JP3295968B2 - 硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法 - Google Patents

硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法

Info

Publication number
JP3295968B2
JP3295968B2 JP17748792A JP17748792A JP3295968B2 JP 3295968 B2 JP3295968 B2 JP 3295968B2 JP 17748792 A JP17748792 A JP 17748792A JP 17748792 A JP17748792 A JP 17748792A JP 3295968 B2 JP3295968 B2 JP 3295968B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon
layer
gas
silicon
hydrogen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP17748792A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH05339731A (ja
Inventor
和幸 小栗
英男 太刀川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP17748792A priority Critical patent/JP3295968B2/ja
Publication of JPH05339731A publication Critical patent/JPH05339731A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3295968B2 publication Critical patent/JP3295968B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硬質低摩擦層を表面に
有する鉄系金属材料の製造方法に関し、さらに詳しく
は、材料の表面に潤滑性に優れた硬質非晶質炭素−水素
−珪素薄膜層を有する材料の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】従来から材料の表面処
理方法として、溶融塩浸漬法、化学蒸着法(CVD)、
物理蒸着法(PVD)などにより、炭化バナジウム(V
C)、炭化チタン(TiC)および窒化チタン(Ti
N)等の金属炭化物、金属窒化物等の硬質層を工具、金
型等の材料に被覆し、該材料表面層の耐摩耗性、耐焼付
性等を向上させる方法が実用化されている。しかしなが
ら、これらの被覆層は、Hv2000〜3000程度と
硬質であるものの、被覆層自体に潤滑性はなく摩擦係数
がそれほど低くない(鋼を相手材とし無潤滑で0.2〜0.
8程度)ため、相手材との摩擦において摺動抵抗が高
く、場合によっては、被覆層が摩耗し、また相手材を損
傷させる等の問題点を有していた。
【0003】また、潤滑性を有する薄膜として、炭化水
素系のガスのプラズマ分解等の方法により作製された非
晶質状の炭素膜が知られており、条件によっては0.0
1という非常に低い摩擦係数を示すことから、摺動部材
への適用が検討されはじめている。しかしながら、これ
らの非晶質炭素膜は構造的に不安定であり、摺動雰囲気
により容易に摩擦摩耗特性が変化し、大気中では0.2
程度まで摩擦係数が上昇してしまい、また膜の硬度もH
v1000〜2000程度とそれほど高くはない(Thin
Solid Films, Vol.143, (1986), P.31 )ため、耐摩耗
特性が必要とされる用途の硬質層としては適用できない
という問題があった。
【0004】このように、Hv2000〜3000程度
の高い硬さと、0.05程度の低い摩擦係数を併せ有す
る薄膜を材料の表面に被覆する方法は、これまでにな
く、かかる方法の開発が望まれていた。本発明者等は、
熱的非平衡状態を容易に実現することができるプラズマ
CVDに着目し、該方法を用いて、前記条件を充足する
ものとして、潤滑性に優れた硬質非晶質炭素−水素−珪
素薄膜を見いだした(特開平3−240957)。該薄
膜は、Hv2000程度の高い硬さと、鋼等を相手材と
