JP3299068B2 - 乳酸菌スターター用培養基およびこれを用いたチーズの製造方法 - Google Patents

乳酸菌スターター用培養基およびこれを用いたチーズの製造方法

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JP3299068B2 JP05482195A JP5482195A JP3299068B2 JP 3299068 B2 JP3299068 B2 JP 3299068B2 JP 05482195 A JP05482195 A JP 05482195A JP 5482195 A JP5482195 A JP 5482195A JP 3299068 B2 JP3299068 B2 JP 3299068B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は乳製品製造用乳酸菌スタ
ーターを調製するために使用する新規な培養基に関す
る。さらに詳しくは、チーズ、発酵乳、乳酸菌飲料、発
酵バターなどの発酵乳製品を製造する際に使用する乳酸
菌スターターを調製するための培養基の組成に関し、さ
らにこの培養基を用いたチーズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】乳酸発酵は食品の製造に広く利用されて
いる。特に乳業の分野では、チーズ、発酵乳、乳酸菌飲
料、発酵バターなど乳酸発酵により製造される発酵乳製
品が多い。これらの発酵乳製品を製造するためには、通
常はその用途に応じた乳酸菌を培養基に接種し、あらか
じめ培養して得た乳酸菌培養物を乳酸菌スターター(以
下スターターという)として、それぞれの発酵乳製品の
主原料に添加して本発酵させる方法が一般的に採用され
ている。この培養基として通常、脱脂乳や固形分濃度が
10%程度の還元脱脂乳が使用されており、必要に応じ
て酵母エキスなどの増殖因子を含有する成分が配合され
てきた。またこのような天然培養基の他に合成培養基も
乳酸菌の研究等に使用されている。例えばGYP培地
(内村他著、乳酸菌実験マニュアル、50頁、朝倉書店
刊、1992年)、LMB培地(東京大学農学部農芸化
学教室編、実験農芸化学下巻、182頁、朝倉書店刊、
1981年)、M−17培地(Appl. Microbiol.,Vol.2
9,807,1973) 、MRS培地(J. Appl. Bacteriol.,Vol.
23,130-135,1960)、エリカー培地(J.Dairy Sci.,vol.3
9,1611,1956) などの合成培養基がある。しかし、これ
らの合成培養基はその組成成分が高価であるため、製造
コストの増大につながること、また必ずしも乳酸発酵能
の優れたスターターを調製できないために、実際の製造
には利用されていない。
【0003】また最近になりスターター用の脱脂乳に特
定成分を添加してファージ耐性を付与したり保存性を向
上させたりする目的の培養基が提案されている。例え
ば、前者の例としては、特開昭60─105489号公
報に脱脂乳中にオルトリン酸塩を加え煮沸後有機酸を加
えた培地が記載されている。また特開昭60─7523
3号公報に脱脂乳へオレイン酸のエステルを添加して培
養する技術が開示されている。しかしこのような添加物
も本発明で開示するような、スターターの活力をあげる
ことには機能していない。脱脂乳または脱脂粉乳は天然
物であるために品質が一定でなく、季節によって異なる
ことが知られている。従って、その影響により、これら
を培養基として調製した乳酸菌スターターの発酵能は変
動することから、工程管理の上で問題となっていた。こ
のようなことから、より高く、安定した乳酸発酵能を有
する乳酸菌スターターを調製できる培養基が望まれてい
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】チーズ、発酵乳、乳酸
菌飲料、発酵バターなどの発酵乳製品を製造する際に使
用するスターターを製造するために適した培養基の提供
が求められている。従来の培養基では、調製されたスタ
ーターの乳酸発酵能が安定せず、しばしば乳酸発酵能の
低いスターターが調製された。このようなスターターは
活力が低いと表現され、スターターが所定の培養時間内
に生成する乳酸量が少ないことを意味する。活力が低い
スターターを用いるとチーズや発酵乳の製造時間が延長
し、しばしば製品の欠陥が発生することが指摘されてい
た。本発明は、この活力の高く安定したスターターを調
製するための培養基の組成を提供することを課題とす
る。またより安価な培養基を提供し、スターターの生産
コストを下げることも本発明の課題である。さら、本発
