JP3283768B2 - 高強度Cr−Mo鋼のTIG溶接金属及びTIG溶接方法 - Google Patents

高強度Cr−Mo鋼のTIG溶接金属及びTIG溶接方法

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JP3283768B2
JP3283768B2 JP28555996A JP28555996A JP3283768B2 JP 3283768 B2 JP3283768 B2 JP 3283768B2 JP 28555996 A JP28555996 A JP 28555996A JP 28555996 A JP28555996 A JP 28555996A JP 3283768 B2 JP3283768 B2 JP 3283768B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度Cr−Mo
鋼(Cr:2.00乃至3.25重量%、Mo:0.9
0乃至1.20重量%)の溶接に使用され、特に、Cr
及びMoの他にVを必須成分として含有し、更に必要に
応じて、Nb、Ti、B及びCa等を含有する高強度C
r−Mo鋼の溶接に有効である高強度Cr−Mo鋼のT
IG溶接金属及びTIG溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2.25〜3%Cr−1%Mo鋼は高温
特性に優れているため、ボイラー及び化学反応容器等の
高温高圧環境下において使用される材料として、従来よ
り広く適用されている。近時、設備の高効率操業を図る
ため、これらの構造物の使用環境はより一層高温高圧化
される傾向にあり、従来の鋼材からなる溶接構造物を大
型厚肉化したり、V及びNb等を添加した高強度Cr−
Mo鋼により溶接構造物を製造して、その強度を高める
方法が開発されている。
【0003】そして、このような高強度Cr−Mo鋼か
らなる溶接構造物においても大型厚肉のものが多いの
で、その溶接には、一般的に、溶接効率が良好であるサ
ブマージアーク溶接が適用されているが、その初層溶接
時又は配管等の溶接時においては、TIG溶接を適用す
ることが必要とされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高強度
Cr−Mo鋼を溶接した場合、その溶接構造物に対して
はSR(応力除去焼鈍)処理を施すことが必要とされて
おり、Vを必須成分として含有する高強度Cr−Mo鋼
溶接構造物の大型厚肉化が進むにつれて、溶接部におい
ては引張成分の残留応力及び拘束等が増大するという問
題点がある。従って、析出時効による粒界割れ、いわゆ
るSR割れの発生が今後の大きな問題となる。
【0005】ところで、高強度Cr−Mo鋼の溶接用T
IG溶接ワイヤに関しては、SR処理後の室温及び高温
強度、靱性、クリープ強度、耐焼戻し脆化特性(高温環
境での使用中に脆化が少ないこと)、耐高温割れ性(凝
固時の割れが生じ難いこと)並びに耐低温割れ性(水素
による遅れ破壊が生じ難いこと)の向上を図ったものが
提案されている(特開平7−100688号公報)。し
かし、このTIG溶接ワイヤを使用して溶接することに
より得られる溶接金属についても、耐SR割れ性(析出
時効による粒界割れが生じ難いこと)は低いものとな
る。
【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、SR処理後の室温及び高温強度、靱性、ク
リープ強度、耐焼戻し脆化特性、耐高温割れ性並びに耐
低温割れ性が優れていると共に、耐SR割れ性が良好で
ある高強度Cr−Mo鋼のTIG溶接金属及びTIG溶
接方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高強度Cr
−Mo鋼のTIG溶接金属は、TIG溶接によって形成
される溶接金属において、C:0.04乃至0.15重
量%、Si:0.05乃至0.40重量%、Mn:0.
20乃至1.10重量%、Cr:2.00乃至3.25
重量%、Mo:0.90乃至1.20重量%及びV:
0.20乃至0.70重量%を含有し、残部がFe及び
不可避的不純物からなり、不可避的不純物のうち、Pが
0.010重量%以下、Nが0.0150重量%以下に
規制された組成を有し、625℃の温度で10時間の熱
処理を施した溶接金属原質部のみから電解抽出により採
取した残渣の組成は、Fe:35重量%以下及びV:1
0重量%以上であることを特徴とする。この溶接金属
は、更に、Nbを0.040重量%以下含有することが
好ましい。
【0008】本発明に係る高強度Cr−Mo鋼のTIG
溶接方法は、C:0.05乃至0.16重量%、Si:
0.05乃至0.50重量%、Mn:0.20乃至1.
30重量%、Cr:2.00乃至3.25重量%、M
o:0.90乃至1.20重量%及びV:0.20乃至
0.80重量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純
物からなり、不可避的不純物のうち、Pが0.010重
量%以下、Nが0.0150重量%以下に規制された組
成を有するソリッドワイヤを使用し、溶接入熱を10乃
至40(kJ/cm)としてTIG溶接するTIG溶接
方法であって、得られた溶接金属を、C:0.04乃至
0.15重量%、Si:0.05乃至0.40重量%、
Mn:0.20乃至1.10重量%、Cr:2.00乃
至3.25重量%、Mo:0.90乃至1.20重量%
及びV:0.20乃至0.70重量%を含有し、残部が
Fe及び不可避的不純物からなり、不可避的不純物のう
ち、Pが0.010重量%以下、Nが0.0150重量
%以下に規制された組成を有し、625℃の温度で10
時間の熱処理を施した溶接金属原質部のみから電解抽出
により採取した残渣の組成が、Fe:35重量%以下及
びV:10重量%以上であるものとすることを特徴とす
る。
【0009】このソリッドワイヤは、更に、Nb:0.