して、大気中で、しかも、無潤滑で0.05以下という
極めて低い摩擦係数を有するが、処理温度が500℃程
度の高い温度を必要とする点に問題があった。すなわ
ち、500℃程度の処理温度では、高速度鋼やダイス鋼
等の高合金鋼には適用できるものの、軸受鋼等の構造用
合金鋼に対しては、処理により焼き戻し軟化が生じて硬
さが低下し、適用が難かしかった。
【0005】また、アルミニウム合金等の軽合金は、融
点が600〜700℃程度のものが多く、約500℃で
加熱すると軟化してしまうため適用が困難であった。さ
らに、実用上重要な膜の密着性にも問題があり、実際の
部品へ適用する条件によっては、中間層を形成するため
の前処理を行わなければ必ずしも十分ではなかった。
【0006】
【発明が解決しょうとする課題】本第1発明(請求項1
記載の発明)の目的は、高硬度でかつ極めて低い摩擦係
数を有し、しかも基材との密着性に優れた硬質非晶質炭
素−水素−珪素薄膜を表面に有する材料を製造する方法
を提供することにある。
【0007】また、本発明の他の目的は、高硬度でかつ
極めて低い摩擦係数を有し、しかも基材との密着性に優
れた硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜を容易に被覆する
ことができる方法を提供することにある。
【0008】本発明者等は、上記の如き従来技術の問題
点を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験を重ねた
結果、本発明を成すに至ったものである。従来、500
℃より低い温度、特に100〜400℃という極めて低
い温度で、プラズマCVDにより、前記硬質非晶質炭素
−水素−珪素薄膜を材料の表面に被覆することは不可能
と考えられており、事実、これまで実現していなかっ
た。本発明者等は、処理温度が極めて低くなった場合
は、塩素が少量でも膜の中に含有されると硬さが著しく
低下するとともに摩擦係数が上昇し、目的とする薄膜を
被覆できなくなるのではないかと考え、塩素を含んでい
ない珪素と水素および/または珪素、水素と炭素を主要
構成元素とする珪素化合物ガスを用いるプラズマCVD
に着目し、400℃以下という低温において、材料の表
面に初めて密着性良く、前記硬質非晶質炭素−水素−珪
素薄膜の被覆を実現した。
【0009】
【課題を解決するための手段】(第1発明の説明) (第1発明の構成)本第1発明(請求項1に記載の発
明)の硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法は、
被処理材表面を、プラズマCVDにより、珪素と水素と
炭素とからなる珪素化合物と該珪素化合物1に対して5
〜500の炭化水素化合物、50〜500の水素および
30〜300のアルゴンを主体とした薄膜被覆用ガス雰
囲気中、100〜400℃で放電処理することにより
被処理材の表面に無潤滑で0.05以下の低摩擦係数を
有し、水素を30〜50at%含有する硬質非晶質炭素
−水素−珪素薄膜表面層を被覆することを特徴とする。
【0010】本第1発明のプラズマCVDによる硬質低
摩擦層を表面に有する材料の製造方法は、先ず、真空容
器内のテーブル上に被処理材を配設し、該真空容器内に
残存する気体を除去する。例えば、1×10-4Torr以下
まで排気する。前記被処理材である材料は、鉄または鉄
合金材料、アルミニウム等の非鉄金属材料、SiC等の
セラミックス等特に限定はなく、鉄または鉄合金材料で
あれば、炭素を含むもの、例えば炭素鋼、合金鋼、鋳
鉄、焼結合金等でもよく、また純鉄のような炭素を極く
わずかしか含まないものでもよい。
【0011】次に、連続排気しながら水素(H2)ガス等
の昇温用ガスを導入し、直流放電または高周波放電等に
より放電を開始し、プラズマエネルギーにより被処理材
を100〜400℃の範囲の温度に加熱する。次に、放
電を継続したまま真空容器内を珪素と水素および/また
は珪素、水素と炭素を主要構成元素とする珪素化合物ガ
スと炭素化合物ガスを主体とした薄膜被覆用ガス雰囲気
とし、被処理材表面に炭素−水素−珪素薄膜を成長させ
る。ここで用いる薄膜被覆用ガスは、雰囲気ガスと膜化
原料ガスとしての反応ガスとからなる。雰囲気ガスは、
水素(H2)、アルゴン(Ar)等のCVDやPVDで薄
膜被覆用として一般的に用いられるガスを用いることが
できる。反応ガスは、珪素化合物ガスと炭素化合物ガス