明で提供されるスターターを用いて、チーズ製造に要す
る時間を短縮することも本発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のスターター用培
養基は、乳、特に脱脂粉乳またはホエー(乳清)粉を窒
素源および炭素源としている。脱脂粉乳または脱脂乳は
従来からスターター用培養基の成分として利用されてき
ているが、上記に述べたように、脱脂乳または脱脂粉乳
の品質は、季節による変動があるため、これらを培養基
とするスターターの活力も不安定になりがちである。そ
こで、本発明においては脱脂粉乳またはホエー粉を安価
な窒素源および炭素源として利用することとし、さら
に、乳酸菌の窒素源および炭素源として脱脂粉乳または
ホエー粉は3%以上であれば良いことを確認した。特に
好ましくは3.5%以上であればよく、5%以上の固形
分濃度とすると凝固が発生する。本発明の以下の説明に
おいては脱脂粉乳またはホエー粉を使用したが、もちろ
ん脱脂乳やホエー(乳清)であっても使用可能であり、
このような液体原料を用いる場合には乳固形分を測定し
3.5〜5%の範囲におさまるように希釈して用いるこ
と良い。
【0006】この窒素源、炭素源である脱脂粉乳または
ホエー粉は、所定の濃度に簡単に水に溶解して用いるこ
とができる。このようにして溶解したものを還元脱脂乳
または還元ホエーと称する。従来この還元脱脂乳または
還元ホエーを加熱滅菌、冷却後目的の乳酸菌を接種し
て、通常22℃で1晩培養を行なってスターターを調製し
ていた。この時必要に応じて酵母エキスなどの成分を
0.1〜1.0%程度添加することが乳酸菌の増殖上好
ましいが、添加しなくとも良いことが、またリン酸二水
素アンモニウムやクエン酸三ナトリウムなどの緩衝能を
持つ無機塩を0.5〜2%程度添加しても良いことが知
られていた。
【0007】しかしながら、従来の培養基の課題の一つ
は、スターターの培養終了後しだいに乳酸菌の乳酸発酵
能が低下し、結果として活力の低いスターターになって
しまうことであった。この原因は培養物のpHが、乳酸
菌の生産する乳酸によって低下することである。このよ
うな問題を解決するために上記のようなpH緩衝能のあ
る塩を添加することが行なわれていたが、スターターの
ような乳酸菌の高密度培養では必ずしも有効なものでは
なかった。このため、あらかじめ炭酸カルシウムのよう
な中和剤を培養基に加えることが経験的に行なわれてい
るが、この培養物のpHを至適な値に維持するための最
適な塩は何か、あるいはその添加量はどれぐらいが適切
なのか具体的な検討はあまりなされていなかった。本発
明では、以下の試験例に示したようにこの最適な量と用
いる塩について検討した結果、炭酸カルシウムまたはリ
ン酸カルシウムがスターターの活力を最大限に引き上げ
ることを見いだした。本発明のスターター用培養基の組
成ではこの炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムを約
1 %以上、特に好ましくは1 .5%以上含有させる。炭
酸カルシウムまたはリン酸カルシウムは不溶解性の微粒
子であり、乳酸の生成に伴って乳酸カルシウムとなりp
Hの低下を抑制している。本発明の培養基で、炭酸カル
シウムまたはリン酸カルシウムを約1 %以上含有してお
れば発酵期間中そのpHを乳酸菌の至適pHである5.5
〜6.5に維持することが可能であり、また乳酸の生成に
は影響しないためスターターの活力が高い状態で保持さ
れる。
【0008】さらに、スターターの活力を高めるために
は乳酸の生産促進因子の利用をあげることができる。生
産促進因子の利用はこれまでは、生産促進因子である酵
母エキスや肉エキスなどの天然成分を利用することが中
心であった。しかし本発明者らの検討では乳蛋白質を使
用したスターター用培養基の場合特にマグネシウムの存
在が重要であることが明らかとなった。従来の乳酸菌培
養においてはマグネシウムの必要性は、必須元素として
配合するのみで、8.1 ×10-4mM〜2.0 ×10-3mMの範
囲と非常に低い含量であった。しかし本発明者らはこの
マグネシウムを30mM以上、特に好ましくは50mM
以上を培養基に含有させることにより乳酸の生産が促進
され、スターターの活力が増強されることを初めて見い
だした。マグネシウムの量は50mMを越えるとその効
果はプラトーに達するため、これ以上の量を添加しても
その効果には大きな差はなかった。培養基に添加するマ
グネシウムとしては有機塩または無機塩のいずれであっ
ても使用可能であるが、無機塩が特に好ましい。また無