050重量%以下を含有し、前記溶接金属は、更に、N
b:0.040重量%以下を含有することが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】本願発明者等が本発明の課題を解
決すべく、鋭意実験研究を重ねた結果、TIG溶接によ
り高強度Cr−Mo鋼を溶接する際に、溶接入熱を適切
な範囲に規定すると共に、溶接金属中のC及びV含有量
を規定することにより、高強度Cr−Mo鋼の溶接金属
の耐SR割れ性を改善することができることを見い出し
た。即ち、本願発明者等は、高強度Cr−Mo鋼の溶接
金属を炭化物が析出しやすい温度(例えば、625℃)
で熱処理すれば、粒内は炭化物の析出による析出硬化を
示し、旧オーステナイト粒界にはFeを主体とするセメ
ンタイトが膜状に多量に析出して粒界強度が低下するた
め、粒内強度と粒界強度の差が大きくなり、SR割れが
旧オーステナイト粒界に沿って生じ易くなることを見い
出した。
【0011】そこで、本発明においては、Feよりも炭
化物形成傾向が大きく、高強度Cr−Mo鋼の必須成分
であるVを、溶接金属中のV含有量が0.20乃至0.
70重量%となるようにソリッドワイヤに添加すると共
に、溶接金属中のC含有量が0.04乃至0.15重量
%となるようにCをソリッドワイヤに添加する。また、
溶接金属中のVが窒化物として消費されないようにする
ために、溶接金属中のN含有量が0.0150重量%と
なるようにソリッドワイヤ中のN含有量を規制する。こ
れにより、SR処理後において、V炭化物が溶接金属の
結晶粒内に析出することを促進し、その結果、セメンタ
イトが膜状に旧オーステナイト粒界に析出することを抑
制して、粒界強度の低下を防止することができ、高強度
Cr−Mo鋼のTIG溶接金属においても耐SR割れ性
を改善することができる。
【0012】以下、本発明における高強度Cr−Mo鋼
のTIG溶接金属及びTIG溶接方法について、更に説
明する。先ず、TIG溶接金属中の特定成分の組成限定
理由について説明する。
【0013】溶接金属中のC含有量:0.04乃至0.
15重量% Cは焼入れ硬化性に大きな影響を及ぼし、室温及び高温
強度並びに靱性を確保する上で重要な元素である。溶接
金属中のC含有量が0.04重量%未満であると、強度
及び靱性が低下する。また、本発明においては、Vの添
加量を増加させて、V炭化物を優先的に粒内に析出させ
ることにより、セメンタイトの析出を抑制しているが、
溶接金属中のC含有量が0.15重量%を超えると、セ
メンタイトの旧オーステナイト粒界への析出を抑制する
ことが困難になり、耐SR割れ性が低下してしまう。ま
た、強度が高くなりすぎて、耐低温割れ性及び靱性が低
下する。従って、溶接金属中のC含有量は0.04乃至
0.15重量%とする。好ましくは、C含有量は0.0
7乃至0.11重量%である。
【0014】溶接金属中のSi含有量:0.05乃至
0.40重量% Siはビードのなじみ性を改善する効果を有する元素で
ある。溶接金属中のSi含有量が0.05重量%未満で
あると、この効果が低下し、作業性が劣化する。一方、
Si含有量が0.40重量%を超えると、不純物として
存在するPの粒界への偏析を促進するので、耐焼戻し脆
化特性及び耐SR割れ性が低下する。また、強度が高く
なりすぎて靱性低下の原因ともなる。従って、溶接金属
中のSi含有量は、0.05乃至0.40重量%とす
る。好ましくは、Si含有量は0.10乃至0.30重
量%である。
【0015】溶接金属中のMn含有量:0.20乃至
1.10重量% Mnは、特に、Vを添加した溶接金属の靱性を向上させ
る効果を有する。溶接金属中のMn含有量が0.20重
量%未満であると、その効果が低下して、靱性が不十分
となる。また、Mn含有量が1.10重量%を超える
と、クリープ強度が低下すると共に、不純物として存在
するPの粒界への偏析を促進するので、耐焼戻し脆化特
性及び耐SR割れ性も低下する。従って、溶接金属中の
Mn含有量は0.20乃至1.10重量%とする。好ま
しくは、Mn含有量は0.30乃至0.70重量%であ
る。
【0016】溶接金属中のCr含有量:2.00乃至
3.25重量%、溶接金属中のMo含有量:0.90乃
至1.20重量% Cr及びMoは、高強度2.25〜3%Cr−1%Mo
鋼の基本成分である。溶接金属中のCr含有量が2.0
0重量%未満若しくは3.25重量%を超える場合、又
は溶接金属中のMo含有量が0.90重量%未満若しく
は1.20重量%を超える場合においても本発明の効果
は認められるが、実際には対象とする高温環境下では使
用されない母材成分範囲である。従って、溶接金属中の
Cr含有量は2.00乃至3.25重量%とし、Mo含
有量は0.90乃至1.20重量%とする。好ましくは
Cr含有量が2.20乃至3.25重量%であり、Mo
含有量が0.95乃至1.10重量%である。
【0017】溶接金属中のV含有量:0.20乃至0.
