JP3256700B2 - 試料保護方法及びその装置 - Google Patents

試料保護方法及びその装置

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は航空機,ロケット,スペースシャトル,人工
衛星などの無人宇宙飛翔体,宇宙ステーションなどの飛
行体による弾道飛行中の無重力環境あるいは軌道上で行
う宇宙実験において、飛行体又は走行体の発射,発振
時,離陸及び帰還時あるいは停止時の激しい振動,衝撃
から飛行体又は走行体に搭載した試料を有効に保護する
方法と、この方法に用いる保護装置に関する。
〔従来の技術〕
航空機あるいはロケットの弾道卯飛行を利用した無重
力環境や軌道上での宇宙模擬環境を利用して種々の新し
い科学実験が行われるようになってきた。ところで、航
空機,ロケット,スペースシャトル,人工衛星などの無
人宇宙飛翔体,宇宙ステーションのような高速の飛行体
ではその発射時,帰還時に強大な衝撃,振動を生じ、こ
れら強大な衝撃や振動を受ける環境の下では例えば生物
試料では正常な生存が阻害されることがある。これは生
物試料に限るものではない。装置,機器類にあっては破
損,故障を生ずるおそれがある。
従来、上述のような環境の下で使用される試料を保護
する方法として弾性体を用い、第3図に示すように防振
したい周波数域の 以下に防振機構系の基本振動周波数を下げ、防振したい
周波数域を防振領域に移行させることが行われてきた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、このような方法によるときには低い周
波数に対応させようとすると、基本振動周波数を極端に
低く設定することになるため、防振機構のバネ定数が非
常に小さくなり、弾性体による支持が困難となり、ま
た、系の振動が大きくなるため、防振機構の収納空間を
大きく確保しなければならないため、試料保護装置の大
型化は避けられないといった欠点がある。
本発明の目的は航空機,ロケットあるいはスペースシ
ャトル内のような限られたスペースへの積載を可能なら
しめ、しかも、発射時,帰還時に生ずる激しい衝撃,振
動から試料を有効に保護しうる方法及びこの方法に使用
する装置を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明による試料保持方法
においては、試料収納部を複合防振機構をもって3軸方
向に支持する試料保護方法であって、 試料収納部は、防振すべき試料を収納するものであ
り、 複合防振機構は、弾性体と粘弾性体との組合わせであ
り、 弾性体の共振周波数は、それぞれ共振点を形成してい
ずれも防振すべき試料に有害な周波数となる15Hzと、5H
zとの中間の周波数に設定され、 粘弾性体は、試料にダンピングを付与して防振すべき
試料にとって有害な振動を減衰させるものである。
また、本発明による試料保持装置においては、内枠
と、外枠と、複合防振機構と、クランプとの組合せから
なり、 複合防振機構は、弾性体と、粘弾性体との組合せであ
り、 内枠は、蓋板と、内箱との組合せであり、内箱は、試
料容器を収納し、蓋板は内箱を施蓋するものであり、 外枠は、上部枠と下部枠との組合せであり、 内箱は、四周面および底面をそれぞれ複合防振機構で
支えて下部枠内に設置され、 蓋板は、複合防振機構で吊り下げて上部枠に取付けら
れ、 下部枠に上部枠を結合することによって、内箱は、蓋
板に施蓋されるものであり、 クランプは、蓋板と内箱および上部枠と下部枠とを脱
着可能に結合するものである。
〔原理・作用〕
一般に航空機,ロケット,スペースシャトルなどの発
射,離陸又は着陸時に生ずる振動は種々の正弦波振動が
重ね合わされたものと考えられる。これら飛行体に生物
試料を搭載したときに、その生物試料の生存は比較的低
い周波数域(10〜30Hz付近)での正弦波に鋭敏に左右さ
れる可能性が高いことが知られている。また、これらの
正弦波振動は通常ジェットあるいはロケットエンジンの
振動などによる特性的なピークが存在し、各々のピーク
が分離していることが知られている。
本発明においては、主としてこのような比較的低い周
波数域の正弦波振動の防振をしようとするものである。
ロケットのエンジンからは、防振すべき試料に有害な比
較的低い周波数の共振点(15Hz)と、それよりさらに低
い周波数領域に共振点(5Hz)が発生する。本発明は、
防振すべき試料に有害な周波数15Hzと、5Hzの中間の周
波数に複合防振機構の弾性体の共振周波数(f0)を設定
し、また、粘弾性体による適正なダンピングを付与し、
試料にとって有害な振動を減衰させるものである。本発
明において、複合防振機構は上記条件を満たす弾性体と
粘弾性体との組合せを意味する。
第4図はあるロケットの発射時の振動の加速度と周波
