JP3282697B2 - 非放射性誘電体線路 - Google Patents

非放射性誘電体線路

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非放射性誘電体線路
(Nonradiative Dielectric
Waveguide)に関し、より特定的には、誘電体
ストリップをはさんで一対の平板状の導体板の相互の間
隔を所定の間隔になるように平行に配設し、LSM01
モードおよびLSE01モードのいずれか一方を動作モ
ードとして当該誘電体ストリップに沿って伝搬させるよ
うにした非放射性誘電体線路に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、誘電体ストリップをはさんで
一対の平板状の導体板の相互の間隔を所定の間隔になる
ように平行に配設し、LSM01モードおよびLSE0
1モードのいずれか一方を動作モードとして当該誘電体
ストリップに沿って伝搬させるようにした非放射性誘電
体線路がある。この誘電体ストリップは、例えばテフロ
ン(登録商標)等の誘電体材料(比誘電率εr=2)で
幅b(例えば、2.5mm)、高さa(例えば、2.2
5mm)に形成されている。誘電体ストリップを導体板
ではさむと、高さaの2倍以上の波長のLSM01モー
ドやLSE01モードは、誘電体ストリップのない部分
においてはほぼ遮断される。一方、誘電体ストリップの
部分では、遮断効果が解除される。このため、誘電体ス
トリップがたとえ曲がっていても、LSM01モードや
LSE01モードは、放射せずに誘電体ストリップに沿
って伝播する。したがって、比放射性誘電体線路は、ミ
リ波の伝送線路に適しており、ミリ波集積回路に適して
いる。
【0003】ところで、例えば、LSM01モードを動
作モードとし、LSM01モードを例えば90゜曲げる
場合、誘電体ストリップの曲線部においては、LSM0
1モードとLSM01モードに隣接するLSE01モー
ドとのモード結合を避けることができない。このため、
LSM01モードの一部は、LSM01モードとLSE
01モードとの間で移動しながら曲線部を伝搬する。こ
の場合に、曲線部の曲率半径Rを適当な値にすれば、L
SE01モードに移ったエネルギを全部LSM01モー
ドに回収することができる。この場合の曲線部の曲率半
径Rは、(1)式で求まる。
【0004】 R=√{(360・n/θ)2−A2}/Δβ (n=1,2,…) …(1) ここで、θは曲線部の中心角である。Δβは、LSM0
1モードの伝搬方向の位相定数と、LSE01モードの
伝搬方向の位相定数との位相定数差である。Aは、波数
k0、LSM01モード・LSE01モードの位相定数
β,β’、LSM01モード、LSE01モードの横方
向の減衰定数p,p’、q,q’より求まる値である。
最小の曲率半径Rは、n=1の場合である。(1)式に
n=1、中心角θ=90゜等を代入したとき、曲線部の
曲率半径Rは22.5mmとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
非放射性誘電体線路では、誘電体ストリップを所定の誘
電率で均一に形成していたため、LSM01モードの位
相定数とLSE01モードの位相定数とが近接し、位相
定数差Δβが小さかった。このため、誘電体ストリップ
の曲線部の中心角θを一定とすると曲率半径Rが大きく
なり、曲率半径Rを一定にすると中心角θが大きくなる
((1)式参照)。すなわち、誘電体ストリップの曲線
部が大型化するという問題点があった。
【0006】一方、誘電体ストリップが非常に細いた
め、誘電体ストリップの幅bと高さaとを一定に加工す
るのが困難である。しかしながら、加工精度が悪いと、
位相定数差Δβが小さいため、誘電体ストリップの直線
部においてもLSM01モードとLSE01モードとの
モード結合が生じやすいという問題点があった。
【0007】本発明は、上述の技術的課題を解決し、誘
電体ストリップの曲線部を小型化することができるとと
もに、誘電体ストリップの直線部においてモード結合が
生じにくい非放射性誘電体線路を提供することを目的と
する。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
誘電体ストリップをはさんで一対の平板状の導体板の相
互の間隔を所定の間隔になるように平行に配設し、LS
M01モードおよびLSE01モードのいずれか一方を