70重量% Vは、本発明において最も重要な元素であり、Feより
も炭化物形成傾向が大きい。このため、高強度Cr−M
o鋼の溶接金属中のVを増加させると、SR処理後の粒
内に微細なV炭化物が優先的に析出し、Feを主体とす
るセメンタイトが旧オーステナイト粒界へ膜状に析出す
ることを抑制することができる。これにより、耐SR割
れ性を大幅に改善することができる。また、Vは溶接金
属の室温及び高温強度並びにクリープ強度を高める効果
も有している。溶接金属中のV含有量が0.20重量%
未満であると、これらの効果を十分に得ることができな
い。一方、溶接金属中のV含有量が0.70重量%を超
えると、強度が高くなりすぎて、靱性及び耐焼戻し脆化
特性が低下する。また、粒内の析出硬化の程度が大きす
ぎる場合には、粒界強度との差が大きくなることによ
り、耐SR割れ性も低下する。従って、溶接金属中のV
含有量は0.20乃至0.70重量%とする。好ましく
はV含有量は0.30乃至0.40重量%である。
【0018】溶接金属中のP含有量:0.010重量%
以下 高強度Cr−Mo鋼には、高温強度及びクリープ強度を
高めるために析出硬化の作用を有するV及びNb等を添
加しており、同様に、溶接金属においても、V及びNb
等を添加している。このため、溶接部に生じる引張残留
応力が大きい場合には、溶接金属にSR割れが発生する
虞がある。Pは旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界強
度を低下させる元素であるので、特に、溶接金属中のP
含有量が高い場合には粒界強度が低下することから、S
R割れが発生する危険性が高い。また、Pが粒界に偏析
することにより、耐焼戻し脆化特性が低下する。溶接金
属中のP含有量が0.010重量%を超えると、SR割
れが発生したり、耐焼戻し脆化特性が低下する。従っ
て、溶接金属中に不可避的不純物として存在するPの含
有量は0.010重量%以下に規制する。好ましくは、
P含有量を0.005重量%以下となるように規制す
る。
【0019】溶接金属中のN含有量:0.0150重量
%以下 本発明においては、V炭化物を優先的に析出させて、F
eを主体とするセメンタイトの旧オーステナイト粒界へ
の析出を抑制することにより耐SR割れ性を改善してい
る。しかしながら、溶接金属中のN含有量が0.015
0重量%を超えると、窒化物を形成するためにVが消費
されるので、V炭化物を析出させることが困難になる。
その結果、セメンタイトの析出を抑制することができな
くなって、粒界強度が大きく低下するので、耐SR割れ
性が劣化してしまう。従って、溶接金属中に不可避的不
純物として存在するNの含有量は0.0150重量%以
下に規制する。好ましくは、N含有量を0.0100重
量%以下となるように規制する。
【0020】なお、上述のP及びN以外の不可避的不純
物、例えば、S、Sn、As及びSbについても、溶接
金属中の含有量を低下させることにより、耐SR割れ性
及び耐焼戻し脆化特性を更に一層向上させることができ
る。従って、本発明においては、溶接金属中の不可避的
不純物としてのS、Sn、As及びSbを、夫々、0.
010重量%以下に規制することが望ましい。より好ま
しくは、不可避的不純物としてのS、Sn、As及びS
bを、夫々、0.005重量%以下に規制する。
【0021】625℃の温度で10時間の熱処理を施し
た溶接金属原質部のみから電解抽出により採取した残渣
中のFe含有量:35重量%以下、V含有量:10重量
%以上 溶接金属に625℃の温度で10時間の熱処理を施し、
溶接金属原質部のみから試料を加工し、電解抽出により
採取した残渣中のFe含有量が35重量%以下であると
共に、V含有量が10重量%以上であると、粒内におけ
る微細なV炭化物の析出が促進され、旧オーステナイト
粒界へのセメンタイトの析出が抑制される。その結果、
粒界強度の低下を防止することができ、耐SR割れ性が
大きく改善される。従って、625℃の温度で10時間
の熱処理を施した溶接金属原質部のみから電解抽出によ
り採取した残渣中のFe含有量は35重量%以下とし、
V含有量は10重量%以上とする。好ましくは、Fe含
有量は20重量%以下であり、V含有量は15乃至45
重量%である。
【0022】溶接金属中のNb含有量:0.040重量
%以下 Nbは溶接金属中に添加されることにより、その添加量
が微量であっても、Vの単独添加により高強度化を図っ
た場合と比較して、更に一層、室温及び高温強度並びに
クリープ強度を向上させることができる。しかしなが
ら、Nb含有量が0.040重量%を超えると、強度が
高くなりすぎて、靱性が低下する。また、耐焼戻し脆化
特性及び耐SR割れ性も低下する。従って、溶接金属中
にNbを添加する場合は、その含有量を0.040重量
%以下とすることが望ましい。より好ましくは、溶接金
属中のNb含有量は0.005乃至0.020重量%で
ある。
【0023】次に、本発明に係る高強度Cr−Mo鋼の
TIG溶接方法におけるソリッドワイヤの成分限定理由
について説明する。
【0024】ソリッドワイヤ中のC含有量:0.05乃
至0.16重量% 前述の如く、Cは溶接金属の室温及び高温強度、クリー
プ強度並びに靱性を確保するために添加するものであ
り、溶接金属中のC含有量を0.04乃至0.15重量
%にするために、ソリッドワイヤ中のC含有量を規定す
る必要がある。従って、ソリッドワイヤ中のC含有量は
0.05乃至0.16重量%とする。好ましくは、C含
有量は0.08乃至0.13重量%である。
【0025】ソリッドワイヤ中のSi含有量:0.05
乃至0.50重量% 前述の如く、Siはビードのなじみ性を改善する効果を
有しているので、溶接金属中のSi含有量を0.05乃
至0.40重量%にするために、歩留まりを考慮してソ
リッドワイヤ中のSi含有量を規定する必要がある。従
って、ソリッドワイヤ中のSi含有量は0.05乃至
0.50重量%とする。好ましくは、Si含有量は0.
