JP3260823B2 - 加硫機の温度制御装置 - Google Patents

加硫機の温度制御装置

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  • Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)
  • Heating, Cooling, Or Curing Plastics Or The Like In General (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばゴムの加硫機の
熱板の温度制御に用いて好ましい温度制御装置に関し、
特に金型と熱板との間に生じる伝熱遅延を考慮して熱板
の温度制御を行うようにした発明である。
【0002】
【従来の技術】ゴムの加硫処理は、それぞれ熱板が取り
付けられた上下の金型内に被加硫物を投入して行われ
る。かかる加硫処理においては、被加硫物の加熱条件と
保持時間の条件がきわめて重要となるため、従来より加
硫機の温度制御には種々の方法が試みられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
温度制御としてPID制御(比例・積分・微分制御)や
ファジィ制御を用いたものも知られているものの、この
種の制御は熱源の温度を直接検出して制御するものであ
った。したがって、加硫機のように熱源となる熱板と被
加硫物に直接熱を伝達する金型との間に伝熱遅延が生じ
ると、最適な加硫条件を維持することができなかった。
すなわち、熱源から直接被加熱物に熱を伝達する装置で
は、上述したPID制御やファジィ制御はその機能を充
分に発揮するが、熱板と金型の間には常に温度差が生じ
るため、そのままPID制御やファジィ制御を適用する
ことができなかった。また、金型内に被加硫物を投入し
て加硫処理を施すにあたり、加硫処理品質と生産性とを
両立させようとすると、金型の温度を最適な温度まで急
速に上昇させ、これを一定時間保持しながら加硫を行う
必要があるが、熱源である熱板と被加硫物に熱を伝達す
る金型との温度差があるため、加熱温度を一定に保持し
ながら加硫処理時間を短縮するのは甚だ困難な状況にあ
った。
【0004】さらに、ゴムの加硫機は被加硫物を投入し
たり、加硫処理を終えた被加硫物を取り出したりする際
に熱の出入りが生じ、しかも、被加硫物の容積が増加す
ればするほど熱量の差が大きくなるので、被加硫物の仕
様などに拘らず、如何なる状況に対しても加硫温度を一
定に保持する制御装置の開発が希求されていた。
【0005】本発明は、このような従来技術の問題点に
鑑みてなされたものであり、加硫条件を遵守しながら加
硫処理の時間を短縮すると共に、金型温度の変化量の大
小に拘らず適用できる加硫機の温度制御装置を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の加硫機の温度制御装置は、被加熱物を金型
内に投入し、熱板により前記金型を介して前記被加熱物
を加熱処理する加硫機において、前記金型の実際の温度
を検出する金型温度センサと、 前記熱板の実際の温度
を検出する熱板温度センサと、 前記熱板の設定温度・
前記熱板温度センサにより検出された熱板の実際の温度
・前記金型の設定温度を記憶する記憶部と、前記熱板温
度センサにより検出された前記熱板の実際の温度と前記
記憶部に記憶されている前記熱板の設定温度との差温を
計算する温度偏差計算部と、 前記熱板温度センサによ
り検出された前記熱板の実際の温度と前記記憶部に記憶
されている前記熱板の実際の温度のうち一定時間前の実
際の温度との差温を計算する温度変化計算部と、 前記
温度偏差計算部により求められた温度偏差と前記温度変
化計算部により求められた温度変化に基づき、予め決め
られたファジィルールとメンバーシップ関数によりファ
ジィ推論を実行して推論値を求めるファジィ推論部と、
前記ファジィ推論部により求められた推論値に基づい
て前記熱板の作動時間を演算し、この演算結果により定
められる制御信号を前記熱板の制御部に出力する出力値
