JP3289398B2 - 誘電体板の比誘電率測定方法および測定器具 - Google Patents

誘電体板の比誘電率測定方法および測定器具

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ波回路に用い
られる誘電体板の比誘電率の測定方法およびその方法で
用いる測定器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の誘電体板の比誘電率の測定方法お
よびその方法で用いる測定器具は、特開昭61−182
582号公報に開示されているものが知られている。測
定器具5は、図2に示すように、一方が開口し他方が閉
塞して内部に円柱状空間を有する金属製のケース1aの
内側底部に、ケース1aと同心状の保持台2aを固定
し、保持台2aの上に誘電体共振器3aを固定した保持
具4aと、ケース1aと同一構成のケース1bの内側底
部にケース1bと同心状の保持台2bを固定し、保持台
2bの上に誘電体共振器3bを固定した保持具4bを、
一定のギャップを形成するとともに、誘電体共振器3
a、3bの軸方向を揃えて対向するように配置して構成
している。
【0003】誘電体共振器3a、3bは、例えばいずれ
も円柱形状でTE01δ モード共振を利用している。ま
た、ケース1bには、図示のような結合棒や、あるいは
結合ループを用いた入出力結合手段6が設けられ、共振
周波数測定器7に接続している。
【0004】そして、測定試料である誘電体板8はケー
ス1a、1b間のギャップに配置し、測定器具5の外部
に設置された保持台9で保持され、誘電体共振器3a、
3bの中間に位置する。誘電体共振器3a、3bの中間
位置は、図3に示す誘電体共振器3a、3bのTE
01δ モードにおける軸方向の電界強度の停留点Pにあ
たり、この停留点Pでは電界強度が軸方向で変化しにく
いため、誘電体板の挿入位置のバラツキによる測定誤差
が少ない。
【0005】このような構成の共振系に、誘電体板8を
挿入すると、共振周波数はわずかに変化するが、それは
次式であらわされる。
【0006】
【数1】
【0007】ここで、ωは誘電体板8の挿入前の共振系
の共振角周波数、δωは誘電体板8を挿入したことによ
る共振系の共振角周波数の変化量、ε0 は真空の誘電
率、ε2は誘電体板8の比誘電率εr と真空の誘電率ε
0 の積、
【0008】
【外1】
【0009】は誘電体板8の挿入前の電場ベクトル、
【0010】
【外2】
【0011】は誘電体板8の挿入後の電場ベクトル、V
は誘電体板8の体積をそれぞれあらわす。いま、誘
電体板8の挿入前後で電界分布が変化しないとすれば、
共振系全体に蓄えられるエネルギーと誘電体板8内に蓄
えられるエネルギー比に(εr −1)をかけたものが周
波数摂動比になることから、共振周波数の変化を測定す
ることにより誘電体板8の比誘電率が求められる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】近年のマイクロ波回路
の小形化にともない、それに使用される誘電体板には高
誘電率化と小形化が要求され、そのために、誘電体板の
比誘電率の測定に高精度化が要求されている。ところ
が、上記従来例の誘電体板の比誘電率の測定方法および
この方法で用いる測定器具においては、高誘電率の誘電
体板を高周波帯で測定しようとすると、周波数摂動量が
大きくなり正確な比誘電率を求めることができなくなる
ため、誘電体板の厚みを薄くすることで周波数摂動量を
抑えていたが、薄板の加工を必要とすることやそれにと
もなう強度の低下等の問題があった。また、誘電体板を
低周波帯で測定しようとすると、測定器具5のケース1
a、1bの開口D0 を大きくしなければならないため、
小形の誘電体板では保持台9で保持できなくなり、測定
が不可能であった。
【0013】本発明は、高誘電率の誘電体板および小形
の誘電体板の比誘電率の測定を、高精度に行う誘電体板
の比誘電率測定方法および測定器具を提供するものであ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明においては、二つの誘電体共振器を軸方向を
揃えて対向し、該二つの誘電体共振器のTE01δモード
共振を使用して得られた電界強度分布の停留点に試料板
を挿入して、該試料板の挿入前後の共振周波数の変化を
測定することにより比誘電率を求める誘電体板の比誘電
率測定方法において、前記TE 01 δモード共振の結合部
分に中央が開口した誘電体板保持部を設け、前記TE01
δモード共振の結合部分の結合状態を前記誘電体板保持
部の開口で調整して共振周波数の変化を測定し比誘電率
を求めることを特徴とするものである。
【0015】また、二つの誘電体共振器の軸方向を揃え
て対向した状態でケース内に固定したTE01δ モード
共振系と、該TE01δ モード共振を使用して得られた
電界強度分布の停留点に誘電体板を位置させる手段と、
誘電体板の有無による共振周波数変化を知る手段とを有
する誘電体板の比誘電率測定器具において、前記TE
01δモード共振の結合部分に結合度設定用開口部を有す
る誘電体板保持部を設けたことを特徴とするものであ
る。
【0016】
【作用】上記の構成によれば、保持部の開口寸法を変化
して、誘電体共振器のTE01δモード共振の結合部分の
結合状態を調節することにより、誘電体共振器の共振周
波数の摂動量を変化させることができる。また、保持部
がケースの内側に位置するため、低周波帯で測定器具が
大きくなっても、保持部の開口寸法を絞ることにより小