動作モードとして当該誘電体ストリップに沿って伝搬さ
せるようにした非放射性誘電体線路であって、誘電体ス
トリップは、所定の誘電率の誘電体材料で形成される第
1の誘電体部と、LSM01モードに対して電界が弱
く、かつLSE01モードに対して電界が強い領域に、
第1の誘電体部材の誘電率より高い誘電率の誘電体材料
で第1の誘電体の長手方向に沿って形成される第2の誘
電体部とを備える。
【0009】
【作用】第2の誘電体部は、LSM01モードに対して
電界が弱く、かつLSE01モードに対して電界が強い
領域に、第1の誘電体部材の誘電率より高い誘電率の誘
電体材料で第1の誘電体の長手方向に沿って形成され
る。これによって、LSM01モードの位相定数がほと
んど変化せずにLSE01モードの位相定数が大きくな
るため、位相定数差が大きくなる。したがって、誘電体
ストリップの曲線部の中心角θを一定とすると曲率半径
Rが小さくなり、曲率半径Rを一定にすると中心角θが
小さくなる。すなわち、誘電体ストリップの曲線部が小
型になる。また、位相定数差が大きくなるため、加工精
度が悪くても、誘電体ストリップの直線部においてモー
ド結合が生じにくくなる。
【0010】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明
する。図1は、本発明の一実施例の非放射性誘電体線路
の構成を示す図である。図1において、非放射性誘電体
線路1は、一対の平板状の導体板2,3と、誘電体スト
リップ4とを備える。誘電体ストリップ4は、例えばテ
フロン等の所定の誘電率の誘電体材料(εr=2)で形
成された第1の誘電体部4Aと、セラミックやセラミッ
クの粉末を混入した樹脂等第1の誘電体部4Aの誘電率
より高い誘電率の誘電体材料(εr=10)で形成され
た第2の誘電体部4Bとを備え、横断面の幅b(例え
ば、2.5mm)、高さa(例えば、2.25mm)の
直線部41と、曲線部42とを有する。第1の誘電体部
4Aの上下面のほぼ中央には、幅0.4mm、深さ0.
2mmのV字状の溝が形成される。この溝には、第2の
誘電体部4Bが詰められる。誘電体ストリップ4を両導
体板2,3ではさみ、導体板2,3の相互の間隔をaに
なるように平行に配設する。これにより、LSM01モ
ードとLSE01モードとの相互影響の少ない非放射性
誘電体線路1ができあがる。
【0011】次いで、図2〜図5を参照しながら動作を
説明する。図2はLSM01モードの電磁界ベクトルを
示す図であり、図3はLSE01モードの電磁界ベクト
ルを示す図であり、図4は角周波数ωと位相定数βとの
関係を示す図であり、図5は導体板2,3間におけるL
SM01モードの電界強度分布を示す図である。なお、
図2〜図4においては、比較のため、従来の非放射性誘
電体線路の電磁界ベクトル(図2(3),(4)、図3
(3),(4)参照)と角周波数ωと位相定数βとの関
係とを示す。
【0012】LSM01モードは、図2に示すように、
その磁界Hが誘電体と空気の境界面に平行(図2(2)
参照)である。LSM01モードの電界強度は、図5に
示すように、導体板2,3付近では最小の「0」であ
り、導体板2,3のほぼ中央で最大となる。このため、
第2の誘電体部4Bを通る電界ベクトルがわずかである
ため、従来の電磁界ベクトル(図2(3),(4)参
照)とほとんど変化がない。したがって、LSM01モ
ードの位相定数β1(図4参照)は、従来のLSM01
モードの位相定数β2とほとんど変わらない。
【0013】一方、LSE01モードは、図3に示すよ
うに、その電界Eが誘電体と空気の境界面に平行(図3
(2)参照)である。LSE01モードの電界強度は、
導体板2,3付近においても電界強度が強い。このた
め、第2の誘電体部4Bを通る電界ベクトルが多くな
り、従来の電磁界ベクトル(図3(3),(4)参照)
から大きく変化する。これにより、LSE01モードに
対する誘電体ストリップ4の実行誘電率が高くなり、L
SE01モードの管内波長が短くなる。すなわち、LS
E01モードの位相定数β3(図4参照)は、従来のL
SE01モードの位相定数β4よりさらに大きくなる。
したがって、LSM01モードの位相定数β1とLSE
01モードの位相定数β3との位相定数差Δβa(図4
参照)は、従来の位相定数差Δβb(図4参照)の2〜
4倍まで大きくなる。
【0014】このように、位相定数差Δβaが大きくな
ると、誘電体ストリップ4の曲線部42の中心角θを一
定とすると曲率半径Rが小さくなり、曲率半径Rを一定