計算部と、 前記金型温度センサにより検出された実際
の金型温度と前記記憶部に記憶されている金型の設定温
度とを比較し、予め決められた制御則にしたがって前記
記憶部に記憶されている熱板の設定温度を制御する熱板
設定温変更部とを有することを特徴としている。
【0007】
【作用】本発明では、熱板により金型を介して被加熱物
を加熱処理する加硫機においては、温度変化が大きい金
型温度を一定温度に維持制御するよりは熱板の温度を一
定温度に制御する方が加熱処理の条件に対して有効であ
る点に着目し、まず熱板温度センサと記憶部からの情報
に基づいて、温度偏差計算部と温度変化計算部で温度偏
差(熱板の実際の温度と熱板の設定温度との差温)と温
度変化(熱板の実際の温度と熱板の実際の温度のうち一
定時間前の実際の温度との差温)とを求める。そして、
この温度偏差と温度変化に基づき、ファジィ推論部で、
予め決められたファジィルールとメンバーシップ関数に
よりファジィ推論を実行して推論値を求め、出力値計算
部で熱板の作動時間を演算し、この演算結果により定め
られる制御信号を熱板の制御部に出力する。このファジ
ィ制御を行うことにより、金型の温度上昇速度を最短時
間で達成することができると共に、金型の実際の温度が
オーバーシュートすることを防止でき、比較的滑らかな
温度変化を行う加硫機にとって好ましい制御となる。
【0008】また、熱板設定温変更部で、実際の金型温
度と金型の設定温度とを比較し、予め決められた制御則
にしたがって記憶部に記憶されている熱板の設定温度を
制御する。これにより、この温度変動に応じて熱板の設
定温度を逐次変更して、この変更後の熱板の設定温度を
用いて温度偏差をファジィ推論するため、金型温度の変
動が大きくても、状況の変動に適正に対応して最適な温
度制御を行うことができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説
明する。図1は本発明の一実施例に係る加硫機の熱板温
度制御装置を示すブロック図、図2は同実施例のファジ
ィ推論部におけるファジィルールを示す図、図3は同実
施例のファジィ推論部におけるメンバーシップ関数を示
すグラフであり、図3(A)は温度偏差、図3(B)は
温度変化、図3(C)は熱板のデューティ比の操作量の
メンバーシップ関数を示すグラフ、図4は図3に示す3
つのメンバーシップ関数から制御量を求める方法(重心
法)を示すグラフ、図5は同実施例に係る熱板設定温変
更部の制御則を示す図である。
【0010】まず、本実施例の熱板温度制御装置を適用
する加硫機は、図1に示すように被加硫物(加熱物)で
あるゴム材1を投入する上型2および下型3を有してお
り、これら上下の金型2,3を型締めしたときに金型内
部にキャビティ15が形成される。そして、このキャビ
ティ15の形状によってゴム材1は加硫処理が施されな
がら適宜所望の形状に成形されるようになっている。
【0011】上型2には上部熱板4が固定されており、
下型3には下部熱板5が固定されている。これらの熱板
4,5に熱板制御部12から制御信号を出力することに
よりそれぞれの金型2,3に熱を伝達して加硫処理を行
う。上部熱板4および下部熱板5は、熱板制御部12か
らの制御信号によって加熱する時間と加熱を停止する時
間との比率、いわゆるデューティ比が調節される。すな
わち、一定時間間隔で熱板4,5の作動/停止を繰り返
すことにより金型2,3を一定温度まで上昇させ、この
温度を保持する。
【0012】上部熱板4または下部熱板5の少なくとも
何れか一方(本実施例では上部熱板4)には、本実施例
に係る熱板温度センサ7が取り付けられており、上部熱
板4の実際の温度th を検出すると共に、この熱板温度
センサからのデータ(上部熱板の実際温度th )は記憶
部8と温度偏差計算部9、および温度変化計算部10に
それぞれ出力されるようになっている。本実施例の熱板
温度センサ7としては、例えば熱起電力を変換物理量と
した熱電対を用いることが取り扱いの点で好ましいとい
えるが、本発明の熱板温度センサ7はこの熱電対にのみ
限定されることなく、他の温度センサ、例えば温度精度
