JP3303898B2 - 適応的伝達関数推定方法及びそれを使った推定装置 - Google Patents

適応的伝達関数推定方法及びそれを使った推定装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音響エコーキャンセ
ラ、能動騒音制御などにおいて、未知系の伝達関数並び
に未知系の出力を射影アルゴリズムにより適応的に推定
する方法及びそれを使った推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】以下の説明では時間の表現は離散時間k
として説明を行う。例えば、時刻k での信号x の振幅値
はx(k)と表す。図1は未知系の伝達関数の推定を説明す
る図であって、11は伝達関数推定部を、12は未知系
を、x(k)は未知系への入力信号を、y(k)は未知系からの
出力信号を表す。未知系の伝達関数h(k)はx(k)とy(k)を
用いて推定される。図2は伝達関数の適応的な推定を説
明する図であり、21は推定伝達関数修正ベクトル計算
部、22は推定伝達関数修正部、23は畳み込み演算部
を表し、これらは推定信号生成部20を構成している。
未知系の伝達関数H(k)は畳み込み演算部23を構成する
タップ数LのFIR フィルタの伝達関数H ^(k) として推
定される。より具体的には、FIR フィルタの係数h ^
1(k) …h ^L(k)を推定することになる。以降は、“伝
達関数”と“FIR フィルタ係数”は同じものを意味する
とする。簡単にするためにフィルタ係数を次式で定義さ
れる推定伝達関数ベクトルH ^(k) として表す。
【0003】 H ^(k) = [h ^1(k),h^2(k), …,h^L(k)]T (1) ここで、Tは転置を表す。図2において、未知系12に
対する入力信号x(k)を畳み込み演算部23に入力し、式
(2) で与えられる出力y ^(k) y^(k) = H^(k)TX(k) (2) X(k) = [x(k),x(k-1),…,x(k-L+1)]T (3) と未知系12からの出力y(k)を差分器24で差を求めて
得られる誤差信号e(k)の2乗の期待値が最小になるよう
に推定伝達関数ベクトルH ^(k) の推定が行われる。こ
こで、y ^(k) は未知系の出力の推定値であり、推定伝
達関数H ^(k) が未知の特性に近ければ、y ^(k) の値
はy(k)に近くなるものである。
【0004】例えば講演会場や劇場のような音場におい
て人や物体が移動することにより音響路の伝達関数が変
化するように、実際には未知系の伝達関数は時刻と共に
変化する場合が多い。そこで、未知系の伝達関数の推定
値であるH ^(k) も未知系音響路の変化を検出し適応的
に修正する必要がある。推定伝達関数修正ベクトル計算
部21では誤差信号e(k)と未知系12への入力信号x(k)
から推定伝達関数修正ベクトルδH ^(k) を計算する。
推定伝達関数修正部22では、次式のように、推定伝達
関数修正ベクトル計算部21で得られた推定伝達関数修
正ベクトルδH^(k) を推定伝達関数ベクトルH ^(k)
に加えることで推定伝達関数を修正する。
【0005】 H ^(k+1) = H^(k) + μδH ^(k) (4) ただし、μはステップサイズと呼ばれ、一回毎に行う修
正の幅を制御する予め選択したスカラ量であり、時間に
よらない定数として扱う。以下の説明では推定伝達関数
修正ベクトルδH ^(k) を求めるにあたってμ=1とした
場合に付いてのδH ^(k) を求め、そのδH ^(k) に対
し必要に応じて所望のスッテプサイズμを乗算して使用
する。応用例によってはμの値を時間と共に変化させる
場合もあるが、その場合にも以下の説明は同様に成立す
る。修正された推定伝達関数ベクトルは畳み込み演算部
23に転送される。以上が時刻k に置ける伝達関数推定
動作であり時刻k+1 以降も同様の動作を繰り返す。
【0006】図2で説明した推定伝達関数の修正方法は
適応アルゴリズムとして知られている。適応アルゴリズ
ムとしては、LMS アルゴリズムや学習同定法(NLMS:Norm
alized LMS) などがよく知られているが、ここでは文献
「尾関、梅田:“アフィン部分空間への直行射影を用い
た適応フィルタアルゴリズムとその諸性質”、電子情報
通信学会誌(A),J67-App.126-132,(昭59-2)」で提案され
た射影アルゴリズムを対象とする。
【0007】射影アルゴリズムは学習同定法に比べて演
算量は増加するものの、音声信号入力に対して優れた適
応性を持つ。射影アルゴリズムでは上述のようにμ=1の
場合の式(4) から次のp個の方程式からなる連立方程式
が満足されるようにベクトルδH ^(k) を決める。 y(k) = X(k)T( H ^(k)+ δH ^(k) ) y(k-1) = X(k-1)T( H ^(k)+ δH ^(k) ) : y(k-p+1) = X(k-p+1)T( H ^(k)+ δH ^(k) ) (5) 式(5) は時刻kにおいて更新された推定伝達関数ベクト
ルH ^(k+1) が時刻k以前のp個の入力ベクトルX(k),X
(k-1),…,X(k+p-1) に対して、それぞれ未知系の出力と
同じ値y(k),y(k-1),…,y(k-p+1) を出力するようにδH
^(k) を決めることを示している。このようにすれば、
δH ^(k) で適応的に更新を繰り返すにつれ推定伝達関
数H ^(k) の特性が未知系の特性に近づくことが期待さ
れる。
【0008】pは射影の次数と呼ばれる量で、次数pが
大きいほど適応性は向上するが、より多くの演算量を必
要とする。従来のNLMS法はp=1の場合に対応してい
る。さて、式(5) 中の第1式を移項すれば、 X(k)TδH ^(k) = y(k)−X(k)TH ^(k) = e(k) (6) となる。また、式(5) の第2式を移項し、式(4) 及び
(6) のkをk-1 とおいて得られる式を利用すれば、 X(k-1)TδH ^(k) = y(k-1)-X(k-1)TH ^(k) = y(k-1)-X(k-1)T( H ^(k-1)+ μδH ^(k-1) ) = y(k-1)-X(k-1)TH ^(k-1)- μX(k-1)TδH ^(k-1) = e(k-1)-μe(k-1) = (1-μ)e(k-1) (7) となる。以下同様に、 X(k-i)TδH ^(k) = (1-μ)ie(k-i) (8) の関係が成立する。このことより、式(5) はδH ^(k)
に関する次の連立方程式として書き直すことができる。
【0009】 Xp(k) δH ^(k) = E(k) (9) ただし、Xp(k) はp行L列の行列、E(k) はp行のベク
トルで、それぞれ次式で定義される。 E(k)は誤差ベクトルと呼ぶことにする。さて、通常はp
<Lであるので、式(9)はδH ^(k) に関する不定方程
式となり、δH ^(k) のノルム最小解は、次式で与え
られる。
【0010】 δH ^(k) = Xp(k)T( Xp(k)X p(k)T )-1E(k) = [ X(k)X(k-1), …, X(k-p+1) ]G(k) (12) ただし、 G(k) = Cp(k)-1E(k) (13) Cp(k)= Xp(k) Xp(k)T (14) である。Cp(k)はp行p列の行列であり、これをp次の
共分散行列または自己相関行列と呼び、G(k)はプレフィ
ルタ係数ベクトルと呼ぶ。また、G(k)の要素をg1(k),g2
(k),…,gp(k)と表せば、式(12)より推定伝達関数修正ベ
クトルδH ^(k)は、 δH ^(k) =Σg i(k)X(k-i+1) (Σはi=1からpまで) (15) と表される。
【0011】以上のことにより、図2における推定伝達
関数修正ベクトル計算部21は、射影法を用いる場合に
は、図3のように表される。図3において、31はプレ
フィルタ係数ベクトル計算部を表し、入力信号x(k)及び
誤差信号e(k)を用いて、式(13)に基づいてプレフィルタ
