JP3307583B2 - インクジェットヘッド及びその製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッド及びその製造方法

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JP3307583B2
JP3307583B2 JP6143398A JP6143398A JP3307583B2 JP 3307583 B2 JP3307583 B2 JP 3307583B2 JP 6143398 A JP6143398 A JP 6143398A JP 6143398 A JP6143398 A JP 6143398A JP 3307583 B2 JP3307583 B2 JP 3307583B2
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリンタ、複写
機、ファクシミリ等の文字や画像等の記録装置などに適
用されるインクジェット式プリンタ、特に圧電体の歪を
ポンプの駆動源として利用したインクジェットヘッド及
びその製造方法に関する。近年の事務機器の自動化の環
境においてプリンタの存在は不可欠であり、個人使用向
けのプリンタも普及している。個人使用向けのプリンタ
として、ワイヤを駆動し、インクリボンおよび用紙を介
してこのワイヤをプラテンに押圧することで用紙上に印
字を行うワイヤ駆動型のプリンタに比べ、インクジェッ
トヘッドを用いたインクジェット式プリンタは騒音が発
生せず、比較的高速に印字でき、用紙1枚当りの印字コ
ストが低いために注目を浴びている。
【0002】
【従来の技術】圧電体の変形を利用するインクジェット
ヘッド用のポンプは、その高速応答性により弁を持たな
いポンプを構成することが可能である、という大きな特
徴を有し、小型で故障の少ないポンプを必要とするイン
クジェットヘッドに好適に用いられている。即ち、ポン
プの圧力室の流路を入口側と出口側とで抵抗と長さが異
なるように設計することで、圧力室からの流出、流入量
に差が生じ、全体として一方向の流れを形成することが
できる。
【0003】インクジェットヘッドでは、圧力室が膨張
する際には噴出ノズルの外側は大気であり、ノズルの大
気側の表面張力がノズルから圧力室への空気の流入を妨
げるので、圧力室には供給路側からのみインクが流入
し、より強い指向性を持つ。このような速度比をとるこ
とのできる駆動体として、圧電体は好適であり、特に厚
み方向の変形は超音波振動子にも用いられるようにMHz
オーダにも応答できる。
【0004】従来の圧電体を用いたインクジェットヘッ
ドでは、圧電体の圧電効果による極性方向の伸縮か、直
交する方向の伸縮のみ、又は圧電効果の剪断変形のみを
用いて、圧力室の体積変化を生じさせる構造で、圧電効
果の1つの変形方向のみがインクを加圧する手段として
用いられるにすぎなかった。圧電体の変形は分極方向を
33と称し、分極方向に垂直な方向はd31と呼ばれる
が、圧電体の厚み変形はその圧電定数d33が高々650
×10-12 m/Vであって、圧電体の厚みの如何にかか
わらず、電圧を100Vとしても膨張は70nm程度であ
って、圧力室を規定する圧電体の壁の面積を余程大きく
とらない限り、収縮容積のごく少ないポンプにしかなら
ない。即ち、電圧Eを分極方向に加え、その方向の圧電
体の厚みをtとすると電界強度はE/tであり、それに
よる厚み方向(即ち分極方向)の変形は、(E/t)×
33×t=Ed33となる。
【0005】ところが、圧電体に圧電効果を生じさせる
場合、複数方向での伸縮や剪断が生ずるので、効率の点
からもこれらの変形を単独で用いるのではなく複合させ
て利用することがエネルギ効率の点から重要である。ま
た、圧電体の複数の変形を複合させて利用することで低
電圧でも現状と同じ圧力室の体積変化を得ることがで
き、電力源にかかる費用を抑えた安価な構造を作ること
ができる。
【0006】そこで、圧電体の圧電効果による極性方向
であるd33方向の伸縮状態と極性方向に直交するd31
向の伸縮状態を複合させて利用できるようにして、エネ
ルギ効率の良いインクジェットヘッドを構成する。圧電
体に電圧を印加して圧電体のd31方向を収縮させる場合
を考えると圧電体のd33方向は膨張するので、これらの
相対する挙動の一方を圧電体とそれとは異種の材料で構
成した複合部材に生じるバイモルフ効果の起因として利
用する。つまり、圧電体そのものの圧電効果による変形
と、この圧電体と異種の材料とによって構成した複合部
材でのバイモルフ効果による変形との重ね合わせでイン
