JP3268159B2 - 塩水涵養井戸及びそのさく井方法並びに地下深層海水取水方法 - Google Patents

塩水涵養井戸及びそのさく井方法並びに地下深層海水取水方法

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JP3268159B2 JP07836195A JP7836195A JP3268159B2 JP 3268159 B2 JP3268159 B2 JP 3268159B2 JP 07836195 A JP07836195 A JP 07836195A JP 7836195 A JP7836195 A JP 7836195A JP 3268159 B2 JP3268159 B2 JP 3268159B2
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  • Investigation Of Foundation Soil And Reinforcement Of Foundation Soil By Compacting Or Drainage (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地下深層海水を涵養し
取水するための塩水涵養井戸及びそのさく井方法、特に
陸地の表流水の地下浸透による汚染や淡水の進入を防止
するようにした塩水涵養井戸及びそのさく井方法、並び
に地下深層海水取水方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、深層海水が、魚介類等の養殖や海
洋療法等に非常に有効であると注目され、その利用方法
が研究されてきている。しかしながら、深層海水は、沖
合の深い海底から海水を取水しなければならないので、
取水基地の建設や陸上への輸送等多大な設備及びランニ
ングコストを有する等の問題点があり、まだその実用化
は図られていない。本発明者は、先に陸地深層部に海面
下まで延びた珊瑚礁石灰岩層を有する石灰岩層が分布す
る陸地を掘削して、珊瑚礁からなる透水性の高い石灰岩
や砂礫状未固結層を濾過体として自然浄化され、しかも
太陽光が地下深層部まで届かないため光合成が行われ
ず、且つ年間ほぼ一定した水温を有する浸透地下海水を
取水し、地上に設置した養殖タンク又は養殖池に放流し
て、海生生物の養殖を行うことを提案した(特開平5−
39272号)。
【0003】上記提案で得られた浸透地下深層海水は、
無菌状態で、且つ塩分の濃い海水であり、さらに水温が
年間を通してぼぼ22℃〜24℃で一定である、という
沖合の海底から得られる深層海水と同等以上の優れた特
性を有している。そのような特性を有する地下深層海水
は、前記した海生生物の養殖への利用のみならず、近時
注目されているアトピー性皮膚炎等の海水療養の医療分
野、あるいは食品製造分野等、多くの分野での利用が期
待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の地下深層海水の
採取は、陸地深層部に海面下まで延びた珊瑚礁石灰岩層
を有する石灰岩層が分布する陸地をさく井することによ
って得られる。しかしながら、従来のさく井法によって
さく井すると、さく井工事期間中に陸地の表流水の地下
浸透により地上の雑菌・農薬等の有害物質が井戸内に浸
入して汚染され、清浄無菌海水を採取することができな
いという問題点がある。また、降雨による地下淡水層の
変化で淡水層、汽水層が変化し、塩水に変化を及ぼすと
いう問題がある。さらに、揚水により、淡水と塩水の境
界面が変動を来し、淡水と塩水の平衡バランスを崩し、
常時イオン濃度の安定した塩水の採取ができないという
問題もある。
【0005】そこで、本願発明は、地上の雑菌・農薬等
の有害物の浸入を阻止でき、また降雨による淡水の井戸
内への浸入を阻止でき、且つ揚水により塩水の平衡バラ
ンスを崩すことがなく、常時イオン濃度が高く安定し、
且つ無菌状態に近い地下深層海水が取水可能な塩水涵養
井戸及びそのさく井方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】沖縄県地方の地下基盤