や分解能が必要な場合には電気抵抗を変換物理量とした
サーミスタあるいは測温抵抗体などを用いても良い。こ
れら熱板温度センサ7は、使用される熱板4,5の検出
温度範囲や必要な測定精度・分解能などの諸条件により
適宜選択すれば良い。なお、本実施例では熱板温度セン
サ7を上部熱板4にのみ取り付けているが、下部熱板
5、あるいは上下熱板4,5の両方に設けても良い。
【0013】本実施例の熱板温度制御装置は記憶部8を
備えており、上述した上部熱板4の実際の温度th を記
憶しておくメモリ8bと、図示しない外部設定装置によ
り入力される熱板の設定温度Th を記憶しておくメモリ
8aと、同じく図示しない他の外部設定装置により入力
された金型の設定温度Tm を記憶しておくメモリ8cと
から構成されている。熱板の設定温度Th と金型の設定
温度Tm とを記憶しておくメモリ8a,8cは、少なく
とも現在の設定温度のみを記憶しておけば良いが、熱板
の実際温度th を記憶しておくメモリ8bは、少なくと
も現在の実際温度th と一定時間前の実際温度th-1 と
2つのデータを記憶しておく必要がある。
【0014】また、本実施例の熱板温度制御装置は、温
度偏差δを計算する温度偏差計算部9と、温度変化Δを
計算する温度変化計算部10とを備えており、温度偏差
計算部9には熱板温度センサ7から一定時間間隔をもっ
て現在の熱板の実際温度thが入力され、これと同時に
記憶部8からは現在の熱板の設定温度Th が入力される
ようになっている。そして、熱板の温度偏差δ、すなわ
ち、 熱板の温度偏差δ=熱板の実際温度th − 熱板の設定
温度Th を演算して求める。
【0015】一方、温度変化計算部10には熱板温度セ
ンサ7から一定時間間隔をもって現在の熱板の実際温度
th が入力され、これと同時に、記憶部8のメモリ8b
からは一定時間前の熱板の実際温度th-1 が入力される
ようになっている。そして、熱板の温度変化Δ、すなわ
ち、 熱板の温度変化Δ=熱板の実際温度th − 一定時間前
の熱板の実際温度th-1 を演算して求める。
【0016】また、本実施例に係るファジィ推論部11
は、上述した温度偏差計算部9と温度変化計算部10に
よりそれぞれ求められた温度偏差δおよび温度変化Δに
基づいて、ファジィ推論を実行する。本実施例のファジ
ィ推論は、図2に示すファジィルールと図3(A)
(B)(C)に示すメンバーシップ関数にしたがって実
行される。まず、図2に示すファジィルールについて
は、入力部(前件部)のパラメータとして温度偏差計算
部9から入力された温度偏差δと温度変化計算部10か
ら入力された温度変化Δを用いている。
【0017】そして、温度偏差δについては図3(A)
に示すように、7つのファジィラベルNL,NM,N
S,ZR,PS,PM,PLを用いて、 NL=−10℃以下 NM=−15℃〜 −5℃ NS=−10℃〜 ±0℃ ZR= −5℃〜 +5℃ PS= ±0℃〜+10℃ PM= +5℃〜+15℃ PL=+10℃以上 と定義している。なお、それぞれのファジィラベルは、
NL(ネガティブ・ラージ=マイナス側に大きい)、N
M(ネガティブ・ミドル=マイナス側に中位)、NS
(ネガティブ・スモール=マイナス側に小さい)、ZR
(ゼロ・レベル=変化なし)、PS(ポジティブ・スモ
ール=プラス側に小さい)、PM(ポジティブ・ミドル
=プラス側に中位)、PL(ポジティブ・ラージ=プラ
ス側に大きい)を意味している。
【0018】また、温度変化Δについては図3(B)に
示すように、同じく7つのファジィラベルNL,NM,
NS,ZR,PS,PM,PLを用いて、 NL=−5.0℃以下 NM=−7.5℃〜 −2.5℃ NS=−5.0℃〜 ±0℃ ZR=−2.5℃〜 +2.5℃ PS= ±0℃〜 +5.0℃ PM=+2.5℃〜+7.5℃ PL=+5.0℃以上 と定義している。それぞれのファジィラベルの意味は上
述した温度偏差δの場合と同じである。
【0019】これらの温度偏差δおよび温度変化Δの入
力パラメータが図2に示す組合せである場合、結論部
(後件部)はぞれぞれ同図に示す定義にしたがってファ
ジィ推論が実行される。例えば、図2の第1番目のファ