形の誘電体板を保持することができる。さらに、保持部
の開口寸法を絞ることにより、誘電体板の部分的な比誘
電率の測定が可能となる。
【0017】
【実施例】以下、本発明による誘電体板の比誘電率の測
定方法およびその方法で用いる測定器具の実施例を図1
を用いて説明する。同図において、基本構成は従来例と
同様であるため、従来例と同一もしくは相当する部分に
は同一符号を付してその説明を省略する。
【0018】図1に示すように、金属製のケース1a、
1bの開口端に、中央が開口した金属製の保持板19
a、19bを取り付けた保持具14a、14bを、一定
のギャップを形成するとともに、誘電体共振器3a、3
bの軸方向を揃えて対向するように配置しTE01δ
ードで共振させた測定器具15を構成している。そし
て、保持板19aに測定試料である誘電体板18を取り
付け、必要とする周波数摂動量になるように、保持板1
9a、19bの開口dを変化し、共振周波数を測定し比
誘電率を求める。
【0019】保持板19a、19bは、開口dを変化す
ることにより、誘電体共振器3a、3bのTE01δ
ード共振の結合部分の結合状態を調節できるため、誘電
体共振器3a、3bの共振周波数の摂動量を最適値に設
定することができる。また、保持板19a、19bの厚
みは、誘電体板18が誘電体共振器3a、3bの中間と
なる停留点に位置するように適宜選択される。
【0020】測定器具15での周波数摂動量を計算する
と、誘電体板の比誘電率が91、厚みが0.635mm
で測定周波数が6GHzの場合、従来例の測定器具5で
は、16.5%であったが、本発明の測定器具15の保
持板19a、19bの開口dとケース1a、1bの開口
0 の寸法比が0.5の時では1.7%であった。ま
た、誘電体板の比誘電率が91、厚みが0.318mm
で測定周波数が12GHzの場合、従来例の測定器具5
では14.1%であったが、本発明の測定器具15の保
持板19a、19bの開口dとケース1a、1bの開口
0 の寸法比が0.6の時では1.5%となった。最適
な周波数摂動量としては2%乃至3%以下が望まれてお
り、上記の結果より本発明の測定器具15により、精度
の高い測定ができることが確認できた。
【0021】また、保持板19aがケース1aの内側に
位置するため、保持板19aの開口dを絞ることで小形
の誘電体板を保持することができるとともに、さらに、
保持板19a、19bの開口dを絞ることによって、誘
電体板の部分的な比誘電率の測定が可能となり、誘電体
板内の誘電率のバラツキや分布を知ることができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による誘電
体板の比誘電率の測定方法およびその方法で用いる測定
器具によれば、誘電体共振器のTE01δ モード共振の
結合部分の結合状態を、保持部の開口寸法を変化して調
節することにより、誘電体共振器の共振周波数の摂動量
を最適値に設定することができるため、誘電体板を薄板
に加工することなく、広い周波数範囲で高誘電率の誘電
体板の比誘電率が非破壊で高速に精度よく測定できる。
【0023】また、保持部がケースの内側に位置するた
め、低周波帯で測定器具が大きくなっても小形の誘電体
板を測定器具に取り付けることができ、小形誘電体の低
周波帯での比誘電率を測定することが可能となる。さら
に、保持部の開口寸法を絞ることにより、誘電体板の部
分的な比誘電率の測定が可能となり、誘電体板内の誘電
率のバラツキや分布を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による誘電体板の比誘電率測定
器具の断面図である。
【図2】従来の誘電体板の比誘電率測定器具の断面図で
ある。
【図3】図2の軸方向の電界強度分布を示す特性図であ
る。
【符号の説明】
1a、1b ケース 2a、2b 保持台 3a、3b 誘電体共振器 6 入出力結合手段 7 共振周波数測定器 14a、14b 保持具 15 測定器具 18 誘電体板 19a、19b 保持板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01R 27/26

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二つの誘電体共振器を軸方向を揃えて対
    向し、該二つの誘電体共振器のTE01δモード共振を使
    用して得られた電界強度分布の停留点に試料板を挿入し
    て、該試料板の挿入前後の共振周波数の変化を測定する
    ことにより比誘電率を求める誘電体板の比誘電率測定方
    法において、前記TE 01 δモード共振の結合部分に中央
    が開口した誘電体板保持部を設け、前記TE01δモード
    共振の結合部分の結合状態を前記誘電体板保持部の開口
    調整して共振周波数の変化を測定し比誘電率を求める
    誘電体板の比誘電率測定方法。
  2. 【請求項2】 二つの誘電体共振器の軸方向を揃えて対
    向した状態でケース内に固定したTE01δモード共振系
    と、該TE01δモード共振を使用して得られた電界強度
    分布の停留点に試料板を位置させる手段と、試料板の有
    無による共振周波数変化を知る手段とを有する誘電体板
    の比誘電率測定器具において、前記TE01δモード共振
    の結合部分に結合度設定用開口部を有する誘電体板保持
    部を設けたことを特徴とする誘電体板の比誘電率測定器
    具。
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