係数G(k)を計算する。32はプレフィルタリング部であ
り、プレフィルタ係数ベクトル計算部31より転送され
たプレフィルタ係数G(k)を用いて、式(15)で表されるプ
レフィルタリング操作を行って推定伝達関数修正ベクト
ルδH ^(k) を合成する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】以上説明してきた射影
法の演算量を考える。ただし、演算量とは、1離散単位
時間当りの推定動作に必要な積和(または和)演算量を
表すものとする。まず、図2のタップ数Lの畳み込み演
算部23における式(2) の演算量は、Lである。次に、
推定伝達関数修正ベクトル計算部21内のプレフィルタ
係数ベクトル演算部31(図3)における式(13)の演算
は代表的な数値計算方であるコレスキー法を用いた場合
に約p3/6である。そして、プレフィルタリング部32に
おける式(15)の演算量は、(p-1)Lである。最後に、推定
伝達関数修正部22における式(4)の演算量は、Lであ
る。従って、射影法の全演算量NCは次式となる。
【0013】 NC = L + p3/6 + (p-1)L + L (16) 一方、学習同定法やLMS アルゴリズムの演算量は約2L
である。一例として、L=500,p=20(音響エコーキャ
ンセラにおける応用の場合の代表値)の場合の演算量を
計算してみる。学習同定法では、演算量が1000であるの
に対して、射影法では、式(16)より、12000 近くもの演
算量が必要となる。特に式(13)の演算量p3/6 はpが大
きくなると急激に増加する。このように、射影法は、学
習同定法と比べて良好な収束特性を持つ反面、演算量の
増加が問題となる。
【0014】この発明の目的は演算量を削減した未知系
の伝達関数及び出力の適応的推定方法及びそれを使った
推定装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに、本発明は第1の観点によりプレフィルタ係数ベク
トル計算部31の演算量を削減し、第2の観点によりプ
レフィルタリング部32の演算量を削減する。この発明
の第1の観点によれば、離散的時間kにおける未知系の
入力信号x(k)と出力y(k)とからその未知系の伝達関数を
推定し、その推定した伝達関数H ^(k) を持つ疑似系の
出力信号y ^(k) の上記未知系の出力信号y(k)に対する
誤差信号e(k)=y(k)-y ^(k) を算出し、その誤差信号ベ
クトルをE(k)、入力信号x(k)の共分散行列をCp(k)、プ
レフィルタ係数ベクトルをG(k)とするとき、p 元連立1
次方程式 Cp(k)G(k)= E(k) を解いて、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を求め、
上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を使って次式 δH ^(k) =[X(k),X(k-1),…,X(k-p+1)]G(k) により上記疑似系の推定伝達関数修正ベクトルδH ^
(k) を計算し、その推定伝達関数修正ベクトルδH ^
(k) と、予め決めた修正ステップサイズμとを使って次
式 H ^(k+1) =H ^(k) +μδH ^(k) により上記疑似系の推定伝達関数ベクトルH ^(k) を修
正することを繰り返し上記誤差信号e(k)がゼロに近づく
ようにする射影アルゴリズムによる適応的伝達関数推定
方法または装置において、上記プレフィルタ計数ベクト
ルG(k)は、上記入力信号x(k)の前向き線形予測係数ベク
トルF(k)とその2乗予測誤差和f(k)と、後向き線形予測
係数ベクトルB(k)とその2乗予測誤差和b(k)を算出し、
プレフィルタ誘導係数ベクトルをD(k)とするとき、次の
第1及び第2式から成る上記プレフィルタ係数ベクトル
についての回帰式
【0016】
【数5】
【0017】により上記係数ベクトルG(k)を求める。こ
の発明の第2の観点によれば、離散的時間kにおける未
知系の入力信号x(k)と出力y(k)とからその未知系の伝達
関数を推定し、その推定した伝達関数H ^(k) を持つ疑
似系の出力信号y ^(k) の上記未知系の出力信号y(k)に
対する誤差信号e(k)=y(k)-y ^(k) を算出し、その誤差
信号ベクトルをE(k)、入力信号x(k)の共分散行列をC
p(k)、プレフィルタ係数ベクトルをG(k)とするとき、p
元連立1次方程式 Cp(k)G(k)= E(k) を解いて、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を求め、
上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を使って次式 δH ^(k) =[X(k),X(k-1),…,X(k-p+1)]G(k) により上記疑似系の推定伝達関数修正ベクトルδH ^
(k) を計算し、その推定伝達関数修正ベクトルδH ^
(k) と、予め決めた修正ステップサイズμとを使って次
式 H ^(k+1) =H ^(k) +μδH ^(k) により上記疑似系の推定伝達関数ベクトルH ^(k) を修
正することを繰り返し上記誤差信号e(k)がゼロに近づく
ようにする射影アルゴリズムによる適応的伝達関数推定
方法または装置において、上記修正ベクトルを計算する
代わりに、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)の要素で
あるプレフィルタ係数g(k)を次式 si(k) = si-1(k-1)+μgi(k) for 2≦i≦p = μg1(k) for i = 1 により平滑化して平滑化係数si(k) を得て、上記修正ベ
クトルにより上記推定伝達関数ベクトルを修正する代わ
りに、上記平滑化係数s(k)を使って次式 Z(k+1)=Z(k)+sp(k)X(k-p+1) により近似推定伝達関数Z(k+1)を求め、上記近似推定伝
達関数Z(k+1)と上記入力信号x(k)の畳み込み演算X(k)TZ
(k) を行い、上記平滑化係数s(k)のベクトル、上記入力
信号x(k)のベクトル及び上記入力信号の相関ベクトルを
それぞれ Sp-1(k-1)=[s1(k-1),s2(k-1),…,sp-1(k-1)]T X p-1(k)=[x(k-1),x(k-2),…,x(k-p+1)]T Rp-1(k-1)=[X(k)TX(k-1),X(k)TX(k-2),…,X(k)TX(k-p+1)]T として次式の内積 Sp-1(k-1)TRp-1(k) を計算し、上記畳み込み演算結果X(k)TZ(k) と上記内積
演算結果の和を上記推定信号y ^(k) として出力する。
【0018】第1の観点に基づく請求項1の方法及び請
求項6の装置によれば、プレフィルタ係数ベクトルG(k)
を射影次数pに比例した演算量15pの積和演算で求め
ることができるので、従来の方法で必要とされる演算量
p3/6に比べて著しく少なく、従って装置の規模は小さく
てすみ、また演算に必要とされる時間も短縮される。第
2の観点に基づく請求項2の方法及び請求項7の装置に
よれば、プレフィルタ係数g(k)の平滑化と推定伝達関数
ベクトルH ^(k) の近似値Z(k)の蓄積とを行うことによ
り演算量の削減がで、従って装置の規模を小さくするこ
とができ、また演算時間を短縮することができる。
【0019】請求項3の方法及び請求項9の装置は第1
の観点と第2の観点の技術を組み合わせることにより更
に演算量を削減することができる。請求項4の方法は請
求項1又は3の方法において、また請求項10の装置は
請求項6又は9の装置において、それぞれ後ろ向き線形
予測係数ベクトルB(k-1)の第p要素が常に1であること
に着目し、回帰式における次項 [B(k-1)TE(k-1)/b(k-1)]B(k-1) の代わりにg(k-1)B(k-1)を使うことにより演算量を削減
する。