とからなる。珪素化合物ガスとしては、テトラメチルシ
リコン(Si(CH3)4 )シラン(SiH4 )等を用い
る。また、炭素化合物ガスとしては、メタン(CH4)、
その他の炭化水素ガス(CmHn )等を用いる。なお、
この薄膜被覆用ガスは、原料ガス、処理温度等により適
宜決定され、また、全体の流量は真空容器の容積と排気
量とのバランスで決定される。
【0012】また、真空容器の圧力は、10-2〜10T
orrであることが好ましい。特に、放電が直流放電に
よる場合には、10-1〜10Torrが、高周波放電に
よる場合には、10-2〜10Torrがそれぞれ好まし
い。これは、この圧力範囲外では放電が不安定となるか
らである。
【0013】このようにして材料の表面に被覆された硬
質非晶質炭素−水素−珪素薄膜は、炭素と水素を主成分
とする非晶質薄膜であって、該非晶質薄膜中の水素含有
量が30〜50at%であり、残りの組成が原子比で7
0at%以上の炭素と、残部の主成分が珪素物質とから
なり、かつ前記主成分である非晶質炭素が硬質な擬似ダ
イヤモンドを形成し、また、珪素と炭素が硬質な炭化珪
素を形成しているためHv2000程度の高硬度の層と
なっているものと思われる。また、大気中の水分によ
り、含有されている珪素が酸化し、大気中の水分を吸収
してシリカコロイド(ゾル)状の物質を形成し、流体潤
滑的な作用をおよぼすために、擬似ダイヤモンドとの相
乗効果で、極めて低い摩擦係数を示すものと思われる。
【0014】また、前記したように、本具体例において
被覆された硬質低摩擦層は基材である材料との密着性に
優れているが、過酷な条件で使用する場合のように強固
な密着力が要求される場合には、前記硬質低摩擦層と基
材との間に金属炭素化合物層からなる中間層を形成する
とよい。
【0015】(第1発明の作用および効果)本第1発明
の表面に硬質低摩擦層を有する材料の製造方法により、
100〜400℃という低温においてHv2000程度
の高い硬さと、0.05以下の低い摩擦係数を併せ有
し、しかも基材との密着性に優れた硬質低摩擦層を容易
に被覆することができる。
【0016】本第1発明の材料の製造方法が上記の如き
効果を発揮するメカニズムについては、未だ必ずしも明
らかではないが、次のように考えられる。
【0017】この方法で用いているプラズマCVDは、
熱的非平衡状態を容易に実現でき、反応ガスである珪素
化合物ガスと炭素化合物ガスから炭素と珪素を同時に析
出させることができるため、炭素原子の結合状態を安定
なグラファイト状態ではなく擬似ダイヤモンドにするこ
とができる。これは、珪素原子が4配位の結合状態のみ
を採るので、炭素原子の結合状態も4配位(ダイヤモン
ド結合)になることが促進されるためと考えられる。こ
れより、被処理材の表面に、硬質かつ極めて低い摩擦係
数を示す被覆層を、容易に被覆することができるものと
思われる。しかし、従来の方法では、薄膜被覆用がスと
して、通常SiCl4 等の塩素を含む珪素化合物ガスを
用いるため、処理温度が500℃程度の場合は、前記硬
質低摩擦層の被覆に問題はないが、100〜400℃で
放電させて薄膜を被覆しようとすると、温度が低いため
膜中に取り込まれた塩素が簡単に放出されず、膜中に残
留してしまい、薄膜の硬さが低下する点ならびに摩擦係
数が上昇してしまう点に問題があった。かかる膜中への
塩素の混入により硬さの低下等が生ずる理由は、必ずし
も明らかではないが、膜中に混入したイオン結合性の
強い塩素により、膜の構成元素の結合形態が、硬度の高
い共有結合から硬度の低いイオン結合的な結合にある程
度変化するため膜の硬度が低下するものと考えられ、
また、塩素の混入により、摩擦係数が上昇するのは、摺
動により生成し、ダイヤモンドライクカーボンとの相乗
効果により低摩擦を発現すると考えられるシリカコロイ
ド(ゾル)が、塩素を含む酸性雰囲気のためにゲル化
し、シリカコロイドによる流体潤滑的作用が不十分にな
るためと考えられる。本発明では、塩素を含まない珪素
化合物ガスを用いたため、塩素が膜中に含まれないの
で、前記問題を解決できる。
【0018】本発明において、処理温度が100℃より
低いと、放電が不安定となり、その結果、良好な低摩擦
層が得られない。逆に400℃より高くなると、膜の密
着性が低下するので好ましくない。また、前記被覆層
を、材料に密着性良く被覆することができる理由は以下