ジィルールでは、 IF(温度偏差δ=PL AND 温度変化Δ=NS) THEN 熱板の制御量(デューティ比)=NL となる。すなわち、温度偏差δが+10℃以上(実際の
熱板温度th が設定温度Th に対してかなり高温となっ
ている)で、かつ、温度変化Δが−5℃〜0℃(熱板の
実際温度th がやや上昇気味である)である場合は、熱
板の操作量(デューティ比)を−10%以下(熱板の作
動時間をやや短めにする)とする。
【0020】この後件部の定義は、図3(C)に示すよ
うに、熱板制御部12から熱板4,5に出力するデュー
ティ比操作量を7つのファジィラベルNL,NM,N
S,ZR,PS,PM,PLを用いて、 NL=−10%以下 NM=−15%〜 −5% NS=−10%〜 ±0% ZR= −5%〜 +5% PS= ±0%〜 +10% PM= +5%〜 +10% PL=+10%以上 としている。なお、それぞれのファジィラベルの意味は
上述した温度偏差δの場合と同じであるが、ネガティブ
(マイナス側)は熱板の作動時間を停止時間に対して短
くする意味であり、ポジティブ(プラス側)はこの逆の
意味である。
【0021】そして、ファジィルールの前件部に温度偏
差と温度変化の2つのパラメータを入力して図2に示す
ファジィルールにしたがって得られた後件部の結論は、
図4に示すようにMAX−MIN−重心法によって評価
され、最終的な操作量が得られることになる。なお、こ
のMAX−MIN−重心法は、ファジィルールを適用し
て得られた後件部のメンバーシップ関数(図3(C)参
照)の形から最終的な操作量を求めるファジィ制御の一
般的手法である。
【0022】このようにして求められたデューティ比操
作量(推論値)は、本実施例に係る出力値計算部13に
て、実際の熱板の加熱時間のデューティ比を制御する指
令信号に変換される。この熱板の加熱時間のデューティ
比は、既述したように、熱板制御部13から熱板4,5
に出力されて熱板が実際に作動する時間と停止している
時間との比率である。
【0023】さらに、本実施例の熱板温度制御装置は、
金型2,3の温度変化が大きい場合を考慮して、記憶部
8のメモリ8aに入力した熱板の設定温度Th を逐次変
更してゆく熱板設定温変更部14を備えている。この熱
板設定温変更部14には、金型の実際温度tm を検出す
る金型温度センサ6からのデータが入力されるようにな
っており、一定時間間隔で現在の金型の実際温度tm が
得られる。本実施例の金型温度センサ6としては、例え
ば熱起電力を変換物理量とした熱電対を用いることが取
り扱いの点で好ましいといえるが、本発明の金型温度セ
ンサ6はこの熱電対にのみ限定されることなく、他の温
度センサ、例えば温度精度や分解能が必要な場合には電
気抵抗を変換物理量としたサーミスタあるいは測温抵抗
体などを用いても良い。これら金型温度センサ6は、使
用される金型2,3の検出温度範囲や必要な測定精度・
分解能などの諸条件により適宜選択すれば良い。なお、
本実施例では金型温度センサ6を上型2にのみ取り付け
ているが、下型3、あるいは上下金型2、3の両方に設
けても良い。
【0024】そして、記憶部8のメモリ8cに入力され
ている金型の設定温度Tm を取り込んで、一定時間間隔
で実際の金型温度tm と比較し、図5に示す簡単な制御
則にしたがって熱板の設定温度Th を状況に応じて変更
する。この制御則は、例えば、金型の設定温度Tm に対
して実際の金型温度tm が上昇気味である場合には、図
5に示すように熱板の設定温度Th を少し下げるように
記憶部8のメモリ8aに出力する。逆に、金型の設定温
度Tm に対して実際の金型温度tm が下降気味である場
合には、図5に示すように熱板の設定温度Thを少し上
げるように記憶部8のメモリ8aに出力する。
【0025】このような制御を付加することによって、
記憶部8のメモリ8aの熱板の設定温度Th が逐次変更
されてゆき、この変更後の熱板の設定温度Th の値を用
いて温度偏差δが計算され、さらにファジィ推論が実行
されることから、被加硫物1の材質や熱容量の相違によ
り生じる金型温度tm の変動幅が大きくても、熱板のデ