クへの加圧を行う。
【0007】即ち、平板の圧電体(活性体)に異種の材
料から成る非活性体を張り合わせると、圧電体は厚み方
向に膨張すると同時に面方向に収縮するので、非活性体
との間に歪みを生じ、これを緩和するために反りを生じ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】圧電体を2枚張り合わ
せ、両者の歪みを逆方向とするか、或いは、圧電体の壁
に非活性材料を接合し、両者の変形の差による屈曲を生
ぜしめるいわゆるバイモルフ壁は微少変形を大きく拡大
する方式として従来から知られ、効率の高い変形増大機
構と評価されている。しかし、変形拡大率を大きくする
設計は剛性の低下を伴い、一見効率的な変形はそれ自身
の剛性不足でインクを収縮させきれず、高圧を与えられ
ないこともある。また残留振動の周期が遅いこともあっ
て、繰り返し応答性を確保し、高圧を発生させるには、
拡大率を抑え、剛性を高めた設計とする他ない。同じ電
界強度のもとで拡大率はバイモルフの巾の3乗以上に比
例するので、巾を狭めることが望まれるインクジェット
ヘッドとしては拡大率との相反条件が制約を与える。
【0009】これに対し、本出願の発明者らは、バイモ
ルフを2枚対として向かい合わせて圧力室を構成したイ
ンクジェットヘッドを提案した(特願平8−33720
8号)。これは、バイモルフの効率的な変形が圧力室の
壁面の大部分(80%程度)に及ぶことに特徴があり、
バイモルフ自体の拡大率を得る為には圧力室を形成する
溝を深くすればよく、隣接ピッチ間隔の制約を受けな
い。
【0010】このように、壁面の大部分が収縮に寄与す
ることから変形自体は片面バイモルフの半分でよく、そ
れを巾(奥深さ)で補うことから、変形増大の為に厚み
をそれほど薄くしなくてもよく、高剛性を維持した設計
が可能となる利点がある。この為、同じ噴射量の設計
で、駆動エネルギ(1/2 CV2 )は積層型の1/3
程度で済み、高効率である。
【0011】しかし、圧電体の開放端を塞ぐ部材を接着
剤で接合すると、接着剤は一般に有機材料であって、剛
性が低く、収縮による圧力上昇で変形し、圧力上昇を減
殺し、共振周波数も低い値となり、繰り返し周期を高め
る要求には十分に応えることが出来なかった。その対策
として接着層の厚みを薄くして剛性低下を抑えるなどの
工夫がなされるが、これは密閉性の不完全を招くことも
あって限度があった。また接着剤の多くは疎水性であっ
て、一旦気泡が壁の隅に滞留すると疎水性の壁からその
気泡を離脱させることが困難となり、このため、親水性
の接合剤が望まれていた。
【0012】したがって、本発明の課題は、圧電体の開
放端を塞ぐ部材の剛性を高めると共に、圧力室の密閉性
を高めて、膨張・収縮による圧力室の圧力変化を減殺す
ることなく、有効に利用し、更に圧力室の壁面付近に気
泡を生じさせないようなインクジェットヘッド及びその
製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明によると、圧力室
と、該圧力室にインクを供給するインク供給手段と、該
圧力室からノズルを介してインクを吐出するインク吐出
手段とを具備し、該圧力室は、互いに向かい合わせて配
置した1対の壁の間に閉鎖空間として形成され、該壁
は、圧電体と非活性体とを密着接合して圧電体の接合面
に平行方向の変形を生じせしめ両者の変形の差により屈
曲変形させて、前記圧力室に体積変化を生じさせてイン
クの供給・吐出を行うインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室を構成する1対の壁は、1対の非活性体が圧
力室の内側に位置するように配置されると共に、該非活
性体は圧電体と接合しない部分が延長・湾曲され、互い
に結合されて、前記圧力室の閉鎖空間を規定するように
構成されていることを特徴とするインクジェットヘッド
が提供される。
【0014】このように、本発明では、圧力室を構成す
る1対の壁の内側に配置されている該非活性体の圧電体
と接合しない部分が延長・湾曲され、互いに結合され
て、圧力室の閉鎖空間を規定するように構成したので、
この非活性体の結合部分の剛性により、圧力室の密閉性
を高めて、膨張・収縮による圧力室の圧力変化を有効に
利用することができる。
【0015】前記非活性体は金属であり、前記圧電体へ
電圧を印加する電極を構成する。これにより、非活性体
の結合部分の剛性により、圧力室の密閉性を更に高める
ことができるとともに、非活性体の部分を圧電体に電圧
を印加する場合の電極として利用することができる。前