【0020】請求項5の方法は請求項1又は3の方法に
おいて、又請求項11の装置は請求項6又は9の装置に
おいて、回帰式中の次項 [F(k)TE(k)/f(k)]F(k) 及び [B(k-1)TE(k-1)/b(k-1)]B(k-1) のそれぞれの分母に非負数のδF(k),δB(k-1)をそれぞ
れ加算することによりこれらの項の演算の不安定性を軽
減する。
【0021】
【実施例】まず、プレフィルタ係数ベクトル計算部31
の演算量の削減法を示す。この方法はプレフィルタ係数
ベクトルG(k)を1時刻前のG(k-1)を利用した回帰式によ
り求めることを特徴とする。ここでは、まずG(k)がG(k-
1)から回帰的に求まることを証明する。回帰式は式(11)
の誤差ベクトルE(k)の要素が時間と共に1-μを乗じてず
れていく構造を有していることと、式(14)の入力信号の
共分散行列の逆行列の性質を利用して、導出される。
【0022】ここで、式(14)と同様にp-1 次の共分散行
列Cp-1(k) を次式で定義する。
【0023】
【数6】
【0024】共分散行列Cp(k)の逆行列とCp-1(k) の
逆行列の間には次の関係があることが文献「S.Haykin.A
daptive Filter Theory,2nd edition,Prentice-Hall.19
91,pp.577-578」で知られている。
【0025】
【数7】
【0026】ただし、F(k)は正規方程式 Cp(k)F(k)=
[f(k),0,…,0]Tを満たす前向き線形予測係数ベクトル(p
次) であり、先頭の要素は1である。また、f(k)は前向
きの最小2乗予測誤差和である。B(k-1)は正規方程式C
p(k-1)B(k-1)=[0, …,0,b(k-1)]Tを満たす後向き線形予
測係数ベクトル(p次) であり、最後の要素は1である。
b(k-1)は後向きの最小2乗予測誤差和である。線形予測
係数F(k),B(k-1)及び2乗予測誤差和f(k),b(k-1)は例
えばFTF(Fast Transversal Filters)アルゴリズムを
利用して少ない演算量で求められることがJ.M.Cioffi
と T.Kailath の文献“Windowed fast transversal ada
ptive filter algorithms with normalization." IEEE
Trans. Acoust,Speech.Signal Processing,vol.ASSP-3
3,no.3,pp.607-625 に示されている。式(13)のプレフィ
ルタ係数ベクトルG(k)を次式に再掲する。
【0027】 G(k) = Cp(k)-1E(k) (20) このG(k)に対応してp-1 次のプレフィルタ誘導係数ベク
トルD(k)を次式で定義する。 D(k) = Cp-1(k)-1Ep-1(k) (21) ここで、 である。式(22)においてkを(k-1) とおいて左右両辺に
(1-μ)を乗算して得られるp-1 次のベクトル(1-μ)Ep-1
(k-1) の全要素は式(11)におけるp次のベクトルE(k)の
先頭の要素e(k)以外の要素を構成しているので次式の関
係が成立する。
【0028】 さらに、式(22)のp-1 次のベクトルの全要素は式(11)に
おけるp次のベクトルの最後の要素を除く全要素を構成
しているので、E(k)とEp-1(k) の関係は次式のようにも
表せる。
【0029】 式(18)の両辺のそれぞれの項に右からE(k)を乗ずると、
式(20),(21),(23)より、
【0030】
【数8】
【0031】が得られる。また、式(19)の両辺に右から
E(k-1)を乗ずると、式(20),(21),(24)より、
【0032】
【数9】
【0033】となる。移項すると、
【0034】
【数10】
【0035】このように、G(k)は、式(25)で表されるよ
うにf(k-1)の値に基づいて計算されるが、式(27)で表さ
れるようにD(k-1)はG(k-1)から計算されている。即ち、
式(25),(27)はG(k)についての回帰式になっている。さ
て、式(25)の右辺において、第1項の(1-μ)[]を得る
ためにはp-1 回の乗算を必要とし、第2項のF(k)TE(k)
はp 回の積和演算、これをf(k)で除するのに1回の除
算、更に、この結果をF(k) に乗じて右辺第1項に加え
るのにp 回の積和計算が必要である。つまり、演算の種
類を区別しなければ3p回の演算が必要とされる。同様
に、式(27)を得るには約2p回の演算が必要である。従っ
て、式(16),(17)の演算量は約5pであり、p に比例した
量である。一方、式(25),(27) で必要とされる線形予測
係数ベクトルF(k),B(k-1)及び、最小2乗予測誤差和f
(k),b(k-1)は線形予測手法を用いれば、約10p の演算
量で計算できることが前述のJ.M.CioffiとT. Kailathの
文献で知られている。従って、式(25),(27) の回帰式に
基づけば、次数p に比例した演算量でG(k)が計算できる
ことが明らかである。
【0036】以上、説明した論理に基づいたこの発明で
は、以下の事項(A),(B),(C) が演算量の削減、演算の安
定性に有効である。 (A) 式(27)はp 次のベクトルに関する等式であり、ベク
トルの第p 要素(最下の要素)に関しては左辺は0であ
る。また、ベクトルB(k-1)の第p要素は常に1なのでG
(k-1)の第p要素であるgp(k-1) を用いて次式が成立す
る。
【0037】 B(k-1)TE(k-1)/b(k-1)= gp(k-1) (28) 従って、式(27)の代わりに次式 を計算してもよい。これによって演算量を更に削減でき
る。ただし、演算誤差を考慮するとgp(k-1) と式(28)の
左辺と2通り求めて平均する方が有利な場合もある。
【0038】(B) 式(25),(27) の右辺第2項の分母f
(k),b(k-1) が小さくなると演算が不安定になるので、
次式
【0039】
【数11】
【0040】に示すように、分母に非負数のδF(k),δB
(k-1) を加えることで数値演算的な不安定性を軽減でき
る。δF(k),δB(k-1) の実際的な値としては、入力信号
x(k)の平均パワーより40dB程度小さい(即ち平均パワ
ーの1/10000 程度)所望の一定値としてもよいし、パワ
ーの変動に従って時間k と共に変化させてもよい。
【0041】(C) 式(25),(27) で必要とされる線形予測
係数ベクトルF(k),B(k-1)及び、最小2乗予測誤差和f
(k),b(k-1) を求める線形予測分析では、入力信号x(k)
の分析区間が通常の場合と異なっている。具体的に説明
すると、通常の線形予測分析における分析区間は時刻0
から、現時刻までであり、時刻k-1 がkに更新された時
には分析区間にx(k)を加えるだけでよい。一方、射影ア
ルゴリズムの場合は分析区間は式(5) のx(k),…,x(k-L-
p+2)であるので、時刻k-1 がkに更新されたときには、
分析区間にx(k)を加えるだけではなく、x(k-L-p+1)を除
く必要がある。このため、射影アルゴリスムに於ける線
形予測分析には通常の線形予測分析の場合と比べて2倍
の演算量を要する。しかし、入力信号の統計的性質が変
化しないか、または、変化してもその変化が遅いと期待
され得る場合には、線形予測分析の結果が分析区間にあ
まり依存しないので、時刻kでは分析区間にx(k)を加え
るだけでの通常の線形予測分析を行えばよく、演算量を
削減することができる。
【0042】前述の理論的考察に基づいたこの発明の適
応的伝達関数推定方法の実施例を以下で説明するが、そ
の機能ブロックの全体的構成は図2と同じなので、これ
を参照するものとする。この発明が基づく前述の理論は
図2中の推定伝達関数修正ベクトル計算部21、特にそ
の中の図3に示すプレフィルタ係数ベクトル計算部31
とプレフィルタリング部32における計算量の削減に係
わっているので、これらに付いて以下に詳細に説明す
