JP3271005B2 - フロン或いはフッ素化合物のプラズマ分解装置及び分解方法 - Google Patents

フロン或いはフッ素化合物のプラズマ分解装置及び分解方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、廃冷蔵庫、廃ルームク
ーラー、廃自動車、半導体製造施設などから排出される
フロンおよびフッ素化合物のプラズマ除去法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】これまでに、フロンを除去する技術とし
ては、(1)ロータリーキルン法、(2)セメントキルン法、
(3)固定床二段燃焼法、(4)触媒法、(5)化学的熱分解
法、(6)液中燃焼法、(7)高温水蒸気分解法、(8)高温溶
融炉法、(9)加熱蒸気反応法、(10)高周波プラズマ法、
及び(11)アークプラズマ法が検討あるいはベンチプラン
トで実施されている。しかし、数少ないこれらの大型施
設でフロンを分解するためには、排出源で回収されたも
のを運ぶ必要があり、実際に排出される全フロン量に対
する分解装置に供される割合は依然として低迷してい
る。これに対し、排出源においてフロン類を処理できる
小型の装置としてこれまでに低温プラズマリアクタを利
用したフロン分解法が知られており、フロン113(C2Cl3F
3)に対して高い分解能力のあることが報告されている
(例えば、著者T. Oda, R. Yamashita, I. Haga, and
T. Takahashi, 「IEEE Transactions on Industry Appl
ications」, 43巻, 118〜124頁, 1996年)。しかし、プ
ラズマで分解した場合、HF、HCl、COF2、COCl2、SiF4
の有害物質が生成する問題点があった。
【0003】図4及び図5を参照して、従来技術をさらに
詳細に説明する。図4、5はそれぞれ、代表的な低温プラ
ズマリアクタである強誘電体充填方式のプラズマ分解装
置(パックトベッドタイプリアクタ)、及び無声放電方
式のプラズマ分解装置(バリアタイプリアクタ)の一例
の縦断面図であり、図中、1は内部電極、2は外部電極で
あり、パックトベッドタイプのリアクタ(図4)では両電
極1、2の間に粒状強誘電体物質(3)が充填されている。5
は両電極1、2の間に高電圧を印加する電源である。6は
円筒形分解装置の内部電極を固定するために設けたテフ
ロン製キャップ、7は充填した強誘電体を保持する押さ
え板であり、円筒形分解装置の両端に設けてある。8はO
-リングである。バリアタイプリアクタでは外側の電極
の内側に石英管(10)が挿入されている。矢印aは排ガス
の流入経路を示し、矢印bは浄化ガスの流出方向を示
す。この分解装置に導入された排ガスは矢印aの流路
で、テフロン製押さえ板の透孔を通って誘電体物質が充
填したプラズマ処理室に導入され、フロン類が分解した
後、浄化ガスが出口側の押さえ板7の透孔から矢印bで示
す流れとして排出される。
【0004】図4に示すような電極間には強誘電材料と
して比誘電率4000、直径2mmのBaTiO3を主成分とする球
状ビーズが充填されている。電極間距離1cm、プラズマ
処理室の容積は31.4cm3である。模擬ガスには、フロン-
115(200ppm C2ClF5)、0.5%の水蒸気(H2O)を含むArガス
を100cm3/minで図4に示すプラズマリアクタへ流通し、
電極間に0〜5kVの電圧を印加した。こうして種々の条件
下でのフロンの分解量を測定した。その結果を図6〜8に
示した。また、図6(A)、7(A)には反応前の、図6(B)、7
(B)には反応後の気相の赤外(IR)スペクトルを示した。
これよりこの従来型技術でもフロンの分解が進行するこ
とがわかる。しかし、図6(B)、7(B)に示すように、副生
成物としていずれの条件においてもCOF2、SiF4 、HFの
様な有害物質が観測された。図8にはこのIRの吸光度か
ら求めた従来型プラズマリアクタで発生した各種反応生
成物の濃度を示した。いずれもフロンの転化率が大きく
なるに従って増加する傾向にある。図5のリアクタを用
いた場合にも同様な結果が得られた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、従来
の低温プラズマリアクタは、フロン或いはフッ素化合物
をかなりの程度分解することができるが、完全に分解す