は、珊瑚礁からなる特殊な地質を呈し、多くの地区にお
いて石灰岩層が分布する。その中で特殊な例として陸地
深層部の珊瑚礁堆積物の一部が海面下まで延びて地下海
水盆となっているのが確認されている。この地下海水盆
は、殆どが珊瑚礁等の有孔虫石灰岩によって埋積され、
塊状及び砂礫状、未固結と不規則な層をなし、透水性が
高い。この地下海水盆に浸入した海水は、本発明者のボ
ーリング調査によると電気伝導度が38000ミクロン
モーパーメートル以上もあり、水温が年間を通してほぼ
一定で22℃〜24℃であった。また、この地下深層海
水は、石灰岩層を濾過体として長年の間に浸透して自然
浄化された地下浸透海水であり、太陽光が届かないので
光合成による有機物合成が行われず、無菌の状態であ
る。従って、該地下深層海水を低コストで常に一定濃度
で採取できるようにすることによって、その海水を種々
の分野への利用が可能となる。本発明は、このような背
景のもとで、地下深層海水を有効に採取する方法を種々
研究した結果達成したものである。
【0007】即ち、本発明の塩水涵養井戸は、不透水性
の外井戸用ケーシングで形成された外井戸、上端部が前
記外井戸用ケーシングの下方部内との間に隙間を有して
嵌合し、該隙間には防水材が充填され、下端部が一定濃
度の地下深層海水が滲出する塩水帯水層に達するように
設けられ、該塩水帯水層内の一定区間に取水孔が設けら
れた内井戸用ケーシングで形成された内井戸とからな
り、前記外井戸及び前記内井戸が淡水層及び汽水層から
遮断されていることを特徴としている。前記外井戸は、
その下端が少なくとも汽水層に達する長さに形成され、
前記内井戸用ケーシングは、下端が不透水性地下基盤に
達する長さに形成されているのが望ましい。前記外井戸
用ケーシングの上方外部の石灰岩層と表土層との間に止
水層を形成するのが望ましい。
【0008】本発明の塩水涵養井戸は、地層によっては
必ずしも外井戸と内井戸に分ける必要はなく、同径のケ
ーシングで連続的に形成することもできる。即ち、下端
部が一定濃度の地下浸透海水が滲出する塩水帯水層に達
するように設けられ不透水性のケーシングで形成し、該
ケーシングの上方側外周部と掘削孔内周面との間に淡水
が塩水帯水層に浸入するのを防止する防水材を充填し、
且つ前記塩水帯水層の一定区間に複数個の取水孔を形成
して、井戸内を一定濃度の塩水が滲出する塩水帯水層の
みと連通し、淡水層及び汽水層から遮断するように構成
しても良い。前記防水材充填区間としては、少なくとも
固結層に達するまでが望ましく、また前記防水材として
は、セメントモルタル・ベントナイトスラリー等が採用
できる。
【0009】本発明の塩水涵養井戸のさく井方法は、表
土を除去し、石灰岩の表面に止水層を形成する前処理を
行ってから、少なくとも塩水帯水層内に達する孔を掘削
し、該孔内に、一定濃度の塩水が滲出する位置に取水孔
が設けられ他の部分が不透水性になっているケーシング
を固定するさく井工程からなることを特徴とする。前記
さく井工程が、外井戸孔を掘削して該外井戸孔に不透水
性の外井戸用ケーシングを挿入して固定して外井戸を形
成する外井戸形成工程、該外井戸の内の下端部から該外
井戸より小径の内井戸孔を掘削して、該内井戸孔内に下
端部が一定濃度の地下深層海水が滲出する塩水帯水層に
達し、該塩水帯水層内のストレーナ区間に取水孔が設け
られた内井戸用ケーシングを固定する内井戸形成工程と
からなることによって、より容易に且つ材料費も節約す
ることができる。
【0010】前記内井戸用ケーシングの上部外周面と外
井戸用ケーシングの下端部内周面との隙間に防水用モル
タルを流入して内井戸ケーシングと外井戸ケーシングの
嵌合部の止水処理を行なうことが望ましい。
【0011】より望ましい本発明の塩水涵養井戸のさく
井方法は、ボーリングにより掘削場所の地盤を採取して
地質構造を調べる試堀工程、該試堀した井戸の水の電気
伝導度を深度毎に測定し、静止状態での自然水位、淡水
層及び塩水帯水層の厚さを求める電気伝導度測定工程、
試堀した井戸の水を段階的に揚水し、水位の降下、水の
伝導度の変化から、塩水涵養井戸の直径、深度、揚水ポ
ンプ容量等を求める揚水試験工程、前記試堀工程、電気