10乃至0.20重量%である。
【0026】ソリッドワイヤ中のMn含有量:0.20
乃至1.30重量% 前述の如くMnは、特に、Vが添加された溶接金属の靱
性を向上させる効果を有しているので、溶接金属中のM
n含有量を0.20乃至1.10重量%とするために、
歩留まりを考慮してソリッドワイヤ中のMn含有量を規
定する必要がある。従って、ソリッドワイヤ中のMn含
有量は0.20乃至1.30重量%とする。好ましく
は、Mn含有量は0.30乃至0.80重量%である。
【0027】ソリッドワイヤ中のCr含有量:2.00
乃至3.25重量%、ソリッドワイヤ中のMo含有量:
0.90乃至1.20重量% Cr及びMoは、高強度2.25〜3%Cr−1%Mo
鋼の基本成分であり、所定量をソリッドワイヤに含有さ
せる必要がある。即ち、ソリッドワイヤ中のCr含有量
が2.00重量%未満若しくは3.25重量%を超える
場合、又はMo含有量が0.90重量%未満若しくは
1.20重量%を超える場合においても本発明の効果は
認められるが、その結果得られる溶接金属成分は、実際
には対象とする高温環境下では使用されない母材成分範
囲となる。従って、ソリッドワイヤ中のCr含有量は
2.00乃至3.25重量%とし、Mo含有量は0.9
0乃至1.20重量%とする。好ましくは、Cr含有量
が2.20乃至3.25重量%であり、Mo含有量が
0.95乃至1.10重量%である。
【0028】ソリッドワイヤ中のV含有量:0.20乃
至0.80重量% 前述の如く、Vは本発明において最も重要な元素であ
り、溶接金属中のV含有量を0.20乃至0.70重量
%とするために、歩留まりを考慮してソリッドワイヤ中
のV含有量を規定する必要がある。従って、ソリッドワ
イヤ中のV含有量は0.20乃至0.80重量%とす
る。好ましくはV含有量は0.30乃至0.50重量%
である。
【0029】ソリッドワイヤ中のP含有量:0.010
重量%以下 前述の如く、Pは粒界に偏析して耐焼戻し脆化特性を劣
化させたり、粒界強度を低下させて、耐SR割れ性を低
下させる元素であるため、溶接金属中のP含有量を0.
010重量%以下に規制するために、歩留まりを考慮し
てソリッドワイヤ中のP含有量を規定する必要がある。
従って、ソリッドワイヤ中のP含有量は0.010重量
%以下に規制する。好ましくは、P含有量を0.005
重量%以下となるように規制する。
【0030】ソリッドワイヤ中のN含有量:0.015
0重量%以下 前述の如く、本発明においては、V炭化物を優先的に析
出させて、Feを主体とするセメンタイトの旧オーステ
ナイト粒界への析出を抑制することにより耐SR割れ性
を改善している。そこで、溶接金属中のN含有量を0.
0150重量%以下に規制するために、歩留まりを考慮
してソリッドワイヤ中のN含有量を規定する必要があ
る。従って、ソリッドワイヤ中のN含有量は0.015
0重量%以下に規制する。好ましくは、N含有量を0.