記金属はめっき膜により形成されていることを特徴とす
る。この場合において、ピンホール等の生じない、イン
クとの親和性の良好なめっきを使用することにより、圧
力室の壁面付近に気泡を生じることを防止できる。
【0016】圧力室は、平行な1対の壁の間に形成さ
れ、これらの壁は隣接する圧力室の壁からスペースで隔
てていることを特徴とする。これにより、圧力室は隣接
する圧力室の壁にに影響されることなく、独立して作動
することができる。圧電体と接合しない前記非活性体の
延長部は、その曲率半径が、無限大から、圧力室を規定
する1対の圧電体の間隔の1/3までの間であることを
特徴とする。これにより、1対の壁を閉鎖する、非活性
体の延長部分の曲率が小さくなりすぎることはなく、イ
ンク室内での気泡等の発生を防止することができる。
【0017】前記圧力室の各壁を規定する圧電体は、そ
の基端にて圧電体ブロックに一体的に結合されているこ
とを特徴とする。この場合において、圧電体ブロックを
溝加工することにより、容易に圧力室を形成することが
できる。前記圧力室の一側は、インク供給路を有する部
材により閉鎖されると共に、該インク供給流路に連通し
ており、他側は、ノズルを有するノズル板により閉鎖さ
れ、該ノズルよりインクを吐出するように構成されてい
る。この場合において、前記非活性体は金属のめっき膜
からなり、前記壁と前記インク供給路部材との接合部及
び該壁と前記ノズル部材との接合部は、該めっき膜が厚
く盛られて圧力室の内面にて湾曲状に形成されている。
これにより、圧力室内の気泡の発生し易い角部が湾曲状
となり、気泡の発生が防止される。
【0018】前記非活性体は金属のめっき膜からなり、
該めっき膜は材質の異なる2層以上のめっき膜で形成さ
れる。これにより、めっき膜の厚さを調整して、圧力室
内の気泡の発生し易い角部の湾曲度を調整しやすくな
る。本発明の他の側面によると、連続して配列された複
数の圧力室と、これらの圧力室にインクを供給するイン
ク供給手段と、各圧力室からノズルを介してインクを吐
出するインク吐出手段とを具備し、前記各圧力室の体積
変化によりインクの供給・吐出を行うインクジェットヘ
ッドにおいて、前記複数の圧力室の配列方向に垂直な、
互いに対向する対の壁を具備し、これらの1対の壁の間
で前記各圧力室の空間を規定し、前記対向する対の壁の
間に規定される圧力室と該圧力室に隣接する圧力室の壁
との間にスペースが規定され、前記各壁は、その基端に
て圧電体ブロックに一体的に結合されており、前記各壁
は、該圧電体ブロックと一体の部分である圧電体と、圧
力室の内側に形成され且つ該圧電体に電圧を印加する電
極を形成する非活性体の金属膜とを密着接合することに
より構成され、該壁は圧電体と金属膜との間に生ずるバ
イモルフ効果による屈曲変形を生じさせることで、前記
各圧力室の体積変化を生じさせるようにし、1対の壁を
形成する前記金属膜は前記圧電体と接合しない部分が延
長・湾曲されて、互いに結合され、前記圧力室の閉鎖空
間を規定するように構成されていることを特徴とするイ
ンクジェットヘッドが提供される。
【0019】これによれば、圧電体ブロックを溝加工す
ることにより、多数の圧力室を同時に形成することがで
きる。また、延長・結合部の剛性により、圧力室の密閉
性を高めて、圧電体の変形を圧力室の圧力変化に有効に
利用することが出来る。前記圧力室の一側は、複数の圧
力室に共通するインク供給路を有するインク供給流路部
材により閉鎖されると共に、インク供給口を介して該イ
ンク供給流路に連通しており、他側は、各圧力室毎のノ
ズルを有するノズル部材により閉鎖され、該ノズルより
インクを吐出するように構成されていることを特徴とす
る。この場合において、前記金属膜はめっき膜からな
り、前記壁と前記インク供給流路部材との接合部及び該
壁と前記ノズル部材との接合部は、該めっき膜が厚く盛
られて圧力室の内面にて湾曲状に形成されていることを
特徴とする。これにより、圧力室内の気泡の発生し易い
角部が湾曲状となり、気泡の発生が防止される。
【0020】本発明の更に他の側面によると、圧力室
と、該圧力室にインクを供給するインク供給手段と、該
圧力室からノズルを介してインクを吐出するインク吐出
手段とを具備し、前記各圧力室の体積変化によりインク
の供給・吐出を行うインクジェットヘッドの製造方法に
おいて、圧電体ブロックに前記圧力室を規定する溝を形
成する工程と、該溝の開放側に、後に除去可能な蓋を形
成する工程と、前記溝及び前記蓋で形成される閉鎖空間
部の内面に金属めっきを施す工程と、前記蓋を除去する
工程と、を含むことを特徴とするインクジェットヘッド