伝導度測定工程及び揚水試験工程から得られたデータを
基に本掘削する本掘削工程とからなることを特徴とす
る。
【0012】
【作用】本発明は、地下深層の珊瑚礁からなる透水性の
高い石灰岩や砂礫状未固結層を濾過体として自然浄化さ
れ、且つ太陽光が地下深層部まで届かないため光合成が
行われていない浸透海水を取水して使用するので、海か
ら通常の海水を導入する方式に比べて取水後の濾過設備
による海水の濾過処理が不要であり、設備費及び維持管
理費のコスト削減ができる。
【0013】本発明の塩水涵養井戸は、淡水層及び汽水
層とは完全に遮断され、所定濃度の深層海水層であるス
トレーナ区間からのみ井戸内に水が滲出するようになっ
ているので、常に一定の塩分濃度を有する海水地下深層
海水を安定して取水することができる。特に、井戸内に
地表流水の地下浸透により地上の雑菌や農薬等の有害物
質の進入を阻止する前処理を行なうことによって、さく
井中に井戸内が汚染されることがなく、清浄な海水が得
られる。しかも、淡水層に位置するケーシングの外周部
と掘削内周面との間には、モルタル等の防水材を充填し
て防水処理を施してあるので、たとえ塩水の汲み上げに
より塩水帯水層の水位が低下した場合でも、淡水層の淡
水がケーシング外周部を伝って塩水帯水層に浸入するこ
とを防止することができ、常に一定濃度の塩水を取水す
ることができる。
【0014】また、さく井工程も塩水帯水層の上部に達
するまでの外井戸掘削工程と、それ以後の内井戸掘削工
程に分け、淡水層及び汽水層を貫通する外井戸を掘削し
て外井戸用ケーシングで淡水層及び汽水層を完全にシー
ルしてから、内井戸を掘削するので、内井戸掘削中に淡
水及び汽水が井戸内に浸入することはない。
【0015】外井戸と内井戸に形成して、外井戸用ケー
シングだけを最低限必要なケーシング径にして、内井戸
用ケーシナングの直径を小さくすることができるので、
さく井コストを低減させることができる。
【0016】さらに、試堀工程、電気伝導度測定工程、
及び揚水試験工程を経て、これらの工程から得られた地
質構造、電気伝導度、自然水位、淡水層及び塩水帯水層
の厚さ、水位の降下、水の伝導度の変化等のデータを基
に本掘削することによって、降雨による地下淡水層の季
節変化があっても、常に一定濃度の海水を採取すること
ができ、且つ揚水により淡水と塩水が境界面の変動をき
たし淡水と塩水の平衡バランスを崩すことがなく、常時
イオン濃度の安定した一定量の塩水を取水することがで
きる塩水涵養井戸が得られる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。本実施例
の塩水涵養井戸は、次のような試掘、電気伝導度測定工
程、揚水試験、及び本掘削の各工程を経てなされる。
【0018】試掘工程 図4は本発明が目的とする地下深層海水が取水できるよ
うな海岸地帯の地質構造を模式的に示しているものであ
り、このような海岸地帯では、一般に淡水層30の下に
陸地に浸透した海水を含む塩水帯水層32がある。淡水
層に含まれている淡水は海洋に流出するが、この淡水の
下方を塩分の濃い海水が海から陸地に向かってクサビ状
に浸入している。また、淡水層と塩水帯水層との間には
汽水層31がある。該汽水層の厚さは、淡水と塩水のそ
れぞれの流体圧によって異なり、不規則なイオン濃度の
変化がある。淡水と塩水は、汽水層を介して動的平衡を
保っており、塩水は常に一定の濃度を保っている。塩水
帯水層32の下は不透水性地下基盤33となっており、
その上面が海34の下深層に達している。
【0019】以上のような地質構造を有する場所を、陸
地の種々の場所で試堀を行い発見する。試掘は、ボーリ
ングによって地質を採取して地質構造を調べ、その断面
が判る柱状図を作成する。図3(b)は、柱状図の1例
を示し、該柱状図によれば、該試掘場所の地質構造は、
ごく浅い表土層40を除けば珊瑚礁石灰岩層41となっ
ており、該珊瑚礁石灰岩層41が砂岩状42、塊状4
3、礫状44となって種々の入り込んだ状態で層を形成
していることが判る。
【0020】電気伝導度測定工程 次に、所定深度毎に電気探査して各層から滲出する水の
電気伝導度を測定し、前記柱状図を基に各層の水質の解