ューティ比は、実際の金型温度tm を考慮しながら制御
されることになる。したがって、オーバーシュートなど
することなく最終的に設定したい金型設定温度Tm に最
短時間で到達し、この温度を維持することができる。
【0026】次に作用を説明する。本発明では、熱板
4,5により金型2,3を介して被加硫物1を加熱処理
する加硫機においては、温度変化が大きい金型温度tm
を直接の制御要因として一定温度に維持制御するより
は、熱板の温度th を一定温度に制御する方が加硫処理
の条件に対して有効である点に着目した構成としてい
る。つまり、まず熱板温度センサ7から一定時間間隔で
熱板の実際温度th を取込、これを温度偏差計算部9と
温度変化計算部10、および記憶部8のメモリ8bに出
力する。これと同時に、記憶部8のメモリ8aから温度
偏差計算部9に熱板の設定温度Th を出力し、温度偏差
δ(熱板の実際温度th と熱板の設定温度Th との差
温)を演算して求める。また、記憶部8のメモリ8bか
ら一定時間前の熱板の実際温度th-1 を温度変化計算部
10に出力し、この温度変化計算部10で、熱板の現在
の実際温度thと熱板の一定時間前の実際温度th-1 と
の差温、すなわち温度変化Δを演算して求める。
【0027】そして、この温度偏差δと温度変化Δに基
づき、ファジィ推論部11で、予め決められたファジィ
ルール(図2参照)とメンバーシップ関数(図3(A)
(B)(C)参照)によりファジィ推論を実行して推論
値を求め、これを出力値計算部13に出力する。出力値
計算部13では、熱板の作動/停止時間のデューティ比
を演算し、この演算結果により定められる制御信号を熱
板制御部12に出力する。
【0028】また、熱板設定温変更部14で、実際の金
型温度tm と金型の設定温度Tm とを比較し、図5に示
す予め決められた制御則にしたがって記憶部8のメモリ
8aに記憶されている熱板の設定温度Tm を逐次変更す
る。
【0029】このように、金型温度を直接の制御要因と
せず、熱板の温度をファジィ推論を用いて制御すること
により、比較的滑らかな温度変化を行う加硫機にとって
は、金型の温度上昇速度を最短時間で達成することがで
きると共に、金型の実際温度がオーバーシュートするこ
とを防止できるので好ましい制御となる。また、金型温
度の変動が大きくても、この温度変動に応じて熱板設定
温変更部14によって熱板の設定温度Th を逐次変更し
て行くため、熱板のデューティ比は、実際の金型温度t
m を考慮しながら制御されることとなり、さらに適正に
金型設定温度に到達し、この温度を維持することができ
る。
【0030】なお、本発明は上述した実施例のみに限定
されることなく本発明の要旨を越えない限りにおいて種
々に改変することが可能である。例えば、上記実施例で
は加硫機に用いられている熱板の温度制御に本発明の温
度制御装置を適用した具体例を示したが、本発明の温度
制御装置の基本的思想は加硫機にのみ限定されることな
く加熱物を加熱処理する装置にも適用することができ
る。
【0031】
【発明の効果】本発明の加硫機の熱板温度制御装置は、
熱板の実際温度と熱板の設定温度との差温および熱板の
実際温度と熱板の実際温度のうち一定時間前の実際温度
との差温を入力パラメータとしてファジィ推論を実行
し、この推論値に基づいて熱板の作動時間を制御し、か
つ、実際の金型温度と金型の設定温度とを比較して予め
決められた制御則にしたがって熱板の設定温度を逐次変
更してゆき、これをファジィ推論の入力パラメータに用
いているので、加硫条件を遵守しながらオーバーシュー
トすることなく加硫処理の時間を短縮できると共に、金
型温度の変化量の大小に拘らずあらゆる加硫機に適用で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る加硫機の熱板温度制御
装置を示すブロック図である。
【図2】同実施例のファジィ推論部におけるファジィル
ールを示す図である。
【図3】同実施例のファジィ推論部におけるメンバーシ
ップ関数を示すグラフであり、(A)は温度偏差、
(B)は温度変化、(C)は熱板のデューティ比の操作