数との関係、第5図は本発明による複合防振機構の伝達
率と周波数との関係、第6図はある生物試料の生存領域
を示している。
このロケットの発射時の振動加速度中、第4図に示す
ように5Hzと、15HzとにそれぞれピークP1、P2が形成さ
れる。5Hz付近の特性的な1Gの振動加速度は本発明では
第5図のように2倍に増幅され、その値は2Gになるが、
第6図に示すように生物試料の生存限界は5Hzで約3Gで
あるため、このロケットによる5Hzの下で生ずる振動加
速度は生物試料の生存の許容値以下に収めることができ
る。さらに第4図において、15Hz付近のロケット発射時
の3G程度の振動加速度は本発明によれば1/3に減衰され
て1Gになるため、同様に15Hzでの生物試料の生存限界を
下まわっている。
このように本発明によれば、試料にとって有害な振動
のピーク値の谷間に弾性体の共振周波数を設定し、これ
に粘弾性体による適正なダンピングを付与することによ
り共振点での振動加速度の増幅を低減し、生物試料を含
めて試料に有害とされる振動の影響を制限することがで
きる。
第7図に粘弾性体の付与量と振動伝達率との関係を示
す。図に明らかなとおり、粘弾性体の付与量に比例して
ダンピングの値(%)が増大し、共振周波数(f0)での
伝達率を大きく減衰できることが分かる。本発明におい
て、防振機構に用いる弾性体には、炭素鋼,合金鋼(ス
テンレス鋼など)、黄銅,洋白,りん素銅,ベリリウム
鋼などによるコイルばね,板ばね,ねじりばねなどフッ
クの法則にしたがう単体,組立体を使用できる。弾性体
のばね定数は、そのばね力をもって、構造物を支持する
のに充分な大きさをもつものとする。
粘弾性体はある種の高分子物質にみられる弾性と粘性
とが組合さった性質を有するものであり、ばね定数kdは
複素数で kd=kd1+ikd2(kgf/cm) …(1) とあらわせる。
ここでkd1は貯蔵ばね定数とよばれ、粘弾性体のばね
力に関係する項、kd2は損失ばね定数とよばれ減衰力に
関係する項である。粘弾性体の減衰性を評価する数値と
しては一般に〔tanδ〕=kd2/kd1が用いられる。
粘弾性体は一定応力に対してはクリープを示し、クリ
ープが進行すればするほど貯蔵ばね定数kd1が増加し、
損失ばね定数kd2が低下する。また、振動を加えると、
ばね定数kd1や減衰性〔tanδ〕が周波数に関係するなど
の特性を有している。
したがって粘弾性体単体だけで構造物を支持すると荷
重応力,加振周波数により固有振動数が大きく、減衰性
が小さくなり、防振の機能を果たさない。
一方、粘弾性体に加えた外力を急に除くと弾性余効現
象が現われる。また変形を一定に保っておくと応力が時
間とともに減少する応力緩和現象があらわれる。
弾性体と粘弾性体を並列に組合せた場合、弾性体のば
ね定数(減衰性は小さいものとして無視する)をkc1
すれば、組合せた複合機構のばね定数は(1)よりk=
kc1+kd=kc1+kd1+ikd2(kgf/cm)弾性力に関係する
貯蔵ばね定数は k1=kc1+kd1(kgf/cm)であるから 防振機構の固有振動数f0(Hz)は防振支持する機械の重
量をM(kg)とすると 装置の減衰性を示す〔tanδ〕は となる。弾性体のばね定数kc1は構造物を支持するのに
充分な大きさを選択し、粘弾性体のばね定数は防振機構
に要求される有効振動数(2)式や減衰性の大きさ
(3)式より決定される。
粘弾性体の材料としてはエポキシ,ウレタン樹脂,ポ
リエステル等の熱硬化樹脂,スチレン,ブタジエン,エ
チレン,プロピレンなどの熱可塑性樹脂,ポリブタジエ
ンなどの各種ゴム,シリコン樹脂あるいはそのゲルがあ
り、その固形体を用いるが、温度条件,設置条件に適し
た材料及び形状を選択する(特願昭61−172390号参
照)。
〔実施例〕
以下に本発明の実施例を図によって説明する。
第1図は本発明装置の基本的構成を示す図である。
図において、本発明装置は試料容器1を格納する内枠
2と、該内枠2を収納する外枠3と、前記内枠2を外枠
3内に3軸方向に個別に保持させる複合防振機構4との
組合せからなっているものである。
内枠2は要するに試料5をスポンジ6などを介装して
緩衝的に装てんする試料容器1の格納用箱体であり、上
蓋開閉式の箱を使用するのが好ましい。
外枠3は前記複合防振機構4を取付けて前記内枠2の
上下面及び各側面を個別に支持できる構造のものであれ
ば必ずしも箱型であることを要しない。複合防振機構4
は弾性体7と粘弾性体8との組合せからなるものであ
る。
実施例においては、コイルばねによる弾性体7と柱状
の粘弾性体8とを交互に配列して内枠2と外枠3との間
の各面間に1列又は2列に取付けた例を示している。
具体例を第2図に示す。本実施例では外枠3を上部枠
3aと下部枠3bとに2分割し、また内枠2を蓋板2aと内箱