0100重量%以下となるように規制する。
【0031】なお、前述の如く、P及びN以外の不可避
的不純物、例えば、S、Sn、As及びSbについて
も、溶接金属中の含有量を低下させることにより、耐S
R割れ性及び耐焼戻し脆化特性を更に一層向上させるこ
とができる。そこで、溶接金属中に含有されるこれらの
不可避的不純物の含有量を、夫々、0.010重量%以
下に規制するために、ソリッドワイヤ中のS、Sn、A
s及びSbを規定することが望ましい。従って、ソリッ
ドワイヤ中の不可避的不純物としてのS、Sn、As及
びSbは、夫々、0.0100重量%以下とすることが
望ましい。また、より好ましくは、不可避的不純物とし
てのS、Sn、As及びSbを、夫々、0.005重量
%以下に規制する。
【0032】ソリッドワイヤ中のNb含有量:0.05
0重量%以下 前述の如く、Nbは溶接金属中に添加されることによ
り、更に一層、室温及び高温強度並びにクリープ強度を
向上させることができるので、溶接金属中にNbを含有
させる場合、その含有量を0.040重量%以下に規定
するために、ソリッドワイヤ中のNb含有量を規定する
必要がある。従って、ソリッドワイヤ中にNbを含有さ
せる場合は、その含有量を0.050重量%以下とする
ことが望ましい。より好ましくは、ソリッドワイヤ中の
Nb含有量は0.005乃至0.020重量%である。
【0033】この他、本発明のワイヤには、耐錆性を付
与するために、Cuメッキを行うことが可能である。C
uメッキを実施する場合には、ワイヤ全重量あたりのC
u含有量を0.50重量%以下とする。また、本発明に
おいて使用するソリッドワイヤは、メッキ以外のCu、
Ni、Al、Ti及びB等を実質的に含有しないことを
特徴としている。実質的に含有しない量とは、メッキ量
を含まないCuが0.10重量%以下、Niが0.20
重量%以下、Alが0.010重量%以下、Tiが0.
02重量%以下であり、Bが0.005重量%以下であ
ることをいう。
【0034】このように、ソリッドワイヤ中の化学組成
を規定することにより、溶接金属に歩留まる化学成分の
含有量を前述の如く調整することができる。更に、本発
明に係る高強度Cr−Mo鋼のTIG溶接方法における
溶接条件の限定理由について説明する。
【0035】溶接入熱:10乃至40(kJ/cm) 本願発明者等は、TIG溶接時の溶接入熱を適切に選択
すると、強度、靱性、耐焼戻し脆化特性、耐高温割れ
性、耐低温割れ性及び耐SR割れ性がバランス良く良好
である溶接金属が得られることを見い出した。溶接入熱
が10(kJ/cm)未満であると、焼入れ性が大きく
なるので強度は向上するが、靱性、耐低温割れ性及び耐
SR割れ性が低下する。一方、溶接入熱が40(kJ/
cm)を超える場合は、焼入れ性が低下するので組織が
粗大化し、耐SR割れ性に対しては影響しないが、強
度、靱性及び耐焼戻し脆化特性が低下する。また、ビー
ド形状が梨の実型(縦長)になりやすく、耐高温割れ性
も低下する。従って、溶接入熱は10乃至40(kJ/
cm)とする。好ましくは、溶接入熱は15乃至30
(kJ/cm)とする。
【0036】なお、TIG溶接方法には、手動による施
工法と、自動機による施工法があるが、本発明において
は、いずれの施工法に対しても適用することができる。
【0037】
【実施例】以下、本発明に係る高強度Cr−Mo鋼のT
IG溶接金属の実施例についてその比較例と比較して具
体的に説明する。
【0038】図1は本実施例において使用する溶接母材
の形状を示す模式的断面図である。図1に示すように、
本実施例において使用する高強度Cr−Mo鋼からなる
溶接母材1は、V形状の開先を有し、このV形状の開先
部の下部には、溶接母材1と同一の化学組成を有する裏
当金2が配置されている。本実施例においては、このV
形状の開先角度を45°として、その下部の裏当金が配
置されている部分のギャップ幅を6mmとした。また、
溶接母材1の板厚を16mmとした。
【0039】本実施例及び比較例においては、下記表1
及び2に示す化学組成を有し、直径が1.6mmである
ソリッドワイヤを使用し、下記表3に示す化学組成を有
する溶接母材を図1に示す開先形状に加工して、この開
先部に下記表4に示す溶接条件にて、極性をDCEN、
シールドガスとして100%のArガスを使用して溶接
金属を形成した。但し、下記表4に示すワイヤ送給量に
ついては、自動機による溶接の場合のみ設定している。
また、ワイヤ組成については、高強度Cr−Mo鋼の基
本成分であるCr:2.00乃至3.25重量%、M
o:0.90乃至1.20重量%の範囲を外れるものは
試験の対象外とした。
【0040】先ず、表1乃至4に示す種々の条件を組み
合わせて形成した溶接金属について、全ての条件が本発
明の範囲内であるものを実施例とし、少なくとも1種の
条件が本発明の範囲から外れているものを比較例とし
て、それらの化学成分を分析すると共に、抽出残渣のE
DX分析(エネルギー分散型X線検出器による分析)を
実施した。溶接金属の形成条件及び組成の測定結果を下
記表5及び6に示す。
【0041】図2は温度を縦軸にとり、時間を横軸にと
って、抽出残渣のEDX分析用試験材のSR条件を示す
グラフ図である。図2に示すように、試験材の温度が3
00℃を超えると、温度上昇が毎時25℃以下になるよ
うに加熱条件を調整し、試験材の温度が625℃になる
と、その温度で10時間保持する。そして、試験材の温
度が300℃以下になるまで、温度降下が毎時25℃以
下となるように試験材を冷却する。なお、試験材の温度
が300℃以下の範囲では、加熱及び冷却条件は規定し
ない。
【0042】図3はEDX分析用試験材の溶接金属から
の採取位置を示す模式的断面図である。図3に示すよう
に、溶接母材1及び裏当金2の開先部に形成された溶接
金属3の最終ビード原質部8から所定のサイズの角柱状
試験片9を採取した。そして、この試験片9を下記表7
に示す条件によって溶解して、析出物を抽出し、その残
渣をEDX分析した。これらのEDX分析結果を下記表
8に示す。
【0043】但し、実施例No.1乃至5は高強度2.