量のメンバーシップ関数を示すグラフである。
【図4】図3に示す3つのメンバーシップ関数から制御
量を求める方法(MAX−MIN−重心法)を説明する
グラフである。
【図5】同実施例に係る熱板設定温変更部の制御則を示
す図である。
【符号の説明】
1…被加熱物(被加硫物) 2…上型 3…下型 4…上部熱板 5…下部熱板 6…金型温度センサ 7…熱板温度センサ 8…記憶部 8a…熱板設定温度のメモリ 8b…一定時間前の熱板の実際温度のメモリ 8c…金型の設定温度のメモリ 9…温度偏差計算部 10…温度変化計算部 11…ファジィ推論部 12…熱板制御部 13…出力値計算部 14…熱板設定温変更部 tm …金型の実際の温度 th …熱板の実際の温度 th-1 …一定時間前の熱板の実際温度 Th …熱板の設定温度 Tm …金型の設定温度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−106307(JP,A) 特開 昭63−209817(JP,A) 特開 昭61−84211(JP,A) 特開 平4−189120(JP,A) 特開 昭61−259482(JP,A) 特開 昭63−302011(JP,A) 特開 昭63−194922(JP,A) 特開 平2−169226(JP,A) 実開 昭62−185014(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 33/00 - 33/76 B29C 35/00 - 35/18 G05D 23/00 - 23/32

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被加熱物(1)を金型(2,3)内に投入
    し、熱板(4,5)により前記金型(2,3)を介して
    前記被加熱物(1)を加熱処理する加硫機において、 前記金型の実際の温度(tm )を検出する金型温度セン
    サ(6)と、 前記熱板の実際の温度(th )を検出する熱板温度セン
    サ(7)と、 前記熱板の設定温度(Th )、前記熱板温度センサ
    (7)により検出された熱板の実際の温度(th )、お
    よび前記金型の設定温度(Tm )を記憶する記憶部
    (8)と、 前記熱板温度センサ(7)により検出された前記熱板の
    実際の温度(th )と前記記憶部(8)に記憶されてい
    る前記熱板の設定温度(Th )との差温(δ)を計算す
    る温度偏差計算部(9)と、 前記熱板温度センサ(7)により検出された前記熱板の
    実際の温度(th )と前記記憶部(8)に記憶されてい
    る前記熱板の実際の温度(th )のうち一定時間前の実
    際の温度(th-1 )との差温(Δ)を計算する温度変化
    計算部(10)と、 前記温度偏差計算部(9)により求められた温度偏差
    (δ)と前記温度変化計算部(10)により求められた
    温度変化(Δ)に基づき、予め決められたファジィルー
    ルとメンバーシップ関数によりファジィ推論を実行して
    推論値を求めるファジィ推論部(11)と、 前記ファジィ推論部(11)により求められた推論値に
    基づいて前記熱板(4,5)の作動時間を演算し、この
    演算結果により定められる制御信号を前記熱板の制御部
    (12)に出力する出力値計算部(13)と、 前記金型温度センサ(6)により検出された実際の金型
    温度(tm )と前記記憶部(8)に記憶されている金型
    の設定温度(Tm )とを比較し、予め決められた制御則
    にしたがって前記記憶部(8)に記憶されている熱板の
    設定温度(Th)を制御する熱板設定温変更部(14)
    とを有することを特徴とする加硫機の温度制御装置。
JP15876092A 1992-05-26 1992-05-26 加硫機の温度制御装置 Expired - Fee Related JP3260823B2 (ja)

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