る。
【0043】図4は前述の考察に基づくプレフィルタ係
数ベクトル計算部31の構成である。41は線形予測部
を、42はプレフィルタ誘導係数ベクトル修正部を、4
3はプレフィルタ係数ベクトル修正部を、44は誤差ベ
クトル生成部を表わす。線形予測部41では、正規方程
式Cp(k)F(k)=[f(k),0,…,0]T を満たす前向きの線形予
測係数ベクトルF(k)及びその予測係数F(k)を用いたとき
の2乗予測誤差和f(k)を計算し、また正規方程式Cp(k-
1)B(k-1)=[0, …,0,b(k-1)]Tを満たす後向きの線形予測
係数ベクトルB(k),及び、その予測係数B(k) を用いたと
きの2乗予測誤差和b(k) を計算する。これらの計算方
法は前述のJ.M.Cioffi らの文献に示されている方法を
使えばよい。誤差信号ベクトル生成部44はp個の誤差
信号e(k),e(k-1),…,e(k-p+1)を蓄積し、式(11)の誤差
信号ベクトルE(k)を構成する。プレフィルタ誘導係数ベ
クトル修正部42ではプレフィルタ係数ベクトルG(k-
1)、後向きの線形予測係数ベクトルB(k-1)、誤差信号ベ
クトルE(k-1)、及び後向きの最小2乗予測誤差和b(k-1)
を用いて、式(27)又は(30)に基づいてプレフィルタ誘導
係数ベクトルD(k-1)を算出する。プレフィルタ係数ベク
トル修正部43は式(13)を満たすG(k)をプレフィルタ誘
導ベクトルD(k-1)、誤差信号ベクトルE(k)、前向きの線
形予測係数ベクトルF(k)、及び前向きの最小2乗予測誤
差和f(k)を用いて、式(25)又は(29)により算出する。
【0044】以上の方法に基づけば、プレフィルタ係数
ベクトル演算部31で必要とされる演算量はp3/6からは
15p と大幅に低減できる。しかし、プレフィルタリング
部32における演算量(p-1)Lが残されているために、L
が大きな場合には依然として大きな演算量が必要である
という問題点が残されている。次に、上記の問題に対し
て、推定伝達関数ベクトルH ^(k+1) の近似値の蓄積、
ならびにプレフィルタリング係数の平滑化によって解決
する方法を説明する。
【0045】まず、式(4) のk をk-1 とおくと、推定伝
達関数H ^(k) は、 H ^(k) = H^(k-1)+μδH ^(k-1) (31) と表される。これを式(4) に代入することで、推定伝達
関数H ^(k+1) は、 H ^(k+1) = H^(k-1)+μδH ^(k)+ μδH ^(k-1) (32) と表される。更に、式(4) のk をk-2,k-3,…といおて同
様な代入を繰り返せば、推定伝達関数H ^(k+1) は、 H ^(k+1) = μδH ^(k)+ μδH ^(k-1)+… +μδH ^(0) (33) と表される。ただし、推定の初期値H ^(0) は0とし、
この式により、推定伝達関数H ^(k+1) は、時刻0(伝
達関数推定の開始時刻)から現時刻k までの修正ベクト
ルμδH ^(k),μδH ^(k-1),…, μδH ^(0) を累積
加算したものであることがわかる。
【0046】さて、修正ベクトルμδH ^(k) は、式(1
5)で表される。式(15)のk をk-1,k-2,…とおいて式(33)
に代入すれば、 H ^(k+1) =μ[{g1(k)X(k)+g2(k)X(k-1)+ +gp(k)X(k-p+1)} +{g1(k-1)X(k-1)+g2(k-1)X(k-2)+ +gp(k-1)X(k-p)} + … +{g1(0)X(0)+g2(0)X(-1)+ … +gp(0)X(-p+1)}] =μ[g1(k)X(k) +{g2(k)+g1(k-1)}X(k-1) +{g3(k)+g2(k-1)+g1(k-2)}X(k-2) + … +{gp-1(k)+gp-2(k-1)+ … +g1(k-p+2)}X(k-p+2) +{gp(k)+gp-1(k-1)+ … +g2(k-p+2)+g1(k-p+1)}X(k-p+1) +{gp(k-1)+gp-1(k-2)+ … +g2(k-p+1)+g1(k-p)}X(k-p) +{gp(k-2)+gp-1(k-3)+ … +g2(k-p)+g1(k-p-1)}X(k-p-1) + … (34) と表される。
【0047】この式から以下のことが予想される。まず
第1に、プレフィルタ係数gi(k) は、図3に示すプレフ
ィルタ係数計算部31において各時刻k毎に計算され、
プレフィルタリング部33に供給されるが、このプレフ
ィルタ係数gi(k) を平滑化(または平均化)することで
演算量の低減が予想される。第2に、式(34)における+
{gp(k-1)+… 以降の項(下から2行目以降の項)に
は、時刻kで供給されるプレフィルタ係数gi(k) は含ま
れていないので、この部分は時刻k-1 の時の値と同じで
ある。同様に、+{gp(k)+ … 以降の項(下から3行目
以降の項)は、時刻k以降は変化しない。従って、+{g
p(k)+ … 以降の項をまとめて、これをH ^(k+1) の近
似値として蓄積しておけば、この項は時刻k以降におい
ては計算する必要がなく、演算量の低減が予想される。
【0048】次に、以上のことを数式により表現する。
まず、プレフィルタ係数の平滑化は、対応する入力ベク
トルX(k-i)毎に行う。式(34)より、例えば、X(k-1)に対
応する平滑化は、g2(k)+g1(k-1) であり、また、X(k-2)
に対応する平滑化はg3(k)+g2(k-1)+g1(k-2) である。X
(k-i+1)に対応する平滑化の結果(平滑化係数)を定数
μも含めてsi(k) と表せば、 si(k) = μΣ gi-j(k-j) , 1≦i≦p (Σはj=0からi−1まで) (35) si(k) = μΣ gi-j(k-j) , p<i (Σはj=i−pからi−1まで) (36) と表される。さらに、式(35)は、 si(k) =μΣ gi-j(k-j)+μgi(k) (Σはj=1からi−1まで) =μΣ gi-j-1(k-j-1)+μgi(k) (Σはj=0からi−2まで) = si-1(k-1)+μgi(k) for 2≦i≦p = μgi(k) for i = 1 (37) と表される。
【0049】一方、H ^(k+1) の近似値をZ(k+1)と表せ
ば、 Z(k+1) = {gp(k)+gp-1(k-1)+ … +g2(k-p+2)+g1(k-p+1)}X(k-p+1) +{gp(k-1)+gp-1(k-2)+ … +g2(k-p+1)+g1(k-p)}X(k-p) +{gp(k-2)+gp-1(k-3)+ … +g2(k-p)+g1(k-p-1)}X(k-p-1) + … (38) となり、推定伝達関数H ^(k+1) は式(34),(35),(38)よ
り、 H ^(k+1) = Z(k+1) + Σ si(k)X(k-i+1) (39) (Σはi=1からp−1まで) となる。また、Z(k+1)とZ(k)の間には、 Z(k+1) = {gp(k)+gp-1(k-1)+ … +g2(k-p+2)+g1(k-p+1)}X(k-p+1) + Z(k) = sp(k)X(k-p+1)+Z(k) (40) の関係が成立する。
【0050】さて、未知系の出力の推定値y ^(k) は式
(2),(39)より、 y ^(k) = X(k)TH ^(k) = X(k)T{Z(k)+Σ si(k-1)X(k-i)} (Σはi=1からp−1まで) = X(k)TZ(k) +Σ si(k-1)X(k)TX(k-i) (Σはi=1からp−1 まで) = X(k)TZ(k) + Sp-1(k-1)TRp-1(k) (41) と表される。ただし、Sp-1(k-1) は平滑化係数ベクト
ル、Rp-1(k) は相関ベクトルであり、それぞれ式で定義
される。