析を行う。これにより、静止状態の井戸内の自然水位に
おける淡水層、汽水層、及び塩水帯水層の厚さ等が明ら
かになる。本発明では、その目的とする海水が得られる
位置、即ち電気伝導度が50,000ミクロンパーメン
ト程度の一定の高電気伝導度を示す塩水帯水層の深度と
その厚さを探知し、該区間を取水位置として、ストレー
ナ区間として設定する。
【0021】本実施例の場合、ほぼ15mまでは電気伝
導度が低く淡水状態であるが、20m以上の深さから滲
出する水は、電気伝導度が極めて高い海水となってお
り、40m以上では50,000ミクロンモーパーメー
トルと一定の高電気伝導度の海水となっていた。従っ
て、この試堀位置では、40m以上の深さの地下深層海
水のみを取水することによって、所望の地下深層海水が
得られる。
【0022】揚水試験工程 試掘した井戸の水を所定時間連続して揚水し、水位の降
下や汲み揚げた水の電気伝導度の変化等を調べる。該試
験結果から、井戸内に各層から滲出する塩水の浸透係数
を算出することによって、上方の淡水層と下方の塩水帯
水層の動的平衡が崩れないで一定濃度の塩水が取水でき
る場所の適正容量(m3/日)が判る。そして、その結
果から、目的とする塩水涵養井戸の直径、深度及び揚水
ポンプ容量、及びストレーナ区間におけるストレーナの
取水口の孔数等を決定する。
【0023】本掘削工程 本格的な塩水涵養井戸は、さく井に長期間を要し、且つ
多量の水を使用する。そのため、工事中に放流される水
や降雨による地下浸透水によって地表の有害物質や雑
菌、農薬等が井戸周辺の地下淡水層を通じ井戸内に浸入
してくる。それを阻止する為に、さく井工事前に次のよ
うな手順で前処理工事を行う。
【0024】さく井しようとする場所に、略4m×4m
程度の面積の表土15をその下の珊瑚礁石灰岩が露出す
るまで取り除き、珊瑚礁石灰岩の表面を一様にベントナ
イトやセメント等で覆って止水層4を形成し、その上に
表土を埋め戻し、井戸を中心に周囲に水勾配をつけて填
圧する。さらに、填圧した表土の上に、砂利を敷いて付
き固め表面を平滑にし、排水条件を良好ならしめる。
【0025】以上の前処理工事を行って、試掘データに
基づいて割り出された所定の直径を有する外井戸1を、
該井戸に挿入する外井戸用ケーシング2の外周部に約5
0mm程度の隙間があくような直径で掘削する。外井戸を
塩水帯水層12に達するまで掘削したら、外井戸用ケー
シング2を挿入する。挿入された外井戸用ケーシング2
と掘削面との隙間にペースト状のベントナイト3を流し
込みながら、ケーシングの外側面と石灰岩の掘削面に空
隙が生じないように前記ケーシング2を振動させ、密に
充填する。これにより、降雨による表流水及び淡水層内
の淡水が井戸に浸入することが防止される。
【0026】次に、外井戸1の中心に揚水試験によって
決定された所定直径の内井戸5を、内井戸用ケーシング
6の外周部に約100mm程度の隙間があくような直径
で、掘削する。該内井戸5は、塩水帯水層12の上位か
ら掘削し、前記試掘及び揚水試験で得られたストレーナ
区間13に達する深度まで掘削する。さらに、経年変化
によりストレーナの孔から井戸内に細砂が堆積するのに
備えて、ストレーナ区間13の下端より下方に所定深さ
でサンドポケット区間14を設ける。次いで、ストレー
ナ区間13に、取水孔7が明けられた内井戸用ケーシン
グ6を挿入し、外井戸用ケーシング2と内井戸用ケーシ
ング6の隙間から防水モルタル8を充填し、空隙を埋め
て内井戸ケーシング6を固定する。
【0027】なお、図1に示す実施例では、掘削時の掘
削機設置場所、及び掘削後の揚水ポンプ置場として、前
記表土を除去して形成された止水層4の上に所定面積を
有するコンクリート凹枠槽9を形成してあるが、該コン
クリート凹枠槽9は必ずしも必要でなく、埋め戻した表
土面に揚水ポンプ等を設置してもよい。
【0028】以上のようにさく井された塩水涵養井戸1
0は、淡水層及び汽水層とは完全に遮断され、所定濃度
の深層海水層であるストレーナ区間13からのみ井戸内
に水が滲出するようになっている。しかも、さく井工程
も塩水帯水層の上部に達するまでの外井戸掘削工程と、
それ以後の内井戸掘削工程に分け、淡水層及び汽水層を