ることはできない。本発明は、かかる問題点を解決し
て、フロン或いはフッ素化合物を高い分解効率でプラズ
マ分解を行い、有害副生成物の発生を完全に抑えること
を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は下記
の方法及び装置によって達成された。 (1)本発明は電極表面に薄いアルミナ層をコーティング
したプラズマリアクタ、或いはリアクタ内部へアルミニ
ウム含有酸化物を充填することを特徴とする。 (2)電極表面のアルミナ層は、0.05〜1.0mmの厚みでコー
ティングされている。 (3)パックトベッドタイプのリアクタの場合、放電を起
こさせるために誘電率100〜15000の誘電体物質を充填す
る必要があるが、これにアルミニウム含有酸化物を混合
して用いる場合には体積比でアルミニウム含有酸化物:
強誘電体物質=1:9から5:5の範囲で充填する。 (4)強誘電体を必要としないバリアタイプリアクタの場
合、アルミニウム含有酸化物のみを充填する。 (5) アルミニウム含有酸化物がアルミナ(Al2O3)、ゼ
オライト3A、ゼオライト4A、ゼオライト5A、ゼオライト
13X及びスピネル(MgAl2O4)から選ばれた少なくとも1
種である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用するプラズマ
分解装置及び方法を例示に基づき具体的に説明する。図
1〜3は円筒状プラズマ分解装置の3つの例のそれぞれの
縦断面図であり、図中、1は内部電極、2は外部電極であ
る。5は両極1、2の間に高電圧を印加する電源である。6
は円筒形分解装置の内部電極固定のために設けたテフロ
ン製キャップ、7は充填した強誘電体を保持する押さえ
板であり、円筒形分解装置の両端に設けてある。8はO
リングである。
【0008】図1に示したパックトベッドタイプリアク
タでは、両電極1、2の間に粒状強誘電体物質が充填され
ると共に、両電極1,2の対向面側にそれぞれアルミナコ
ーティング層9が設けられている。例示のリアクタにお
いて、プラズマリアクタ電極はアルミナの薄層でコーテ
ィングされるが、ここで、電極表面のアルミナ層は、高
電圧によるアルミナ層の絶縁破壊を起こさないよう0.05
〜1.0mmの厚みが好ましく、アルミナのコーティングに
よる電力効率の低下を抑えるため0.05〜0.5mmの厚みが
より好ましい。
【0009】図2に示したパックトベッドタイプリアク
タでは、両電極1、2の間に粒状強誘電体物質(3)とアル
ミニウム含有酸化物(4)の混合物を充填したものであ
る。リアクタがステンレスで構成されるステンレスリア
クタの充填法については、内部にアルミニウム含有酸化
物と比誘電率100〜15000の強誘電物質を1: 9から5:5の
体積比で物理的に混合し、電極間に充填して用いる。
【0010】図1に例示したようにコーティングする代
わりに図2に例示のパックトベッドリアクタでは強誘電
体とアルミニウム含有酸化物を混合状態で存在させる。
ここで、強誘電体物質の比誘電率は、室温で100〜15,00
0が好ましく、1,100から10,000がより好ましい。アルミ
ニウム含有酸化物と強誘電体物質の混合比率は体積比で
1:9〜5:5が好ましく、1:9〜3:7がより好ましい。混合す
る際に、アルミニウム含有酸化物が少なすぎるとアルミ
ニウム含有酸化物の効果が発揮できない。また、多すぎ
ると低い電圧(エネルギー)ではプラズマが発生しなく
なり、高い電圧では装置がショートする等、持続的なプ
ラズマを発生することができない。
【0011】図3に例示したバリアタイプリアクタでは
外側の電極の内側に石英管(10)が挿入されている。図2
に例示した構成と同様に、両電極1、2の間にアルミニウ
ム含有酸化物(4)を充填したものである。リアクタがガ
ラスで構成されるガラス製リアクタの充填法について
は、その内部にアルミニウム含有酸化物を充填して用い
る。プラズマ発生に強誘電体を必要としないバリアタイ
プリアクタの場合は、電極間にアルミニウム含有酸化物
を充填することにより、上記リアクタと同様の性能が得
られる。
【0012】図1〜図3において、矢印aは排ガスの流入
経路を示し、矢印bは浄化ガスの流出方向を示す。この
分解装置に導入された排ガスは矢印aの流路で、テフロ
ン製押さえ板7の透孔を通って誘電体物質が充填したプ
ラズマ処理室に導入され、フロン類が分解した後、浄化