のように考えられる。すなわち、本発明の硬質低摩擦膜
は、金属材料等からなる基材に比べ熱膨張率が小さいた
めに、膜には通常大きな圧縮応力が発生し、膜が基材か
ら剥離し易い状態になっている。本発明では、400℃
以下の低温で被覆するため、膜と基材の熱膨張率の違い
から発生する応力を小さくすることができ、500℃程
度の高温で被覆する場合に比べ密着性が良好であると考
えられる。
【0019】次に、薄膜被覆用ガスの組成が、珪素と水
素と炭素とからなる珪素化合物と該珪素化合物1に対し
て5〜500の炭化水素化合物、50〜500の水素お
よび30〜300のアルゴンであることを特徴とする。
【0020】発明の表面に硬質低摩擦層を有する
材料の製造方法によれば、珪素化合物ガスに対する炭素
化合物ガスの量が、従来の500℃程度で被覆する場合
は、珪素化合物ガス1に対して、炭素化合物ガスの量が
5〜50に制限されていたが、本第発明の方法によれ
ば、珪素化合物ガス1に対して、炭素化合物ガスの量は
5〜500という広い範囲で材料の表面に潤滑性に優れ
た硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜層を被覆することが
できる。このように、炭素化合物ガスの量に対し、珪素
化合物ガスの量を少なくしても前記薄膜を被覆できる理
由は以下のようであると推定される。すなわち、従来の
500℃程度の被覆では、熱平衡状態で安定なグラファ
イトライクカーボンの生成を抑制するために、Siを膜
中に少なくても10at%(Hを除く組成)含有させ、
カーボンのダイヤモンドライク化を促進させる必要があ
った。本方法では、400℃以下という低温で被覆する
ためグラファイト化が起り難くダイヤモンドライク結合
がより安定になるために、膜中のSi含有量を少なくす
ることができる。具体的には、200℃の被覆では、S
iの含有量が2〜3at%でも、カーボンはダイヤモン
ドライク結合をすることを確認している。したがって、
従来は、例えばSiCl4ガス1に対してCH4ガスを5
〜50の割合で導入していたが、200℃程度の被覆で
は、500程度まで、炭化水素ガスの割合を増加させる
ことができる。
【0021】一方、珪素化合物ガスの流量は500℃の
場合の1/4〜2/3以下に制御する必要がある。これ
は、低温すなわち低放電出力においては、珪素化合物ガ
スの流量が多いと放電が不安定となり、緻密な硬質低摩
擦層が形成されなくなってしまうためである。例えば、
200℃の被覆における放電出力は、500℃の場合の
約1/4であり、出力に対応させ珪素化合物ガスの流量
も1/4程度に制御する必要がある。
【0022】このように、本第2発明の方法によれば、
薄膜被覆用ガスの組成を前記のごとく限定することによ
り、高硬度で、かつ極めて低い摩擦係数を示す膜の組成
をC量70〜98at%という広範囲に拡大でき、しか
も、100〜400℃の低温で該膜を被覆することがで
きる。
【0023】(第発明の説明) (第発明の構成)本第発明の硬質低摩擦層を表面に
有する材料の製造方法は、前記第1発明の材料の製造方
法において珪素、水素と炭素とからなる珪素化合物ガ
スが、テトラメチルシリコンであることを特徴とする。
【0024】(第発明の作用および効果)テトラメチ
ルシリコン(Si(CH34)は、他の塩素を含まない
珪素化合物ガスであるシラン(SiH4)等に比べ、取
扱いが容易で、装置を簡略化できる等の大きな利点を有
する。シランは、アモルファスSi太陽電池製作や半導
体用の アモルファスSi−N保護膜作製などに非常に
よく用いられているが、特殊材料ガスに指定されてお
り、爆発性、毒性があり、取扱いに注意が必要である。
それに対して、テトラメチルシリコンは若干の可燃性、
毒性はあるものの、特殊材料ガスには指定されておら
ず、シランよりもはるかに取扱いが容易であり、しか
も、SiCl4のような腐食性もなく装置や排気系が腐
食される心配がない。
【0025】
【実施例】
(実施例1)被処理材として高速度鋼材を用い、プラズ
マCVDによって該被処理材表面に非晶質炭素−水素−
珪素薄膜を被覆し、該薄膜の性能評価試験を行った。な
お、この処理において用いたプラズマCVD装置を、図
1に示す。
【0026】先ず、ステンレス製のプラズマ反応室1の
中央に設けた基台2の上に、被処理材3として外径20
mm×厚さ10mmの高速度鋼(JIS SKH 51:試料番号1)