【0051】 Sp-1(k-1) = [s1(k-1),s2(k-1),…,sp-1(k-1)]T (42) Rp-1(k) = [X(k)TX(k-1),X(k)TX(k-2),…,X(k)TX(k-p+1)]T (43) ベクトルX(k)は式(3) で定義したように、 X(k) = [x(k),x(k-1),…,x(k-L+1)]T (44) であるので、 X(k)TX(k-i) = X(k-1)TX(k-i-1)−x(k-L)x(k-L-i)+x(k)x(k-i) i = 1,2,…,p-1 (45) の関係が成立し、 Rp-1(k) = Rp-1(k-1)−x(k-L)Xp-1(k-L)+x(k)Xp-1(k) (46) が成立する。但し、 Xp-1(k) = [x(k-1),x(k-2),…,x(k-p+1)]T (47) である。
【0052】ここで、推定伝達関数H ^(k) の近似値Z
(k)の蓄積、及びプレフィルタ係数の平滑化を行った場
合の伝達関数推定手順を、図5に基づいて説明する。ま
ず、時刻kにおいて、入力信号x(k)が供給される相関計
算部52において、このx(k)及び過去の入力値x(k-1),
…,x(k-L)、及び前の時刻の相関ベクトルRp-1(k-1) を
用いて、式(46)に基づいて、相関ベクトルRp-1(k) を計
算する。次に、この相関ベクトルRp-1(k) とプレフィル
タ係数の平滑化係数ベクトルSp-1(k-1) との内積Sp-1(k
-1)TRp-1(k) を内積演算計算部53において計算する。
また、畳み込み部54において、蓄積しておいた推定伝
達関数の近似値Z(k)と入力信号との畳み込み演算X(k)TZ
(k) を行う。前記内積演算及び畳み込み演算の結果は、
加算部57において加算され、未知系出力の推定値y ^
(k) を合成する。これらの操作は、式(41)の演算に相当
する。
【0053】次に図2に示した減算器24で未知系出力
y(k)と推定値y ^(k) との誤差e(k)を求め、図4に示し
たプレフィルタ係数ベクトル演算部31で、プレフィル
タ係数gi(k) を計算する。次に、計算されたプレフィル
タ係数を図5におけるプレフィルタ係数平滑部51に送
出し、平滑化を行ってp個の平滑化係数s1(k),s2(k),
…,sp-1(k),sp(k)を合成する。この平滑化操作は式(37)
に基づいて行う。これらのうちs1(k),s2(k),…,sp-1(k)
は、平滑化係数ベクトルSp-1(k) の要素として内積演算
計算部53及び推定伝達関数計算部56に供給する。ま
た、sp(k) は推定伝達関数の近似値蓄積部55に供給さ
れる。
【0054】推定伝達関数の近似値蓄積部55では、sp
(k) 及び入力信号ベクトルX(k)を用いて、近似値の更新
を行う。即ち、これまで蓄積されていた1次近似値Z(k)
にたいしてsp(k)X(k-p+1) を加算し、これをZ(k+1)とし
て蓄積する。この操作は式(40)の演算に対応する。最後
に、推定伝達関数計算部56において、平滑化係数ベク
トルSp-1(k) 及び入力信号ベクトルX(k)を用いて、式(3
9)の計算を行って推定伝達関数H ^(k+1)を得る。
【0055】以上の動作において、各部における演算量
の概算値は、 相関計算部52 2p 内積演算部53 p 畳み込み部54 L プレフィルタ係数ベクトル演算部31 15p プレフィルタ係数平滑部51 p 1次近似値蓄積部55 L 推定伝達関数計算部56 Lp となる。ただし、p−1≒p とみなした。これらを足し算
した総演算量は、 (L+19)p+2L (48) となる。
【0056】ここで、注目すべき点は以下の点である。
図2に示した従来の伝達関数推定法では、伝達関数に相
当する推定伝達関数H ^(k+1) を毎時刻計算し、これに
基づいて未知系の出力の推定値y ^(k) を合成してき
た。これに対して、推定伝達関数の近似値Z(k)を用いた
本発明では、図5に示したように、推定伝達関数H ^(k
+1) を計算しなくても、未知系の出力の推定値y ^(k)
は合成できる。そして、y ^(k) が合成できれば、上記
一連の動作を行うことができる。従って、推定動作を長
時間行った結果としての伝達関数の推定値H ^(k+1) の
みが必要な応用例や、また、伝達関数の推定結果そのも
のより未知系の出力の推定値y ^(k) が必要な応用例
(例えば、時不変系の特性推定や音響エコーキャンセラ
など)においては、毎時刻推定伝達関数を計算する必要
はない。
【0057】このことより、各時刻で必要とされる総演
算量は、推定伝達関数計算部56における演算量を除い
て、 19p+2L (49) となる。従来技術の問題点の記述において述べたよう
に、フィルタのタップ数L=500 、射影の字数p=20とした
場合の従来技術の演算量は約12000 であった。しかし、
本発明の演算量は、式(49)より、1380となり、約1/8 の
演算量低減効果が得られたことがわかる。
【0058】以上説明したように本発明は、プレフィル
タ係数の回帰的合成、推定伝達関数ベクトルの近似値の
蓄積、ならびにプレフィルタリング係数の平滑化を行う
ことで、従来の射影法の有していた演算量を大幅に低減
するものである。以上の説明においては、ステップサイ
ズμがスカラーとして扱ってきたが、より一般的には、
対角行列Aを用いてμAとすることが考えられる。例え
ば、未知系のインパルス応答のエネルギーが指数減衰す
るものである場合には、Aの要素を次式のように指数的
に減衰する数列にすると伝達関数の推定速度が速まるこ
とがある。
【0059】 A=diag(α,αγ,αγ2,…,αγL-1),(0<γ<1) (50) この場合には、線形予測部への入力に比率γ1/2 の指数
をかけ、また、式(14)のCp(k)を次式によって再定義す
る。 このように修正を行えば、以上説明してきた本発明を適
用することができる。
【0060】以下に本発明の伝達関数推定装置の適用例
を説明する。第1の適用例としては、音響機器の伝達関
数測定が上げられる。図6は、スピーカからマイクロホ
ンまでの伝達関数を測定する場合の系を示している。図
において121はスピーカ、122はマイクロホン、1
1は伝達関数推定装置を表している。マイクロホンの出
力信号y(k)は入力信号x(k)にスピーカの特性が付加され
たものである。スピーカ(音響パスとマイクロホンも含
める)を未知系と考えれば、図6は図1と同一の系とな
り、本発明の伝達関数推定装置11を図6に示すように
スピーカ121の入力とマイクロホン122の出力に接
続すれば、スピーカの伝達関数H(k)をFIRフィルタの
フィルタ係数H ^(k) として推定することができる。測
定は、通常、部屋の音響特性の影響を受けないように無
響室で行われる。
【0061】第2の応用例としては、テレビ会議システ
ムやビジュアルテレホンなどの拡声通話系においてハウ
リングやエコーを防止する音響エコーキャンセラがあげ
られる。図7に音響エコーキャンセラの説明図を示す。
図において121は受話スピーカ、122は送話マイク
ロホン、123は室内音響系を示し、20は疑似エコー
生成部であり、図2においてこの発明が適用された推定
信号生成部20と同じ構成である。この実施例の伝達関
数推定装置11は音響エコーキャンセラとして動作す
る。スピーカとマイクロホンを用いたハンズフリー通話
系では、受話スピーカ121から出た相手側の音声が、
伝達関数H(k)の室内音響系123を経て送話スピーカ1
22で受音される。受音された信号y(k)は、相手側に伝
送されて再生される。相手側においては、送話した音声
が戻ってきて再生されるので、この現象は音響エコーと
呼ばれ、快適な通話を妨害する。
【0062】音響エコーキャンセラ11の疑似エコー生
成部20はスピーカの特性をも含めた室内音響特性H
(k) を推定し、入力信号x(k)と推定された特性H ^(k)
に基づいて疑似エコー信号y ^(k) を合成し出力する。
差分器24は受話信号y(k)から疑似エコー信号y ^(k)
を差し引く。推定が良好に行われていれば誤差信号e(k)
のパワーが最小となるようにエコーキャンセラ11が動
作し、y ^(k) ≒y(k)となって音響エコーは大幅に低減