25%Cr−1%Mo鋼に本発明を適用した例であり、
実施例No.6は高強度3%Cr−1%Mo鋼に本発明
を適用した例である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】次に、この溶接金属の一部から種々の機械
的試験を行うための試験片を採取した。機械試験の内容
は、室温及び高温引張試験、シャルピー衝撃試験、焼戻
し脆化試験及びクリープ破断試験の4種である。これら
の試験片は下記表9に示す形状とし、下記表9に併せて
示すSR条件によって熱処理を施した試験材の板厚中央
から採取した。
【0053】
【表9】
【0054】図4は温度を縦軸にとり、時間を横軸にと
って、機械試験のSR条件を示すグラフ図である。図4
に示すように、試験片の温度が300℃を超えると、温
度上昇が毎時55℃以下になるように加熱条件を調整
し、試験片の温度が700℃になると、その温度で7時
間又は26時間保持する。次に、試験片の温度が300
℃以下になるまで、温度降下が毎時55℃以下となるよ
うに試験片を冷却する。なお、試験片の温度が300℃
以下の範囲では、加熱及び冷却条件は規定しない。
【0055】また、焼戻し脆化試験については、所定の
SR処理に加えて、ステップクーリング処理を施した。
図5は温度を縦軸にとり、時間を横軸にとって、ステッ
プクーリング処理条件を示すグラフ図である。図5に示
すように、試験片の温度が300℃を超えると、温度上
昇が毎時50℃以下になるように加熱条件を調整し、試
験片の温度を593℃まで加熱して、1時間保持する。
その後、同様の要領で538℃で15時間、524℃で
24時間、496℃で60時間保持するが、これらの冷
却段階においては、毎時5.6℃の温度で試験片が冷却
されるように調整する。更に、496℃に保持された試
験片を、毎時2.8℃の温度で冷却して468℃とし、
この温度で100時間保持する。そして、試験片の温度
が300℃以下になるまで、温度降下が毎時28℃以下
となるように試験片を冷却する。SR条件と同様に、試
験片の温度が300℃以下の範囲では、加熱及び冷却条
件は規定していない。
【0056】更に、前記溶接金属からリング割れ試験の
ための円筒形試験片を採取した。図6(a)は円筒形試
験片の溶接金属からの採取位置及び方向を示す模式的断
面図であり、(b)は円筒形試験片の形状を示す側面
図、(c)は同じくその断面図、(d)は断面図におけ
るノッチ部Aを拡大して示す断面図、(e)は円筒形試
験片を使用したリング割れ試験方法を示す模式的断面図
である。
【0057】図6(a)に示すように、溶接母材1と裏
当金2との開先部に形成された溶接金属3の最終ビード
を含むように、ノッチ及びスリットを有する円筒形試験
片4を採取した。このとき、図6(c)に示すノッチ5
が溶接金属3の原質部上方に、スリット6が下方に位置
するように採取した。なお、円筒形試験片4は、図6
(b)に示すように、円筒形の長手方向の長さを20m
mとし、その外径を10mm、内径を5mmとした。
【0058】また、図6(c)に示すように、円筒形試
験片4は、試験片4の長手方向に、円筒の内部の空洞部
にまで至るスリット6を0.5mmの幅で有し、このス
リットの反対側の外周面には試験片の長手方向にノッチ
5を有している。図6(c)のノッチ部Aにおける拡大
図である図6(d)に示すように、ノッチ5は、深さが
0.5mm、幅が0.4mmであり、底部の曲率半径が
0.2mmであるU字形の溝となっている。このような
形状の試験片をリング割れ試験に使用した。
【0059】なお、リング割れ試験は、「応力除去焼鈍
割れに関する研究(第2報)」(内木ら、溶接学会誌:
Vol.33、No.9(1964)P.718)を参
考にして、図6(e)に示すように、矢印で示す方向
に、円筒型試験片4に曲げ応力を印加して、試験片4の
スリット6を溶加材を使用せずにTIG溶接し、ノッチ
5の底部に引張残留応力を生じさせたまま熱処理を行っ
て、ノッチ5の底部におけるSR割れの発生の有無を観
察することにより、耐SR割れ性を評価するものであ
る。
【0060】図7は温度を縦軸にとり、時間を横軸にと
って、リング割れ試験の熱処理条件を示すグラフ図であ
る。図7に示すように、試験片の温度が300℃を超え
ると、温度上昇が毎時25℃以下になるように加熱条件
を調整し、試験片の温度が625℃になると、その温度
で例えば10時間保持する。そして、試験片の温度が3
00℃以下になるまで、温度降下が毎時25℃以下とな
るように試験片を冷却する。なお、機械試験のSR条件
等と同様に、試験片の温度が300℃以下の範囲では、
加熱及び冷却条件は規定しない。
【0061】その他に、高温割れについては、溶接終了
後、直ちにX線透過試験によって評価した。また、低温
割れについては、試験材をそのまま3日間放置し、X線
透過試験によって欠陥部を観察した後、光学顕微鏡観察
及び走査型電子顕微鏡観察によって割れを評価した。更
に、一部の試験片については、カーボン抽出レプリカに
よる析出物を走査電子顕微鏡により観察すると共に、電
子線回折によって同定を実施した。
【0062】以下に、種々の評価試験における評価基準