を、基台2の中心から60mmの間隔を置いて5つ配置し
た。なお、基台2の支持柱4の内部には冷却水を送る冷
却水管(図示せず)が取りつけられている。
【0027】次に、プラズマ反応室1を密閉したのち、
ガス導出管5に接続された真空ポンプのロータリーポン
プ(図示せず)および拡散ポンプ(図示せず)により残
留ガスが1×10-4トールになるまで減圧した。なお、
ガス導入管6は、コントロールバルブを介して各種ガス
ボンベ(共に図示せず)に連結している。
【0028】次に、1×10-4トールまで減圧した反応
室内に昇温用ガスとして水素ガスを導入し、同時に真空
引きしながら反応室1の圧力を1トールに保つように調
整した。そして、反応室1の内側に設けたステンレス製
陽極板7と陰極(基台)2の間に数百ボルトの直流電圧
を印加して放電を開始し、被処理材表面が300℃にな
るまでイオン衝撃による昇温を行った。ここで、直流電
源回路は、陽極7と陰極2により構成し、内部の被処理
材の温度を測定する二色温度計(図示せず)からの入力
により電源制御され、被処理材の温度を一定に保つ働き
をする。
【0029】次に、反応室1内に、テトラメチルシリコ
ン(Si(CH3)4 )ガスと、メタン(CH4)ガス、水
素(H2)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスを、それぞれ
流量2、50、1000、および700cc/minで導入し
て全圧力4トールの薄膜被覆用雰囲気とし、被処理材の
温度を300℃に保ちながら1時間の直流放電を持続さ
せることにより被覆処理を行った。
【0030】被覆処理の後、放電を止め、被処理材を減
圧下(〜10-3トール)で冷却し、被処理材を反応室1
より取り出したところ、該被処理材の表面には黒色の層
が被覆されていた。
【0031】この被処理材表面の黒色層について、X線
回折法による物質同定試験を行った結果、被処理材から
の回折線の他に回折線が認められず、アモルファス状態
であることが分かった。また、EPMA分析により、水
素を除く組成で炭素含有量が85at%と測定され、残
部が珪素を主成分としその他酸素等を微量含むことがわ
かった。さらに、レーザーラマン分光分析を行った。そ
の結果を、図2に示す。同図中、「1」が本実施例の結
果を示す。図2に示すように、レーザーラマン分光によ
り、1400cm-1付近を中心としたサブバンドを持つ1
550cm-1付近を中心とした幅広のラマンバンドを示す
擬似ダイヤモンド(ダイヤモンドライクカーボン)が得
られており、被覆層中のCはダイヤモンドライク成分が
主体であることが分った。
【0032】また、被処理材の被覆層の層厚さ、表面硬
度の測定試験、および摩擦摩耗試験を行った。なお、層
厚さの測定は断面光学顕微鏡観察法で行い、表面硬度測
定はマイクロビッカース硬度計を用い、層表面から荷重
10gfで測定した。摩擦摩耗試験はボールオンディス
ク試験法を用い、φ6mmのJIS SUJ 2 焼入焼戻材ボール
(Hv約800)を相手材とし、荷重640gf:摺動
速度0.2m/sで50分間行った。その結果を、表1に
示す。
【0033】
【表1】
【0034】また、比較のために、Si(CH3)4 ガス
の代わりにSiCl4 ガスを用いた以外は、前記実施例
1と同様の条件および方法によりプラズマCVDを行っ
た。その結果、被処理材の表面には、やはり黒色の層が
被覆されていた。この黒色の層について、X線回折法に
よる物質同定試験、EPMA試験、X線光電子分光、お
よびレーザーラマン分光を行った結果、水素を除く組成
で炭素含有量70at%で塩素を9at%含み、残部の
主成分が珪素からなる非晶質層であり、また被覆層中の
炭素はダイヤモンドライクカーボンが主成分であること
が分かった。また、この被覆層の層厚さ、表面硬度、お
よび摩擦摩耗試験を上記と同様に行った。その結果を、
表1に併せて示す。
【0035】表1より明らかのごとく、本実施例1の場
合、Hv2300という通常の炭化物、窒化物と同等の
硬度を有しながら、0.04という非常に低い摩擦係数
を示していることが分る。
【0036】これに対し、比較例1(試料番号C1)で
は、SiCl4 を用いて、300℃で被覆を行ったため
に、被覆層中に取り込まれる塩素の量が増加し、層の硬
度が低下するとともに、摩擦係数が上昇し、摩耗深さが
増加している。
【0037】(実施例2)薄膜被覆用雰囲気中のSi