にすると中心角θが小さくなる((1)式参照)。すな
わち、誘電体ストリップ4の曲線部42が小型になる。
また、位相定数差Δβaが大きくなるため、加工精度が
悪くても、誘電体ストリップ4の直線部41においてモ
ード結合が生じにくくなる。なお、低損失の観点から通
常LSM01モードが動作モードに選ばれるが、LSE
01モードを動作モードとした場合には、位相定数β3
が大きくなる、すなわち管内波長が短くなるため、誘電
体ストリップ4の直線部41を短くできるという効果も
生じる。
【0015】なお、上述の実施例では、第1の誘電体部
4Aの上下にV字状の溝を形成したが、図6(1)に示
すように第1の誘電体部4Aの上下に矩形状の溝を形成
し、あるいは図6(2),(3)に示すように第1の誘
電体部4Aの上下に円弧状の溝を形成し、これらの溝に
第2の誘電体部4Bを詰めるようにしてもよい。また、
溝を他の形状に形成するようにしてもよい。また、図6
(4)に示すように、第1の誘電体部4Aの上下に第2
の誘電体部4Bを形成するようにしてもよい。さらに、
上下両方に第2の誘電体部4Bを設けるようにしたが、
上下のいずれか一方にのみ第2の誘電体部4Bを設ける
ようにしてもよい。
【0016】
【発明の効果】以上のように、請求項1に係る発明にお
いては、第2の誘電体部を、LSM01モードに対して
電界が弱く、かつLSE01モードに対して電界が強い
領域に、第1の誘電体部材の誘電率より高い誘電率の誘
電体材料で第1の誘電体の長手方向に沿って形成してい
るので、LSM01モードの位相定数がほとんど変化せ
ずにLSE01モードの位相定数が大きくなるため、位
相定数差が大きくなる。したがって、誘電体ストリップ
の曲線部の中心角θを一定とすると曲率半径Rが小さく
なり、曲率半径Rを一定にすると中心角θが小さくな
る。すなわち、誘電体ストリップの曲線部が小型にな
る。また、位相定数差が大きくなるため、たとえ加工精
度が悪くても誘電体ストリップの直線部においてモード
結合が生じにくくなる。この結果、加工精度を従来まで
上げる必要がないので、誘電体ストリップの生産性が向
上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の非放射性誘電体線路の構成
を示す図である。
【図2】LSM01モードの電磁界ベクトルを示す図で
ある。
【図3】LSE01モードの電磁界ベクトルを示す図で
ある。
【図4】角周波数ωと位相定数βとの関係を示す図であ
る。
【図5】導体板2,3間におけるLSM01モードの電
界強度分布を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例の非放射性誘電体線路の構
成を示す図である。
【符号の説明】
1…非放射性誘電体線路 2,3…導体板 4…誘電体ストリップ 4A…第1の誘電体部 4B…第2の誘電体部 41…直線部 42…曲線部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚井 紀充 京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株 式会社 村田製作所内 (56)参考文献 特開 昭51−12753(JP,A) 特開 平1−251902(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01P 1/02 H01P 3/16 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘電体ストリップをはさんで一対の平板
    状の導体板の相互の間隔を所定の間隔になるように平行
    に配設し、LSM01モードおよびLSE01モードの
    いずれか一方を動作モードとして当該誘電体ストリップ
    に沿って伝搬させるようにした非放射性誘電体線路であ
    って、 前記誘電体ストリップは、 所定の誘電率の誘電体材料で形成される第1の誘電体部
    と、 前記LSM01モードに対して電界が弱く、かつ前記L
    SE01モードに対して電界が強い領域に、前記第1の
    誘電体部材の誘電率より高い誘電率の誘電体材料で前記
    第1の誘電体の長手方向に沿って形成される第2の誘電
    体部とを備える、非放射性誘電体線路。
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