される。
【0063】図7の系を図2と比較すれば、本発明の伝
達関数推定装置が音響エコーキャンセラとして直接適応
できることがわかる。図7における室内音響系123が
図2における未知系12に対応し、図7における疑似エ
コーy ^(k) および送話信号e(k)が、それぞれ、図2に
おける畳み込み演算部23の出力y(k)及び誤差信号e(k)
に対応する。
【0064】第3の適用例は騒音制御である。図8に騒
音制御の原理図を示す。図において131は騒音源、1
32は伝達関数H(k)で表された騒音伝達経路、133は
観測用マイクロホン、134は騒音モニタマイクロホ
ン、20は疑似騒音生成部、136は逆相器、137は
スピーカを表す。騒音制御の目的は騒音源131から伝
達特性H(k)を経て観測される騒音を、スピーカ137か
ら負の疑似騒音(音圧がy(k)と表されるときに、-y(k)
と表される音圧を、y(k)に対する負の音と呼ぶ)を出す
ことにより消去しようとするものである。
【0065】この目的を達成するためには、図2におけ
るこの発明が適用された推定信号生成部20と同じ構造
の疑似騒音生成部20において騒音伝達経路132の伝
達特性H(k)を推定する。即ち、騒音源131の付近でモ
ニタマイクロホン134を用いて騒音を検出し、入力信
号x(k)として疑似騒音生成部20に与える。それによっ
て観測地点(マイクロホン133)における騒音信号y
(k)の推定値y ^(k) を生成する。疑似騒音y ^(k) を
逆相器136で正負を反転して信号-y^(k) とする。こ
こで、簡単のために、スピーカの特性は無視できるもの
と考えれば、観測点のマイクロホン133においてスピ
ーカ137からの信号-y^(k) は騒音信号y(k)と音圧が
合成され、マイクロホン133の出力に誤差信号e(k)が
得られる。このとき、騒音伝達経路の推定が良好に行わ
れていれば、信号y ^(k) は騒音源からの騒音y(k)と類
似したものとなり、スピーカから合成される音圧-y^
(k) によって騒音y(k)はキャンセルされる。
【0066】図8の系を図2と比較すれば、マイクロホ
ン133が差分器24と対応し、従って、図8の系と図
2の系との相違点は、推定装置11の外部で合成した誤
差信号を推定装置に供給するか、または、誤差信号を推
定装置11の内部で計算するかという点に過ぎず、この
発明の原理は図8に示した騒音制御装置に適用可能であ
る。
【0067】以上、3つの本発明の適用例を示した。図
6に示したスピーカの伝達特性の測定では、スピーカの
特性は時間的に変化しない。従って、測定の途中で測定
結果(伝達特性)は知る必要がなく、一定時間の測定動
作を終了した結果として伝達特性がわかればよい。図7
に示した音響エコーキャンセラの例では、例えば人の移
動やドアの開閉などによって、室内伝達特性は時間的に
変化する。しかし、図7から分かるように、室内伝達特
性(未知系)H(k)の出力y(k)の推定値y ^(k)が得られ
れば音響エコーキャンセラは目的を達成する。従って、
音響エコーキャンセラにおいては、室内伝達特性そのも
のの推定値H ^(k) は不用である。図8に示した騒音制
御の場合も、音響エコーキャンセラと同様に、未知系の
出力推定値y ^(k) が得られれば目的を達成し、室内伝
達特性そのものの推定値は不用である。
【0068】以上のことから、これらの適用例において
は、本発明における伝達関数推定装置を適用でき、従来
装置と比較して演算量を大幅に低減できる。また、本発
明は、図2に示したような系構成において誤差信号e(k)
のパワーを最小とするという基本機能を有している。従
って、解決すべき問題が、図2に示した誤差信号のパワ
ーの最小化問題としてモデル化できる全ての応用例に対
して、本発明を適用することが可能である。
【0069】上記実施例において、式(50)の対角行列A
の要素は部屋の残響と同じ減衰をするように選ぶと効果
的である。最後に、本発明を用いて構成した音響エコー
キャンセラの実験結果を示す。図9は学習曲線と呼ばれ
るもので、縦軸はエコー消去量、横軸は時間を表してい
る。時間が経過して室内伝達特性の推定が進行すると共
に、エコー消去量は増加する。図において、曲線211
は射影の次数p=2 の場合、曲線212は射影の次数p=8
の場合、曲線213は射影の次数p=32の場合の学習曲線
を表している。図より、pが大きいほど、収束速度が早
い(エコー消去量が短時間で増加する)ことが理解でき
る。
【0070】次に、本発明の効果を表す図を示す。図1
0は、射影の次数pと必要な演算量の関係を示す図で、
横軸は射影の次数p を、縦軸は積和演算(和演算も含
む)の回数を表す。図において、曲線221は従来法の
演算量を、曲線222は本発明を用いた場合の演算量を
示した。但し、伝達関数の推定に用いるFIRフィルタ
のタップ数L=500 とした。この図より、特にpを大きく
した場合において、本発明は従来法と比べて演算量が大
幅に低減していることが分かる。
【0071】以上説明したように、本発明を利用すれ
ば、射影法による未知系の伝達関数の推定または、未知
系の出力の推定に要する演算量を大幅に低減することが
できる。具体的には、未知系を表現するFIRフィルタ
のタップ長をL、射影の次数をpとすると、従来技術で
は p3/6+(p+1)L、即ちp3に比例する積和演算量が必要で
あったのが、本発明では19p+2Lの演算量にまで削減する
ことができた。
【0072】このような演算量の低減は、それに比較し
たハードウェア規模の低減が可能なので、装置の小規模
化、価格の低減化に寄与が大きい。また同一のハードウ
ェア規模とするなら、タップ長Lやpを大きく選ぶこと
ができ、推定動作の高速化や推定精度の向上を得ること
ができる。またこの発明をコンピュータで実施する場
合、演算処理時間を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】伝達関数推定を行う一般的構成を示すブロック
図。
【図2】図1における伝達関数推定部11の処理機能構
成を示すブロック図。
【図3】図2におけるこの発明を適用する推定伝達関数
修正ベクトル計算部21の処理機能構成を示すブロック
図。
【図4】この発明の第1の観点に基づく図3におけるプ
レフィルタ係数ベクトル計算部31の処理機能構成を示
すブロック図。
【図5】この発明の第2の観点に基づく推定信号生成処
理を示すブロック図。
【図6】この発明をスピーカの伝達関数測定に適用した
場合の構成ブロック図。
【図7】この発明を音響エコーキャンセラに適用した場
合の構成ブロック図。
【図8】この発明を騒音制御に適用した場合の構成ブロ
ック図。
【図9】この発明を音響エコーキャンセラに適用した場
合のエコー消去特性を示すグラフ。
【図10】この発明による伝達関数推定の演算量と射影
次数の関係を従来例と比較して示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小島 順治 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (72)発明者 牧野 昭二 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/178 G01H 3/00 G05B 13/02 G06F 17/12 H03H 21/00

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 離散的時刻kにおける未知系の入力信号
    x(k)と出力y(k)とからその未知系の伝達関数を推定し、
    その推定した伝達関数H ^(k) を持つ疑似系の出力信号
    y ^(k) の上記未知系の出力信号y(k)に対する誤差信号
    e(k)=y(k)-y^(k) を算出し、その誤差信号ベクトルをE
    (k)、入力信号x(k)の共分散行列をCp(k) 、プレフィル