(CH3)4 ガスおよびCH4 ガスの流量を、それぞれ1
cc/min、80cc/minとし、処理温度を200℃とした以
外は、実施例1と同様の方法で被覆処理を行ったとこ
ろ、被処理材の表面に黒色の層が被覆されていた(試料
番号2)。この被処理材表面の黒色層について、実施例
1と同様にX線回折法による物質同定試験を行った結
果、被処理材からの回折線の他に回折線が認められず、
アモルファス状態であることが分かった。また、EPM
A分析により、水素を除く組成で炭素含有量が約90a
t%と測定され、残部が珪素を主成分としその他酸素等
を微量含むことが分かった。さらに、レーザーラマン分
光により、被覆層中の炭素はダイヤモンドライクカーボ
ンが主成分であることが分った。その結果を、図2に併
せて示す。同図中、「2」が本実施例の結果を示す。ま
た、この被処理材の被覆層の層厚さ、および表面硬度の
測定試験、および摩擦摩耗試験を実施例1と同様に行っ
た。その結果を、表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】次に、該被覆層の密着性をスクラッチ試験
によって調べた。比較例の試料(比較例C2)は、処理
温度を550℃とした以外は実施例2と同様の条件で作
製した。比較例の試料で被覆された層の組成、硬度、等
の特性は実施例2の試料とほぼ同様であった。スクラッ
チ試験は、ロックウェル硬度測定用のダイヤモンド圧子
を用い、被覆層表面を引っ掻きながら連続的に荷重を変
化させる方法によっておこなった。層の密着性の評価は
剥離の発生する荷重(AE信号の増加する荷重)で比較
した。結果を表3に示すように200℃で処理したもの
は、550℃で処理したものの約2.5倍の値を示し
た。
【0040】
【表3】
【0041】(実施例3)被処理材として軸受鋼材を用
い、プラズマCVDによって該被処理材表面に非晶質炭
素−水素−珪素薄膜を被覆し、該層の性能評価試験を行
った。
【0042】先ず、被処理材として軸受鋼(JIS SUJ
2、試料番号3)を用い、珪素化合物ガスとしてSi
(CH3)4 、炭素化合物ガスとしてアセチレン(C2
2 )を用い、それぞれ流量を0.5cc/minおよび100
cc/min、被覆処理の温度を150℃、処理時間を0.5時
間とした以外は、前記実施例2と同様の条件および方法
により、処理を行った。その結果、被処理材の表面には
黒色の層が被覆されていた。
【0043】この被処理材表面の黒色層について、X線
回折法による物質同定試験を行った結果、被処理材から
の回折線の他に回折線が認められず、アモルファス状態
であることが分かった。また、EPMA分析により、水
素を除く組成で炭素含有量が96at%であり、残部が
珪素を主成分としその他酸素等を微量含むことがわかっ
た。さらに、レーザーラマン分光により、被覆層中の炭
素はダイヤモンドライク成分を含んでいることが分っ
た。その結果を、図2に併せて示す。同図中、「3」が
本実施例の結果を示す。また、この被処理材の被覆層の
層厚さ、および表面硬度の測定試験、および摩擦摩耗試
験を実施例1と同様に行った。その結果を、表2に併せ
て示す。
【0044】また、比較のために、イオンプレーティン
グ法によるダイヤモンドライク炭素被覆(比較例3:試
料番号C3)、プラズマCVDによる窒化チタン被覆
(比較例4:試料番号C4)、および未処理材(比較例
5:試料番号C5)についても、比較試験として上記と
同様に被覆層の層厚さ、表面硬度および摩擦摩耗試験を
行った。その結果を、表2に併せて示す。
【0045】表2より明らかのごとく、本実施例2およ
び実施例3の場合、Hv2000〜2300という通常
の炭化物、窒化物と同等程度の硬度を有しながら、0.
04〜0.05という非常に低い摩擦係数を示し、摩耗
深さも浅いことが分る。
【0046】また、比較例3(試料番号C3)のダイヤ
モンドライク炭素被覆では、Hv5000という高硬度
を示すものの、摩擦係数は0.15と高く、更に相手材の
摩耗量が実施例2および3に比べ一桁大きかった。ま
た、比較例4(試料番号C4)の窒化チタン被覆の場合
は、比較例5(試料番号C5)の未処理材に比較すれば
摩擦係数は小さいが、本実施例2および3に比較すれば
摩擦係数で約13倍、摩耗深さで約7倍と非常に大きな
値であった。
【0047】このように、本実施例2および実施例3に
より得られた被覆層は、現在用いられている被覆層に比