の製造方法が提供される。
【0021】本発明では、更に、連続して配列された複
数の圧力室と、これらの圧力室にインクを供給するイン
ク供給手段と、各圧力室からノズルを介してインクを吐
出するインク吐出手段とを具備し、前記各圧力室の体積
変化によりインクの供給・吐出を行うインクジェットヘ
ッドの製造方法において、圧電体ブロックに前記複数の
圧力室を規定する複数の溝を並列して形成する工程と、
該複数の溝の開放側に、後に除去可能な蓋を形成する工
程と、前記溝及び前記蓋で規定される複数の閉鎖空間部
の内面に金属めっきを施す工程と、前記蓋を除去する工
程と、前記圧力室を規定する溝と隣接する圧力室を規定
する溝との間に、これらの溝と平行な第2の溝を形成す
る工程と、を含むことを特徴とするインクジェットヘッ
ドの製造方法が提供される。
【0022】前記蓋は有機質の接着フィルムからなるこ
とを特徴とする。また、前記蓋は圧電体と間で親和性の
ある有機質材料からなり、前記溝の開放端に接合後、熱
処理等より柔軟化し、該有機質材料の一部を圧電体の溝
の端面に食い込ませるようにしたことを特徴とする。こ
のような有機質材料の食い込み部分により、圧力室内の
気泡の発生し易い角部を湾曲状とすることができ、気泡
の発生を防止することができる。
【0023】前記金属めっきを施す工程は、ベースめっ
き層を形成する工程と、該ベースめっき層の上に稠密め
っき層又は耐蝕めっき層を形成する工程とを含むことを
特徴とする。ベースめっき層はNiの無電解めっきによ
りを形成することを特徴とする。更に、Niのめっき層
の上に金又はPaの電解めっきを施すことを特徴とす
る。更にまた、Niの無電解めっきによりを形成したベ
ースめっき層の上に、電解めっきを施し、その際、圧力
室を規定する溝の長手方向の両端部のめっき層を盛り上
げるように厚く形成することを特徴とする。この場合に
おいて、電解めっきの後、溝の長手方向の両端面を研磨
して、圧電体ブロックの端面を平坦にすることを特徴と
する。
【0024】このようなめっきの施し方をすることによ
り、めっき膜の厚さを調整して、圧力室内の気泡の発生
し易い角部の湾曲度を調整し、圧力室内での気泡の発生
を防止することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】図1〜図6を参照して、本発明の
インクジェットヘッドの製造方法について説明する。ま
ず、図1(a)、(b)及び図2において、圧電体ブロ
ック1を使用する。圧電体としては、H5D(住友金属
製)やC9(富士セラミックス製)を使用することがで
きる。図1(b)に示すような圧電体のブロック1の一
面(例えば図の上面)を、例えばダイシングソーなどの
研削装置にて溝加工を施すことにより、高さ(L)45
0μm、厚さ(d)60μmの壁(圧電体の活性部2)
を形成し、この壁の間に並列して配置された多数の溝3
を形成する。これらの溝3がインクジェットヘッドの圧
力室を規定する。なお、図2における破線部分4は後工
程で加工するスペース溝を示している。
【0026】次に、図3において、多数の溝3を加工し
た後の圧電体ブロック1の溝開放端側である上面に、圧
電体との間で親和性があり、且つ後に除去可能な有機質
の樹脂膜、例えば、エポキシ系の接着フィルム又はアク
リル系のレジスト膜から成る蓋5を接合する。この際、
熱処理等を施し、この蓋5を柔軟化し圧電体ブロック1
の活性部である壁2の壁面に樹脂の一部5aを食い込ま
せる。そして、蓋5の樹脂と壁2の壁面との接合部の角
度が直角とならずに鈍角又は湾曲した形状とし、両者が
スムーズに連続するようにする。
【0027】次に、図4において、溝3を形成する1対
の壁2と蓋5とで規定される、圧力室3を規定する空間
の内面に、めっきを施す。この場合において、パラジウ
ム系の前処理剤を用いて露出面を活性化した後、無電解
ニッケルめっき6を施す。このようにしてやや厚いめっ
き6を施す。その後、有機質膜5を例えば溶剤で除去す
る。これにより、圧電体ブロック1の溝3により規定さ
れる空間の内面のめっき6は残る。
【0028】この後、図5に示すように、壁2と、隣接
する圧力室の壁2との間に、スペース溝4となる隔離溝
を加工する。最後に、図5の紙面の前後方向の面を研磨
して圧電体ブロック1の端面を平滑面にする。図6は圧
力室を規定する空間の内面に、多層のめっきを施した例
を示す。図6に示す例では、ベースめっき層7を施し、
そのベースめっき層7の上に稠密めっき層8を形成し、
更にその上に耐蝕めっき層9を形成した例である。ベー
スめっき層7は無電解ニッケルめっきとし、インクに触