貫通する外井戸を掘削して外井戸用ケーシングで淡水層
及び汽水層を完全にシールしてから、内井戸を掘削する
ので、内井戸掘削中に淡水及び汽水が井戸内に浸入する
ことはない。従って、掘削終了後に井戸上部の水を大量
に汲み出さなくても、所定の一定濃度の塩水が得られ、
以後はストレーナ層から滲出する一定濃度の地下深層海
水の自然水位が本来の塩水汽水平衡線L2より上位位置
で安定し、常時一定濃度の塩水を該位置で取水すること
が可能となる。
【0029】以上のようにしてさく井が終了すると、図
2(a)に示すように、所定容量のポンプ20によっ
て、地上に設置したタンク21内に揚水して貯留し、海
洋療法等に利用することができる。本実施例では、外井
戸と内井戸に形成して、地下深層海水の水位が外井戸ま
で達することによって、取水するためのパイプやポンプ
等を挿入するために、外井戸用ケーシングだけを最低限
必要なケーシング径にして、内井戸用ケーシナングの直
径を小さくすることができるので、さく井コストを低減
させることができる。なお、取水の方式は、必ずしも地
上に設置したポンプに限らず、図2(b)に示したよう
な水中ポンプ22を採用しても良い。また、揚程が大き
い場合は、中間にもポンプ設置する等種々の対応が考え
られる。
【0030】図5は、本発明の他の実施例にかかる塩水
涵養井戸であって、本実施例の塩水涵養井戸50では同
径のケーシング51のみで形成され、少なくとも地層が
固結層43に達するまでは、ケーシング51の外周と掘
削内面との間にベントナイトスラリーからなる防水材5
2を充填して、ケーシング表面を伝って淡水層から汽水
層及び塩水帯水層に淡水が浸入することを防止してあ
る。本実施例の他の構成は前記実施例と同様であるの
で、前記実施例と同一符号を付し詳細な説明は省略す
る。
【0031】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の塩水涵養井戸及びそのさく井方法並びに地下深層海水
取水方法は次のような格別の効果を奏するものである。
本発明によれば、地下深層の珊瑚礁からなる透水性の高
い石灰岩や砂礫状未固結層を濾過体として自然浄化さ
れ、且つ太陽光が地下深層部まで届かないため光合成が
行われず無菌であり且つ塩分の濃度の濃い浸透海水であ
る地下深層海水を陸上で容易に得ることができる。従っ
て、沖合の海底から取水する海洋深層海水に比べて、非
常に安価に良質の地下深層海水を得ることができる。ま
た、陸上の井戸であるから維持管理も容易である。
【0032】本発明の塩水涵養井戸は、淡水層及び汽水
層とは完全に遮断され、所定濃度の深層海水層からのみ
井戸内に水が滲出するようになっているので、常に一定
の塩分濃度を有する地下深層海水を安定して取水するこ
とができる。特に、井戸内に地表流水の地下浸透により
地上の雑菌や農薬等の有害物質の進入を阻止する前処理
を行なうことによって、さく井中に井戸内が汚染される
ことがない。さらに、ケーシング外周面に防水材を充填
してあるので、取水により塩水帯水層の水位が低下して
も帯水層から塩水帯水層にケーシング外表面を伝って淡
水が浸入することを防止でき、常に一定濃度の塩水を採
取することができる。
【0033】また、外井戸掘削工程と内井戸掘削工程に
分けて掘削しているので、内井戸掘削中に淡水及び汽水
が井戸内に浸入することはない。
【0034】外井戸と内井戸に形成して、外井戸用ケー
シングだけを最低限必要なケーシング径にして、内井戸
用ケーシナングの直径を小さくすることができるので、
さく井コストを低減させることができる。
【0035】さらに、降雨による地下淡水層の季節変化
があっても、常に一定濃度の海水を採取することがで
き、且つ揚水により淡水と塩水が境界面の変動をきたし
淡水と塩水の平衡バランスを崩すことがなく、常時イオ
ン濃度の安定した一定量の塩水を涵養し取水することが
できる塩水涵養井戸が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る塩水涵養井戸の縦断面図
である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の実施例に係る塩水