機塩としては炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩などを挙げること
ができる。しかしスターターを食品に使用する場合には
食品添加物として承認されている硫酸塩、塩酸塩が望ま
しい。本発明のスターターは原料である、脱脂粉乳また
はホエー粉、炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウム、
マグネシウム塩およびその他の添加物を所定の濃度に溶
解し、加熱滅菌を行なって培養基を調製するが、必要に
応じてこの調製した培養基を噴霧乾燥し、乾燥粉末とす
ることもできる。このようにして調製された培養基はチ
ーズ製造にあたって、通常のスターター培養基と同様に
用いてスターターを調製し、このスターターを原料乳に
加え発酵させると、効率良くチーズ生産が可能となる。
特に、本発明による培養基で調製されたスターターは活
力が高く、このためカードを回収するまでの時間を短縮
することができる。以下に試験例、実施例を示し本発明
をさらに詳細に説明する。
【0009】
【試験例】
(1)乳酸菌 本試験例においては乳酸菌として以下の菌を使用し試験
用菌株とした。市販のスターターを購入し、このスター
ターから乳酸菌を分離した。分離株は常法に従って同定
を行なった。試験に使用した菌はラクトコッカス ラク
チスサブスピーシーズ クレモリス(L.lactis ssp.cre
moris 以下L.cremoris)、ラクトコッカス ラクチス
サブスピーシーズ ラクチス(L.lactis ssp.lactis以
下L.lactis)、ロイコノストック(Leuconostoc 以下Le
u.という)の3菌種であった。スターターの試験にあた
ってはこの3菌株を混合培養したものを用いたが、必要
に応じて単独培養したものを用いた。単独で用いた場合
各乳酸菌の培養温度条件はL.cremorisとL.lactisは30
℃、Leu.は25℃とした。なお市販スターターは10%
濃度の還元脱脂乳(RSM)で5代以上継代培養を行な
った後、各乳酸菌を分離し、分離菌はMRS培地(ディ
フコ製)を用いて培養を行なった。
【0010】(2)活力測定 本発明では、スターターの活力として乳酸酸度を用い
た。活力測定は、スターターを10%の還元脱脂乳(R
SM)に1%接種し、30℃で6時間培養を行ない、酸
度滴定法により乳酸酸度を測定した。また相対活力とし
て基準とした培養物の酸度に対する、試験試料の酸度の
比率をもとめ、相対活力(%)で表した。また活力の参
考としてpHおよび生育乳酸菌数も測定した。なお活力
を測定するための10%還元脱脂乳の殺菌は100℃3
0分の加熱で行ない、それ以外の殺菌は115℃20分
の加熱とした。
【0011】(3)市販培地で調製したスターターの活
力測定 市販されている乳酸菌用培地を用いてスターターを調製
した。用いた培地は10% 還元脱脂乳(RSM)、M1
7、MRS、LMB、GYP、エリカー(Eliker)培地で
ある。これらの培地を指示どおりに調製し、上記の乳酸
菌3菌種を上記の活力測定方法に従って各培地に接種
し、培養を行い活力を測定した。結果を下記の表1に示
した。
【0012】
【表1】 乳酸菌培地で調製したスターターの活力 ────────────────────────────────── 培地 活力(乳酸酸度) 生菌数(CFU/ml) ────────────────────────────────── 10% RSM 0.524 3.1×108 M17 0.524 3.1×108 MRS 0.450 7.2×107 LMB 0.428 8.6×107 GYP 0.448 9.6×107 Eliker 0.395 6.6×107 ───────────────────────────────────
【0013】いずれの培地もスターターとした場合、1
0%RSMと同等かそれ以下の活力しか示さなかった。
もっとも高い活力を示した市販培地がRSMを越えられ
ない原因の一つに、生成した乳酸によるpHの低下を抑
制できないことがある。そのため、従来乳酸菌の培養に
あたっては中和剤を培養液に加える試みがなされてき
た。今回再度、培養液に添加するpH低下防止効果のあ
る難溶性塩の検討を更に行った。
【0014】(4)難溶性塩による乳酸のpH緩衝作用 難溶性塩として炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ク
エン酸カルシウム、リン酸マグネシウムを選択した。こ
れらの塩の1%水懸濁液100mlを調製し、これを攪
拌しながら、88.5%濃度の乳酸を滴下し、pH変化
を測定した。結果を図1に示した。乳酸菌の最適生育p