べ、非常に良好な耐摩耗性を示すことが分る。
【0048】(実施例4)被処理材としてアルミニウム
合金(JIS2017、JIS5052、JIS707
5)およびチタン合金を用い、該合金表面に、実施例3
と同様の方法および条件でプラズマCVDを施し、被覆
された層の性能評価試験を行った。 被処理材の表面に
形成された黒色層の組成や構造、および該層の摩擦摩耗
特性は実施例3とほぼであり、本発明の方法は、処理条
件が同─であれば、被処理材の種類によらず同─の硬質
低摩擦層が被覆できることがわかった。また、150℃
という低温で被覆を行ったので、予めT6処理を施した
アルミニウム合金被処理材の硬度等の機械的性質の低下
も認められなかった。
【0049】また、比較のために、Si(CH3)4 の代
わりに、SiCl4 を用いた以外は、前記比較例1と同
様の方法および条件でアルミニウム合金およびチタン合
金にプラズマCVDを行った。その結果、チタン合金に
は比較例1の高速度鋼の場合と同様に、硬度がH170
0であるが、摩擦係数が0.15と大きな値を示すほぼ
同様の黒色層が被覆されていた。しかし、アルミニウム
合金に被覆された層は炉内から大気中に取り出した際に
基材から剥離し、変質した。該変質層を科学分析した結
果、マグネシウム(Mg)の塩化物が認められた。すな
わち、SiCl4 がアルミニウム合金中のMgと反応し
てMgの塩化物を生成して層中に取り込まれ、大気中の
水分と反応して変質したものと推定される。このよう
に、Mgを含有するアルミニウム合金に対しては、特
に、塩素を含んでいない珪素化合物ガス、例えばSi
(CH3)4 等を用いる必要があることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1〜実施例3で用いられたプラ
ズマCVD装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例1および比較例1で得られた薄
膜のレーザーラマン分光結果を示す線図である。
【符号の説明】
1 プラズマ反応室 2 基台 3 被処理材 4 支持柱 5 ガス導出管 6 ガス導入管 7 陽極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/00 - 16/56 C30B 29/04 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被処理材表面を、プラズマCVDによ
    り、珪素と水素と炭素とからなる珪素化合物と該珪素化
    合物1に対して5〜500の炭化水素化合物、50〜5
    00の水素および30〜300のアルゴンを主体とした
    薄膜被覆用ガス雰囲気中、100〜400℃で放電処理
    することにより被処理材の表面に無潤滑で0.05以
    下の低摩擦係数を有し、水素を30〜50at%含有す
    硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜表面層を被覆するこ
    とを特徴とする硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記珪素化合物はテトラメチルシリコン
    であることを特徴とする請求項1に記載の硬質低摩擦層
    を表面に有する材料の製造方法。
JP17748792A 1992-06-10 1992-06-10 硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法 Expired - Lifetime JP3295968B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP17748792A JP3295968B2 (ja) 1992-06-10 1992-06-10 硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP17748792A JP3295968B2 (ja) 1992-06-10 1992-06-10 硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05339731A JPH05339731A (ja) 1993-12-21
JP3295968B2 true JP3295968B2 (ja) 2002-06-24