ガスが出口側の押さえ板7の透孔から矢印bで示す流れと
して排出される。
【0013】本発明の低温プラズマ分解装置は、放電電
極のアルミナコーティング処理、あるいはアルミニウム
含有酸化物を電極間に充填し、フロン及びフッ素化合物
をプラズマ処理により無害な物質に分解する。この時に
フロンと混合する希釈ガスのアルゴン(Ar)、水蒸気(H
2O)、酸素(O2)、窒素(N2) あるいは水素(H2)中のフロン
類の濃度に特に制限はないが、通常100〜20,000ppm程
度、好ましくは100〜10,000ppmである。
【0014】内部電極1と外部電極2との間に印加する電
圧(電極間1cm当たりの電圧)は、処理するフロン濃度
などによって変わるが、通常1〜10kV/cm、好ましくは1
〜5kV/cmである。上記以外の、本発明に用いるプラズマ
リアクタの基本的構造は、従来と同様のものとすること
ができる。
【0015】本発明によって除去しうるフロン及びフッ
素化合物の例を次にあげるが、これに限定されるもので
はない。 (特定フロン類)クロロフルオロカーボン(CFC) -11, -
12, -113, -114, -115 (代替フロン類)特定フロン以外のCFC、ヒドロクロロ
フルオロカーボン(HCFC) -22, -123, -141b, -142b, -2
25ca, -255cb, 、ヒドロフルオロカーボン(HFC) -134a,
-152a, -32, -125, -143a, -23 (その他のフッ素化合物類) 三フッ化窒素(NF3) 六フッ化硫黄(SF6) パーフルオロカーボン(PFC: CF4, C2F6, C3F8)
【0016】次に本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。図1に示すような電極をアルミナコーティング
したパックトベッドタイプリアクタを用い、強誘電材料
には比誘電率4000、直径2mmのBaTiO3を主成分とする球
状ビーズを充填した。電極間距離1cm、プラズマ処理室
の容積は31.4cm3である。模擬ガスには、フロン-115(20
0ppm C2ClF5)、0.5%の水蒸気(H2O)を含むArガスを100cm
3/minで図1に示すプラズマリアクタへ流通し、電極間に
0〜5kVの電圧を印加した。こうして種々の条件下でのフ
ロンの分解量を測定した。その結果を図6〜8に示した。
図6(C)、図7(C)に示すように本発明のプラズマリアクタ
による分解後の気相の赤外(IR)スペクトルから、フロン
が除去されると同時に有害副生成物の発生が抑制できる
ことが明らかになった。この吸光度から求めた本発明の
プラズマリアクタの反応で発生した各種反応生成物の濃
度は図9に示すように、電極表面をコーティングしない
従来型のリアクタ(図8)では実現できなかった有害副
生成物(COF2、SiF4、HF)の除去が可能となった。
【0017】また、強誘電体とアルミニウム含有酸化物
の混合物を充填したパックトベッドタイプのリアクタ
(図2)及び電極間にアルミニウム含有酸化物を充填した
バリアタイプのプラズマリアクタ(図3)においても図1と
同様の結果が得られた。アルミニウム含有酸化物として
アルミナ(Al2O3)、ゼオライト3A、ゼオライト4A、ゼ
オライト5A、ゼオライト13Xあるいはスピネル(MgAl
2O4)を用いた実験でも同様の結果が得られた。
【0018】
【発明の効果】本発明により、2%(20,000ppm)未満の
フロン或いはフッ素化合物をArあるいはN2気流下でプラ
ズマ分解を行い、高い分解効率を得ると共に、本発明の
アルミナをコーティングさせたリアクタ或いはアルミニ
ウム含有酸化物を充填したリアクタにおいて、有害副生
成物の発生を完全に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミナコートした電極を用いるパッ
クトベッドタイプリアクタの断面図である。
【図2】本発明の強誘電体物質とアルミナの混合物を電
極間に充填したパックトベッドタイプリアクタの断面図
である。
【図3】本発明のアルミナを充填したバリアタイプリア
クタの断面図である。
【図4】従来型低温プラズマリアクタのうちの強誘電体
物質を充填したパックトベッドタイプリアクタの断面図
である。
【図5】従来型低温プラズマリアクタのうちのバリアタ
イプリアクタの断面図である。
【図6】(A)反応前の気相IRスペクトル、(B)従来型及び