れる内面は耐蝕性がありイオン化の少ない置換金めっき
層9を電解めっきで形成する。また、置換金めっき層9
にピンホール等が生ずるのを防止するために、その中間
に稠密めっき層8をパラジウム(Pa)の電解めっきで
形成するのが好ましい。勿論、ベースめっき層7の上に
置換金めっき層9又はパラジウム(Pa)めっき層8の
いずれか一方のみを電解めっきで形成しても良い。な
お、パラジウムめっき層8又は金めっき層9を電気めっ
きにて形成する際は、Niのベースめっき層7を電極と
して用いることが出来る。
【0029】図7は図6の線A−A断面であって圧力室
の長手方向に見た図であるが、前述のように、無電解め
っきによりを形成したベースめっき層7の上に、電解め
っき9を施すが、その際、圧力室を規定する溝2の長手
方向の両端部の角部のめっき層9aが厚く盛り上げられ
るようにする。これは、角部付近に、電気めっきを施す
際の電極を集中させて、めっきを重ねることにより角部
にめっき層が厚く積もり、内部は薄くめっきが付くよう
にすることができる。電解めっきの後、溝3の長手方向
の両端面3a、3bを研磨して、圧電体ブロック1の端
面を平坦にする。
【0030】図8は圧電体ブロック1の端面を研磨して
平坦にした後に、一方の端面にノズル板10を接合し、
他方の端面に共通のインク供給流路を規定する部材12
を接合した状態を示す。図9はこれを概略的に分解斜視
図で示すものである。ノズル板10は、並列に並んだ多
数の溝3により規定される多数の圧力室にそれぞれ連通
するノズル11を多数有している。一方、インク流入路
部材12は共通のインク供給流路13を有すると共に、
各圧力室3に連通するインク流入口14を有する。
【0031】インク流入口14は共通のインク供給流路
13から各圧力室3内へのインクの流入を円滑に行うた
めに、圧力室3側の径がインク供給流路13側の径より
小さくなった絞りであり、また、ノズル11は圧力室3
から外方へインクを吐出しやすいように圧力室3側の径
が大きくなった絞りとして形成されている。次に本発明
のインクジェットヘッドの動作について説明する。図5
において、活性体である1対の圧電体の壁2と非活性部
である金属めっき膜6において、電極間に電圧が印加さ
れる。この場合において、金属めっき膜6を圧電体の壁
2に対する一方の電極として使用し、例えば、壁2の外
側、即ちスペース溝4側の面にめっき、蒸着又はスパッ
タリング等で形成した金属膜(図示せず)を他方の電極
として使用することができる。
【0032】1対の圧電体2に電圧が印加されると、圧
電体の壁2は図1においてz方向、つまりd31方向に収
縮し、かつ図1中のx方向、つまりd33方向に膨張す
る。すると、d31方向における収縮が起因となり、厚い
側の金属めっき膜6と圧電体の壁3によって構成される
バイモルフにより1対の壁2が互いに対称的に変形し、
圧力室3内の体積が減少し、ノズル11からインクを噴
出することができる。
【0033】1対の圧電体2への電圧印加が停止される
と、バイモルフによる1対の壁2は元の状態に戻り、圧
力室3内の体積が増加して、共通のインク供給流路13
からインク流入口14を介して圧力室3内に微量のイン
クが導入される。このように、本発明では、溝3の上を
例えば接着フィルム5等で覆い、これを無電解めっきす
ると圧力室内面を一体のめっき層で形成することができ
る。Niめっきはヤング率200Gpascal程度で
あり、エポキシ樹脂接着剤の数GPascalに比しは
るかに高い剛性であり、圧力減殺を少なく抑えることが
できる。工程の途中で使用される接着フィルム5等は有
機溶剤で除去可能であり、最終的には残らないようにす
る。圧力室3の内部の全周が金属めっき層6で形成され
るので、圧力室3の隅を含め、親水性の壁面となってイ
ンクの気泡が容易に離脱する。
【0034】また、バイモルフ壁2の収縮による内圧上
昇により、めっき層6の上面、即ち、非活性体である金
属めっき層6の、1対の圧電体の壁2と接合しない延長
部6a(図5)には、圧電体の両側の壁2が開こうとす
る力が加わる。これを受けるには延長部6aは平坦とし
単純引張りで受けることが望ましい。一方、内圧による
膨らみは曲率半径に比例することが知られ、曲率は小さ
いことが望ましい。この両者の相反条件に対し最適な曲
率半径がある。こうした適当な延長部6aの曲率は、蓋
となる有機材料5を適当な温度で軟化させ、その圧電体
2との親和性(接触角)によって図4のように食い込ま
せることで実現される。めっき層6の延長部(上面)6
aの曲率半径は無限大、即ち平坦面から、1対の圧電体