Hは5.5〜6.5の範囲であることが知られており、
このような範囲に維持するために最適の塩として図1の
結果から炭酸カルシウム、およびリン酸カルシウムを選
択した。
【0015】上記のMRSでの活力が低い原因にpHの
低下が上げられる。このため上記で選択した炭酸カルシ
ウムまたはリン酸カルシウムを1.5%の濃度になるよ
うにMRS培地に添加した培養液を調製し、この培養液
から同様にしてスターターを調製した。対照として10
%RSMを使用した。結果を表2に示した。
【0016】
【表2】 MRS培地への炭酸カルシウム、リン酸カルシウム添加の効果 ────────────────────────────────── 培地 塩 活力( 乳酸酸度) ────────────────────────────────── 10%RSM ── 0.56 MRS 1.5%(炭酸カルシウム) 0.56 MRS 1.5%( リン酸カルシウム) 0.58 ──────────────────────────────────
【0017】1.5%炭酸カルシウムまたはリン酸カル
シウムの添加でMRSの活力が、表1に示したものより
約20%向上した。これは添加した上記の塩が、培地の
pHを乳酸菌の最適pHに調整するためである。従ってスタ
ーター用培養基の成分に上記の難溶性塩を添加すること
が有用であることが判明した。
【0018】(5)窒素源、炭素源の検討 従来のスターター調製では、経験的に10%RSMが使
用されてきた。しかしこの濃度では前述したように種々
の問題が発生する。このため窒素源、炭素源として脱脂
粉乳またはホエー粉を使用し、また凝固の発生しない濃
度でかつ乳酸菌の生育に最適な濃度を検討した。その結
果脱脂粉乳、ホエー粉ともに3.5%濃度にすること
で、凝固も発生せずまた、乳酸菌の生育にも影響がない
ことが判明した。以上の結果から次の表3に示す組成を
スターター用培養基の基本組成として以下の実験に使用
した。
【0019】
【表3】スターター用培養基基本組成 ─────────────────────────
───── 脱脂粉乳またはホエー粉 3.5% 酵母エキス 0.5% リン酸二水素アンモニウム 1.5% クエン酸三ナトリウム 1.5% 炭酸カルシウムまたはリン酸 1.5% カルシウム ─────────────────────────
─────
【0020】上記組成の培養基と塩の組み合わせによる
スターター活力への効果を比較した。対照として10%
RSMを用いた。結果を表4に示した。
【0021】
【表4】 スターター用培養基の活力 ────────────────────────────────── C源,N源 塩 スターターpH 活力( 乳酸酸度) ────────────────────────────────── 10%RSM − 4.6 0.60 ホエー粉3.5% リン酸カルシウム 5.1 0.64 ホエー粉3.5% 炭酸カルシウム 6.1 0.64 脱脂粉乳3.5% リン酸カルシウム 5.1 0.68 脱脂粉乳3.5% 炭酸カルシウム 5.7 0.60 ───────────────────────────────────
【0022】上記のように窒素源、炭素源として3.5
%濃度の脱脂粉乳またはホエー粉を使用することで、従
来の10%RSMと同等以上の効果を得ることができ
た。炭酸カルシウムとホエー粉を使用した培養基をIP
CM−W、炭酸カルシウムと脱脂粉乳を使用した培養基
をIPCM−Sとして以下略記する。
【0023】(6)活力増強因子マグネシウムの添加試
験 上記の培養基の効果をさらに向上させるために、活力増
強因子の検討を行った。上記試験の検討の際に無機塩と
してマグネシウムの可溶性塩を使用したところ、乳酸菌
あたりの酸生産力が上昇する現象が観察された。このた
めマグネシウムの無機塩として硫酸マグネシウム、塩化
マグネシウムを選択しこれを上記培養液に添加してその
効果を確認した。いずれも培養基を調製し加熱滅菌前に
添加した後、滅菌処理し、乳酸菌を接種した。結果を表
5に示す。
【0024】
【表5】 活力増強因子としてのマグネシウム塩の効果 ─────────────────────────────────── 培養基 マグネシウム塩 培養後のpH 活力(乳酸酸度) ─────────────────────────────────── 10%RMS ─── 4.61 0.56 ICPM-S 5mM 硫酸マグネシウム 5.18 0.52 ICPM-S 50mM 硫酸マグネシウム 5.00 0.71 ICPM-S 5mM 塩化マグネシウム 5.40 0.56 ICPM-S 50mM 塩化マグネシウム 4.97 0.68 ICPM-S ──── 5.73 0.44 ────────────────────────────────── マグネシウム添加により顕著な活性増強効果が確認され