2bとに2分割して内箱2bの四周面及び底面をそれぞれ複
合防振機構4で支えて下部枠3b内に設置するとともに蓋
板2aを複合防振機構4で上部枠3aの下面に吊下げて取付
けたものである。なお、上部枠3aには下部枠3bに固定す
るクランプ9を取次け、蓋板2aには内箱2bに結合するク
ランプ10をそれぞれ取付けている。
本実施例によれば、内箱2b内に試料容器1を格納し、
上部枠3aを下部枠3bに重ねてクランプ10を内箱2bに結合
し、クランプ9を下部枠3bに結合すれば、内箱2bは蓋板
2aで施蓋され、上部枠3aと下部枠3bとが一体に結合さ
れ、試料容器1は3軸方向に配された複合防振機構4に
よって外枠3内に安定に保持されることになる。試料容
器1を脱着する際にはクランプ9及び10を取外し、上部
枠3aと下部枠3bとを上下に分離することにより試料容器
1を簡単に迅速に取外すことができる。また、生物試料
を搭載する場合のように酸素,外気の供給が必要なとき
には試料容器の外板と内枠の内箱に通気孔を開口すれば
よい。
勿論、試料容器内には生物試料を収納する場合に限ら
ず、各種実験器具を収納することもできる。例えば、試
料容器内に加速度センサーを格納してこれを本発明装置
に搭載し、前記飛行体又は高速走行体の発振から停止に
至る加速度の変化を測定,記録すれば、本発明装置を用
いた場合に試料に加えられる全工程の加速度の履歴を知
ることができ、そのデータの集積により各種試料につい
ての実験の信頼性を高めることができる。
以上実施例において、3軸方向の複合防振機構に用い
た弾性体及び粘弾性体の組合せ並びに各々のばね常数や
ダンピングを各方向について異ならせることにより、3
軸方向の各方向毎に異なる振動環境にも対応できる。
〔発明の効果〕
以上のように本発明によるときには弾性体と粘弾性体
との組合せによる複合防振機構の特性を有効に利用して
過小なばね常数の弾性体を用いることなく、試料容器を
安定に支持し、しかも、加振時の系の振幅が過大となる
ことがないため、小型化が可能となり、航空機,ロケッ
ト,スペースシャトルなどの限られた空間内に無理なく
搭載できる効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明装置の基本的構成を示す略示図、第2図
は本発明装置の一実施例を示す分解斜視図、第3図は防
振機構の振動周波数と伝達率との関係を示す図、第4図
はロケット発射時の加速度と周波数との関係を示す図、
第5図は本発明による複合防振機構の周波数と振動伝達
率との関係を示す図、第6図は振動周波数に対するある
生物試料の生存領域を示す図、第7図は粘弾性体の付与
量と振動伝達率との関係を示す図である。 1……試料容器、2……内枠 2a……蓋板、2b……内箱 3……外枠、3a……上部枠 3b……下部枠、4……複合防振機構 5……試料、7……弾性体 8……粘弾性体、9,10……クランプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭64−3140(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B64G 1/38 F16F 15/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】試料収納部を複合防振機構をもって3軸方
    向に支持する試料保護方法でって、 試料収納部は、防振すべき試料を収納するものであり、 複合防振機構は、弾性体と粘弾性体との組合わせであ
    り、 弾性体の共振周波数は、それぞれ共振点を形成していず
    れも防振すべき試料に有害な周波数となる15Hzと、5Hz
    との中間の周波数に設定され、 粘弾性体は、試料にダンピングを付与して防振すべき試
    料にとって有害な振動を減衰させるものであることを特
    徴とする試料保護方法。
  2. 【請求項2】内枠と、外枠と、複合防振機構と、クラン
    プとの組合せからなり、 複合防振機構は、弾性体と、粘弾性体との組合せであ
    り、 内枠は、蓋板と、内箱との組合せであり、内箱は、試料
    容器を収納し、蓋板は内箱を施蓋するものであり、 外枠は、上部枠と下部枠との組合せであり、 内箱は、四周面および底面をそれぞれ複合防振機構で支
    えて下部枠内に設置され、 蓋板は、複合防振機構で吊り下げて上部枠に取付けら
    れ、 下部枠に上部枠を結合することによって、内箱は、蓋板
    に施蓋されるものであり、 クランプは、蓋板と内箱および上部枠と下部枠とを脱着
    可能に結合するものであることを特徴とする試料保護装
    置。
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