(C)本発明での分解処理後の気相IRスペクトルを示す。C
2ClF5 、COF2、及びSiF4はそれぞれ1400〜900cm-1、780
cm-1、及び1030cm-1付近に特徴的な吸収を示す。反応後
には従来型の技術(B)ではCOF2、及びSiF4が生成してい
るが、本発明(C)では生成していない。
【図7】(A)反応前の気相IRスペクトル、(B)従来型及び
(C)本発明での分解処理後の気相IRスペクトルを示す。H
Fは4200〜3800cm-1付近に特徴的な吸収を示す。反応後
には従来型の技術(B)ではHFが生成しているが、本発明
(C)では生成していない。
【図8】C2ClF5の分解率に対する従来型技術を使用した
時の分解生成物を示す。フロンの転化率が大きくなるに
従って、CO、CO2が生成するが、その他にもCOF2の発生
量を伴い、さらに転化率が大きくなるとHFやSiF4の発生
を伴う。
【図9】C2ClF5の分解率に対する本発明を使用した時の
分解生成物を示す。フロン転化率が大きくなると従来型
でも見られたようにCOとCO2の生成量は増大したが、有
害副生成物であるCOF2、SiF4、HFの発生が完全に抑制さ
れた。
【符号の説明】
1 内部電極 2 外部電極 3 粒状強誘電体物質 4 アルミニウム含有酸化物 5 電源 6 テフロン製キャップ 7 テフロン製押さえ板 8 O-リング 9 アルミナコーティング層 10 石英(ガラス)管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 19/00 - 19/32

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高電圧が印加される両電極間にフロン或い
    はフッ素化合物を含む排ガスを流して無害な物質に分解
    する低温プラズマ分解装置において、両電極の間に粒状
    強誘電体物質が充填されると共に、両電極の対向面側に
    それぞれアルミナコーティング層を設けたことを特徴と
    する低温プラズマ分解装置。
  2. 【請求項2】高電圧が印加される両電極間にフロン或い
    はフッ素化合物を含む排ガスを流して無害な物質に分解
    する低温プラズマ分解装置において、両電極の間に粒状
    強誘電体物質とアルミニウム含有酸化物の混合物を充填
    したことを特徴とする低温プラズマ分解装置。
  3. 【請求項3】高電圧が印加される両電極間にフロン或い
    はフッ素化合物を含む排ガスを流して無害な物質に分解
    する低温プラズマ分解装置において、外側の電極の内側
    に石英管が挿入すると共に、両電極の間にアルミニウム
    含有酸化物を充填したことを特徴とする低温プラズマ分
    解装置。
  4. 【請求項4】フロン或いはフッ素化合物を低温プラズマ
    により無害な物質へ分解する低温プラズマ分解方法にお
    いて、放電電極をアルミナコーティングするか、或いは
    放電電極間にアルミニウム含有酸化物を共存させること
    を特徴とする低温プラズマ分解方法。
  5. 【請求項5】前記放電電極のアルミナコーティングは、
    反応気体と直接接触しないよう両電極に0.05〜1.0mmの
    厚みで均一にコーティングすることを特徴とする請求項
    4に記載の低温プラズマ分解方法。
  6. 【請求項6】ステンレスリアクタの充填法については、
    内部にアルミニウム含有酸化物と比誘電率100〜15000の
    強誘電物質を1:9から5:5の体積比で物理的に混合し、電
    極間に充填して用いることを特徴とする請求項4に記載
    の低温プラズマ分解方法。
  7. 【請求項7】ガラス製リアクタの充填法については、そ
    の内部にアルミニウム含有酸化物を充填して用いること
    を特徴とする請求項4に記載の低温プラズマ分解方法。
  8. 【請求項8】アルミニウム含有酸化物がアルミナ(Al2O
    3)、ゼオライト3A、ゼオライト4A、ゼオライト5A、ゼ
    オライト13X及びスピネル(MgAl2O4)から選ばれた少な
    くとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の低
    温プラズマ分解方法。
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