Family

ID=16031766

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP17748792A Expired - Lifetime JP3295968B2 (ja) 1992-06-10 1992-06-10 硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3295968B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000079020A1 (fr) * 1999-06-18 2000-12-28 Nissin Electric Co., Ltd. Film de carbone, procede de formation associe, article recouvert de ce film, et procede de preparation de cet article
FR2825764B1 (fr) * 2001-06-07 2003-09-19 Hispano Suiza Sa Palier lisse muni d'un revetement de frottement et procede de realisation
GB2439157B (en) * 2004-03-05 2008-09-17 Waters Investments Ltd Valve With Low Friction Coating
KR100723410B1 (ko) 2005-08-17 2007-05-30 삼성전자주식회사 자기정렬된 메탈쉴드를 구비한 저항성 탐침의 제조방법
JP5873754B2 (ja) * 2012-05-08 2016-03-01 本田技研工業株式会社 ダイヤモンド状炭素膜被覆部材およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH05339731A (ja) 1993-12-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5198285A (en) Hard and lubricant thin film of iron base metallic material coated with amorphous carbon-hydrogen-silicon
US7833626B2 (en) Amorphous carbon film, process for forming the same, and high wear-resistant sliding member with amorphous carbon film provided
US8911867B2 (en) Protective coating, a coated member having a protective coating as well as method for producing a protective coating
Oguri et al. Low friction coatings of diamond-like carbon with silicon prepared by plasma-assisted chemical vapor deposition
WO2010021285A1 (ja) 窒素含有非晶質炭素系皮膜、非晶質炭素系積層皮膜および摺動部材
KR100404006B1 (ko) 비정질 경질 탄소막, 기계부품, 및 비정질 경질 탄소막의제조방법
US4855188A (en) Highly erosive and abrasive wear resistant composite coating system
Höck et al. Wear resistance of prenitrided hardcoated steels for tools and machine components
JP2971928B2 (ja) 潤滑性を有する硬質非晶質炭素―水素―珪素薄膜、表面に該薄膜を有する鉄系金属材料、およびその製造方法
Murakawa et al. Chemical vapour deposition of a diamond coating onto a tungsten carbide tool using ethanol
US5925422A (en) Method of depositing a diamond layer on a titanium substrate
JP3295968B2 (ja) 硬質低摩擦層を表面に有する材料の製造方法
US5024901A (en) Method for depositing highly erosive and abrasive wear resistant composite coating system on a substrate
JP5126867B2 (ja) 炭素膜の製造方法
US5254369A (en) Method of forming a silicon diffusion and/or overlay coating on the surface of a metallic substrate by chemical vapor deposition
US5262202A (en) Heat treated chemically vapor deposited products and treatment method
JP2001505956A (ja) 低摩擦コーティング
US4873152A (en) Heat treated chemically vapor deposited products
US6001480A (en) Amorphous hard carbon film and mechanical parts coated therewith
JP4612147B2 (ja) 非晶質硬質炭素膜及びその製造方法
JP2889116B2 (ja) 非晶質硬質炭素膜及びその製造方法
EP0509907B1 (en) Method of forming a silicon diffusion and/or overlay coating on the surface of a metallic substrate by chemical vapor deposition
US6602829B1 (en) Method for applying a lubricating layer on an object and object with an adhesive lubricating layer
Sanchette et al. Single cycle plasma nitriding and hard coating deposition in a cathodic arc evaporation device
JP2539922B2 (ja) ダイヤモンド被覆超硬合金

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080412

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090412

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090412

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100412

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110412

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110412

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120412

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120412

Year of fee payment: 10

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313532

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130412

Year of fee payment: 11

EXPY Cancellation because of completion of term
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130412

Year of fee payment: 11