を説明する。
【0063】強度については、室温引張強さが600
(N/mm2)以上であると共に、高温(454℃)引
張強さが507(N/mm2 )以上のものを良好とし
た。靱性及び耐焼戻し脆化特性を評価するシャルピー衝
撃試験については、夫々vTr55(55Jを示すシャ
ルピ−遷移温度)が−70℃以下であると共に、ΔvT
r55(ステップクーリング後のvTr55の遷移量
(vTr'55-vTr55))が20℃以下であるものを良好とし
た。クリープ強度については、207(N/mm2)の
負荷応力を印加した試験片を538℃の温度で保持し、
クリープ破断時間を測定することにより評価し、クリー
プ破断時間が900時間以上であるものを良好とした。
【0064】また、高温割れ及び低温割れ試験について
は、全ての観察試験において、割れがないものを○(良
好)とし、割れが発生しているものを×(不良)とし
た。耐SR割れ性を評価するリング割れ試験について
は、試験片に対して625℃の温度で1、5、10、5
0、100及び500時間の6条件で熱処理を施した
後、光学顕微鏡によって観察することにより割れを評価
したが、10時間以上の熱処理でノッチ5の底部に割れ
が発生しないものを○(良好)とした。従って、625
℃×10時間の熱処理で割れが発生したものは×(不
良)である。溶接作業性、耐高温割れ性、耐低温割れ性
及び耐SR割れ性の評価結果を下記表10に示し、溶接
金属の機械的性能及び総合評価を下記表11に示す。
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】上記表1〜6、8、10及び11に示すよ
うに、実施例No.1乃至6は、ソリッドワイヤ、溶接
金属及び電解抽出残渣の化学組成が本発明の範囲内であ
るので、機械的性能及び各耐割れ性とも良好なものとな
った。
【0068】一方、比較例No.7は、ソリッドワイヤ
中のC及びMn含有量が本発明範囲の下限未満であるの
で、溶接金属中のC及びMn含有量も本発明の範囲から
外れ、溶接入熱についても本発明範囲の上限を超えてい
るので、強度及び靱性が低下すると共に、クリープ破断
時間も短くなった。また、一部には高温割れも観察され
た。比較例No.8は、ソリッドワイヤ中のSi含有量
が本発明範囲の下限未満であるので、溶接金属中のSi
含有量が本発明の範囲から外れており、これにより、溶
接作業性が極めて悪いものとなった。従って、組成分析
以外の各種試験を中止した。
【0069】比較例No.9は、ソリッドワイヤ中のS
i及びMnが本発明範囲の上限を超えているので、溶接
金属中のSi及びMn含有量が本発明の範囲から外れ、
これにより、靱性、耐焼戻し脆化特性及びクリープ強度
が低下すると共に、耐SR割れ性も低下した。比較例N
o.10は、ソリッドワイヤ中のC及びN含有量が本発
明範囲の上限を超えているので、溶接金属中のC及びN
含有量が本発明の範囲から外れており、これにより、強
度が高くなって靱性及び耐焼戻し脆化特性が低下した。
また、電解抽出のEDX分析においては、残渣中のFe
含有量が本発明範囲の上限を超えているので、カーボン
抽出レプリカの走査電子顕微鏡による観察及び電子線回
折による同定によると、旧オーステナイト粒界へのセメ
ンタイトの析出が著しく増加していた。そのため、耐S
R割れ性の評価が劣化しており、一部には、低温割れも
観察された。
【0070】比較例No.11は、ソリッドワイヤ中の
P含有量が本発明範囲の上限を超えていると共に、V含
有量が本発明範囲の下限未満であるので、溶接金属中の
P及びV含有量が本発明の範囲から外れている。また、
電解抽出のEDX分析においては、残渣中のFe含有量
が本発明範囲の上限を超えていると共に、V含有量が本
発明範囲の下限未満であるので、カーボン抽出レプリカ
の走査電子顕微鏡による観察及び電子線回折による同定
によると、粒内におけるV炭化物の析出が少なくなり、
旧オーステナイト粒界へのセメンタイトの析出が著しく
増加していた。そのため、耐SR割れ性が劣化すると共
に、高温強度が不足し、耐焼戻し脆化特性及びクリープ
強度も低下した。
【0071】比較例No.12は、ソリッドワイヤ中の
V含有量が本発明範囲の上限を超えているので、溶接金
属中のV含有量も本発明の範囲から外れ、これにより、
強度が高くなって靱性及び耐焼戻し脆化特性が低下し
た。また、溶接金属中のV含有量が本発明範囲の上限を
超えていることから、粒内の析出効果の程度が大きくな
りすぎて、耐SR割れ性が低下した。比較例No.13
は、ソリッドワイヤ中のNb含有量が本発明範囲の上限
を超えて添加されているので、溶接金属中のNb含有量
も本発明の範囲から外れ、また、溶接入熱が本発明範囲
の下限未満であるので、強度が高くなって靱性及び耐焼
戻し脆化特性が低下すると共に、耐SR割れ性も劣化
し、一部については低温割れが観察された。
【0072】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
溶接金属及び電解抽出により採取した残渣の化学組成を
所定の範囲に設定しているので、SR後の室温及び高温
