(株))等)は、浅い
円筒状の攪拌槽2内に多段の攪拌アーム3を有する攪拌
手段4を備えた粉砕装置である。
5をアルミナ玉石等の硬質なビーズ6とともに投入し攪
拌・相対運動させると、ビーズ6の摩擦・せん断力によ
り被粉砕物を粉砕することができ、他の粉砕装置に比し
て粉砕作用が強いため、従来より好適に用いられてい
る。
のミル中滞留時間を制御するための循環ポンプ7及び循
環経路8を有しているため、本発明では、図2に示すよ
うに、攪拌槽型攪拌ミル1の循環経路8に繊維濾過経路
9及び繊維濾過装置10を併設して、スラリー中に混在
する繊維状異物を濾過除去することが好ましい。
既述の綾畳織された網、スポンジ状濾材(例えば、商品
名;カネボウカネフィール(鐘紡(株))等)を用いる
ことが好ましく、図6に示すように綾織された網11、
綾畳織された網12、綾織された網13の順で三層に積
層された複層膜14を用いることが更に好ましい。
物の濾過除去を行う場合には、粉砕・混合の初期段階に
おいてスラリー中に混在する繊維状異物を除去すること
が好ましい。繊維状異物自体の粉砕が進行しておらず、
繊維状異物の濾過除去が容易だからである。この場合、
粉砕・混合の開始時から粉砕・混合の全時間の15〜3
0%の時間、具体的には30〜60分間を粉砕・混合の
初期段階とすることが好ましい。
分程度、繊維濾過装置を通過せずにスラリーを循環して
粉砕のみを行い、繊維状異物を2次粒子から離脱させた
後に繊維濾過装置を通過させて濾過除去することも好ま
しい。更に、攪拌槽型攪拌ミルの攪拌槽に充填されたス
ラリー量の2倍以上の量を繊維濾過装置に通過させ、充
分に繊維状異物を濾過除去することが好ましい。
した後は、図6に示す切替弁15によりスラリーの循環
ラインを繊維濾過経路9から循環経路8に切替え、スラ
リーを循環させながら粉砕・混合を継続する。粉砕・混
合してスラリーを形成した後、切替弁15によりライン
を切り替えて、粗大粒子を除去する分級工程へスラリー
を移送する。
程で製造されたスラリー中に混在する粗大粒子を濾過除
去する工程であり、従来は、スラリー中に混在する所定
の粒径範囲よりも粗大な粒子を除去することのみを目的
とし、目開き数10μmの平織された網を濾過膜として
用いていた。
前記繊維濾過工程を併設することが好ましく、分級工程
における粗大粒子の濾過除去と、繊維濾過工程における
繊維状異物の濾過除去を同時に行うことが更に好まし
い。
既述の綾畳織された網、スポンジ状濾材(例えば、商品
名;カネボウカネフィール(鐘紡(株))等)を用いる
ことが好ましく、綾織された網、綾畳織された網、綾織
された網の順で三層に積層された複層膜を用いることが
更に好ましい。
に粉砕・混合工程で濾過除去されなかった繊維状異物を
除去することのみでなく、分級工程において新たに混入
した繊維状異物を除去することも目的としている。
を定期的に除去する作業が行われるため、この作業の際
に作業者の衣服や手袋の繊維、毛髪等が分級装置内に混
入することがあるからである。従って、残渣の除去作業
および装置の清掃作業の後は特に前記の繊維濾過を行う
ことが好ましい。
移送)分級工程において分級されたスラリーは、パイプ
ラインによって造粒工程に移送されるが、本発明におい
ては当該パイプライン中に繊維濾過工程を設けることが
好ましい。
トリッジ式のスポンジ状濾材(例えば、商品名;カネボ
ウカネフィール(鐘紡(株))等)を配置することが好
ましい。当該構成によれば、密閉ライン中を移送される
スラリー中に混在する繊維状異物を除去できることに加
え、濾材がカートリッジ式であるため交換の際にライン
を汚染することがなく、交換も容易である点において好
ましい。
れたスラリーは造粒工程に移送し、スプレードライヤ
(噴霧乾燥機)等により造粒乾燥して顆粒状物とする。
または噴流の場を利用して粉体の混合を行うフラッシュ
ブレンダ等の気流式混合機による混合、更にジャイロシ
フタ等の多段のフルイを有する乾式分級機を用いて所定