た。またこのマグネシウム塩の効果は培養基とともに加
熱殺菌するとさらに増強される傾向があることが確認さ
れた。
【0025】
【実施例 1】上記の試験例および食品としての使用を
考慮して、スターター用培養基として次の組成を1例と
して確定した。
【0026】
【表6】 ─────────────────────────
─── 脱脂粉乳またはホエー粉 3.5% 酵母エキス 0.5% リン酸二水素アンモニウム 1.5% クエン酸三ナトリウム 1.5% 炭酸カルシウム 1.5% 硫酸マグネシウム 50mM ─────────────────────────
────
【0027】各成分を水に溶解後100℃、30分間加
熱殺菌を行い、室温まで冷却してスターター用培養基と
した。
【0028】
【実施例2】実施例1で調製したスターター用培養基(I
PCM-S)を用いて乳酸菌単一株のスターターを調製した。
乳酸菌は前記の市販スターターからFast−Slow
deferential agarを用いて分離し、乳酸発酵速度の大
小によりFast株と Slow 株に分類した。これらの株を1
0%RSMで培養しておき、Fast株を5 株とSlow株2株
を用いた。これを上記の試験例のように移植して活力お
よび乳酸菌数を測定した。なお活力は10%RSMを培
養基とした場合の相対活力で表した。
【0029】
【表7】 ─────────────────────────────────── 菌株 10%RSM IPCM-S ────────────────────────────── 相対活力 生菌数 相対活力 生菌数 (%) (CFU/ml) (%) (CFU/ml) ─────────────────────────────────── Fast 1 100 5×108 140 1.0 ×109 2 100 6×108 131 9.0 ×108 3 100 3.8×108 148 9.2 ×108 4 100 5×108 120 9.0 ×108 5 100 4.2×108 129 1.0 ×109 Slow 1 100 7×107 147 2.8 ×108 2 100 7.2 ×107 143 3.2 ×108 ───────────────────────────────────
【0030】各菌株いずれについても本発明の培養基で
調製したスターター活力が高かった。また乳酸菌数は2
倍以上高い値を示し、本発明の培養基がスターター調製
に適していることが確認された。
【0031】
【実施例3】実施例1で調製したスターター用培養基
(IPCM−W)に市販の乳酸菌スターターを接種して
チーズ製造用のスターターを調製し、その活力を測定し
た。コントロールには10% 還元脱脂乳を培養基としたス
ターターを用いた。活力は所定量のスターターを10% 還
元脱脂乳に接種し、30℃、6 時間培養後の乳酸酸度を測
定した。表8 にはコントロールのスターターの活力を10
0 として相対値で示した。
【0032】
【表 8】 ─────────────────────────────────── 培養基 スターター添加量(%) 相対活力(%) ─────────────────────────────────── 10%RSM 1.0 100 IPCM−W 1.0 120 IPCM−W 0.5 91 IPCM−W 0.25 71 IPCM−W 0.01 59 ───────────────────────────────────
【0033】表8で明らかなように、本発明の培養基で
調製したスターターは強い活力を有しており、チーズの
生産にあたっては、従来のスターターの半量で同等の効
果が得られた。
【0034】
【実施例4】本発明実施例で調製した培養基と市販のス
ターター用培養基の効果を比較した。スターター用培養
基としては成分は不明であるがチーズ用スターターを製
造する目的でWIESBY社(LABORATORIU
M WIESBY GmbH& Co.KG,ドイツ)
から市販されている培養基がある。この培養基にはチー
ズ用または発酵乳用スターター調製培養基としてVIS
−START10,15の2種類がある。この市販培養
基を購入し、本発明のスターター用培養基と比較した。
実施例3と同様に、市販乳酸菌スターターを接種して、
スターターを調製した。これを1.0%、チーズ用の原
料乳に添加し、30℃で一晩保持し、乳酸酸度およびpH
の変化を経時的に測定した。pHの変化のみを図2に示