強度、靱性、クリープ強度、耐焼戻し脆化特性、耐高温
割れ性、耐低温割れ性並びに耐SR割れ性を向上させる
ことができる。また、本発明方法によれば、TIG溶接
に使用するソリッドワイヤの化学組成を適切な範囲に規
定すると共に、溶接条件を適切に選択しているので、こ
れにより得られる溶接金属の組成を所望の範囲に調整す
ることができ、優れた特性を有する溶接金属を得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例において使用する溶接母材の形状を示
す模式的断面図である。
【図2】温度を縦軸にとり、時間を横軸にとって、抽出
残渣のEDX分析用試験材のSR条件を示すグラフ図で
ある。
【図3】EDX分析用試験片の溶接金属からの採取位置
を示す模式的断面図である。
【図4】温度を縦軸にとり、時間を横軸にとって、機械
的特性試験のSR条件を示すグラフ図である。
【図5】温度を縦軸にとり、時間を横軸にとって、ステ
ップクーリング処理条件を示すグラフ図である。
【図6】(a)は円筒形試験片の溶接金属からの採取位
置及び方向を示す模式的断面図であり、(b)は円筒形
試験片の形状を示す側面図、(c)は同じくその断面
図、(d)は断面図におけるノッチ部Aを拡大して示す
断面図、(e)は円筒形試験片を使用したリング割れ試
験方法を示す模式的断面図である。
【図7】温度を縦軸にとり、時間を横軸にとって、リン
グ割れ試験の熱処理条件を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1;溶接母材 2;裏当金 3;溶接金属 4、9;試験片 5;ノッチ 6;スリット 8;最終ビード原質部
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−100688(JP,A) 特開 平9−192881(JP,A) 特開 平10−137975(JP,A) 特開 平10−128576(JP,A) 特公 平6−75795(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/30

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 TIG溶接によって形成される溶接金属
    において、C:0.04乃至0.15重量%、Si:
    0.05乃至0.40重量%、Mn:0.20乃至1.
    10重量%、Cr:2.00乃至3.25重量%、M
    o:0.90乃至1.20重量%及びV:0.20乃至
    0.70重量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純
    物からなり、不可避的不純物のうち、Pが0.010重
    量%以下、Nが0.0150重量%以下に規制された組
    成を有し、625℃の温度で10時間の熱処理を施した
    溶接金属原質部のみから電解抽出により採取した残渣の
    組成は、Fe:35重量%以下及びV:10重量%以上
    であることを特徴とする高強度Cr−Mo鋼のTIG溶
    接金属。
  2. 【請求項2】 更に、Nbを0.040重量%以下含有
    することを特徴とする請求項1に記載の高強度Cr−M
    o鋼のTIG溶接金属。
  3. 【請求項3】 C:0.05乃至0.16重量%、S
    i:0.05乃至0.50重量%、Mn:0.20乃至
    1.30重量%、Cr:2.00乃至3.25重量%、
    Mo:0.90乃至1.20重量%及びV:0.20乃
    至0.80重量%を含有し、残部がFe及び不可避的不
    純物からなり、不可避的不純物のうち、Pが0.010
    重量%以下、Nが0.0150重量%以下に規制された
    組成を有するソリッドワイヤを使用し、溶接入熱を10
    乃至40(kJ/cm)としてTIG溶接するTIG溶
    接方法であって、得られた溶接金属を、C:0.04乃
    至0.15重量%、Si:0.05乃至0.40重量
    %、Mn:0.20乃至1.10重量%、Cr:2.0
    0乃至3.25重量%、Mo:0.90乃至1.20重
    量%及びV:0.20乃至0.70重量%を含有し、残
    部がFe及び不可避的不純物からなり、不可避的不純物
    のうち、Pが0.010重量%以下、Nが0.0150
    重量%以下に規制された組成を有し、625℃の温度で
    10時間の熱処理を施した溶接金属原質部のみから電解
    抽出により採取した残渣の組成が、Fe:35重量%以
    下及びV:10重量%以上であるものとすることを特徴
    とする高強度Cr−Mo鋼のTIG溶接方法。
  4. 【請求項4】 前記ソリッドワイヤは、更に、Nb:
    0.050重量%以下を含有し、前記溶接金属は、更
    に、Nb:0.040重量%以下を含有することを特徴
    とする請求項3に記載の高強度Cr−Mo鋼のTIG溶
    接方法。
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