の粒径範囲以上の粒径を有する顆粒状物を除去する整
粒、を行った後パイプラインにより成形工程まで空気輸
送する。
れるため、この掃除の際に混入する可能性の有る繊維状
異物を除去することが好ましい。具体的には、顆粒状物
を成形型に投入する直前でフルイ網を通過させ、繊維状
異物を除去することが好ましい。既述の通り繊維状異物
が除去された顆粒状物は、整形型に投入し、例えば静水
圧加圧整形装置等により加圧整形した後、従来公知の方
法を用いて焼成し固体電解質とする。
を組み合わせた固体電解質の製造方法の実施例を図1に
示す。このような製造方法は、各工程に或いは各工程間
に繊維濾過工程を備えているため、原料粉末由来の繊維
状異物及び工程中で混入した繊維状異物が確実に除去さ
れるため、信頼性の高い固体電解質を提供できる点にお
いて特に好ましい。
法は、スラリーの流れを少なくとも1回以上屈曲させる
濾過膜を通過させることにより、スラリー中に混在する
繊維状異物を濾過除去する繊維濾過工程を備えているた
め、電池寿命に悪影響を及ぼす繊維状異物を確実に除去
することが可能となる。従って、本発明の製造方法によ
り製造された固体電解質は、不良発生率が1/106以
下の高い信頼性を確保することが可能となる。
である。
ある。
て、(a)は上面図、(b)はA−A’の概略断面図で
ある。
(a)は上面図、(b)はA−A’の概略断面図であ
る。
(a)は上面図、(b)はA−A’の概略断面図であ
る。
ける繊維状異物の濾過方法を示す概略説明図である。
4…攪拌手段、5…スラリー、6…ビーズ、7…循環ポ
ンプ、8…循環経路、9…繊維濾過経路、10…繊維濾
過装置、11…綾織の網、12…綾畳織された網、13
…綾織の網、14…複層膜、15…切替弁、21…綾畳
織の網状体、22…縦線、23…横線、24…平織の網
状体、25…綾織の網状体。
Claims (9)
- 【請求項1】 原料粉末を粉砕・混合してスラリーを製
造する粉砕・混合工程と、当該スラリー中に混在する粗
大粒子を濾過除去する分級工程と、前記スラリーを造粒
・乾燥して顆粒状物とする造粒工程と、当該顆粒状物を
成形型に投入し、加圧成形して成形体とする成形工程
と、当該成形体を焼成する焼成工程とを含む固体電解質
の製造方法であって、 スラリーの流れを少なくとも1回以上屈曲させる濾過膜
を通過させることにより、スラリー中に混在する繊維状
異物を濾過除去する繊維濾過工程を備えたことを特徴と
する固体電解質の製造方法。 - 【請求項2】 粉砕・混合工程が、攪拌槽型攪拌ミルを
用いて原料粉末のスラリーを循環しながら粉砕・混合す
る方法によるものであって、前記スラリーの循環経路に
繊維濾過工程を併設した請求項1に記載の固体電解質の
製造方法。 - 【請求項3】 分級工程における粗大粒子の濾過除去
と、繊維濾過工程における繊維状異物の濾過除去を同時
に行う請求項1に記載の固体電解質の製造方法。 - 【請求項4】 分級工程から造粒工程にスラリーを輸送
するパイプラインの途中に繊維濾過工程を備えた請求項
1に記載の固体電解質の製造方法。 - 【請求項5】 顆粒状物を成形型に投入する直前に、フ
ルイ網を通過させて繊維状異物を除去する請求項1に記
載の固体電解質の製造方法。 - 【請求項6】 繊維濾過工程で使用される濾過膜が、綾
畳織された網である請求項1に記載の固体電解質の製造
方法。 - 【請求項7】 繊維濾過工程で使用される濾過膜が、綾
織された網、綾畳織された網、綾織された網の順で三層
に積層された複層膜である請求項1に記載の固体電解質
の製造方法。 - 【請求項8】 繊維濾過工程で使用される濾過膜が、ス
テンレスからなる請求項1に記載の固体電解質の製造方
法。 - 【請求項9】 固体電解質がベータアルミナ固体電解質
である請求項1に記載の固体電解質の製造方法。
Priority Applications (1)
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