涵養井戸の取水方式を示す塩水涵養井戸の縦断面図であ
る。
【図3】(a)は試堀場所の地下水の深度に対する電気
伝導度変化を示す線図、(b)は該場所の地層構造を示
す地層柱状図である。
【図4】地下深層海水の採取できる場所の地層構造を示
す模式図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る塩水涵養井戸の縦断
面図である。
【符号の説明】
1 外井戸 2 外井戸用ケー
シング 4 止水層 5 内井戸 6 内井戸用ケーシング 7 取水孔 8 防水モルタル 10、50 塩水涵
養井戸 12 塩水帯水層 13 ストレーナ
区間 13 サンドポケット区間 15 表土 22 水中ポンプ 51 ケーシング

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩水帯水層を有する地盤にさく井される
    塩水涵養井戸であって、不透水性の外井戸用ケーシング
    で形成された外井戸、上端部が前記外井戸用ケーシング
    の下方部内との間に隙間を有して嵌合し、該隙間には防
    水材が充填され、下端部が一定濃度の地下深層海水が滲
    出する塩水帯水層に達するように設けられ、該塩水帯水
    層内の一定区間に取水孔が設けられた内井戸用ケーシン
    グで形成された内井戸とからなり、前記内井戸用ケーシ
    ングは、下端が不透水性地下基盤に達する長さに形成さ
    れ、前記外井戸及び前記内井戸が淡水層及び汽水層から
    遮断されていることを特徴とする塩水涵養井戸。
  2. 【請求項2】 前記外井戸用ケーシングの上方外部の石
    灰岩層と表土層との間に止水層を形成した請求項記載
    の塩水涵養井戸。
  3. 【請求項3】 表土を除去し、石灰岩の表面に止水層を
    形成する前処理を行ってから、少なくとも塩水帯水層内
    に達する孔を掘削し、該孔内に、一定濃度の塩水が滲出
    する位置に取水孔が設けられ他の部分が不透水性になっ
    ているケーシングを固定するさく井工程からなることを
    特徴とする塩水涵養井戸のさく井方法。
  4. 【請求項4】 前記さく井工程が、外井戸孔を掘削して
    該外井戸孔に不透水性の外井戸用ケーシングを挿入して
    固定して外井戸を形成する外井戸形成工程、該外井戸の
    内の下端部から該外井戸より小径の内井戸孔を掘削し
    て、該内井戸孔内に下端部が一定濃度の地下深層海水が
    滲出する塩水帯水層に達し、該塩水帯水層内のストレー
    ナ区間に取水孔が設けられた内井戸用ケーシングを固定
    する内井戸形成工程とからなる請求項記載の塩水涵養
    井戸のさく井方法。
  5. 【請求項5】 前記内井戸用ケーシングの上部外周面と
    外井戸用ケーシングの下端部内周面との隙間に防水用モ
    ルタルを流入して内井戸ケーシングと外井戸ケーシング
    の嵌合部の止水処理を行った請求項記載の塩水涵養井
    戸のさく井方法。
  6. 【請求項6】 ボーリングにより掘削場所の地盤を採取
    して地質構造を調べる試堀工程、該試堀した井戸の水の
    電気伝導度を深度毎に測定し、静止状態での自然水位、
    淡水層及び塩水帯水層の厚さを求める電気伝導度測定工
    程、試堀した井戸の水を揚水し、水位の降下、水の伝導
    度の変化から、塩水涵養井戸の直径、深度、揚水ポンプ
    容量等を求める揚水試験工程、及び前記試堀工程、電気
    伝導度測定工程及び揚水試験工程から得られたデータを
    基に本掘削する本掘削工程とからなることを特徴とする
    塩水涵養井戸のさく井方法。
  7. 【請求項7】 塩水帯水層を有する地盤に、少なくとも
    塩水帯水層内に達する孔を掘削し、該孔内に、一定濃度
    の塩水が滲出する位置に達するまでは不透水性になって
    いるケーシングを固定して、地下深層海水のみを取水す
    ることを特徴とする地下深層海水取水方法。
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