    タ係数ベクトルをG(k)とするとき、p 元連立1次方程式 Cp(k)G(k) = E(k) を解いて、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を求め、
    上記入力信号x(k)のベクトルをX(k)とし、推定伝達関数
    修正ベクトルをδH ^(k) とし、上記プレフィルタ係数
    ベクトルG(k)を使って次式 δH ^(k) =[X(k),X(k-1),…,X(k-p+1)]G(k) により上記疑似系の上記推定伝達関数に対する上記修正
    ベクトルδH ^(k) を計算し、その推定伝達関数修正ベ
    クトルδH ^(k) と、予め決めた修正ステップサイズμ
    とを使って次式 H ^(k+1) =H ^(k) +μδH ^(k) により上記疑似系の推定伝達関数ベクトルH ^(k) を修
    正することを繰り返し上記誤差信号e(k)がゼロに近づく
    ようにする射影アルゴリズムによる適応的伝達関数推定
    方法において、 上記p元連立1次方程式を解いて上記プレフィルタ係数
    ベクトルG(k)を求めるステップは、(a) 上記入力信号x
    (k)の前向き線形予測係数ベクトルF(k)とその2乗予測
    誤差和f(k)と、後向き線形予測係数ベクトルB(k)とその
    2乗予測誤差和b(k)を算出し、(b) プレフィルタ誘導係
    数ベクトルをD(k)と表すとき、次の第1及び第2式から
    成る上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)についての回帰
    式 【数1】 により上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を求めるステ
    ップである。
  2. 【請求項2】 離散的時刻kにおける未知系の入力信号
    x(k)と出力y(k)とからその未知系の伝達関数を推定し、
    その推定した伝達関数H ^(k) を持つ疑似系の出力信号
    y ^(k) の上記未知系の出力信号y(k)に対する誤差信号
    e(k)=y(k)-y^(k) を算出し、その誤差信号ベクトルをE
    (k)、入力信号x(k)の共分散行列をCp(k)、プレフィル
    タ係数ベクトルをG(k)とするとき、p 元連立1次方程式 Cp(k)G(k)= E(k) を解いて、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を求め、
    上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を使って次式 δH ^(k) =[x(k),x(k-1),…,x(k-p+1)]G(k) により上記疑似系の推定伝達関数修正ベクトルδH ^
    (k) を計算し、その推定伝達関数修正ベクトルδH ^
    (k) と、予め決めた修正ステップサイズμとを使って次
    式 H ^(k+1) =H ^(k) +μδH ^(k) により上記疑似系の推定伝達関数ベクトルH ^(k) を修
    正することを繰り返し上記誤差信号e(k)がゼロに近づく
    ようにする射影アルゴリズムによる適応的伝達関数推定
    方法において、 上記推定伝達関数修正ベクトルを計算する代わりに、上
    記プレフィルタ係数ベクトルG(k)の要素であるプレフィ
    ルタ係数g(k)を次式 si(k) = si-1(k-1)+μgi(k) for 2≦i≦p = μg1(k) for i = 1 により平滑化して平滑化係数si(k) を得て、上記推定伝
    達関数ベクトルを上記修正ベクトルで修正する代わり
    に、上記平滑化係数s(k)を使って次式 Z(k+1)=Z(k)+sp(k)X(k-p+1) により近似推定伝達関数Z(k+1)を求め、上記近似推定伝
    達関数Z(k+1)と上記入力信号x(k)の畳み込み演算X(k)TZ
    (k) を行い、 上記平滑化係数s(k)のベクトル、上記入力信号x(k)のベ
    クトル及び上記入力信号の相関ベクトルをそれぞれ Sp-1(k-1)=[s1(k-1),s2(k-1),…,sp-1(k-1)]T Rp-1(k)=[X(k)TX(k-1),X(k)TX(k-2),…,X(k)TX(k-p+1)]T として次式の内積 Sp-1(k-1)TRp-1(k) を計算し、 上記畳み込み演算結果X(k)TZ(k) と上記内積演算結果の
    和を上記推定信号y ^(k) として出力する。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の適応的伝達関数推定方
    法において、 上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)の要素であるプレフ
    ィルタ係数g(k)を次式 si(k) = si-1(k-1)+μgi(k) for 2≦i≦p = μg1(k) for i = 1 により平滑化して平滑化係数si(k) を得て、 上記平滑化係数s(k)を使って次式 Z(k+1) = Z(k)+sp(k)X(k-p+1) により近似推定伝達関数Z(k+1)を求め、 上記近似推定伝達関数Z(k+1)と上記入力信号x(k)の畳み
    込み演算X(k)TZ(k) を行い、 上記平滑化係数s(k)のベクトル、上記入力信号x(k)のベ
    クトル及び上記入力信号の相関ベクトルをそれぞれ Sp-1(k-1)=[s1(k-1),s2(k-1),…,sp-1(k-1)]T Rp-1(k)=[X(k)TX(k-1),X(k)TX(k-2),…,X(k)TX(k-p+1)]T として次式の内積 Sp-1(k-1)TRp-1(k) を計算し、 上記畳み込み演算結果X(k)TZ(k) と上記内積演算結果の
    和を上記推定信号y ^(k) として出力する。
  4. 【請求項4】 請求項1または3に記載の適応的伝達関
    数推定方法において、上記プレフィルタ係数ベクトルG
    (k-1)の最後の要素をgp(k-1) とするとき、上記第2式
    の代わりに上記第2式を変形した次式 を用いて上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を計算す
    る。
  5. 【請求項5】 請求項1または3に記載の適応的伝達関
    数推定方法において、予め決めた2つの非負数をδ
    F(k),δB(k-1)とし、上記第1及び第2式の代わりにそ
    れらを変形した次式 【数2】 により上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を計算する。
  6. 【請求項6】 離散的時刻kにおける未知系の入力信号
    x(k)と出力y(k)とから推定した伝達関数H ^(k) を持つ
    畳み込み演算手段により形成された疑似系と、上記入力
    信号に対する上記疑似系の出力信号y (k) と上記未知系
    の出力との誤差信号e(k)=y(k)-y ^(k) のベクトルをE
    (k)、上記入力信号x(k)の共分散行列をCp(k)、プレフ
    ィルタ係数ベクトルをG(k)と表すとき、p 元連立1次方
    程式 Cp(k)G(k)= E(k) を解いて、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を求める
    プレフィルタ係数ベクトル計算手段と、上記入力信号x
    (k)のベクトルをX(k)、推定伝達関数修正ベクトルをδH
    ^(k) と表し、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を
    使って次式 δH ^(k) =[X(k),X(k-1),…,X(k-p+1)]G(k) により上記疑似系の上記推定伝達関数に対する上記修正