の壁2の間隔g(図5)の1/3までとするのが好適で
ある。
【0035】めっき層6としては、前述のように、圧電
体との密着性、厚みの一様性から無電解Niが好適であ
り、Niは中性からアルカリ性のインクには耐蝕性が十
分であるが、特定の色素に対しては耐蝕性が十分ではな
い。この対策として、図6に示すように、貴金属めっき
を内面に重ねて施すことが有効である。金めっきは時に
ピンホールを残すが、この微少部分からの侵食を防ぐに
は、中間に稠密性のよい、例えばパラジウム(Pa)め
っきを施している。
【0036】圧力室3内の曲率の小さい隅部に滞留する
インクの気泡は容易に除去されないが、気泡残りはその
空気の弾性が低いことから噴射圧上昇を著しく低下させ
る。隅に大きな曲率即ち丸みを持たせるには電気めっき
を重ねて、その角部に電流が集中する特性による形状を
利用しているので、隅部の曲率を大きくし、気泡が残ら
ないようにしている。
【0037】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明では、非
活性体である金属めっき層6の1対の圧電体2と接合し
ない部分を両側から延長して両者を結合した形状(6
a)とすることにより、圧電体2の壁の上面部はその動
きを制約するものは何も存在せず自由な状態となってお
り、しかも金属めっき層6の剛性によって1対の壁2を
しっかりと支持しているので、圧電作用による壁2の変
形を有効に利用することが出来る。このため、圧電体2
の所要の変形を得るために圧電体に印加すべき電圧を低
くすることが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は圧電体ブロックに溝加工を施した状態
の斜視図、(b)は圧電体ブロックを示す斜視図であ
る。
【図2】圧電体ブロックに溝加工を施した状態の正面図
である。
【図3】圧電体ブロックの溝の開放端側に有機膜からな
る蓋を形成した状態を示す正面図である。
【図4】金属めっきを施し且つ有機膜からなる蓋を除去
した状態を示す正面図である。
【図5】スペース溝を加工した状態の正面図である。
【図6】金属めっきを多層に形成した状態を示す正面図
である。
【図7】図6に線A−Aにおける平面断面図を示す。
【図8】図7の状態の圧電体ブロックの両端面にノズル
板及び共通流路部材を接合した状態を示す平面断面図で
ある。
【図9】圧電体ブロックの両端面にノズル板及び共通流
路部材を接合した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…圧電体ブロック 2…圧電体の壁 3…溝(圧力室) 4…スペース溝 5…有機質膜の蓋 6…非活性部(金属めっき層) 7、8、9…めっき層 10…ノズル板 11…ノズル 12…共通流路部材 13…共通流路 14…インク流入口
フロントページの続き (72)発明者 永井 正弘 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (72)発明者 可児子 祐三 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (72)発明者 坂本 義明 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (72)発明者 森川 征勇 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (72)発明者 児玉 淳 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (72)発明者 三上 知久 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (56)参考文献 特開 平9−39244(JP,A) 特開 平3−256746(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/045 B41J 2/055 B41J 2/16

Claims (22)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧力室と、該圧力室にインクを供給する
    インク供給手段と、該圧力室からノズルを介してインク
    を吐出するインク吐出手段とを具備し、該圧力室は、互
    いに向かい合わせて配置した1対の壁の間に閉鎖空間と
    して形成され、該壁は、圧電体と非活性体とを密着接合
    して圧電体の接合面に平行方向の変形を生じせしめ両者