したが、本発明の培養基で調製したスターターは乳酸発
酵が良好に進み、明らかにpHの低下の点で優れてい
た。
【0035】
【実施例5】本発明実施例で調製した培養基を用いてカ
ードを調製し、チーズ製造に対する効果を確認した。 (1)バルクスターターの調製 市販のチーズ用スターターを、脱脂粉乳を10%濃度に
溶解して滅菌して調製したマザーカルチャー用培養基で
22℃、16時間培養して調製したマザーカルチャー
を、1重量%の比率で上記IPCM−Wに添加し、22
℃で16時間培養しバルクスターターを調製した(本発
明)。また対照として脱脂粉乳を10%濃度に溶解し、
滅菌して調製した従来のスターター用培養基にも同様
に、マザーカルチャーを、1重量%の比率で添加して同
様に発酵させてバルクスターターを調製した(対照)。
【0036】(2)カードメーキング 脂肪分を2.8%に調製した原料乳100kgを75
℃、15秒間殺菌して、これを30℃に冷却後、チーズ
バットに入れ、上記バルクスターターを1kg添加し
た。乳酸酸度を測定し、0.02%増加時点で、冷水に
溶解したレンネットを0.0038%添加した。カード
形成後、常法によって切断、撹拌を行った。レンネット
添加1時間後、ホエーの1/3量を排除し、以下の操作
は通常のゴーダチーズ製造方法と同一の操作を行い、ホ
エーの乳酸酸度が、さらに0.02%増加した時点でホ
エー排除を行い、カードを回収し、堆積と圧搾を行っ
た。25分間圧搾したカードを切断し、型詰め、圧搾整
形を行い、その後冷水に1晩浸漬し、グリーンチーズと
して熟成工程に移した。
【0037】(3)カード形成状態の変化 カード形成時の酸度変化を指標として、カード形成状態
の評価を行った。図3に示すように酸度の上昇は、本発
明は対照に比較して早期に上昇し、カードメーキングに
必要な時間が約1.5時間短縮された。また本発明と対
照方法によって得られたグリーンチーズ中の乳酸菌数に
は、差は認められなかった。
【発明の効果】本発明の実施により新規な乳酸菌スター
ター用培養基が提供される。本培養基により調製される
スターターは活力が高く、発酵の際に添加する量を少な
くでき、製造コストが低減される。また発酵時間も短縮
され、発酵乳の生産を効率良く安定に行うことができ
る。またスターターの生産コストも低減できる。さらに
本発明によるスターターを用いてチーズを製造した場
合、カードメーキングに要する時間を短縮させることが
でき、チーズの生産効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図 1】乳酸滴定による難溶性塩の懸濁液のpH変化
を示す。
【図 2】市販培養基と本発明培養基でスターターを製
造した時のpH測定結果を示す。
【図 3】本発明方法と、対照方法でチーズを製造した
時の乳酸酸度の変化を示す。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/20 A23C 9/123 A23C 13/16 A23C 19/032 JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】乳を窒素源および炭素源とする乳酸菌スタ
    ーター調製用培養基であって、乳酸発酵にともなうpH
    の低下を抑制するために炭酸カルシウムまたはリン酸カ
    ルシウムを含有するとともに、乳酸菌の増殖を促進させ
    るために可溶性マグネシウム塩を50mM以上添加した
    ことを特徴とする乳酸菌スターター調製用培養基。
  2. 【請求項2】乳が脱脂乳、ホエー、脱脂粉乳、ホエー粉
    からなる群から選択される1以上の物質である請求項1
    記載の乳酸菌スターター調製用培養基。
  3. 【請求項3】マグネシウム塩が硫酸マグネシウムまたは
    塩化マグネシウムである、請求項1記載の乳酸菌スター
    ター調製用培養基。
  4. 【請求項4】培養基中の乳由来の固形分含量が3.5%
    以上であり、炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウム含
    量が1.0 %以上、マグネシウム含量が50mM以上であ
    る、請求項1記載の乳酸菌スターター調製用培養基。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の培養基を
    用いて乳酸菌スターターを調製し、この乳酸菌スタータ
    ーを用いてチーズカードを調製することを特徴とするチ
    ーズの製造方法。
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