    ベクトルδH ^(k) を計算するプレフィルタリング手段
    と、その推定伝達関数修正ベクトルδH ^(k) と、予め
    決めた修正ステップサイズμとを使って次式 H ^(k+1) =H ^(k) +μδH ^(k) により上記疑似系の推定伝達関数ベクトルH ^(k) を修
    正する推定伝達関数修正手段とを含み、上記推定伝達関
    数ベクトルの修正を繰り返し上記誤差信号e(k)がゼロに
    近づくようにする射影アルゴリズムによる適応的伝達関
    数推定装置において、上記プレフィルタ係数ベクトル計
    算手段は: 上記入力信号x(k)の前向き線形予測係数ベクトルF(k)と
    その2乗予測誤差f(k)と、後向き線形予測係数ベクトル
    B(k)とその2乗予測b(K)を算出する線形予測手段と、 プレフィルタ誘導係数ベクトルをD(k)とするとき、次の
    第1及び第2式から成る上記プレフィルタ係数ベクトル
    についての回帰式 【数3】 の上記第1式によりプレフィルタ係数ベクトルG(k)を修
    正するプレフィルタ係数ベクトル修正手段と、 上記第2式によりプレフィルタ誘導係数ベクトルD(k)を
    修正するプレフィルタ誘導係数ベクトル修正手段とを含
    む。
  7. 【請求項7】 離散的時刻kにおける未知系の入力信号
    x(k)と出力y(k)とから推定した伝達関数H ^(k) を持つ
    畳み込み演算手段により形成された疑似系と、上記入力
    信号に対する上記疑似系の出力信号y ^(k) と上記未知
    系の出力との誤差信号e(k)=y(k)-y ^(k) のベクトルを
    G(k)、入力信号x(k)の共分散行列をCp(k)、プレフィル
    タ係数ベクトルをG(k)と表すとき、p 元連立1次方程式 Cp(k)G(k)= E(k) を解いて、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を求める
    プレフィルタ係数ベクトル計算手段と、上記入力信号x
    (k)のベクトルをX(k)、推定伝達関数修正ベクトルをδH
    ^(k) と表し、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を
    使って次式 δH ^(k) =[X(k),X(k-1),…,X(k-p+1)]G(k) により上記疑似系の上記推定伝達関数に対する上記修正
    ベクトルδH ^(k) を計算するプレフィルタリング手段
    と、その推定伝達関数修正ベクトルδH ^(k) と、予め
    決めた修正ステップサイズμとを使って次式 H ^(k+1) =H ^(k) +μδH ^(k) により上記疑似系の推定伝達関数ベクトルH ^(k) を修
    正する推定伝達関数修正手段とを含み、上記推定伝達関
    数ベクトルの修正を繰り返し上記誤差信号e(k)がゼロに
    近づくようにする射影アルゴリズムによる適応的伝達関
    数推定装置において、 上記プレフィルタリング手段は上記修正ベクトルを計算
    する代わりに、上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)の要
    素であるプレフィルタ係数g(k)を次式 si(k) = si-1(k-1)+μgi(k) for 2≦i≦p = μg1(k) for i = 1 により平滑化して平滑化係数si(k) として出力するプレ
    フィルタ係数平滑手段であり、 上記推定伝達関数修正手段は: 上記修正ベクトルにより上記推定伝達関数ベクトルを修
    正する代わりに、上記平滑化係数s(k)を使って次式 Z(k+1) = Z(k)+sp(k)X(k-p+1) により近似推定伝達関数Z(k+1)を求める近似推定伝達関
    数計算手段と、 上記近似推定伝達関数Z(k+1)と上記入力信号x(k)の畳み
    込み演算X(k)TZ(k) を行う畳み込み計算手段と、 上記平滑化係数s(k)のベクトル、上記入力信号x(k)のベ
    クトル及び上記入力信号の相関ベクトルをそれぞれ Sp-1(k-1)=[s1(k-1),s2(k-1),…,sp-1(k-1)]T Rp-1(k)=[X(k)TX(k-1),X(k)TX(k-2),…,X(k)TX(k-p+1)]T として次式の内積 Sp-1(k-1)TRp-1(k) を計算する内積計算手段と、 上記畳み込み演算結果X(k)TZ(k) と上記内積演算結果の
    和を上記推定信号y ^(k) として出力する加算手段とを
    含む。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の適応的伝達関数推定装
    置において、上記畳み込み手段のタップ数をLとする
    と、上記内積計算手段は上記入力信号ベクトルからその
    上記相関ベクトルを次式 Rp-1(k)=Rp-1(k-1)−x(k-L)Xp-1(k-L)+x(k)Xp-1(k) により計算する相関計算手段を含む。
  9. 【請求項9】 請求項6に記載の適応的伝達関数推定装
    置において、上記プレフィルタリング手段は上記プレフ
    ィルタ係数ベクトルG(k)の要素であるプレフィルタ係数
    g(k)を次式 si(k) = si-1(k-1)+μgi(k) for 2≦i≦p = μg1(k) for i = 1 により平滑化して平滑化係数si(k) として出力するプレ
    フィルタ係数平滑手段であり、 上記推定伝達関数修正手段は: 上記平滑化係数s(k)を使って次式 Z(k+1) = Z(k)+sp(k)X(k-p+1) により近似推定伝達関数Z(k+1)を求める近似推定伝達関
    数計算手段と、 上記近似推定伝達関数Z(k+1)と上記入力信号x(k)の畳み
    込み演算X(k)TZ(k) を行う畳み込み計算手段と、 上記平滑化係数s(k)のベクトル、上記入力信号x(k)のベ
    クトル及び上記入力信号の相関ベクトルをそれぞれ Sp-1(k-1)=[s1(k-1),s2(k-1),…,sp-1(k-1)]T Rp-1(k)=[X(k)TX(k-1),X(k)TX(k-2),…,X(k)TX(k-p+1)]T として次式の内積 Sp-1(k-1)TRp-1(k) を計算する内積計算手段と、 上記畳み込み演算結果X(k)TZ(k) と上記内積演算結果の
    和を上記推定信号y ^(k) として出力する加算手段とを
    含む。
  10. 【請求項10】 請求項6または9に記載の適応的伝達
    関数推定装置において、上記プレフィルタ誘導係数ベク
    トル修正手段は上記プレフィルタ係数ベクトルG(k-1)の
    最後の要素をgp(k-1) とするとき、上記第2式の代わり
    に上記第2式を変形した次式 を用いて上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を計算する
    手段である。
  11. 【請求項11】 請求項6または9に記載の適応的伝達
    関数推定装置において、予め決めた2つの非負数をδ
    F(k),δB(k-1)とし、上記プレフィルタ係数ベクトル修
    正手段と上記プレフィルタ誘導係数ベクトル修正手段は
    それぞれ上記第1及び第2式の代わりにそれらを変形し
    た次式 【数4】 により上記プレフィルタ係数ベクトルG(k)を計算する手
    段である。
  12. 【請求項12】 請求項6または9に記載の適応的伝達
    関数推定装置において、上記未知系の出力信号y(k)と上
    記疑似系の出力である上記推定信号y ^(k)の差y(k)-y
    ^(k) を上記誤差信号e(k)として出力する差分手段が設
    けられている。
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