    の変形の差により屈曲変形させて、前記圧力室に体積変
    化を生じさせてインクの供給・吐出を行うインクジェッ
    トヘッドにおいて、前記圧力室を構成する1対の壁は、
    1対の非活性体が圧力室の内側に位置するように配置さ
    れると共に、該非活性体は圧電体と接合しない部分が延
    長・湾曲され、互いに結合されて、前記圧力室の閉鎖空
    間を規定するように構成されていることを特徴とするイ
    ンクジェットヘッド。
  2. 【請求項2】 前記非活性体は金属であり、前記圧電体
    へ電圧を印加する電極を構成することを特徴とする請求
    項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 【請求項3】 前記金属はめっき膜により形成されてい
    ることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘ
    ッド。
  4. 【請求項4】 前記圧力室の1対の壁は互いに平行に配
    置され、各壁は隣接する圧力室の壁との間にスペースを
    有することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記
    載のインクジェットヘッド。
  5. 【請求項5】 圧電体と接合しない前記非活性体の延長
    部は、その曲率半径が、無限大から、圧力室を規定する
    1対の圧電体の間隔の1/3までの間であることを特徴
    とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
  6. 【請求項6】 前記圧力室の各壁を規定する圧電体は、
    その基端にて圧電体ブロックに一体的に結合されている
    ことを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッ
    ド。
  7. 【請求項7】 前記圧力室の一側は、インク供給流路を
    有する部材により閉鎖されると共に、インク供給口を介
    してインク供給流路に連通しており、他側は、ノズルを
    有するノズル板により閉鎖され、該ノズルよりインクを
    吐出するように構成されていることを特徴とする請求項
    1に記載のインクジェットヘッド。
  8. 【請求項8】 前記非活性体は金属のめっき膜からな
    り、前記壁の前記インク供給流路部材との接合部及び前
    記ノズル板との接合部に近接する部分は、該めっき膜が
    厚く盛られて圧力室の内面にて湾曲状に形成されている
    ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッ
    ド。
  9. 【請求項9】 前記非活性体は金属のめっき膜からな
    り、該めっき膜は材質の異なる2層以上のめっき膜を積
    層して形成されたものであることを特徴とする請求項1
    に記載のインクジェットヘッド。
  10. 【請求項10】 連続して配列された複数の圧力室と、
    これらの圧力室にインクを供給するインク供給手段と、
    各圧力室からノズルを介してインクを吐出するインク吐
    出手段とを具備し、前記各圧力室の体積変化によりイン
    クの供給・吐出を行うインクジェットヘッドにおいて、 前記複数の圧力室の配列方向に垂直な、互いに対向する
    対の壁を具備し、これらの対の壁の間で前記各圧力室の
    空間を規定し、 前記対向する対の壁の間に規定される圧力室と該圧力室
    に隣接する圧力室の壁との間にスペースが規定され、 前記各壁は、その基端にて圧電体ブロックに一体的に結
    合されており、 前記各壁は、該圧電体ブロックと一体の部分である圧電
    体と、圧力室の内側に形成され且つ該圧電体に電圧を印
    加する電極を形成する非活性体の金属膜とを密着接合す
    ることにより構成され、 該壁は圧電体と金属膜との間に生ずるバイモルフ効果に
    よる屈曲変形を生じさせることで、前記各圧力室の体積
    変化を生じさせるようにし、 1対の壁を形成する前記金属膜は前記圧電体と接合しな
    い部分が延長・湾曲されて、互いに結合され、前記圧力
    室の閉鎖空間を規定するように構成されていることを特
    徴とするインクジェットヘッド。
  11. 【請求項11】 圧電体と接合しない前記金属膜の延長
    部は、その曲率半径が、無限大である平坦面から、圧力
    室を規定する1対の圧電体の間隔の1/3までの間であ
    ることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット
    ヘッド。
  12. 【請求項12】 前記圧力室の一側は、複数の圧力室に
    共通するインク供給路を有するインク供給流路部材によ
    り閉鎖されると共に、インク供給口を介して該インク供
    給流路に連通しており、他側は、ノズルを有するノズル
    部材により閉鎖され、該ノズルよりインクを吐出するよ
    うに構成されていることを特徴とする請求項10に記載
    のインクジェットヘッド。
  13. 【請求項13】 前記金属膜はめっき膜からなり、前記
    壁と前記インク供給流路部材との接合部及び該壁と前記
    ノズル部材との接合部は、該めっき膜が厚く盛られて圧
    力室の内面にて湾曲状に形成されたものであることを特
    徴とする請求項10に記載のインクジェットヘッド。
  14. 【請求項14】 圧力室と、該圧力室にインクを供給す
    るインク供給手段と、該圧力室からノズルを介してイン
    クを吐出するインク吐出手段とを具備し、前記各圧力室
    の体積変化によりインクの供給・吐出を行うインクジェ
    ットヘッドの製造方法において、 圧電体ブロックに前記圧力室を規定する溝を形成する工
    程と、 該溝の開放側に、後に除去可能な蓋を形成する工程と、 前記溝及び前記蓋で形成される閉鎖空間部の内面に金属
    めっきを施す工程と、 前記蓋を除去する工程と、を含むことを特徴とするイン
    クジェットヘッドの製造方法。
  15. 【請求項15】 連続して配列された複数の圧力室と、
    これらの圧力室にインクを供給するインク供給手段と、
    各圧力室からノズルを介してインクを吐出するインク吐
    出手段とを具備し、前記各圧力室の体積変化によりイン
    クの供給・吐出を行うインクジェットヘッドの製造方法
    において、 圧電体ブロックに前記複数の圧力室を規定する複数の溝
    を並列して形成する工程と、 該複数の溝の開放側に、後に除去可能な蓋を形成する工
    程と、 前記溝及び前記蓋で規定される複数の閉鎖空間部の内面
    に金属めっきを施す工程と、 前記蓋を除去する工程と、 前記圧力室を規定する溝と隣接する圧力室を規定する溝
    との間に、これらの溝と平行な第2の溝を形成する工程
    と、を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製
    造方法。
  16. 【請求項16】 前記蓋は有機質の接着フィルムからな
    ることを特徴とする請求項15に記載のインクジェット
    ヘッドの製造方法。
  17. 【請求項17】 前記蓋は圧電体と間で親和性のある有
    機質材料からなり、前記溝の開放端に接合後、熱処理等
    より柔軟化し、該有機質材料の一部を圧電体の溝の端面
    に食い込ませるようにしたことを特徴とする請求項16
    に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  18. 【請求項18】 前記金属めっきを施す工程は、ベース
    めっき層を形成する工程と、該ベースめっき層の上に稠
    密めっき層又は耐蝕めっき層を形成する工程とを含むこ
    とを特徴とする請求項15に記載のインクジェットヘッ
    ドの製造方法。
  19. 【請求項19】 ベースめっき層はNiの無電解めっき
    によりを形成することを特徴とする請求項18に記載の
    インクジェットヘッドの製造方法。
  20. 【請求項20】 Niめっき層の上に金又はPaの電解
    めっきを施すことを特徴とする請求項19に記載のイン
    クジェットヘッドの製造方法。
  21. 【請求項21】 Ni無電解めっきによりを形成したベ
    ースめっき層の上に、電解めっきを施し、その際、圧力
    室を規定する溝の長手方向の両端部のめっき層を盛り上
    げるように厚く形成することを特徴とする請求項18に
    記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  22. 【請求項22】 電解めっきの後、溝の長手方向の両端
    面を研磨して、圧電体ブロックの端面を平坦にすること
    を特徴とする請求項21に記載のインクジェットヘッド
    の製造方法。
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